説明

エレベータ用配線ダクト

【課題】幅方向に変位可能とし、配線に要する平面スペースを低減できるエレベータ用配線ダクトを提供する。
【解決手段】エレベータ用配線ダクト1000は、ダクト本体300とダクト蓋600とからなる。ダクト本体600は、長穴111、112が形成された第1の側面板100と、長穴211、212が形成された第2の側面板200からなる。エレベータ用配線ダクト1000を機械室に据え付ける際、第1の側面板100を第2の側面板200の上側に配置し、互いの底面部110,210を重ねる。この状態で各底面部の長穴どうしは上下で交差する。よってダクト幅B1を広げたり狭めたりしても交差で生じる開口が現れる。所望のダクト幅B1の際の開口にアンカーボルトを打ち込み、第1の側面板100、第2の側面板200を機械室床に固定する。ダクト蓋600も同様の構成により、蓋の幅をダクト幅B1にあわせることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はエレベータの機械室に敷設される、動力線又は信号線を配線するためのエレベータの配線装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、機械室を有するエレベータにおいては、機械室に十分な広さが確保されていたため、機械室へ設置する機器の大きさはそれほど大きな問題にならなかった。しかし、最近では機械室に占める機器の大きさが製品化における最重要課題の一つになってきている。しかしながら、床占有面積を小さくした機器では、自ずと機器配置が複雑になり、動力線又は信号線の配線の引き廻しが煩雑になる。このため、配線ダクトに収める電線、ケーブルの配線本数が機械室内において敷設場所ごとにばらつくことがあった。このため、法規上必要な占積率以上になる配線ダクトを使用していた。すなわち、施設場所ごとに必要とする配線ダクトの大きさが異なっていたが、法規上及び共通化などのため、小さい配線ダクトでも良い場所にも大きめの配線ダクトが使用されていた(例えば、特許文献1、2参照)。
【特許文献1】実開昭56−133727号公報
【特許文献2】特開2000−115950号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
図11は、従来の配線ダクトの斜視図を示す。従来の配線ダクトは、ダクト本体1と蓋2とから構成されている。図11では、見易さのため、蓋2を透明に示している。図11に示すような従来のエレベータの配線ダクトでは、小さい配線ダクトでも良い場所にも大きめの配線ダクトを使用することなどから、機械室に占める配線ダクトのスペースが大きくなり、機械室のスペースを有効利用する上での妨げとなり、また、機械室を小型にすることが困難であった。
【0004】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は、幅方向に平面的に変位を可能とすることにより、配線に要する平面的なスペースを低減し、機械室のスペースを有効活用できるエレベータ用配線ダクトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明のエレベータ用配線ダクトは、
配線ケーブルを収納するエレベータ用配線ダクトにおいて、
略長方形であるとともに第1長穴が形成された第1底面部と、前記第1底面部の一方の長辺から上方へ起立して側面をなす第1起立部とを有する第1部材と、
略長方形であるとともに第2長穴が形成された第2底面部と、前記第2底面部の一方の長辺から上方へ起立して側面をなす第2起立部とを有する第2部材と、
第3長穴が形成された第1の上板と、
第4長穴が形成された第2の上板と
を備え、
前記第1部材と前記第2部材とは、
前記第1底面部と前記第2底面部との互いの一部が重なり、かつ、前記第1起立部と前記第2起立部とが両側となるように配置されることにより前記長辺方向の溝を形成するとともに、前記第1底面部と前記第2底面部との互いの一部が重なった状態において前記第1長穴と前記第2長穴とが上下で交差し、
前記第1の上板と前記第2の上板とは、
前記第1部材と前記第2部材とによって形成された前記溝の上部を覆うように互いの一部が重なって前記溝の前記上部に配置され、互いの一部が重なって前記上部に配置された状態において前記第3長穴と前記第4長穴とが上下で交差するとともに、交差によって現れた開口を貫通するネジと前記ネジと組み合うナットとにより締結されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
この発明により、法規上必要な占積率以上に配線用ダクトの断面積が大きくなることを避けることにより、配線に要する平面的なスペースを縮小し、機械室のスペースを有効活用できる。また、輸送時及び保管時に効率的に梱包できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
実施の形態1.
図1〜図7を用いて実施の形態1を説明する。実施の形態1は、エレベータ機械室に設置され、エレベータの配線ケーブルを収納するエレベータ用配線ダクト1000に関する。エレベータ用配線ダクト1000は、幅方向の寸法を変えることが可能な構成である。この構成により、動力線又は信号線の配線に要する平面的なスペースを縮小してエレベータ機械室内のスペースを有効活用できる。
【0008】
図1は、エレベータ機械室9の内部を模式的に示した図である。図1において、エレベータ機械室9は、エレベータの昇降路の上部に設けられている。エレベータ機械室9の機械室床9aの上面には、シンダーコンクリート9bが敷設されている。エレベータを制御するための制御盤21は、シンダーコンクリート9bに立設されている。また、巻上機22と、巻上機22を駆動する巻上モータとが、シンダーコンクリート9b上に配置されている。また、制御盤21と巻上モータ23とを接続する配線ケーブルが収納されたエレベータ用配線ダクト1000が、シンダーコンクリート9b内に埋設されている。
【0009】
図2は、エレベータ用配線ダクト1000の構成を示す斜視図である。エレベータ用配線ダクト1000は、ダクト本体300と、ダクト蓋600とを備える。図2では、見易さのため、ダクト本体300と、ダクト蓋600とを分けて示した。
【0010】
図2に示すように、エレベータ用配線ダクト1000は、ダクト本体300と、ダクト蓋600とを備える。ダクト本体300は、第1の側面板100(第1部材)と、第2の側面板200(第2部材)とからなる。ダクト蓋600は、上板400(第1の上板)と、下板500(第2の上板)とからなる。
【0011】
(構成の説明)
第1の側面板100は、略長方形であるとともに長穴111(第1長穴の例)、長穴112が形成された第1底面部110と、第1底面部110の一方の長辺110aから上方へ起立して側面をなす第1起立部120とを有する。第1起立部120の先端は、内側方向に略直角に折り曲げられて平坦部121aを形成している。この平坦部121aに、上板400の長辺部が置かれる。
【0012】
第2の側面板200は、略長方形であるとともに長穴211(第2長穴の例)、長穴212が形成された第2底面部210と、第2底面部210の一方の長辺210aから上方へ起立して側面をなす第2起立部220とを有する。第2起立部220の先端は、内側方向に略直角に折り曲げられて平坦部221aを形成している。この平坦部221aに、下板500の長辺部が置かれる。
【0013】
(溝801の形成)
第1の側面板100と第2の側面板200とは、第1底面部110が第2底面部210の上側に位置し、第1底面部110と第2底面部210との互いの一部が、長手方向に沿って重なっている。また、第1の側面板100と第2の側面板200とは、第1起立部120と第2起立部220とが両側となるように配置されることにより、長辺110a方向の溝801を形成する。
【0014】
(長穴の交差)
また、第1の側面板100と第2の側面板200とは、第1底面部110と第2底面部210との互いの一部が重なった状態において、第1底面部110に形成された長穴111と、第2底面部210に形成された長穴211とが上下で交差し、また、第1底面部110に形成された長穴112と、第2底面部210に形成された長穴212とが上下で交差する。エレベータ用配線ダクト1000は、このように、互いの長穴が交差することが特徴である。この特徴により、後述のように、ダクト幅を調整可能であるとともに、ダクト本体300内へのごみや埃の進入を防止することができる。
【0015】
(蓋600の構成)
図3は、上板400と下板500とをネジ11、ナット13で締結する状況を示す図である。また、図4は、上板400と下板500との締結後を示す断面図である。上板400と下板500とは、図2に示したように、第1の側面板100と第2の側面板200とによって形成された溝801の上部を覆うように互いの一部が重なって溝801の上部に配置される。上板400と下板500とは、互いの一部が重なって溝801の上部(平坦部121a,平坦部221a)に配置された状態において、上板400に形成された長穴411と下板500に形成された長穴511とが上下で交差し、また、上板400に形成された長穴412と下板500に形成された長穴512とが上下で交差する。そして、図3に示すように、上板400と下板500とは、交差によって現れた開口を貫通するネジ11と、ネジ11と組み合うナット13とにより締結される。この場合、図3に示すように、ナット13の幅(先端部の外周形状)は長穴411と長穴511とからできる開口の形状に即しており、ナット13の先端部が開口に差し込まれた状態でネジ11のねじ込みを受ける。また、ナット13の接触部は開口に入り込むことなく、下板500の下面と接触する。これにより、ネジ11をナット13にねじ込む場合、ナット13の先端部は、長穴のつくる開口によって回転が拘束されるとともに、ネジ11の頭とナット13の接触部によって上板400と下板500が締結される。このような構成により、ナット13の回り止めの効果を奏する。上板400と下板500とは、ネジ11、ナット13とで締結されると、図4に示すような一体のダクト蓋600となる。
【0016】
以上のように、エレベータ用配線ダクト1000は、略L字状の第1の側面板100と、逆L字となるように組合された略L字状の第2の側面板200とから構成されている。そして、第1の側面板100及び第2の側面板200の底面部には、それぞれ2個の取付穴(長穴)が形成されている。第1の側面板100及び第2の側面板200の底面部は、後述のように、機械室床9aに固定された2本のアンカーボルト16とナット14により強固に支持固定される。ダクト本体300の上部は、ボルト(ネジ11)とナット13によって締結された上板400と下板500とからなるダクト蓋600により覆われている。
【0017】
(エレベータ用配線ダクト1000の据え付け工程)
図5、図6を参照して、エレベータ用配線ダクト1000の据え付け工程を説明する。エレベータ用配線ダクト1000の幅(以下、ダクト幅という)は、エレベータ用配線ダクト1000をエレベータ機械室9に据え付ける場合に調整される。すなわち、本実施の形態1で想定するのは、ダクト幅は、エレベータ用配線ダクト1000のエレベータ機械室9への据え付け時に調整される。そして、調整後にはエレベータ用配線ダクト1000は、シンダーコンクリートに埋設され、ダクト幅は、埋設後には調整されるものではない。図5は、エレベータ機械室9にエレベータ用配線ダクト1000を据え付ける場合を説明するフローチャートである。図6は、ダクト幅(ダクト蓋600の幅をダクト幅にあわせて調整する場合も図6と同様である。)の調整を説明する図であり、図1(b)のX方向矢視である。
【0018】
(S101:ダクト本体の仮組)
S101において、エレベータ機械室9の機械室床9aに第1の側面板100と第2の側面板200とを仮組みし、ダクト幅Bを決定する。すなわち図1(b)に示すように第2の側面板200の第2底面部210の上側に第1の側面板100の第1底面部110が位置するように配置する。そして、図6に示すように、ダクト幅B、すなわち、第1起立部120と第2起立部220との幅Bを「B1」、あるいは「B2」等のように所望の幅寸法に調整する。図6(a)は幅を広げて据え付けた場合(ダクト幅B1)を示している。図6(b)は、幅を縮めて据え付けた場合(ダクト幅B2)を示している。ダクト幅B1のときはアンカーボルト間の寸法はL1となり、ダクト幅B2のときはアンカーボルト間の寸法はL2となる。図7は、据え付け後のエレベータ用配線ダクト1000の断面図である。図7の詳細は後述するが、図6(a),(b)は図7(a),(b)に対応している。
【0019】
(S102:ダクト幅の決定)
S102において、ダクト幅Bを決定し、長穴同士が交差する開口(2箇所)にマーキングする(寸法L)。すなわち、例えば図6(a)のようにダクト幅が「B1」と決定した場合、アンカーボルト16を打ち込むべき位置である「打ち込み位置16a、16b」にマーキングする(L1)。
【0020】
(S103:アンカーボルトの打ち込み)
S103において、第1の側面板100と第2の側面板200とをどかして、マーキングした「打ち込み位置16a、16b」のそれぞれにアンカーボルト16を打ち込む。
【0021】
(S104:ダクト本体の設置)
S104において、各アンカーボルト16に第1の側面板100、第2の側面板200の対応する長穴を貫通させて、第1の側面板100、第2の側面板200を機械室床9aに配置する。図6(a)の例で説明すれば、まず、第2の側面板200について、「打ち込み位置16a」に打ち込まれたアンカーボルト16に長穴212を通し、「打ち込み位置16b」に打ち込まれたアンカーボルト16に長穴211を通す。そして次に、第2の側面板200の上側に第1の側面板100を配置するべく、第1の側面板100について、「打ち込み位置16a」に打ち込まれたアンカーボルト16に長穴112を通し、「打ち込み位置16b」に打ち込まれたアンカーボルト16に長穴111を通す。このようにして、機械室床9aに対して、ダクト幅が所望の「B1」となるように第1の側面板100、第2の側面板200が配置される。なお、例えば第1の側面板100の第1底面部110に形成された長穴111は、第1底面部110の長手方向に対して斜めに形成されている。また、もう一方の長穴112は、長穴111と重ねて見た場合、交差する方向に形成されている。すなわち、長穴111、長穴112は「ハの字」形状となるように形成されている。このため、アンカーボルト16を貫通させて配置した際には、アンカーボルト16をナット止めする前であっても、第1の側面板100は、機械室床9aに対して動きにくい。第2の側面板200についても同様である。
【0022】
(S105:ダクト本体の固定)
S105において、長穴から突き出ているアンカーボルトの雄ネジ部にナットを組み付けて、第1の側面板100、第2の側面板200をエレベータ機械室の床に固定する。すなわち、図7(a)に示すように、第1の側面板100、第2の側面板200は、座金15を介してアンカーボルト16の雄ネジ部に組み付けられたナット14により、機械室床9aに固定される。これにより「ダクト幅B1」が固定される。
【0023】
(S106:配線ケーブルの収納)
S106において、配線ケーブル10を収納する。配線ケーブル10とは、例えば動力線10aや信号線10bである。図7(a)は、7本の配線ケーブル10が収納された状態を示している。なお、図7(b)は、3本の配線ケーブル10が収納された場合を示している。
図7(b)の場合は、図7(a)に比べて配線ケーブル10の本数が半数以下であるため、ダクト幅Bを「B2」に狭めて据え付けた場合を示している。
【0024】
(S107:ダクト蓋600の設置)
S107において、ダクト蓋600を上部に設置する。この場合、ダクト幅は「B1」とする。ダクト幅が「B1」に固定されたダクト本体300に配線ケーブル10を収納した後、図2(a)に示すように、上板400を下板500の上に重ね、ダクト蓋600の幅を「B1」に調整する。そして、このとき、図3で説明したように、上板400の長穴411と下板500の長穴511とが交差して出来た開口に対して、下板500の下面側からナット13の先端部を差し込む。また、上板400の上面側からは座金12を介してネジ11をナット13の雌ネジ部にねじ込む。もう一組の長穴どうしである長穴412、長穴512についても同様である。ネジ11を締めこむことでネジ11の頭部とナット13の接触部とにより上板400と下板500とが、ダクト幅B1に対応するダクト蓋600の幅B1で締結される。そして、図2に示すように、上板400の長辺部が第1起立部120の上部に形成された平坦部121aに配置され、下板500の長辺部が第2起立部220の上部に形成された平坦部221aに配置されることで、ダクト蓋600がダクト本体300に設置される。これにより、配線ケーブル10の収納された溝801をダクト蓋600で覆うことができる。
【0025】
(S108:シンダーコンクリートよる埋設)
S108において、シンダーコンクリートでダクト蓋600の上面位置まで埋める。
【0026】
以上の実施の形態1で説明したエレベータ用配線ダクト1000によれば、収納する配線ケーブルの本数等にあわせてダクト幅を自由に調整できるので、配線用ダクトの占める平面的な床面積を小さくすることができる。
【0027】
このように構成されたエレベータ用配線ダクト1000によれば、ダクト幅を変位することができるので、法規上適度に十分な占積率になるよう配線ダクトの断面積を調整できる。さらに据え付け上の点においても、効率的に梱包できるため、保管時や輸送時に無駄なスペースを減らせる効果がある。
【0028】
以上に説明したエレベータ用配線ダクト1000によれば、ダクト蓋600における上板400と下板500の長穴を上下でクロスに交差させたことにより、上板400の長穴における座金12、ネジ11で覆われる部分以外の領域は、重ね合わされる下板500の上面により塞がれる。よって、上板400の長穴における座金12、ネジ11で覆われる部分以外の領域からゴミやホコリ、昆虫などがダクト本体300内(溝801)へ進入することを防止できる。なお、上板400と下板500とをネジ11で締付けるとき、一般のネジ、ナットでの締付けの場合は、ナットが空回りして締付けできないおそれがあるが、図3に示したナット13によれば、ナットが空回りすることなく、問題なく締付けができる。
【0029】
以上に説明したエレベータ用配線ダクト1000によれば、ダクト蓋600と同様に、ダクト本体300の底面部におけるアンカーボルト取付部も、第1底面部110と第2底面部210との長穴が上下でクロスに交差するように設けられている。これによって、アンカーボルトが取付く部分以外の長穴部分が下方の底面部で隠される。このため、コンクリートやモルタルがダクト本体300の内部(溝801)に入り込まない。また昆虫などのダクト本体300内への進入を防止できる。
【0030】
なお、図6では、ダクト本体300において、クロスに交差される長穴どうしの交差角度はおおよそ90°となっているが、特に90°に限定はされない。これはダクト蓋600についても同様である。また、図6等では、クロスに交差される長穴が2ヶ所示されている。すなわち、第1底面部110には2ヶ所の長穴111、112が形成され、第2底面部210には2ヶ所の長穴211、212が形成されているが、一つの底面部に形成される長穴は2ヶ所に限定はされず、1ヶ所でも良いし、任意の複数箇所でもよい。これはダクト蓋600についても同様である。
【0031】
実施の形態2.
図8、図9を参照して、実施の形態2を説明する。図8は、実施の形態2におけるエレベータ用配線ダクト1000のダクト本体300の斜視図である。また、図9は、実施の形態2におけるエレベータ用配線ダクト1000の断面図である。実施の形態2は、エレベータ用配線ダクト1000が、さらに、ケーブル固定板700(配線支持部材)を備えた構成である。ケーブル固定板700をアンカーボルト16で固定し、ケーブル固定板700によって配線ケーブル10を支持することで、動力線10a又は信号線10bを支持、あるいは固定できる。また、ケーブル固定板700により、動力線10a又は信号線10bがアンカーボルト16により損傷を受けることを防ぐことができる。
【0032】
(ケーブル固定板700の形状)
ケーブル固定板700は、図8に示すように、断面がU字形状のU字形状部材であって、U字形状部材において互いに対向する一方の面を含む平板部が第1底面部110に取り付けられる底面部701であり、U字形状部材において対向する他方の面を含む平板部が、底面部701に対向する上面部702である。底面部701(平坦部)には、アンカーボルト16の先端の雄ネジ部が貫通する貫通穴(図示していない)が形成されている。また上面部702には、貫通穴711が形成されている。この貫通穴711は、ナット14を装着したソケットが通過できる穴径で形成されている。このため、貫通穴711の上方からソケットレンチによってナット14をアンカーボルト16に組み付けることができる。また、ケーブル固定板700をナット14により固定した後には、図9に示すように、この貫通穴711に被覆針金を通し、動力線10aを縛り付けて固定することができる。
【0033】
(ケーブル固定板700の取り付け)
図8あるいは図9に示すように、第1の側面板100と第2の側面板200とは、第1底面部110と第2底面部210との互いの一部が重なる状態において第1底面部110が第2底面部210の上側に位置する。そして、ケーブル固定板700は、底面部701に形成された貫通穴(図示していない)が第1底面部110に形成された長穴と第2底面部210に形成された長穴との交差によって現れた開口の上側に位置するように、底面部701が第1底面部110の上面に配置される。そして、ケーブル固定板700と、第1の側面板100と、第2の側面板200とは、機械室床9aに埋め込まれるとともに雄ネジ部が前記開口と底面部701に形成された貫通穴とを貫通して底面部701の上面よりも上方に位置するアンカーボルト16と、アンカーボルト16の雄ネジ部と組み合うナット14とにより、機械室床9aに固定される。
【0034】
このように構成されたエレベータの配線用装置においては、配線用ダクトを幅方向に変位することで、法規上適度に十分な占積率になるよう配線用ダクトの断面積を調整でき、さらに据付上から見ても、効率的に梱包できるため、保管時や輸送時に無駄なスペースを減らせる効果がある。また、ケーブル固定板700をアンカーボルト16で固定し、ケーブル固定板700によって配線ケーブル10を支持することで、動力線10a又は信号線10bを支持、あるいは固定できる。また、ケーブル固定板700により、動力線10a又は信号線10bがアンカーボルト16により損傷を受けることを防ぐことができる。
【0035】
実施の形態3.
図10を参照して実施の形態3を説明する。図10は実施の形態3のエレベータ用配線ダクト1000の断面を示す。実施の形態1のエレベータ用配線ダクト1000では第1の側面板100はL字形状であった。これに対して実施の形態3のエレベータ用配線ダクト1000は、第1の側面板100aがU字形状である点が異なる。第1の側面板100aは、実施の形態1の第1の側面板100に対して、起立部130を有する点が異なり、他は同じである。第1の側面板100aをU字形状とすることで、図10に示すように、第1の側面板100aの溝802に加え、起立部130と第2起立部220とにより溝803が形成される。このように、U字状の第1の側面板100aと、この第1の側面板100aに対して逆L字となるように組合されたL字状の第2の側面板200とからダクト本体300を構成することにより、溝802に加え溝803が形成されるので、動力線10aと信号線10bとを各溝の部分に分離することができる。
【0036】
第1の側面板100a(第1部材)は、略長方形であるとともに長穴111、112が形成された第1底面部110と、第1底面部110のそれぞれの長辺から上方へ起立して各側面をなす2つの起立部である第1起立部120、起立部130とを有する。第2の側面板200は、実施の形態1と同様の形状である。第1の側面板100aと第2の側面板200とは、第1底面部110が第2底面部210の上側に位置することにより互いの一部が重なるように、かつ、第1底面部110から起立する第1起立部120と第2底面部210から起立する第2起立部220とが両側となるように配置される。これにより、第1の側面板100aと第2の側面板200とは、第1底面部110から起立する2つの第1起立部120,130と第1底面部110とよる溝802(第1の溝)とは別に起立部130と第2起立部220とが長辺方向に向かう溝803(第2の溝)を形成する。そして、第1の側面板100aと第2の側面板200とは、実施の形態1の場合と同様に、第1底面部110が第2底面部210の上側に位置することにより互いの一部が重なる状態において互いの長穴どうしが上下で交差する構成である。
【0037】
また、図10に示すように、上板400と下板500とは、溝802と溝803との上部を覆うように互いの一部が重なって溝802と溝803との上部に配置される。そして実施の形態1と同じように、上板400と下板500とは、互いの一部が重なって溝802と溝803との上部に配置された状態において互いに形成されている長穴どうしが交差する。そして、上板400と下板500とは、交差によって現れた開口を貫通するネジ11とネジ11と組み合うナット13とにより締結される。
【0038】
このように構成されたエレベータの配線用装置においては、配線用ダクトを幅方向に変位することで、法規上適度に十分な占積率になるよう配線用ダクトの断面積を調整でき、さらに据付上から見ても、効率的に梱包できるため、保管時や輸送時に無駄なスペースを減らせる効果がある。
【0039】
以上の実施の形態では、エレベータの機械室に設置され、エレベータの動力線又は信号線を内部に収納し、断面L字状をなしL字の一方の面には第一と第二の側面に対し斜方向に取付穴を有する側面板(第一)と、他方に断面L字状をなしL字の一方の面には第一と第二の側面に対し斜方向に取付穴を有する側面板(第二)と、板状でその面部には第一と第二の側面に対し斜方向に取付穴を有する上板と、板状でその面部には第一と第二の側面に対し斜方向に取付穴を有する下板とを備えたエレベータ用配線ダクトを説明した。
【0040】
以上の実施の形態では、エレベータの機械室に設置され、エレベータの動力線又は信号線を内部に収納し、断面U字状をなしU字の底面には第一と第二の側面に対し斜方向に取付穴を有する側面板(第一)と、他方に断面L字状をなしL字の一方の面には第一と第二の側面に対し斜方向に取付穴を有する側面板(第二)と、板状でその面部には第一と第二の側面に対し斜方向に取付穴を有する上板と、板状でその面部には第一と第二の側面に対し斜方向に取付穴を有する下板とを備えたことを特徴とするエレベータ配線用ダクトを説明した。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】実施の形態1におけるエレベータ機械室9の内部の模式図。
【図2】実施の形態1におけるエレベータ用配線ダクト1000の構成図。
【図3】実施の形態1における上板400と下板500との締結を示す図。
【図4】実施の形態1における上板400と下板500との締結後の断面図。
【図5】実施の形態1におけるエレベータ用配線ダクト1000の据付工程を示すフローチャート。
【図6】実施の形態1におけるダクト幅を決める様子を示す図。
【図7】実施の形態1におけるエレベータ用配線ダクト1000の据付後の断面図。
【図8】実施の形態2におけるエレベータ用配線ダクト1000の斜視図。
【図9】実施の形態2におけるエレベータ用配線ダクト1000の断面図。
【図10】実施の形態3におけるエレベータ用配線ダクト1000の断面図。
【図11】従来技術示す図。
【符号の説明】
【0042】
1 配線用ダクト本体、2 ダクトの蓋、9 機械室、9a 機械室床、9b シンダーコンクリート、10 配線ケーブル、10a 動力線、10b 信号線、11 ネジ、12 座金、13 ナット、14 ナット、15 座金、16 アンカーボルト、21 制御盤、22 巻上機、23 巻上モータ、100 第1の側面板、100a 第1の側面板、110 第1底面部、111,112 長穴、120 第1起立部、130 起立部、200 第2の側面板、210 第2底面部、220 第2起立部、211,212 長穴、300 ダクト本体、400 上板、411,412 長穴、500 下板、511,512 長穴、600 ダクト蓋、700 ケーブル固定板、701 底面部、702 上面部、711 貫通穴、1000 エレベータ用配線ダクト。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線ケーブルを収納するエレベータ用配線ダクトにおいて、
略長方形であるとともに第1長穴が形成された第1底面部と、前記第1底面部の一方の長辺から上方へ起立して側面をなす第1起立部とを有する第1部材と、
略長方形であるとともに第2長穴が形成された第2底面部と、前記第2底面部の一方の長辺から上方へ起立して側面をなす第2起立部とを有する第2部材と、
第3長穴が形成された第1の上板と、
第4長穴が形成された第2の上板と
を備え、
前記第1部材と前記第2部材とは、
前記第1底面部と前記第2底面部との互いの一部が重なり、かつ、前記第1起立部と前記第2起立部とが両側となるように配置されることにより前記長辺方向の溝を形成するとともに、前記第1底面部と前記第2底面部との互いの一部が重なった状態において前記第1長穴と前記第2長穴とが上下で交差し、
前記第1の上板と前記第2の上板とは、
前記第1部材と前記第2部材とによって形成された前記溝の上部を覆うように互いの一部が重なって前記溝の前記上部に配置され、互いの一部が重なって前記上部に配置された状態において前記第3長穴と前記第4長穴とが上下で交差するとともに、交差によって現れた開口を貫通するネジと前記ネジと組み合うナットとにより締結されることを特徴とするエレベータ用配線ダクト。
【請求項2】
前記第1の上板と前記第2の上板とは、
交差によって現れた前記開口の形状に即した外周形状を持つとともに、外周が前記開口に差し込み可能なナットによって締結されることを特徴とする請求項1記載のエレベータ用配線ダクト。
【請求項3】
前記エレベータ用配線ダクトは、
エレベータ機械室に設置され、
前記第1部材と前記第2部材とは、
前記第1底面部と前記第2底面部との互いの一部が重なる状態において前記第1底面部が前記第2底面部の上側に位置し、
前記エレベータ用配線ダクトは、さらに、
前記配線ケーブルを支持する配線支持部材であって、アンカーボルトの貫通する貫通穴が形成された平坦な平坦部を有する配線支持部材を備え、
前記配線支持部材は、
前記貫通穴が前記第1長穴と前記第2長穴との交差によって現れた開口の上側に位置するように、前記平坦部が前記第1底面部の上面に配置され、
前記配線支持部材と、前記第1部材と、前記第2部材とは、
前記エレベータ機械室の床に埋め込まれるとともに雄ネジ部が前記開口と前記貫通穴とを貫通して前記平坦部の上面よりも上方に位置するアンカーボルトと、前記アンカーボルトの前記雄ネジ部と組み合うナットとにより、前記エレベータ機械室の床に固定されることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のエレベータ用配線ダクト。
【請求項4】
前記配線支持部材は、
断面がU字形状のU字形状部材であって、前記U字形状部材において互いに対向する一方の面を含む平板部が前記第1底面部の上面に配置される前記平坦部であるとともに、前記U字形状部材において対向する他方の面を含む平板部には、前記平坦部に形成された前記貫通穴の径よりも大きい径の貫通穴が形成されていることを特徴とする請求項3記載のエレベータ用配線ダクト。
【請求項5】
配線ケーブルを収納するエレベータ用配線ダクトにおいて、
略長方形であるとともに第1長穴が形成された第1底面部と、前記第1底面部のそれぞれの長辺から上方へ起立して各側面をなす2つの起立部とを有する第1部材と、
略長方形であるとともに第2長穴が形成された第2底面部と、前記第2底面部の一方の長辺から上方へ起立して側面をなす起立部とを有する第2部材と、
第3長穴が形成された第1の上板と、
第4長穴が形成された第2の上板と
を備え、
前記第1部材と前記第2部材とは、
前記第1底面部が前記第2底面部の上側に位置することにより互いの一部が重なるように、かつ、前記第1底面部から起立する一方の起立部と前記第2底面部から起立する起立部とが両側となるように配置されることにより、前記第1底面部から起立する2つの起立部と前記第1底面部とよる第1の溝とは別に前記第1底面部の他方の前記起立部と前記第2底面部の前記起立部とが前記長辺方向に向かう第2の溝を形成するとともに、前記第1底面部が前記第2底面部の上側に位置することにより互いの一部が重なる状態において前記第1長穴と前記第2長穴とが上下で交差し、
前記第1の上板と前記第2の上板とは、
前記第1の溝と前記第2溝との上部を覆うように互いの一部が重なって前記第1の溝と前記第2の溝との前記上部に配置され、互いの一部が重なって前記上部に配置された状態において前記第3長穴と前記第4長穴とが交差するとともに、交差によって現れた開口を貫通するネジと前記ネジと組み合うナットとにより締結されることを特徴とするエレベータ用配線ダクト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−166965(P2009−166965A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−7485(P2008−7485)
【出願日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】