説明

エレベーターの制御装置

【課題】 二つのインバータを用いることなく、インバータが故障しても、回生可能な変換器を用いて簡易に救出可能なエレベーターの制御装置を得ること。
【解決手段】 モータ5とインバータ50とを開閉する通常走行接点52と、モータ5と変換器30の入力側に接続されると共に、開閉する救出走行接点54と、平滑コンデンサ32にダイオード61を介して接続された蓄電池63と、インバータ50に流れ込む電流を検出すると共に、電流検出信号を発生する電流検出器34と、電流検出信号が予め定められた基準電流信号よりも大きいか否かを判定すると共に、大きいと異常信号を発生する過電流判定部40と、異常信号の発生に基づいてインバータ50を停止し、電源接点23、通常走行接点52を開放すると共に、第1及び第2救出走行接点54a,54bを閉成して変換器30を回生運転するエレベーター制御部19とを備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベーターの制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のエレベーターの制御装置は下記特許文献1に記載のように、交流電源より供給される交流を直流に変換するコンバータ及びこのコンバータより出力される直流を交流に変換してエレベーターのかごを駆動する巻上用電動機に供給する第1インバータを前記かご、ホール及び昇降路からの信号に基いて発生する速度基準に応じた制御指令を出力する速度制御回路を備えた運転制御装置と、前記交流電源に接続されたバッテリー充電器により充電されるバッテリーから供給される直流を交流に変換する第2インバータ及びこの第2インバータを制御するインバータ制御装置を有し、前記運転制御装置の故障時に前記第2インバータの出力により前記巻上用電動機を駆動して前記かごを救出運転する救出運転制御装置とを備え、前記運転制御装置に故障が発生すると前記巻上用電動機への電力供給系を前記救出運転制御装置側に切換えると共に、救出運転信号を出力する救出運転制御回路を前記運転制御装置に設け、この救出運転制御回路より救出運転信号を速度制御回路に入力し、この速度制御回路より前記救出運転制御装置のインバータ制御装置に制御指令を与えて第2インバータを制御するものである。
【0003】
かかるエレベーターの制御装置によれば、運転制御装置の故障時には救出運転制御回路に故障信号を与え、この救出運転制御回路より速度制御回路に救出運転指令信号を入力することにより、救出運転制御装置のインバータ制御装置に低速運転の制御信号が与えられるので、安全且つ高精度にエレベーターを救出運転することができる。
【特許文献1】特開平9−240950号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記エレベーターの制御装置は、正常時に用いる第1インバータと、救出運転の際に用いる第2インバータとを備えているので、二つのインバータを備えなければならず設備が大型化するという課題があった。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、二つのインバータを用いることなく、インバータが故障しても、回生可能なコンバータを用いて簡易に救出可能なエレベーターの制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明に係るエレベーターの制御装置は、交流電源から供給される交流を直流に変換する順変換機能を有すると共に、回生電力を前記交流電源に返還する逆変換機能を有する変換手段と、前記交流電源と前記変換手段とを開閉する電源開閉手段と、前記変換された直流を平滑する平滑コンデンサと、前記平滑された直流を任意の周波数の交流に変換してかごを駆動するモータを制御するインバータとを備えたエレベーターの制御装置において、前記モータと前記インバータとを開閉する第1開閉手段と、前記モータと前記変換手段とを開閉する第2開閉手段と、前記平滑コンデンサを、前記第2開閉手段を介して充電する蓄電池と、前記インバータに流れ込む電流を検出すると共に、検出電流信号を発生する電流検出手段と、前記検出電流信号が予め定められた基準電流信号よりも大きいか否かを判定すると共に、大きいと異常信号を発生する過電流判定手段と、前記異常信号の発生に基づいて前記インバータを停止し、前記電源開閉手段、前記第1開閉手段を開放すると共に、前記第2開閉手段を閉成して前記変換手段を逆変換機能として動作させる制御手段と、を備えたことを特徴とするものである。
【0007】
第2の発明に係るエレベーターの制御装置は、かごが戸開閉不可能な区間を検出すると共に、戸開不可能な区間で開閉不可信号を発生する位置検出手段を備え、制御手段は、開閉不可信号の発生に基づいて変換手段を逆変換運転する、ことが好ましい。これにより、戸開不可能な区間にかごが停止した場合に限り、かごをドアゾーンまで走行できる。よって、かご内の乗員の救出が効率的である。
【0008】
第3の発明に係るエレベーターの制御装置は、かごが戸開閉可能な区間を検出すると共に、戸開可能な区間で開閉可信号を発生する位置検出手段を備え、制御手段は、開閉可能信号の発生に基づいて変換手段の逆変換を停止する、ことが好ましい。これにより、戸開可能な最寄階にかごが移動すると、変換手段を停止する。よって、かご内の乗員を速やかに救出できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、二つのインバータを用いることなく、インバータが故障しても、蓄電池を電源として、逆変換可能な変換手段を用いて簡易にかごを走行させることにより救出可能であるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
実施の形態1.
本発明の一実施の形態を図1及び図2によって説明する。図1は本発明の一実施の形態を示すエレベーターの制御装置の全体図、図2は図1に示すインバータ部の詳細図である。
図1おいて、エレベーターは、モータ5を駆動して巻上機のシーブ7を介してロープ9により釣合錘13、かご11を、昇降路内で上下動するように形成されている。
かご11には、位置検出手段としての位置検出器15が取付けられており、昇降路内には、検出板17が取付けられており、位置検出器15は検出板17を検出することによりかご3のドアが開閉可能な区間(ドアゾーン)では開閉可能信号を発生すると共に、開閉不可能な区間では、開閉不可信号を発生するように形成されている。
【0011】
エレベーターの制御装置は、三相交流電源eを直流電圧に順変換(コンバータ)すると共に、回生電力を三相交流電源eに変換するために逆変換(インバータ)として機能する変換手段として変換器30と、変換器30に駆動指令を与えると共に、エレベーター制御部19の出力に接続された第1指令部35とを有している。変換器30の入力には、リアクトル21と、電磁接触器の常開接点である電源開閉手段としての電源接点23とを介して三相交流電源eに接続されている。変換器30の出力には、脈動した直流電圧を平滑させる平滑コンデンサ32と、インバータ50の入力とが接続されており、インバータ50に駆動指令を与えて制御する第2指令部43を有している。第2指令部43の入力は、エレベーター制御部19の出力に接続されている。
【0012】
また、インバータ50の出力とモータ5の入力との間には、通常運転時に閉成すると共に、救出運転時に開放する第1開閉手段としての常開接点から成る通常走行接点52を有している。モータ5の入力と変換器30の入力(直流電圧側)には、救出運転の際に閉成する第2回閉手段としての常開接点から成る第1救出走行接点54aを有している。変換器30は、回生機能を有するため、回生動作させると、変換器30の入力がインバータの出力として機能する。
変換器30の出力とインバータ50との入力との間に流れる電流を検出して検出電流値(検出電流信号)を発生する電流検出手段としての電流検出器34と、予め定められた基準電流値(基準電流信号)と該検出電流値とを比較して、検出電流値が設定過電流値を超えると、異常信号を発生する過電流判定手段としての過電流判定部40とを備え、過電流判定部40の出力が第1及び第2指令部35,43に入力されている。
【0013】
平滑コンデンサ32の両端には、ダイオード61と蓄電池63と第2救出走行接点54bとが直列接続されており、ダイオード61の陽極側が平滑コンデンサ32のプラス側に接続されている。なお、第2救出走行接点54bは、第1救出走行接点54aと同期して開閉するように形成されている。
電源接点23の両端には、常開接点である充電接点25に直列に接続された抵抗27との両端が接続されている。充電接点25は、平滑コンデンサ32への突入電流を抵抗27を介して抑制しながら平滑コンデンサ32を初期充電するために、電源接点23が閉成する前に閉成すると共に、該閉成から所定時間後に開放するように形成されている。
【0014】
インバータ50は、図2に示すようにトランジスタとダイオードの並列回路からなる上側半導体スイッチ52a,52b,52cとを有し、同様に、トランジスタとダイオードの並列回路からなる下側半導体スイッチ54a,54b,54cとを有し、上側半導体スイッチ52a,52b,52cと、下側半導体スイッチ54a,54b,54cとがそれぞれ直列に接続されている。
【0015】
エレベーター制御部19は、位置検出器15の出力に接続されると共に、かご11の呼びが登録されたことによりかご11の走行指令などを発生するように形成され、異常信号の発生によりインバータ50、変換器30を停止した後、通常走行接点52、電源接点23を開放してから、救出走行接点54を閉成するように形成されている。
【0016】
上記のように構成されたエレベーターの制御装置の動作を図1から図3を参照して説明する。図3は図1におけるエレベーターの制御装置の動作を示すフローチャートである。
いま、通常常開接点52が閉成していて、第1及び第2救出常開接点54a,54bが開放している状態において、エレベーター制御部19からかご11の走行指令が生じると、第1指令部35により変換器30を動作すると共に、充電接点25を閉成して抵抗27、変換器30を介して平滑コンデンサ32を充電する。充電接点25の閉成から所定時間後に、電源接点23が閉成する。
そして、第2指令部43からインバータ50の動作指令が発生してインバータ50から発生した交流電圧をモータ5に印加し、モータ5を回転して巻上機のシーブ7を回転してかご11を上昇又は下降している(ステップS101)。
【0017】
図2に示すインバータ50の下側半導体スイッチ54aがオン故障し、インバータ50に過電流が流れ込むと、過電流判定部40は、電流検出器34から検出した検出電流値と基準電流値とを比較して検出電流値が基準電流値を越えると、異常信号を発生してエレベーター制御部19に入力する(ステップS103)。異常信号の発生によりエレベーター制御部19は第2指令部43を介してインバータ50を停止し、第1指令部35を介して変換器30を停止した後(ステップS105)、通常走行接点52、電源接点23を開放する(ステップS107)。
【0018】
エレベーター制御部19は、位置検出器15から発生した開閉可能信号、開閉不可信号によりかご11がドアゾーン内か否かを判断し(ステップS109)、ドアゾーン外、つまり開閉不可信号が発生していると、第1及び第2救出走行接点54a,54bを閉成する(ステップS111)。エレベーター制御部19は、第1指令部35を介して変換器30を動作し、蓄電池63の直流電圧を交流電圧に逆変換してモータ5に印加し、モータ5を定格速度よりも低い速度で回転して巻上機のシーブ7を回転してかご11を上昇又は下降して最寄階のドアゾーンに達したか否かを位置検出器15から開閉可能信号により判断し(ステップS115)、達したら、第1指令部35を介して変換器30を停止した後、救出走行接点54を開放してドアを開放する。これにより、かご11内の乗員を救出できる。
【0019】
上記実施形態によるエレベーターの制御装置は、交流電源eから供給される交流を直流に順変換すると共に、直流電圧を交流電圧に逆変換する変換器30と、交流電源eと変換器30とを開閉する電源接点23と、変換された直流を平滑する平滑コンデンサ32と、平滑された直流を任意の周波数の交流に変換してかご11を駆動するモータ5を駆動制御するインバータ50とを備えたエレベーターの制御装置において、モータ5とインバータ50とを開閉する通常走行接点52と、モータ5と変換器30の入力側に接続されると共に、開閉する救出走行接点54と、平滑コンデンサ32にダイオード61を介して接続された蓄電池63と、インバータ50に流れ込む電流を検出すると共に、検出電流値を発生する電流検出器34と、検出電流値が予め定められた基準電流値よりも大きいか否かを判定すると共に、大きいと異常信号を発生する過電流判定部40と、異常信号の発生に基づいてインバータ50を停止し、電源接点23、通常走行接点52を開放すると共に、第1及び第2救出走行接点54a,54bを閉成して変換器30を回生運転するエレベーター制御部19とを備えたものである。
【0020】
エレベーターの制御装置によれば、過電流判定器40が異常信号を発生することによりインバータ50を停止し、エレベーター制御部19は、電源接点23、通常走行接点52を開放すると共に、第1及び第2救出走行接点54a,54bを閉成して変換器30を回生運転するので、二つのインバータを用いることなく、かご11の救出運転ができる。
【0021】
また、上記実施形態によるエレベーターの制御装置は、かご11が戸開閉不可能な区間を検出すると共に、戸開不可能な区間で開閉不可信号を発生する位置検出器15を備え、エレベーター制御部19は、開閉不可信号の発生に基づいて変換器30を回生運転する。これにより、戸開不可能な区間にかご11が停止した場合に限り、かご11をドアゾーンまで走行できる。よって、かご11内の乗員の救出が効率的である。
【0022】
また、上記実施形態によるエレベーターの制御装置は、かご11が戸開閉可能な区間を検出すると共に、戸開可能な区間で開閉可信号を発生する位置検出器15を備え、エレベーター制御部19は、開閉可能信号の発生に基づいて変換器30の回生を停止する。これにより、戸開可能な区間にかご11が移動すると、変換器30を停止する。よって、最寄階にかごを移動してかご11の乗員を速やかに救出できる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、エレベーターの制御装置に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施の形態を示すエレベーターの制御装置の全体図である。
【図2】図1に示すインバータ部の詳細図である。
【図3】図1におけるエレベーターの制御装置の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0025】
e 交流電源、5 モータ、11 かご、15 位置検出器、19 エレベーター制御部、23 電源接点、30 変換器、32 平滑コンデンサ、34 電流検出器、40過電流判定器、50 インバータ、52 通常走行接点、54a 第1救出走行接点、54b 第2救出走行接点、63 蓄電池。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源から供給される交流を直流に変換する順変換機能を有すると共に、前記直流を前記交流に変換する逆変換機能を有する変換手段と、前記交流電源と前記変換手段とを開閉する電源開閉手段と、前記変換された直流を平滑する平滑コンデンサと、前記平滑された直流を任意の周波数の交流に変換してかごを駆動するモータを制御するインバータとを備えたエレベーターの制御装置において、
前記モータと前記インバータとを開閉する第1開閉手段と、
前記モータと前記変換手段とを開閉する第2開閉手段と、
前記平滑コンデンサを、前記第2開閉手段を介して充電する蓄電池と、
前記インバータに流れ込む電流を検出すると共に、検出電流信号を発生する電流検出手段と、
前記検出電流信号が予め定められた基準電流信号よりも大きいか否かを判定すると共に、大きいと異常信号を発生する過電流判定手段と、
前記異常信号の発生に基づいて前記インバータを停止し、前記電源開閉手段、前記第1開閉手段を開放すると共に、前記第2開閉手段を閉成して前記変換手段を逆変換機能として動作させる制御手段と、
を備えたことを特徴とするエレベーターの制御装置。
【請求項2】
前記かごが戸開閉不可能な区間を検出すると共に、戸開不可能な区間で開閉不可信号を発生する位置検出手段を備え、
前記制御手段は、前記開閉不可信号の発生に基づいて前記変換手段を回生運転する、
ことを特徴とする請求項1に記載のエレベーターの制御装置。
【請求項3】
前記かごが戸開閉可能な区間を検出すると共に、戸開可能な区間で開閉可信号を発生する位置検出手段を備え、
前記制御手段は、前記開閉可能信号の発生に基づいて前記変換手段の回生を停止する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のエレベーターの制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−184278(P2008−184278A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−19301(P2007−19301)
【出願日】平成19年1月30日(2007.1.30)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】