説明

エレベーターのインターホン点検システム

【課題】点検作業者の作業時間を増加させることなく、点検間隔を短縮することができるエレベーダーのインターホン点検システムを提供する。
【解決手段】インターホン点検を実施するにあたり、監視センターおよびエレベーターかご内に人を配置することなく自動的にインターホン点検を実施することを目的とし、エレベーターに設置された遠隔監視装置1に音声生成機能を有する装置2を備えることで、点検に使用する音声を自動で生成し、また、監視センター5から再生される音声の波形を分析する機能を備えることで、無人でインターホンの点検が実施可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベーターに備えられて外部との通話機能を提供するインターホンの点検システムに関する。
【背景技術】
【0002】
エレベーターには、故障によりエレベーターのかご内部に閉じ込められたことを想定し、外部との連絡手段を提供するためにインターホンが設置されている。このインターホンが正常に機能できていることを確認するために、エレベーターかご内から通話を開始する点検作業者と、通話の受信先、例えば監視センターに待機する点検作業者との間で実際に会話が行われることで、機能の確認が行われている。この場合、最低でも点検作業者が2人以上必要となるために、監視センター側の受信設備に、音声の録音、再生装置を設け、かご内の点検作業者があらかじめ設定された手順に従い音声通話を開始した場合に、かご内の点検作業者の音声を監視センター側の受信装置で録音し、一定時間経過後、録音された音声をかご内に向け再生し、かご内の点検作業者は、自分の録音された声が正常に聞き取れることを確認し、インターホンの通話品質の確認を行う技術が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−153474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来技術では、監視センター側に受信者を配置する必要がなくなるが、依然としてかご内での音声点検作業が発生する。また、エレベーターの点検が数ヶ月に1度行われることに依存し、インターホンの点検間隔も数ヶ月に1度行われることとなり、例えば、点検直後に回線、またはインターホンの故障が発生した場合、次の点検まで故障を感知できない可能性がある。また、点検間隔を短くして頻繁に点検を行えば、点検作業者の作業時間が増加する。
【0005】
本発明は、上記のような問題点を考慮してなされたものであり、点検作業者の作業時間を増加させることなく、点検間隔を短縮することができるエレベーターのインターホン点検システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明においては、上記目的を達成するために、インターホン点検を実施するにあたり、監視センターおよびエレベーターかご内に人を配置することなく自動的にインターホン点検を実施するものであり、エレベーターに設置された監視装置に音声生成機能を備えることで、点検に使用する音声を自動で生成し、また、監視センターから再生される音声の波形を分析する機能を備えることで、無人でインターホンの点検を可能ならしめる。
【0007】
本発明の一態様として、エレベーターの稼働状況を監視する監視装置と、前記監視装置と通信可能に接続される監視センターとを備え、前記エレベーターのかご内において、外部と通話するために設けられるインターホンの機能を点検するエレベーターのインターホン点検システムにおいて、前記かご内において音声を発生させる音声生成装置を備え、前記監視装置は、前記音声生成装置に指令信号を与えて音声を発生させ、前記インターホンによって収集された音声を前記監視センターへ送信し、前記監視センターは、前記監視装置から送信された前記音声を録音し、録音された前記音声情報を再生して前記監視装置へ送信し、さらに、前記監視装置は、前記監視センターから送信された前記音声と、予め記憶した基準音声とに基づいて、前記インターホンの機能における異常を点検する手段を備える。
【0008】
本一態様によれば、監視装置が、音声生成装置を動作させて音声を発生させ、インターホンで収集された音声を監視センターに送信し、さらに、監視センターで録音および再生された音声と基準音声とによりインターホンの機能における異常を点検する手段を備えるので、点検作業者の作業によらず自動的にインターホンを点検することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、人手によらずインターホンの正常性あるいは異常の有無を確認するこ
とができ、点検の間隔を短くすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の−実施形態を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態に係わるエレベーターインターホン点検システムについて図面を参照して説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態であるエレベーターのインターホン点検システムを示すブロック図である。
【0013】
図1において、1はエレベーターの稼動状態を監視する監視装置であり、図示されない通信回線を介して、エレベーター3の設置場所から地理的に離れた場所に設置される監視センター5と通信可能に接続される。監視装置1は、かご内に設けられた非常用の呼び釦8が押されると、インターホン4を監視センター5に接続する。これにより、かご内の乗客は、かごの外部、本実施形態では監視センター5のオペレーターと通話することができる。
【0014】
また、図1において、2は監視装置1に接続される音声生成装置であり、例えば、あらかじめ点検用の音声として録音または作成された音声データを、例えば音声ファイル形式でデジタル化された状態で持ち、再生することが可能である。監視装置1はあらかじめ設定されている点検開始時刻になるとエレベーター3に乗客が乗っていないこととエレベーターホールで待っている乗客がいないことを、例えば、ホールまたはかご呼び釦の状態などで確認し、利用者がいないとき、例えばエレベーターの利用者が少ない夜間などに自動的に点検を開始する。
【0015】
自動で開始する点検では、監視装置1は、エレベーターかご内に設置されたインターホン4を監視センター5の受信装置6に対してインターホンの点検モードとして接続を行い、音声生成装置2を使用して再生用の音声をエレベーター3のかご内に取り付けられた各階案内用の音声スピーカー7から再生する。音声スピーカー7から再生された音声は、かご内のインターホン4を通じて、監視装置1から音声情報として監視センター5の受信装置6に送信され、受信装置6では、監視装置1から送信された音声を保存し、保存された音声を一定時間後に再生し監視装置1へ送信する。監視装置1は、監視センター5により再生され送信された音声を受信すると、自装置に搭載された音声解析モジュールを動作させ、受信した音声をデジタル化し、事前に点検用として予め記憶していた基準音声の波形データと比較する。
【0016】
波形の比較方法としては、例えば送信前に比べ受信後の波形で波のカーブが緩やかになりすぎていないことや、波形の振幅の大きさがあらかじめ決められた基準を満たしていることを判断基準とする方法や、または、初回の点検時に点検者が音声生成装置2によって監視センター5に送信され、受信装置6によって再生された音声が正常に聞き取れることを確認したときの波形を保存しておき、この事前のテスト波形と自動点検時の波形を比較することで異常を検出することができる。波形データの比較方法としては、例えば音声のサンプリングレートを固定し、音声の開始位置を一致させたのち音声送信前と受信後の波形を重ね合わせることで、ノイズや減衰等による情報の損失を測ることが可能となる。この場合、受信後の波形を増幅させた場合に送信前の波形と大きく形が崩れている場合、音声にノイズが現れた、または、減衰により情報が失われたと判断し、インターホンでは正常に通話できないことを検出できる。
【0017】
また、異常を検出した場合は、即時、監視センターに対してインターホン異常を通報する。さらに、複数回の点検を重ねることで、波形の形状または振幅のレベル低下が連続的に検出できた場合は、音声品質の劣化として故障発生前にセンターに通報することを可能とする。
【符号の説明】
【0018】
1 監視装置
2 音声生成装置
3 エレベーター
4 インターホン
5 監視センター
6 受信装置
7 音声スピーカー
8 呼び釦

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベーターの稼働状況を監視する監視装置と、前記監視装置と通信可能に接続される監視センターとを備え、前記エレベーターのかご内において、外部と通話するために設けられるインターホンの機能を点検するエレベーターのインターホン点検システムにおいて、
前記かご内において音声を発生させる音声生成装置を備え、
前記監視装置は、前記音声生成装置に指令信号を与えて音声を発生させ、前記インターホンによって収集された音声を前記監視センターへ送信し、
前記監視センターは、前記監視装置から送信された前記音声を録音し、録音された前記音声情報を再生して前記監視装置へ送信し、
さらに、前記監視装置は、前記監視センターから送信された前記音声と、予め記憶した基準音声とに基づいて、前記インターホンの機能における異常を点検する手段を備えることを特徴とするエレベーターのインターホン点検システム。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2012−218884(P2012−218884A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86411(P2011−86411)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(000232955)株式会社日立ビルシステム (895)
【Fターム(参考)】