エレベータ装置
【課題】乗りかごの振動を減衰させるに際し、大きなスペースを必要とすることなく、軽量で安価とすることができるエレベータ装置を提供する。
【解決手段】エレベータ装置は、乗場及びガイドレールを含む昇降路と、昇降路内に配置されガイドレール5に案内され巻上機によってロープを介して昇降される乗りかごと、乗りかごのかご扉開閉装置に接続され、かご扉8の開閉動作に伴って動作し、制振部材9eを昇降路に付勢して乗りかごの揺れを抑制する制振装置とを備えている。
【解決手段】エレベータ装置は、乗場及びガイドレールを含む昇降路と、昇降路内に配置されガイドレール5に案内され巻上機によってロープを介して昇降される乗りかごと、乗りかごのかご扉開閉装置に接続され、かご扉8の開閉動作に伴って動作し、制振部材9eを昇降路に付勢して乗りかごの揺れを抑制する制振装置とを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エレベータの乗りかごの振動を減衰させる制振装置に関し、特に乗りかごに設けられる制振装置を有するエレベータ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図7は例えば特開平3−18577号公報に示された従来のエレベータ装置を示す昇降路断面図である。また、図8は従来のエレベータ装置の乗りかごの外観図である。図において、乗りかご1とつり合いおもり2は、各々ガイドシュ4を介して昇降路に立設したガイドレール5に案内されて図示しない昇降路内を昇降する。ロープ3の一端には乗りかご1が接続され、ロープ3の他端にはつり合いおもり2が接続されている。ロープ3は、昇降路の上部に設けられた図示しない機械室に設けられた駆動綱車6に巻き回されている。
【0003】
エレベータ装置の運転は、駆動綱車6が回転してこれに伴い乗りかご1が上下する。このようなエレベータ装置の運転に関しては、図7に示すような駆動綱車6とロープ3との間の摩擦で駆動力が伝達されるトラクション方式と、図には示さないが、乗りかご1が単にロープ3で吊るされドラムに巻き取られる巻胴式が広く採用されている。本発明はどちらの構成においても有効である。
【0004】
図8において、乗客は、乗りかご1の上部に設けられたかご扉開閉装置7につるされたかご扉8の開閉にともない乗りかごに出入りすることができるようになっている。
【0005】
このような構成のエレベータ装置においては、トラクション方式あるいは巻胴式のいずれの方式においても、乗りかご1から駆動綱車6までのロープ3の長さが長いと、ロープ3の伸びの変位で、乗りかご1の荷重変動による振動の大きさが決まる。そして、超高層の建物に設置されるエレベータ装置のように長いロープを用いる場合や、超小形・省スペース化のため細径で少本数のロープを用いる場合には、乗りかご1の荷重変動による振動が大きくなる。
【0006】
さらに、今後、ロープ3として、合成繊維製ロープや高強度ワイヤロープ等を用いるエレベータ装置では、相対的な弾性係数が現行に比較して低下する傾向になるため、ますます乗りかご1が揺れ易くなることが予測される。
【0007】
そこで、先の従来例の特開平3−18577号公報には、乗りかご1に設けられた制振装置で、この制振装置は乗りかご1からガイドレール5を押圧する機構を有しており、これにより、乗りかご1の変位や振動を減衰させることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平3−18577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上述の従来例を実際に実現するには、設置スペースが足りずに設置できなかったり、また、乗りかご1の重量が増加しすぎたりして設置できない場合があった。
【0010】
また、乗りかご1の変位や振動を減衰させる方法として、他の対策としてはロープ3の本数を多くしたり直径を大きくする対応策が考えられるものの、大幅なコストアップを伴うので問題であった。
【0011】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、大きなスペースを必要とすることなく、軽量で安価とすることができ、コストダウン可能なエレベータ装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明に係るエレベータ装置は、乗場及びガイドレールを含む昇降路と、昇降路内に配置されガイドレールに案内され巻上機によってロープを介して昇降される乗りかごと、乗りかごのかご扉開閉装置に接続され、かご扉の開閉動作に伴って動作し、制振部材を昇降路に付勢して乗りかごの揺れを抑制する制振装置とを備えている。
【0013】
また、制振装置は、かご扉とガイドレールとの間に設けられ制振部材に設けられた摺擦部材をガイドレールに押し付けて乗りかごの揺れを抑制するリンク機構を有する。
【0014】
また、制振装置は、かご扉と乗場扉との間に設けられ、乗りかごのかご扉開閉の際に、かご扉と乗場扉とを係合し、かご扉開閉装置の駆動力を乗場扉に伝達して乗りかごの揺れを抑制する制振部材としての係合部材を有する。
【0015】
また、係合部材は、かご扉に設けられたかご扉係合部材と乗場扉に設けられた乗場扉係合部材とからなり、両係合部材の間には摺擦部材が配設されている。
【0016】
また、かご扉係合部材は、乗りかごの昇降方向に沿って延びる断面コ字形をなし、乗場扉係合部材は、かご扉係合部材に向かい合って係合する断面コ字形をなし、摺擦部材は、かご扉係合部材あるいは乗場扉係合部材の断面コ字形の開放時押し付け面及び閉時押し付け面に設けられている。
【0017】
また、摺擦部材は、かご扉係合部材に設けられている。
【0018】
また、制振装置は、乗りかごまたは乗り場のいずれか一方に設けられ、かご扉の開閉動作に伴って動作する把持装置と、乗りかごまたは乗り場の他方に設けられ把持装置によって把持される被把持装置とを有する。
【0019】
また、把持装置には、把持装置と被把持装置との摩擦を向上させる摺擦部材が設けられている。
【0020】
また、かご扉と乗場扉は、吊りレールを上下方向に挟む複数のローラを有している。
また、摺擦部材にポリウレタン樹脂が用いられている。
【0021】
さらに、摺擦部材に高分子ポリエチレン樹脂が用いられている。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、エレベータの乗りかごの振動を減衰させるに際し、大きなスペースを必要とすることなく、軽量で安価とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】この発明の実施の形態1のエレベータ装置の一部を拡大した外観図である。
【図2】この発明の実施の形態2のかご扉開閉装置の正面図である。
【図3】この発明の実施の形態2の乗場扉装置の正面図である。
【図4】かご扉と乗場扉とを係合する係合部材を昇降路の上方から見た拡大図である。
【図5】この発明の実施の形態3のかご扉開閉装置の正面図である。
【図6】この発明の実施の形態3の乗場扉装置の正面図である。
【図7】従来のエレベータ装置を示す昇降路断面図である。
【図8】従来のエレベータ装置の乗りかごの外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る実施の形態について添付図面に基づいて説明する。なお、図中、同一符号は同一又は対応部分を示すものとする。
【0025】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1のエレベータ装置の一部を拡大した外観図である。図1において、かご扉8の上部の外側の端部にはカム8aが取り付けられている。扉8が開放すると、カム8aがリンク機構9のレバー9aの一端を押し上げる。レバー9aは、ブラケット9cに回動自在に支持されている。そして、レバー9aは一端が押し上げられると、制振部材9eをガイドレール5に押し付ける。制振部材9eのガイドレール5側の面には、摩擦を大きくする図示しない摺擦部材が固定されている。
【0026】
扉8が閉じている際には、レバー9aは、引きばね9bによって引き下げられ、ストッパー9dで待機位置に押し止められている。この待機位置においては、ガイドレール5と制振部材9eとの間には隙間があり制振作用が働かない。
【0027】
例えば、上述の従来例特開平3−18577号公報に示されるような従来の制振装置は、乗りかごの上に特別に専用の押圧装置を用いてダンピングする。しかし、この方法では、目的の制振作用を得ることができるが、設置スペースが大きかったり重量が重くなったりし大幅にコストがかさむ。
【0028】
これに対して、本実施の形態の制振装置は、乗りかごのかご扉開閉装置に接続され、かご扉8の開閉動作に伴って動作し、制振部材9eを昇降路してのガイドレールに付勢して乗りかごの揺れを抑制する。
【0029】
そして、制振装置は、かご扉8とガイドレール5との間に設けられ制振部材9eに設けられた図示しない摺擦部材をガイドレール5に押し付けて乗りかごの揺れを抑制するリンク機構9を有する。
【0030】
制振部材9eのガイドレール5への付勢する力を解析すると、一般的な9人乗りで昇降行程80mのエレベータの場合、10kg程度以上の摩擦力が必要と算出される。
このようなことから、本実施の形態の制振装置は、元々エレベータ装置が備えている乗りかごのかご扉開閉装置に接続され、かご扉8の開閉動作に伴って動作し、制振部材9eを昇降路に付勢して乗りかごの揺れを抑制する。そのため、大きなスペースを必要とすることなく、軽量で安価とすることができ、コストダウン可能なエレベータ装置とすることができる。
【0031】
実施の形態2.
図2はこの発明の実施の形態2のエレベータ装置を説明するかご扉開閉装置の正面図である。図3は乗場扉装置の正面図である。図4はかご扉と乗場扉とを係合する係合部材を昇降路の上方から見た拡大図である。
【0032】
図2において、かご扉開閉装置7は、乗りかごの正面上部に取り付けられている。吊り具7aに吊り下げられたかご扉8は、連動ロープ7bを介して接続された電動機7cによって開閉される。
【0033】
かご扉8の所定の位置には、乗場扉装置10に対応した位置に、制振部材としてのかご扉係合部材8bが設けられている。かご扉係合部材8bは、乗りかごの昇降方向に沿って延びる断面コ字形をなしている。
【0034】
図3において、乗場扉装置10は、乗場の正面上部に取り付けられている。ローラ10cとローラ10dとで吊りレール10eを挟み込み、吊りレール10eに吊り下げられた乗場扉10bは、吊りレール10eに沿って左右に移動可能に支持されている。
【0035】
乗場扉10bの所定の位置には、かご扉開閉装置7に対応した位置に、制振部材としての乗場扉係合部材10aが設けられている。乗場扉係合部材10aは、乗りかごの昇降方向に沿って延びる断面コ字形をなしている。
【0036】
かご扉係合部材8bと乗場扉係合部材10aは、乗りかごが乗場に位置しているとき、図4に示すように向き合って係合する。そして、かご扉開閉装置7によって、かご扉8が開閉すると、この動作に連動して乗場扉10bも開閉する。
【0037】
本実施の形態においては、電動機7cの駆動力を適度な強さに強めてある。そのため、両扉8,10が開閉する際、かご扉開閉装置7の駆動力すなわち電動機7cの駆動力が、係合部材8b,10aを介して、昇降路としての乗場扉10bに付勢される。これにより、乗りかごの揺れが抑制される。
【0038】
本実施の形態においては、かご扉係合部材8bと乗場扉係合部材10aとの間には、摩擦力を増加させるために摺擦部材8cが設けられている。この摺擦部材8cは、かご扉係合部材8bの断面コ字形の開放時押し付け面8b1と閉時押し付け面8b2に設けられている。これにより、係合部材8b,10a同士の摩擦力が増加し、乗りかごの振動がさらに減衰されるとともに、扉を開閉している途中や全開保持時においても、乗りかごの振動を減衰することができる。
【0039】
尚、摺擦部材8cは、かご扉係合部材8bと乗場扉係合部材10aのいずれかに設けられれば良い。しかし、乗場扉係合部材10aよりもかご扉係合部材8bの方が短いのでかご扉係合部材8bに設けられたほうが、摺擦部材8cが少なくて済み安価とすることができる。
【0040】
また、本実施の形態のエレベータの制振装置は、扉の開放途中においては、かご扉と乗場扉の扉重量分に相当する摩擦力による振動減衰しか期待できないが、扉が全開している時の押し付け力は電動機7cの駆動力を調整することで自由に操作できる。
【0041】
さらに、本実施の形態においては、かご扉と乗場扉は、吊りレールを上下方向に挟む複数のローラを有している。扉の上部あるいは下部に隙間がある場合、かご扉係合部材8bと乗場扉係合部材10aが係合した状態で乗りかごが振動すると、隙間の範囲で扉が動いてガタツキ・振動・騒音が発生し、また機器の寿命を損なうことにもなる。そこで、扉の開閉を案内するレールの上部と下部にローラを配置し、レールをはさみ込むことで隙間をなくす構造とする。尚、本実施の形態では、上部のドアレールを挟み込む構造としたが、下部にレールを設けたり敷居部で扉の上下方向の移動を抑制する場合にも、同様の効果を奏することは言うまでもない。
【0042】
実施の形態3.
図5はこの発明の実施の形態3のエレベータ装置を説明するかご扉開閉装置の正面図である。図6は乗場扉装置の正面図である。図5において、かご扉8には、把持装置としての固定側掴み8dと可動側掴み8eが設けられている。固定側掴み8dと可動側掴み8eとの間隔は、かご扉8の開放状態で変化する。固定側掴み8dと可動側掴み8eの対向する面には、図示しない摺擦部材が設けられている。そして、乗りかごが所定の位置にない場合は、固定側掴み8dと可動側掴み8eは、被把持装置としての乗場扉係合部材10fがスムーズに通過可能なように広く開いている。乗場扉係合部材10fは、図6に示されるように、乗りかごの昇降方向に沿って並べて設けられたローラである。
【0043】
一方、乗りかごが所定の位置に停止してかご扉8が開放する際には、戸開の開始時においては、両掴み8d,8eの間隔が広く開いている。そして、かご扉8が開くに連れて可動側掴み8eをカム8fが押し、固定側掴み8dに近づき、乗場扉係合部材10fを挟み込んで保持する。そして、かご扉8が完全に開いても可動側掴み8eの保持力が一定に保たれるように、カム8fの形状が決められている。カム8fの形状を変えることによって、保持力の大きさや扉位置による保持力の変化を自由に設定することができる。
【0044】
カム8fは、かご扉開閉装置7の設けられたピン7dとかご扉8に設けられたピン8gとを連結するリンク8hの構成により、かご扉8の開閉動作に伴って動き、また適度な把持力を発生するようにされている。
【0045】
可動側掴み8eが乗場扉係合部材10fを把持しているときに、乗りかごが変位しようとすると把持部分で滑りを生じようとするが、このとき乗りかごのかご扉8と乗場扉10bが上下に動かないように、かご扉8はローラ8j、8kによって吊りレール81を、乗場扉10bはローラ10c、10dで吊りレール10eを挟み込む構成としている。これにより、振動の減衰作用を有効に発揮される。
【0046】
尚、本実施の形態の把持装置は、構造を簡単とするためかご側に設けられているが、乗場側や昇降路側に設けられてもよい。また乗場扉係合部材10fはローラとされているが、ローラに限らず平板にしても同様の効果を奏することは言うまでもない。
【0047】
実施の形態1〜3において、摺擦部材には、ポリウレタン樹脂が用いられている。ポリウレタン樹脂は、高い摩擦特性を有し、しかも耐摩耗性に優れるため、扉開閉装置の開放力が小さくても高い制振効果を期待でき、機器の小型化を図るだけでなく長期間にわたって使用可能となる。そして特に、硬度を自由に選択できる材料のため、係合部での衝突音を緩衝する作用も自由に操作でき、高い制振効果と静粛性を両立することができる。
【0048】
さらに、摺擦部材には、高分子ポリエチレン樹脂を用いても良い。高分子ポリエチレン樹脂は、静的な摩擦特性と動的な摩擦特性に大きな差がなく、安定した制振特性を発揮でき、しかも耐摩耗性に優れるため、長期間にわたって使用可能となる。摩擦係数は、あまり大きくないが摺動時の静粛性に優れる特長があり、乗客が乗降する乗場近辺に設ける制振装置に適する材料である。
【0049】
なお、本発明に関する産業上の利用の可能性は、次のとおりである。この発明に係るエレベータ装置は、乗場及びガイドレールを含む昇降路と、昇降路内に配置されガイドレールに案内され巻上機によってロープを介して昇降される乗りかごと、乗りかごのかご扉開閉装置に接続され、かご扉の開閉動作に伴って動作し、制振部材を昇降路に付勢して乗りかごの揺れを抑制する制振装置とを備えている。そのため、乗客の乗降等による乗りかごの荷重変動による振動を抑制することができるとともに、かご扉開閉装置を活用するので特別に駆動源を必要とすることなく、制振装置を設けるために大きなスペースを必要とすることなく、乗りかごの重量が極端に大きくなることなく、簡単な構造なので安価とすることができ、コストダウン可能なエレベータ装置とすることができる。
【0050】
また、制振装置は、かご扉とガイドレールとの間に設けられ制振部材に設けられた摺擦部材をガイドレールに押し付けて乗りかごの揺れを抑制するリンク機構を有する。そのため、簡単な構造でかつ確実に動作するものとすることができ、また装置が軽量で乗りかごの重量が増加しすぎることがない。
【0051】
また、制振装置は、かご扉と乗場扉との間に設けられ、乗りかごのかご扉開閉の際に、かご扉と乗場扉とを係合し、かご扉開閉装置の駆動力を乗場扉に伝達して乗りかごの揺れを抑制する制振部材としての係合部材を有する。そのため、構造を簡単なものとすることができ、また乗りかごの重量が増加しすぎることがない。
【0052】
また、係合部材は、かご扉に設けられたかご扉係合部材と乗場扉に設けられた乗場扉係合部材とからなり、両係合部材の間には摺擦部材が配設されている。そのため、乗りかごの揺れをさらに抑制することができるとともに、扉を開放している途中においても、乗りかごの振動を減衰することができる。
【0053】
また、かご扉係合部材は、乗りかごの昇降方向に沿って延びる断面コ字形をなし、乗場扉係合部材は、かご扉係合部材に向かい合って係合する断面コ字形をなし、摺擦部材は、かご扉係合部材あるいは乗場扉係合部材の断面コ字形の開放時押し付け面及び閉時押し付け面に設けられている。そのため、扉の開時だけでなく、扉の閉時においても乗りかごの振動を減衰することができる。
【0054】
また、摺擦部材は、かご扉係合部材に設けられている。そのため、摺擦部材が少なくて済み安価とすることができる。
【0055】
また、制振装置は、乗りかごまたは乗り場のいずれか一方に設けられ、かご扉の開閉動作に伴って動作する把持装置と、乗りかごまたは乗り場の他方に設けられ把持装置によって把持される被把持装置とを有する。そのため、乗りかごの荷重変動による振動を確実に抑制することができる。
【0056】
また、把持装置には、把持装置と被把持装置との摩擦を向上させる摺擦部材が設けられている。そのため、乗りかごの振動をさらに確実に抑制することができる。
【0057】
また、かご扉と乗場扉は、吊りレールを上下方向に挟む複数のローラを有している。そのため、扉のガタツキ・振動・騒音を抑制し、また機器の寿命を延ばす。
【0058】
また、摺擦部材にポリウレタン樹脂が用いられている。ポリウレタン樹脂は、高い摩擦特性を有し、しかも耐摩耗性に優れるため、扉開閉装置の開放力が小さくても高い制振効果を期待でき、機器の小型化を図るだけでなく長期間にわたって使用可能となる。そして特に、硬度を自由に選択できる材料のため、係合部での衝突音を緩衝する作用も自由に操作でき、高い制振効果と静粛性を両立することができる。
【0059】
さらに、摺擦部材に高分子ポリエチレン樹脂が用いられている。高分子ポリエチレン樹脂は、静的な摩擦特性と動的な摩擦特性に大きな差がなく、安定した制振特性を発揮でき、しかも耐摩耗性に優れるため、長期間にわたって使用可能となる。また摺動時の静粛性に優れる特長があり、乗客が乗降する乗場近辺に設けると効果が大である。
【符号の説明】
【0060】
5 ガイドレール、8 かご扉、8b かご扉係合部材、8c 摺擦部材、8d 固定側掴み、8e 可動側掴み、9 リンク機構9、9e 制振部材、10a 乗場扉係合部材、10b 乗場扉、10f 乗場扉係合部材。
【技術分野】
【0001】
この発明は、エレベータの乗りかごの振動を減衰させる制振装置に関し、特に乗りかごに設けられる制振装置を有するエレベータ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図7は例えば特開平3−18577号公報に示された従来のエレベータ装置を示す昇降路断面図である。また、図8は従来のエレベータ装置の乗りかごの外観図である。図において、乗りかご1とつり合いおもり2は、各々ガイドシュ4を介して昇降路に立設したガイドレール5に案内されて図示しない昇降路内を昇降する。ロープ3の一端には乗りかご1が接続され、ロープ3の他端にはつり合いおもり2が接続されている。ロープ3は、昇降路の上部に設けられた図示しない機械室に設けられた駆動綱車6に巻き回されている。
【0003】
エレベータ装置の運転は、駆動綱車6が回転してこれに伴い乗りかご1が上下する。このようなエレベータ装置の運転に関しては、図7に示すような駆動綱車6とロープ3との間の摩擦で駆動力が伝達されるトラクション方式と、図には示さないが、乗りかご1が単にロープ3で吊るされドラムに巻き取られる巻胴式が広く採用されている。本発明はどちらの構成においても有効である。
【0004】
図8において、乗客は、乗りかご1の上部に設けられたかご扉開閉装置7につるされたかご扉8の開閉にともない乗りかごに出入りすることができるようになっている。
【0005】
このような構成のエレベータ装置においては、トラクション方式あるいは巻胴式のいずれの方式においても、乗りかご1から駆動綱車6までのロープ3の長さが長いと、ロープ3の伸びの変位で、乗りかご1の荷重変動による振動の大きさが決まる。そして、超高層の建物に設置されるエレベータ装置のように長いロープを用いる場合や、超小形・省スペース化のため細径で少本数のロープを用いる場合には、乗りかご1の荷重変動による振動が大きくなる。
【0006】
さらに、今後、ロープ3として、合成繊維製ロープや高強度ワイヤロープ等を用いるエレベータ装置では、相対的な弾性係数が現行に比較して低下する傾向になるため、ますます乗りかご1が揺れ易くなることが予測される。
【0007】
そこで、先の従来例の特開平3−18577号公報には、乗りかご1に設けられた制振装置で、この制振装置は乗りかご1からガイドレール5を押圧する機構を有しており、これにより、乗りかご1の変位や振動を減衰させることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平3−18577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上述の従来例を実際に実現するには、設置スペースが足りずに設置できなかったり、また、乗りかご1の重量が増加しすぎたりして設置できない場合があった。
【0010】
また、乗りかご1の変位や振動を減衰させる方法として、他の対策としてはロープ3の本数を多くしたり直径を大きくする対応策が考えられるものの、大幅なコストアップを伴うので問題であった。
【0011】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、大きなスペースを必要とすることなく、軽量で安価とすることができ、コストダウン可能なエレベータ装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明に係るエレベータ装置は、乗場及びガイドレールを含む昇降路と、昇降路内に配置されガイドレールに案内され巻上機によってロープを介して昇降される乗りかごと、乗りかごのかご扉開閉装置に接続され、かご扉の開閉動作に伴って動作し、制振部材を昇降路に付勢して乗りかごの揺れを抑制する制振装置とを備えている。
【0013】
また、制振装置は、かご扉とガイドレールとの間に設けられ制振部材に設けられた摺擦部材をガイドレールに押し付けて乗りかごの揺れを抑制するリンク機構を有する。
【0014】
また、制振装置は、かご扉と乗場扉との間に設けられ、乗りかごのかご扉開閉の際に、かご扉と乗場扉とを係合し、かご扉開閉装置の駆動力を乗場扉に伝達して乗りかごの揺れを抑制する制振部材としての係合部材を有する。
【0015】
また、係合部材は、かご扉に設けられたかご扉係合部材と乗場扉に設けられた乗場扉係合部材とからなり、両係合部材の間には摺擦部材が配設されている。
【0016】
また、かご扉係合部材は、乗りかごの昇降方向に沿って延びる断面コ字形をなし、乗場扉係合部材は、かご扉係合部材に向かい合って係合する断面コ字形をなし、摺擦部材は、かご扉係合部材あるいは乗場扉係合部材の断面コ字形の開放時押し付け面及び閉時押し付け面に設けられている。
【0017】
また、摺擦部材は、かご扉係合部材に設けられている。
【0018】
また、制振装置は、乗りかごまたは乗り場のいずれか一方に設けられ、かご扉の開閉動作に伴って動作する把持装置と、乗りかごまたは乗り場の他方に設けられ把持装置によって把持される被把持装置とを有する。
【0019】
また、把持装置には、把持装置と被把持装置との摩擦を向上させる摺擦部材が設けられている。
【0020】
また、かご扉と乗場扉は、吊りレールを上下方向に挟む複数のローラを有している。
また、摺擦部材にポリウレタン樹脂が用いられている。
【0021】
さらに、摺擦部材に高分子ポリエチレン樹脂が用いられている。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、エレベータの乗りかごの振動を減衰させるに際し、大きなスペースを必要とすることなく、軽量で安価とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】この発明の実施の形態1のエレベータ装置の一部を拡大した外観図である。
【図2】この発明の実施の形態2のかご扉開閉装置の正面図である。
【図3】この発明の実施の形態2の乗場扉装置の正面図である。
【図4】かご扉と乗場扉とを係合する係合部材を昇降路の上方から見た拡大図である。
【図5】この発明の実施の形態3のかご扉開閉装置の正面図である。
【図6】この発明の実施の形態3の乗場扉装置の正面図である。
【図7】従来のエレベータ装置を示す昇降路断面図である。
【図8】従来のエレベータ装置の乗りかごの外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る実施の形態について添付図面に基づいて説明する。なお、図中、同一符号は同一又は対応部分を示すものとする。
【0025】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1のエレベータ装置の一部を拡大した外観図である。図1において、かご扉8の上部の外側の端部にはカム8aが取り付けられている。扉8が開放すると、カム8aがリンク機構9のレバー9aの一端を押し上げる。レバー9aは、ブラケット9cに回動自在に支持されている。そして、レバー9aは一端が押し上げられると、制振部材9eをガイドレール5に押し付ける。制振部材9eのガイドレール5側の面には、摩擦を大きくする図示しない摺擦部材が固定されている。
【0026】
扉8が閉じている際には、レバー9aは、引きばね9bによって引き下げられ、ストッパー9dで待機位置に押し止められている。この待機位置においては、ガイドレール5と制振部材9eとの間には隙間があり制振作用が働かない。
【0027】
例えば、上述の従来例特開平3−18577号公報に示されるような従来の制振装置は、乗りかごの上に特別に専用の押圧装置を用いてダンピングする。しかし、この方法では、目的の制振作用を得ることができるが、設置スペースが大きかったり重量が重くなったりし大幅にコストがかさむ。
【0028】
これに対して、本実施の形態の制振装置は、乗りかごのかご扉開閉装置に接続され、かご扉8の開閉動作に伴って動作し、制振部材9eを昇降路してのガイドレールに付勢して乗りかごの揺れを抑制する。
【0029】
そして、制振装置は、かご扉8とガイドレール5との間に設けられ制振部材9eに設けられた図示しない摺擦部材をガイドレール5に押し付けて乗りかごの揺れを抑制するリンク機構9を有する。
【0030】
制振部材9eのガイドレール5への付勢する力を解析すると、一般的な9人乗りで昇降行程80mのエレベータの場合、10kg程度以上の摩擦力が必要と算出される。
このようなことから、本実施の形態の制振装置は、元々エレベータ装置が備えている乗りかごのかご扉開閉装置に接続され、かご扉8の開閉動作に伴って動作し、制振部材9eを昇降路に付勢して乗りかごの揺れを抑制する。そのため、大きなスペースを必要とすることなく、軽量で安価とすることができ、コストダウン可能なエレベータ装置とすることができる。
【0031】
実施の形態2.
図2はこの発明の実施の形態2のエレベータ装置を説明するかご扉開閉装置の正面図である。図3は乗場扉装置の正面図である。図4はかご扉と乗場扉とを係合する係合部材を昇降路の上方から見た拡大図である。
【0032】
図2において、かご扉開閉装置7は、乗りかごの正面上部に取り付けられている。吊り具7aに吊り下げられたかご扉8は、連動ロープ7bを介して接続された電動機7cによって開閉される。
【0033】
かご扉8の所定の位置には、乗場扉装置10に対応した位置に、制振部材としてのかご扉係合部材8bが設けられている。かご扉係合部材8bは、乗りかごの昇降方向に沿って延びる断面コ字形をなしている。
【0034】
図3において、乗場扉装置10は、乗場の正面上部に取り付けられている。ローラ10cとローラ10dとで吊りレール10eを挟み込み、吊りレール10eに吊り下げられた乗場扉10bは、吊りレール10eに沿って左右に移動可能に支持されている。
【0035】
乗場扉10bの所定の位置には、かご扉開閉装置7に対応した位置に、制振部材としての乗場扉係合部材10aが設けられている。乗場扉係合部材10aは、乗りかごの昇降方向に沿って延びる断面コ字形をなしている。
【0036】
かご扉係合部材8bと乗場扉係合部材10aは、乗りかごが乗場に位置しているとき、図4に示すように向き合って係合する。そして、かご扉開閉装置7によって、かご扉8が開閉すると、この動作に連動して乗場扉10bも開閉する。
【0037】
本実施の形態においては、電動機7cの駆動力を適度な強さに強めてある。そのため、両扉8,10が開閉する際、かご扉開閉装置7の駆動力すなわち電動機7cの駆動力が、係合部材8b,10aを介して、昇降路としての乗場扉10bに付勢される。これにより、乗りかごの揺れが抑制される。
【0038】
本実施の形態においては、かご扉係合部材8bと乗場扉係合部材10aとの間には、摩擦力を増加させるために摺擦部材8cが設けられている。この摺擦部材8cは、かご扉係合部材8bの断面コ字形の開放時押し付け面8b1と閉時押し付け面8b2に設けられている。これにより、係合部材8b,10a同士の摩擦力が増加し、乗りかごの振動がさらに減衰されるとともに、扉を開閉している途中や全開保持時においても、乗りかごの振動を減衰することができる。
【0039】
尚、摺擦部材8cは、かご扉係合部材8bと乗場扉係合部材10aのいずれかに設けられれば良い。しかし、乗場扉係合部材10aよりもかご扉係合部材8bの方が短いのでかご扉係合部材8bに設けられたほうが、摺擦部材8cが少なくて済み安価とすることができる。
【0040】
また、本実施の形態のエレベータの制振装置は、扉の開放途中においては、かご扉と乗場扉の扉重量分に相当する摩擦力による振動減衰しか期待できないが、扉が全開している時の押し付け力は電動機7cの駆動力を調整することで自由に操作できる。
【0041】
さらに、本実施の形態においては、かご扉と乗場扉は、吊りレールを上下方向に挟む複数のローラを有している。扉の上部あるいは下部に隙間がある場合、かご扉係合部材8bと乗場扉係合部材10aが係合した状態で乗りかごが振動すると、隙間の範囲で扉が動いてガタツキ・振動・騒音が発生し、また機器の寿命を損なうことにもなる。そこで、扉の開閉を案内するレールの上部と下部にローラを配置し、レールをはさみ込むことで隙間をなくす構造とする。尚、本実施の形態では、上部のドアレールを挟み込む構造としたが、下部にレールを設けたり敷居部で扉の上下方向の移動を抑制する場合にも、同様の効果を奏することは言うまでもない。
【0042】
実施の形態3.
図5はこの発明の実施の形態3のエレベータ装置を説明するかご扉開閉装置の正面図である。図6は乗場扉装置の正面図である。図5において、かご扉8には、把持装置としての固定側掴み8dと可動側掴み8eが設けられている。固定側掴み8dと可動側掴み8eとの間隔は、かご扉8の開放状態で変化する。固定側掴み8dと可動側掴み8eの対向する面には、図示しない摺擦部材が設けられている。そして、乗りかごが所定の位置にない場合は、固定側掴み8dと可動側掴み8eは、被把持装置としての乗場扉係合部材10fがスムーズに通過可能なように広く開いている。乗場扉係合部材10fは、図6に示されるように、乗りかごの昇降方向に沿って並べて設けられたローラである。
【0043】
一方、乗りかごが所定の位置に停止してかご扉8が開放する際には、戸開の開始時においては、両掴み8d,8eの間隔が広く開いている。そして、かご扉8が開くに連れて可動側掴み8eをカム8fが押し、固定側掴み8dに近づき、乗場扉係合部材10fを挟み込んで保持する。そして、かご扉8が完全に開いても可動側掴み8eの保持力が一定に保たれるように、カム8fの形状が決められている。カム8fの形状を変えることによって、保持力の大きさや扉位置による保持力の変化を自由に設定することができる。
【0044】
カム8fは、かご扉開閉装置7の設けられたピン7dとかご扉8に設けられたピン8gとを連結するリンク8hの構成により、かご扉8の開閉動作に伴って動き、また適度な把持力を発生するようにされている。
【0045】
可動側掴み8eが乗場扉係合部材10fを把持しているときに、乗りかごが変位しようとすると把持部分で滑りを生じようとするが、このとき乗りかごのかご扉8と乗場扉10bが上下に動かないように、かご扉8はローラ8j、8kによって吊りレール81を、乗場扉10bはローラ10c、10dで吊りレール10eを挟み込む構成としている。これにより、振動の減衰作用を有効に発揮される。
【0046】
尚、本実施の形態の把持装置は、構造を簡単とするためかご側に設けられているが、乗場側や昇降路側に設けられてもよい。また乗場扉係合部材10fはローラとされているが、ローラに限らず平板にしても同様の効果を奏することは言うまでもない。
【0047】
実施の形態1〜3において、摺擦部材には、ポリウレタン樹脂が用いられている。ポリウレタン樹脂は、高い摩擦特性を有し、しかも耐摩耗性に優れるため、扉開閉装置の開放力が小さくても高い制振効果を期待でき、機器の小型化を図るだけでなく長期間にわたって使用可能となる。そして特に、硬度を自由に選択できる材料のため、係合部での衝突音を緩衝する作用も自由に操作でき、高い制振効果と静粛性を両立することができる。
【0048】
さらに、摺擦部材には、高分子ポリエチレン樹脂を用いても良い。高分子ポリエチレン樹脂は、静的な摩擦特性と動的な摩擦特性に大きな差がなく、安定した制振特性を発揮でき、しかも耐摩耗性に優れるため、長期間にわたって使用可能となる。摩擦係数は、あまり大きくないが摺動時の静粛性に優れる特長があり、乗客が乗降する乗場近辺に設ける制振装置に適する材料である。
【0049】
なお、本発明に関する産業上の利用の可能性は、次のとおりである。この発明に係るエレベータ装置は、乗場及びガイドレールを含む昇降路と、昇降路内に配置されガイドレールに案内され巻上機によってロープを介して昇降される乗りかごと、乗りかごのかご扉開閉装置に接続され、かご扉の開閉動作に伴って動作し、制振部材を昇降路に付勢して乗りかごの揺れを抑制する制振装置とを備えている。そのため、乗客の乗降等による乗りかごの荷重変動による振動を抑制することができるとともに、かご扉開閉装置を活用するので特別に駆動源を必要とすることなく、制振装置を設けるために大きなスペースを必要とすることなく、乗りかごの重量が極端に大きくなることなく、簡単な構造なので安価とすることができ、コストダウン可能なエレベータ装置とすることができる。
【0050】
また、制振装置は、かご扉とガイドレールとの間に設けられ制振部材に設けられた摺擦部材をガイドレールに押し付けて乗りかごの揺れを抑制するリンク機構を有する。そのため、簡単な構造でかつ確実に動作するものとすることができ、また装置が軽量で乗りかごの重量が増加しすぎることがない。
【0051】
また、制振装置は、かご扉と乗場扉との間に設けられ、乗りかごのかご扉開閉の際に、かご扉と乗場扉とを係合し、かご扉開閉装置の駆動力を乗場扉に伝達して乗りかごの揺れを抑制する制振部材としての係合部材を有する。そのため、構造を簡単なものとすることができ、また乗りかごの重量が増加しすぎることがない。
【0052】
また、係合部材は、かご扉に設けられたかご扉係合部材と乗場扉に設けられた乗場扉係合部材とからなり、両係合部材の間には摺擦部材が配設されている。そのため、乗りかごの揺れをさらに抑制することができるとともに、扉を開放している途中においても、乗りかごの振動を減衰することができる。
【0053】
また、かご扉係合部材は、乗りかごの昇降方向に沿って延びる断面コ字形をなし、乗場扉係合部材は、かご扉係合部材に向かい合って係合する断面コ字形をなし、摺擦部材は、かご扉係合部材あるいは乗場扉係合部材の断面コ字形の開放時押し付け面及び閉時押し付け面に設けられている。そのため、扉の開時だけでなく、扉の閉時においても乗りかごの振動を減衰することができる。
【0054】
また、摺擦部材は、かご扉係合部材に設けられている。そのため、摺擦部材が少なくて済み安価とすることができる。
【0055】
また、制振装置は、乗りかごまたは乗り場のいずれか一方に設けられ、かご扉の開閉動作に伴って動作する把持装置と、乗りかごまたは乗り場の他方に設けられ把持装置によって把持される被把持装置とを有する。そのため、乗りかごの荷重変動による振動を確実に抑制することができる。
【0056】
また、把持装置には、把持装置と被把持装置との摩擦を向上させる摺擦部材が設けられている。そのため、乗りかごの振動をさらに確実に抑制することができる。
【0057】
また、かご扉と乗場扉は、吊りレールを上下方向に挟む複数のローラを有している。そのため、扉のガタツキ・振動・騒音を抑制し、また機器の寿命を延ばす。
【0058】
また、摺擦部材にポリウレタン樹脂が用いられている。ポリウレタン樹脂は、高い摩擦特性を有し、しかも耐摩耗性に優れるため、扉開閉装置の開放力が小さくても高い制振効果を期待でき、機器の小型化を図るだけでなく長期間にわたって使用可能となる。そして特に、硬度を自由に選択できる材料のため、係合部での衝突音を緩衝する作用も自由に操作でき、高い制振効果と静粛性を両立することができる。
【0059】
さらに、摺擦部材に高分子ポリエチレン樹脂が用いられている。高分子ポリエチレン樹脂は、静的な摩擦特性と動的な摩擦特性に大きな差がなく、安定した制振特性を発揮でき、しかも耐摩耗性に優れるため、長期間にわたって使用可能となる。また摺動時の静粛性に優れる特長があり、乗客が乗降する乗場近辺に設けると効果が大である。
【符号の説明】
【0060】
5 ガイドレール、8 かご扉、8b かご扉係合部材、8c 摺擦部材、8d 固定側掴み、8e 可動側掴み、9 リンク機構9、9e 制振部材、10a 乗場扉係合部材、10b 乗場扉、10f 乗場扉係合部材。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗場及びガイドレールを含む昇降路と、
上記昇降路内に配置され上記ガイドレールに案内され巻上機によってロープを介して昇降される乗りかごと、
上記乗りかごのかご扉開閉装置に接続され、かご扉の開閉動作に伴って動作し、制振部材を上記昇降路に付勢して該乗りかごの揺れを抑制する制振装置と
を備えたことを特徴とするエレベータ装置。
【請求項2】
上記制振装置は、上記かご扉と上記ガイドレールとの間に設けられ上記制振部材に設けられた摺擦部材を該ガイドレールに押し付けて上記乗りかごの揺れを抑制するリンク機構を有する
ことを特徴とする請求項1に記載のエレベータ装置。
【請求項3】
上記制振装置は、上記かご扉と乗場扉との間に設けられ、上記乗りかごのかご扉開閉の際に、該かご扉と乗場扉とを係合し、上記かご扉開閉装置の駆動力を乗場扉に伝達して上記乗りかごの揺れを抑制する上記制振部材としての係合部材を有する
ことを特徴とする請求項1に記載のエレベータ装置。
【請求項4】
上記係合部材は、上記かご扉に設けられたかご扉係合部材と上記乗場扉に設けられた乗場扉係合部材とからなり、両係合部材の間には摺擦部材が配設されている
ことを特徴とする請求項3に記載のエレベータ装置。
【請求項5】
上記かご扉係合部材は、上記乗りかごの昇降方向に沿って延びる断面コ字形をなし、上記乗場扉係合部材は、上記かご扉係合部材に向かい合って係合する断面コ字形をなし、上記摺擦部材は、上記かご扉係合部材あるいは上記乗場扉係合部材の断面コ字形の開放時押し付け面及び閉時押し付け面に設けられている
ことを特徴とする請求項4に記載のエレベータ装置。
【請求項6】
上記摺擦部材は、上記かご扉係合部材に設けられている
ことを特徴とする請求項5に記載のエレベータ装置。
【請求項7】
制振装置は、上記乗りかごまたは上記乗り場のいずれか一方に設けられ、かご扉の開閉動作に伴って動作する把持装置と、
上記乗りかごまたは上記乗り場の他方に設けられ上記把持装置によって把持される被把持装置とを有する
ことを特徴とする請求項1に記載のエレベータ装置。
【請求項8】
上記把持装置には、上記把持装置と該被把持装置との摩擦を向上させる摺擦部材が設けられている
ことを特徴とする請求項7に記載のエレベータ装置。
【請求項9】
上記かご扉と上記乗場扉は、吊りレールを上下方向に挟む複数のローラを有している
ことを特徴とする請求項3または7に記載のエレベータ装置。
【請求項10】
上記摺擦部材にポリウレタン樹脂が用いられている。
ことを特徴とする請求項2,4,5,6,8のいずれかに記載のエレベータ装置。
【請求項11】
摺擦部材に高分子ポリエチレン樹脂が用いられている。
ことを特徴とする請求項2,4,5,6,8のいずれかに記載のエレベータ装置。
【請求項1】
乗場及びガイドレールを含む昇降路と、
上記昇降路内に配置され上記ガイドレールに案内され巻上機によってロープを介して昇降される乗りかごと、
上記乗りかごのかご扉開閉装置に接続され、かご扉の開閉動作に伴って動作し、制振部材を上記昇降路に付勢して該乗りかごの揺れを抑制する制振装置と
を備えたことを特徴とするエレベータ装置。
【請求項2】
上記制振装置は、上記かご扉と上記ガイドレールとの間に設けられ上記制振部材に設けられた摺擦部材を該ガイドレールに押し付けて上記乗りかごの揺れを抑制するリンク機構を有する
ことを特徴とする請求項1に記載のエレベータ装置。
【請求項3】
上記制振装置は、上記かご扉と乗場扉との間に設けられ、上記乗りかごのかご扉開閉の際に、該かご扉と乗場扉とを係合し、上記かご扉開閉装置の駆動力を乗場扉に伝達して上記乗りかごの揺れを抑制する上記制振部材としての係合部材を有する
ことを特徴とする請求項1に記載のエレベータ装置。
【請求項4】
上記係合部材は、上記かご扉に設けられたかご扉係合部材と上記乗場扉に設けられた乗場扉係合部材とからなり、両係合部材の間には摺擦部材が配設されている
ことを特徴とする請求項3に記載のエレベータ装置。
【請求項5】
上記かご扉係合部材は、上記乗りかごの昇降方向に沿って延びる断面コ字形をなし、上記乗場扉係合部材は、上記かご扉係合部材に向かい合って係合する断面コ字形をなし、上記摺擦部材は、上記かご扉係合部材あるいは上記乗場扉係合部材の断面コ字形の開放時押し付け面及び閉時押し付け面に設けられている
ことを特徴とする請求項4に記載のエレベータ装置。
【請求項6】
上記摺擦部材は、上記かご扉係合部材に設けられている
ことを特徴とする請求項5に記載のエレベータ装置。
【請求項7】
制振装置は、上記乗りかごまたは上記乗り場のいずれか一方に設けられ、かご扉の開閉動作に伴って動作する把持装置と、
上記乗りかごまたは上記乗り場の他方に設けられ上記把持装置によって把持される被把持装置とを有する
ことを特徴とする請求項1に記載のエレベータ装置。
【請求項8】
上記把持装置には、上記把持装置と該被把持装置との摩擦を向上させる摺擦部材が設けられている
ことを特徴とする請求項7に記載のエレベータ装置。
【請求項9】
上記かご扉と上記乗場扉は、吊りレールを上下方向に挟む複数のローラを有している
ことを特徴とする請求項3または7に記載のエレベータ装置。
【請求項10】
上記摺擦部材にポリウレタン樹脂が用いられている。
ことを特徴とする請求項2,4,5,6,8のいずれかに記載のエレベータ装置。
【請求項11】
摺擦部材に高分子ポリエチレン樹脂が用いられている。
ことを特徴とする請求項2,4,5,6,8のいずれかに記載のエレベータ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2012−12226(P2012−12226A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231558(P2011−231558)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【分割の表示】特願2002−589148(P2002−589148)の分割
【原出願日】平成13年7月16日(2001.7.16)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【分割の表示】特願2002−589148(P2002−589148)の分割
【原出願日】平成13年7月16日(2001.7.16)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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