説明

エレベータシステム

【課題】この発明は、群管理の運行効率低下を防ぐことができるエレベータシステムを提供することを目的とするものである。
【解決手段】B階(地下1階)〜4階を有する建物に、3機のエレベータ、即ちB階を除く階にかごを配車する#G号機1及び#H号機2と、及び特定階を含む階にかごを配車する#F号機3とが設けられている。2階〜4階の乗場には、第2の乗場釦装置5が設けられている。乗場釦装置5には一般用乗場釦6と、機能表示部12を有する専用乗場釦7とが設けられている。専用乗場釦7は、特定階を含む階にかごを配車する#F号機3の呼びを登録するための釦であり、機能表示部12には、特定階の階名に関する情報が表示されている。これによって、専用乗場釦7の誤操作を防ぐことで、#F号機3の無駄な呼び登録を減らし、群管理の運行効率の低下を防ぐ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、特定階を除く階にかごを配車する第1のエレベータと、特定階を含む階にかごを配車する第2のエレベータとを有するエレベータシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来装置は、段違い階に向かうエレベータを有するエレベータ装置において、段違い階に向かうエレベータの呼び登録を行うための専用呼び登録手段が乗場に設けられていた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平4−80184号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来のエレベータシステムでは、専用呼び登録手段と通常の呼び登録手段との違いが分かりづらかった。そのため、段違い階へ行く必要がないエレベータ利用者によって専用呼び登録手段が操作され、段違い階へと向かうエレベータの呼び登録が行われ、群管理の運行効率が低下し、エレベータ利用者の待ち時間も長くなってしまっていた。
【0005】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、群管理の運行効率低下を防ぐことができるエレベータシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るエレベータシステムは、特定階を除く階にかごを配車する第1のエレベータ、特定階を含む階にかごを配車する第2のエレベータ、第1及び第2のエレベータに対する乗場からの呼び登録を制御する乗場呼び登録制御部、乗場に設けられた一般用乗場釦、及び一般用乗場釦とは別に設けられた専用乗場釦を備え、乗場呼び登録制御部は、一般用乗場釦が操作されると、第1及び第2のエレベータのいずれか一方の呼びを選択的に登録し、専用乗場釦が操作されると、第2のエレベータの呼びを登録し、専用乗場釦には、特定階の階名に関する情報が表示されている。
【発明の効果】
【0007】
この発明のエレベータシステムによれば、専用乗場釦に専用乗場釦の機能に関する情報が直接表示されるので、エレベータ利用者が間違って操作する可能性を低減させることができ、これによって、段違い階へと向かうエレベータの不必要な呼び登録がなされる可能性が低減し、群管理の運行効率の低下を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、この発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1によるエレベータシステムを示す概略構成図である。
この例では、B階(地下1階)〜4階を有する建物に、3機のエレベータ、即ち第1のエレベータである#G号機1及び#H号機2と、第2のエレベータである#F号機3とが設けられている。#G号機1及び#H号機2は、特定階(不停止階)であるB階を除く階にかごを配車する。また、#F号機3は、B階を含む階にかごを配車する。
【0009】
B階〜4階の乗場には、第1及び第2の乗場釦装置4,5が設けられている。第1の乗場釦装置4には、1個又は複数の一般用乗場釦6が設けられている。第2の乗場釦装置5には、1個の一般用乗場釦6と1個の専用乗場釦7とが設けられている。
【0010】
一般用乗場釦6は、エレベータ利用者が、UP方向(上方階)に向かうための釦と、DOWN方向(下方階)に向かうための釦とを有している。一般用乗場釦6とは、一般用乗場呼び信号6aを乗場呼び登録制御部10に対して入力するためのものである。
【0011】
専用乗場釦7とは、専用乗場呼び信号7aを乗場呼び登録制御部10に対して入力するためのものである。なお、この実施の形態1においては、第2の乗場釦装置5には、エレベータ利用者がDOWN方向に向かうための釦だけが設けられている。
【0012】
#G号機1、#H号機2及び#F号機3のかごの運行は、対応する運行制御部8a〜8cにより制御される。運行制御部8a〜8cは、それぞれ各号機制御盤9a〜9c内に設けられている。#G号機1、#H号機2及び#F号機3に対する乗場からの呼び登録は、乗場呼び登録制御部10により制御される。乗場呼び登録制御部10は、運行制御部8a〜8cを群管理するための群管理盤11内に設けられている。
【0013】
乗場呼び登録制御部10は、一般用乗場呼び信号6a、又は専用乗場呼び信号7aを受けることによって、配車割り当て信号10aを運行制御部8a〜8cのいずれかに対して送信する。これによって、対応する#G号機1、#H号機2及び#F号機3のいずれかの呼びが登録される。
【0014】
図2は、図1の乗場呼び登録制御部10が行う呼び登録の制御を示す呼び登録割り当て説明図である。図において、乗場呼び登録制御部10の呼び登録の制御は、乗場呼び方向と、呼びが発生した階床とに応じて、場合分けがされる。
【0015】
まず、エレベータ利用者がUP方向に向かうときには、一般用乗場呼び信号6aが、B階で発生した場合と、1〜3階で発生した場合とに分かれる。なお、4階は最上階なのでUP方向の呼びは発生しない。
【0016】
特定階であるB階には、#F号機3しか配車されない。従って、一般用乗場呼び信号6aがB階で発生した場合には、#F号機3の呼びが登録される。
【0017】
また、一般用乗場呼び信号6aが1〜3階で発生した場合には、#G号機1、#H号機2、及び#F号機3のいずれか1つのエレベータの呼びが、それぞれの運行状況に応じて選択的に登録される。
【0018】
一方、エレベータ利用者がDOWN方向に向かうときには、一般用乗場呼び信号6aが1階又は2〜4階で発生した場合、並びに専用乗場呼び信号7aが2〜4階で発生した場合に分かれる。なお、B階は最下階なのでDOWN方向の呼びは発生しない。
【0019】
B階には、#F号機3しか配車されない。従って、一般用乗場呼び信号6aが1階で発生した場合には、#F号機3の呼びが登録される。
【0020】
また、一般用乗場呼び信号6aが2〜4階で発生した場合には、#G号機1、#H号機2、及び#F号機3のいずれか1つのエレベータの呼びが、それぞれの運行状況に応じて選択的に登録される。
【0021】
さらに、専用乗場呼び信号7aが2〜4階で発生した場合には、#F号機3の呼びが登録される。
【0022】
図3は、図1の第2の乗場釦装置5の各状態を示す説明図である。専用乗場釦7の操作が、乗場呼び登録制御部10に対して有効の場合又は無効の場合がある。その各場合を、第2の乗場釦装置5の状態とともに説明する。
【0023】
図3の(a)は、第2の乗場釦装置5が待機状態のときを示している。図において、専用乗場釦7は、機能表示部12及び状態表示部13を有している。機能表示部12には、特定階の階名に関する情報が表示されている。ここで言う特定階とは、#F号機3のみがサービスを行う階(B階、段違い階、不停止階)である。即ち、機能表示部12には、例えば、”B階行き専用釦”と表示されている。状態表示部13は、点灯又は消灯することで、専用乗場釦7の操作が有効であるかどうかをエレベータ利用者に対して知らせる。
【0024】
状態表示部13が図3の(a)のとき、専用乗場釦7を操作しても無効であり、点灯もしない。このとき、エレベータ利用者が一般用乗場釦6を操作すると、#G号機1、#H号機2、及び#F号機3のいずれかのエレベータの呼び登録がなされる。この後、一般用乗場釦6の操作によって、#G号機1又は#H号機2の呼び登録がされた場合と、#F号機3の呼び登録がされた場合とで、第2の乗場釦装置5の状態が変わる。
【0025】
図3の(b)は、第2の乗場釦装置5が待機状態のときに一般用乗場釦6が操作された結果、#F号機3の呼び登録がされたときの状態を示している。図において、一般用乗場釦6が操作された結果、一般用乗場釦6全体が点灯している。一方、状態表示部13は、点灯していない。即ち、専用乗場釦7の操作が無効であることを意味している。これは、B階に向かうことができる#F号機3の呼び登録されたことで、敢えて専用乗場釦7の操作を行う必要がないからである。
【0026】
図3の(c)は、第2の乗場釦装置5が待機状態のときに一般用乗場釦6が操作された結果、#G号機1又は#H号機2の呼び登録がされたときの状態を示している。図において、一般用乗場釦6が操作された結果、一般用乗場釦6全体が点灯している。また、状態表示部13も、点灯している。即ち、専用乗場釦7の操作が有効であることを意味しており、専用乗場釦7の操作は、一般用乗場釦6が操作されたことで#G号機1又は#H号機2の呼びが登録されたときから有効になる。
【0027】
図3の(d)は、(c)の状態から、さらに専用乗場釦7の操作がされたときの状態を示している。図において、専用乗場釦7が操作された結果、専用乗場釦7全体が点灯している。即ち、#F号機3の呼び登録がされたことを示している。
【0028】
次に、動作について説明する。エレベータ利用者が2〜4階のいずれかからB階へと移動しようとし、一般用乗場釦6を操作すると、一般用乗場呼び信号6aが一般用乗場釦6から乗場呼び登録制御部10に対して送信され、乗場呼び登録制御部10によって#G号機1、#H号機2、#F号機3のいずれかの呼びが選択的に登録される。
【0029】
ここで、#F号機3の呼び登録がされると、第2の乗場釦装置5は図3の(b)の状態になり、エレベータ利用者は配車される#F号機3のかごに乗ってそのままB階に向かうことができる。
【0030】
これに対して、#G号機1又は#H号機2の呼び登録がされると、第2の乗場釦装置5は図3の(c)の状態になる。状態表示部13が図3の(c)のように点灯すると、B階に停止するかごが配車されないことが示されている。これに応じて、エレベータ利用者が専用乗場釦7を操作すると、第2の乗場釦装置5は図3の(d)の状態になり、#F号機3の呼び登録が行われ、エレベータ利用者はB階に向かうことができる。
【0031】
このようなエレベータシステムでは、機能表示部12によって、専用乗場釦7に特定階の階名に関する情報が直接表示されるので、エレベータ利用者が間違って専用乗場釦7を操作する可能性を低減させることができる。これによって、段違い階へと向かうエレベータの不必要な呼び登録がなされる可能性が低減し、群管理の運行効率の低下を防ぐことができ、エレベータ利用者の待ち時間を低減することができる。
【0032】
また、乗場呼び登録制御部10は、専用乗場釦7の操作が一般用乗場釦6の操作によって#G号機1、又は#H号機2の呼び登録がされたときから有効とするので、段違い階へと向かう#F号機3の不必要な呼び登録が行われることを防ぎ、群管理の運行効率の低下を防ぐことができる。
【0033】
さらに、乗場呼び登録制御部10は、専用乗場釦7の操作が、一般用乗場釦6の操作によって#F号機3の呼び登録がされたときには無効なままとしている。即ち、操作が必要なときのみ専用乗場釦7を操作すればよいので、より効率的なエレベータサービスを提供することができる。
【0034】
さらにまた、状態表示部13によって、専用乗場釦7の操作が有効であるかどうかが表示されるので、専用乗場釦7の操作が必要かどうかを知らせることができる。
【0035】
実施の形態2.
図4は、この発明の実施の形態2によるエレベータシステムを示す概略構成図である。図において、乗場呼び登録制御部14は、実施の形態1における乗場呼び登録制御部10の機能に加え、運行制御部8b,8cに対して配車キャンセル信号10bを送信する機能を持つ。運行制御部8b,8cが配車キャンセル信号10bを受けることで、#G号機1、及び#H号機2の呼び登録はキャンセルされる。なお、配車キャンセル信号10bは、乗場呼び登録制御部14が専用乗場釦7から専用乗場呼び信号7aを受けたときに発せられる。
【0036】
即ち、専用乗場釦7が操作された結果、#F号機3の呼び登録がされたときに、#G号機1又は#H号機2の呼び登録が無効とされる。これによって、2〜4階には、#F号機3のかごのみが配車される。その他の構成については実施の形態1と同様である。
【0037】
このようなエレベータシステムでは、専用乗場釦7の操作により#F号機3の呼び登録がされたとき、#G号機1又は#H号機2の呼び登録が無効とされるので、実施の形態1の効果に加え、#G号機1、#H号機2、及び#F号機3のかごが同じ階床(2〜4階)に配車されることを防ぎ、群管理の運行効率の低下を防ぐことができる。
【0038】
なお、実施の形態1,2において、第2の乗場釦装置5には一般用乗場釦6及び専用乗場釦7が設けられていた。しかし、専用乗場釦7は一般用乗場釦6とは別に設けられていればよく、乗場に一般用乗場釦6を有する第1の乗場釦装置4が設けられていれば、第2の乗場釦装置5には専用乗場釦7だけが設けられていてもよい。
【0039】
また、実施の形態1,2において、専用乗場釦7の操作は、一般用乗場釦6が操作された結果、#G号機1又は#H号機2の呼び登録がなされたときから有効になっていた。しかし、専用乗場釦の操作は乗場呼び登録制御部に対して常に有効であってもよい。即ち、一般用乗場釦の操作が行われるかどうかに関わらず、専用乗場釦を操作することで、第2のエレベータの呼びが登録されてもよい。
【0040】
さらに、実施の形態1,2において、特定階は最下階のB階であった。しかし、特定階は任意の階でよく、例えば2階(中間階)又は4階(最上階)でもよい。
【0041】
さらにまた、実施の形態1,2において、特定階はB階の1つであった。しかし、特定階は複数でもよく、例えばB階及び2階を特定階としてもよい。このとき、第1のエレベータは少なくとも1つの特定階を除く階にかごを配車するエレベータであってもよい。即ち、例えば第1のエレベータは、B階及び2階の少なくともいずれか一方の階にはかごを配車しなくてもよい。
【0042】
また、実施の形態1,2において、第1のエレベータは2機(#G号機1及び#H号機2)であり、第2のエレベータは1機(#F号機3)であった。しかし、第1及び第2のエレベータはこれらの機数に限られることはなく、又第1及び第2のエレベータの割合も任意である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】この発明の実施の形態1によるエレベータシステムを示す概略構成図である。
【図2】図1の乗場呼び登録制御部が行う呼び登録の制御を示す呼び登録制御割り当て説明図である。
【図3】図1の第2の乗場釦装置の各状態を示す説明図である。
【図4】この発明の実施の形態2によるエレベータシステムを示す概略構成図を示す。
【符号の説明】
【0044】
1 #G号機(第1のエレベータ)、2 #H号機(第1のエレベータ)、3 #F号機(第2のエレベータ)、6 一般用乗場釦、7 専用乗場釦、10,14 乗場呼び登録制御部、10a 配車割り当て信号、10b 配車キャンセル信号、12 機能表示部、13 状態表示部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定階を除く階にかごを配車する第1のエレベータ、
上記特定階を含む階にかごを配車する第2のエレベータ、
上記第1及び第2のエレベータに対する乗場からの呼び登録を制御する乗場呼び登録制御部、
上記乗場に設けられた一般用乗場釦、及び
上記一般用乗場釦とは別に上記乗場に設けられた専用乗場釦
を備え、
上記乗場呼び登録制御部は、上記一般用乗場釦が操作されると、上記第1及び第2のエレベータのいずれか一方の呼びを選択的に登録し、上記専用乗場釦が操作されると、上記第2のエレベータの呼びを登録し、
上記専用乗場釦には、上記特定階の階名に関する情報が表示されていることを特徴とするエレベータシステム。
【請求項2】
上記乗場呼び登録制御部は、上記一般用乗場釦が操作されたことで上記第1のエレベータの呼びが登録されたときから、上記専用乗場釦の操作を有効とすることを特徴とする請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項3】
上記乗場呼び登録制御部は、上記専用乗場釦の操作により第2のエレベータの呼びが登録されたときに、上記第1のエレベータの呼びの登録を無効とし、上記第2のエレベータの呼びを登録することを特徴とする請求項2に記載のエレベータシステム。
【請求項4】
上記専用乗場釦は、上記専用乗場釦の操作が有効であるかどうかをエレベータ利用者に対して知らせる状態表示部
を有することを特徴とする請求項2あるいは3に記載のエレベータシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−69743(P2006−69743A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−255911(P2004−255911)
【出願日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】