説明

エレベータの制御装置

【課題】エレベータの運転中に計画停電によりエレベータへの電力供給が断たれた場合に生じる不都合を未然に防止することができるエレベータの制御装置を提供する。
【解決手段】エレベータの制御装置において、予め計画停電情報を記憶する計画停電情報記憶手段と、前記計画停電情報記憶手段に記憶された前記計画停電情報に基づいて、計画停電の開始日時より所定の事前休止時間だけ前にエレベータを運転休止状態にする運転休止手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エレベータの制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般にエレベータの多くは、電力会社から供給される商用電源により運転が駆動されている。そのため、商用電源が停電すると、運転不能となり利用者が乗車中だった場合には利用者のかご内への閉じ込め等が発生する可能性がある。
【0003】
従来におけるエレベータの制御装置においては、エレベータが運転不能となり停止した際に利用者のかご内への閉じ込め等を防止するために、気象庁から発信される緊急地震速報に基づいて、エレベータのかごを最適階に停止させるように制御するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、従来のエレベータの制御装置においては、エレベータの消費電力量が当該エレベータが設置されたビル全体での契約電力量を上回ることがないように、エレベータの最高速度等を調節するものも知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−143354号公報
【特許文献2】特開2009−096582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、商用電源の停電の形態(種類)の1つに、輪番停電(いわゆる計画停電)と呼ばれるものがある。この輪番停電(以下、計画停電と呼ぶ)とは、ある電力会社管内において、電力需要が電力供給能力を上回ることによって大規模な停電が発生してしまう事態を回避するために、予め定めた地域・時間帯毎に計画的に順次停電を実施するものである。
【0007】
しかしながら、特許文献1や特許文献2に示されたいずれの従来におけるエレベータの制御装置においても、このような計画停電については全く考慮されていない。このため、エレベータの運転中に計画停電によりエレベータへの電力供給が断たれた場合に、エレベータ(かご)が階床と階床との間で停止し、かご内に利用者が閉じ込められた状態となってしまうおそれがあるという課題がある。また、急な停電によりエレベータが急停止したことで予期せぬ機器の損傷等が発生してしまう可能性があるという課題もある。
【0008】
この発明は、このような課題を解決するためになされたもので、エレベータの運転中に計画停電によりエレベータへの電力供給が断たれた場合に生じる不都合を未然に防止することができるエレベータの制御装置を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係るエレベータの制御装置においては、予め計画停電情報を記憶する計画停電情報記憶手段と、前記計画停電情報記憶手段に記憶された前記計画停電情報に基づいて、計画停電の開始日時より所定の事前休止時間だけ前にエレベータを運転休止状態にする運転休止手段と、を備えた構成とする。
【発明の効果】
【0010】
この発明に係るエレベータの制御装置においては、エレベータの運転中に計画停電によりエレベータへの電力供給が断たれた場合に生じる不都合を未然に防止することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の実施の形態1に係るエレベータの制御装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係るエレベータの制御装置の動作を示すフロー図である。
【図3】この発明の実施の形態2に係るエレベータの制御装置の全体構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
この発明を添付の図面に従い説明する。各図を通じて同符号は同一部分又は相当部分を示しており、その重複説明は適宜に簡略化又は省略する。
【0013】
実施の形態1.
図1及び図2は、この発明の実施の形態1に係るもので、図1はエレベータの制御装置の全体構成を示すブロック図、図2はエレベータの制御装置の動作を示すフロー図である。
【0014】
図1において、1は、エレベータの運転全般の制御を司る制御装置本体である。制御装置本体1は、インターネット回線2と通信可能に接続されている。そして、制御装置本体1には、このインターネット回線2を介して電力会社HP3にアクセスし、この電力会社HP3に掲載されている計画停電に関する情報(計画停電情報)を取得する計画停電情報取得手段4が備えられている。制御装置本体1には、この計画停電情報取得手段4により取得した計画停電情報を記憶し保存する計画停電情報記憶手段5が備えられている。
【0015】
計画停電情報取得手段4により取得され計画停電情報記憶手段5に記憶される計画停電情報には、計画停電の対象地域(エリア)、停電開始予定日時及び停電終了(復電)予定日時に関する情報が含まれている。なお、計画停電情報取得手段4により取得され計画停電情報記憶手段5に記憶される計画停電情報は、電力会社管内の全エリアについてであってもよいが、当該エレベータが設置されている建物が所属しているエリアについてのみとしてもよい。
【0016】
また、計画停電情報取得手段4及び計画停電情報記憶手段5による計画停電情報の取得及び記憶は、計画停電の実施に先立って予め行われる。例えば1日のうちの決まった時刻(電力会社HP3における計画停電情報の更新時刻に合わせた時刻等)に定期的に行われるようにすることが考えられる。
【0017】
制御装置本体1には、計画停電情報記憶手段5に記憶されている計画停電情報に基づいて、当該エレベータの運転を事前に休止させる運転休止手段6が備えられている。この運転休止手段6は、計画停電情報記憶手段5に記憶されている計画停電情報を参照し、当該エレベータが設置されている建物が所属しているエリアにおける計画停電の開始日時より所定の事前休止時間だけ前の日時となった時に、当該エレベータの運転を休止状態にする。すなわち、所定の事前休止時間は、計画停電開始日時のどれだけ前にエレベータを運転休止状態とするかを設定するものである。
【0018】
また、制御装置本体1には、計画停電の終了(復電)後に、当該エレベータの運転を自動的に復旧させる運転自動復旧手段7も備えられている。この運転休止手段6は、計画停電情報記憶手段5に記憶されている計画停電情報を参照し、計画停電の終了日時となった時に、当該エレベータの運転を自動的に復旧させるようにしてもよいし、停電後、制御装置本体1への通電(商用電源の回復)を検出すると自動的に当該エレベータの運転を復旧させるようにしてもよい。
【0019】
なお、通電検出で自動的にエレベータの運転を復旧させる後者とすることで、当初の計画停電予定よりも復電が早まったり逆に停電時間が長引いたりした場合においても、適切にエレベータを復旧させることが可能である。
【0020】
そして、さらに、制御装置本体1には、停電情報報知手段8が備えられている。この停電情報報知手段8は、計画停電情報記憶手段5に記憶されている計画停電情報に基づいて、当該エレベータが設置されている建物が所属しているエリアにおける計画停電の開始日時より所定の事前報知時間だけ前の日時となった時に、計画停電によって当該エレベータが運転休止となる旨を利用者に報知するためのものである。
【0021】
ここで、所定の事前報知時間は、計画停電開始日時よりもどれだけ前に報知を行うかを設定するもので、前述した所定の事前休止時間よりも長い時間に設定される。すなわち、停電情報報知手段8による報知は、運転休止手段6による運転休止よりも先立って実施されるようになっている。
【0022】
停電情報報知手段8による計画停電によってエレベータが運転休止となる旨の報知は、具体的には、エレベータの乗場やかご内に設けられた表示装置9やスピーカからなる報知装置10を通じて行われる。すなわち、この報知において、停電情報報知手段8は、表示装置9に計画停電によってエレベータが運転休止となる旨の所定のメッセージ等を表示する。また、停電情報報知手段8は、報知装置10によって計画停電によってエレベータが運転休止となる旨の所定の音声メッセージ等を報知する。
【0023】
なお、停電情報報知手段8、表示装置9及び報知装置10による報知は、計画停電開始より所定の事前報知時間前に1度だけ行うようにしてもよいが、計画停電開始より所定の事前報知時間前から運転休止手段6により事前運転休止されるまで(計画停電開始より所定の事前休止時間前まで)継続して行うようにしてもよい。この場合、報知装置10からの音声メッセージの報知は一定時間毎に行うようにする。
【0024】
また、運転休止手段6によりエレベータを運転休止状態にする際には、計画停電が予定されているためエレベータを運転休止とする旨を、停電情報報知手段8、表示装置9及び報知装置10により改めて報知するようにしてもよい。このような報知により利用者は運転休止の理由を把握することができる。さらに、表示装置9には、今後予定されている計画停電情報を常時表示するようにしてもよい。
【0025】
図2のフロー図は、この実施の形態におけるエレベータの制御装置の動作を示すものである。
まず、ステップS1において、計画停電情報取得手段4はインターネット回線2を介して電力会社HP3から計画停電情報を取得し、取得した計画停電情報を計画停電情報記憶手段5に事前に記憶しておく。
【0026】
次に、ステップS2において、計画停電情報記憶手段5の計画停電情報に基づいて、計画停電開始日時より所定の事前報知時間前であるか否かを確認する。ここで、図2中の「XX」が所定の事前報知時間を表しており、ここでは所定の事前報知時間は例えば時間及び分単位で設定されている。
【0027】
このステップS2において、計画停電開始日時より所定の事前報知時間前であることが確認された場合には、ステップS3へと進む。このステップS3においては、停電情報報知手段8により計画停電が実施される旨の事前報知が行われる。すなわち、例えば、報知装置10によって乗場やかご内の利用者に対して計画停電情報のアナウンスを行ったり、乗場やかご内の表示装置9に計画停電情報をインフォメーション表示したりする。
【0028】
ステップS3の後は、ステップS4へと進む。また、ステップS2において、まだ計画停電開始日時より所定の事前報知時間前となっていなかった場合には、ステップS3を飛ばしてステップS4へと進む。このステップS4においては、計画停電情報記憶手段5の計画停電情報に基づいて、計画停電開始日時より所定の事前休止時間前であるか否かを確認する。ここで、図2中の「YY」が所定の事前休止時間を表しており、ここでは所定の事前休止時間は例えば時間及び分単位で設定されている。
【0029】
このステップS4において、まだ計画停電開始日時より所定の事前報知時間前になっていなかった場合には、ステップS1へと戻る。一方、計画停電開始日時より所定の事前報知時間前であることが確認された場合には、ステップS5へと進む。
【0030】
このステップS5においては、運転休止手段6は、エレベータを運転休止状態とする。そして、併せて、停電情報報知手段8により計画停電によりエレベータの運転が休止される旨の報知が行われる。すなわち、例えば、報知装置10によって乗場やかご内の利用者に対してエレベータ運転休止のアナウンスを行ったり、乗場やかご内の表示装置9にエレベータ運転休止をインフォメーション表示したりする。
【0031】
ステップS5の後、予定通り計画停電が開始、終了されると、ステップS6においてエレベータの電源が復旧し、ステップS7で運転自動復旧手段7によりエレベータの運転が復旧されて、エレベータは通常の運転状態へと回復する。このステップS7の後はステップS1へと戻り、以上の処理が繰り返される。
【0032】
以上のように構成されたエレベータの制御装置は、予め計画停電情報を記憶する計画停電情報記憶手段と、この計画停電情報記憶手段に記憶された計画停電情報に基づいて、計画停電の開始日時より所定の事前休止時間だけ前にエレベータを運転休止状態にする運転休止手段と、を備えている。
【0033】
そして、このような構成により、予め決められた地域・時間帯で計画的に順次停電が実施される計画停電の情報に基づいて、計画停電が実際に行われる前にエレベータを運転休止にすることで、計画停電の実施前にエレベータの利用を制限して利用者がエレベータを利用できないようにし、エレベータの運転中に計画停電により電力供給が断たれることによるエレベータの急停止を回避して、かご内への利用者閉じ込めや機器の損傷等の不都合を未然に防止することができる。
【0034】
また、計画停電情報記憶手段に記憶された計画停電情報に基づいて、計画停電の開始日時より所定の事前報知時間だけ前に、計画停電情報をエレベータの利用者に報知する停電情報報知手段を備え、かつ、事前報知時間を事前休止時間よりも長い時間に設定することで、利用者は計画停電に備えたエレベータの運転休止前にそのことを知ることができ、運転休止の直前にエレベータを利用して目的階に到着する前に運転休止となってしまうことを防止することができる。
【0035】
なお、計画停電開始日時より事前休止時間だけ前の日時となっても、エレベータが運転中であったり、エレベータに呼びが登録されているような状況であった場合には、一通りの運転が終わってエレベータが待機状態に移行するような状況になってから運転を休止するようにしてもよい。
【0036】
さらに、計画停電情報取得手段により、エレベータの外部である電力会社のHP(ホームページ)からインターネット回線を介して計画停電情報を事前に取得するようにすることで、既設のエレベータに対して大がかりな設備追加等を必要とすることなく、電力会社のHPで一般に公開されている計画停電情報を取得してエレベータの運転状態の制御に用いることが可能である。
【0037】
実施の形態2.
図3は、この発明の実施の形態2に係るもので、エレベータの制御装置の全体構成を示すものである。
ここで説明する実施の形態2は、前述した実施の形態1の構成において、計画停電情報取得手段による計画停電情報の取得元として、電力会社が運営する情報配信サービスを利用するようにしたものである。
【0038】
すなわち、図3において11は電力会社情報配信サービスであり、この電力会社情報配信サービス11からインターネット回線2を介して配信された計画停電情報を、制御装置本体1の計画停電情報取得手段4により受信する。計画停電情報取得手段4により受信された計画停電情報は、計画停電情報記憶手段5に記憶保存される。
なお、他の構成については実施の形態1の図1と同様である。また、動作についても実施の形態1の図2と同様であるため、これらの詳細説明は省略する。
【0039】
以上のように構成されたエレベータの制御装置も、実施の形態1と同様の効果を奏することができる。
【0040】
なお、計画停電情報取得手段による計画停電情報の取得元としては、実施の形態1で説明した電力会社HPや実施の形態2で説明した電力会社情報配信サービスに限られるものではなく、その他の計画停電情報配信手段、例えば、電力会社から送信される電子メール等を利用するものとしてもよい。さらには、複数種の計画停電情報の取得元を組み合わせて用いるようにしてもよい。また、停電情報の取得に用いる回線についても、インターネット回線に限られるものではなく専用回線等の各種の通信回線を用いることができる。
【符号の説明】
【0041】
1 制御装置本体
2 インターネット回線
3 電力会社HP
4 計画停電情報取得手段
5 計画停電情報記憶手段
6 運転休止手段
7 運転自動復旧手段
8 停電情報報知手段
9 表示装置
10 報知装置
11 電力会社情報配信サービス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め計画停電情報を記憶する計画停電情報記憶手段と、
前記計画停電情報記憶手段に記憶された前記計画停電情報に基づいて、計画停電の開始日時より所定の事前休止時間だけ前にエレベータを運転休止状態にする運転休止手段と、を備えたことを特徴とするエレベータの制御装置。
【請求項2】
前記計画停電が終了すると、エレベータを運転休止状態から復旧させる運転自動復旧手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載のエレベータの制御装置。
【請求項3】
前記計画停電情報記憶手段に記憶された前記計画停電情報に基づいて、前記計画停電の開始日時より所定の事前報知時間だけ前に、前記計画停電情報をエレベータの利用者に報知する停電情報報知手段を備え、
前記事前報知時間は、前記事前休止時間よりも長い時間に設定されることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載のエレベータの制御装置。
【請求項4】
エレベータの外部から前記計画停電情報を事前に取得する計画停電情報取得手段を備え、
前記計画停電情報記憶手段は、前記計画停電情報取得手段により取得された前記計画停電情報を記憶することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のエレベータの制御装置。
【請求項5】
前記計画停電情報取得手段は、電力会社のホームページからインターネット回線を介して前記計画停電情報を取得することを特徴とする請求項4に記載のエレベータの制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−103772(P2013−103772A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246478(P2011−246478)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】