説明

エレベータ装置

【課題】不必要な光電センサのエレベータドアへの異物の挟まりものをかごの運転制御に反映させないようにして、不必要にかごを停止させることなくエレベータドアの異物の挟まりに応じたかごの運転を行うことができるエレベータ装置を得る。
【解決手段】かご15と、かご出入り口16を開閉する両開きのかごドア17と、それぞれが、かごドア17の相対する一対の戸当たり部に相対させて配置される投光器22及び受光器23を有し、投光器22から受光器23への光が遮光された場合に遮光信号を出力するように構成されており、高さ方向に互いに離間させて配置される複数の光電センサ21と、各光電センサ21の遮光信号に応じてかご15の運転を制御するエレベータ制御盤30とを備え、エレベータ制御盤30は、かご15の移動中、高さ方向に隣接する光電センサ21が、順次遮光信号を出力した場合に、直前の停止階にかご15を戻す制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エレベータドアへの異物の挟まれを光電センサにより検出し、検出結果に応じたかごやエレベータドアの開閉制御を行うエレベータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のエレベータのドア安全装置は、横引き式の両開きドアのうちの一方のドアに上下方向に互いに間隔をあけて設けられて、それぞれ検出光を投光する複数の投光器、及び他方のドアに複数の投光器と対向して設けられ、検出光を受光する複数の受光器を有する光電センサ装置と、光電センサ装置からの信号に応じて、かごの運転を制御するエレベータ制装置とを備えている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
光電センサ装置は、受光器での検出光の受光が遮断されることをもって、ドアに挟まれる異物を検出し、エレベータ制御装置は、少なくともかごの走行開始直後に光電センサ装置による異物検出機能が有効であるように設定されている。
例えば、エレベータ制御装置は、かごの走行開始直後に、光電センサ装置により異物が検出されると、かごを停止させ、直前に出発した停止階の階床位置へかごを戻して戸開させる制御を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第20007/066375号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のエレベータのドア安全装置では、例えば、一つの投光器にゴミが付着した場合や、一つの受光器が故障した場合にも光電センサ装置により異物が検出されたと見なすことになる。この場合、かごの運転に問題がないにもかかわらず、エレベータ制御装置は、かごを停止階から次の目的回に移動させた後、再度停止階に戻して停止させるという制御を行うことになり、以降、エレベータの管理者が光電センサの不具合に対応するまで、エレベータの通常の運転ができなくなってしまう。
【0006】
この発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、光電センサによるエレベータドアへの異物の挟まりに応じた遮光信号のうち、不必要なものをかごの運転制御に反映させないようにして、不必要にかごを停止させることを防止できるエレベータ装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明のエレベータ装置は、昇降路に昇降自在に設けられたかごと、エレベータ出入り口を開閉する両開きのエレベータドアと、それぞれが、エレベータ出入り口の両側部、またはエレベータドアの相対する一対の戸当たり部に相対させて配置される投光器及び受光器を有し、投光器から受光器への光が遮光された場合に遮光信号を出力するように構成されており、高さ方向に互いに離間させて配置される複数の光電センサと、各光電センサの遮光信号に応じてかごの運転を制御するエレベータ制御盤とを備え、エレベータ制御盤は、かごの移動中、高さ方向に隣接する光電センサが、順次遮光信号を出力した場合に、直前の停止階にかごを戻す制御を行う。
【発明の効果】
【0008】
例えば、ゴミ等が一つの光電センサに付着して光電センサから遮光信号が出力された場合、かごの移動中に隣接する光電センサが順次遮光信号を出力するようなことはない。一方、紐等の異物がエレベータドアに挟まれていた場合には、異物が相対的にかごに対して移動されるので、隣接する光電センサは、かごが所定距離移動したところで、順次遮光信号を出力する。
以上を鑑みて、この発明に係るエレベータ装置では、エレベータ制御盤が、かごの移動中、高さ方向に隣接する光電センサが、順次遮光信号を出力した場合に、直前の停止階にかごを戻す制御を行うように構成されているので、かごは、移動を開始した後、エレベータドアへの異物の挟まれに起因してかごを停止する必要がある場合のみ、直前の停止階に戻される。従って、不必要にかごの運転を停止させることを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の実施の形態1に係るエレベータの模式図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係るエレベータのかご出入り口まわりをかご内から見た正面図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係るエレベータのシステム構成図である。
【図4】この発明の実施の形態1に係るエレベータ装置において、紐がかごドアの間に挟まれた状態を、一方のかごドア及び乗場ドアを省略して間口方向から図示した図である。
【図5】この発明の実施の形態1に係るエレベータ装置において、かごドアの間に紐が挟まれた状態からかごが移動したときの各光電センサの遮光信号の出力の時間変化を示す図である。
【図6】図4の状態からかごが上方へ移動した直後の紐の様子を示した図である。
【図7】この発明の実施の形態1に係るエレベータ装置において、かごドア及び乗場ドアが開状態にあり、かごドアを横切る紐の高さ位置が変化するときの各光電センサの遮光信号の出力の時間変化を示す図である。
【図8】この発明の実施の形態2に係るエレベータ装置のかご出入り口まわりをかご内から見た正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して説明する。
【0011】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係るエレベータの模式図、図2はこの発明の実施の形態1に係るエレベータのかご出入り口まわりをかご内から見た正面図、図3はこの発明の実施の形態1に係るエレベータのシステム構成図である。
【0012】
図1において、エレベータ装置1は、建物に設けられる昇降路2と、駆動綱車4及び駆動綱車4を回転させるトルクを発生する電動機5を有し、昇降路2の上部に形成された機械室6に設置される巻上機3と、機械室6に設置されたそらせ車7と、駆動綱車4及びそらせ車7に巻き掛けられて、昇降路2内に垂れ下げられる主索8とを備えている。
【0013】
また、エレベータ装置1は、昇降路2に開口するエレベータ出入り口としての乗場出入り口11、及び乗場出入り口11を開閉するエレベータドアとしての横引き式の両開き乗場ドア12を有し、各階に設けられる乗場10と、主索8の一端に連結されて昇降路2に昇降自在に設けられ、エレベータ出入り口としてのかご出入り口16、及びかご出入り口16を開閉するエレベータドアとしての横引き式の両開きかごドア17を有するかご15と、主索8の他端に連結されるつり合いおもり9と、かごドア17及び乗場ドア12を開閉させる駆動力を発生するドアモータ25と、かごドア17及び乗場ドア12の開閉制御及びかご15の昇降制御を可能に構成されたエレベータ制御盤30とを備えている。
さらに、エレベータ装置1は、図2及び図3に示されるように、かご15に設けられる光電センサユニット20を備えている。
【0014】
かごドア17は、図2に示されるように、一対設けられ、一対のかごドア17は、互いに逆方向に移動してかご出入り口16を開閉する。そして、一対のかごドア17の相対する閉方向の端部が、戸当たり部17aを構成している。また、詳細には図示しないが、乗場ドア12もかごドア17と同様に一対設けられて、一対の乗場ドア12は、互いに逆方向に移動して、乗場出入り口11を開閉する。
なお、乗場ドア12は、かごドア17の開閉移動に連動して開閉移動されるように構成されている。
【0015】
次いで、光電センサユニット20の詳細について説明する。
図2及び図3において、光電センサユニット20は、複数の光電センサ21により構成されている。
光電センサ21は、投光器22、受光器23、及び受光器23の受光状態に応じた信号を出力する検出信号出力部24を有している。
【0016】
各光電センサ21の投光器22及び受光器23は、一対のかごドア17の相対する戸当たり部17aに相対するように取り付けられている。このとき投光器22及び受光器23は、かご出入り口16及び乗場出入り口11の間口方向に離間して相対している。つまり、投光器22は、投光する光の方向を間口方向に一致させて配置され、受光器23は、投光器22から投光された光を受光する位置に配置されている。以下、光電センサ21の高さ位置を、投光器22から投光される光の高さ位置とする。
【0017】
そして、光電センサユニット20は、複数の光電センサ21を高さ方向に互いに離間して設けることで構成されている。このとき、隣接する光電センサ21の間隔、言い換えれば、隣接する投光器22の間隔及び隣接する受光器23の間隔のそれぞれは、例えば、40mm程度である
【0018】
そして、各光電センサ21の検出信号出力部24は、受光器23での受光状態に応じた信号を出力するようになっている。例えば、投光器22から受光器23への光が遮光された場合に、電気的にHighの信号を異物の挟まれの検出信号としての遮光信号として出力し、受光器23が光を受光している場合は電気的にLowの信号を受光信号として出力する。
【0019】
ついで、エレベータ装置1のシステム構成について説明する。
図3において、エレベータ制御盤30は、ドアモータ25の駆動を制御可能にドアモータ25に接続されており、かごドア17及び乗場ドア12は、エレベータ制御盤30に制御されるドアモータ25の駆動力により移動してかご出入り口16及び乗場出入り口11を開閉する。以下、かごドア17及び乗場ドア12を単にドア17,12とする。
【0020】
エレベータ制御盤30と電動機5とが通信可能に連結され、エレベータ制御盤30は電動機5の駆動を制御可能になっている。電動機5のトルクにより駆動綱車4が回転され、駆動綱車4の回転に連動して主索8が走行することにより、かご15が昇降路2内を昇降する。
【0021】
また、エレベータ制御盤30と各光電センサ21の検出信号出力部24とが電気的に接続され、エレベータ制御盤30は、検出信号出力部24の出力信号を認識可能になっている。また、エレベータ制御盤30には、各光電センサ21のかご15の床からの光電センサ21の高さ位置が、各光電センサ21に関連付けされて予め保存されており、エレベータ制御盤30は、遮光信号を出力した光電センサ21の高さ位置を認識可能になっている。
【0022】
次いで、エレベータ制御盤30によるかご15の昇降運転、及びドア17,12の開閉制御について説明する。
図4はこの発明の実施の形態1に係るエレベータ装置において、紐がかごドアの間に挟まれた状態を、一方のかごドア及び乗場ドアを省略して間口方向から図示した図である。図5はこの発明の実施の形態1に係るエレベータ装置において、紐がかごドアの間に挟まれた状態からかごが移動したときの各光電センサの遮光信号の出力の時間変化を示す図であり、縦軸はかご床からの高さであり、各光電センサの高さ位置を−印で示し、遮光信号を参照する時間毎に、遮光信号が確認された光電センサの高さ位置を●で示している。図6は図4の状態からかごが上方へ移動した直後の紐の様子を示した図である。
【0023】
エレベータ制御盤30は、全ての光電センサ21の遮光信号の有無を、常に所定の微小時間間隔(参照間隔)で確認するように構成されている。
以下、長尺異物としての紐28が、かごドア17に挟まれた状態からかご15が上方向に移動する場合の各光電センサ21が出力する遮光信号、及び遮光信号に応じたかご15の運転制御について説明する。
【0024】
例えば、図4に示されるように、かご15の着床階において、ドア17,12が全閉された状態で、紐28が、所定の光電センサ21の投光器22と受光器23の間に挟まれているものとする。従って、かご15の移動が開始された時点での時間を時間軸の0とした場合、図5に示されるように、かご15の移動の開始時点(t=0)では、所定の光電センサ21が遮光信号を出力している。
【0025】
かご15が、上方向へ移動し始めると、図6に示されるように、紐28は乗場10に引っ張られることになり、紐28は相対的にかご15の下方に移動する。
かご15が所定量だけ上方向に移動したところで、紐28が遮光していた光の高さ位置からずれ、一旦、遮光信号の出力が途切れる。次いで、これまで光を遮光されていた光電センサ21の下方に隣接する光電センサ21の高さ位置に、紐28の高さ位置が一致したところで、当該光電センサ21の投光器22が投光する光が紐28により遮光されて当該センサか21ら遮光信号が出力される。
【0026】
以上のように、紐28がドア17,12の間に挟まった状態で、かご15が上方に移動すると、光電センサ21のうち、紐28の高さ位置に対応する位置にある光電センサ21と当該光電さの下方に隣接する光電センサ21が、図5のA及びBの一点鎖線で円内の●で示したように、高さ位置の高いものから順次遮光信号を出力する。なお、紐28の高さ位置に対応する位置にある光電センサ21とは、かご15の移動開始時点で、紐28により遮光されている光電センサ21がある場合には、当該光電センサ21のことをいう。またかご15の移動開始時点で、紐28により遮光されている光電センサ21がない場合には、この時点での紐28の高さ位置からかご15の進行方向と逆側の高さ位置にある全ての光電センサ21のうちで最も紐28に近い光電センサ21のことを、紐28の高さ位置に対応する光電センサ21という。
【0027】
そしてエレベータ制御盤30は、全ての光電センサ21のうち、隣接する光電センサ21のいずれかが順次遮光信号を出力した場合、移動中のかご15を反転させて直前の停止階に戻してドア17,12を開く制御を行う。言い換えると、エレベータ制御盤30は、ある光電センサ21の出力が遮光信号から受光信号に切り替わり、遮光信号出力していた光電センサ21の下方に隣接する光電センサ21が遮光信号を出力した場合に、移動中のかご15を反転させて直前の停止階に戻し、さらにドア17,12を開く制御を行う。
【0028】
このようにエレベータ制御盤30が、ドア17,12を全閉した後のかご15の移動を制御することで、例えば、一つの投光器22にゴミが付着して当該投光器22からの光が遮光された場合でも、隣接する光電センサ21が順次遮光信号を出力することがないので、かご15は、非常措置として停止階に戻されることなく、通常通りに昇降される。
【0029】
なお、上記は、かご15が停止した状態から上方向に移動する場合について説明したが、かご15が停止した状態から下方向に移動する場合、紐28がドア17,12の間に挟まっているときには、高さ方向に隣接する光電センサ21が、高さ位置の低いものから順次遮光信号を出力することになる。
いずれにしろ、エレベータ制御盤30は、高さ方向に隣接する任意の光電センサ21が、順次遮光信号を出力した場合、移動中のかご15を反転させて直前の停止階の乗場10に戻してドア17,12を開く制御を行う。
【0030】
次いで、エレベータ制御盤30が、かご15を目的階の乗場10に着床させ、ドア17,12を開状態とした後のドア17,12の制御について説明する。
図7はこの発明の実施の形態1に係るエレベータ装置1において、かごドア及び乗場ドアが開状態にあり、かごドアを横切る紐の高さ位置が変化するときの各光電センサの遮光信号の出力の時間変化を示す図であり、縦軸に光電センサの高さ位置を―で図示し、遮光信号を参照する時間毎に、遮光信号が確認された光電センサの高さ位置を●で示している。
【0031】
エレベータ制御盤30は、ドア17,12を開状態とした後、現在から過去の所定の時間内(ドア制御基準間隔時間内)における遮光信号の有無を繰り返し参照するように構成されている。
なお、ドア制御基準間隔時間は、参照間隔の少なくとも3倍であり、ドア17,12の閉動作を行わずにドア17,12の開閉制御を放置したときに、乗客に不快感を抱かせない程度で、参照間隔に対してより長い時間であることが好ましく、ここでは、数秒に設定している。
【0032】
エレベータ制御盤30は、例えば、3本以上の光電センサ21の光が遮光されている場合には、乗客や乗客の荷物が、ドア17,12の間に位置しいているものとしてドア17,12の開状態を維持して閉動作を行わない。
【0033】
次いで、例えば、かご15内に乗り込んだ乗客が把持する図示しない紐につながれた犬が、乗場側に残されている場合を想定する。そして、犬が動いて紐が緊張状態になったり緩んだりして、ドア17,12を横切る紐の高さ位置が変化する場合、光電センサ21から出力される遮光信号の時間変化は、例えば以下に説明する通りとなる。
【0034】
図7において、時間軸の0点は、ドア17,12の全開後に人が通過した時点を0としている。
例えば、ドア17,12が全開して乗客がかご15内に入り、紐がドア17,12を横切ったところで、所定の光電センサ21が遮光信号を出力する。
犬がうごいて紐の高さ位置が変化するのに伴い、Cで示される一点鎖線の円に囲まれる円内の●で示されるように、遮光信号を出力する光電センサ21が切り替えられる。
【0035】
そして、紐が、所定の光電センサ21が投光する光を遮った状態で移動しなくなると、Dで示される1点鎖線の円に囲まれる円内の●で示されるように、同一の光電センサ21が、遮光信号を続けて出力しているものとしてエレベータ制御盤30に認識される。
【0036】
そして、エレベータ制御盤30は、以下に説明する3つの条件を満たす場合に、ドア17,12を開状態に維持する、またはドア17,12を低速で閉める制御を行う。
1つ目の条件は、参照間隔が経過する毎に行われる遮光信号の有無を確認した結果、遮光信号を出力する光電センサの数が0または1であることである。2つ目の条件は、遮光信号を出力する光電センサ21の数が0のまま、予め設定される遮光継続時間を超えて継続されないことである。なお、遮光継続時間は、ドア制御基準間隔時間以内で、参照間隔の少なくとも3倍の時間に設定される。3つ目の条件は、出力される遮光信号のみを時系列的に見たときに、時系列的に連続している遮光信号を出力した2つの光電センサ21の高さ位置の差が、予め設定された所定の距離以内にあることである。例えば、所定の距離は、隣接する光電センサ21の互いの間隔以上の距離で適宜設定され、ここでは、100mmに設定されている。
【0037】
次いで、以上のようにドア17,12の開閉を制御する意味について説明する。
エレベータ装置1と同様の構成を有する従来のエレベータでは、複数の光電センサ21を用いてかごドア17の間に位置する異物を検出してドア17,12の開閉を制御するのに、ゴミ等が一瞬だけ一つの投光器22に付着することなどして光が遮光される場合を鑑み、一つの光電センサ21が、遮光信号を2回以上の遮光信号の参照動作で続けて確認されないと異物の検出を認定しない構成のものが一般的である。
【0038】
このような従来のエレベータでは、例えば、図7のCで示される1点鎖線の円の範囲に対応する時間領域では、●で示されるように、エレベータ制御盤30が、遮光信号の有無を参照するたびに、いずれかの光電センサ21から遮光信号が出力されていることを確認するものの、同一の光電センサ21からの遮光信号を、2回以上の遮光信号の参照動作で続けて確認されることはない。
【0039】
このため、エレベータ制御盤30は、ドア17,12を閉めるように制御する。ところが、Dで示される1点鎖線の円の範囲に対応する時間領域では、エレベータ制御盤30は、同一の光電センサ21からの遮光信号を、2回以上の遮光信号の参照動作で続けて確認することになる。これにより、エレベータ制御盤30は、紐等の異物がドア17,12の間にあると判断して、ドア17,12を反転動作する。この後、同一の光電センサ21からの遮光信号が出力されない時間領域が続くので、エレベータ制御盤30は、再びドア17,12を反転動作させてドア17,12を閉動作させる。
【0040】
つまり、一点鎖線の円C,Dのそれぞれに対応する時間領域での遮光状態と同様の遮光状態が交互に繰り返されるように、紐の高さ位置が変化すると、エレベータ制御盤30は、ドア17,12を移動させた後、反転させるという不必要なドア17,12の開閉制御を繰り返し行うことになる。
【0041】
一方、本願のエレベータ装置1では、上述したように、参照間隔に対して十分に長いドア制御基準間隔時間内での遮光信号の時間的変化を総合的に判断して紐等の異物がドア17,12の間にあるか否かを判断するので、不必要にドア17,12を移動させた後に反転させるというドア17,12の開閉制御を行うことが回避される。
【0042】
この発明のエレベータ装置1によれば、エレベータ制御盤30が、かご15の移動中、高さ方向に隣接する光電センサ21が、順次遮光信号を出力した場合に、直前の停止階にかご15を戻してドア17,12を開動作させるように構成されている。
【0043】
ここで、ゴミが、一つの光電センサ21のみに付着して当該光電センサ21から遮光信号が継続して出力されるような場合には、かご15を移動した後に、かご15を通常通りに目的階まで移動しても何ら問題ない。
【0044】
上記のようにエレベータ装置1を構成することにより、エレベータ制御盤30は、一つの光電センサ21が継続して遮光信号を出力している場合、紐28等の異物かごドア17に挟まれていなければ、隣接する光電センサ21が順次遮光信号を出力することはない。つまり、エレベータ制御盤30は、かご15の目的階への移動を開始した後、一つの光電センサ21の遮光信号が継続して出力されている場合でも、直前の停止階にかご15を戻すことはなく、かご15を目的階へそのまま移動させる。また、紐28等の異物がドア17,12に挟まれていた場合には、隣接する光電センサ21が、上述のようにかご15が所定距離移動したところで、順次出力されるので、エレベータ制御盤30は、かご15を直前の停止階に戻してドア17,12を開くように制御する。
【0045】
以上のように、エレベータ制御盤30は、光電センサ21によるドア17,12への異物の挟まりの検出信号(遮光信号)のうち、不必要なものをかご15の運転制御に反映させないようにしている。つまり、エレベータ制御盤30は、かご15の移動開始後、ドア17,12への紐28等の異物の挟まれに起因して、早急にかご15を停止する必要がある場合のみ、現在の位置から最も近い直前の停止階にかご15を戻して停止させるという非常時の運転制御を行うので、不必要にかご15の運転を停止させることを回避できる。
【0046】
また、エレベータ制御盤30は、ドア17,12を開状態にしているときに、現在から過去の所定時間内(ドア制御基準間隔時間内)における遮光信号の有無を参照した結果において、各参照時間で遮光信号を出力している光電センサ21の数が0または1であり、遮光信号を出力する光電センサ21の数が0のまま所定の遮光継続時間を超えて継続されることなく、かつ、確認された遮光信号のうち、時系列的に連続する遮光信号を出力した各光電センサ21の高さ位置の差が、予め設定された所定の距離以内にある場合にドアを開状態に維持する、または通常の閉動作より遅い速度で閉じるように構成されている。
【0047】
従って、エレベータ制御盤30では、現在から過去のドア制御基準間隔時間内における遮光信号の時間的変化を総合的に判断して紐等の異物がドア17,12の間にあるか否かを判断することになり、ドア17,12が開いているときに不必要にドア17,12の反転移動を繰り返すことを回避できる。
【0048】
なお、上記実施の形態1では、各光電センサ21の投光器22及び受光器23は、一対のかごドア17の相対する戸当たり部17aに相対するように取り付けられるとして説明した。しかし、投光器22及び受光器23は、例えば、かご出入り口16の両側部の図示しない袖壁の相対する部位に取り付けるなどしてもよい。この場合でも、ドア17,12が全閉したときに、投光器22及び受光器23の間に位置する異物を検出可能である。
さらに、各光電センサ21の投光器22及び受光器23は、一対のかごドア17の相対する戸当たり部17aに取り付けるものによらず、一対の乗場ドア12の相対する戸当たり部に取り付けたり、乗場出入り口11の両側部に位置する図示しない三方枠の相対する縦枠に取り付けたりしてもよい。
【0049】
実施の形態2.
図8はこの発明の実施の形態2に係るエレベータ装置のかご出入り口まわりをかご内から見た正面図である。
【0050】
図8において、エレベータ装置のかご15は、かご出入り口16を開閉するエレベータドアとしての片開き式の一対のかごドア40を備えている。
また、一対のかごドア40のうちの一方のかごドア40と一方のかごドア40の全閉時に接する戸当たり柱としての袖壁41において、かごドア40の全閉時に互いに接する部位が、戸当たり部40a,41aを構成している。
なお、図示しないが、乗場10には、乗場出入り口11を開閉するように一対のかごドア40の移動に連動して移動する片引き式の一対の乗場ドアが設けられている。
【0051】
また、光電センサユニット20を構成する光電センサ21の投光器22及び受光器23は、かごドア40及び袖壁41の相対する戸当たり部40a,41aに相対するように取り付けられている。
なお、光電センサユニット20は、実施の形態1と同様、複数の光電センサ21を高さ方向に互いに離間して複数設けることで構成されている
この実施の形態2のエレベータ装置の他の構成は、上記実施の形態1と同様に構成されている。
【0052】
エレベータ制御盤30によるかご15の昇降運転、及びかごドア17及び乗場ドアの開閉制御は、上記実施の形態1と同様である。
【0053】
この実施の形態2のエレベータ装置は、かごドア40とかごドア40の全閉時に接する袖壁41のそれぞれの戸当たり部40a,41aに相対させて配置される投光器22及び受光器23を有し、投光器22から受光器23への光が遮光された場合に遮光信号を出力するように構成されており、高さ方向に互いに離間させて配置される複数の光電センサと、各光電センサ21の遮光信号に応じてかご15の運転を制御するエレベータ制御盤30と、を備え、エレベータ制御盤30は、かご15の移動中、高さ方向に隣接する光電センサ21が、順次遮光信号を出力した場合に、直前の停止階にかご15を戻す制御を行うように構成されている。
【0054】
従って、実施の形態1と同様、エレベータ制御盤30は、光電センサ21によるドア17,12への異物の挟まりの検出信号(遮光信号)のうち、不必要なものをかご15の運転制御に反映させないようにしている。なお、ここでは、ドアへの挟まりとは、かごドア40及び乗場ドアとこれらのドアと相対する戸当たり柱の戸当たり部の間の紐の挟まりをいう。
従って、エレベータ装置1によれば、実施の形態1と同様、不必要にかご15の運転が停止することを回避できる。
また、ドアが開いているときのドアの開閉制御も実施の形態1と同様に行われるので、ドアが開いているときに不必要にドアを反転動作させることを回避できる。
【0055】
なお、この実施の形態2では、各光電センサ21の投光器22及び受光器23は、かごドア40とかごドア40と相対する袖壁41の戸当たり部40a,41aに相対するように取り付けられるとして説明した。しかし、投光器22及び受光器23は、例えば、かご出入り口16の両側部の袖壁41の相対する部位に取り付けるなどしてもよい。
また、各光電センサ21の投光器22及び受光器23は、乗場ドアと乗場ドアと相対する戸当たり柱の戸当たり部に取り付けたりしてもよい。なお、一般的には、ここでの戸当たり柱は、図示しない三方枠の縦枠である。また、投光器22及び受光器23は、乗場出入り口11の両側部に位置する三方枠の相対する縦枠に取り付けてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 エレベータ装置、2 昇降路、11 乗場出入り口、12 乗場ドア(エレベータドア)、15 かご、16 かご出入り口(エレベータ出入り口)、17 かごドア(エレベータドア)、17a 戸当たり部、21 光電センサ、22 投光器、23 受光器、40 かごドア(エレベータドア)、41 戸当たり柱、40a,41a 戸当たり部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降路に昇降自在に設けられたかごと、
エレベータ出入り口を開閉する両開きのエレベータドアと、
それぞれが、上記エレベータ出入り口の両側部、または上記エレベータドアの相対する一対の戸当たり部に相対させて配置される投光器及び受光器を有し、上記投光器から上記受光器への光が遮光された場合に遮光信号を出力するように構成されており、高さ方向に互いに離間させて配置される複数の光電センサと、
各上記光電センサの上記遮光信号に応じて上記かごの運転を制御するエレベータ制御盤と
を備え、
上記エレベータ制御盤は、上記かごの移動中、高さ方向に隣接する上記光電センサが、順次遮光信号を出力した場合に、直前の停止階に上記かごを戻すことを特徴とするエレベータ装置。
【請求項2】
昇降路に昇降自在に設けられたかごと、
エレベータ出入り口を開閉する片開きのエレベータドアと、
それぞれが、上記エレベータ出入り口の両側部、または上記エレベータドアと上記エレベータドアの全閉時に接する戸当たり柱のそれぞれの戸当たり部に相対させて配置される投光器及び受光器を有し、上記投光器から上記受光器への光が遮光された場合に遮光信号を出力するように構成されており、高さ方向に互いに離間させて配置される複数の光電センサと、
各上記光電センサの遮光信号に応じて上記かご及び上記エレベータドアの運転を制御するエレベータ制御盤と
を備え、
上記エレベータ制御盤は、上記かごの移動中、高さ方向に隣接する上記光電センサが、順次遮光信号を出力した場合に、直前の停止階に上記かごを戻すことを特徴とするエレベータ装置。
【請求項3】
上記エレベータ制御盤は、所定の参照間隔で複数の上記光電センサの上記遮光信号の有無を判断するように構成されており、上記エレベータドアが開状態にある場合、各上記遮光信号の有無を参照する時間では、現在から過去の所定時間内における上記遮光信号の有無を参照した結果において、各参照時間で上記遮光信号を出力している上記光電センサの数が0または1であり、上記遮光信号を出力する上記光電センサの数が0のまま所定の遮光継続時間を超えて継続されることなく、かつ、確認された上記遮光信号のうち、時系列的に連続する上記遮光信号を出力した各上記光電センサの高さ位置の差が、予め設定された所定の距離以内にある場合に上記エレベータドアを開状態に維持する、または通常の閉動作より遅い速度で閉じることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のエレベータ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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