説明

エレベータ強制減速装置

【課題】かご位置検出用のセンサ、スイッチ、速度検出器を複数設置することがなく、かご位置を検出するために昇降路全体に位置コードを張設する必要のないエレベータ強制減速装置を提供する。
【解決手段】昇降路内の所定位置で移動するかご1の異常速度を検出した場合にかご速度を強制減速させる減速手段22と、かご1を最大衝突速度以下で受け止める短縮化された緩衝器11と、調速器6に取り付けられた速度検出部7と、昇降路内の終端階の付近の昇降路壁面のかごの外壁に対向して設置されて昇降路の終端階が中央階付近とは異なるものとして識別する終端階識別部27と、かご1の外壁に設けられたかご位置センサ28と、速度検出部7により検出されたかごの移動速度信号と前記かご位置センサ28により検知されたかご1の位置信号とに基づいて、かご速度を強制減速する減速手段22に対して制御信号を出力する減速制御手段30と、をさらに備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエレベータ強制減速装置に関し、特に、昇降路終端階等の特定位置でエレベータかごの昇降速度の超過を検出したときに緩衝器に対するかごの衝突速度を緩めるよう強制減速するエレベータ強制減速装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のエレベータ強制減速装置は、図7および図8に示されている。図示されない昇降路内には、エレベータかご1と、釣合重り2と、かご1および釣合重り2をそれぞれ案内するガイドレール3a,3bと、が設けられている。また、昇降路の上部には、図示されないモータに取り付けられたシーブ4が設けられ、このシーブ4には、その両端がかご1および釣合重り2の上面にそれぞれ固定されたメインロープ5が巻回され、このメインロープ5はシーブ4との摩擦力により移動する。
【0003】
かご1および釣合重り2の昇降速度は、調速器6により制御されると共に、調速器6に接続された速度検出器7により検出される。かご1の例えば背面には、かご位置検出用の着検板8が設けられており、この着検板8は、昇降路内に設けられた複数のかご位置検出用のセンサ9を通過することにより、かご位置を検出する。速度検出器7および複数のセンサ9よりそれぞれ出力された検出信号は制御部10に送られ、制御部10は送信された速度検出器7およびセンサ9の検出信号に基づいてエレベータの安全回路(図示せず)の投入/遮断を制御する。
【0004】
昇降路の床面には、万一かご1が落下してきた際の衝撃を吸収するために、緩衝器11がかご1の真下に対応する位置に設けられている。この緩衝器11は、例えば、内部にバネ等が組み込まれた大径の円筒内に小径の円筒を組み込んだショックアブソーバのような構造のバッファにより構成されている。
【0005】
以下、従来のエレベータ強制減速装置の動作を説明する。調速器6に設けられた速度検出器7は、常にエレベータかご1の速度を検出し、制御部10に速度検出信号を出力している。かご1の着検板8が昇降路に設けられたセンサ9内を通過したときに、センサ9は制御部10にかご位置検出信号を出力する。このとき、速度検出器7の出力する速度信号が、制御部10に予め設定されている設定値以上であった場合に、制御部10はエレベータの安全回路(図示せず)を遮断して、主回路コンタクタおよびモータのブレーキ回路を遮断してエレベータのかご1を強制減速させる。このため、かご1は緩衝器11の許容速度以下まで減速してから緩衝器1に接触して停止する。
【特許文献1】特開2002−226149号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来のエレベータ強制減速装置においては、かご1が下降しているときに強制減速させても、かご1の昇降路内での位置によりかご1が緩衝器11に衝突するまでの走行距離が異なることになるため、かご1が昇降路の上部に位置する場合と下部に位置する場合とでは異常を検出する速度設定が異なることになる。このため、かご1の移動速度に応じてかご1の位置を検出するセンサ9を複数設置する必要があり、昇降路が設置された建物が高層であってかごが高速出運転される場合、センサ9の設置個数がさらに増加するという問題がある。
【0007】
また、特許文献1に記載されているように、昇降路の全長にわたり位置コードを張設してかご1に取り付けられたカメラやセンサ等の検出手段を用いてかご位置を検出して確認する方法も提案されているが、エレベータを制御するための信号として検出しなければならないので、昇降路全体に位置コードを張設しなければならず、高床階の場合には設置が困難であり、速度検出に関しては直接検出することができないという問題がある。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、エレベータのかご位置を検出するためのセンサおよびスイッチや、速度検出器を複数設置することがなく、かご位置を検出するために昇降路全体に位置コードを張設する必要のないエレベータ強制減速装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、基本概念としての本発明の第1構成に係るエレベータ強制減速装置は、昇降路内の所定位置でかごの異常速度を検出した場合に動力回路またはブレーキ回路を遮断してかご速度を強制減速させる減速手段と、前記減速手段により減速されたかごを受け止める緩衝器と、を備えるエレベータ強制減速装置において、調速器に取り付けられた速度検出部と、昇降路内の終端階付近の昇降路壁面にかごの外壁に対向して設けられ、前記昇降路の終端階付近を中央階付近とは区別して識別する終端階識別部と、前記終端階識別部に対向する前記かごの外壁に設けられて前記終端階識別部を検知することにより前記かごの位置を検出するかご位置センサと、前記速度検出部により検出された前記かごの移動速度信号と前記かご位置センサにより検知された前記かごの位置信号とに基づいて、前記かご速度を強制減速する前記減速手段に対して制御信号を出力する減速制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、第2構成に係るエレベータ強制減速装置は、第1構成に記載のものにおいて、前記終端階識別部は、前記かごの外壁に設けられた前記かご位置センサに対向して前記昇降路壁面の終端階付近の壁面に塗装された塗装部よりなり、前記かご位置センサは、前記塗装部を検出して前記かごの位置が前記昇降路の終端階付近であることを検出するかご位置検出部であることを特徴とする。
【0011】
また、第3構成に係るエレベータ強制減速装置は、第2構成に記載のものにおいて、前記塗装部は前記昇降路の中央階付近の壁面と終端階付近の壁面とで変化する塗装を有し、前記かご位置検出部は、前記塗装部の塗装の変化を検知することにより前記かごが昇降路の終端階付近に位置するのか中央階付近に位置するのかを検出することを特徴とする。
【0012】
また、第4構成に係るエレベータ強制減速装置は、第3構成に記載のものにおいて、前記塗装部は、前記昇降路の中央階付近の壁面の色と終端階付近の壁面の色とが変化する塗装を有し、前記かご位置検出部は、前記塗装部の前記色の変化を検知することにより前記かごが昇降路の終端階付近に位置するのか中央階付近に位置するのかを検出することを特徴とする。
【0013】
また、第5構成に係るエレベータ強制減速装置は、第1構成に記載のものにおいて、前記終端階識別部は、 前記終端階識別部は、前記昇降路の中央階付近と終端階付近との壁面に付着されて前記終端階に近づくにつれて縞模様の状態が変化する横縞部よりなり、前記かご位置センサは、前記横縞部の縞模様の状態の変化を検知して前記かごの位置が前記昇降路の終端階付近であることを検出する縞模様検出部であることを特徴とする。
【0014】
また、第6構成に係るエレベータ強制減速装置は、第5構成に記載のものにおいて、前記横縞部は、前記昇降路の中央階付近では前記縞模様の間隔が広く終端階付近では前記縞模様の間隔が狭くなるように間隔の変化を有する縞模様であり、前記かご位置センサは、前記縞模様の間隔の変化を検知することにより前記かごが昇降路の終端階付近に位置するのか中央階付近に位置するのかを検出する前記縞模様検出部であることを特徴とする。
【0015】
また、第7構成に係るエレベータ強制減速装置は、第1構成に記載のものにおいて、前記終端階識別部は、前記かごの外壁に設けられた前記かご位置センサに対向して前記昇降路壁面の終端階付近の壁面に設けられて前記かごの昇降方向に所定間隔で磁気部を有する磁気テープよりなり、前記かご位置センサは、前記磁気テープを検出して前記かごの位置が前記昇降路の終端階付近であることを検出する磁気センサであることを特徴とする。
【0016】
また、第8構成に係るエレベータ強制減速装置は、第5構成に記載のものにおいて、前記かご位置センサは、前記終端階識別部から検出した前記横縞部または磁気部よりなる識別パターンの数を検知すると共に、前記減速制御手段は、前記かご位置センサにより検知された前記識別パターンの数を所定の単位時間でカウントする演算部を含み、前記減速制御手段は前記演算部によりカウントされた前記所定の単位時間あたりの前記識別パターンの数に基づいて前記かごの移動速度を求めることにより前記制御信号を出力することを特徴とする。
【0017】
また、第9構成に係るエレベータ強制減速装置は、第1構成に記載のものにおいて、前記終端階識別部は、前記昇降路内に設けられて前記かごの昇降を案内するかごガイドレールに設けられていることを特徴とする。
【0018】
また、第10構成に係るエレベータ強制減速装置は、第1構成に記載のものにおいて、前記終端階識別部は、前記昇降路内に設けられて前記かごの昇降に伴い昇降する釣合重りを案内する釣合重りガイドレールに設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、複数個の速度検出器を設ける必要がなく、かご位置を検出するために昇降路全体に位置コードを張設する必要のないエレベータ強制減速装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係るエレベータ強制減速装置の実施形態について詳細に説明する。
【0021】
(第1実施形態)
第1実施形態によるエレベータ強制減速装置は、図1に示すように、エレベータかご1と、釣合重り2と、かご1の昇降移動を案内するかご側ガイドレール3aと、釣合重り2の昇降移動を案内する釣合重り側ガイドレール3bと、かご1およびつり釣合重り2を昇降駆動するモータシーブ4と、かご1および釣合重り2のそれぞれの天井にその両端がそれぞれ固定されたメインロープ5とを備えている。メインロープ5は、その両端にかご1と釣合重り2とを接続してモータシーブ4との摩擦力により移動することによりかご1を昇降移動させている。
【0022】
本発明の第1実施形態に係るエレベータ強制減速装置50は、昇降路21内の所定位置で移動するかご1の異常速度を検出した場合に図示しない動力回路またはブレーキ回路を遮断してかご速度を強制減速させる減速手段22と、減速手段22により減速されたかごを最大衝突速度以下で受け止める短縮化された緩衝器11と、を基本的に備えている。
【0023】
エレベータ強制減速装置20において、速度検出部7は、エレベータ機械室23に設けられた調速器6に取り付けられている。終端階識別部27は、昇降路21内の終端階24の付近の昇降路壁面26のかご1の外壁1aに対向して設置されており、昇降路21の終端階24付近を中央階25付近とは異なるものとして識別する。かご位置センサ28は、終端階識別部27に対向するかご1の外壁1aに設けられており、終端階識別部27を検知することにより前記かごの位置を検出する。減速制御手段30は、速度検出部7により検出されたかご1の移動速度信号とかご位置センサ28により検知されたかご1の位置信号に基づいて、かご速度を強制減速する減速手段22に対して制御信号を出力する。
【0024】
なお、減速制御手段30は、機械室23に設けられた制御部10に設けられている。また、図1に示された第1実施形態においては、終端階は最下階のみならず、最上階であってもよい。さらに、終端階識別部27は、色分けすることにより終端階であることを表示していても良いし、縞模様の縞の間隔を密にしたり粗にしたりすることにより終端階であることを表示するようにしても良い。あるいは、縞模様と共に磁気テープを貼付しておいて、かご位置センサ28を磁気センサにより構成するようにしても良い。これらの具体的な構成は、第2実施形態以降で説明する。
【0025】
第1実施形態に係るエレベータ強制減速装置によれば、昇降移動するかご1に設けられたかご位置検出用のセンサ28に対向する昇降路21の壁面26に終端階24であることを示す終端階識別部27を設け、この終端階識別部27をかご位置センサ28により検出して減速制御手段30の制御信号を生成するようにしているので、複数個の速度検出器を設ける必要がなく、かご位置を検出するために昇降路全体に位置コードを張設する必要のないエレベータ強制減速装置を提供できる。
【0026】
(第2実施形態)
第2実施形態においては、第1実施形態の終端階識別部27の具体的な構成として、塗装部12a,12b,12cが示されている。第2実施形態に係るエレベータ強制減速装置の構成は、図2に示すように、かご1のガイドレール3aに設けられた塗装部12a,21b,12cを備え、これらの塗装部12a,21b,12cはそれぞれ異なる色により表示されている。例えば塗装部12aは青で着色され、塗装部12bは黄で着色され、塗装部12cは赤で着色されている。
【0027】
これらの塗装部12a,21b,12cは、かご1の背面に設けられた色検出用センサ13aにより検知された色信号に基づいて終端階識別信号が生成されている。例えば中央階付近では青色に着色された塗装部12aを色検出部としてのセンサ13aにより検出して、中央階から終端階に近づくにつれて黄色の塗装部12b,赤の塗装部12cが順次検出されてかご1が終端階に接近していることが検出される。したがって、この検出信号に基づいて、減速制御手段30が速度検出器7から出力された速度制御信号をさらに制御して終端階でのかごの昇降速度をさらに低速となるように減速手段22を制御する。
【0028】
すなわち第2実施形態に係るエレベータ強制減速装置においては、終端階識別部はかご1の外壁に設けられたかご位置センサとしての色検出用センサ13aに対向して昇降路壁面の終端階の壁面に設けられたガイドレール3aに塗装された塗装部12a,12b,12cよりなり、かご位置センサ28は、塗装部12a,12b,12cを検出してかご1の位置が昇降路の終端階付近であることを検出する色検出部としてのセンサ13aであることを特徴とする。なお、塗装部12a,12b,12cは、ガイドレール3aに塗装するのではなく、第1実施形態と同様に、昇降路の壁面に直接着色されていても良い。
【0029】
次に動作を説明する。まず、図示しないモータが動き出すと、メインロープ5に接続されたかご1と釣合重り2が動き始める。このとき、調速器6もかご1に接続されている図示しないロープによって回転し始めて、この調速器6に接続された速度検出器7により、かご速度信号を制御部10に出力する。かご1の位置が終端階付近に移動した場合、かご1に設置された色検出部としてのセンサ13aがガイドレール3aの塗装部12aに塗られた青を検出すると、図示しないテールコードを経由してかご位置信号を制御部10に出力する。
【0030】
このとき、速度検出器7から出力される速度信号が、予め設定されている速度を超えていた場合、制御部10は図示しないエレベータの安全回路を遮断し、図示しない主回路およびブレーキ回路を遮断して図示しないエレベータモータに制動を掛ける。ここで、予め設定されている速度とは、青色が塗装された位置から減速を制御した場合に、緩衝器11にかご1が衝突しても許容できる速度まで十分に減速可能な最大速度である。この動作はセンサ13aが塗装部12b(または12c)に塗られた黄色(赤色)を検出した場合に速度検出器7からの速度信号が予め設定されている速度を超えていた場合も同様である。この場合、予め設定されている速度とは、黄色または赤色が塗装された位置から減速を制御した場合、緩衝器11にかご1が衝突しても許容できる速度まで減速可能な最大速度であるのは青色の場合と同様である。
【0031】
以上のように、第2実施形態によれば、エレベータのかご1側のガイドレール3aに着色された塗装部12a,12b,12cを設け、これらの塗装部12a,12b,12cをかご1に設置されたセンサ13aで検出することにより、昇降路21における終端階付近でのかごの位置を正確に検出することができ、このときの検出速度が異常過速度となる虞がある場合に速度検出器7により検出された速度よりも強制的な制動を掛けるように制御して、かご1が緩衝器11に衝突する前に緩衝器11の許容速度以下にまで低減させることができる。
【0032】
なお、この第2実施形態に係るエレベータ終端減速装置は、第1実施形態における終端階識別部27は、昇降路21の中央階25と終端階24との壁面で異なるように塗装された塗装部12a,12b,12cよりなり、かご位置センサとしてのセンサ13aは、塗装部12a,12b,12cの塗装の異なりを検知することによりかご1が昇降路21の終端階24に位置するのか中央階25に位置するのかを検出するようにしても良い。この変形例では、塗装部12a,12b,12cの塗装色ではなく塗装状態を変更させて中央階25と終端階24との違いを検出するようにしている。
【0033】
(第3実施形態)
第3実施形態に係るエレベータ強制減速装置は、第1実施形態における終端階識別部27が昇降路21の中央階25と終端階24との壁面に付着されて終端階24に近づくにつれて模様の状態が変化する縞模様としての横縞部14よりなり、かご位置センサ28が横縞部14の状態の変化を検知してかご1の位置が昇降路21の終端階24付近であることを検出する縞模様検出用センサ13bであるものである。
【0034】
第3実施形態の構成について、図3を参照しながら説明する。図3に示す構成においては、第1実施形態の終端階識別部27が昇降路21の中央階25では横縞部14の間隔が広く終端階24では横縞部14の間隔が狭く形成され、かご位置センサ28は横縞部14の間隔の異なりを検知することによりかご1が昇降路21の終端階24に位置するのか中央階25に位置するのかを検出するようにしても良い。縞模様検出用のセンサ13bはレーザ等の光源を有し、光の反射により対象の長さや幅を測定するセンサであっても良い。また、横縞部14は、昇降路21内に設けられたガイドレール3aに形成されている。
【0035】
次に、動作を説明する。図示しないモータが動作を開始すると、メインロープ5に繋がれたかご1と釣合重り2が昇降を開始する。このとき、調速器6もかご1に接続されている図示されないロープによって回転し始めて、調速器6に接続された速度検出器7によりかご速度信号が制御部10に出力される。特定の縞の間隔または幅により、予め設定されている速度を超えていた場合に、制御部10は図示しないエレベータの安全回路を遮断して図示しない主回路およびブレーキ回路を遮断してかご速度を強制減速する減速手段22によりエレベータのモータに制動を掛けている。
【0036】
この第3実施形態によれば、エレベータのかご1側のガイドレール3aの終端階付近に終端階へ向かう方向に横縞の間隔が一定の割合で変化する横縞部14を設け、かご1に設置されたセンサ13bにより横縞の間隔や幅を検出することにより、かご1の位置を検出することができ、かごの昇降速度が異常に過剰となっている場合にその過速度を速度検出器7により検出して、制御部10の減速制御手段30の制御によりかご速度を強制減速する減速手段22によりエレベータのモータに制動を掛けて、かご1が緩衝器11に衝突する前に緩衝器11の許容速度以下まで低減させることができる。
【0037】
(第4実施形態)
次に、図4を参照しながら第4実施形態を説明する。図4は、第4実施形態によるエレベータ強制減速装置の構成を示す側面図である。図5においては、第1実施形態に係る終端階識別部27は、かご1の外壁1aに設けられたかご位置センサ28としての磁気センサcに対向して昇降路21の壁面に設けられたガイドレール3aの終端階の壁面に設けられた磁気テープ15を備えている。この磁気テープ15は、磁力を発する磁気部を有していても良い。また、磁気部がかご1の昇降方向に所定の間隔で設けられている場合、この磁気部は磁気パターンとなっている。
【0038】
また、かご位置センサ28としての磁気センサ13cは磁気テープ15を検出してかご1の位置が昇降路21の終端階24付近であることを検出している。
【0039】
第4実施形態の動作を説明する。図示しないモータが動作を開始すると、メインロープ5に接続されたかご1と釣合重り2が昇降を開始する。このとき、調速器6もかご1に接続されている図示されないロープによって回転を開始し、調速器6に接続された速度検出器7によりかご速度信号が制御部10に出力される。かご1の位置が終端階24付近に移動した場合、かご1に設置された磁気センサ13cがガイドレール3aに貼付された磁気テープ15を検出する。センサ13cはこの磁気テープ15の磁気部の検出により検出信号を制御部10へ出力する。
【0040】
制御部10は、検出されたかご1の昇降速度を予め設定されている速度と比較して予め設定された速度を超えている場合に、図示しないエレベータの安全回路を遮断し、図示しない主回路およびブレーキ回路を遮断して、エレベータモータに強制的に制動を掛ける。ここで、予め設定されている速度とは、磁気テープ15が取り付けられている位置から減速制御したときに緩衝器11にかご1が衝突しても許容できる速度まで減速できる最大速度のことである。
【0041】
第4実施形態に係るエレベータ強制減速装置によれば、ガイドレール3aの終端階24近くに磁気テープ15を設け、かご1に設けられた磁気センサ13cによって磁気テープ15の磁気部を検出することにより、終端階24付記でのかご1の位置を検出することができ、そのときに昇降するかご1が異常な過速度を有するときにこの異常な過速度を速度検出器7で検出して、制御部10により強制的に制動を掛けるようにしているので、かご1が緩衝器11に衝突する前に緩衝器11の緩衝許容速度以下までに速度を低減できる。
【0042】
(第5実施形態)
次に、図5を用いて、第5実施形態によるエレベータ強制減速装置の構成を説明する。第3実施形態における横縞部または第4実施形態における磁気部は、図5に示すように、所定の間隔を有する識別パターン17となっており、この識別パターン17の所定の間隔の数は、かご位置センサ13dにより検知され、この識別パターン17の間隔の数は、減速制御手段30に設けられた演算部18によるカウントされる。演算部18は、かご位置センサ13dにより検知された識別パターン17の間隔の数を所定の単位時間でカウントする。減速制御手段30は、演算部18によりカウントされた所定の単位時間あたりの識別パターンの間隔の数に基づいて、かご1の移動速度を求めることにより制御信号を出力する。
【0043】
第5実施形態の構成を説明する。昇降路21内には、かご1側のガイドレール3aとついになるかご側ガイドレール16aが設けられており、このガイドレール16aには、終端階24に近いポイントから中央階25を経由して最上階の終端階24まで一定の間隔で設けられた横縞部または磁気部よりなる識別パターン17が設けられている。なお、識別パターン17を設ける場所は、かご1用のガイドレール16aに限定されず、対をなすもう一方のガイドレール3aであっても、昇降路21の平面であっても良い。
【0044】
次に、動作を説明する。かご1の位置検出に関する動作は第1ないし第4実施形態と同様であるので、重複説明を省略する。かご1が走行し、終端階24に近づくと、かご1に設置されたセンサ13dがガイドレール16aに設置された識別パターン17を検出してこの識別パターン17の所定の間隔の数を検出信号として演算部18に出力する。演算部18では、検出信号から単位時間当たりのかごの昇降速度を計算して速度信号として制御部10へ出力する。
【0045】
制御部10は第1ないし第4実施形態の何れかにより出力されるかご1の位置信号を入力すると共に、演算部18からの速度信号が予め設定されている速度を超えていた場合には、制御部10はエレベータ安全回路を遮断して主回路またはブレーキ回路を遮断する制御信号を遮断手段22に出力して、かごの昇降速度を緩めるように強制的に減速させる。
【0046】
第5実施形態によれば、エレベータかご1側の一方のガイドレール16aの終端階24の近くに一定の間隔を有する識別パターン17を設け、かご1に設置されたセンサ13dにより識別パターン17の間隔の数を検出し、その間隔の数に基づいて演算部18により単位時間当たりのかご1の昇降速度を計算して速度信号を生成し、この速度信号と、かご1の位置検出信号とに基づいて異常過速度を検出して、制御部10により強制的に制動を掛けてかご1の緩衝器11への衝突速度を緩めるように強制減速させることができる。
【0047】
(第6実施形態)
なお、上述した第1ないし第5実施形態においては、終端階識別部27としての塗装部12a,12b,12c、横縞部14、磁気テープ15、識別パターン17等はかご1側のガイドレール3a,16aに設けられているものとして説明したが、本発明はこれに限定されず、終端階識別部は、かご1の昇降に伴い昇降する釣合重り2を案内するために昇降路21内に設けられた釣合重り用のガイドレール3b,16bに設けられていても良い。この具体例として、図6,図7に示す第6,第7実施形態がある。
【0048】
図6は、終端階識別部を釣合重りガイドレール3bに設けるようにした、第6実施形態によるエレベータ強制減速装置の構成を示す側面図である。基本的な構成は、第1ないし第5実施形態と同様であるので、同一構成要素に同一符号を付して重複説明を省略する。図6において、釣合重り2用のガイドレール3bには、塗装部19a,19b,19cが終端階24に近い箇所に設けられている。なお、かご1が最上階に近い部分にある場合には釣合重り2は最下階付近にあり、図示のように、かご1が中央階25付近にある場合は釣合重り2も中央階付近にあり、かご1が最下階に近い部分にある場合には釣合重り2は最上階付近にあるので、かご用のガイドレール3aへの色の塗り分けとは逆転させるように釣合重り用のガイドレール3bへの塗り分けを行なえば良い。
【0049】
図6に示す具体例では、終端階24に近い特定位置に青色塗装部19a,黄色塗装部19b,赤色塗装部19cが設けられ、釣合重り2には色検出用センサ13eが設けられている。なお、塗装部19a,19b,19c,は、ガイドレール3bではなく昇降路24の壁面に直接塗装して設けても良い。釣合重り2に設けたセンサ13eにより検出された塗装部19a,19b,19cの色は信号線20により制御部10へ出力される。
【0050】
(第7実施形態)
図7は、第7実施形態によるエレベータ強制減速装置の構成を示す側面図である。この第7実施形態は第5実施形態の構成を釣合重りに適用した具体例である。図7において、ガイドレール3bには青色塗装部19a,黄色塗装部19b,赤色塗装部19cが設けられると共に、もう一方の釣合重り2用のガイドレール16bには、横縞部または磁気部等の識別パターン17が設けられている。釣合重り2には、塗装部検出用の色検出用センサ13eが設けられると共に、識別パターン17検出用のセンサ13fが設けられている。
【0051】
次に、動作を説明する。釣合重り2の位置検出に関する動作は第6実施形態と同様であるので、重複説明を省略する。かご1が走行し、終端階24に近づくと釣合重り2に設置されたセンサ13fがガイドレール16bに設置された識別パターン17を検出して、この識別パターン17の所定の間隔の数を検出信号として信号線20を介して演算部18に出力する。演算部18では、検出信号から単位時間当たりのかごの昇降速度を計算して速度信号として制御部10へ出力する。
【0052】
制御部10は第6実施形態により出力される釣合重り2の位置信号を入力すると共に、演算部18からの速度信号が予め設定されている速度を超えていた場合には、制御部10はエレベータ安全回路を遮断して主回路またはブレーキ回路を遮断する制御信号を遮断手段22に出力して、かごの昇降速度を緩めるように強制的に減速させる。
【0053】
第7実施形態によれば、エレベータの釣合重り2の一方のガイドレール16bの終端階24の近くに一定の間隔を有する識別パターン17を設け、釣合重り2に設置されたセンサ13fにより識別パターン17の間隔の数を検出し、その間隔の数に基づいて演算部18により単位時間当たりのかご1の昇降速度を計算して速度信号を生成し、この速度信号と、釣合重り2の位置検出信号とに基づいて異常過速度を検出して、制御部10により強制的に制動を掛けてかご1の緩衝器11への衝突速度を緩めるように強制減速させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】第1実施形態によるエレベータ強制減速装置の構成を示す斜視図。
【図2】第2実施形態によるエレベータ強制減速装置の構成を示す側面図。
【図3】第3実施形態によるエレベータ強制減速装置の構成を示す側面図。
【図4】第4実施形態によるエレベータ強制減速装置の構成を示す側面図。
【図5】第5実施形態によるエレベータ強制減速装置の構成を示す側面図。
【図6】第6実施形態によるエレベータ強制減速装置の構成を示す側面図。
【図7】第7実施形態によるエレベータ強制減速装置の構成を示す側面図。
【図8】従来のエレベータ強制減速装置の構成を示す斜視図。
【符号の説明】
【0055】
1 エレベータのかご
2 釣合重り
3a,3b ガイドレール(かご側、釣合重り側)
4 モータシーブ
5 メインロープ
6 調速器
7 速度検出器
8 増幅装置
10 制御部
11 緩衝器
12a,12b,12c 塗装部(青、黄、赤)
13a,13b,13c,13d,13e,13f センサ
14 横縞部
15 磁気テープ
16a,16b ガイドレール(かご側、釣合重り側)
17 識別パターン
18 演算部
19a,19b,19c 塗装部(青、黄、赤)
21 昇降路
22 減速手段
24 終端階
25 中央階
27 終端階識別部
28 かご位置センサ
30 減速制御手段
50 エレベータ強制減速装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降路内の所定位置でかごの異常速度を検出した場合に動力回路またはブレーキ回路を遮断してかご速度を強制減速させる減速手段と、前記減速手段により減速されたかごを受け止める緩衝器と、を備えるエレベータ強制減速装置において、
調速器に取り付けられた速度検出部と、
昇降路内の終端階付近の昇降路壁面にかごの外壁に対向して設けられ、前記昇降路の終端階付近を中央階付近とは区別して識別する終端階識別部と、
前記終端階識別部に対向する前記かごの外壁に設けられて前記終端階識別部を検知することにより前記かごの位置を検出するかご位置センサと、
前記速度検出部により検出された前記かごの移動速度信号と前記かご位置センサにより検知された前記かごの位置信号とに基づいて、前記かご速度を強制減速する前記減速手段に対して制御信号を出力する減速制御手段と、
を備えることを特徴とするエレベータ強制減速装置。
【請求項2】
前記終端階識別部は、前記かごの外壁に設けられた前記かご位置センサに対向して前記昇降路壁面の終端階付近の壁面に塗装された塗装部よりなり、
前記かご位置センサは、前記塗装部を検出して前記かごの位置が前記昇降路の終端階付近であることを検出するかご位置検出部であることを特徴とする請求項1に記載のエレベータ強制減速装置。
【請求項3】
前記塗装部は、前記昇降路の中央階付近の壁面と終端階付近の壁面とで変化する塗装を有し、
前記かご位置検出部は、前記塗装部の塗装の変化を検知することにより前記かごが昇降路の終端階付近に位置するのか中央階付近に位置するのかを検出することを特徴とする請求項2に記載のエレベータ強制減速装置。
【請求項4】
前記塗装部は、前記昇降路の中央階付近の壁面の色と終端階付近の壁面の色とが変化する塗装を有し、
前記かご位置検出部は、前記塗装部の前記色の変化を検知することにより前記かごが昇降路の終端階付近に位置するのか中央階付近に位置するのかを検出することを特徴とする請求項3に記載のエレベータ強制減速装置。
【請求項5】
前記終端階識別部は、前記昇降路の中央階付近と終端階付近との壁面に付着されて前記終端階に近づくにつれて縞模様の状態が変化する横縞部よりなり、
前記かご位置センサは、前記横縞部の縞模様の状態の変化を検知して前記かごの位置が前記昇降路の終端階付近であることを検出する縞模様検出部であることを特徴とする請求項1に記載のエレベータ強制減速装置。
【請求項6】
前記横縞部は、前記昇降路の中央階付近では前記縞模様の間隔が広く終端階付近では前記縞模様の間隔が狭くなるように間隔の変化を有する縞模様であり、
前記かご位置センサは、前記縞模様の間隔の変化を検知することにより前記かごが昇降路の終端階付近に位置するのか中央階付近に位置するのかを検出する前記縞模様検出部であることを特徴とする請求項5に記載のエレベータ強制減速装置。
【請求項7】
前記終端階識別部は、前記かごの外壁に設けられた前記かご位置センサに対向して前記昇降路壁面の終端階付近の壁面に設けられて前記かごの昇降方向に所定間隔で磁気部を有する磁気テープよりなり、
前記かご位置センサは、前記磁気テープを検出して前記かごの位置が前記昇降路の終端階付近であることを検出する磁気センサであることを特徴とする請求項1に記載のエレベータ強制減速装置。
【請求項8】
前記かご位置センサは、前記終端階識別部から検出した前記横縞部または磁気部よりなる識別パターンの数を検知すると共に、
前記減速制御手段は、前記かご位置センサにより検知された前記識別パターンの数を所定の単位時間でカウントする演算部を含み、前記減速制御手段は前記演算部によりカウントされた前記所定の単位時間あたりの前記識別パターンの数に基づいて前記かごの移動速度を求めることにより前記制御信号を出力することを特徴とする請求項5に記載のエレベータ強制減速装置。
【請求項9】
前記終端階識別部は、前記昇降路内に設けられて前記かごの昇降を案内するかごガイドレールに設けられていることを特徴とする請求項1に記載のエレベータ強制減速装置。
【請求項10】
前記終端階識別部は、前記昇降路内に設けられて前記かごの昇降に伴い昇降する釣合重りを案内する釣合重りガイドレールに設けられていることを特徴とする請求項1に記載のエレベータ強制減速装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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