説明

エレベーターの制御装置

【課題】乗客にとって必要なかご呼び登録が確実に完了してから、乗りかごを出発させることができるエレベーターの制御装置を提供する。
【解決手段】エレベーターの制御装置において、乗りかご内に設置されたテンキーかご操作盤と、乗りかご内に設置され、かご呼び登録の行先階を表示する行先階表示器と、乗りかごへの乗車人数を検出する乗車人数検出手段と、乗客発生時にかご呼び登録操作を促すメッセージを報知する報知手段と、テンキーかご操作盤への操作内容に基づいて行先階毎乗車人数を認識する行先階毎乗車人数認識手段と、乗車人数と行先階毎乗車人数とに基づいてかご呼び未登録人数を認識するかご呼び未登録人数認識手段と、かご呼び未登録人数が1人以上である場合に、乗りかごの出発を制限するかご出発制限手段と、を備え、行先階表示器は、行先階毎乗車人数及びかご呼び未登録人数を表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エレベーターの制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、エレベーターの乗りかご内に設置されるかご操作盤には、エレベーターが停止可能である各階床のそれぞれに対応してかご呼び登録ボタン(行先階ボタン)が設けられる。すなわち、エレベーターが停止可能である階床数が増えると、それに応じてかご操作盤に設けられるかご呼び登録ボタンの数も増える。
【0003】
近年、ビルの高層化に伴って建物階床数も増加の一途を辿っている。建物階床数が増加してエレベーターが停止可能である階床数が増えると、前述したように、かご操作盤に設置されるかご呼び登録ボタンの数も増加する。そして、かご呼び登録ボタンの数が増加すると、かご操作盤の大型化に繋がるとともに、乗客が目的とする行先階のかご呼び登録ボタンを見付け難くなるという問題がある。
【0004】
そこで、従来におけるエレベーターにおいては、かご操作盤にテンキーを設置し、乗客はこのテンキーを用いて行先階情報を入力するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このように、テンキー方式のかご呼び登録ボタンを用いることにより、呼び登録の対象となる階床の数が多くなっても、必要なボタンの数は一定以下に抑えることができる。
【0005】
しかし、このようなテンキー方式のかご操作盤では、かご呼び登録ボタン自体では登録済みのかご呼び登録階を表示することができない。そこで、テンキー方式のかご操作盤と併せて、既にかご呼び登録されている行先階を表示する表示器を乗りかご内に設置するようにしたものが従来において知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭59−158772号公報
【特許文献2】特開昭58−172168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般的な(テンキー方式でない)かご操作盤においては、停止可能である各階床のそれぞれに対応してかご呼び登録ボタンが設けられている。このため、目的とする行先階が異なる複数の乗客が同時にかご呼び登録ボタンを操作して、呼びを登録することが可能である。これに対し、前述した特許文献1や特許文献2に記載されているようなテンキー方式のかご操作盤においては、一度に一人ずつしか登録操作を行うことができない。従って、テンキー方式のかご操作盤において複数の乗客がかご呼び登録を行う必要がある場合には、一般的なテンキー方式でないかご操作盤の場合と比較して、全ての乗客が呼び登録操作を終えるまでにより長い時間が必要となる。
【0008】
ここで、従来におけるエレベーターの制御装置においては、戸全開後に予め定められた時間が経過すると自動的に戸閉を開始する。そして、戸閉した段階で1つでも呼びが登録されていれば、その登録された階床に向けて乗りかごを出発させる。従って、テンキー方式のかご操作盤において複数の乗客が順にかご呼び登録操作を行っている間に乗りかごが走行を開始した場合、既に乗りかごが目的階を過ぎている、あるいは、過ぎてはいなくとも安全に停止できる限度を超えて目的階に接近している場合には、このような目的階に対するかご呼び登録操作を行っても、当該操作は無効になってしまう。
【0009】
例えば、高層ビルで高層階(例えば30階)に対する呼び登録のみが完了し玄関階(例えば1階)から乗りかごが出発した場合に、走行中に低層階(例えば5階)を目的階とするかご呼び登録操作をかご内操作盤のテンキーを用いて行ったとしても、前述したように乗りかごの位置によっては間に合わずに当該操作が無効とされてしまう場合があり得る。そして、このように乗りかごの走行中にかご呼び登録操作が無効とされてしまった場合には、当該操作を行った乗客は目的階で降車することができなくなってしまう。
【0010】
以上のように、従来におけるエレベーターの制御装置においては、戸全開して一定時間が経過後に戸閉し、既に登録されている呼びに応答して乗りかごを出発させてしまう。そして、テンキー方式のかご操作盤では一度に一人ずつしかかご呼び登録操作を行うことができず、全員が目的とする行先階へのかご呼び登録操作を終えるまで時間がかかってしまう。このため、全員が目的とする行先階へのかご呼び登録操作を終える前に乗りかごを走行させてしまい、目的とする行先階で降車することができなくなってしまう乗客が出てくる可能性があるという課題がある。また、走行中にかご呼び登録操作を強いられた乗客は急かされてしまうため、テンキー方式のかご操作盤において元々多い誤入力がさらに多くなってしまうという課題もある。
【0011】
この発明は、このような課題を解決するためになされたもので、乗客にとって必要なかご呼び登録が確実に完了してから、乗りかごを出発させることができるエレベーターの制御装置を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明に係るエレベーターの制御装置においては、エレベーターの乗りかご内に設置され、乗客が操作することにより呼び登録の行先階を入力するためのテンキーを有するテンキーかご操作盤と、前記乗りかご内に設置され、前記テンキーかご操作盤への操作によって登録済であるかご呼びの行先階を表示する行先階表示器と、前記乗りかご内に乗車してきた乗客の人数である乗車人数を検出する乗車人数検出手段と、前記乗りかご内に乗客が乗車してきた場合に、前記乗りかご内の乗客に対してかご呼び登録操作を促す所定のメッセージを報知する報知手段と、前記テンキーかご操作盤への操作内容に基づいて、かご呼び登録の行先階毎の乗客の人数である行先階毎乗車人数を認識する行先階毎乗車人数認識手段と、前記乗車人数検出手段により検出された前記乗車人数と前記行先階毎乗車人数認識手段により認識された前記行先階毎乗車人数とに基づいて、前記乗りかご内の乗客のうちかご呼びを未だに登録していない人数であるかご呼び未登録人数を認識するかご呼び未登録人数認識手段と、前記かご呼び未登録人数認識手段により認識された前記かご呼び未登録人数が1人以上である場合に、前記乗りかごの出発を制限するかご出発制限手段と、を備え、前記行先階表示器は、前記行先階毎乗車人数認識手段により認識された前記行先階毎乗車人数及び前記かご呼び未登録人数認識手段により認識された前記かご呼び未登録人数を表示する構成とする。
【発明の効果】
【0013】
この発明に係るエレベーターの制御装置においては、乗客にとって必要なかご呼び登録が確実に完了してから、乗りかごを出発させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の実施の形態1に係るエレベーターの制御装置の全体構成を模式的に示すブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る乗りかご内に設けられる行先階表示器の正面図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係るエレベーターの制御装置の動作を示すフロー図である。
【図4】この発明の実施の形態1に係る図3から続くフロー図である。
【図5】この発明の実施の形態1に係る図3及び図4から続くフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
この発明を添付の図面に従い説明する。各図を通じて同符号は同一部分又は相当部分を示しており、その重複説明は適宜に簡略化又は省略する。
【0016】
実施の形態1.
図1から図5は、この発明の実施の形態1に係るもので、図1はエレベーターの制御装置の全体構成を模式的に示すブロック図、図2は乗りかご内に設けられる行先階表示器の正面図、図3から図5はエレベーターの制御装置の動作を示すフロー図である。
【0017】
図1において、1は、エレベーターの昇降路(図示せず)内に昇降自在に配置され、乗客等を積載して昇降路内を昇降する乗りかごである。この乗りかご1内には、テンキーかご操作盤2が設置されている。このテンキーかご操作盤2には、乗りかご1内の乗客のそれぞれが所望する行先階への呼び登録を行うためのテンキー部が設けられている。また、テンキーかご操作盤2には、乗りかご1内の乗客が戸開を指示するための戸開ボタンや、乗客が戸閉を指示するための戸閉ボタン等も設けられている。
【0018】
テンキーかご操作盤2のテンキー部には、所望する行先階の階床番号を指定するための「0」から「9」までの各数字ボタン、入力した階床番号への呼び登録指示を確定するための確定ボタンや、入力中(確定前)の状態において、入力した数字を取消すための取消ボタン等が備えられている。
【0019】
乗りかご1には、乗りかご1内に乗車してきた乗客の人数を検出する乗車人数検出手段3が備えられている。この乗車人数検出手段3は、例えば、乗りかご1の床下に設けられた秤装置(重量センサ)の検出結果、乗りかご1内に設置されたカメラ装置により撮影された画像に基づいた画像認識結果や、乗りかご1の戸(ドア)に設置されたドアセンサによる検出結果等のうちの1つ又は2つ以上を併用することにより、乗りかご1内に乗車してきた乗客の人数を検出する。
【0020】
また、乗りかご1内には、アナウンス装置4が設けられている。このアナウンス装置4は、スピーカ等から構成され、所定の音声メッセージを鳴動して乗りかご1内の乗客に報知するものである。
【0021】
乗りかご1の運行を含むエレベーターの運転動作全般は、制御盤5により制御される。すなわち、例えば、テンキーかご操作盤2に対してなされた操作に関する情報は制御盤5に送信され、制御盤5は、この操作情報に応じて呼び登録等を行う。また、制御盤5は、ある階床に停止してから一定時間が経過したら、ドアを戸閉させて乗りかご1を停止階から出発させる。そして、呼び登録(かご呼び及び乗場呼び)に応答して乗りかご1を各行先階へと走行させる、といったような制御を行う。また、アナウンス装置4によるアナウンス内容も、この制御盤5により制御される。
【0022】
乗りかご1内には、行先階表示器6が設置されている。この行先階表示器6の構成を図2に示す。この行先階表示器6は、大きく分けて、メッセージ表示部6a、かご呼び未登録人数表示部6b及び行先階表示部6cを有している。そして、行先階表示部6cは、さらに、登録済階床表示部6d及び行先階毎乗車人数表示部6eとに分けられる。
【0023】
メッセージ表示部6aは、所定の文字メッセージを表示して乗りかご1内の乗客に報知するものである。
かご呼び未登録人数表示部6bは、乗りかご1内の乗客のうち、かご呼びを未だに登録していない人の数であるかご呼び未登録人数情報を表示するものである。
【0024】
行先階表示部6cの登録済階床表示部6dは、テンキーかご操作盤2の操作によって既に登録されているかご呼びの行先階を表示するものである。行先階表示部6cの行先階毎乗車人数表示部6eは、登録済階床表示部6dに表示されている各行先階について、その行先階を目的とする乗客の人数を表示するものである。行先階表示部6cは、ある1つの行先階に関する登録済階床表示部6d及び行先階毎乗車人数表示部6eの組が複数組表示できるようになっている。この図2には、登録済階床表示部6d及び行先階毎乗車人数表示部6eの組が10組表示できるように構成した例を示している。
【0025】
そして、この行先階表示部6cはタッチパネルになっており、表示された登録済であるかご呼びの行先階のそれぞれに対して操作可能である。すなわち、乗りかご1内の乗客は、自身が所望する行先階が既に登録済階床表示部6dに表示されている場合には、当該行先階の登録済階床表示部6dにタッチ操作することにより、自身が当該行先階を所望している旨をエレベーター側へと意思表示することができる。そして、登録済階床表示部6dにタッチ操作されると、当該タッチ操作された登録済階床表示部6dと組になっている行先階毎乗車人数表示部6eの表示人数が1人増加される。なお、行先階表示部6cはタッチパネル式でなくとも、単に表示部と操作ボタンとを組み合わせて用いるようにしてもよい。
【0026】
以上のように構成されたエレベーターの動作を制御する制御盤5には、行先階毎乗車人数認識手段、行先階表示制御手段、かご呼び未登録人数認識手段、かご出発制限手段及びメッセージ報知手段が備えられている。
行先階毎乗車人数認識手段は、登録されたかご呼びの行先階のそれぞれについて、その行先階を目的とする乗客の人数である行先階毎乗車人数を認識するものである。この行先階毎乗車人数は、テンキーかご操作盤2に対して行われた操作及び行先階表示器6の行先階表示部6cに対して行われた操作に基づいて認識される。
【0027】
行先階表示制御手段は、行先階毎乗車人数認識手段により認識された行先階毎乗車人数に基づいて、行先階表示器6の行先階表示部6cの表示を制御するものである。すなわち、行先階表示制御手段は、行先階毎乗車人数認識手段により認識された行先階毎乗車人数が0人でない(1人以上である)行先階を登録済階床表示部6dに表示させる。そして、登録済階床表示部6dに表示させた各行先階のそれぞれについて、行先階毎乗車人数表示部6eに行先階毎乗車人数を表示させる。
【0028】
かご呼び未登録人数認識手段は、乗車人数検出手段3による検出結果である乗りかご1内への乗車人数と、行先階毎乗車人数認識手段により認識された行先階毎乗車人数とに基づいて、乗りかご1内の乗客のうちかご呼びを未だに登録していない人の数であるかご呼び未登録人数を認識するものである。このかご呼び未登録人数は、具体的には、乗車人数から全行先階についての行先階毎乗車人数の総和を引くことにより求められる。かご呼び未登録人数認識手段により認識されたかご呼び未登録人数は、行先階表示器6のかご呼び未登録人数表示部6bに表示される。
【0029】
かご出発制限手段は、ある停止階において乗りかご1が停止している際に、かご呼び未登録人数認識手段により認識されたかご呼び未登録人数が0人でない場合には、当該停止階から乗りかご1が出発することを制限するかご出発制限を行うものである。このかご出発制限は、具体的には、乗りかご1を出発させないように制限する時間に上限時間を設定することにより行われる。すなわち、かご出発制限手段は、かご呼び未登録人数が0人でない場合には、原則として所定の上限時間が経過するまでの間は乗りかご1を停止階から出発させない。そして、上限時間が経過するとかご出発制限を解除して、乗りかご1を出発させる。
【0030】
この上限時間は、乗車人数検出手段3により検出された乗車人数に応じて変化される。すなわち、乗車人数が多いほど全ての乗客がかご呼び登録操作を終えるまでにかかる時間が長くなるであろうことから、乗車人数が多いほど上限時間を長くする。
また、さらに、かご出発制限手段は、前記上限時間内であっても、所定の操作がなされた場合、例えばテンキーかご操作盤2の戸閉ボタンが操作された場合には、かご出発制限を解除して乗りかご1を出発させる。
【0031】
メッセージ報知手段は、所定の場合に、予め定められたメッセージを、アナウンス装置4から音声メッセージを鳴動させることにより、あるいは、行先階表示器6のメッセージ表示部6aに文字メッセージを表示させることにより、乗りかご1内の乗客に報知させるものである。ここで、所定の場合における予め定められたメッセージとは、例えば、乗客が乗りかご1に乗車した後に発報される乗客全員に対して呼び登録操作を促すメッセージや、乗りかご1内にかご呼び未登録の乗客がいる場合に発報される呼び登録操作を促すメッセージ等がある。
【0032】
この実施の形態にあっては、エレベーターの制御装置は、図3から図5に示す一連のフローに従って動作する。
まず、乗りかご1が走行中において、制御盤5は、ステップS1で、以後の制御に用いる各種の変数を定義する。Ponは、乗車人数検出手段3により検出された乗りかご1に乗車してきた乗客の数、すなわち、乗車人数である。Prestは、制御盤5のかご呼び未登録人数認識手段により認識されているかご呼び未登録人数である。Pfl(n)は、制御盤5の行先階毎乗車人数認識手段により認識されているn階を行先階とする乗客の人数(n階に対する行先階毎乗車人数)である。ここで、nは、エレベーターの乗りかご1が停止可能である階床を示す番号であり、一般に0を除く整数値である(負数は地下階を表すものとする)。
【0033】
Noffは、停止階、すなわち、制御盤5が次に乗りかご1を停止させると決定した(停止決定した)階である。Ntenは、テンキーかご操作盤2に対する操作によってかご呼び登録の行先階として指定された階床(「登録階床」という)である。Nindは、行先階表示器6に対する操作、すなわち、行先階表示器6の行先階表示部6cに対するタッチ操作がなされた登録済階床表示部6dに表示されている階床(「操作階床」という)である。
【0034】
続くステップS2において乗りかご1の走行中に制御盤5が停止決定した場合には、ステップS3へと進む。ここで、乗りかご1の走行中とは、通常時における全自動運転によって、かご呼び登録又は乗場呼び登録に応答して乗りかご1が走行している最中であるということである。従って、その他の場合における運転中はこの図3から図5のフロー図中にいう走行中には含まれない。例えば、手動運転による乗りかご1の走行中は、含まれない。
【0035】
ステップS3においては、制御盤5は当該停止決定された停止階”Noff”階を取得する。そして、ステップS4において、乗りかご1がこの停止階”Noff”階に到着して、ドアゾーン内で戸開中となった場合には、ステップS5へと進む。
【0036】
このステップS5においては、乗りかご1が停止階”Noff”階に停止して戸開したことにより、乗降者が発生すると判断して次の動作を行う。すなわち、まず、当該停止階で降車客がいれば、行先階表示器6の行先階表示部6cに当該停止階が表示されているはずである。そこで、制御盤5の行先階表示制御手段は、行先階表示器6の行先階表示部6cにおいて、停止階”Noff”階を表示している登録済階床表示部6dの表示を消す。そして、この消した”Noff”階への乗車人数”Pfl(Noff)”人を表示している行先階毎乗車人数表示部6eの表示も消す。また、当該停止階への乗客が存在した場合には、この乗客は全員が当該停止階において降車するはずなので、制御盤5の行先階毎乗車人数認識手段は、当該停止階”Noff”階への乗車人数”Pfl(Noff)”人を0人にリセットする。すなわち、Pfl(Noff)に0を代入する。
【0037】
続くステップS6において、制御盤5のかご出発制限手段は、上限時間を設定して当該停止階からの乗りかご1の出発を制限する。このステップS6の時点では、この上限時間は、かご呼び又は乗場呼びに応答して戸全開してから所定の一定時間である不干渉時間だけ経過するまでに設定される。そして、次のステップS7において、制御盤5は、乗車人数検出手段3による検出結果に基づいて、当該停止階において乗りかご1へと新たに乗客が乗車したか否かを確認する。
【0038】
このステップS7で、当該停止階において乗りかご1へと新たに乗車した乗客が発生した場合には、ステップS8へと進む。なお、当該停止階において乗りかご1へと新たに乗車した乗客が発生した場合とは、当該停止階において乗場呼びが登録されていた場合であると考えられる。ステップS8においては、まず、制御盤5のメッセージ報知手段は、乗りかご1内の乗客に対してかご呼び登録を促すメッセージを、アナウンス装置4から鳴動させるとともに、行先階表示器6のメッセージ表示部6aに表示させる。この際のかご呼び登録を促すメッセージの具体例としては、例えば「行き先を入力してください」や「行き先階に触れてください」等が考えられる。
【0039】
また、制御盤5は、乗車人数検出手段3の検出結果から当該停止階における乗車人数”Pon”人を取得する。そして、当該停止階において発生した乗客はかご呼び未登録であるため、制御盤5のかご呼び未登録人数認識手段は、現在のかご呼び未登録人数”Prest”人に、先ほど取得した乗車人数”Pon”人を加算する。すなわち、PrestにPrest+Ponを代入する。なお、Prestの初期値は0である。
【0040】
さらに、かご呼び未登録の乗客がいることを乗客自身にも知らせるため、制御盤5は、行先階表示器6のかご呼び未登録人数表示部6bに、算出されたかご呼び未登録人数”Prest”人を表示させる。また、制御盤5のかご出発制限手段は、当該停止階において発生した乗車人数に応じて、かご出発を制限する上限時間を変更する。具体的には、例えば乗車人数1人につき所定の一定時間(例えば2秒間)を不干渉時間に加算した時間を上限時間としたり、あるいは、予め乗車人数に対して上限時間を設定したテーブルを用意したりしてもよい。
【0041】
図3のステップ8の後は、図中の「C」に達し、図4のステップS9へと進む。このステップS9においては、制御盤5は、テンキーかご操作盤2(のテンキー)が操作されたか否かを確認する。テンキーかご操作盤2が操作された場合には、ステップS10へと進む。
【0042】
ステップS10においては、まず、制御盤5は、テンキーかご操作盤2に対する操作によってかご呼び登録の行先階として指定された登録階床”Nten”を取得する。そして、乗客1人がかご呼び登録を完了したことになるため、制御盤5のかご呼び未登録人数認識手段は、現在のかご呼び未登録人数”Prest”人から1人を減算する。すなわち、PrestにPrest−1を代入する。かご呼び未登録人数が変化したため、制御盤5は、行先階表示器6のかご呼び未登録人数表示部6bの表示を、算出されたかご呼び未登録人数”Prest”人に更新する。
【0043】
また、”Nten”階行きの乗客が1人発生したことになるため、制御盤5の行先階毎乗車人数認識手段は、”Nten”階を行先階とする乗客の人数”Pfl(Nten)”人に1人を加算する。すなわち、Pfl(Nten)にPfl(Nten)+1を代入する。
【0044】
そして、続くステップS11において、制御盤5の行先階表示制御手段は、行先階表示器6の行先階表示部6cに既に”Nten”階が行先階として表示されているか否かを確認する。行先階表示部6cに既に”Nten”階が表示されている場合には、ステップS12へと進む。このステップS12においては、”Nten”階を行先階とする乗客の人数”Pfl(Nten)”人が変化しているため、制御盤5の行先階表示制御手段は、行先階表示部6cにおいて”Nten”階が表示されている登録済階床表示部6dと組となる行先階毎乗車人数表示部6eに表示されている人数を最新の”Nten”階を行先階とする乗客の人数”Pfl(Nten)”人に更新する。
【0045】
一方、行先階表示部6cにまだ”Nten”階が表示されていない場合には、ステップS13へと進む。このステップS13においては、制御盤5の行先階表示制御手段は、行先階表示部6cにおいて、登録済階床表示部6dに”Nten”階を新規に表示する。また、併せて、当該新規に表示した登録済階床表示部6dと組となる行先階毎乗車人数表示部6eに、”Nten”階を行先階とする乗客の人数”Pfl(Nten)”を表示する。
【0046】
ステップS12及びS13の後は、図中の「D」に進む。また、ステップS9において、テンキーかご操作盤2が操作されなかった場合には、ステップS10からS13を経ることなく図中の「D」に至る。図中の「D」に至ると、次は、図5のステップS14へと進む。
【0047】
ステップS14においては、制御盤5は、行先階表示器6(の行先階表示部6c)が操作されたか否かを確認する。行先階表示器6が操作された場合には、ステップS15へと進む。このステップS15においては、まず、制御盤5は、行先階表示器6に対する操作がなされた登録済階床表示部6dに表示されている操作階床”Nind”を取得する。そして、乗客1人がかご呼び登録を完了したことになるため、制御盤5のかご呼び未登録人数認識手段は、現在のかご呼び未登録人数”Prest”人から1人を減算する。すなわち、PrestにPrest−1を代入する。かご呼び未登録人数が変化したため、制御盤5は、行先階表示器6のかご呼び未登録人数表示部6bの表示を、算出されたかご呼び未登録人数”Prest”人に更新する。
【0048】
また、”Nind”階行きの乗客が1人発生したことになるため、制御盤5の行先階毎乗車人数認識手段は、”Nind”階を行先階とする乗客の人数”Pfl(Nind)”人に1人を加算する。すなわち、Pfl(Nind)にPfl(Nind)+1を代入する。そして、”Nind”階を行先階とする乗客の人数”Pfl(Nind)”人が変化しているため、制御盤5の行先階表示制御手段は、行先階表示部6cにおいて”Nind”階が表示されている登録済階床表示部6dと組となる行先階毎乗車人数表示部6eに表示されている人数を最新の”Nind”階を行先階とする乗客の人数”Pfl(Nind)”人に更新する。
【0049】
ここで、行先階表示器6が操作されて入力される操作階床”Nind”階は、既にかご呼びの行先階として登録されている階床のみである。そこで、行先階表示器6が操作されてから制御盤5からの表示指令によって行先階表示器6の表示を変更するまでに時間差が発生するようであれば、行先階表示器6の内部で操作直後に行先階毎乗車人数表示部6eの表示人数を変更しておくようにしてもよい。この場合、行先階表示器6は、表示変更後に制御盤5からの当該表示変更に係る表示指令を受けることになる。このようにすることにより、操作から表示変更までの見た目上の時間差を無くすことが可能である。
【0050】
続くステップS16において、制御盤5は、この時点でのかご呼び未登録人数”Prest”人が0人以下であるか否かを確認する。かご呼び未登録人数”Prest”人が0人以下である場合には、乗りかご1に乗車した全乗客がかご呼び登録を完了したと判断してステップS18へと進む。このステップS18においては、制御盤5のかご出発制限手段は、かご出発制限を解除するために、かご全戸開から上限時間以上経過したと判定されるように乗りかご1の出発制限時間、すなわち、上限時間又はかご全戸開からの経過時間カウンタの値を変更する。具体的には、例えば、上限時間を0に設定したり、経過時間カウンタの値を強制的に上限時間以上にしたりする。そして、ステップS19へと進む。
【0051】
一方、ステップS16において、かご呼び未登録人数”Prest”人が0人以下でない場合には、ステップS17へと進む。このステップS17においては、制御盤5はテンキーかご操作盤2の戸閉ボタンが操作されたか否かを確認する。戸閉ボタンが操作された場合には、ステップS18へと進み、かご出発制限を解除するために、かご全戸開から上限時間以上経過したと判定されるように上限時間又はかご全戸開からの経過時間カウンタの値が変更された上でステップS19へと進む。ステップS17において戸閉ボタンが操作されなかった場合には、ステップS18は経由せずに(出発制限時間は変更されずに)ステップS19へと進む。
【0052】
なお、このステップS17において戸閉ボタンが操作された場合、かご呼びを登録したいが未完了である乗客がいる可能性がある。そこで、すぐにステップS18へと進んでかごの出発制限を即時無効にするよう変更するのではなく、戸閉ボタンが所定の複数回操作された場合にステップS18へと進むようにしてもよい。また、戸閉ボタンが操作された回数に応じた時間だけ上限時間を短くする(又は経過時間カウンタの時間を進める)ようにしてもよい。
【0053】
また、ここで、図3のステップS7に戻ると、当該停止階への停止がかご呼びにのみ応答するものであった場合には、当該停止階では降車客のみであって乗車客は発生しないと考えられる。この図3のステップS7で、当該停止階において乗りかご1へと新たに乗車した乗客が発生しなかった場合には、ステップS7から図中の「B」に至りステップS17へと進む。そして、戸開ボタンが操作された否かに応じてステップS18を経由し、又は経由せずにステップS19へと進む。
【0054】
ステップS19においては、制御盤5のかご出発制限手段は、かご全戸開から所定の上限時間が経過したか否かを確認する。このステップS19の前にステップS18が実行されている場合には、このステップS19において、必ずかご全戸開から上限時間が経過したと判定されるようになっているはずである。かご全戸開から上限時間が経過した場合には、ステップS20へと進む。一方、かご全戸開から上限時間が経過していない場合には、図中の「A」に至り、図3のステップS6へと戻る。
【0055】
ステップS20においては、制御盤5のかご呼び未登録人数認識手段は、かご呼び未登録人数”Prest”人を0人に設定(リセット)する。そして、制御盤5は、行先階表示器6のかご呼び未登録人数表示部6bに表示されているかご呼び未登録人数”Prest”人の表示を消す。続いてステップS21へと進み、制御盤5のかご出発制限手段は、乗りかご1の出発制限を解除して出発を許可し、制御盤5は乗りかご1の走行を開始させる。その後、乗りかご1は走行中の状態になり、図3のステップS1に戻る。
【0056】
なお、以上においては、呼び登録済の行先階の表示する行先階表示器6の行先階表示部6cをタッチパネルにし、呼び登録済の行先階を所望する乗客は、所望する行先階が表示されている行先階表示部6cの登録済階床表示部6dをタッチ操作することにより、かご呼び登録済の人数としてカウントされる実施例について説明した。
【0057】
しかし、以上の特に図4のフロー図についての説明からも分かるように、呼び登録済の行先階を所望する乗客は、行先階表示器6を操作せずともテンキーかご操作盤2のテンキーを操作することによっても、かご呼び登録済の人数としてカウントされることが可能である。従って、行先階表示器6を必ずしもタッチパネル式にすることはなく、かご呼び未登録人数や登録済階床及び登録済階床毎の乗車人数等を表示する機能のみを有するようにしてもよい。この場合には、全ての乗客は、自身の所望する行先階への呼びが登録済であるか否かに関わらず、テンキーかご操作盤2に対してかご呼び登録操作を行うことになる。
【0058】
以上のように構成されたエレベーターの制御装置は、乗りかご内に設置され、テンキーかご操作盤への操作によって登録済であるかご呼びの行先階を表示する行先階表示器と、乗りかご内に乗車してきた乗客の人数である乗車人数を検出する乗車人数検出手段と、乗りかご内に乗客が乗車してきた場合に、乗りかご内の乗客に対してかご呼び登録操作を促す所定のメッセージを報知する報知手段であるアナウンス装置及び行先階表示器のメッセージ表示部と、テンキーかご操作盤への操作内容に基づいて、かご呼び登録の行先階毎の乗客の人数である行先階毎乗車人数を認識する行先階毎乗車人数認識手段と、乗車人数と行先階毎乗車人数とに基づいて、乗りかご内の乗客のうちかご呼びを未だに登録していない人数であるかご呼び未登録人数を認識するかご呼び未登録人数認識手段と、かご呼び未登録人数が1人以上である場合に、乗りかごの出発を制限するかご出発制限手段と、を備え、行先階表示器は、行先階毎乗車人数及びかご呼び未登録人数を表示するものである。
【0059】
乗客は、行先階表示器の表示内容により、乗客によるかご呼びの登録状況を知ることができ、報知内容に従って呼び登録操作を実施する。従って、乗客にとって必要なかご呼び登録が確実に完了してから、乗りかごを出発させることができる。また、このため、乗客は走行中にかご呼び登録操作を強いられることがなくなり、誤入力の発生を低減することが可能である。
【0060】
また、行先階表示器は、表示された登録済であるかご呼びの行先階のそれぞれに対して操作可能であり、行先階毎乗車人数認識手段は、テンキーかご操作盤への操作内容に加えて、さらに行先階表示器への操作内容にも基づいて、行先階毎乗車人数を認識するものである。従って、自身の所望する行先階への呼びが既に登録されている乗客は、テンキーかご操作盤を操作することなく、ワンタッチで操作を行うことができる。
【0061】
さらに、かご出発制限手段は、かご呼び未登録人数が1人以上である場合に、全戸開してから所定の上限時間が経過するまでの間、乗りかごの出発を制限するとともに、乗車人数に応じて上限時間を変化させるものである。このため、乗りかご内の全ての乗客が呼び登録操作を終えるのに、必要十分な時間を確保することができる。
【0062】
また、加えて、かご出発制限手段は、全戸開してから上限時間の経過前であっても、テンキーかご操作盤に対して戸閉ボタンが押下される等の所定の戸閉操作がなされた場合には、乗りかごの出発の制限を解除するものである。このため、急いでいる乗客がいる等の事情がある場合に、柔軟な対応が可能となる。
【符号の説明】
【0063】
1 乗りかご
2 テンキーかご操作盤
3 乗車人数検出手段
4 アナウンス装置
5 制御盤
6 行先階表示器
6a メッセージ表示部
6b かご呼び未登録人数表示部
6c 行先階表示部
6d 登録済階床表示部
6e 行先階毎乗車人数表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベーターの乗りかご内に設置され、乗客が操作することにより呼び登録の行先階を入力するためのテンキーを有するテンキーかご操作盤と、
前記乗りかご内に設置され、前記テンキーかご操作盤への操作によって登録済であるかご呼びの行先階を表示する行先階表示器と、
前記乗りかご内に乗車してきた乗客の人数である乗車人数を検出する乗車人数検出手段と、
前記乗りかご内に乗客が乗車してきた場合に、前記乗りかご内の乗客に対してかご呼び登録操作を促す所定のメッセージを報知する報知手段と、
前記テンキーかご操作盤への操作内容に基づいて、かご呼び登録の行先階毎の乗客の人数である行先階毎乗車人数を認識する行先階毎乗車人数認識手段と、
前記乗車人数検出手段により検出された前記乗車人数と前記行先階毎乗車人数認識手段により認識された前記行先階毎乗車人数とに基づいて、前記乗りかご内の乗客のうちかご呼びを未だに登録していない人数であるかご呼び未登録人数を認識するかご呼び未登録人数認識手段と、
前記かご呼び未登録人数認識手段により認識された前記かご呼び未登録人数が1人以上である場合に、前記乗りかごの出発を制限するかご出発制限手段と、を備え、
前記行先階表示器は、前記行先階毎乗車人数認識手段により認識された前記行先階毎乗車人数及び前記かご呼び未登録人数認識手段により認識された前記かご呼び未登録人数を表示することを特徴とするエレベーターの制御装置。
【請求項2】
前記行先階表示器は、表示された登録済であるかご呼びの行先階のそれぞれに対して操作可能であり、
前記行先階毎乗車人数認識手段は、前記テンキーかご操作盤への操作内容と前記行先階表示器への操作内容とに基づいて、前記行先階毎乗車人数を認識することを特徴とする請求項1に記載のエレベーターの制御装置。
【請求項3】
前記かご出発制限手段は、前記かご呼び未登録人数認識手段により認識された前記かご呼び未登録人数が1人以上である場合に、全戸開してから所定の上限時間が経過するまでの間、前記乗りかごの出発を制限するとともに、前記乗車人数検出手段により検出された前記乗車人数に応じて、前記上限時間を変化させることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載のエレベーターの制御装置。
【請求項4】
前記かご出発制限手段は、全戸開してから前記上限時間の経過前であっても、前記テンキーかご操作盤に対して所定の戸閉操作がなされた場合には、前記乗りかごの出発の制限を解除することを特徴とする請求項3に記載のエレベーターの制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−153454(P2012−153454A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−12054(P2011−12054)
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】