説明

エレベータシステムでの安全回路

本発明はエレベータシステム(100)の安全回路(200)に関するものであり、そのシステムは安全関連接点(20a〜20d、26)の少なくとも1つの直列接続(43)を備え、その接続はエレベータシステム(100)の障害のない動作の間は閉じられており、特定の動作条件の場合には、その少なくとも1つの接点(20a〜20d、26)が開かれ、前記少なくとも1つの接点(20a〜20d、26)は半導体スイッチ(36a、36b)によって橋絡されることができ、半導体スイッチ(36a、36b)は少なくとも1つのプロセッサ(34c、34d)により制御され、ショートについて少なくとも1つのモニタリング回路(37a、37b)によりモニターされることでき、さらに少なくとも1つの電気機械リレー回路(42a)を備え、その回路は橋絡された直列接続(43)の接点(20a〜20d、26)と直列に接続されたリレー接点(31c、31d)を有し、リレー回路(42a)は少なくとも1つのプロセッサ(34c、34d)により制御され、橋絡可能な直列接続(43)は、半導体スイッチ(36a、36b)のショートの場合に、リレー接点(31c、31d)によって遮断されることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのエレベータケージと少なくとも1つのカウンターウェイトがエレベータシャフトで反対方向に移動されるエレベータ装置に関するもので、少なくとも1つのエレベータケージと少なくとも1つのカウンターウェイトがガイドレールに沿って走行し、1つまたは複数の支持手段によって担持される。その支持手段または各支持手段は駆動ブレーキを有する駆動ユニットの駆動プーリーによってガイドされる。さらに、エレベータ装置は、安全回路を備え、該安全回路はとりわけ緊急時に駆動ブレーキを作動し、ドアが開く際には、安全回路が閉じたままであるようなドア接点の橋絡を含んでいる。本発明は、特に安全回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のエレベータ装置では、電気機械スイッチがドア接点の橋絡に採用されている。しかしながら特に、オフィスビルのエレベータ装置の場合、エレベータケージの移動の回数は、営業日につき1,000回を超える場合がある。その場合、ドア接点の橋絡は移動ごとに2回発生する。こうして、年間、約520,000回のスイッチ切り替え回数が電気機械スイッチに発生する結果となる。この回数が非常に多いので、電気機械スイッチは、ドア接点の橋絡の信頼性を制限する主な要因となる。
【0003】
スイッチ切り替えの多さとその高い要求ゆえに、ドア接点の橋絡は、いわゆる高い要求の安全機能と識別される。一般に、IEC規格61508では、エレベータ装置の障害のない通常の動作で、平均、年間1回を超える切り替えの機能として高い要求の安全機能を定義している。一方、低い要求の安全機能の場合、エレベータ装置の緊急状態の場合のみ、またはエレベータ装置の緊急動作の場合のみで規定されたそのような機能として指定されている。それは、障害が存在し、平均、年間1回未満の頻度で切り替えるような場合である。
【0004】
この国際規格IEC61508の重要な要素は、安全要求段階の決定である(Safety Integrity Level(安全度水準)−SIL、SILにはSIL1からSIL4まである)。これは、安全機能の必要な、または達成されたリスク軽減化の有効性の評価基準であり、SIL1は最低の要求である。機器または装置の安全機能の信頼性の基本的パラメータとして規定されているものは、PFH(probability of dangerous Failure per Hour:1時間あたりの危険側故障発生確率)およびPFD(Probability of dangerous Failure on demand:作動要求時の危険側故障発生確率)の計算を基本としている。第1のパラメータPFHは、高い要求のシステム、つまり高い要求レートを持つものに関係しており、第2のパラメータPFDは、低い要求のシステム、つまりそれらのサービス寿命の期間が実質的に非作動に等しいものに関係している。SILはこれらのパラメータから読み取られることができる。
【0005】
動作の低い要求モード(低頻度作動要求モード)および動作の高い要求モード(高頻度作動要求モードまたは連続的な動作モード)の、この規格に基づく技術媒体(IEC61508−4、セクション3.5.12)で見つけられることができるさらなる定義は、低いまたは高い(連続的)な要求レートに基づくものではなく、次の表現でその区別を指定している。すなわち、要求モードで動作する、(低い要求の)安全機能は、動作要求に応じてのみ実行され、モニターされるシステムを定義された安全状態にする。この低い安全機能の実行要素は、安全機能の要求の発生前には、モニターされるシステムに対して影響を与えない。それに対して、連続的なモードで動作する(高い要求の)安全機能は、常時、モニターされるシステムを通常の安全状態に保つ。したがって、高い要求の安全機能の要素は、モニターされるシステムを常にモニターする。さらなる安全関連のシステムまたはリスク軽減化のための外部の手段が有効でない場合には、この(高い要求の)安全機能の要素が故障すると、リスクに直接つながる結果となる。さらに、要求レートが年間で1回より多くなく、定期点検の頻度の2倍未満の場合には、低い要求の安全機能が存在する。それに対して、要求レートが年間で1回より多い場合、または定期点検の頻度の2倍より多い場合には、高い要求の安全機能または連続的な安全機能が存在する(IEC61508−4、セクション3.5.12も参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1535876号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、例えば、ドア接点の橋絡などの頻繁にスイッチ切り替えを行う高い要求の安全機能のより信頼でき、より安全な動作を導入し、このようにして、エレベータ装置全体の安全のほか、コスト効率も向上させ、維持管理を最小限にするエレベータ装置の安全回路を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本目的は、手始めに、多数のスイッチ切り替え(高い要求の安全機能)を受けるこれら従来の電気機械スイッチを電子半導体スイッチに選択的に置き換えることにより実現できる。そのような高い要求の安全機能は、例えば、ドア接点の橋絡であるが、障害のない通常の動作で切り替えられるほかの安全機能も考慮に入っており、特に、頻繁に切り替えられる安全機能である。
【0009】
例えば、酸化金属半導体電界効果トランジスタ(MOSFET:Metal−Oxide Semiconductor Field−Effect transistor)を含む、そのような半導体スイッチは一般的に、1日何百万回もの切り替えサイクルに耐えるトランジスタに基づくものである。唯一の欠点としては、故障時にショートを引き起こす傾向があり、その結果、すべてのドア接点がいつまでも橋絡されたままの状態となる。言い換えれば、冗長性から、ドア接点を橋絡するための2つの半導体スイッチ(安全カテゴリSIL2を満たすため)が好ましくは提供され、これらの2つの半導体スイッチがショートのために故障する場合、半導体のショートにより閉じられたドアがシミュレートされるので、エレベータケージおよびカウンターウェイトがシャフトおよび/またはケージドアが開いた状態で移動される可能性があるというハイリスクな状態が発生する。
【0010】
一般に、半導体スイッチのショートの回避または検出のために、いわゆるフェイルセーフ機能と呼ばれる、複雑でコストのかかる解決策が提案されてきた。
【0011】
公開された欧州特許出願公開第1535876号明細書では、パワー半導体を有する電子デバイスに接続された駆動装置が開示されており、それでは、直列に接続されたドアスイッチを備える安全回路に接続された少なくとも1つのメイン接触器が駆動装置と電子デバイスの間に備えられている。直列に接続されたこれらのドアスイッチはドアが開く際に、スイッチによって順々に橋絡される。したがって、この公開された明細書では、駆動装置の電子デバイスでの半導体/パワー半導体の使用が実際に開示されているが、それは、安全回路内でもなく、ショートに対する半導体の傾向の回避のためのフェイルセーフソリューションでもなく、むしろ、少なくとも1つのメイン接触器の保持機能(雑音を回避する機能を果たす)ならびに時間要素および/またはカウンターによる後者のチェックである。
【0012】
本発明によると、本出願に従う安全回路の場合には、それぞれの電子半導体スイッチに対して個別にフェイルセーフソリューションは提供されていないが、いずれの場合にも存在する別の電気機械安全リレーが、起こりうるショートの回避または検出のために、電子半導体スイッチの1つに組み込まれている。この点で、電子半導体スイッチの1つでショートが発生した場合、本発明に従い、冗長性から(安全カテゴリSIL2)、まだ何も発生しないとき用に、ドア接点の橋絡のために二重形式で電子半導体スイッチが備えられることが本発明により意図されている。しかしながら、起こりうる過負荷のピークがより急速に発生して第2の電子半導体スイッチも故障する場合、安全回路を開くため、その目的用に提供された個々のフェイルセーフソリューションまたはその目的のために提供された追加の安全リレーではなく、いずれの場合にも存在し、この後者の安全機能内に異常が存在する場合に、別の安全機能の範囲内で安全回路を開く、少なくとも1つの電気機械安全リレーによる介入がある。あるいは、第1の半導体スイッチの故障の場合にも安全回路は開かれる。
【0013】
エレベータ装置の第1安全関連機能のこの少なくとも1つの別の電気機械安全リレーは、いわゆる低い要求の安全機能用、すなわち、切り替えプロセスにほとんどさらされない安全機能用、例えば、通常の動作以外の緊急状態の場合にのみ切り替えるものとして提供されることが好適である(前段の低頻度作動要求モードと高頻度作動要求モードの定義を参照)。
【0014】
本発明によると、安全リレーの別の形式は、例えば、いわゆるETSLリレー回路とすることができる。ここで、ETSLはEmergency Terminal Speed Limiting(終端階強制減速)を意味し、そのようにして速度依存緊急事態のシャフトエンド遅延制御の目的を果たす。そのようなETSLリレー回路は従来技術から知られている。このETSLリレー回路は、通常の動作に使用されない、いわゆる低い安全構成部品である。これは、非常にまれな場合にのみ、すなわち、エレベータケージが通常の範囲外に移動するような場合にのみ、機能するようになる。このETSLリレー回路は、電気機械式であり、すなわち、半導体ではなく、リレー接点と電気機械安全リレーを備え、本発明によると、元のシャフトエンド遅延制御機能に加えて、半導体スイッチのモニタリングに組み込まれている。本発明による、これらの半導体スイッチは、例えば、ドア接点の橋絡などの高い要求の安全機能に使用されるが、より一般的には、障害のない通常の動作の場合には閉じるが、特定の動作条件の場合には開き、そして安全回路全体が活動化するように橋絡されうる直列接続の接点用に言い表されている。
【0015】
言い換えれば、電気機械リレー回路、または少なくともその一部の要素は、本発明に従い、片方または両方の半導体スイッチがショートした場合に、安全回路を開く目的で使用される。
【0016】
本発明によると、半導体スイッチのモニタリングは、プロセッサで制御されるモニタリング回路によって行われる。モニタリングで半導体スイッチがショートしたことが明らかになる場合、1つのプロセッサまたは複数のプロセッサは、本発明に従い、好適には、例えば、ETSLリレー回路などの、いずれの場合にも存在する別の電気機械リレー回路によってエレベータ装置の安全回路を開くポジションになる。
【0017】
第1の解決策では、一方の少なくとも1つのプロセッサが半導体スイッチを制御する(例えば、ドア接点を橋絡するために)と同時に、半導体スイッチのモニタリングのポジションなる。他方、少なくとも1つのプロセッサは、本発明に従い、モニタリングにより検出されたショートの場合、その目的のために直列で再度接続されたリレー接点あるいは他の電気機械リレー回路の1つまたは複数の電気機械安全リレーで、同時に直接の制御介入を提供するポジションになる。言い換えると、本発明に従い、他方のリレー回路自体はもはや実行できる個々のプロセッサを有することなく、上述の少なくとも1つのプロセッサが半導体スイッチだけではなく、それのモニタリングも制御し、さらに電気機械リレー回路の元々の機能も制御することが好適である。
【0018】
結果的に、エレベータ装置のETSL機能を検出する電気機械リレー回路の例示的な場合、このことは、ETSL機能には、いずれかのプロセッサまたはいずれかの個々のプロセッサをもはや有していないことを意味する。半導体スイッチとそのモニタリング用の少なくとも1つのプロセッサがETSL機能も引き継ぐ。このことで必要なのは、単に適切な回線と両方の安全関連機能を実行することになるプロセッサとの対応する接続だけであり、これにより大幅なコスト優位がもたらされる。
【0019】
しかしながら、さらなる代替形態として、電気機械リレー回路の1つの制御プロセッサまたは複数の制御プロセッサをさらに活用して、半導体スイッチのショートが原因で安全回路を開くための半導体スイッチの1つの制御プロセッサまたは複数の制御プロセッサを電気機械リレー回路の1つの制御プロセッサまたは複数の制御プロセッサに移行することも可能である。
【0020】
その上、電気機械リレー回路の1つの制御プロセッサまたは複数の制御プロセッサをさらに活用して、安全回路を開くための半導体スイッチのプロセッサの制御コマンドを電気機械リレー回路の1つの制御プロセッサまたは複数の制御プロセッサに送るのではなく、半導体スイッチのプロセッサがリレー接点またはそれに接続された電気機械安全リレーで直接介入するようにすることも可能なはずである。
【0021】
上述のとおり、接点の直列接続の橋絡は、頻繁にスイッチを切り替える高い要求の機能となる場合があり、その例には、本発明に従い、半導体スイッチにより実行されるドア接点の橋絡がある。しかしながら、半導体スイッチのこの使用にもかかわらず、ドア接点の橋絡の故障(ショート)の場合に、安全回路を再度開き、リスクを伴う状況を回避するために、好適には1つまたは複数のETSL安全リレーが利用される点で、電気機械安全リレーと同じレベルの安全が達成される。
【0022】
少なくとも同じまたはより向上したレベルの安全を実現するために、本発明に従い、半導体スイッチによるドア接点の橋絡(ショートが原因でもはや機能しない)をバイパスするために、組み込みのそれら電気機械安全リレーのみを考慮に入れることが基本的に必要である。それらの半導体スイッチは、接続、設計、および安全レベル(いわゆるSILカテゴリ、ここで、SILはSafety Integrity Level(安全度水準)を意味する、前段を参照)に関して、機械動作によって橋絡できない安全機能のために提供されており、すなわち、電気機械安全リレーは、手動動作によって意図的にのみ橋絡されることができる、またさらに決して橋絡できないような基本的に重要である安全機能を少なくともカバーするように設計される必要がある。
【0023】
上述のとおり、本発明に従いドア接点を橋絡するための従来の2つの電気機械リレーが、例えば2つのMOSFETに置き換えられる。さらに本発明に従い、2つのMOSFETは、各チャネルで別々にMOSFETの入力と出力において電圧測定が行われるという点で、それぞれのプロセッサまたはマイクロプロセッサとモニタリング回路またはチェック回路によりそれぞれモニターされる。片方のMOSFETまたは両方のMOSFETが故障した場合(そのようなスイッチの場合には、通常ショートを意味する)、それぞれのプロセッサはこの状態を認識し、1つのETSLリレー接点または複数のETSLリレー接点を開く。したがって、さらなる利点は、両方のMOSFETが同時に故障する場合であっても、しかしこのようなやり方で、デバイスまたはエレベータ装置が常に安全な状態であることが可能であることである。
【0024】
さらに、本発明により、電気機械安全リレーの1つまたはその接点により半導体スイッチの1つでショートがバイパスされる場合に、情報を提供する表示手段も提供されている。
【0025】
MOSFETは通常、ドアが開いているとき常に閉じられている。結果的に、それぞれのプロセッサでは、安全回路の安全リレーのドロップアウトと、それに対応する安全回路のリレー接点が開くことを伴うことなく、MOSFETでの電圧ドロップをチェックするために、数秒の一定の間隔でMOSFETを一時的に開くという対策がなされる。このスイッチオフ期間は、本発明に従い、電圧ドロップの測定の目的でほんのわずかであり、安全回路のリレーがドロップアウトするような長さのものではない。
【0026】
電圧ドロップの測定によってではなく、アンペア数を、好適には誘導的かつ非接触的に測定することによって、今記述した確認操作を理解する専門家にとっては、これは開いたままである。
【0027】
したがって、本発明は、電気機械リレーの実証済みの安全性と、トランジスタの高いレベルの信頼性、特に、スイッチ切り替えサイクルの回数に関する信頼性を経済的に組み合わせたハイブリッドソリューションを提供するものである。
【0028】
したがって、本発明に従う橋絡接続では、好適には、例えば、ドア接点の橋絡などの頻繁にスイッチ切り替えを行う高い要求の安全機能用の半導体スイッチ、およびこれらの半導体スイッチ用で、好適には電気機械安全リレーを組み込んだプロセッサ制御のチェック回路を備えており、これは、半導体がショートして安全リレーが開く場合に、半導体スイッチをバイパスするための、別のめったにスイッチ切り替えを行わない低い要求の安全機能を通常、担っている。
【0029】
さらに、安全回路には、適用規格によるものではなく、現代のエレベータ装置に適切で、エレベータ装置の設置の分野の専門家が精通している通常の特徴およびスイッチ切り替え構成が含まれている。そのような特徴は、例えば、すべてのシャフトドア接点の直列配列、ケージドアの1つまたは複数の接点の同様の直列配列、リミットスイッチ(EEC−Emergency End Contact(緊急時最終接点))によるエレベータケージの移動のモニタリング、シャフトエンドのセンサ(ETSL)によるエレベータケージの移動速度のモニタリング、ブレーキ接点、および少なくとも1つの緊急時オフスイッチである。
【0030】
本発明による安全回路のさらなるまたは利点となる実施形態は、従属請求項の主題の形を取っている。
【0031】
本発明は、図面に基づき象徴的かつ例示的により詳細に説明される。図面は、連携的かつ一般的に説明される。同じ参照番号は同じ構成部品を意味し、添字の異なる参照番号は、機能的に相当または同様の構成部品を示す。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】例示的なエレベータ装置の概略図である。
【図1a】図1の安全回路の概略図である。
【図2】接点の直列接続を橋絡するための2つの半導体スイッチからなる本発明による構成、これらの2つの半導体スイッチのモニタリング回路、電気機械リレー回路および図1または図1aによる従来の安全回路におけるこの構成の本発明による組み込み、ならびにこうした結果の本発明による安全回路の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1は、例えば、例示されている2:1支持手段ガイダンスのエレベータ装置100を示す。エレベータケージ2は、エレベータシャフト1で移動可能に配置され、移動可能なカウンターウェイト4と、支持手段3によって接続されている。動作の際、支持手段3は駆動ユニット6の駆動プーリー5によって駆動され、これらは、例えば、機関室12のエレベータシャフト1の最上部に配置されている。エレベータケージ2およびカウンターウェイト4はシャフトの高さ全体に伸びているガイドレール7aまたは7bおよび7cによりガイドされている。
【0034】
エレベータケージ2は、運搬の高さhで、最上階に階のドア8を提供し、さらに、別の各階に階のドア9および10を提供し、最下階に階のドア11を提供する。エレベータシャフト1はシャフト側面壁15aおよび15b、シャフトシーリング13ならびにシャフトフロア14から形成されており、そこでは、カウンターウェイト4にはシャフトフロア緩衝装置19aならびにエレベータケージ2には2つのシャフトフロア緩衝装置19bおよび19cが配置されている。
【0035】
支持手段3は、固定締結点または支持手段固定点16aで、シャフトシーリング13と締結されており、シャフト側面壁15aに平行に、カウンターウェイト4の支持ローラー17へガイドされる。ここから、駆動プーリー5を介して、エレベータケージ2の下でループしている、第1偏向または支持ローラー18aおよび第2偏向または支持ローラー18bならびにシャフトシーリング13で第2の固定締結点または支持手段固定点16bに再度、戻る。
【0036】
安全回路200は、階8から階11のおのおので、それぞれシャフトドア接点20aから20dを備え、その接点はシャフトドア回路21で直列に配列されている。シャフトドア回路21は、PCB(Printed Circuit Board:プリント回路基板)22に接続されており、それは例えば、機関室12に配置されている。PCB22は、象徴的な用語としてのみ理解されるべき接続23により、駆動装置6または駆動ブレーキ24に接続されており、安全回路200から故障レポートが発生した場合には、駆動ユニット6の駆動または駆動プーリー5の回転が停止されるようにすることができる。
【0037】
接続23は象徴的な用語としてのみ理解されるべきで、その理由は、実際のところ、この接続は非常により複雑で、概して、エレベータ制御を含んでいるからである。さらにこれは、安全回路200のリレー40および接続点41aおよび41bを備えている。後者の間には、シャフトエンド遅延制御機能42が実現されており、それには通常、安全カテゴリSIL2を達成するために2つのチャネルがある。そして、第1ETSLチャネルおよび第2ETSLチャネルは安全回路200で直列に配列されている。2つのETSLチャネルはスイッチ31aおよび31bとして象徴的に例示されているが、スイッチ接点を含むスイッチ切り替えリレーである。
【0038】
シャフトドアにシャフトドア21を開くことを制御するためのシャフトドア回路21があるだけではなく、さらにエレベータケージ2には2つ概略的に表示されているケージのスライドドア27aおよび27bを開くことを制御するためのケージドア回路25がある。このケージドア回路25はケージドア接点26を備えている。ケージドア回路25からの信号は、エレベータケージ2のハンギングケーブル28によりPCB22に伝えられ、ここでは、シャフトドア接点20aから20dと直列で、安全回路200に含まれている。
【0039】
エレベータ装置100はさらに、直列接続43で配列されているシャフトドア接点20aから20dおよび同様に直列接続されたケージドア接点26のための橋絡接続29を備えている。橋絡接続29は、さらに2つの接続点41cと41dの間で並列に接続されたスイッチ切り替えリレーを備え、そのスイッチ接点はスイッチ30aおよび30bとして象徴的に例示されている。
【0040】
図1aでは、図1のエレベータ装置100の安全回路200の接続およびスイッチ切り替えがより明らかになるように別に例示されている。シャフトエンド遅延制御機能42およびドア接点橋絡接続29は互いに独立しており、安全回路200では単に、直列で一体化されている。
【0041】
図2では、一方で、図1および1aの接点20aから20dおよび26を橋絡するための本発明による橋絡接続29aが図1の安全回路200の接続点41cと41dの間でどのように実行され、他方では、電気機械リレー回路42aが図1の安全回路200の接続点41aと41bの間で本発明によりどのように配列されているかを例示している。さらに、橋絡接続29aと電気機械リレー回路42aが本発明によりどのように一緒に接続されているかを例示し、こうして、本発明による安全回路200および本発明によるエレベータ装置100がもたらされる。電気機械リレー回路42aは、エレベータ装置100の低い安全機能の動作のためのリレー回路に相当することが好適である。
【0042】
例えば、ドア接点の橋絡機能などの高い要求の安全機能を引き継ぐために、半導体スイッチまたはトランジスタ36aを伴うマイクロプロセッサ34cが第1回路300aに適切に接続されている。トランジスタ36aは、MOSFETトランジスタとして例示的に表示されているが、他のタイプのトランジスタも適切である。
【0043】
さらに、半導体スイッチ36aの入力38aと出力39aに接続されているモニタリング回路37aも表示されている。プロセッサ34cは、入力38aと出力39aでの電圧またはアンペア数の測定の周期サイクルを制御する。接続点38aは明らかに、半導体スイッチ36aの出力としても表されることができ、接続点39aも明らかに、半導体スイッチ36aの入力としても表されることができる。
【0044】
図1および図1aから明白なように、すべてのドア接点20aから20dおよび26が接続点41cおよび41dにより直列に接続されている橋絡接続29aは、冗長性またはSIL2の安全カテゴリの達成のために2つのチャネル構造からなっている。第2チャネルは、第1チャネルに類似して、回路300b、半導体スイッチ36b、および半導体スイッチ36bのためのモニタリング回路37bを備え、半導体スイッチ36bの入力38bと出力39bで接続され、マイクロプロセッサ34dにより制御される。マイクロプロセッサ34cおよび34dは双方向の信号交換のために相互に接続されている。2つを超えるチャネルを提供することも可能である。
【0045】
マイクロプロセッサ34cは、さらに、電気機械リレー35c、切り替え接点32c、および第1ETSLチャネルの抵抗33c、または可能なETSLプロセッサを省略して、電気機械リレー回路42aの残りの要素に接続されている。同様に、マイクロプロセッサ34dは、電気機械リレー35d、切り替え接点32d、および第2ETSLチャネルの抵抗33dに接続されている。これら2つのETSLチャネルはシャフトエンド遅延制御機能を保証し、こうして、SIL2安全カテゴリとなり、ここで、その目的に必須の遅延制御接続42は図1の安全回路200の接続点41aと41bの間に接続されている。
【0046】
本発明による目的のために使用されるシャフトエンド遅延制御接続42には、もはや個々のマイクロプロセッサがない。その理由は、遅延制御接続42の制御がマイクプロセッサ34cおよび34dによって、橋絡接続29aの制御およびモニタリング回路37aおよび37bの制御に加えて実行されるからである。
【0047】
さらに必要に応じて、橋絡接続29aの例示された2つのチャネルだけではなく、電気機械リレー回路42aの例示された2つのチャネルと遅延制御接続42も制御する単一のマイクロプロセッサを含む構成も可能である。
【0048】
図2では、エレベータ装置100aの直列に(シャフトドア接点20aから20dだけではなく、ケージドア接点26も)接続されたドア接点の並列に配列された2つのチャネル橋絡の例示的構成を概略的に示しており、または一般的に、第1安全関連機能、好適には低い要求の安全機能(例えば、シャフトエンド遅延制御ETSL)とさらなる安全関連機能、好適には高い要求の安全機能(例えば、ドア接点の橋絡)の本発明による可能な組み合わされた検出を概略的に示している。
【0049】
モニタリング回路37aおよび37bによる半導体スイッチ36aおよび36bのチェックで、半導体スイッチ36aおよび36bの1つまたは半導体スイッチ36aと36bの両方の不具合またはショートが発生した場合、マイクロプロセッサおよび/またはマイクロプロセッサ34cおよび/または34dは、本発明に従い、安全回路200を開くために、電気機械リレー回路42aの従来の電気機械安全リレー35cおよび35dを制御するポジションになる。このことはさらに、エレベータケージ2の意図された元のシャフトエンド遅延にも行われ、これは電気機械リレー回路42aが元々実行できるものである。この意図された元の安全機能は、安全回路200を開く機能の前提のために、適用が停止することはない。その理由は、好適には、マイクロプロセッサ34cおよび34dがエレベータ装置100のエレベータケージ2のシャフトエンド遅延制御接続だけではなく、半導体スイッチ36aおよび36bの橋絡接続29aのほか、半導体スイッチ36aおよび36bのモニタリングも制御するためである。
【0050】
半導体スイッチ36aおよび36bを装備する橋絡接続29aは、頻繁なスイッチ切り替えの高い要求機能のためだけではなく、例えば、Emergency End Contactを意味するEEC機能などのいずれかの低い要求機能、したがって、通常の移動経路を超えたリミットスイッチによるエレベータケージ2の移動制限のためにも考慮に入ってくる。開示されているように、電気機械リレー回路42aと組み合わされることができる本発明による橋絡接続29aは、さらに例えば、ブレーキ機能または緊急避難のためにも使用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータ装置(100)の障害のない動作の場合には閉じられる安全関連接点(20a〜20d、26)の少なくとも1つの直列回路(43)を含むエレベータ装置(100)の安全回路(200)であって、少なくとも1つの接点(20a〜20d、26)が開かれる特定の動作条件の場合にこの少なくとも1つの接点(20a〜20d、26)が半導体スイッチ(36a、36b)によって橋絡されることができ、半導体スイッチ(36a、36b)は少なくとも1つのプロセッサ(34c、34d)により制御され、ショートに関し、少なくとも1つのモニタリング回路(37a、37b)によりモニターされることができ、さらに橋絡されることが可能な直列接続(43)の接点(20a〜20d、26)と直列に接続されたリレー接点(31c、31d)を伴う少なくとも1つの電気機械リレー回路(42a)も含んでおり、リレー回路(42a)は少なくとも1つのプロセッサ(34c、34d)により制御可能で、橋絡可能な直列接続(43)は、半導体スイッチ(36a、36b)のショートの場合に、リレー接点(31c、31d)によって遮断されることができる安全回路(200)。
【請求項2】
少なくとも1つのプロセッサ(34c、34d)が、半導体スイッチ(36a、36b)およびリレー回路(42a)の制御およびモニタリングとは別に、リレー回路(42a)によって直列接続(43)を遮断するさらなる安全関連制御接続(42)の制御のためにも備えられることを特徴とする、請求項1に記載の安全回路(200)。
【請求項3】
半導体スイッチ(36a、36b)が酸化金属半導体電界効果トランジスタであることを特徴とする、請求項1から2のいずれか一項に記載の安全回路(200)。
【請求項4】
半導体スイッチ(36a、36b)の入力(38a、38b)と出力(39a、39b)の電圧がモニタリング回路(37a、37b)で測定可能であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の安全回路(200)。
【請求項5】
半導体スイッチ(36a、36b)の入力(38a、38b)と出力(39a、39b)のアンペア数がモニタリング回路(37a、37b)で測定可能であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の安全回路(200)。
【請求項6】
半導体スイッチ(36a、36b)のいずれかのショートをバイパスすることの表示がエレベータ装置(100)のリレー接点(31c、31d)のいずれかによって表示されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の安全回路(200)。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の安全回路(200)を少なくとも1つ含むエレベータ装置(100)。
【請求項8】
請求項7に記載のエレベータ装置(100)の半導体スイッチ(36a、36b)をモニタリングする方法であって、
a)半導体スイッチ(36a、36b)の入力(38a、38b)と出力(39a、39b)で電圧またはアンペア数を周期的に測定するステップと、
b)ステップa)での測定でショートが明らかな場合に、少なくとも1つのリレー接点(31c、31d)によって安全回路(200)の直列接続(43)を開くステップとを含む方法。
【請求項9】
エレベータ装置(100)の直列接続(43)の安全関連接点(20a〜20d、26)を橋絡するための半導体スイッチ(36a、36b)の使用であって、半導体スイッチ(36a、36b)のショートの場合に、橋絡可能な直列接続(43)がリレー接点(31c、31d)を含む電気機械リレー回路(42a)によって遮断可能である使用。
【請求項10】
リレー回路(42a)が、半導体スイッチ(36a、36b)のショートの場合とは別に、さらなる制御接続(42)のためにも使用可能で、エレベータ装置(1)の許容できない動作状態の場合に、橋絡可能な直列接続(43)が、リレー回路(42a)のリレー接点(31c、31d)によって遮断されることが可能であることを特徴とする、請求項9に記載の使用。

【図1】
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【図1a】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−508245(P2013−508245A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535748(P2012−535748)
【出願日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【国際出願番号】PCT/EP2010/065823
【国際公開番号】WO2011/054674
【国際公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(390040729)インベンテイオ・アクテイエンゲゼルシヤフト (166)
【氏名又は名称原語表記】INVENTIO AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】