説明

エレベータ用巻上機

【課題】ロープの走行による駆動綱車の摩耗に起因した駆動綱車の再加工や駆動綱車の交換作業を省略することができるエレベータ用巻上機を得る。
【解決手段】駆動綱車11と、駆動綱車11の外周部に周方向に複数並べられて取り付けられるロープ保持装置13とを備え、ロープ保持装置13は、それぞれ、挟持部24、及びロープ9を支持するロープ支持部21Bを有し、ロープ9を挟み込んで保持する保持位置、及びロープ9の保持を開放する開放位置の間を移動可能に配設される一対の保持部材20と、一対の保持部材20を開放位置に向かう方向に付勢するコイルばね26と、を備え、一対の保持部材20は、ロープ9によるロープ支持部21Bへの押圧力がコイルばね26の付勢力より大きくなると保持位置に移動され、ロープ9によるロープ支持部21Bへの押圧力が付勢部材26の付勢力より弱められると、開放位置に移動される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、かごが一端側に連結されるエレベータのロープを走行させる駆動綱車を有するエレベータ用巻上機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なエレベータは、電動機の駆動力により回転される駆動綱車と、駆動綱車に巻き掛けられたロープの一端側に連結されるかごと、ロープの他端側に連結されるつり合いおもりとを備えている。この種のエレベータにおいては、駆動綱車とロープとの間に発生する摩擦力を利用して、駆動綱車の回転に連動させてロープを走行させてかごを昇降させるトランクション方式が主流となっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
トラクション方式のエレベータにおいて、駆動綱車の外周面には、ロープの直径に応じた形状を有し、駆動綱車の周方向全域に延在する綱車溝が、綱車の軸方向に互いに離間をあけて複数形成されている。
そして、ロープが、綱車溝の壁面との間に摩擦力が発揮されるように綱車溝に係合し、駆動綱車の回転に連動して走行されるようになっている。このとき、綱車溝はくさび状に形成され、ロープが綱車溝に食い込むこと(くさび効果)により、効果的にロープと綱車溝の壁面との間の摩擦力が確保されている。
【0004】
ここで、綱車溝の壁面は、ロープの走行時間に応じて徐々に摩耗される。綱車溝の壁面の摩耗が進行すると、綱車溝の表面に凹凸を生じ、ロープの走行させたときにかごが振動して乗り心地が悪くなる。最悪の場合、くさび効果が得られなくなるばかりか、ロープと綱車溝との十分な摩擦が確保できなくなってエレベータの運転を停止せざるを得なくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−194079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のトラクション方式のエレベータにおいては、綱車溝の壁面の摩耗が進行する前に、定期的に綱車溝の再加工(リグルーブ)や駆動綱車を新規のものに交換する必要がある。この作業は、エレベータの稼働を停止してかご及びつり合いおもりを昇降路内の固定部に固定したのち、一旦、ロープを駆動綱車から取り外して行う必要があり、エレベータを再稼働できる状態にするまでに、例えば、一週間などの長時間を要する。このため、エレベータの運転停止により乗客に不便を強いていた。
【0007】
この発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、ロープと駆動綱車とを接触させずに駆動綱車に対してロープを保持し、ロープを駆動綱車から退避させることなく点検または交換可能なロープ保持装置を有し、ロープの走行による駆動綱車の摩耗に起因した駆動綱車の再加工や駆動綱車の交換作業を省略することができるエレベータ用巻上機を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明のエレベータ用巻上機は、駆動綱車と、駆動綱車の外周部に周方向に複数並べられて取り付けられ、一端側及び他端側にかご及びつり合いおもりが連結されるロープが掛けられ、掛けられたロープの部位を駆動綱車に対して保持するロープ保持装置とを備え、ロープ保持装置は、それぞれ、保持部を有する挟持部、及び挟持部に一体に形成され、ロープを支持するロープ支持部を有し、保持部の間にロープを挟み込んで保持する保持位置、及び挟持部によるロープの挟み込みを開放する開放位置の間を移動可能に配設される一対の保持部材と、駆動綱車に取り付けられ、一対の保持部材を開放位置に向かう方向に付勢する付勢部材と、を備え、一対の保持部材は、ロープによるロープ支持部への押圧力が付勢手段の付勢力より大きくなるとロープの押圧力により保持位置に移動され、ロープによるロープ支持部への押圧力が付勢部材の付勢力より弱められると、開放位置に移動される。
【発明の効果】
【0009】
この発明に係るエレベータ用巻上機によれば、ロープが、駆動綱車の外周面に接触することなくロープ支持部に支持されて、挟持部に加圧状態に挟み込まれて保持される。これにより、駆動綱車が、ロープの走行により摩耗されることがなくなる。従って、ロープの走行に伴う駆動綱車の摩耗に起因して駆動綱車を新規のものに交換したり、従来のようにロープが掛けられる綱車溝を再加工したりする必要がなくなる。
【0010】
また、ロープ保持装置の点検や交換作業は、点検や交換対象となるロープ保持装置の駆動綱車の配置位置が、ロープの巻き掛け位置から外れるまで、駆動綱車を回転させることで、駆動綱車からロープを外す大掛かりな作業を必要とすることなしに行うことができる。
つまり、エレベータ用巻上機の保守作業を、従来のように、長期間に亘って、エレベータの運転を停止させることなく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の一実施の形態に係る巻上機を有するエレベータの模式図である。
【図2】図1のA部拡大図である。
【図3】図2をB方向からみた要部拡大側面図である。
【図4】図3のIV−IV矢視断面図である。
【図5】図3のV−V矢視断面図である。
【図6】この発明の一実施の形態に係るエレベータ用巻上機の動作を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して説明する。
【0013】
図1はこの発明の一実施の形態に係る巻上機を有するエレベータの模式図、図2は図1のA部拡大図、図3は図2をB方向からみた要部拡大側面図、図4は図3のIV−IV矢視断面図、図5は図3のV−V矢視断面図である。
なお、図3では、説明の便宜上、ロープを一点鎖線にて図示している。
【0014】
図1及び図2において、エレベータ1は、昇降路2の上部に設けられる機械室3と、機械室3に設けられ、駆動綱車11、駆動綱車11に回転トルクを付与する電動機12、及び駆動綱車11の外周部に周方向に互いに間隔をあけて複数取り付けられるロープ保持装置13を有するエレベータ用巻上機10と、機械室3に設置されたそらせ車5と、ロープ保持装置13を介して駆動綱車11に巻きかけられ、さらに、そらせ車5に巻きかけられて、一端側及び他端側が昇降路2内に垂下されたロープ9と、ロープ9の一端に連結されるかご7と、ロープ9の他端に連結されるつり合いおもり8とを備えている。
なお、ロープ保持装置13を介して駆動綱車11に巻き掛けられるロープ9は、駆動綱車11の軸方向に複数設けられている。ロープ9の材料としては、JIS G3506で規定されるSWRH37である。
【0015】
駆動綱車11には、図3及び図4に示されるように、ロープ保持装置13の配置箇所に対応する外周面の部位に開口する配設溝11aが、周方向に互いに離間して複数形成されている。各配設溝11aの底面には、図5に示されるように、一対のねじ孔11bが、周方向に互いに離間して形成されている。また、一対のねじ孔11bの間には、図3及び図4に示されるように、付勢手段配設穴11cが駆動綱車11の径方向に深さ方向を一致させて形成されている。
【0016】
次いで、ロープ保持装置13の構成の詳細について説明する。
図3〜図5に示されるように、ロープ保持装置13は、駆動綱車11の外周部に配設されるロープ挟持手段15と、付勢手段配設穴11cに主要部を配置される付勢手段25とにより構成される。
【0017】
ロープ挟持手段15は、駆動綱車11の外周部に配置される一対の固定部材17、一対の固定部材17を駆動綱車11の外周部に固定する締着部材としての取付ボルト18、及び固定部材17に支持される一対の回動軸19を有する取付支持手段16と、一対の回動軸19の軸まわりに回動自在に配置される一対の保持部材20とを備えている。
【0018】
固定部材17のそれぞれは、図3及び図5に示されるように、所定の幅で所定の長さを有する板上のベース板17A、及びベース板17Aの一面、かつ幅方向の両側から突出される軸支持部17Bを有する。ベース板17Aの中央部には、貫通孔17aが形成され、軸支持部17Bには、ベース板17Aの長さ方向に孔方向の一致する軸支持孔17bが形成されている。
【0019】
保持部材20は、図3及び図4に示されるように、矩形平板状のロープ押圧部21A、及びロープ押圧部21Aの一面側に突出されるロープ支持部21Bを有する基体部21と、ロープ押圧部21Aの一面の主要部に取り付けられる摩擦材22と、摩擦材22をロープ押圧部21Aに固定する摩擦材固定手段としての摩擦材固定ボルト23とを備えている。そして、挟持部24が、ロープ押圧部21Aと摩擦材22により構成され、摩擦材22の表面が後述するようにロープ9との間に摩擦力を発揮してロープ9を保持する保持部として作用する。
【0020】
ロープ支持部21Bは、ロープ押圧部21Aの長手方向の中間部から突出されている。そして、ロープ支持部21Bとロープ押圧部21Aとの連結部には、ロープ押圧部21Aの長手方向に孔方向の一致する軸挿通孔21aが形成されている。
摩擦材22は、ロープ9の材料と比べて柔らかい鋳鉄、銅、及びアルミニウムを材料として作製されている。
【0021】
付勢手段25は、付勢部材としてのコイルばね26、及びコイルばね26の一端に取り付けられた押圧部材27を有している。
【0022】
次いで、ロープ挟持手段15の組み立て構造について説明する。
摩擦材22は、ロープ押圧部21Aの他面側からロープ押圧部21Aを挿通した摩擦材固定ボルト23の先端に螺合されて、ロープ押圧部21Aの一面に着脱自在に固定される。これにより、基体部21と摩擦材22とが一体化された保持部材20が得られる。
【0023】
一対の固定部材17は、それぞれのベース板17Aの長手方向を一致させ、ベース板117Aの長手方向に互いに間隔をあけて配置されている。

また、保持部材20のそれぞれが、一対の固定部材17の離間方向にロープ押圧部21Aの長手方向を一致させ、ロープ支持部21Bが一対の固定部材17の軸支持部17Bの間に位置するように配置されている。
このとき、一対の保持部材20の軸挿通孔21aが、軸支持部17Bに形成されている軸支持孔17bと相対する位置に配置される。
【0024】
そして、回動軸19が、軸挿通孔21aに挿通され、回動軸19の一端側及び他端側が、一対の軸支持部17Bのそれぞれの軸支持孔17bに挿入固定されている。これにより、固定部材17及び保持部材20が回動軸19を介して連結され、一対の保持部材20のそれぞれが、ロープ押圧部21Aとロープ支持部21Bとの連結部、言い換えれば、挟持部24とロープ支持部21Bとの連結部に挿通された回動軸19まわりに回動自在となっている。また、ベース板17Aの貫通孔17aの孔中心間の距離は、駆動綱車11の各配設溝11aに形成された一対のねじ孔11bの孔中心間の距離に対応している。
【0025】
また、一対の保持部材20は、回動軸19まわりの回動により、ロープ支持部21Bの先端を互いに相対させて、ロープ押圧部21Aの一面に取り付けられた摩擦材22を相対させることが可能に回動軸19に支持されている。
【0026】
以上のように回動軸19を介して一体化された固定部材17及び保持部材20は、一対のベース板17Aのそれぞれに形成された貫通孔17aが、配設溝11aの底面に形成された一対のねじ孔11bのそれぞれに対応するように配置されている。そして、取付ボルト18が、貫通孔17aを挿通してねじ孔11bに螺合され、取付ボルト18により固定部材17が、駆動綱車11の外周部に取り付けられる。
【0027】
このとき、一対の回動軸19は、その軸方向の中心部と駆動綱車11の軸心とを結ぶ方向、及び駆動綱車11の軸方向に直交する方向に軸方向を一致させて、駆動綱車11の軸方向に互いに離間して配置される。
また、一対の保持部材20のロープ押圧部21Aとロープ支持部21Bとの連結部が、配設溝11aに配置され、ロープ押圧部21A(挟持部24)の先端(他端)が配設溝11aから駆動綱車11の外側に向けて延在されている。
また、一対の保持部材20は、ロープ支持部21Bが突出される挟持部24の面を向かい合わせ可能に回動軸19に、ロープ押圧部21A及びロープ支持部21Bの連結部を支持されている。そして、挟持部24が向かい合わされたときに、ロープ支持部21Bにロープ9を支持させることが可能になっている。
【0028】
また、付勢手段25が、コイルばね26を縮ませて、一対のロープ支持部21Bのそれぞれの先端側の部位と付勢手段配設穴11cの底面との間に配置されている。このとき、コイルばね26の一端に連結された押圧部材27が、ロープ支持部21B側に配置されてロープ支持部21Bの先端側に押し当てられ、ロープ支持部21Bの先端側が駆動綱車11の径方向の外側に向けて付勢されている。
【0029】
以上のように構成されたロープ保持装置13では、一対の保持部材20は、互いに回動軸19まわりに逆方向に回動することで、ロープ押圧部21Aの間、言い換えれば、挟持部24の間が離れたり近づいたりする。
このとき、ロープ支持部21Bの先端側が、駆動綱車11の中心に向け、コイルばね26の付勢力より大きな力で押圧されると、ロープ9を摩擦材22の間に加圧して挟み込むことが可能な位置まで、一対の摩擦材22の間を接近させるように、一対の保持部材20が回動軸19まわりに回動する。
【0030】
また、ロープ支持部21Bを駆動綱車11に向けて押圧する力が、コイルばね26の付勢力より小さくなると、一対の保持部材20は、保持位置にあるときと比べて、一対の挟持部24の距離が離れる方向に回動軸19まわりに回動し、所定角度回動したところで、ロープ支持部21Bの先端面の押圧部材27側の部位が互いに当接し、それ以上の回動が規制される。
【0031】
複数のロープ保持装置13が、ロープ9の巻き掛け位置に対応させて、駆動綱車11の周方向に配列されて駆動綱車11の外周部に取付ボルト18により取り付けられている。
【0032】
次いで、エレベータ用巻上機10の動作について説明する。
図6はこの発明の一実施の形態に係るエレベータ用巻上機の動作を説明する断面図である。
ロープ9は、図3及び図4に示されるように、一対の保持部材20の挟持部24の間に位置するように、ロープ挟持手段15を介して駆動綱車11に支持され、図2に示されるように駆動綱車11の外周面に沿って延在している。複数のロープ挟持手段15のうち、ロープ9が掛けられるロープ挟持手段15のロープ支持部21Bは、ロープ9の自重、及びかご7とつり合いおもり8の重量によって押圧される。なお、コイルばね26の付勢力は、ロープ9がロープ支持部21Bを押圧する押圧力より小さいものが用いられる。
【0033】
また、駆動綱車11の外周部のうち、おおよそ高さ方向の下半分に位置する部位に取り付けられたロープ挟持手段15には、ロープ9は掛けられない。ロープ9の掛けられないロープ挟持手段15において、一対の保持部材20は、図6に示されるように、挟持部24の間隔が広まる方向に付勢手段25によりロープ支持部21Bを押圧されて回動軸19の軸まわりに回動し、ロープ支持部21Bの先端間が当たったところで回動を停止する。このとき、挟持部24の間の間隔は、ロープ9の直径より広くなっており、この状態にある一対の保持部材20の位置を開放位置とする。
【0034】
また、ロープ9が掛けられていない位置にあったロープ挟持手段15が、駆動綱車11の回転によりロープ9の巻き掛け位置まで移動されると、ロープ9が一対のロープ支持部21Bを付勢手段25の付勢力に抗して押圧し、一対の保持部材20が、一対の挟持部24の間を狭める方向に回動軸19まわりに回動する。そして、一対の保持部材20の回動は、図4に示されるように、ロープ9が、一対の挟持部24の間に加圧挟持されたところで停止される。この状態にある一対の保持部材20の位置を保持位置とする。一対の保持部材20が、保持位置に移動してロープ9を挟持すると、摩擦材22とロープ9との間に摩擦力が発揮され、確実にロープ9が保持部材20に保持される。
【0035】
そして、ロープ挟持手段15に掛けられたロープ9が駆動綱車11の回転に連動して走行し、ロープ挟持手段15から離れる位置まで到達すると、コイルばね26の付勢力に抗してロープ支持部21Bを押圧する力がなくなるので、一対の保持部材20は、開放位置に移動される。これにより、一対の挟持部24によるロープ9の加圧挟持状態が解除される。
【0036】
以上のように構成されたエレベータ用巻上機10においては、ロープ9が掛けられたロープ挟持手段15の保持部材20が、確実にロープ9を保持するので、ロープ9が、駆動綱車11の回転に連動して駆動綱車11に対して滑ることなく回転される。
【0037】
この発明によるエレベータ用巻上機10は、駆動綱車11と、駆動綱車11の外周部に複数並べられて取り付けられてロープ9を駆動綱車11に対して保持するロープ保持装置13とを備えている。ロープ保持装置13は、それぞれ、摩擦材22の表面により構成される保持部を有する挟持部24、及びロープ押圧部21Aに一体に形成され、ロープ9を支持するロープ支持部21Bを有し、保持部の間にロープ9を挟み込んで保持する保持位置、及び挟持部24によるロープ9の挟み込みを開放する開放位置の間を移動可能に配設される一対の保持部材20と、一対の保持部材20を開放位置に向かう方向に一対の保持部材20を付勢するコイルばね26と、を備えている。そして、一対の保持部材20は、ロープ9によるロープ支持部21Bへの押圧力がコイルばね26の付勢力より大きくなるとロープ9の押圧力により保持位置に移動され、ロープ9によるロープ支持部21Bへの押圧力がコイルばね26の付勢力より弱められると、コイルばね26の付勢力により開放位置に移動されるようになっている。
【0038】
従って、ロープ9は、駆動綱車11の外周面に接触することなく、ロープ支持部21Bに支持され、挟持部24に加圧挟持されて、駆動綱車11に対して保持されるので、駆動綱車11が、ロープ9の走行により摩耗されることがなくなる。従って、ロープ9を走行に伴う駆動綱車11の摩耗に起因して駆動綱車11を新規のものに交換したり、従来のようにロープ9が掛けられる綱車溝を再加工したりする必要がなくなる。
また、ロープ保持装置13の点検や交換作業は、点検や交換対象となるロープ保持装置13の駆動綱車11の配置位置が、ロープ9の巻き掛け位置から外れる位置まで、駆動綱車11を回転させることで、駆動綱車11からロープ9を外す大掛かりな作業を必要とすることなしに行うことができる。
【0039】
つまり、ロープ保持装置13の点検や交換作業といったエレベータ用巻上機10の保守作業を、従来のように、長期間に亘って、エレベータの運転を停止することなしに実施できる。
【0040】
また、保持部材20を駆動綱車11に対して支持する取付支持手段16の固定部材17が、取付ボルト18を用いて着脱自在に駆動綱車11に固定可能であるので、ロープ保持装置13の交換や点検作業が容易となる。
【0041】
取付支持手段16は、具体的には、それぞれ駆動綱車11の外周部に取付ボルト18により固定される固定部材17、及び固定部材17に支持される一対の回動軸19を有している。また、一対の保持部材20は、具体的には、挟持部24の他端側を駆動綱車11の外側に向け、挟持部24のロープ支持部21Bが突出される側を向かい合わせ可能に回動軸19に挟持部24及びロープ支持部21Bの連結部を支持されて、回動軸19まわりに回動し、挟持部24の間に配置されるロープ支持部にロープを支持可能に配置されている。そして、一対のロープ支持部21Bがロープ9から押圧されたときに、一対の保持部材20が回動して保持位置に移動し、コイルばね26は、駆動綱車11の外側に向けてロープ支持部21Bを押圧して一対の保持部材20が上記開放位置に向かう方向に回動させるように付勢している。
これによって、上述したように、エレベータ用巻上機10の保守作業を、長期間に亘って、エレベータの運転を停止することなしに実施できるという効果が得られる。
【0042】
また、摩擦材22の材料は、ロープ9より柔らかいものが用いられているので、ロープ9の摩耗が抑えられ、ロープ9の摩耗によりロープ9を頻繁に交換することを防止できる。これにより、エレベータ1の管理に係るコストを著しく削減できる。
【0043】
また、摩擦材22が、ロープ押圧部21Aに着脱自在に取り付けられているので、エレベータ1ごとに、ロープ9の直径が異なっていても、摩擦材22は、ロープ9の直径に対応した形状のものを用いることができる。これにより、ロープ挟持手段15を構成する摩擦材22以外の部品を共通化可能であり、部材の在庫管理が容易となるとともに、エレベータ1の管理に係るコストを削減できる。
【0044】
なお、上記実施の形態では、付勢手段25は、コイルばね26とコイルばね26の一端に設けられた押圧部材27により構成されるものとして説明したが、付勢手段25は、例えば、一対のロープ支持部21Bのそれぞれと駆動綱車11の外周部の間に設けた一対のコイルばねのそれぞれにより構成されていてもよい。
【0045】
また、基体部21を構成するロープ押圧部21A、及びロープ押圧部21Aの一面に取り付けられる摩擦材22により挟持部24が構成されるものとして説明したが、強度的に問題がなければ、摩擦材が、基体部21を兼ねるようにし、挟持部24を同一部材により構成してもよい。
【符号の説明】
【0046】
7 かご、8 つり合いおもり、9 ロープ、10 エレベータ用巻上機、11 駆動綱車、16 取付支持手段、17 固定部材、18 取付ボルト(締着部材)、19 回動軸、20 保持部材、21B ロープ支持部、22 摩擦材、24 挟持部、26 コイルばね(付勢部材)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動綱車と、上記駆動綱車の外周部に周方向に複数並べられて取り付けられ、一端側及び他端側にかご及びつり合いおもりが連結されるロープが掛けられ、掛けられた上記ロープの部位を上記駆動綱車に対して保持するロープ保持装置とを備えるエレベータの巻上機であって、
上記ロープ保持装置は、
それぞれ、保持部を有する挟持部、及び上記挟持部に一体に形成され、上記ロープを支持するロープ支持部を有し、上記保持部の間に上記ロープを挟み込んで保持する保持位置、及び上記挟持部による上記ロープの挟み込みを開放する開放位置の間を移動可能に配設される一対の保持部材と、
上記駆動綱車に取り付けられ、上記一対の保持部材を上記開放位置に向かう方向に付勢する付勢部材と、
を備え、
上記一対の保持部材は、上記ロープによる上記ロープ支持部への押圧力が上記付勢部材の付勢力より大きくなると上記ロープの押圧力により上記保持位置に移動され、上記ロープによる上記ロープ支持部への押圧力が上記付勢部材の付勢力より弱められると、上記開放位置に移動されることを特徴とするエレベータ用巻上機。
【請求項2】
上記保持部材を上記駆動綱車に対して支持する取付支持手段を備え、
上記取付支持手段は、上記駆動綱車に締着部材を用いて着脱自在に固定されることを特徴とする請求項1に記載のエレベータ用巻上機。
【請求項3】
取付支持手段は、それぞれ駆動綱車の外周部に上記締着部材により固定される固定部材、及び上記固定部材に支持される一対の回動軸を有し、
上記一対の回動軸は、軸方向の中心部と上記駆動綱車の軸心とを結ぶ方向、及び上記駆動綱車の軸方向に直交する方向に軸方向を一致させて、上記駆動綱車の軸方向に互いに離間して配置され、
上記ロープ支持部は、上記挟持部の一端側から突出され、
一対の上記保持部材は、上記挟持部の他端側を上記駆動綱車の外側に向け、上記挟持部の上記ロープ支持部が突出される側を向かい合わせ可能に上記回動軸に上記挟持部及び上記ロープ支持部の連結部を支持されて、上記回動軸まわりに回動し、上記挟持部の間に配置される上記ロープ支持部に上記ロープを支持可能に配置され、
一対の上記ロープ支持部が上記ロープから押圧されたときに、一対の上記保持部材が回動して上記保持位置に移動し、
上記付勢部材は、上記駆動綱車の外側に向けて上記ロープ支持部を押圧して一対の上記保持部材を上記開放位置に向かう方向に回動させるように付勢することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のエレベータ用巻上機。
【請求項4】
上記保持部は、上記ロープよりも柔らかい摩擦材により構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のエレベータ用巻上機。
【請求項5】
上記挟持部は、上記保持部と、上記ロープ支持部に一体に連結されるロープ押圧部とにより構成され、上記保持部は、上記ロープ押圧部に着脱自在に取り付けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のエレベータ用巻上機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−35920(P2012−35920A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−174622(P2010−174622)
【出願日】平成22年8月3日(2010.8.3)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】