エンケファリンを分解するエクトペプチダーゼを強力に阻害するオピオルフィンペプチド誘導体
本発明は、メタロエクトペプチダーゼの新規阻害因子としての、改変オピオルフィンペプチドに関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2008年4月7日に出願された米国仮出願第61/042,922号の利益を主張する。該出願は、参照により援用される。
【0002】
本発明は、メタロエクトペプチダーゼの新規阻害因子としての、改変オピオルフィンペプチドに関する。
【背景技術】
【0003】
亜鉛金属エクトペプチダーゼは、哺乳類の重要な生理機能の制御に関与する、神経伝達物質及びホルモン性伝達物質の受容体依存的な活性を調節する。それらは神経及び全身の組織の細胞表面に存在し、神経ペプチド及び制御ペプチドの分泌後プロセシング又は代謝を触媒する(Roques, BP, Noble, F, Dauge, V, Fournie−Zaluski, MC & Beaumont, A. (1993) Pharmacol Rev 45, 87−146. Turner, AJ, Isaac, RE & Coates, D. (2001) BioEssays 23, 261−269)。
【0004】
神経及び/又はホルモン性ペプチドシグナルの中で最も重要なものは、物質P(S)及びエンケファリンであり、これらは、ストレスとなる、又は脅迫的な環境刺激に対する行動的な適応応答(behavioral adaptive response)の、受容体依存的な調節に関与する。それらは、侵害受容情報の脊髄処理(spinal processing)及び鎮痛のメカニズム、感情及び/又は意欲の応答、不安、攻撃性、及び神経免疫炎症現象を顕著に制御する(Dickenson, AH. (1995) Br J Anaesth 75, 193−200. Sora, I, Takahashi, N, Funada, M, Ujike, H, Revay, RS, Donovan, DM, Miner, LL & Uhl, GR. (1997) Proc Natl Acad Sci USA 94, 1544−1549; Konig, M, Zimmer, AM, Steiner, H, Holmes, PV, Crawley, JN, Brownstein, MJ & Zimmer, A. (1996) Nature 383, 535−538; Filliol, D, Ghozland, S, Chluba, J, Martin, M, Matthes, HW, Simonin, F, Befort, K, Gaveriaux−Ruff, C, Dierich, A & LeMeur, M, et al. (2000) Nat Genet 25, 195−200)。
【0005】
亜鉛エクトペプチダーゼは、下流の神経及びホルモンシグナルの機能的機能的能力の調節において生理的に重要で、かつ重要な役割を果たすことから、何がそれらの活性を調節しているのかという問題に重点を置き、結果的にその全体の制御カスケードを明らかにすることは重要である。また、エクトペプチダーゼ活性の上流の制御因子を発見することも、生体病理的及び医療的観点から有意義である。なぜなら、新しい薬物候補開発の可能性が生じるからである。
【0006】
スピノルフィンという脳特異的ヘプタペプチドは、中性エンドペプチダーゼ(NEP;EC3.4.24.11[EC])及びアミノペプチダーゼN(AP−N;EC3.4.11.2[EC])等のエンケファリン分解エクトエンザイムに対する阻害的活性に基づき、ウシ脊髄から単離及び特定された(Nishimura, K & Hazato, T. (1993) Biochem Biophys Res Commun 194, 713−719; Yamamoto, Y, Ono, H, Ueda, A, Shimamura, M, Nishimura, K & Hazato, T. (2002) Curr Protein Pept Sci 3, 587−599)。加えて、発明者らは、ラットにおいて、環境の変化への適応に関与するペプチド伝達物質として、ラットシアロルフィン(sialorphin)を特定した。ラットシアロルフィンは内分泌ペプチドシグナルであり、雄ラットにおいては、アンドロゲン制御により発現が活性化され、環境ストレスに対するアドレナリン誘導性応答の下で分泌が刺激される。これは、ラットにおいて、膜結合性ラットNEP活性の生理的阻害因子であり、そして痛覚の有力な阻害因子である(Rougeot, C, Rosinski− Chupin, I, Njamkepo, E & Rougeon, F. (1994) Eur J Biochem 219, 765−773; Rougeot, C, Vienet, R, Cardona, A, Le Doledec, L, Grognet, JM & Rougeon, F. (1997) Am J Physiol 273, R1309−R1320.; Rougeot, C, Rosinski−Chupin, I & Rougeon, F. (1998) in Biomedical Reviews eds. Chaldakov, GN & Mathison, R. (Bulgarian−American Center, Varna, Bulgaria,) Vol 9, pp. 17−32; Rosinski−Chupin, I, Huaulme, JF, Rougeot, C & Rougeon, F. (2001) Endocrinology 142, 4550−4559; Rougeot, C, Messaoudi, M, Hermitte, V, Rigault, AG, Blisnick, T, Dugave, C, Desor, D & Rougeon, F. (2003) Proc Natl Acad Sci USA 100, 8549−8554)。
【0007】
以前、発明者らは、ヒトオピオルフィン野生型ペプチド(QRFSR−ペプチド)(目下ヒトにおいて最初に性状解析された)が、2つのエンケファリン不活性化エクトペプチダーゼである中性エンドペプチダーゼNEP(EC 3.4.24.11)及びアミノペプチダーゼAP−N(EC 3.4.11.2)の効果的な二機能性阻害因子であることを示した(Wisner et al. Proc Natl Acad Sci USA, Nov. 2006, 103(47): 17979−84)。
【0008】
オピオルフィンペプチド誘導体は以前から記載されており(例えばWisner et al Proc Natl Acad Sci USA, Nov. 2006, 103(47): 17979−84)、基本的なペプチド配列はQRFSRである。
【0009】
よって、この配列及び下記の式により定義される配列は、変更される場合があり:例えばXl−X2−Arg−Phe−Ser−Argであり、ここでXlはH原子又はTyrアミノ酸を表し、XlがHのときX2はGln若しくはGlpを表し、又はX1がTyr若しくはCysのとき、X2はGlnを表す。好ましくはQRFSR、YQRFSR、及び/又はCQRFSRであり、QRFSRが最も好ましい。Glpはピログルタミン、Tyr又はYはチロシン、Gln又はQはグルタミン、Phe又はFはフェニルアラニン、Ser又はSはセリン、及びCys又はCはシステインを表すものと理解されたい。これらのペプチドは、国際特許出願WO2005090386として公開されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、新規オピオルフィン誘導体、及び高度に選択的な生化学アッセイを使用するインビトロでの機能的特性化(functional characterization)に関する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】ビヒクル又は50μMのQRFSRペプチド類似体の存在下での、組換えhNEP又はhAP−Nによる、対応するFRET−ペプチド基質の加水分解のキネティクスを示す。各点は、RFU(相対蛍光単位)で表されるシグナルの強さを表しており、これらは形成される代謝物の量に比例しており、反応時間(分)との関数として表された。
【0012】
【図5】精製組換えヒトhNEP又はAP−Nによる対応するFRET−ペプチド基質の加水分解の、QRFSR−ペプチド類似体による阻害を表す。各バーは回収された無傷の基質のパーセンテージを表し、「阻害因子無しの速度−阻害因子存在下の速度/阻害因子無しの速度」のパーセンテージとして計算され、測定は、50μMのQRFSRペプチド類似体の存在下又は非存在下で行われた。
【0013】
【図6】精製組換えヒトhNEP又はAP−Nによる対応するFRET−ペプチド基質の加水分解の、QRFSR−ペプチド類似体による阻害を表す。各バーは回収された無傷の基質のパーセンテージを表し、「阻害因子無しの速度−阻害因子存在下の速度/阻害因子無しの速度」のパーセンテージとして計算され、測定は、50μMのQRFSRペプチド類似体の存在下又は非存在下で行われた。
【0014】
【図7】
【図8】精製組換えヒトhNEP又はAP−Nによる対応するFRET−ペプチド基質の加水分解の、QRFSR−ペプチド類似体による阻害を表す。各バーは回収された無傷の基質のパーセンテージを表し、「阻害因子無しの速度−阻害因子存在下の速度/阻害因子無しの速度」のパーセンテージとして計算され、測定は、50μMのQRFSRペプチド類似体の存在下又は非存在下で行われた。
【0015】
【図9】精製組換えヒトhNEP又はAP−Nによる対応するFRET−ペプチド基質の加水分解の、CQRFSRペプチドによる濃度依存的阻害を表す。各点は、回収された無傷の基質のパーセンテージを表し、「阻害因子無しの速度−阻害因子存在下の速度/阻害因子無しの速度」のパーセンテージとして計算され、測定は、様々な濃度のCQRFSRペプチド類似体の存在下又は非存在下で行われ、μMでプロットされた(ログスケール)。
【0016】
【図10】精製組換えヒトhNEP又はAP−Nによる対応するFRET−ペプチド基質の加水分解の、QRFS[O−オクタノイル]Rペプチドによる濃度依存的阻害を表す。各点は、回収された無傷の基質のパーセンテージを表し、「阻害因子無しの速度−阻害因子存在下の速度/阻害因子無しの速度」のパーセンテージとして計算され、測定は、様々な濃度のQRFS[O−オクタノイル]Rペプチド類似体の存在下又は非存在下で行われ、μMでプロットされた(ログスケール)。
【0017】
【図11】精製組換えヒトhNEP又はAP−Nによる対応するFRET−ペプチド基質の加水分解の、Y(PE12)QRFSR(即ちY−[NH−(CH2)12−CO]−QRFSR)ペプチドによる濃度依存的阻害を表す。各点は、回収された無傷の基質のパーセンテージを表し、「阻害因子無しの速度−阻害因子存在下の速度/阻害因子無しの速度」のパーセンテージとして計算され、測定は、様々な濃度のY(PE12)QRFSRペプチド類似体の存在下又は非存在下で行われ、Log μMでプロットされた。
【0018】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】ビヒクル又は1〜50μMのCQRFSR又はCQRFS[O−オクタノイル]Rオピオルフィンペプチド類似体の存在下での、組換えhNEP又はhAP−Nによる、対応するFRET−ペプチド基質の加水分解のキネティクスを示す。各点は、RFU(相対蛍光単位)で表されるシグナルの強さを表しており、これらは形成される代謝物の量に比例しており、反応時間(分)との関数として表された。
【0019】
【図18】精製組換えヒトhNEP又はAP−Nによる対応するFRET−ペプチド基質の加水分解の、CQRFSRペプチドによる濃度依存的阻害を表す。各点は、回収された無傷の基質のパーセンテージを表し、「阻害因子無しの速度−阻害因子存在下の速度/阻害因子無しの速度」のパーセンテージとして計算され、測定は、様々な濃度のCQRFSRペプチド類似体の存在下又は非存在下で行われ、μMでプロットされた(ログスケール)。
【0020】
【図19】精製組換えヒトhNEP又はAP−Nによる対応するFRET−ペプチド基質の加水分解の、Y[PE12]QRFSR−COOHペプチド(即ちY−(−FTN−(CH2)12−CO−)−QRFSR)による濃度依存的阻害を表す。各点は、回収された無傷の基質のパーセンテージを表し、「阻害因子無しの速度−阻害因子存在下の速度/阻害因子無しの速度」のパーセンテージとして計算され、測定は、様々な濃度のY[PE12]QRFSR−COOHペプチドの存在下又は非存在下で行われ、μMでプロットされた(ログスケール)。
【0021】
【図20】精製組換えヒトhNEP又はAP−Nによる対応するFRET−ペプチド基質の加水分解の、C[PE6]QRFSR−COOHペプチド(即ちC−(−HN−(CH2)6−CO−)−QRFSR)による濃度依存的阻害を表す。各点は、回収された無傷の基質のパーセンテージを表し、「阻害因子無しの速度−阻害因子存在下の速度/阻害因子無しの速度」のパーセンテージとして計算され、測定は、様々な濃度のC[PE6]QRFSR−COOHペプチドの存在下又は非存在下で行われ、μMでプロットされた(ログスケール)。
【0022】
【図21】精製組換えヒトhNEP又はAP−Nによる対応するFRET−ペプチド基質の加水分解の、C(PE12)QRFSR−COOHペプチド(即ちC−(−HN−(CH2)12−CO−)−QRFSR)による濃度依存的阻害を表す。各点は、回収された無傷の基質のパーセンテージを表し、「阻害因子無しの速度−阻害因子存在下の速度/阻害因子無しの速度」のパーセンテージとして計算され、測定は、様々な濃度のC(PE12)QRFSR−COOHペプチドの存在下又は非存在下で行われ、μMでプロットされた(ログスケール)。
【0023】
【図22】精製組換えヒトhNEP又はAP−Nによる対応するFRET−ペプチド基質の加水分解の、C[PE6]QRF[S−O−オクタノイル]Rペプチド(即ちC−(−HN−(CH2)6−CO−)−QRF−S(O−オクタノイル)−R)による濃度依存的阻害を表す。各点は、回収された無傷の基質のパーセンテージを表し、「阻害因子無しの速度−阻害因子存在下の速度/阻害因子無しの速度」のパーセンテージとして計算され、測定は、様々な濃度のC[PE6]QRF[S−O−オクタノイル]Rペプチドの存在下又は非存在下で行われ、μMでプロットされた(ログスケール)。
【0024】
【図23】精製組換えヒトhNEP又はAP−Nによる対応するFRET−ペプチド基質の加水分解の、C[PE6]QRF[S−O−オクタノイル]Rペプチド(即ちC−(−HN−(CH2)6−CO−)−QRF−S(O−オクタノイル)−R)による濃度依存的阻害を表す。各点は、回収された無傷の基質のパーセンテージを表し、「阻害因子無しの速度−阻害因子存在下の速度/阻害因子無しの速度」のパーセンテージとして計算され、測定は、様々な濃度のC[PE6]QRF[S−O−オクタノイル]Rペプチドの存在下又は非存在下で行われ、nMでプロットされた(ログスケール)。
【発明を実施するための形態】
【0025】
好ましい態様の詳細な説明
本明細書中で、本発明は、オピオルフィンペプチドを構成するアミノ酸の各残基又は組み合わせが1つ以上の官能基で改変された、ペプチドの改変バージョンを提供する。
【0026】
そのような改変オピオルフィンペプチドの非限定的な例として:
NH2−QRFSR−CONH2;
NH2−QRGPR−COOH;
NH2−QHNPR−COOH;
NH2−QR(4ブロモF)SR−COOH(即ちNH2−QR−F[4Br]−SR−COOH(ここで−F[4Br]−が、フェニル基のパラ位が臭素原子で置換されたフェニルアラニンであることにより、−F[4Br]−は以下の式;
【化1】
で表される);
N−(アセチル)QRFSR−COOH;
N−(C8−ポリエチレン)QRFSR−COOH;
N−(ビオチン−C6)QRFSR−COOH;
NH2−dRdSdFdRdQ−COOH(レトロインバーション(retroinversion)D−エナンチオマー);
NH2−YQRFSR−COOH;
NH2−Y−(C6−ポリエチレン)QRFSR−COOH;
NH2−Y−(C12−ポリエチレン)QRFSR−COOH;
NH2−QRF[S−O−C8−ポリエチレン]R−COOH;
NH2−CQRFSR−COOH;
NH2−CQRF[S−O−C8−ポリエチレン]R−COOH;
NH2−CQRF[S−O−C12−ポリエチレン]R−COOH;
NH2−C−(C8−ポリエチレン)QRFSR−COOH;
NH2−C−(C12−ポリエチレン)QRFSR−COOH;
NH2−C−(C8−ポリエチレン)QRF[S−O−C8−ポリエチレン]R−COOH;
NH2−[Cβ2]QRF[S−O−C8−ポリエチレン]R−COOH;
NH2−C−(C8−ポリエチレン)QRFS[β3R]−COOH;
NH2−C[dQ]RF[S−O−C8−ポリエチレン][dR]−COOH;
NH2−C−(C8−ポリエチレン)QRFS[dR];
NH2−[dC]QRF[S−O−C8−ポリエチレン][dR]−COOH;
NH2−[Cβ2]QRF[S−O−C8−ポリエチレン][β3R]−COOH;
[CQRFSR]2(システインジペプチドのジスルフィド結合を介して連結される);
Glp−RFSR−COOH;
NH2−QRYSR−COOH;
NH2−QRF[4F]SR−COOH(ここで−F[4F]−が、フェニル基のパラ位がフッ素原子で置換されたフェニルアラニンであることにより、−F[4F]−は以下の式;
【化2】
で表される);
NH2−QKFSR−COOH;
NH2−QRFSK−COOH;
NH2−C−(C6−ポリエチレン)QRFSR−COOH;
NH2−C−(C6−ポリエチレン)−QRFS[S−O−C8−ポリエチレン]R−COOH;
NH2−C−(C12−ポリエチレン)QRFS[S−O−C8−ポリエチレン]R−COOH;
NH2−C[PE12]QRFS−dR−COOH;
NH2−C−(C12−ポリエチレン)−QRFS[S−O−C8−ポリエチレン]−β3R−COOH;
NH2−C−(C8−ポリエチレン)−QRFS[S−O−C8−ポリエチレン]−β3R−COOH;
が挙げられ、ここで
Cβ2は、天然のシステイン残基を、システインのαカルボニル基に近いCα炭素の隣にメチレン残基を含むβ2−システインで置き換えたものであり(H2N(−CH2−SH)−CH2−CO−);
β3Rは、天然のアルギニン残基を、アルギニンのαアミン基に近いCα炭素の隣にメチレン残基を含むβ3−アルギニンで置き換えたものであり(−NH−CH2−C[−(CH2)3−NH−C(NH)(NH2)]−COOH);
[S−O−C8−ポリエチレン]及び[S−O−オクタノイル]は、ヒドロキシル基がオクタノイル基で置換されたセリンを意味し;
[S−O−C12−ポリエチレン]は、ヒドロキシル基がドデカノイル基で置換されたセリンを意味し;
C6、C8又はC12−ポリエチレンは、炭素が6、8又は12個のエチレン基のスペーサーに対応する(それぞれ、(−HN−(CH2)6−CO−、−HN−(CH2)8−CO−及び(−HN−(CH2)I2−CO−)。
【0027】
上記ペプチドにおいて、NH2−は、ペプチドの末端アミンを表し、COOHは末端カルボン酸を表す(末端基がアミドの時は−CO−NH2)。また、上記リストは、
The list above can also be read as:
QRFSR−NH2;
QRGPR;
QHNPR;
(アセチル)QRFSR;
C−(−HN−(CH2)8−CO−)−QRFSR;
ビオチン−(−HN−(CH2)6−CO−)−QRFSR;
dR−dS−dF−dR−dQ;
YQRFSR;
Y−(−HN−(CH2)6−CO−)−QRFSR;
Y−(−HN−(CH2)12−CO−)−QRFSR;
QRF−S(O−オクタノイル)−R;
CQRFSR;
CQRF−S(O−オクタノイル)−R;
CQRF−S(O−ドデカノイル)−R;
C−(−HN−(CH2)8−CO−)−QRFSR;
C−(−HN−(CH2)12−CO−)−QRFSR;
C−(−HN−(CH2)8−CO−)−QRF−S(O−オクタノイル)−R;
[Cβ2]QRF−S(O−オクタノイル)−R;
C−(−HN−(CH2)8−CO−)−QRFS−[β3R];
C−[dQ]−RF−S(O−オクタノイル)−[dR];
C−(−HN−(CH2)8−CO−)−QRFS−[dR];
[dC]−QRF−S(O−オクタノイル)−[dR];
[Cβ2]−QRF−S(O−オクタノイル)−[β3R];
[CQRFSR]2;
Glp−RFSR;
QRYSR;
QR−F[4F]−SRであり、−F[4F]−が、フェニル基のパラ位がフッ素原子で置換されたフェニルアラニンであるもの;
QR−F[4Br]−SR, wherein −F[4Br]−が、フェニル基のパラ位が臭素原子で置換されたフェニルアラニンであるもの;
QKFSR;
QRFSK;
C−(−HN−(CH2)6−CO−)−QRFSR;
C−(−HN−(CH2)6−CO−)−QRF−S(O−オクタノイル)−R;
C(−HN−(CH2)12−CO−)QRF−S(O−オクタノイル)−R;
C−(−HN−(CH2)12−CO−)−QRFS−dR;
C−(−HN−(CH2)12−CO−)−QRF−S(O−オクタノイル)−β3R;
C−(−HN−(CH2)8−CO−)−QRF−S(O−オクタノイル)β3R,
と読まれることもあり、ここで:
Cβ2はH2N(−CH2−SH)−CH2−CO−であり;
B3Rは−NH−CH2−C[−(CH2)3−NH−C(NH)(NH2)]−COOHであり;
−S(−O−オクタノイル)は、ヒドロキシル基がオクタノイル基で置換されたセリンを意味する。
【0028】
−S(−O−ドデカノイル)は、ヒドロキシル基がドデカノイル基で置換されたセリンを意味する。以下の定義は、本願全体で使用される。
【0029】
「ペプチド」は、アミノ酸残基の線形配列(linear array)が互いにペプチド結合で連結して構成される分子である。そのような線形配列は、任意で環状、即ち線形ペプチドの両端あるいはペプチド中のアミノ酸の側鎖が、化学結合で連結されたものであり得る。更に、そのようなペプチドは、二次、三次、又は四次構造や、他のペプチド又は他の非ペプチド分子との分子間結合を有し得る。そのような分子間結合は、限定されないが、共有結合(ジスルフィド結合等)、又はキレーション、静電気相互作用、疎水性相互作用、水素結合、イオン−双極子(ion−dipole)相互作用、双極子−双極子相互作用、若しくはそれらの任意の組み合わせを介するものであり得る。
【0030】
下記ペプチドの任意のアミノ酸がL型又はD型であり得る。特に、全てのペプチドがL型又はD型のいずれかであり得る。前記炭化水素鎖は、任意で天然のアミノ酸よりも多くのメチレン基を含むため、該アミノ酸はβアミノ酸、より正確にはβ2又はβ3アミノ酸である場合がある。例えば、Rは、以下:IR(即ちL−Arg)、dR(即ちD−Arg)、β3R又はβ2Rのいずれか1つを表し得る。また、下記ペプチドの任意のアミノ酸は、アザ−アミノ酸又はβ−アザ−アミノ酸の場合もある。
【0031】
「F(X)」は、フェニル基が1つ以上のハロゲン原子、好ましくはフッ素で置換されたフェニルアラニンであり、好ましいF(X)は、以下の式:
【化3】
で表される。
【0032】
「S(OAlk)」は、1〜20個の炭素原子を有するヒドロキシル基が直鎖又は分岐鎖アルキル基(即ちAlk)、好ましくはオクタノイル又はドデカノイル基で置換されたセリンを意味する。本願において、S(O−C8−ポリエチレン)又はS(O−C8)は、ヒドロキシル基がオクタノイル基で置換されたセリンを意味する。
【0033】
「C−[リンカー]−」はCys−[NH−(CH2)n−CO]−を意味し、ここでnは1〜20、好ましくは4〜15の整数であり、6,8又は12が特に好ましい。本願において、「C−(C6−ポリエチレン)」又は「C[PEO]」はCys−[NH−(CH2)6−CO]−を意味し;「C−(C8−ポリエチレン)」又は「C[PE8]」はCys−[NH−(CH2)8−CO]−を意味し;そして「C−(C12−ポリエチレン)」又はC[PE12]」はCys−[NH−(CH2)12−CO]−を意味する。
【0034】
「Y−[リンカー]−」はTyr−[NH−(CH2)n−CO]−を意味し、ここでn’は1〜20、好ましくは4〜15の整数であり、6,8又は12が特に好ましい。本願において、本願において、「Y−(C6−ポリエチレン)」又は「Y[PEo]」はTyr−[NH−(CH2)6−CO]−を意味し;「Y−(C8−ポリエチレン)」又は「Y[PE8]」はTyr−[NH−(CH2)8−CO]−を意味し;そして「Y−(C12−ポリエチレン)」又は「Y[PE12]」はTyr−[NH−(CH2)12−CO]−を意味する。
【0035】
本発明のペプチド誘導体の特定のペプチダーゼに対する「阻害能力」は、Ki値又はIC50値のいずれかの測定等により、当業者により容易に評価され得る。特に、IC50値が測定される場合、所定の実験条件下(同一の緩衝剤、同一のペプチダーゼ及び基質濃度)、所定のペプチダーゼに対する、2つの改変オピオルフィンペプチドの相対的な阻害能力は、各改変オピオルフィンペプチドのIC50値を測定し、そして該改変オピオルフィンペプチドのIC50値と、同一の実験条件下でのオピオルフィンのIC50値とを比較することにより比較され得る。
【0036】
本発明は、ペプチド誘導体であり、式(I):
ζ−AA1−AA2−AA3−AA4−AA5−OH (I)
[式中、
ζは、水素原子、チロシン、Y−[リンカー]−又はZnキレート基、例えばシステイン、C−[リンカー]−、N−アセチル−システイン、N−メルカプトアセチル(HS−CH2−CO−)、ヒドロキサム酸(HO−NH−CO−)、又は任意で置換されるヒドロキシキノリンであり、
AA1は、Q又はGlpであり、
AA2は、K、R又はH、好ましくはRであり、
AA3は、Y、G、N、F又はF(X)、好ましくはF又はF(X)であり、
AA4は、P、S又はS(OAlk)、好ましくはS又はS(OAlk)であり、
AA5は、K又はR、好ましくはRであり、
C−[リンカー]−は、Cys−[NH−(CH2)n−CO]−を意味し、nは1〜20の整数、好ましくは6,8又は12であり、
Y−[リンカー]−は、Tyr−[NH−(CH2)n’−CO]−を意味し、n’は1〜20の整数、好ましくは6,8又は12であり、
F(X)は、フェニル基が1つ以上のハロゲン原子で置換されたフェニルアラニンを意味し、
S(OAlk)は、ヒドロキシル基がリンカー又は1〜20個の炭素原子を有する分岐アルキル基で置換されたセリンを意味し、
AA1、AA2、AA3、AA4及びAA5は、独立してL型又はD型のいずれかであり、そして任意のAA1、AA2、AA3、AA4及びAA5のいずれか1つがβアミノ酸、アザ−アミノ酸又はβ−アザ−アミノ酸であってもよい]
で表され、該ペプチド誘導体がシステインを含む場合、該ペプチド誘導体は任意でダイマーであり、但し該ペプチドは、QRFSR、QHNPR、QRGPR、YQRFSR又はGlpRFSRではない、前記ペプチド誘導体に関する。
【0037】
一般に、本発明のペプチド誘導体において、AA1、AA2、AA3、AA4、及びAA5は、独立してL型又はD型のいずれかであり、そして任意のAA1、AA2、AA3、AA4及びAA5のいずれか1つは、βアミノ酸、アザ−アミノ酸又はβ−アザ−アミノ酸である。
【0038】
一つの態様において、AA1、AA2、AA3、AA4及びAA5の1つ以上は、βアミノ酸である。他の態様において、AA1、AA2、AA3、AA4及びAA5の全てが、βアミノ酸である。
【0039】
一つの態様において、AA1、AA2、AA3、AA4及びAA5の1つ以上は、アザ−アミノ酸である。他の態様において、AA1、AA2、AA3、AA4及びAA5の全てが、アザ−アミノ酸である。
【0040】
一つの態様において、AA1、AA2、AA3、AA4及びAA5の1つ以上は、β−アザ−アミノ酸である。他の態様において、AA1、AA2、AA3、AA4及びAA5の全てが、β−アザ−アミノ酸である。
【0041】
一つの態様において、前記ペプチド誘導体はシステインを含み、そしてダイマーであり、ここで2つのシステインの2つの硫黄原子がジスルフィド結合で結合している。例えば、[CQRFSR]2は、ペプチド誘導体CQRFSRのダイマーで、システインアミノ酸がジスルフィド結合で結合している。
【0042】
好ましい態様において、がヒドロキシキノリンであるとき、ペプチド誘導体は、以下の式で表される:
【化4】
【0043】
式(I)のペプチド誘導体は、中性エンドペプチダーゼNEP及び/又はアミノペプチダーゼAP−Nに対する阻害能力に優れる改変オピオルフィンペプチドである。
【0044】
式(I)の好ましいペプチド誘導体は:
CQRFSR、
QRF(X)SR、
QRGPR、
QHNPR、
QRFPR、
QRFS(OAlk)R、好ましくはQRFS(O−オクタノイル)R、
C−[リンカー]−QRFSR、好ましくはC−[NH−(CH2)6−CO]−QRFSR、C−[NH−(CH2)8−CO]−QRFSR、又はC−[NH−(CH2)12−CO]−QRFSR、
QRYSR、
QKFSR、
QRFSK、
C−[リンカー]−QRFSR、好ましくはC−[NH−(CH2)6−CO]−QRFSR、C−[NH−(CH2)8−CO]−QRFSR、又はC−[NH−(CH2)12−CO]−QRFSR、
[CQRFSR]2、
C−[NH−(CH2)6−CO]−QRFS(OAlk)R、好ましくはC−[NH−(CH2)6−CO]−QRFS(O−オクタノイル)R及びY−[NH−(CH2)12−CO]−QRFSR
である。
【0045】
一つの態様において、本発明は、ペプチド誘導体であり、式(II):
ζa−Q−AAa2−AAa3−P−R−OH (II)
[式中、
ζaは、水素原子、又はZnキレート基、例えばシステイン、C−[リンカー]−、N−アセチル−システイン、N−メルカプトアセチル(HS−CH2−CO−)、ヒドロキサム酸(HO−NH−CO−)、又は任意で置換されるヒドロキシキノリンであり、
AAa2はR又はH、好ましくはRであり、
AAa3はG、N、F又はF(X)、好ましくはFであり、
好ましくは、Q、AA2、AA3、P、及びRは、独立してL型又はD型のいずれかであり、そして任意のQ、AA2、AA3、P、及びRのいずれか1つがβアミノ酸、アザ−アミノ酸又はβ−アザ−アミノ酸であってもよい]
で表され、該ペプチド誘導体がシステインを含む場合、該ペプチド誘導体は任意でダイマーであり、但し該ペプチドは、QHNPR又はQRGPRではない、前記ペプチド誘導体に関する。
【0046】
前記式(II)のペプチド誘導体は、改変オピオルフィンペプチドであり、そしてヒトAP−N阻害因子であるのが有利である。特に、該ペプチド誘導体は、AP−Nに対する阻害能力が、NEPエンドペプチダーゼ及び/又はカルボキシジペプチダーゼ活性に対する阻害能力よりも強い(好ましくは10倍、8倍又は10倍)。
【0047】
好ましい式(II)のペプチド誘導体は、
QRGPR、
QHNPR、及び
QRFPR
である。
【0048】
一つの態様において、本発明は、ペプチド誘導体であり、式(III)
ζn−AA1−AAn2−AAn3−AAn4−AAn5−OH (III)
[式中、
ζnは、水素原子、チロシン又はY−[リンカー]−であり、
AA1は、Q又はGlp、好ましくはQであり、
AAn2は、K又はR、好ましくはRであり、
AAn3は、Y、F又はF(X)、好ましくはF又はF(X)であり、
AAa4は、S又はS(OAlk)であり、
AAn5はK又はR、好ましくはRであり、
該AA1、AA2、AA3、AA4、及びAA5は、独立してL型又はD型のいずれかであり、そして任意のAA1、AA2、AA3、AA4、及びAA5のいずれか1つがβアミノ酸、アザ−アミノ酸又はβ−アザ−アミノ酸であってもよい]
で表され、但し該ペプチドがQRFSR、QHNPR、YQRFSR又はGlpRFSRではない、前記ペプチド誘導体に関する。
【0049】
前記式(III)のペプチド誘導体は、改変オピオルフィンペプチドであり、そしてヒトNEP阻害因子であるのが有利である。特に、該ペプチド誘導体は、NEPエンドペプチダーゼ及び/又はカルボキシジペプチダーゼ活性に対する阻害能力が、AP−Nに対する阻害能力よりも強い(好ましくは10倍、8倍又は10倍)。
【0050】
一つの態様において、本発明は、ペプチド誘導体であり、式(IIIa):
AA1−R−AAn3−S(OAlk)−AAn5−OH (IIIa)
[式中、
AA1はQ又はGlpであり、
AAn3はF又はF(X)であり、
AAn5はK又はR、好ましくはRである]
で表され、但し該ペプチドがQRFSR、QHNPR、YQRFSR又はGlpRFSRではない、前記ペプチド誘導体に関する。
【0051】
式(III)又は(IIIa)で表される好ましいペプチド誘導体は:
QRYSR、
QRF(X)SR、
QKFSR、
QRFSK、
QRFS(OAlk)R、好ましくはQRFS(O−オクタノイル)R、及び
Y−[NH−(CH2)12−CO]−QRFSR
である。
【0052】
一つの態様において、本発明は、ペプチド誘導体であり、式(IV):
ζm−Q−R−AAm3−AAm4−R−OH (IV)
[式中、
ζmは、水素原子、又はZnキレート基、例えばシステイン、C−[リンカー]−、N−アセチル−システイン、N−メルカプトアセチル(HS−CH2−CO−)、ヒドロキサム酸(HO−NH−CO−)、又は任意で置換されるヒドロキシキノリンであり、
AAn3は、F又はF(X)、好ましくはF(X)であり、
AAm4は、S又はS(OAlk)、好ましくはS又はS(OAlk)であり、
該Q、R、AA3、AA4、及びRは、独立してL型又はD型のいずれかであり、そして任意のQ、R、AA3、AA4、及びRのいずれか1つがβアミノ酸、アザ−アミノ酸又はβ−アザ−アミノ酸であってもよい]
で表され、該ペプチド誘導体がシステインを含む場合、該ペプチド誘導体は任意でダイマーであり、但し該ペプチドは、QRFSR又はYQRFSRではない、前記ペプチド誘導体に関する。
【0053】
前記式(IV)のペプチド誘導体は、ヒトNEP及び/又はヒトAP−Nに対する二機能性阻害因子であるのが有利な改変オピオルフィンペプチドであり、ヒトNEP及びヒトAP−Nの両方に対して顕著な阻害能力を示す。
【0054】
式(IV)の好ましいペプチド誘導体は:
CQRFSR、
[CQRFSR]2、
C−(−HN−(CH2)12−CO−)−QRFSR;
C−(−HN−(CH2)6−CO−)−QRFSR;
C−[リンカー]−QRF−S(O−オクタノイル)−R、好ましくはC−(−HN−(CH2)6−CO−)−QRF−S(O−オクタノイル)−R、C−(−HN−(CH2)8−CO−)−QRF−S(O−オクタノイル)−R又はC−(−HN−(CH2)12−CO−)−QRF−S(O−オクタノイル)−R;
QRF(X)SR並びに
QRFS(OAlk)R、好ましくはQRFS(O−オクタノイル)R
である。
【0055】
好ましくは、本発明のペプチド誘導体は、改変オピオルフィン誘導体であり、中性エンドペプチダーゼNEP及び/又はアミノペプチダーゼAP−Nに対する阻害能力を有する。最も好ましくは、本発明の改変オピオルフィンペプチドは、エンドペプチダーゼNEP及びアミノペプチダーゼAP−Nに対する阻害能力を有する。
【0056】
本発明のペプチド誘導体は、組み込まれるべき異なるアミノ酸残基の連続的な結合により、液相又は固相中での既知のペプチド合成手段により調製され得て(液相中ではN末端からC末端へ、又は固相中ではC末端からN末端へ合成される)、該N末端及び反応性側鎖は、既知の基により予めブロックされている。
【0057】
固相合成において、Merrifieldにより記載された技術が特に使用され得る。あるいは、1974年にHoubenweylにより記載された技術も使用され得る。
【0058】
本発明のペプチド誘導体は、遺伝子組換え手段を使用して得ることもあるが、但し、得られたペプチド誘導体は、天然のアミノ酸のみで構成されることとなる。
【0059】
前記オピオルフィンペプチドに対する改変として、ケミカル(例えば追加の化学部分、メチル、ポリエチレンC2、C4、C6、C8、C10、C12及びそれらのポリエチレングリコール、並びに/又はグリコシル化形態等を付加する)、及びペプチド模倣体(peptidomimetics)(例えば構造及び/又は機能においてペプチドを模倣する態分子量化合物(例えばAbell. Advances in Amino Acid Mimetics and Peptidomimetics, London: JAI Press (1997);Gante, Peptidmimetica − massgeschneiderte Enzyminhibitoren Angew. Chem. 106: 1780−1802 (1994);及びOlson et al.. J. Med. Chem. 36: 3039−3049 (1993)等を参照されたい))が挙げられる。
【0060】
本発明のペプチド誘導体に導入され得る他の改変として、Lアミノ酸に代えての非天然アミノ酸、Dアミノ酸、β2アミノ酸、β3アミノ酸、アザアミノ酸、又はβ−アザアミノ酸の使用、立体構造的拘束(conformational restraint)、等価性変形(isosteric replacement)、環化、又は他の改変が挙げられる。他の例として、1つ以上のアミド結合が非アミノ結合に置き換えられること、並びに/又は1つ以上のアミノ酸側鎖が異なる化学部分に置き換えられること、又は1つ以上のN末端、C末端若しくは1つ以上の側鎖が保護基により保護されること、並びに/又は二重結合及び/若しくは環化及び/若しくは立体特異性(stereospecificity)がアミノ酸鎖中に導入されることにより剛性(rigidity)及び/若しくは結合親和性を増大させることを含む。
【0061】
本発明のペプチド誘導体の標的となるメタロエクトペプチダーゼの結合ドメインの結晶構造に基づき、コンピューターを利用したドラッグデザイン開発により、模倣体を得ることも出来る(Oefner et al. J. Mol. Biol. (2000)296(2):341−9; Gomeni et al. Eur. J. Pharm. Sci. (2001) 13(3):261−70; Kan, Curr Top Med Chem (2002), 2(3):247−69)。
【0062】
更なる他の改変として、以下のものが挙げられる。
【0063】
脂肪族アルコールとのエステル化による(COOH)、又はアミド化によりによる、及び/又はアセチル化による(NH2)、又はNH2末端にカルボキシアルキル若しくは芳香族疎水鎖を付加することによる、NH2及びCOOH親水基の保護。
【0064】
CO−NHアミド結合のレトロインバーション(retroinversion)異性体、又はアミド基のメチル化(又はケトメチレン、メチレンオキシ、ヒドロキシエチレン)。
【0065】
2つのアミノ酸間への−[HN−(CH2)n−CO−]−部分の挿入。Nは1〜20の整数で、好ましくは6、8又は12である。
【0066】
上記で定義した天然アミノ酸を含むペプチド誘導体を含むペプチドをコードするDNA又はRNA等の核酸あるいはポリヌクレオチドも本発明の一部であるが、遺伝情報の退化(degeneration)も考慮される。好ましくは、該核酸は、天然アミノ酸からなるペプチド誘導体をコードする配列を含む。
【0067】
本発明の核酸として、上記配列のいずれか又はそれらの相補配列と、高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件、即ち0.2xSSC中68℃、50%ホルムアミド、4xSSC中42℃、又はこれらの2つの条件のいずれかにおいて観察されるのと同レベルのハイブリダイゼーションを可能とするハイブリダイゼーション及び/又は洗浄条件下でハイブリダイズする配列が挙げられる。
【0068】
更に、本発明は、本発明の核酸配列を含むクローニング及び/又は発現ベクター、並びに前記核酸又は該ベクターを含む宿主細胞、即ちこれらのベクターの1つ以上が導入された宿主細胞に関する。本発明の発現ベクターは、本発明のペプチド誘導体を含むペプチド、又はタンパク質をコードする核酸配列を含み、該核酸配列は、その発現を可能とするエレメントと操作可能な形で連結している。該ベクターは、プロモーター配列、転写開始及び終結シグナル、及び転写制御に適切な領域を含むのが有利である。宿主細胞への導入は、トランジエントであってもステーブルであってもよい。また、前記ベクターは、転写したタンパク質を分泌するための特異的なシグナルを含み得る。
【0069】
宿主細胞は、原核細胞でも真核細胞でもよく、限定されないが、細菌、酵母、植物細胞、昆虫細胞、哺乳類細胞であってもよく、市販の細胞株であってもよい。宿主細胞の好ましい例として、COS−I、HEK細胞、293細胞、又はCHO細胞が挙げられる。
【0070】
更に、本発明は、本明細書中に記載の改変オピオルフィンに指向する(即ち特異的に認識する)、モノクローナル若しくはポリクローナル抗体、又はそれらのフラグメントを提供する。そのような抗体は、例えば、本発明のペプチド誘導体の薬物動態的特性の研究等に有用であり得る。
【0071】
様々な文法形式の「抗体」という用語は、本明細書中で、イムノグロブリン分子、及びイムノグロブリン分子の免疫的に活性な部分、即ち、抗体結合部位あるいはパラトープを含む分子を指す。抗体分子の例として、無傷のイムノグロブリン分子、実質的に無傷のイムノグロブリン分子、並びにイムノグロブリン分子の部分、例えば当該技術分野でFab、Fab’、F(ab’)2及びF(v)として知られる部分等が挙げられる。
【0072】
ポリクローナル抗体を樹立する手順も、周知である。典型的には、そのような抗体は、免疫前血清(pre−immune serum)を得るために最初に出血させられたニュージーランド白ウサギに、本発明のコンジュゲートペプチド誘導体等のペプチド誘導体を皮下投与して樹立し得る。該抗原は、部位あたり合計50μlの体積で、10箇所又は5箇所以上注入され得る。前記ウサギは、最初の注入から5週間後に出血させられ、そして、6週間ごとに3回、免疫応答の程度に依存して、最初の注入に対して最大で5分の1の濃度の同一の抗原を皮下注射することで、定期的にブーストさせられる。各ブーストの10日後、血清の試料を回収する。抗体を捕捉するための対応する抗原を使用したアフィニティークロマトグラフィーにより、血清からポリクローナル抗体を回収する。ポリクローナル抗体を樹立するためのこの及び他の手法は、E. Harlow, et. al., editors, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New York (1988)に記載されている。
【0073】
様々な文法形式の「モノクローナル抗体」という用語は、特定のエピトープと免疫反応することが可能な1種類の抗体結合部位のみを有する抗体分子の集団を指す。故に、典型的には、モノクローナル抗体は、免疫応答する任意のエピトープとの単一の結合親和性を示す。故に、モノクローナル抗体は、複数の抗体結合部位を有し、それぞれが異なるエピトープに対して免疫特異的である、二機能性モノクローナル抗体等の抗体分子であってもよい。
【0074】
モノクローナル抗体を調製する実験室的方法は、当該技術分野で周知である(例えばHarlow et al., (上掲)を参照されたい)。モノクローナル抗体(Mbs)は、コンジュゲートペプチド誘導体等の本発明のペプチド誘導体に対して免疫化した哺乳類、例えばマウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ヒト等により調製され得る。該免疫化哺乳類中の抗体産生細胞を単離し、そしてミエローマ又はヘテロミエローマ細胞と融合して、ハイブリッド細胞(ハイブリドーマ)を生産する。モノクローナル抗体を産生する該ハイブリドーマ細胞を、所望のモノクローナル抗体の供給源として使用する。
【0075】
Mabはハイブリドーマの培養により生産できるが、本発明はこれに限定されない。ハイブリドーマからクローニングした核酸を発現することにより生産されたMabの使用も意図される。即ち、ハイブリドーマにより分泌される分子を発現する核酸を他の細胞株に導入して、形質転換体を作製するのである。該形質転換体は、元のハイブリドーマとは遺伝型か異なるが、該ハイブリドーマにより分泌される抗体分子に対応する、本発明の抗体分子(全抗体分子の免疫活性フラグメントを含む)の生産は同様に可能である。加えて、本明細書は、キメラ抗体、ヒト化抗体、単一鎖抗体、及びそれらに類する免疫応答性抗体フラグメントを形成する方法を提供する。これらは全て、抗体のクラス及び特異性が開示され、そして請求されている限りは、当業者が構築し得る正確な変異体の構造にかかわらず、本発明の範囲内である。
【0076】
前記改変オピオルフィンペプチドは、医薬として許容される担体と組み合わせて、医薬組成物として製剤化され得る。例えば、医薬組成物は局所、経口、舌下、非経口、鼻内、静脈内、筋肉内、皮下、経皮又は眼球内投与等に適したものであり得る。
【0077】
上記改変オピオルフィンペプチドは、疾患又は障害に処置に有用であり、ここでは膜メタロエクトペプチダーゼ、更に具体的には、膜亜鉛メタロペプチダーゼ、NEP及びAP−N等の活性の調整が想定される。
【0078】
天然のNEPの基質は、主にペプチドホルモン:中枢及び末梢の疼痛知覚、炎症現象、無機イオン交換及び/又は動脈緊張の調節に中心的な役割を果たす、エンケファリン、物質P、ブラジキニン、アンジオテンシンII及び心房性ナトリウム利尿ペプチドである(Roques et al., Pharmacol Rev. 1993;45(1):87−146)。
【0079】
より具体的には、中性エンドペプチダーゼ、NEP24−11は、哺乳類の神経及び末梢組織の両方に分布し、末梢においては、特に肝臓及び胎盤に豊富である。これらの組織において、細胞表面メタロペプチダーゼNEPは、神経ペプチド、全身性免疫制御ペプチド及びペプチドホルモンの分泌後プロセシング及び代謝に関与する。循環し、又は分泌される制御ペプチドの活性レベルを調節することにより、NEPは、それらの生理的な受容体誘導性の活性を調整する。故に、膜結合NEPは:強力な血管作動性ペプチド、例えば物質P、ブラジキニン(BK)、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)及びアンジオテンシンII(AII);強力な炎症/免疫ペプチド、例えば物質P及びBK及びfMet−Leu−Phe(fMLP);強力なオピオイド神経ペプチド、例えばMet及びLeu−エンケファリン(Enk)並びに強力な無機イオン交換及び体液ホメオスタシス制御ペプチド、例えばANP、C型ナトリウム利尿ペプチド(CNP)並びにB型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)等の活性の制御に関与する。
【0080】
総合的な観点から、NEPの生物的活性は、疼痛の処理の調節の他に、動脈緊張制御、炎症現象、情動状態及び水−電解質ホメオスタシスに関与する、ペプチド作動性シグナルの活性レベルの調節である。臨床的な観点から、これは、NEPが様々な疾患状態の重要な薬物標的であることを実証する。例えば、NEP及びAPNを阻害することにより、中枢又は末梢の内性的オピオイドのレベルの増大及び活性の遅延、鎮痛作用、又は抗鬱若しくは神経刺激作用等が得られる。NEP及び/又はAP−N阻害因子の使用により内在性制御ペプチドの濃度を変化させることの主要な利点は、薬理作用が、本来のリガンドにより活性化される受容体部位のみで誘導されること、そして特定の環境、行動及び生理病理学的ストレスのある状況で起る、緊張又は刺激作動性のそれらの放出に大いに依存することである(Roques et al, 1993)。
【0081】
哺乳類膜メタロペプチダーゼのNEP以外の例として、NEP2、ECE(エンドセリン変換酵素)、特にECE1及びECE2、赤血球表面抗原KELL及びX連鎖低リン血症性くる病に関与するPEX遺伝子産物及びAP−N(アミノペプチダーゼN)等が挙げられる。
【0082】
NEP2は、神経系及び生殖組織に特異的に分布している。
【0083】
AP−Nは、広範な種類のヒトの器官、組織及び細胞(内皮、上皮、線維芽細胞、白血球)に存在する偏在的酵素であり、特に腎臓及び中枢神経系において豊富である。同定された基質として、アンジオテンシンIII(AngIII);エンケファリン及びエンドルフィン等の神経ペプチド;並びにカリダン(kallidan)及びソマトスタチン等のホルモン等が挙げられる。AP−Nは多機能性の酵素で、癌形成、免疫系、疼痛、動脈圧等に関与する。また、AP−Nは、抗原のトリミング及び抗原提示のプロセスにも関与する。これらの機能は、生物活性ペプチドの応答を調整し(疼痛の制御、バソプレシン遊離)、そして免疫機能及び主要な生物イベント(細胞増殖、分泌、浸潤、血管形成)に影響し、故に多くの種類の疾患における処置の選択枝を提供する。
【0084】
ECEの阻害は、高血圧の治療並びに動脈硬化の予防及び処置において顕著な用途を有する。
【0085】
NEPと共にするAP−Nの阻害は、疼痛、並びに欝、不安、鎮静及び社会的−性的感情的障害の治療において顕著な用途を有する。
【0086】
関連する膜メタロペプチダーゼの阻害は、腫瘍即ち卵巣、直腸結腸、脳、肺、膵臓、消化管及び色素細胞の癌の処置、並びに転移、アテローム性動脈硬化、及び/又は高血圧の発生の低下において治療効果を有する。
【0087】
関連する膜メタロペプチダーゼの阻害は、疼痛の緩和に効果がある。そのような急性の疼痛に対する抗侵害受容作用は鎮痛に効果があるが、関節炎又は炎症性大腸疾患、手術後創傷、及び癌及び/又は癌治療に関連する又は関連しない神経性の激痛等の、慢性の炎症性疼痛にも効果がある。
【0088】
更に、細菌又はウイルスメタロペプチダーゼの阻害は、抗感染効果を有することが期待される。
【0089】
メタロペプチダーゼは、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)、シュードモナス・アエルギノサ(Pseudomonas aeruginosa)、ポルフィロモナス・ギンギワリス(Porphyromonas gingivalis)、及びレギオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)等の病原体の宿主組織への侵入、並びに免疫的及び炎症プロセスにおいて重要な役割を果たす。
【0090】
更に、細菌メタロペプチダーゼ、特に亜鉛メタロペプチダーゼは、B.アンスラキス(B. anthracis)の毒素等のタンパク質溶解毒素、並びにC.テタヌム(C. tetanum)及びボツリヌム(botulinum)の神経毒素により引き起こされる疾患において重要な役割を果たす。
【0091】
他のメタロペプチダーゼも、例えばHIVにより引き起こされる感染等、様々な感染において重要な役割を果たす(FR 2 707 169)。
【0092】
細菌又はウイルスによる疾患の処置におけるプロテイナーゼ阻害因子の重要性は、J. Potempa及びJ. Travisにより見出されている。
【0093】
メタロペプチダーゼの様々な機能は、Turner et al, 2001; Kenny et al, 1977 ; Kenny et al, 1987 ; Beaumont et al, 1996に開示されている。
【0094】
本発明の1つの目的は、末梢、脊髄及び/又は脊柱上のNEP及びAP−Nを阻害することにより、中枢又は末梢の内在性オピオイド(エンケファリンであり得る)のレベルを増大し、及び活性を持続させるように働く改変オピオルフィンペプチドを用いる、鎮痛又は抗鬱治療を提供することである。
【0095】
疼痛、特に急性及び慢性の疼痛、内臓の(visceral)炎症性及び神経性の疼痛の治療が意図される。
【0096】
また、任意の水−電解質のインバランスの治療も、本発明の目的である。標的となる障害として、水−電解質のインバランスにより引き起こされる、骨、歯、腎臓、副甲状腺、膵臓、精巣、胃粘膜、前立腺及び唾液腺の障害等が挙げられる。
【0097】
特に、前記障害は、副甲状腺亢進症若しくは低下症、骨粗鬆症、膵炎、顎下腺結石症、腎石症及び骨形成異常症(osteodystrophy)から選択され得る。
【0098】
対人障害及び行動障害の治療も、更に想定される。WO02/051434に、様々な精神障害が記載されている。
【0099】
特に、本発明は、忌避障害(avoidance disorder)、認知低下障害(decreased awareness disorder)、自閉性障害、注意欠陥多動性障害、覚醒障害、ホスピタリズム(hospitalism)、対人機能(interpersonal functioning)及び外界との交流(relationship to the external world)の障害、分裂病質人格障害、統合失調症、抑鬱障害、周囲への関心の低下(decreased interest in environment)、並びに不時の射精(untimely ejaculation)、多淫症及び勃起不全等のセクシャリティと関連する社会活動の障害からなる群から選択される任意の障害に対して利用される。
【0100】
また、本発明は、本発明のペプチド又はペプチド誘導体の、精神刺激剤(psychostimulating agent)としての使用にも関する。故に、ナルコレプシー、睡眠過剰、脅迫神経障害(obsessional compulsive trouble)、情動障害、例えば抑鬱障害若しくは主要抑鬱障害(major depressive disorder)、主要抑鬱障害単一エピソード(major depressive disorder single episode)若しくは再発性主要抑鬱障害(major depressive disorder recurrent)、I型若しくはII型双極性障害、気分変調性障害、並びに気分循環性障害の予防又は処置に利用される。
【0101】
また、膜メタロペプチダーゼの変調が想定される疾患として、高血圧、アテローム性動脈硬化、腫瘍、炎症性関節炎及び腸疾患等が挙げられる。
【0102】
感染の治療も包含される。特に、細菌又はウイルス疾患の処置におけるプロテイナーゼの重要性は、J. Potempa及びTravisが言及している。
【0103】
上記改変オピオルフィンペプチダーゼは、免疫−炎症応答の調節にも有用である。
【0104】
上記で定義した改変オピオルフィンペプチダーゼは、ナトリウム利尿剤又は利尿剤としても有用である。
【0105】
故に、本発明は、上記で定義したペプチド誘導体の、疼痛、抑鬱障害、セクシャリティと関連する社会活動の障害、及び性行動の障害からなる群から選択される疾患又は障害の処置における使用を提供する点で有利である。
【0106】
本発明の他の目的は、上記ペプチド誘導体又は核酸の、薬物乱用、特にモルヒネの薬物乱用の治療における代替物(substitute)としての使用である。
【0107】
実際に、研究によると、薬物乱用及び報酬の発達(development of reward)及び薬物依存性に対する脆弱性は、少なくとも部分的に、内在性のオピオイド系の、既存の又は誘導された改変及び/又は欠損に基づく。この関連で、内在性のオピオルフィンの効果を強化するための改変オピオルフィンペプチド又は核酸の使用は、慢性的なモルヒネ又はヘロインの投与の中断によって引き起こされる様々な副作用(離脱の身体的兆候)を減少させ得る。
【0108】
本発明のペプチド誘導体を用いて処置され得る好ましい疾患若しくは症状として、疼痛、抑鬱障害、セクシャリティと関連する社会活動の障害、及び性行動の障害等が挙げられる。
【0109】
更に、本発明は、内在性のBPLPタンパク質若しくは成熟生産物、例えば天然オピオルフィンQRFSRと、膜メタロペプチダーゼとの間の相互作用を調整する薬剤の使用による、疾患の予防又は処置用の治療組成物の調製に関し、ここで、該膜メタロペプチダーゼの活性の調整が想定される。
【0110】
本発明は、BPLPタンパク質又はQRFSRペプチドにおけるNEP及び/又はAPN結合部位に対する結合能力で、化合物をスクリーニングするインビトロでの方法を提供する。この方法の詳細は、例えば2006年9月15日に出願された米国特許出願第10/593,071号等に記載され、またWO 2005/090386として、その他にも国際特許出願PCT/EP2009/050567にも記載され、それらの内容は、本明細書中に参照により援用される。
【0111】
本発明の他の目的は、BPLPタンパク質又はその成熟生産物(又はBPLPタンパク質又はその成熟生産物の結合特異性又は生理活性を保持するペプチド)のNEP及び/又はAP−N結合部位に特異的に結合する改変オピオルフィンペプチドの相対的親和性を判定するプロセスであり、例えば2006年9月15日に出願された米国出願第10/593,071号等に記載されており、それらの内容は、本明細書中に参照により援用される。
【実施例】
【0112】
実施例1:生化学アッセイの方法
【0113】
特定の基質の加水分解のリアルタイム蛍光モニタリングを使用する各アッセイのために、形式的な動態解析を行った。
【0114】
蛍光測定用の96ウェルにおいて、ヒトNEP及びヒトAP−N酵素活性の解析を可能とする全てのパラメーターを、初期速度の測定の条件下で規定した。
【0115】
1−ヒトエクトペプチダーゼ、hNEP、及びhAP−Nの供給源
【0116】
ペプチダーゼの純粋な供給源として、R&D Systemsから購入した、組換えヒトNEP及び組換えヒトAP−N(それぞれN末端の細胞質セグメント及び膜貫通セグメントを欠く)を使用した。
【0117】
2−基質及び合成阻害因子
【0118】
インビトロで、以下の合成選択基質の分解を測定することにより、アミノ、カルボキシジ、及びエンドペプチダーゼの活性を試験した。
【0119】
NEP−エンドペプチダーゼ活性に特異的な、内部的に消光した蛍光基質である−Abz−dR−G−L−EDDnp FRET−ペプチドは、Thermo−Fisher Scientific (Germany)により合成された。
【0120】
NEP−カルボキシジペプチダーゼ活性に特異的な、内部的に消光した蛍光基質である−Abz−R−G−F−K−DnpOH FRET−ペプチドは、Thermo−Fisher Scientific (Germany)により合成された。
【0121】
分子内部的に消光した、構造的にブラジキニンに関連している蛍光発生ペプチドである− Mca−R−P−P−G−F−S−A−F−K−(Dnp)−OH FRET−ペプチドは、NEP及びECE活性を測定するための選択的基質であり、R&D Systemsから購入した。
【0122】
FRETは、供与蛍光粒子(Abz=オルト−アミノベンゾイル又はMca=7−メトキシクマリン−4−イル−アセチル)から受容蛍光粒子(DnpOH=2,4−ジニトロフェニル又はEDDnp=2,4−ジニトロフェニルエチレンジアミン)への、距離依存的なエネルギーの移動である。
【0123】
−L−アラニン−Mca、Ala−Mca、アミノペプチダーゼ活性を測定するための蛍光発生基質は、Sigmaから購入した。
【0124】
様々な利用可能な選択的合成ペプチダーゼ阻害因子の存在下及び非存在下での、可溶性エクトペプチダーゼによるこれらの基質の加水分解速度を測定して、各酵素アッセイの特異性を評価した:−チオルファン(NEP阻害因子)(Bachem)、−ベスタチン(AP阻害因子)(Calbiochem)。
【0125】
3−96ウェル蛍光アッセイを使用した、ペプチダーゼ活性の測定
【0126】
各アッセイのインキュベーションの時間、pH及び温度、並びに酵素及び基質濃度は、初期速度の測定の条件に従った。試験阻害化合物の存在下及び非存在下(1〜50μMの濃度範囲)での、2つのペプチダーゼによる器質の加水分解を、代謝速度をリアルタイムでモニタリングすることにより測定した。これらは、予めインキュベートしておいた培地に添加された。酵素の非存在下で得られる蛍光シグナルを表す基質の自然分解のバックグラウンド速度を差し引いて、初期速度をRFU(相対蛍光単位)/分で計算した。
【0127】
FRET特異的ペプチド基質Abz−dR−G−L−EDDnpを用いたNEP−エンドペプチダーゼ活性の測定
ブラックハーフエリア96ウェルマイクロプレートを使用して、200mMのNaClを含む100mM Tris−HCl pH7(最終体積100μl)中での酵素(12.5ng)を標準反応とした。10分間28℃でプレインキュベーションした後、基質(15μM最終濃度)を添加し、40分間28℃で(2.3分間隔の連続測定)、励起及び放出の波長がそれぞれ320nm及び420nmの蛍光測定マイクロプレートリーダー(monochromator Infinite 200−Tecan)を使用して、蛍光シグナル(RFU)の出現の動態を、直接解析した。
【0128】
初期速度の測定の条件下で、シグナルの強度は、反応時間20〜40分の間、形成された代謝物の量に正比例していた。故に、阻害因子非存在下では、rhNEPに誘導されたAbz−dR−G−L−EDDnpの特異的なエンドプロテオリシスの初期速度は、8218±2878RFU/分/μg rhNEP、n=3独立測定として、線形回帰(傾き=ビヒクル存在下でのNEP活性/インキュベーション時間)から計算された。
【0129】
FRET特異的ペプチド基質Abz−R−G−F−K−DnpOHを使用するNEP−カルボキシジペプチダーゼ活性の測定
ブラックハーフエリア96ウェルマイクロプレートを使用して、50mMのNaClを含む100mM Tris−HCl pH6.5(最終体積100μl)中での酵素(2.5ng)を標準反応とした。10分間プレインキュベーションした後、基質(4μM最終濃度)を添加し、40分間28℃で(2.3分間隔の連続測定)、励起及び放出の波長がそれぞれ320nm及び420nmの蛍光測定マイクロプレートリーダーを使用して、蛍光シグナル(RFU)の出現の動態を、直接解析した。これらの初期速度の測定の条件下で、ヒトNEPに誘導されたAbz−R−G−F−K−DnpOHの特異的な加水分解は、59796±18685RFU/分/μg rhNEP、n=4独立測定で評価された。基質Abz−R−G−F−K−DnpOHを用いて試験されたNEP−カルボキシジペプチダーゼ活性は、図5〜8で「NEP−CDP1活性」と表記されている。
【0130】
加えて、分子内で消光している蛍光ペプチドのMca−BK2(10μM)を、上述と同じ実験条件下で、5ngのrhNEPにより加水分解した。これらの条件下で、hNEP酵素は、Mca−R−P−P−G−F−S−A−F−K−(Dnp)−OHに対して、主にカルボキシジペプチダーゼとして働き、A−F結合を選択的に開裂するが、エンドペプチダーゼとしてG−F結合の開裂も行う。初期速度測定の条件下で、ヒトNEPに誘導されたMca−BK2の特異的な加水分解は、121910±24755RFU/分/μg rhNEP、n=3独立測定で評価された。基質Abz−R−G−F−K−DnpOHを用いて試験されたNEP−カルボキシジペプチダーゼ活性は、図5〜8で「NEP−CDP2活性」と表記されている。
【0131】
Ala−Mca基質を使用したAP−Nエクトペプチダーゼの測定
ブラックハーフエリア96ウェルマイクロプレートを使用して、100mM Tris−HCl pH7.0(最終体積100μl)中での酵素(4ng)を標準反応とした。10分間28℃でプレインキュベーションした後、Ala−Mca基質(25μM最終濃度)を添加し、40分間28℃で、励起及び放出の波長がそれぞれ380nm及び460nmの蛍光測定リーダーを使用して、シグナルの出現の動態を直接解析した。初期速度の測定の条件下で、シグナルの強度は、反応時間10〜40分の間、形成された代謝物の量に正比例していた。これらの初期速度測定の条件下で、ヒトAP−Nに誘導されたAla−Mcaのアミノプロテオリシスは、147042±44657 RFU/分/μg rhAP−N、n=3独立測定として(傾きから:インキュベーション時間に対する阻害因子非存在下のAP−N活性)から計算された。NEPカルボキシジペプチダーゼ活性をアッセイする他のFRET−ペプチド基質は、Barros et al. Biol. Chem., 2007, 388:447−455に記載されている。
【0132】
実施例2:生化学アッセイの結果
【0133】
1−hNEP及びhAP−Nに対するオピオルフィンペプチド誘導体のスクリーニング
【0134】
化合物は、最終濃度50μMで3回試験された。
【0135】
図1〜9は、本発明の様々なペプチド誘導体を用いた場合の、NEPエンドペプチダーゼ及びカルボキシペプチダーゼの活性並びにAP−N活性に対する生化学アッセイの結果を示す。
【0136】
様々なオピオルフィンペプチド類似体について、前記2つの膜結合外酵素(ectoenzyme)、NEP(特異的エンドペプチダーゼ及びカルボキシペプチダーゼ活性)及びAPNに対する阻害能力を、選択的蛍光ベース酵素アッセイ:過去に研究室内で開発及び確認された(PCT出願PCT/出願日2009年1月18日、本願で参照により援用される)FRET−based Enzyme in Vitro Modelsを使用することにより試験した。
【0137】
以下の化合物を解析した。以下の化合物中、NH2−は、ペプチドの末端アミンを意味し、そしてCOOHは、ペプチドの末端カルボン酸を意味する。
【0138】
−NH2−QRFSR−CONH2(オピオルフィン);NH2−QRGPR−COOH;NH2−QHNPR−COOH;NH2−QR(4ブロモF)SR−COOH(即ちQRF(4Br)SR);NH2−QRFPR−COOH:これらは、ヒトAP−Nで優勢な阻害を示し、ヒトNEPにおいて弱い阻害能力を示した。
【0139】
−N−(アセチル)QRFSR−COOH;N−(C8−ポリエチレン)QRFSR−COOH;N−(ビオチン−C6−ポリエチレン)QRFSR−COOH:これらは、ヒトAP−N及びNEPにおいて弱い阻害能力を示し、NEPエンドペプチダーゼ活性が優勢であった。
【0140】
−NH2−dRdSdFdRdQ−COOH(レトロインバーションD−エナンチオマー):ヒトAP−N及びNEPにおいて顕著な阻害活性を示さず、AP−N活性が優勢であった。
【0141】
−NH2−YQRFSR−COOH;NH2−Y−(C6−ポリエチレン)QRFSR−COOH;NH2−Y−(C12−ポリエチレン)QRFSR−COOH:これらは、ヒトNEPエンドペプチダーゼ活性において優勢な阻害を示し、特にY−(C12−ポリエチレン)QRFSRが有効であった。
【0142】
−NH2−QRF[S−O−C8−ポリエチレン]R−COOH;NH2−CQRFSR−COOH:これらは、ヒトNEP(特異的エンドペプチダーゼ及びカルボキシジペプチダーゼ活性)及びAP−Nの強力な二機能性阻害因子であった。
【0143】
他の改変オピオルフィンペプチドとして、以下のものが挙げられる。
【0144】
NH2−CQRF[S−O−C8−ポリエチレン]R−COOH;
【0145】
NH2−CQRF[S−O−C12−ポリエチレン]R−COOH
【0146】
NH2−C−(C8−ポリエチレン)QRFSR−COOH
【0147】
NH2−C−(C12−ポリエチレン)QRFSR−COOH
【0148】
NH2−C−(C8−ポリエチレン)QRF[S−O−C8−ポリエチレン]R−COOH
【0149】
NH2−[CΒ2]QRF[S−O−C8−ポリエチレン]R−COOH
【0150】
NH2−C−(C8−ポリエチレン)QRFS[Β3R]−COOH
【0151】
NH2−C[dQ]RF[S−O−C8−ポリエチレン][dR]−COOH
【0152】
NH2−C−(C8−ポリエチレン)QRFS[dR]
【0153】
NH2−[dC]QRF[S−O−C8−ポリエチレン][dR]−COOH
【0154】
NH2−[Cβ2]QRF[S−O−C8−ポリエチレン][β3R]−COOH
【0155】
ジスルフィド結合によるシステインジペプチドである、[CQRFSR]2
【0156】
2−hNEP及びhAP−Nに対する、選択的なオピオルフィンペプチド誘導体の濃度依存的な阻害
【0157】
CQRFSR−COOHペプチド(図9及び13)
【0158】
前記CQRFSR−COOHペプチドは、rhNEP−エンドペプチダーゼ活性により誘導されるAbz−dR−G−L−EDDnp開裂を、濃度依存的に阻害した:r2=0.97、n=18決定点(determination point)、7±3μMでIC50。
【0159】
CQRFSR−COOHペプチドは、rhNEP活性により誘導されるAbz−R−G−F−K−DnpOH開裂を、濃度依存的に阻害した:r2=0.99、n=18決定点、6±1μMでIC50。
【0160】
CQRFSR−COOHペプチドは、rhAP−N活性により誘導されるAla−AMC開裂を、濃度依存的に阻害した:r2=0.99、n=30決定点、0.8±0.1μMでIC50。
【0161】
CQRFSR−COOHペプチドは、rhNEP活性により誘導されるMca−R−P−P−G−F−S−A−F−K−(Dnp)−OH FRET−ペプチド(Mca−BK2)開裂を、濃度依存的に阻害した:r2=0.99、n=16決定点、17±2μMでIC50。
【0162】
故に、システインアミノ酸とのアミド結合の形成によるNH2−QRFSRペプチドのN−末端の修飾(チオール官能基は亜鉛を強力にキレートする)により、化合物(CQRFSRペプチド)のhAP−N(元のQRFSRペプチドの10倍)及びhNEP(5倍)に対する阻害能力が強化された。
【0163】
QRF[S−O−オクタノイル]Rペプチド(図10)
【0164】
QRF[S−O−C8]Rペプチドは、rhNEP−エンドペプチダーゼ活性により誘導されるAbz−dR−G−L−EDDnp開裂を、濃度依存的に阻害した:r2=0.98、n=18決定点、2.8±0.2μMでIC50。
【0165】
QRF[S−O−C8]Rペプチドは、rhNEP活性により誘導されるAbz−R−G−F−K−DnpOH開裂を、濃度依存的に阻害した:r2=0.99、n=18決定点、12±5μMでIC50。
【0166】
QRF[S−O−C8]Rペプチドは、rhAP−N活性により誘導されるAla−AMC開裂を、濃度依存的に阻害した:r2=0.99、n=20決定点、10±1μMでIC50。
【0167】
QRF[S−O−C8]Rペプチドは、rhNEP活性により誘導されるMca−R−P−P−G−F−S−A−F−K−(Dnp)−OH FRET−ペプチド(Mca−BK2)開裂を、濃度依存的に阻害した:r2=0.99、n=18決定点、14±4μMでIC50。
【0168】
Y−[アミノドデカン酸スペーサー]−QRFSRペプチド(図11及び19)
【0169】
Y(PE12)QRFSR−COOHペプチドは、rhNEP−エンドペプチダーゼ活性により誘導されるAbz−dR−G−L−EDDnp開裂を、濃度依存的に阻害した:r2=0.98、n=18決定点、10±1μMでIC50。
【0170】
Y(PE12)QRFSR−COOHペプチドは、rhNEP活性により誘導されるAbz−R−G−F−K−DnpOH開裂を、濃度依存的に阻害した:r2=0.99、n=18決定点、24±2μMでIC50。
【0171】
Y(PE12)QRFSR−COOHペプチドは、rhAP−N活性により誘導されるAla−AMC開裂を、濃度依存的に阻害した:r2=0.99、n=20決定点、122±20μMでIC50。
【0172】
Y(PE12)QRFSR−COOHペプチドは、rhNEP活性により誘導されるMca−R−P−P−G−F−S−A−F−K−(Dnp)−OH FRET−ペプチド(Mca−BK2)開裂を、濃度依存的に阻害した:r2=0.99、n=18決定点、31±2μMでIC50。よって、Y−(C12−ポリエチレン)QRFSRが、ヒトNEPエンドペプチダーゼ活性阻害において優勢であることが確認された。
【0173】
C[PE6]QRFSRペプチド(PE6=アミノヘキサン酸)(図20)
【0174】
C[PE6]QRFSR−COOHペプチドは、rhNEP−エンドペプチダーゼ活性により誘導されるAbz−dR−G−L−EDDnp開裂を、濃度依存的に阻害した:r2=0.98、n=18決定点、40±5μMでIC50。
【0175】
C[PE6]QRFSR−COOHペプチドは、rhNEP活性により誘導されるAbz−R−G−F−K−DnpOH開裂を、濃度依存的に阻害した:r2=0.99、n=18決定点、217でIC50。
【0176】
C[PE6]QRFSR−COOHペプチドは、rhAP−N活性により誘導されるAla−AMC開裂を、濃度依存的に阻害した:r2=0.99、n=20決定点、0.8±0.1μMでIC50。
【0177】
C[PE6]QRFSR−COOHペプチドは、rhNEP活性により誘導されるthe Mca−R−P−P−G−F−S−A−F−K−(Dnp)−OH FRET−ペプチド(Mca−BK2)開裂を、濃度依存的に阻害した:r2=0.99、n=18決定点、227μMでIC50。
【0178】
C−[アミノドデカン酸スペーサー]−QRFSRペプチド(図21)
【0179】
C[PE12]QRFSR−COOHペプチドは、rhNEP−エンドペプチダーゼ活性により誘導されるAbz−dR−G−L−EDDnp開裂を、濃度依存的に阻害した:r2=0.96、n=24決定点、5.7±0.5μMでIC50。
【0180】
C[PE12]QRFSR−COOHペプチドは、rhNEP活性により誘導されるAbz−R−G−F−K−DnpOH開裂を、濃度依存的に阻害した:r2=0.97、n=30決定点、19±2μMでIC50。
【0181】
C[PE12]QRFSR−COOHペプチドは、rhAP−N活性により誘導されるAla−AMC開裂を、濃度依存的に阻害した:r2=0.98、n=21決定点、0.8±0.1μMでIC50。
【0182】
C−[アミノヘキサン酸スペーサー]−QRFS[0−オクタノイル]Rペプチド(図22)
【0183】
C[PE6]QRF[S−O−オクタノイル]Rペプチドは、rhNEP−エンドペプチダーゼ活性により誘導されるAbz−dR−G−L−EDDnp開裂を、濃度依存的に阻害した:r2=0.99、n=27決定点、759±56μMでIC50。
【0184】
C[PE6]QRF[S−O−オクタノイル]Rペプチドは、rhNEP活性により誘導されるAbz−R−G−F−K−DnpOH開裂を、濃度依存的に阻害した:r2=0.99、n=27決定点、848±58μMでIC50。
【0185】
C[PE6]QRF[S−O−オクタノイル]Rペプチドは、rhAP−N活性により誘導されるAla−AMC開裂を、濃度依存的に阻害した:r2=0.99、n=24決定点、1.7±0.1μMでIC50。
【0186】
生理的なNEPの基質である物質Pを使用し、細胞膜をhNEPの供給源とする、生物学的に関連するインビトロのアッセイにおいて、C[PE6]QRF[S−O−オクタノイル]R誘導体ペプチドは、膜結合hNEPエンドペプチダーゼ活性により誘導される物質P開裂を、濃度依存的に阻害した:r2=0.95、n=13決定点、1.6±0.4μMでIC50(元のオピオルフィンペプチドの同一の試験結果の5倍以上)(図23)。
【0187】
[CQRFSR]ジペプチド([CQRFSR]2)
【0188】
[CQRFSR]ジペプチドは、rhNEPエンドペプチダーゼ活性により誘導されるAbz−dR−G−L−EDDnp開裂を、濃度依存的に阻害した:r2=0.87、n=24決定点、1.4±0.5μMでIC50。
【0189】
[CQRFSR]ジペプチドは、rhNEP活性により誘導されるAbz−R−G−F−K−DnpOH開裂を、濃度依存的に阻害した:r2=0.99、n=27決定点、3.3±0.2μMでIC50。
【0190】
[CQRFSR]ジペプチドは、rhAP−N活性により誘導されるAla−AMC開裂を、濃度依存的に阻害した:r2=0.99、n=24決定点、0.8±0.1μMでIC50。
【0191】
表1:NEP及びAP−N活性に対する様々なペプチド及びペプチド誘導体のIC50値のまとめ
【表1】
【0192】
データ全体で、NH2−QRFSRのN末端のαアミン基の、ヒトAP−Nに対するオピオルフィンの阻害能力における重要性が示された。
【0193】
実際に、元のペプチドであるオピオルフィン(QRFSR)と比較して、それをアセチル化したもの、又は環化したもの、それをオクタノイル化したもの又はビオチン化したもののhAP−Nに対する阻害能力は低下した。
【0194】
しかしながら、元のペプチドであるオピオルフィン(QRFSR)と比較して、2つの化合物:pGlu−RFSR及びC8−QRFSRは、ヒトhNEPにおける阻害能力は、それ以上とはいかないまでも、少なくとも同等であった。
【0195】
これらのデータから、更に、QRFSR−COOHペプチドの遊離カルボキシル末端の、hNEPの、特にNEPのカルボキシジペプチダーゼ活性に対する阻害能力における重要性が示され、元のペプチドであるオピオルフィン(QRFSR)と比較して、アミド化により(QRFSR−CONH2)、hNEP活性に対する阻害能力が低下することが示された。
【0196】
QRFSRペプチドのPhe残基は、hNEP及びhAP−Nペプチダーゼ活性に対するオピオルフィンの阻害能力に重要である。実際に、元のペプチドであるオピオルフィン(QRFSR)と比較して、PheをTyr残基に置換すると(QRYSR)、hAP−Nの阻害能力が6倍低下し、そしてヒトNEPに対する阻害能力が僅かに低下した。
【0197】
しかしながら、興味深いことに、Pheを4−フルオロ−Phe残基に置換すると(QR[4F]FSR)、元のペプチドであるオピオルフィン(QRFSR)と比較して、ヒトNEPに対する阻害能力が2倍低下し、そしてhAP−Nに対する阻害能力は同程度であった。逆に、Pheを(4ブロモ−Phe)残基に置換すると、ヒトNEPに対する阻害能力が低下した。
【0198】
QRFSRペプチドの中央のRFSの改変は、hNEPに対するオピオルフィンの阻害能力に影響する。元のペプチドであるオピオルフィン(QRFSR)と比較して、QRGPR、QHNPR、及びQRFPRは、ヒトAP−Nの阻害能力は同等で、ヒトNEPに対する阻害能力は低下した。
【0199】
これらの結果は、更に、QRFSRペプチドの位置2のArgのグアニジウムイオンの、hAPNに対するオピオルフィンの阻害能力における重要性を示す。元のペプチドであるオピオルフィン(QRFSR)と比較して、Arg2をLys残基のε−アミンに置換すると(QKFSR)、hAP−Nに対する阻害能力は10倍低下し、そしてヒトNEPに対する阻害能力は僅かに低下した。
【0200】
同様に、QRFSRペプチドの位置5のArg残基のグアニジウムイオンは、hAPNに対するオピオルフィンの阻害能力において重要である。元のペプチドであるオピオルフィン(QRFSR)と比較して、Arg5をLys残基のε−アミンに置換すると(QRFSK)、hAP−Nに対する阻害能力は10倍低下し、そしてヒトNEPに対する阻害能力は同等であった。
【0201】
興味深いことに、QRFSRペプチドのセリン残基のヒドロキシル基をオクタン酸でエステル化すると(QRF[オクタノイル−セリン]R)、元のペプチドであるオピオルフィン(QRFSR)と比較して、hAP−Nに対する阻害能力は同等で、そしてhNEPエンドペプチダーゼ活性及びカルボキシジペプチダーゼ活性に対する阻害能力は強化された(元のペプチドであるオピオルフィンの10倍以上の阻害能力)(図19を参照されたい)。
【0202】
実施例3:潜在的に元のペプチドを上回るインビボ生体利用可能性を示し得る、生物学的に活性な強力なオピオルフィンのペプチド模倣体の、インビトロでの同定
【0203】
1.生物学的吸収の潜在的利益:膜透過輸送(上皮及び内皮細胞膜の通過)
【0204】
ポリエチレンC6、C8、ClO又はC12スペーサー等の化学疎水性部分を付加してオピオルフィンペプチドの改変することより、膜を通じての生物学的インビボ吸収効率が増大し得る。試験された全ての化合物の中で、NH2−QRF[S−O−オクタノイル]R−COOH−NH2−Y(PE12)QRFSR−COOH(PE=[CH2]n;PE12=アミノ−ドデカン酸)は、ヒトNEP(特異的エンドペプチダーゼ及びカルボキシジペプチダーゼ活性)及びAP−N活性の強力な二機能性阻害因子であることが示された。
【0205】
2−代謝安定性の潜在的利益:システイン−ジペプチド:[CQRFSR]2
【0206】
[CQRFR]ジペプチドは、CQRFSRモノマーペプチドと比較して、hNEPエンドペプチダーゼ活性及びカルボキシジペプチダーゼ活性に対する阻害能力が2倍以上増大した。該ジペプチドの配列は、循環しているアミノペプチダーゼによる分解から、該誘導体化合物を保護すると考えられる。
【0207】
明らかに、上記教示を考慮して、本発明の様々な改変及び変法を想到することが可能である。故に、添付の請求項の範囲内で、本発明は、本明細書中に特に記載した以外の態様で実施され得ると理解され得る。
【技術分野】
【0001】
本願は、2008年4月7日に出願された米国仮出願第61/042,922号の利益を主張する。該出願は、参照により援用される。
【0002】
本発明は、メタロエクトペプチダーゼの新規阻害因子としての、改変オピオルフィンペプチドに関する。
【背景技術】
【0003】
亜鉛金属エクトペプチダーゼは、哺乳類の重要な生理機能の制御に関与する、神経伝達物質及びホルモン性伝達物質の受容体依存的な活性を調節する。それらは神経及び全身の組織の細胞表面に存在し、神経ペプチド及び制御ペプチドの分泌後プロセシング又は代謝を触媒する(Roques, BP, Noble, F, Dauge, V, Fournie−Zaluski, MC & Beaumont, A. (1993) Pharmacol Rev 45, 87−146. Turner, AJ, Isaac, RE & Coates, D. (2001) BioEssays 23, 261−269)。
【0004】
神経及び/又はホルモン性ペプチドシグナルの中で最も重要なものは、物質P(S)及びエンケファリンであり、これらは、ストレスとなる、又は脅迫的な環境刺激に対する行動的な適応応答(behavioral adaptive response)の、受容体依存的な調節に関与する。それらは、侵害受容情報の脊髄処理(spinal processing)及び鎮痛のメカニズム、感情及び/又は意欲の応答、不安、攻撃性、及び神経免疫炎症現象を顕著に制御する(Dickenson, AH. (1995) Br J Anaesth 75, 193−200. Sora, I, Takahashi, N, Funada, M, Ujike, H, Revay, RS, Donovan, DM, Miner, LL & Uhl, GR. (1997) Proc Natl Acad Sci USA 94, 1544−1549; Konig, M, Zimmer, AM, Steiner, H, Holmes, PV, Crawley, JN, Brownstein, MJ & Zimmer, A. (1996) Nature 383, 535−538; Filliol, D, Ghozland, S, Chluba, J, Martin, M, Matthes, HW, Simonin, F, Befort, K, Gaveriaux−Ruff, C, Dierich, A & LeMeur, M, et al. (2000) Nat Genet 25, 195−200)。
【0005】
亜鉛エクトペプチダーゼは、下流の神経及びホルモンシグナルの機能的機能的能力の調節において生理的に重要で、かつ重要な役割を果たすことから、何がそれらの活性を調節しているのかという問題に重点を置き、結果的にその全体の制御カスケードを明らかにすることは重要である。また、エクトペプチダーゼ活性の上流の制御因子を発見することも、生体病理的及び医療的観点から有意義である。なぜなら、新しい薬物候補開発の可能性が生じるからである。
【0006】
スピノルフィンという脳特異的ヘプタペプチドは、中性エンドペプチダーゼ(NEP;EC3.4.24.11[EC])及びアミノペプチダーゼN(AP−N;EC3.4.11.2[EC])等のエンケファリン分解エクトエンザイムに対する阻害的活性に基づき、ウシ脊髄から単離及び特定された(Nishimura, K & Hazato, T. (1993) Biochem Biophys Res Commun 194, 713−719; Yamamoto, Y, Ono, H, Ueda, A, Shimamura, M, Nishimura, K & Hazato, T. (2002) Curr Protein Pept Sci 3, 587−599)。加えて、発明者らは、ラットにおいて、環境の変化への適応に関与するペプチド伝達物質として、ラットシアロルフィン(sialorphin)を特定した。ラットシアロルフィンは内分泌ペプチドシグナルであり、雄ラットにおいては、アンドロゲン制御により発現が活性化され、環境ストレスに対するアドレナリン誘導性応答の下で分泌が刺激される。これは、ラットにおいて、膜結合性ラットNEP活性の生理的阻害因子であり、そして痛覚の有力な阻害因子である(Rougeot, C, Rosinski− Chupin, I, Njamkepo, E & Rougeon, F. (1994) Eur J Biochem 219, 765−773; Rougeot, C, Vienet, R, Cardona, A, Le Doledec, L, Grognet, JM & Rougeon, F. (1997) Am J Physiol 273, R1309−R1320.; Rougeot, C, Rosinski−Chupin, I & Rougeon, F. (1998) in Biomedical Reviews eds. Chaldakov, GN & Mathison, R. (Bulgarian−American Center, Varna, Bulgaria,) Vol 9, pp. 17−32; Rosinski−Chupin, I, Huaulme, JF, Rougeot, C & Rougeon, F. (2001) Endocrinology 142, 4550−4559; Rougeot, C, Messaoudi, M, Hermitte, V, Rigault, AG, Blisnick, T, Dugave, C, Desor, D & Rougeon, F. (2003) Proc Natl Acad Sci USA 100, 8549−8554)。
【0007】
以前、発明者らは、ヒトオピオルフィン野生型ペプチド(QRFSR−ペプチド)(目下ヒトにおいて最初に性状解析された)が、2つのエンケファリン不活性化エクトペプチダーゼである中性エンドペプチダーゼNEP(EC 3.4.24.11)及びアミノペプチダーゼAP−N(EC 3.4.11.2)の効果的な二機能性阻害因子であることを示した(Wisner et al. Proc Natl Acad Sci USA, Nov. 2006, 103(47): 17979−84)。
【0008】
オピオルフィンペプチド誘導体は以前から記載されており(例えばWisner et al Proc Natl Acad Sci USA, Nov. 2006, 103(47): 17979−84)、基本的なペプチド配列はQRFSRである。
【0009】
よって、この配列及び下記の式により定義される配列は、変更される場合があり:例えばXl−X2−Arg−Phe−Ser−Argであり、ここでXlはH原子又はTyrアミノ酸を表し、XlがHのときX2はGln若しくはGlpを表し、又はX1がTyr若しくはCysのとき、X2はGlnを表す。好ましくはQRFSR、YQRFSR、及び/又はCQRFSRであり、QRFSRが最も好ましい。Glpはピログルタミン、Tyr又はYはチロシン、Gln又はQはグルタミン、Phe又はFはフェニルアラニン、Ser又はSはセリン、及びCys又はCはシステインを表すものと理解されたい。これらのペプチドは、国際特許出願WO2005090386として公開されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、新規オピオルフィン誘導体、及び高度に選択的な生化学アッセイを使用するインビトロでの機能的特性化(functional characterization)に関する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】ビヒクル又は50μMのQRFSRペプチド類似体の存在下での、組換えhNEP又はhAP−Nによる、対応するFRET−ペプチド基質の加水分解のキネティクスを示す。各点は、RFU(相対蛍光単位)で表されるシグナルの強さを表しており、これらは形成される代謝物の量に比例しており、反応時間(分)との関数として表された。
【0012】
【図5】精製組換えヒトhNEP又はAP−Nによる対応するFRET−ペプチド基質の加水分解の、QRFSR−ペプチド類似体による阻害を表す。各バーは回収された無傷の基質のパーセンテージを表し、「阻害因子無しの速度−阻害因子存在下の速度/阻害因子無しの速度」のパーセンテージとして計算され、測定は、50μMのQRFSRペプチド類似体の存在下又は非存在下で行われた。
【0013】
【図6】精製組換えヒトhNEP又はAP−Nによる対応するFRET−ペプチド基質の加水分解の、QRFSR−ペプチド類似体による阻害を表す。各バーは回収された無傷の基質のパーセンテージを表し、「阻害因子無しの速度−阻害因子存在下の速度/阻害因子無しの速度」のパーセンテージとして計算され、測定は、50μMのQRFSRペプチド類似体の存在下又は非存在下で行われた。
【0014】
【図7】
【図8】精製組換えヒトhNEP又はAP−Nによる対応するFRET−ペプチド基質の加水分解の、QRFSR−ペプチド類似体による阻害を表す。各バーは回収された無傷の基質のパーセンテージを表し、「阻害因子無しの速度−阻害因子存在下の速度/阻害因子無しの速度」のパーセンテージとして計算され、測定は、50μMのQRFSRペプチド類似体の存在下又は非存在下で行われた。
【0015】
【図9】精製組換えヒトhNEP又はAP−Nによる対応するFRET−ペプチド基質の加水分解の、CQRFSRペプチドによる濃度依存的阻害を表す。各点は、回収された無傷の基質のパーセンテージを表し、「阻害因子無しの速度−阻害因子存在下の速度/阻害因子無しの速度」のパーセンテージとして計算され、測定は、様々な濃度のCQRFSRペプチド類似体の存在下又は非存在下で行われ、μMでプロットされた(ログスケール)。
【0016】
【図10】精製組換えヒトhNEP又はAP−Nによる対応するFRET−ペプチド基質の加水分解の、QRFS[O−オクタノイル]Rペプチドによる濃度依存的阻害を表す。各点は、回収された無傷の基質のパーセンテージを表し、「阻害因子無しの速度−阻害因子存在下の速度/阻害因子無しの速度」のパーセンテージとして計算され、測定は、様々な濃度のQRFS[O−オクタノイル]Rペプチド類似体の存在下又は非存在下で行われ、μMでプロットされた(ログスケール)。
【0017】
【図11】精製組換えヒトhNEP又はAP−Nによる対応するFRET−ペプチド基質の加水分解の、Y(PE12)QRFSR(即ちY−[NH−(CH2)12−CO]−QRFSR)ペプチドによる濃度依存的阻害を表す。各点は、回収された無傷の基質のパーセンテージを表し、「阻害因子無しの速度−阻害因子存在下の速度/阻害因子無しの速度」のパーセンテージとして計算され、測定は、様々な濃度のY(PE12)QRFSRペプチド類似体の存在下又は非存在下で行われ、Log μMでプロットされた。
【0018】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】ビヒクル又は1〜50μMのCQRFSR又はCQRFS[O−オクタノイル]Rオピオルフィンペプチド類似体の存在下での、組換えhNEP又はhAP−Nによる、対応するFRET−ペプチド基質の加水分解のキネティクスを示す。各点は、RFU(相対蛍光単位)で表されるシグナルの強さを表しており、これらは形成される代謝物の量に比例しており、反応時間(分)との関数として表された。
【0019】
【図18】精製組換えヒトhNEP又はAP−Nによる対応するFRET−ペプチド基質の加水分解の、CQRFSRペプチドによる濃度依存的阻害を表す。各点は、回収された無傷の基質のパーセンテージを表し、「阻害因子無しの速度−阻害因子存在下の速度/阻害因子無しの速度」のパーセンテージとして計算され、測定は、様々な濃度のCQRFSRペプチド類似体の存在下又は非存在下で行われ、μMでプロットされた(ログスケール)。
【0020】
【図19】精製組換えヒトhNEP又はAP−Nによる対応するFRET−ペプチド基質の加水分解の、Y[PE12]QRFSR−COOHペプチド(即ちY−(−FTN−(CH2)12−CO−)−QRFSR)による濃度依存的阻害を表す。各点は、回収された無傷の基質のパーセンテージを表し、「阻害因子無しの速度−阻害因子存在下の速度/阻害因子無しの速度」のパーセンテージとして計算され、測定は、様々な濃度のY[PE12]QRFSR−COOHペプチドの存在下又は非存在下で行われ、μMでプロットされた(ログスケール)。
【0021】
【図20】精製組換えヒトhNEP又はAP−Nによる対応するFRET−ペプチド基質の加水分解の、C[PE6]QRFSR−COOHペプチド(即ちC−(−HN−(CH2)6−CO−)−QRFSR)による濃度依存的阻害を表す。各点は、回収された無傷の基質のパーセンテージを表し、「阻害因子無しの速度−阻害因子存在下の速度/阻害因子無しの速度」のパーセンテージとして計算され、測定は、様々な濃度のC[PE6]QRFSR−COOHペプチドの存在下又は非存在下で行われ、μMでプロットされた(ログスケール)。
【0022】
【図21】精製組換えヒトhNEP又はAP−Nによる対応するFRET−ペプチド基質の加水分解の、C(PE12)QRFSR−COOHペプチド(即ちC−(−HN−(CH2)12−CO−)−QRFSR)による濃度依存的阻害を表す。各点は、回収された無傷の基質のパーセンテージを表し、「阻害因子無しの速度−阻害因子存在下の速度/阻害因子無しの速度」のパーセンテージとして計算され、測定は、様々な濃度のC(PE12)QRFSR−COOHペプチドの存在下又は非存在下で行われ、μMでプロットされた(ログスケール)。
【0023】
【図22】精製組換えヒトhNEP又はAP−Nによる対応するFRET−ペプチド基質の加水分解の、C[PE6]QRF[S−O−オクタノイル]Rペプチド(即ちC−(−HN−(CH2)6−CO−)−QRF−S(O−オクタノイル)−R)による濃度依存的阻害を表す。各点は、回収された無傷の基質のパーセンテージを表し、「阻害因子無しの速度−阻害因子存在下の速度/阻害因子無しの速度」のパーセンテージとして計算され、測定は、様々な濃度のC[PE6]QRF[S−O−オクタノイル]Rペプチドの存在下又は非存在下で行われ、μMでプロットされた(ログスケール)。
【0024】
【図23】精製組換えヒトhNEP又はAP−Nによる対応するFRET−ペプチド基質の加水分解の、C[PE6]QRF[S−O−オクタノイル]Rペプチド(即ちC−(−HN−(CH2)6−CO−)−QRF−S(O−オクタノイル)−R)による濃度依存的阻害を表す。各点は、回収された無傷の基質のパーセンテージを表し、「阻害因子無しの速度−阻害因子存在下の速度/阻害因子無しの速度」のパーセンテージとして計算され、測定は、様々な濃度のC[PE6]QRF[S−O−オクタノイル]Rペプチドの存在下又は非存在下で行われ、nMでプロットされた(ログスケール)。
【発明を実施するための形態】
【0025】
好ましい態様の詳細な説明
本明細書中で、本発明は、オピオルフィンペプチドを構成するアミノ酸の各残基又は組み合わせが1つ以上の官能基で改変された、ペプチドの改変バージョンを提供する。
【0026】
そのような改変オピオルフィンペプチドの非限定的な例として:
NH2−QRFSR−CONH2;
NH2−QRGPR−COOH;
NH2−QHNPR−COOH;
NH2−QR(4ブロモF)SR−COOH(即ちNH2−QR−F[4Br]−SR−COOH(ここで−F[4Br]−が、フェニル基のパラ位が臭素原子で置換されたフェニルアラニンであることにより、−F[4Br]−は以下の式;
【化1】
で表される);
N−(アセチル)QRFSR−COOH;
N−(C8−ポリエチレン)QRFSR−COOH;
N−(ビオチン−C6)QRFSR−COOH;
NH2−dRdSdFdRdQ−COOH(レトロインバーション(retroinversion)D−エナンチオマー);
NH2−YQRFSR−COOH;
NH2−Y−(C6−ポリエチレン)QRFSR−COOH;
NH2−Y−(C12−ポリエチレン)QRFSR−COOH;
NH2−QRF[S−O−C8−ポリエチレン]R−COOH;
NH2−CQRFSR−COOH;
NH2−CQRF[S−O−C8−ポリエチレン]R−COOH;
NH2−CQRF[S−O−C12−ポリエチレン]R−COOH;
NH2−C−(C8−ポリエチレン)QRFSR−COOH;
NH2−C−(C12−ポリエチレン)QRFSR−COOH;
NH2−C−(C8−ポリエチレン)QRF[S−O−C8−ポリエチレン]R−COOH;
NH2−[Cβ2]QRF[S−O−C8−ポリエチレン]R−COOH;
NH2−C−(C8−ポリエチレン)QRFS[β3R]−COOH;
NH2−C[dQ]RF[S−O−C8−ポリエチレン][dR]−COOH;
NH2−C−(C8−ポリエチレン)QRFS[dR];
NH2−[dC]QRF[S−O−C8−ポリエチレン][dR]−COOH;
NH2−[Cβ2]QRF[S−O−C8−ポリエチレン][β3R]−COOH;
[CQRFSR]2(システインジペプチドのジスルフィド結合を介して連結される);
Glp−RFSR−COOH;
NH2−QRYSR−COOH;
NH2−QRF[4F]SR−COOH(ここで−F[4F]−が、フェニル基のパラ位がフッ素原子で置換されたフェニルアラニンであることにより、−F[4F]−は以下の式;
【化2】
で表される);
NH2−QKFSR−COOH;
NH2−QRFSK−COOH;
NH2−C−(C6−ポリエチレン)QRFSR−COOH;
NH2−C−(C6−ポリエチレン)−QRFS[S−O−C8−ポリエチレン]R−COOH;
NH2−C−(C12−ポリエチレン)QRFS[S−O−C8−ポリエチレン]R−COOH;
NH2−C[PE12]QRFS−dR−COOH;
NH2−C−(C12−ポリエチレン)−QRFS[S−O−C8−ポリエチレン]−β3R−COOH;
NH2−C−(C8−ポリエチレン)−QRFS[S−O−C8−ポリエチレン]−β3R−COOH;
が挙げられ、ここで
Cβ2は、天然のシステイン残基を、システインのαカルボニル基に近いCα炭素の隣にメチレン残基を含むβ2−システインで置き換えたものであり(H2N(−CH2−SH)−CH2−CO−);
β3Rは、天然のアルギニン残基を、アルギニンのαアミン基に近いCα炭素の隣にメチレン残基を含むβ3−アルギニンで置き換えたものであり(−NH−CH2−C[−(CH2)3−NH−C(NH)(NH2)]−COOH);
[S−O−C8−ポリエチレン]及び[S−O−オクタノイル]は、ヒドロキシル基がオクタノイル基で置換されたセリンを意味し;
[S−O−C12−ポリエチレン]は、ヒドロキシル基がドデカノイル基で置換されたセリンを意味し;
C6、C8又はC12−ポリエチレンは、炭素が6、8又は12個のエチレン基のスペーサーに対応する(それぞれ、(−HN−(CH2)6−CO−、−HN−(CH2)8−CO−及び(−HN−(CH2)I2−CO−)。
【0027】
上記ペプチドにおいて、NH2−は、ペプチドの末端アミンを表し、COOHは末端カルボン酸を表す(末端基がアミドの時は−CO−NH2)。また、上記リストは、
The list above can also be read as:
QRFSR−NH2;
QRGPR;
QHNPR;
(アセチル)QRFSR;
C−(−HN−(CH2)8−CO−)−QRFSR;
ビオチン−(−HN−(CH2)6−CO−)−QRFSR;
dR−dS−dF−dR−dQ;
YQRFSR;
Y−(−HN−(CH2)6−CO−)−QRFSR;
Y−(−HN−(CH2)12−CO−)−QRFSR;
QRF−S(O−オクタノイル)−R;
CQRFSR;
CQRF−S(O−オクタノイル)−R;
CQRF−S(O−ドデカノイル)−R;
C−(−HN−(CH2)8−CO−)−QRFSR;
C−(−HN−(CH2)12−CO−)−QRFSR;
C−(−HN−(CH2)8−CO−)−QRF−S(O−オクタノイル)−R;
[Cβ2]QRF−S(O−オクタノイル)−R;
C−(−HN−(CH2)8−CO−)−QRFS−[β3R];
C−[dQ]−RF−S(O−オクタノイル)−[dR];
C−(−HN−(CH2)8−CO−)−QRFS−[dR];
[dC]−QRF−S(O−オクタノイル)−[dR];
[Cβ2]−QRF−S(O−オクタノイル)−[β3R];
[CQRFSR]2;
Glp−RFSR;
QRYSR;
QR−F[4F]−SRであり、−F[4F]−が、フェニル基のパラ位がフッ素原子で置換されたフェニルアラニンであるもの;
QR−F[4Br]−SR, wherein −F[4Br]−が、フェニル基のパラ位が臭素原子で置換されたフェニルアラニンであるもの;
QKFSR;
QRFSK;
C−(−HN−(CH2)6−CO−)−QRFSR;
C−(−HN−(CH2)6−CO−)−QRF−S(O−オクタノイル)−R;
C(−HN−(CH2)12−CO−)QRF−S(O−オクタノイル)−R;
C−(−HN−(CH2)12−CO−)−QRFS−dR;
C−(−HN−(CH2)12−CO−)−QRF−S(O−オクタノイル)−β3R;
C−(−HN−(CH2)8−CO−)−QRF−S(O−オクタノイル)β3R,
と読まれることもあり、ここで:
Cβ2はH2N(−CH2−SH)−CH2−CO−であり;
B3Rは−NH−CH2−C[−(CH2)3−NH−C(NH)(NH2)]−COOHであり;
−S(−O−オクタノイル)は、ヒドロキシル基がオクタノイル基で置換されたセリンを意味する。
【0028】
−S(−O−ドデカノイル)は、ヒドロキシル基がドデカノイル基で置換されたセリンを意味する。以下の定義は、本願全体で使用される。
【0029】
「ペプチド」は、アミノ酸残基の線形配列(linear array)が互いにペプチド結合で連結して構成される分子である。そのような線形配列は、任意で環状、即ち線形ペプチドの両端あるいはペプチド中のアミノ酸の側鎖が、化学結合で連結されたものであり得る。更に、そのようなペプチドは、二次、三次、又は四次構造や、他のペプチド又は他の非ペプチド分子との分子間結合を有し得る。そのような分子間結合は、限定されないが、共有結合(ジスルフィド結合等)、又はキレーション、静電気相互作用、疎水性相互作用、水素結合、イオン−双極子(ion−dipole)相互作用、双極子−双極子相互作用、若しくはそれらの任意の組み合わせを介するものであり得る。
【0030】
下記ペプチドの任意のアミノ酸がL型又はD型であり得る。特に、全てのペプチドがL型又はD型のいずれかであり得る。前記炭化水素鎖は、任意で天然のアミノ酸よりも多くのメチレン基を含むため、該アミノ酸はβアミノ酸、より正確にはβ2又はβ3アミノ酸である場合がある。例えば、Rは、以下:IR(即ちL−Arg)、dR(即ちD−Arg)、β3R又はβ2Rのいずれか1つを表し得る。また、下記ペプチドの任意のアミノ酸は、アザ−アミノ酸又はβ−アザ−アミノ酸の場合もある。
【0031】
「F(X)」は、フェニル基が1つ以上のハロゲン原子、好ましくはフッ素で置換されたフェニルアラニンであり、好ましいF(X)は、以下の式:
【化3】
で表される。
【0032】
「S(OAlk)」は、1〜20個の炭素原子を有するヒドロキシル基が直鎖又は分岐鎖アルキル基(即ちAlk)、好ましくはオクタノイル又はドデカノイル基で置換されたセリンを意味する。本願において、S(O−C8−ポリエチレン)又はS(O−C8)は、ヒドロキシル基がオクタノイル基で置換されたセリンを意味する。
【0033】
「C−[リンカー]−」はCys−[NH−(CH2)n−CO]−を意味し、ここでnは1〜20、好ましくは4〜15の整数であり、6,8又は12が特に好ましい。本願において、「C−(C6−ポリエチレン)」又は「C[PEO]」はCys−[NH−(CH2)6−CO]−を意味し;「C−(C8−ポリエチレン)」又は「C[PE8]」はCys−[NH−(CH2)8−CO]−を意味し;そして「C−(C12−ポリエチレン)」又はC[PE12]」はCys−[NH−(CH2)12−CO]−を意味する。
【0034】
「Y−[リンカー]−」はTyr−[NH−(CH2)n−CO]−を意味し、ここでn’は1〜20、好ましくは4〜15の整数であり、6,8又は12が特に好ましい。本願において、本願において、「Y−(C6−ポリエチレン)」又は「Y[PEo]」はTyr−[NH−(CH2)6−CO]−を意味し;「Y−(C8−ポリエチレン)」又は「Y[PE8]」はTyr−[NH−(CH2)8−CO]−を意味し;そして「Y−(C12−ポリエチレン)」又は「Y[PE12]」はTyr−[NH−(CH2)12−CO]−を意味する。
【0035】
本発明のペプチド誘導体の特定のペプチダーゼに対する「阻害能力」は、Ki値又はIC50値のいずれかの測定等により、当業者により容易に評価され得る。特に、IC50値が測定される場合、所定の実験条件下(同一の緩衝剤、同一のペプチダーゼ及び基質濃度)、所定のペプチダーゼに対する、2つの改変オピオルフィンペプチドの相対的な阻害能力は、各改変オピオルフィンペプチドのIC50値を測定し、そして該改変オピオルフィンペプチドのIC50値と、同一の実験条件下でのオピオルフィンのIC50値とを比較することにより比較され得る。
【0036】
本発明は、ペプチド誘導体であり、式(I):
ζ−AA1−AA2−AA3−AA4−AA5−OH (I)
[式中、
ζは、水素原子、チロシン、Y−[リンカー]−又はZnキレート基、例えばシステイン、C−[リンカー]−、N−アセチル−システイン、N−メルカプトアセチル(HS−CH2−CO−)、ヒドロキサム酸(HO−NH−CO−)、又は任意で置換されるヒドロキシキノリンであり、
AA1は、Q又はGlpであり、
AA2は、K、R又はH、好ましくはRであり、
AA3は、Y、G、N、F又はF(X)、好ましくはF又はF(X)であり、
AA4は、P、S又はS(OAlk)、好ましくはS又はS(OAlk)であり、
AA5は、K又はR、好ましくはRであり、
C−[リンカー]−は、Cys−[NH−(CH2)n−CO]−を意味し、nは1〜20の整数、好ましくは6,8又は12であり、
Y−[リンカー]−は、Tyr−[NH−(CH2)n’−CO]−を意味し、n’は1〜20の整数、好ましくは6,8又は12であり、
F(X)は、フェニル基が1つ以上のハロゲン原子で置換されたフェニルアラニンを意味し、
S(OAlk)は、ヒドロキシル基がリンカー又は1〜20個の炭素原子を有する分岐アルキル基で置換されたセリンを意味し、
AA1、AA2、AA3、AA4及びAA5は、独立してL型又はD型のいずれかであり、そして任意のAA1、AA2、AA3、AA4及びAA5のいずれか1つがβアミノ酸、アザ−アミノ酸又はβ−アザ−アミノ酸であってもよい]
で表され、該ペプチド誘導体がシステインを含む場合、該ペプチド誘導体は任意でダイマーであり、但し該ペプチドは、QRFSR、QHNPR、QRGPR、YQRFSR又はGlpRFSRではない、前記ペプチド誘導体に関する。
【0037】
一般に、本発明のペプチド誘導体において、AA1、AA2、AA3、AA4、及びAA5は、独立してL型又はD型のいずれかであり、そして任意のAA1、AA2、AA3、AA4及びAA5のいずれか1つは、βアミノ酸、アザ−アミノ酸又はβ−アザ−アミノ酸である。
【0038】
一つの態様において、AA1、AA2、AA3、AA4及びAA5の1つ以上は、βアミノ酸である。他の態様において、AA1、AA2、AA3、AA4及びAA5の全てが、βアミノ酸である。
【0039】
一つの態様において、AA1、AA2、AA3、AA4及びAA5の1つ以上は、アザ−アミノ酸である。他の態様において、AA1、AA2、AA3、AA4及びAA5の全てが、アザ−アミノ酸である。
【0040】
一つの態様において、AA1、AA2、AA3、AA4及びAA5の1つ以上は、β−アザ−アミノ酸である。他の態様において、AA1、AA2、AA3、AA4及びAA5の全てが、β−アザ−アミノ酸である。
【0041】
一つの態様において、前記ペプチド誘導体はシステインを含み、そしてダイマーであり、ここで2つのシステインの2つの硫黄原子がジスルフィド結合で結合している。例えば、[CQRFSR]2は、ペプチド誘導体CQRFSRのダイマーで、システインアミノ酸がジスルフィド結合で結合している。
【0042】
好ましい態様において、がヒドロキシキノリンであるとき、ペプチド誘導体は、以下の式で表される:
【化4】
【0043】
式(I)のペプチド誘導体は、中性エンドペプチダーゼNEP及び/又はアミノペプチダーゼAP−Nに対する阻害能力に優れる改変オピオルフィンペプチドである。
【0044】
式(I)の好ましいペプチド誘導体は:
CQRFSR、
QRF(X)SR、
QRGPR、
QHNPR、
QRFPR、
QRFS(OAlk)R、好ましくはQRFS(O−オクタノイル)R、
C−[リンカー]−QRFSR、好ましくはC−[NH−(CH2)6−CO]−QRFSR、C−[NH−(CH2)8−CO]−QRFSR、又はC−[NH−(CH2)12−CO]−QRFSR、
QRYSR、
QKFSR、
QRFSK、
C−[リンカー]−QRFSR、好ましくはC−[NH−(CH2)6−CO]−QRFSR、C−[NH−(CH2)8−CO]−QRFSR、又はC−[NH−(CH2)12−CO]−QRFSR、
[CQRFSR]2、
C−[NH−(CH2)6−CO]−QRFS(OAlk)R、好ましくはC−[NH−(CH2)6−CO]−QRFS(O−オクタノイル)R及びY−[NH−(CH2)12−CO]−QRFSR
である。
【0045】
一つの態様において、本発明は、ペプチド誘導体であり、式(II):
ζa−Q−AAa2−AAa3−P−R−OH (II)
[式中、
ζaは、水素原子、又はZnキレート基、例えばシステイン、C−[リンカー]−、N−アセチル−システイン、N−メルカプトアセチル(HS−CH2−CO−)、ヒドロキサム酸(HO−NH−CO−)、又は任意で置換されるヒドロキシキノリンであり、
AAa2はR又はH、好ましくはRであり、
AAa3はG、N、F又はF(X)、好ましくはFであり、
好ましくは、Q、AA2、AA3、P、及びRは、独立してL型又はD型のいずれかであり、そして任意のQ、AA2、AA3、P、及びRのいずれか1つがβアミノ酸、アザ−アミノ酸又はβ−アザ−アミノ酸であってもよい]
で表され、該ペプチド誘導体がシステインを含む場合、該ペプチド誘導体は任意でダイマーであり、但し該ペプチドは、QHNPR又はQRGPRではない、前記ペプチド誘導体に関する。
【0046】
前記式(II)のペプチド誘導体は、改変オピオルフィンペプチドであり、そしてヒトAP−N阻害因子であるのが有利である。特に、該ペプチド誘導体は、AP−Nに対する阻害能力が、NEPエンドペプチダーゼ及び/又はカルボキシジペプチダーゼ活性に対する阻害能力よりも強い(好ましくは10倍、8倍又は10倍)。
【0047】
好ましい式(II)のペプチド誘導体は、
QRGPR、
QHNPR、及び
QRFPR
である。
【0048】
一つの態様において、本発明は、ペプチド誘導体であり、式(III)
ζn−AA1−AAn2−AAn3−AAn4−AAn5−OH (III)
[式中、
ζnは、水素原子、チロシン又はY−[リンカー]−であり、
AA1は、Q又はGlp、好ましくはQであり、
AAn2は、K又はR、好ましくはRであり、
AAn3は、Y、F又はF(X)、好ましくはF又はF(X)であり、
AAa4は、S又はS(OAlk)であり、
AAn5はK又はR、好ましくはRであり、
該AA1、AA2、AA3、AA4、及びAA5は、独立してL型又はD型のいずれかであり、そして任意のAA1、AA2、AA3、AA4、及びAA5のいずれか1つがβアミノ酸、アザ−アミノ酸又はβ−アザ−アミノ酸であってもよい]
で表され、但し該ペプチドがQRFSR、QHNPR、YQRFSR又はGlpRFSRではない、前記ペプチド誘導体に関する。
【0049】
前記式(III)のペプチド誘導体は、改変オピオルフィンペプチドであり、そしてヒトNEP阻害因子であるのが有利である。特に、該ペプチド誘導体は、NEPエンドペプチダーゼ及び/又はカルボキシジペプチダーゼ活性に対する阻害能力が、AP−Nに対する阻害能力よりも強い(好ましくは10倍、8倍又は10倍)。
【0050】
一つの態様において、本発明は、ペプチド誘導体であり、式(IIIa):
AA1−R−AAn3−S(OAlk)−AAn5−OH (IIIa)
[式中、
AA1はQ又はGlpであり、
AAn3はF又はF(X)であり、
AAn5はK又はR、好ましくはRである]
で表され、但し該ペプチドがQRFSR、QHNPR、YQRFSR又はGlpRFSRではない、前記ペプチド誘導体に関する。
【0051】
式(III)又は(IIIa)で表される好ましいペプチド誘導体は:
QRYSR、
QRF(X)SR、
QKFSR、
QRFSK、
QRFS(OAlk)R、好ましくはQRFS(O−オクタノイル)R、及び
Y−[NH−(CH2)12−CO]−QRFSR
である。
【0052】
一つの態様において、本発明は、ペプチド誘導体であり、式(IV):
ζm−Q−R−AAm3−AAm4−R−OH (IV)
[式中、
ζmは、水素原子、又はZnキレート基、例えばシステイン、C−[リンカー]−、N−アセチル−システイン、N−メルカプトアセチル(HS−CH2−CO−)、ヒドロキサム酸(HO−NH−CO−)、又は任意で置換されるヒドロキシキノリンであり、
AAn3は、F又はF(X)、好ましくはF(X)であり、
AAm4は、S又はS(OAlk)、好ましくはS又はS(OAlk)であり、
該Q、R、AA3、AA4、及びRは、独立してL型又はD型のいずれかであり、そして任意のQ、R、AA3、AA4、及びRのいずれか1つがβアミノ酸、アザ−アミノ酸又はβ−アザ−アミノ酸であってもよい]
で表され、該ペプチド誘導体がシステインを含む場合、該ペプチド誘導体は任意でダイマーであり、但し該ペプチドは、QRFSR又はYQRFSRではない、前記ペプチド誘導体に関する。
【0053】
前記式(IV)のペプチド誘導体は、ヒトNEP及び/又はヒトAP−Nに対する二機能性阻害因子であるのが有利な改変オピオルフィンペプチドであり、ヒトNEP及びヒトAP−Nの両方に対して顕著な阻害能力を示す。
【0054】
式(IV)の好ましいペプチド誘導体は:
CQRFSR、
[CQRFSR]2、
C−(−HN−(CH2)12−CO−)−QRFSR;
C−(−HN−(CH2)6−CO−)−QRFSR;
C−[リンカー]−QRF−S(O−オクタノイル)−R、好ましくはC−(−HN−(CH2)6−CO−)−QRF−S(O−オクタノイル)−R、C−(−HN−(CH2)8−CO−)−QRF−S(O−オクタノイル)−R又はC−(−HN−(CH2)12−CO−)−QRF−S(O−オクタノイル)−R;
QRF(X)SR並びに
QRFS(OAlk)R、好ましくはQRFS(O−オクタノイル)R
である。
【0055】
好ましくは、本発明のペプチド誘導体は、改変オピオルフィン誘導体であり、中性エンドペプチダーゼNEP及び/又はアミノペプチダーゼAP−Nに対する阻害能力を有する。最も好ましくは、本発明の改変オピオルフィンペプチドは、エンドペプチダーゼNEP及びアミノペプチダーゼAP−Nに対する阻害能力を有する。
【0056】
本発明のペプチド誘導体は、組み込まれるべき異なるアミノ酸残基の連続的な結合により、液相又は固相中での既知のペプチド合成手段により調製され得て(液相中ではN末端からC末端へ、又は固相中ではC末端からN末端へ合成される)、該N末端及び反応性側鎖は、既知の基により予めブロックされている。
【0057】
固相合成において、Merrifieldにより記載された技術が特に使用され得る。あるいは、1974年にHoubenweylにより記載された技術も使用され得る。
【0058】
本発明のペプチド誘導体は、遺伝子組換え手段を使用して得ることもあるが、但し、得られたペプチド誘導体は、天然のアミノ酸のみで構成されることとなる。
【0059】
前記オピオルフィンペプチドに対する改変として、ケミカル(例えば追加の化学部分、メチル、ポリエチレンC2、C4、C6、C8、C10、C12及びそれらのポリエチレングリコール、並びに/又はグリコシル化形態等を付加する)、及びペプチド模倣体(peptidomimetics)(例えば構造及び/又は機能においてペプチドを模倣する態分子量化合物(例えばAbell. Advances in Amino Acid Mimetics and Peptidomimetics, London: JAI Press (1997);Gante, Peptidmimetica − massgeschneiderte Enzyminhibitoren Angew. Chem. 106: 1780−1802 (1994);及びOlson et al.. J. Med. Chem. 36: 3039−3049 (1993)等を参照されたい))が挙げられる。
【0060】
本発明のペプチド誘導体に導入され得る他の改変として、Lアミノ酸に代えての非天然アミノ酸、Dアミノ酸、β2アミノ酸、β3アミノ酸、アザアミノ酸、又はβ−アザアミノ酸の使用、立体構造的拘束(conformational restraint)、等価性変形(isosteric replacement)、環化、又は他の改変が挙げられる。他の例として、1つ以上のアミド結合が非アミノ結合に置き換えられること、並びに/又は1つ以上のアミノ酸側鎖が異なる化学部分に置き換えられること、又は1つ以上のN末端、C末端若しくは1つ以上の側鎖が保護基により保護されること、並びに/又は二重結合及び/若しくは環化及び/若しくは立体特異性(stereospecificity)がアミノ酸鎖中に導入されることにより剛性(rigidity)及び/若しくは結合親和性を増大させることを含む。
【0061】
本発明のペプチド誘導体の標的となるメタロエクトペプチダーゼの結合ドメインの結晶構造に基づき、コンピューターを利用したドラッグデザイン開発により、模倣体を得ることも出来る(Oefner et al. J. Mol. Biol. (2000)296(2):341−9; Gomeni et al. Eur. J. Pharm. Sci. (2001) 13(3):261−70; Kan, Curr Top Med Chem (2002), 2(3):247−69)。
【0062】
更なる他の改変として、以下のものが挙げられる。
【0063】
脂肪族アルコールとのエステル化による(COOH)、又はアミド化によりによる、及び/又はアセチル化による(NH2)、又はNH2末端にカルボキシアルキル若しくは芳香族疎水鎖を付加することによる、NH2及びCOOH親水基の保護。
【0064】
CO−NHアミド結合のレトロインバーション(retroinversion)異性体、又はアミド基のメチル化(又はケトメチレン、メチレンオキシ、ヒドロキシエチレン)。
【0065】
2つのアミノ酸間への−[HN−(CH2)n−CO−]−部分の挿入。Nは1〜20の整数で、好ましくは6、8又は12である。
【0066】
上記で定義した天然アミノ酸を含むペプチド誘導体を含むペプチドをコードするDNA又はRNA等の核酸あるいはポリヌクレオチドも本発明の一部であるが、遺伝情報の退化(degeneration)も考慮される。好ましくは、該核酸は、天然アミノ酸からなるペプチド誘導体をコードする配列を含む。
【0067】
本発明の核酸として、上記配列のいずれか又はそれらの相補配列と、高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件、即ち0.2xSSC中68℃、50%ホルムアミド、4xSSC中42℃、又はこれらの2つの条件のいずれかにおいて観察されるのと同レベルのハイブリダイゼーションを可能とするハイブリダイゼーション及び/又は洗浄条件下でハイブリダイズする配列が挙げられる。
【0068】
更に、本発明は、本発明の核酸配列を含むクローニング及び/又は発現ベクター、並びに前記核酸又は該ベクターを含む宿主細胞、即ちこれらのベクターの1つ以上が導入された宿主細胞に関する。本発明の発現ベクターは、本発明のペプチド誘導体を含むペプチド、又はタンパク質をコードする核酸配列を含み、該核酸配列は、その発現を可能とするエレメントと操作可能な形で連結している。該ベクターは、プロモーター配列、転写開始及び終結シグナル、及び転写制御に適切な領域を含むのが有利である。宿主細胞への導入は、トランジエントであってもステーブルであってもよい。また、前記ベクターは、転写したタンパク質を分泌するための特異的なシグナルを含み得る。
【0069】
宿主細胞は、原核細胞でも真核細胞でもよく、限定されないが、細菌、酵母、植物細胞、昆虫細胞、哺乳類細胞であってもよく、市販の細胞株であってもよい。宿主細胞の好ましい例として、COS−I、HEK細胞、293細胞、又はCHO細胞が挙げられる。
【0070】
更に、本発明は、本明細書中に記載の改変オピオルフィンに指向する(即ち特異的に認識する)、モノクローナル若しくはポリクローナル抗体、又はそれらのフラグメントを提供する。そのような抗体は、例えば、本発明のペプチド誘導体の薬物動態的特性の研究等に有用であり得る。
【0071】
様々な文法形式の「抗体」という用語は、本明細書中で、イムノグロブリン分子、及びイムノグロブリン分子の免疫的に活性な部分、即ち、抗体結合部位あるいはパラトープを含む分子を指す。抗体分子の例として、無傷のイムノグロブリン分子、実質的に無傷のイムノグロブリン分子、並びにイムノグロブリン分子の部分、例えば当該技術分野でFab、Fab’、F(ab’)2及びF(v)として知られる部分等が挙げられる。
【0072】
ポリクローナル抗体を樹立する手順も、周知である。典型的には、そのような抗体は、免疫前血清(pre−immune serum)を得るために最初に出血させられたニュージーランド白ウサギに、本発明のコンジュゲートペプチド誘導体等のペプチド誘導体を皮下投与して樹立し得る。該抗原は、部位あたり合計50μlの体積で、10箇所又は5箇所以上注入され得る。前記ウサギは、最初の注入から5週間後に出血させられ、そして、6週間ごとに3回、免疫応答の程度に依存して、最初の注入に対して最大で5分の1の濃度の同一の抗原を皮下注射することで、定期的にブーストさせられる。各ブーストの10日後、血清の試料を回収する。抗体を捕捉するための対応する抗原を使用したアフィニティークロマトグラフィーにより、血清からポリクローナル抗体を回収する。ポリクローナル抗体を樹立するためのこの及び他の手法は、E. Harlow, et. al., editors, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New York (1988)に記載されている。
【0073】
様々な文法形式の「モノクローナル抗体」という用語は、特定のエピトープと免疫反応することが可能な1種類の抗体結合部位のみを有する抗体分子の集団を指す。故に、典型的には、モノクローナル抗体は、免疫応答する任意のエピトープとの単一の結合親和性を示す。故に、モノクローナル抗体は、複数の抗体結合部位を有し、それぞれが異なるエピトープに対して免疫特異的である、二機能性モノクローナル抗体等の抗体分子であってもよい。
【0074】
モノクローナル抗体を調製する実験室的方法は、当該技術分野で周知である(例えばHarlow et al., (上掲)を参照されたい)。モノクローナル抗体(Mbs)は、コンジュゲートペプチド誘導体等の本発明のペプチド誘導体に対して免疫化した哺乳類、例えばマウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ヒト等により調製され得る。該免疫化哺乳類中の抗体産生細胞を単離し、そしてミエローマ又はヘテロミエローマ細胞と融合して、ハイブリッド細胞(ハイブリドーマ)を生産する。モノクローナル抗体を産生する該ハイブリドーマ細胞を、所望のモノクローナル抗体の供給源として使用する。
【0075】
Mabはハイブリドーマの培養により生産できるが、本発明はこれに限定されない。ハイブリドーマからクローニングした核酸を発現することにより生産されたMabの使用も意図される。即ち、ハイブリドーマにより分泌される分子を発現する核酸を他の細胞株に導入して、形質転換体を作製するのである。該形質転換体は、元のハイブリドーマとは遺伝型か異なるが、該ハイブリドーマにより分泌される抗体分子に対応する、本発明の抗体分子(全抗体分子の免疫活性フラグメントを含む)の生産は同様に可能である。加えて、本明細書は、キメラ抗体、ヒト化抗体、単一鎖抗体、及びそれらに類する免疫応答性抗体フラグメントを形成する方法を提供する。これらは全て、抗体のクラス及び特異性が開示され、そして請求されている限りは、当業者が構築し得る正確な変異体の構造にかかわらず、本発明の範囲内である。
【0076】
前記改変オピオルフィンペプチドは、医薬として許容される担体と組み合わせて、医薬組成物として製剤化され得る。例えば、医薬組成物は局所、経口、舌下、非経口、鼻内、静脈内、筋肉内、皮下、経皮又は眼球内投与等に適したものであり得る。
【0077】
上記改変オピオルフィンペプチドは、疾患又は障害に処置に有用であり、ここでは膜メタロエクトペプチダーゼ、更に具体的には、膜亜鉛メタロペプチダーゼ、NEP及びAP−N等の活性の調整が想定される。
【0078】
天然のNEPの基質は、主にペプチドホルモン:中枢及び末梢の疼痛知覚、炎症現象、無機イオン交換及び/又は動脈緊張の調節に中心的な役割を果たす、エンケファリン、物質P、ブラジキニン、アンジオテンシンII及び心房性ナトリウム利尿ペプチドである(Roques et al., Pharmacol Rev. 1993;45(1):87−146)。
【0079】
より具体的には、中性エンドペプチダーゼ、NEP24−11は、哺乳類の神経及び末梢組織の両方に分布し、末梢においては、特に肝臓及び胎盤に豊富である。これらの組織において、細胞表面メタロペプチダーゼNEPは、神経ペプチド、全身性免疫制御ペプチド及びペプチドホルモンの分泌後プロセシング及び代謝に関与する。循環し、又は分泌される制御ペプチドの活性レベルを調節することにより、NEPは、それらの生理的な受容体誘導性の活性を調整する。故に、膜結合NEPは:強力な血管作動性ペプチド、例えば物質P、ブラジキニン(BK)、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)及びアンジオテンシンII(AII);強力な炎症/免疫ペプチド、例えば物質P及びBK及びfMet−Leu−Phe(fMLP);強力なオピオイド神経ペプチド、例えばMet及びLeu−エンケファリン(Enk)並びに強力な無機イオン交換及び体液ホメオスタシス制御ペプチド、例えばANP、C型ナトリウム利尿ペプチド(CNP)並びにB型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)等の活性の制御に関与する。
【0080】
総合的な観点から、NEPの生物的活性は、疼痛の処理の調節の他に、動脈緊張制御、炎症現象、情動状態及び水−電解質ホメオスタシスに関与する、ペプチド作動性シグナルの活性レベルの調節である。臨床的な観点から、これは、NEPが様々な疾患状態の重要な薬物標的であることを実証する。例えば、NEP及びAPNを阻害することにより、中枢又は末梢の内性的オピオイドのレベルの増大及び活性の遅延、鎮痛作用、又は抗鬱若しくは神経刺激作用等が得られる。NEP及び/又はAP−N阻害因子の使用により内在性制御ペプチドの濃度を変化させることの主要な利点は、薬理作用が、本来のリガンドにより活性化される受容体部位のみで誘導されること、そして特定の環境、行動及び生理病理学的ストレスのある状況で起る、緊張又は刺激作動性のそれらの放出に大いに依存することである(Roques et al, 1993)。
【0081】
哺乳類膜メタロペプチダーゼのNEP以外の例として、NEP2、ECE(エンドセリン変換酵素)、特にECE1及びECE2、赤血球表面抗原KELL及びX連鎖低リン血症性くる病に関与するPEX遺伝子産物及びAP−N(アミノペプチダーゼN)等が挙げられる。
【0082】
NEP2は、神経系及び生殖組織に特異的に分布している。
【0083】
AP−Nは、広範な種類のヒトの器官、組織及び細胞(内皮、上皮、線維芽細胞、白血球)に存在する偏在的酵素であり、特に腎臓及び中枢神経系において豊富である。同定された基質として、アンジオテンシンIII(AngIII);エンケファリン及びエンドルフィン等の神経ペプチド;並びにカリダン(kallidan)及びソマトスタチン等のホルモン等が挙げられる。AP−Nは多機能性の酵素で、癌形成、免疫系、疼痛、動脈圧等に関与する。また、AP−Nは、抗原のトリミング及び抗原提示のプロセスにも関与する。これらの機能は、生物活性ペプチドの応答を調整し(疼痛の制御、バソプレシン遊離)、そして免疫機能及び主要な生物イベント(細胞増殖、分泌、浸潤、血管形成)に影響し、故に多くの種類の疾患における処置の選択枝を提供する。
【0084】
ECEの阻害は、高血圧の治療並びに動脈硬化の予防及び処置において顕著な用途を有する。
【0085】
NEPと共にするAP−Nの阻害は、疼痛、並びに欝、不安、鎮静及び社会的−性的感情的障害の治療において顕著な用途を有する。
【0086】
関連する膜メタロペプチダーゼの阻害は、腫瘍即ち卵巣、直腸結腸、脳、肺、膵臓、消化管及び色素細胞の癌の処置、並びに転移、アテローム性動脈硬化、及び/又は高血圧の発生の低下において治療効果を有する。
【0087】
関連する膜メタロペプチダーゼの阻害は、疼痛の緩和に効果がある。そのような急性の疼痛に対する抗侵害受容作用は鎮痛に効果があるが、関節炎又は炎症性大腸疾患、手術後創傷、及び癌及び/又は癌治療に関連する又は関連しない神経性の激痛等の、慢性の炎症性疼痛にも効果がある。
【0088】
更に、細菌又はウイルスメタロペプチダーゼの阻害は、抗感染効果を有することが期待される。
【0089】
メタロペプチダーゼは、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)、シュードモナス・アエルギノサ(Pseudomonas aeruginosa)、ポルフィロモナス・ギンギワリス(Porphyromonas gingivalis)、及びレギオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)等の病原体の宿主組織への侵入、並びに免疫的及び炎症プロセスにおいて重要な役割を果たす。
【0090】
更に、細菌メタロペプチダーゼ、特に亜鉛メタロペプチダーゼは、B.アンスラキス(B. anthracis)の毒素等のタンパク質溶解毒素、並びにC.テタヌム(C. tetanum)及びボツリヌム(botulinum)の神経毒素により引き起こされる疾患において重要な役割を果たす。
【0091】
他のメタロペプチダーゼも、例えばHIVにより引き起こされる感染等、様々な感染において重要な役割を果たす(FR 2 707 169)。
【0092】
細菌又はウイルスによる疾患の処置におけるプロテイナーゼ阻害因子の重要性は、J. Potempa及びJ. Travisにより見出されている。
【0093】
メタロペプチダーゼの様々な機能は、Turner et al, 2001; Kenny et al, 1977 ; Kenny et al, 1987 ; Beaumont et al, 1996に開示されている。
【0094】
本発明の1つの目的は、末梢、脊髄及び/又は脊柱上のNEP及びAP−Nを阻害することにより、中枢又は末梢の内在性オピオイド(エンケファリンであり得る)のレベルを増大し、及び活性を持続させるように働く改変オピオルフィンペプチドを用いる、鎮痛又は抗鬱治療を提供することである。
【0095】
疼痛、特に急性及び慢性の疼痛、内臓の(visceral)炎症性及び神経性の疼痛の治療が意図される。
【0096】
また、任意の水−電解質のインバランスの治療も、本発明の目的である。標的となる障害として、水−電解質のインバランスにより引き起こされる、骨、歯、腎臓、副甲状腺、膵臓、精巣、胃粘膜、前立腺及び唾液腺の障害等が挙げられる。
【0097】
特に、前記障害は、副甲状腺亢進症若しくは低下症、骨粗鬆症、膵炎、顎下腺結石症、腎石症及び骨形成異常症(osteodystrophy)から選択され得る。
【0098】
対人障害及び行動障害の治療も、更に想定される。WO02/051434に、様々な精神障害が記載されている。
【0099】
特に、本発明は、忌避障害(avoidance disorder)、認知低下障害(decreased awareness disorder)、自閉性障害、注意欠陥多動性障害、覚醒障害、ホスピタリズム(hospitalism)、対人機能(interpersonal functioning)及び外界との交流(relationship to the external world)の障害、分裂病質人格障害、統合失調症、抑鬱障害、周囲への関心の低下(decreased interest in environment)、並びに不時の射精(untimely ejaculation)、多淫症及び勃起不全等のセクシャリティと関連する社会活動の障害からなる群から選択される任意の障害に対して利用される。
【0100】
また、本発明は、本発明のペプチド又はペプチド誘導体の、精神刺激剤(psychostimulating agent)としての使用にも関する。故に、ナルコレプシー、睡眠過剰、脅迫神経障害(obsessional compulsive trouble)、情動障害、例えば抑鬱障害若しくは主要抑鬱障害(major depressive disorder)、主要抑鬱障害単一エピソード(major depressive disorder single episode)若しくは再発性主要抑鬱障害(major depressive disorder recurrent)、I型若しくはII型双極性障害、気分変調性障害、並びに気分循環性障害の予防又は処置に利用される。
【0101】
また、膜メタロペプチダーゼの変調が想定される疾患として、高血圧、アテローム性動脈硬化、腫瘍、炎症性関節炎及び腸疾患等が挙げられる。
【0102】
感染の治療も包含される。特に、細菌又はウイルス疾患の処置におけるプロテイナーゼの重要性は、J. Potempa及びTravisが言及している。
【0103】
上記改変オピオルフィンペプチダーゼは、免疫−炎症応答の調節にも有用である。
【0104】
上記で定義した改変オピオルフィンペプチダーゼは、ナトリウム利尿剤又は利尿剤としても有用である。
【0105】
故に、本発明は、上記で定義したペプチド誘導体の、疼痛、抑鬱障害、セクシャリティと関連する社会活動の障害、及び性行動の障害からなる群から選択される疾患又は障害の処置における使用を提供する点で有利である。
【0106】
本発明の他の目的は、上記ペプチド誘導体又は核酸の、薬物乱用、特にモルヒネの薬物乱用の治療における代替物(substitute)としての使用である。
【0107】
実際に、研究によると、薬物乱用及び報酬の発達(development of reward)及び薬物依存性に対する脆弱性は、少なくとも部分的に、内在性のオピオイド系の、既存の又は誘導された改変及び/又は欠損に基づく。この関連で、内在性のオピオルフィンの効果を強化するための改変オピオルフィンペプチド又は核酸の使用は、慢性的なモルヒネ又はヘロインの投与の中断によって引き起こされる様々な副作用(離脱の身体的兆候)を減少させ得る。
【0108】
本発明のペプチド誘導体を用いて処置され得る好ましい疾患若しくは症状として、疼痛、抑鬱障害、セクシャリティと関連する社会活動の障害、及び性行動の障害等が挙げられる。
【0109】
更に、本発明は、内在性のBPLPタンパク質若しくは成熟生産物、例えば天然オピオルフィンQRFSRと、膜メタロペプチダーゼとの間の相互作用を調整する薬剤の使用による、疾患の予防又は処置用の治療組成物の調製に関し、ここで、該膜メタロペプチダーゼの活性の調整が想定される。
【0110】
本発明は、BPLPタンパク質又はQRFSRペプチドにおけるNEP及び/又はAPN結合部位に対する結合能力で、化合物をスクリーニングするインビトロでの方法を提供する。この方法の詳細は、例えば2006年9月15日に出願された米国特許出願第10/593,071号等に記載され、またWO 2005/090386として、その他にも国際特許出願PCT/EP2009/050567にも記載され、それらの内容は、本明細書中に参照により援用される。
【0111】
本発明の他の目的は、BPLPタンパク質又はその成熟生産物(又はBPLPタンパク質又はその成熟生産物の結合特異性又は生理活性を保持するペプチド)のNEP及び/又はAP−N結合部位に特異的に結合する改変オピオルフィンペプチドの相対的親和性を判定するプロセスであり、例えば2006年9月15日に出願された米国出願第10/593,071号等に記載されており、それらの内容は、本明細書中に参照により援用される。
【実施例】
【0112】
実施例1:生化学アッセイの方法
【0113】
特定の基質の加水分解のリアルタイム蛍光モニタリングを使用する各アッセイのために、形式的な動態解析を行った。
【0114】
蛍光測定用の96ウェルにおいて、ヒトNEP及びヒトAP−N酵素活性の解析を可能とする全てのパラメーターを、初期速度の測定の条件下で規定した。
【0115】
1−ヒトエクトペプチダーゼ、hNEP、及びhAP−Nの供給源
【0116】
ペプチダーゼの純粋な供給源として、R&D Systemsから購入した、組換えヒトNEP及び組換えヒトAP−N(それぞれN末端の細胞質セグメント及び膜貫通セグメントを欠く)を使用した。
【0117】
2−基質及び合成阻害因子
【0118】
インビトロで、以下の合成選択基質の分解を測定することにより、アミノ、カルボキシジ、及びエンドペプチダーゼの活性を試験した。
【0119】
NEP−エンドペプチダーゼ活性に特異的な、内部的に消光した蛍光基質である−Abz−dR−G−L−EDDnp FRET−ペプチドは、Thermo−Fisher Scientific (Germany)により合成された。
【0120】
NEP−カルボキシジペプチダーゼ活性に特異的な、内部的に消光した蛍光基質である−Abz−R−G−F−K−DnpOH FRET−ペプチドは、Thermo−Fisher Scientific (Germany)により合成された。
【0121】
分子内部的に消光した、構造的にブラジキニンに関連している蛍光発生ペプチドである− Mca−R−P−P−G−F−S−A−F−K−(Dnp)−OH FRET−ペプチドは、NEP及びECE活性を測定するための選択的基質であり、R&D Systemsから購入した。
【0122】
FRETは、供与蛍光粒子(Abz=オルト−アミノベンゾイル又はMca=7−メトキシクマリン−4−イル−アセチル)から受容蛍光粒子(DnpOH=2,4−ジニトロフェニル又はEDDnp=2,4−ジニトロフェニルエチレンジアミン)への、距離依存的なエネルギーの移動である。
【0123】
−L−アラニン−Mca、Ala−Mca、アミノペプチダーゼ活性を測定するための蛍光発生基質は、Sigmaから購入した。
【0124】
様々な利用可能な選択的合成ペプチダーゼ阻害因子の存在下及び非存在下での、可溶性エクトペプチダーゼによるこれらの基質の加水分解速度を測定して、各酵素アッセイの特異性を評価した:−チオルファン(NEP阻害因子)(Bachem)、−ベスタチン(AP阻害因子)(Calbiochem)。
【0125】
3−96ウェル蛍光アッセイを使用した、ペプチダーゼ活性の測定
【0126】
各アッセイのインキュベーションの時間、pH及び温度、並びに酵素及び基質濃度は、初期速度の測定の条件に従った。試験阻害化合物の存在下及び非存在下(1〜50μMの濃度範囲)での、2つのペプチダーゼによる器質の加水分解を、代謝速度をリアルタイムでモニタリングすることにより測定した。これらは、予めインキュベートしておいた培地に添加された。酵素の非存在下で得られる蛍光シグナルを表す基質の自然分解のバックグラウンド速度を差し引いて、初期速度をRFU(相対蛍光単位)/分で計算した。
【0127】
FRET特異的ペプチド基質Abz−dR−G−L−EDDnpを用いたNEP−エンドペプチダーゼ活性の測定
ブラックハーフエリア96ウェルマイクロプレートを使用して、200mMのNaClを含む100mM Tris−HCl pH7(最終体積100μl)中での酵素(12.5ng)を標準反応とした。10分間28℃でプレインキュベーションした後、基質(15μM最終濃度)を添加し、40分間28℃で(2.3分間隔の連続測定)、励起及び放出の波長がそれぞれ320nm及び420nmの蛍光測定マイクロプレートリーダー(monochromator Infinite 200−Tecan)を使用して、蛍光シグナル(RFU)の出現の動態を、直接解析した。
【0128】
初期速度の測定の条件下で、シグナルの強度は、反応時間20〜40分の間、形成された代謝物の量に正比例していた。故に、阻害因子非存在下では、rhNEPに誘導されたAbz−dR−G−L−EDDnpの特異的なエンドプロテオリシスの初期速度は、8218±2878RFU/分/μg rhNEP、n=3独立測定として、線形回帰(傾き=ビヒクル存在下でのNEP活性/インキュベーション時間)から計算された。
【0129】
FRET特異的ペプチド基質Abz−R−G−F−K−DnpOHを使用するNEP−カルボキシジペプチダーゼ活性の測定
ブラックハーフエリア96ウェルマイクロプレートを使用して、50mMのNaClを含む100mM Tris−HCl pH6.5(最終体積100μl)中での酵素(2.5ng)を標準反応とした。10分間プレインキュベーションした後、基質(4μM最終濃度)を添加し、40分間28℃で(2.3分間隔の連続測定)、励起及び放出の波長がそれぞれ320nm及び420nmの蛍光測定マイクロプレートリーダーを使用して、蛍光シグナル(RFU)の出現の動態を、直接解析した。これらの初期速度の測定の条件下で、ヒトNEPに誘導されたAbz−R−G−F−K−DnpOHの特異的な加水分解は、59796±18685RFU/分/μg rhNEP、n=4独立測定で評価された。基質Abz−R−G−F−K−DnpOHを用いて試験されたNEP−カルボキシジペプチダーゼ活性は、図5〜8で「NEP−CDP1活性」と表記されている。
【0130】
加えて、分子内で消光している蛍光ペプチドのMca−BK2(10μM)を、上述と同じ実験条件下で、5ngのrhNEPにより加水分解した。これらの条件下で、hNEP酵素は、Mca−R−P−P−G−F−S−A−F−K−(Dnp)−OHに対して、主にカルボキシジペプチダーゼとして働き、A−F結合を選択的に開裂するが、エンドペプチダーゼとしてG−F結合の開裂も行う。初期速度測定の条件下で、ヒトNEPに誘導されたMca−BK2の特異的な加水分解は、121910±24755RFU/分/μg rhNEP、n=3独立測定で評価された。基質Abz−R−G−F−K−DnpOHを用いて試験されたNEP−カルボキシジペプチダーゼ活性は、図5〜8で「NEP−CDP2活性」と表記されている。
【0131】
Ala−Mca基質を使用したAP−Nエクトペプチダーゼの測定
ブラックハーフエリア96ウェルマイクロプレートを使用して、100mM Tris−HCl pH7.0(最終体積100μl)中での酵素(4ng)を標準反応とした。10分間28℃でプレインキュベーションした後、Ala−Mca基質(25μM最終濃度)を添加し、40分間28℃で、励起及び放出の波長がそれぞれ380nm及び460nmの蛍光測定リーダーを使用して、シグナルの出現の動態を直接解析した。初期速度の測定の条件下で、シグナルの強度は、反応時間10〜40分の間、形成された代謝物の量に正比例していた。これらの初期速度測定の条件下で、ヒトAP−Nに誘導されたAla−Mcaのアミノプロテオリシスは、147042±44657 RFU/分/μg rhAP−N、n=3独立測定として(傾きから:インキュベーション時間に対する阻害因子非存在下のAP−N活性)から計算された。NEPカルボキシジペプチダーゼ活性をアッセイする他のFRET−ペプチド基質は、Barros et al. Biol. Chem., 2007, 388:447−455に記載されている。
【0132】
実施例2:生化学アッセイの結果
【0133】
1−hNEP及びhAP−Nに対するオピオルフィンペプチド誘導体のスクリーニング
【0134】
化合物は、最終濃度50μMで3回試験された。
【0135】
図1〜9は、本発明の様々なペプチド誘導体を用いた場合の、NEPエンドペプチダーゼ及びカルボキシペプチダーゼの活性並びにAP−N活性に対する生化学アッセイの結果を示す。
【0136】
様々なオピオルフィンペプチド類似体について、前記2つの膜結合外酵素(ectoenzyme)、NEP(特異的エンドペプチダーゼ及びカルボキシペプチダーゼ活性)及びAPNに対する阻害能力を、選択的蛍光ベース酵素アッセイ:過去に研究室内で開発及び確認された(PCT出願PCT/出願日2009年1月18日、本願で参照により援用される)FRET−based Enzyme in Vitro Modelsを使用することにより試験した。
【0137】
以下の化合物を解析した。以下の化合物中、NH2−は、ペプチドの末端アミンを意味し、そしてCOOHは、ペプチドの末端カルボン酸を意味する。
【0138】
−NH2−QRFSR−CONH2(オピオルフィン);NH2−QRGPR−COOH;NH2−QHNPR−COOH;NH2−QR(4ブロモF)SR−COOH(即ちQRF(4Br)SR);NH2−QRFPR−COOH:これらは、ヒトAP−Nで優勢な阻害を示し、ヒトNEPにおいて弱い阻害能力を示した。
【0139】
−N−(アセチル)QRFSR−COOH;N−(C8−ポリエチレン)QRFSR−COOH;N−(ビオチン−C6−ポリエチレン)QRFSR−COOH:これらは、ヒトAP−N及びNEPにおいて弱い阻害能力を示し、NEPエンドペプチダーゼ活性が優勢であった。
【0140】
−NH2−dRdSdFdRdQ−COOH(レトロインバーションD−エナンチオマー):ヒトAP−N及びNEPにおいて顕著な阻害活性を示さず、AP−N活性が優勢であった。
【0141】
−NH2−YQRFSR−COOH;NH2−Y−(C6−ポリエチレン)QRFSR−COOH;NH2−Y−(C12−ポリエチレン)QRFSR−COOH:これらは、ヒトNEPエンドペプチダーゼ活性において優勢な阻害を示し、特にY−(C12−ポリエチレン)QRFSRが有効であった。
【0142】
−NH2−QRF[S−O−C8−ポリエチレン]R−COOH;NH2−CQRFSR−COOH:これらは、ヒトNEP(特異的エンドペプチダーゼ及びカルボキシジペプチダーゼ活性)及びAP−Nの強力な二機能性阻害因子であった。
【0143】
他の改変オピオルフィンペプチドとして、以下のものが挙げられる。
【0144】
NH2−CQRF[S−O−C8−ポリエチレン]R−COOH;
【0145】
NH2−CQRF[S−O−C12−ポリエチレン]R−COOH
【0146】
NH2−C−(C8−ポリエチレン)QRFSR−COOH
【0147】
NH2−C−(C12−ポリエチレン)QRFSR−COOH
【0148】
NH2−C−(C8−ポリエチレン)QRF[S−O−C8−ポリエチレン]R−COOH
【0149】
NH2−[CΒ2]QRF[S−O−C8−ポリエチレン]R−COOH
【0150】
NH2−C−(C8−ポリエチレン)QRFS[Β3R]−COOH
【0151】
NH2−C[dQ]RF[S−O−C8−ポリエチレン][dR]−COOH
【0152】
NH2−C−(C8−ポリエチレン)QRFS[dR]
【0153】
NH2−[dC]QRF[S−O−C8−ポリエチレン][dR]−COOH
【0154】
NH2−[Cβ2]QRF[S−O−C8−ポリエチレン][β3R]−COOH
【0155】
ジスルフィド結合によるシステインジペプチドである、[CQRFSR]2
【0156】
2−hNEP及びhAP−Nに対する、選択的なオピオルフィンペプチド誘導体の濃度依存的な阻害
【0157】
CQRFSR−COOHペプチド(図9及び13)
【0158】
前記CQRFSR−COOHペプチドは、rhNEP−エンドペプチダーゼ活性により誘導されるAbz−dR−G−L−EDDnp開裂を、濃度依存的に阻害した:r2=0.97、n=18決定点(determination point)、7±3μMでIC50。
【0159】
CQRFSR−COOHペプチドは、rhNEP活性により誘導されるAbz−R−G−F−K−DnpOH開裂を、濃度依存的に阻害した:r2=0.99、n=18決定点、6±1μMでIC50。
【0160】
CQRFSR−COOHペプチドは、rhAP−N活性により誘導されるAla−AMC開裂を、濃度依存的に阻害した:r2=0.99、n=30決定点、0.8±0.1μMでIC50。
【0161】
CQRFSR−COOHペプチドは、rhNEP活性により誘導されるMca−R−P−P−G−F−S−A−F−K−(Dnp)−OH FRET−ペプチド(Mca−BK2)開裂を、濃度依存的に阻害した:r2=0.99、n=16決定点、17±2μMでIC50。
【0162】
故に、システインアミノ酸とのアミド結合の形成によるNH2−QRFSRペプチドのN−末端の修飾(チオール官能基は亜鉛を強力にキレートする)により、化合物(CQRFSRペプチド)のhAP−N(元のQRFSRペプチドの10倍)及びhNEP(5倍)に対する阻害能力が強化された。
【0163】
QRF[S−O−オクタノイル]Rペプチド(図10)
【0164】
QRF[S−O−C8]Rペプチドは、rhNEP−エンドペプチダーゼ活性により誘導されるAbz−dR−G−L−EDDnp開裂を、濃度依存的に阻害した:r2=0.98、n=18決定点、2.8±0.2μMでIC50。
【0165】
QRF[S−O−C8]Rペプチドは、rhNEP活性により誘導されるAbz−R−G−F−K−DnpOH開裂を、濃度依存的に阻害した:r2=0.99、n=18決定点、12±5μMでIC50。
【0166】
QRF[S−O−C8]Rペプチドは、rhAP−N活性により誘導されるAla−AMC開裂を、濃度依存的に阻害した:r2=0.99、n=20決定点、10±1μMでIC50。
【0167】
QRF[S−O−C8]Rペプチドは、rhNEP活性により誘導されるMca−R−P−P−G−F−S−A−F−K−(Dnp)−OH FRET−ペプチド(Mca−BK2)開裂を、濃度依存的に阻害した:r2=0.99、n=18決定点、14±4μMでIC50。
【0168】
Y−[アミノドデカン酸スペーサー]−QRFSRペプチド(図11及び19)
【0169】
Y(PE12)QRFSR−COOHペプチドは、rhNEP−エンドペプチダーゼ活性により誘導されるAbz−dR−G−L−EDDnp開裂を、濃度依存的に阻害した:r2=0.98、n=18決定点、10±1μMでIC50。
【0170】
Y(PE12)QRFSR−COOHペプチドは、rhNEP活性により誘導されるAbz−R−G−F−K−DnpOH開裂を、濃度依存的に阻害した:r2=0.99、n=18決定点、24±2μMでIC50。
【0171】
Y(PE12)QRFSR−COOHペプチドは、rhAP−N活性により誘導されるAla−AMC開裂を、濃度依存的に阻害した:r2=0.99、n=20決定点、122±20μMでIC50。
【0172】
Y(PE12)QRFSR−COOHペプチドは、rhNEP活性により誘導されるMca−R−P−P−G−F−S−A−F−K−(Dnp)−OH FRET−ペプチド(Mca−BK2)開裂を、濃度依存的に阻害した:r2=0.99、n=18決定点、31±2μMでIC50。よって、Y−(C12−ポリエチレン)QRFSRが、ヒトNEPエンドペプチダーゼ活性阻害において優勢であることが確認された。
【0173】
C[PE6]QRFSRペプチド(PE6=アミノヘキサン酸)(図20)
【0174】
C[PE6]QRFSR−COOHペプチドは、rhNEP−エンドペプチダーゼ活性により誘導されるAbz−dR−G−L−EDDnp開裂を、濃度依存的に阻害した:r2=0.98、n=18決定点、40±5μMでIC50。
【0175】
C[PE6]QRFSR−COOHペプチドは、rhNEP活性により誘導されるAbz−R−G−F−K−DnpOH開裂を、濃度依存的に阻害した:r2=0.99、n=18決定点、217でIC50。
【0176】
C[PE6]QRFSR−COOHペプチドは、rhAP−N活性により誘導されるAla−AMC開裂を、濃度依存的に阻害した:r2=0.99、n=20決定点、0.8±0.1μMでIC50。
【0177】
C[PE6]QRFSR−COOHペプチドは、rhNEP活性により誘導されるthe Mca−R−P−P−G−F−S−A−F−K−(Dnp)−OH FRET−ペプチド(Mca−BK2)開裂を、濃度依存的に阻害した:r2=0.99、n=18決定点、227μMでIC50。
【0178】
C−[アミノドデカン酸スペーサー]−QRFSRペプチド(図21)
【0179】
C[PE12]QRFSR−COOHペプチドは、rhNEP−エンドペプチダーゼ活性により誘導されるAbz−dR−G−L−EDDnp開裂を、濃度依存的に阻害した:r2=0.96、n=24決定点、5.7±0.5μMでIC50。
【0180】
C[PE12]QRFSR−COOHペプチドは、rhNEP活性により誘導されるAbz−R−G−F−K−DnpOH開裂を、濃度依存的に阻害した:r2=0.97、n=30決定点、19±2μMでIC50。
【0181】
C[PE12]QRFSR−COOHペプチドは、rhAP−N活性により誘導されるAla−AMC開裂を、濃度依存的に阻害した:r2=0.98、n=21決定点、0.8±0.1μMでIC50。
【0182】
C−[アミノヘキサン酸スペーサー]−QRFS[0−オクタノイル]Rペプチド(図22)
【0183】
C[PE6]QRF[S−O−オクタノイル]Rペプチドは、rhNEP−エンドペプチダーゼ活性により誘導されるAbz−dR−G−L−EDDnp開裂を、濃度依存的に阻害した:r2=0.99、n=27決定点、759±56μMでIC50。
【0184】
C[PE6]QRF[S−O−オクタノイル]Rペプチドは、rhNEP活性により誘導されるAbz−R−G−F−K−DnpOH開裂を、濃度依存的に阻害した:r2=0.99、n=27決定点、848±58μMでIC50。
【0185】
C[PE6]QRF[S−O−オクタノイル]Rペプチドは、rhAP−N活性により誘導されるAla−AMC開裂を、濃度依存的に阻害した:r2=0.99、n=24決定点、1.7±0.1μMでIC50。
【0186】
生理的なNEPの基質である物質Pを使用し、細胞膜をhNEPの供給源とする、生物学的に関連するインビトロのアッセイにおいて、C[PE6]QRF[S−O−オクタノイル]R誘導体ペプチドは、膜結合hNEPエンドペプチダーゼ活性により誘導される物質P開裂を、濃度依存的に阻害した:r2=0.95、n=13決定点、1.6±0.4μMでIC50(元のオピオルフィンペプチドの同一の試験結果の5倍以上)(図23)。
【0187】
[CQRFSR]ジペプチド([CQRFSR]2)
【0188】
[CQRFSR]ジペプチドは、rhNEPエンドペプチダーゼ活性により誘導されるAbz−dR−G−L−EDDnp開裂を、濃度依存的に阻害した:r2=0.87、n=24決定点、1.4±0.5μMでIC50。
【0189】
[CQRFSR]ジペプチドは、rhNEP活性により誘導されるAbz−R−G−F−K−DnpOH開裂を、濃度依存的に阻害した:r2=0.99、n=27決定点、3.3±0.2μMでIC50。
【0190】
[CQRFSR]ジペプチドは、rhAP−N活性により誘導されるAla−AMC開裂を、濃度依存的に阻害した:r2=0.99、n=24決定点、0.8±0.1μMでIC50。
【0191】
表1:NEP及びAP−N活性に対する様々なペプチド及びペプチド誘導体のIC50値のまとめ
【表1】
【0192】
データ全体で、NH2−QRFSRのN末端のαアミン基の、ヒトAP−Nに対するオピオルフィンの阻害能力における重要性が示された。
【0193】
実際に、元のペプチドであるオピオルフィン(QRFSR)と比較して、それをアセチル化したもの、又は環化したもの、それをオクタノイル化したもの又はビオチン化したもののhAP−Nに対する阻害能力は低下した。
【0194】
しかしながら、元のペプチドであるオピオルフィン(QRFSR)と比較して、2つの化合物:pGlu−RFSR及びC8−QRFSRは、ヒトhNEPにおける阻害能力は、それ以上とはいかないまでも、少なくとも同等であった。
【0195】
これらのデータから、更に、QRFSR−COOHペプチドの遊離カルボキシル末端の、hNEPの、特にNEPのカルボキシジペプチダーゼ活性に対する阻害能力における重要性が示され、元のペプチドであるオピオルフィン(QRFSR)と比較して、アミド化により(QRFSR−CONH2)、hNEP活性に対する阻害能力が低下することが示された。
【0196】
QRFSRペプチドのPhe残基は、hNEP及びhAP−Nペプチダーゼ活性に対するオピオルフィンの阻害能力に重要である。実際に、元のペプチドであるオピオルフィン(QRFSR)と比較して、PheをTyr残基に置換すると(QRYSR)、hAP−Nの阻害能力が6倍低下し、そしてヒトNEPに対する阻害能力が僅かに低下した。
【0197】
しかしながら、興味深いことに、Pheを4−フルオロ−Phe残基に置換すると(QR[4F]FSR)、元のペプチドであるオピオルフィン(QRFSR)と比較して、ヒトNEPに対する阻害能力が2倍低下し、そしてhAP−Nに対する阻害能力は同程度であった。逆に、Pheを(4ブロモ−Phe)残基に置換すると、ヒトNEPに対する阻害能力が低下した。
【0198】
QRFSRペプチドの中央のRFSの改変は、hNEPに対するオピオルフィンの阻害能力に影響する。元のペプチドであるオピオルフィン(QRFSR)と比較して、QRGPR、QHNPR、及びQRFPRは、ヒトAP−Nの阻害能力は同等で、ヒトNEPに対する阻害能力は低下した。
【0199】
これらの結果は、更に、QRFSRペプチドの位置2のArgのグアニジウムイオンの、hAPNに対するオピオルフィンの阻害能力における重要性を示す。元のペプチドであるオピオルフィン(QRFSR)と比較して、Arg2をLys残基のε−アミンに置換すると(QKFSR)、hAP−Nに対する阻害能力は10倍低下し、そしてヒトNEPに対する阻害能力は僅かに低下した。
【0200】
同様に、QRFSRペプチドの位置5のArg残基のグアニジウムイオンは、hAPNに対するオピオルフィンの阻害能力において重要である。元のペプチドであるオピオルフィン(QRFSR)と比較して、Arg5をLys残基のε−アミンに置換すると(QRFSK)、hAP−Nに対する阻害能力は10倍低下し、そしてヒトNEPに対する阻害能力は同等であった。
【0201】
興味深いことに、QRFSRペプチドのセリン残基のヒドロキシル基をオクタン酸でエステル化すると(QRF[オクタノイル−セリン]R)、元のペプチドであるオピオルフィン(QRFSR)と比較して、hAP−Nに対する阻害能力は同等で、そしてhNEPエンドペプチダーゼ活性及びカルボキシジペプチダーゼ活性に対する阻害能力は強化された(元のペプチドであるオピオルフィンの10倍以上の阻害能力)(図19を参照されたい)。
【0202】
実施例3:潜在的に元のペプチドを上回るインビボ生体利用可能性を示し得る、生物学的に活性な強力なオピオルフィンのペプチド模倣体の、インビトロでの同定
【0203】
1.生物学的吸収の潜在的利益:膜透過輸送(上皮及び内皮細胞膜の通過)
【0204】
ポリエチレンC6、C8、ClO又はC12スペーサー等の化学疎水性部分を付加してオピオルフィンペプチドの改変することより、膜を通じての生物学的インビボ吸収効率が増大し得る。試験された全ての化合物の中で、NH2−QRF[S−O−オクタノイル]R−COOH−NH2−Y(PE12)QRFSR−COOH(PE=[CH2]n;PE12=アミノ−ドデカン酸)は、ヒトNEP(特異的エンドペプチダーゼ及びカルボキシジペプチダーゼ活性)及びAP−N活性の強力な二機能性阻害因子であることが示された。
【0205】
2−代謝安定性の潜在的利益:システイン−ジペプチド:[CQRFSR]2
【0206】
[CQRFR]ジペプチドは、CQRFSRモノマーペプチドと比較して、hNEPエンドペプチダーゼ活性及びカルボキシジペプチダーゼ活性に対する阻害能力が2倍以上増大した。該ジペプチドの配列は、循環しているアミノペプチダーゼによる分解から、該誘導体化合物を保護すると考えられる。
【0207】
明らかに、上記教示を考慮して、本発明の様々な改変及び変法を想到することが可能である。故に、添付の請求項の範囲内で、本発明は、本明細書中に特に記載した以外の態様で実施され得ると理解され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iのペプチド誘導体:
ζ−AA1−AA2−AA3−AA4−AA5−OH (I)
[式中、
ζは、水素原子、チロシン、Y−[リンカー]−又はZnキレート基、例えばシステイン、C−[リンカー]−、N−アセチル−システイン、N−メルカプトアセチル(HS−CH2−CO−)、ヒドロキサム酸(HO−NH−CO−)、又は任意で置換されるヒドロキシキノリンであり、
AA1は、Q又はGlpであり、
AA2は、K、R又はH、好ましくはRであり、
AA3は、Y、G、N、F又はF(X)、好ましくはF又はF(X)であり、
AA4は、P、S又はS(OAlk)、好ましくはS又はS(OAlk)であり、
AA5は、K又はR、好ましくはRであり、
C−[リンカー]−は、Cys−[NH−(CH2)n−CO]−を意味し、nは1〜20の整数であり、
Y−[リンカー]−は、Tyr−[NH−(CH2)n’−CO]−を意味し、n’は1〜20の整数であり、
F(X)は、フェニル基が1つ以上のハロゲン原子で置換されたフェニルアラニンを意味し、
S(OAlk)は、ヒドロキシル基がリンカー又は1〜20個の炭素原子を有する分岐アルキル基で置換されたセリンを意味し、
AA1、AA2、AA3、AA4及びAA5は、独立してL型又はD型のいずれかであり、そして任意のAA1、AA2、AA3、AA4及びAA5のいずれか1つがβアミノ酸、アザ−アミノ酸又はβ−アザ−アミノ酸であってもよい]
であり、該ペプチド誘導体がシステインを含む場合、該ペプチド誘導体は任意でダイマーであり、但し該ペプチドは、QRFSR、QHNPR、QRGPR、YQRFSR又はGlpRFSRではない、前記ペプチド誘導体。
【請求項2】
請求項1に記載のペプチド誘導体であり、式(II):
ζa−Q−AAa2−AAa3−P−R−OH (II)
[式中、
ζaは、水素原子、又はZnキレート基、例えばシステイン、C−[リンカー]−、N−アセチル−システイン、N−メルカプトアセチル(HS−CH2−CO−)、ヒドロキサム酸(HO−NH−CO−)、又は任意で置換されるヒドロキシキノリンであり、
AAa2はR又はH、好ましくはRであり、
AAa3はG、N、F又はF(X)、好ましくはFであり、
C−[リンカー]−、F(X)及びS(OAlk)は請求項1において定義され、Q、AA2、AA3、P、及びRは、独立してL型又はD型のいずれかであり、そして任意のQ、AA2、AA3、P、及びRのいずれか1つがβアミノ酸、アザ−アミノ酸又はβ−アザ−アミノ酸であってもよい]
で表され、該ペプチド誘導体がシステインを含む場合、該ペプチド誘導体は任意でダイマーであり、但し該ペプチドは、QHNPR又はQRGPRではない、前記ペプチド誘導体。
【請求項3】
請求項1に記載のペプチド誘導体であり、式(III):
ζn−AA1−AAn2−AAn3−AAn4−AAn5−OH (III)
[式中、
ζnは、水素原子、チロシン又はY−[リンカー]−であり、
AA1は、Q又はGlp、好ましくはQであり、
AAn2は、K又はR、好ましくはRであり、
AAn3は、Y、F又はF(X)、好ましくはF又はF(X)であり、
AAa4は、S又はS(OAlk)であり、
AAn5はK又はR、好ましくはRであり、
Y−[リンカー]−、F(X)及びS(OAlk)は請求項1において定義され、AA1、AA2、AA3、AA4、及びAA5は、独立してL型又はD型のいずれかであり、そして任意のAA1、AA2、AA3、AA4、及びAA5のいずれか1つがβアミノ酸、アザ−アミノ酸又はβ−アザ−アミノ酸であってもよい]
で表され、但し該ペプチドがQRFSR、QHNPR、YQRFSR又はGlpRFSRではない、前記ペプチド誘導体。
【請求項4】
請求項1に記載のペプチド誘導体であり、式(IV):
ζm−Q−R−AAm3−AAm4−R−OH (IV)
[式中、
ζmは、水素原子、又はZnキレート基、例えばシステイン、C−[リンカー]−、N−アセチル−システイン、N−メルカプトアセチル(HS−CH2−CO−)、ヒドロキサム酸(HO−NH−CO−)、又は任意で置換されるヒドロキシキノリンであり、
AAn3は、F又はF(X)、好ましくはF(X)であり、
AAm4は、S又はS(OAlk)、好ましくはS又はS(OAlk)であり、
C−[リンカー]−、F(X)及びS(OAlk)は請求項1において定義され、Q、R、AA3、AA4、及びRは、独立してL型又はD型のいずれかであり、そして任意のQ、R、AA3、AA4、及びRのいずれか1つがβアミノ酸、アザ−アミノ酸又はβ−アザ−アミノ酸であってもよい]
で表され、該ペプチド誘導体がシステインを含む場合、該ペプチド誘導体は任意でダイマーであり、但し該ペプチドは、QRFSR又はYQRFSRではない、前記ペプチド誘導体。
【請求項5】
請求項1に記載のペプチド誘導体の内、
QRFSR−NH2;
QR−F[4Br]−SRであり、−F[4Br]−が、フェニル基のパラ位が臭素原子で置換されたフェニルアラニンであるもの;
QRFPR;
(アセチル)−QRFSR;
C−(−HN−(CH2)8−CO−)−QRFSR;
ビオチン−(−HN−(CH2)6−CO−)−QRFSR;
dR−dS−dF−dR−dQ;
Y−(−HN−(CH2)6−CO−)−QRFSR;
Y−(−HN−(CH2)12−CO−)−QRFSR;
QRF−S(O−オクタノイル)−R;
CQRFSR;
CQRF−S(O−オクタノイル)−R;
CQRF−S(O−ドデカノイル)−R;
C−(−HN−(CH2)8−CO−)−QRFSR;
C−(−HN−(CH2)12−CO−)−QRFSR;
C−(−HN−(CH2)8−CO−)−QRF−S(O−オクタノイル)−R;
[Cβ2]QRF−S(O−オクタノイル)−R;
C−(−HN−(CH2)8−CO−)−QRFS−[β3R];
C−[dQ]−RF−S(O−オクタノイル)−[dR];
C−(−HN−(CH2)8−CO−)−QRFS−[dR];
[dC]−QRF−S(O−オクタノイル)−[dR];
[Cβ2]−QRF−S(O−オクタノイル)−[β3R];
[CQRFSR]2;
QRYSR;
QR−F[4F]−SRであり、−F[4F]−が、フェニル基のパラ位が臭素原子で置換されたフェニルアラニンであるもの;
QKFSR;
QRFSK;
C−(−HN−(CH2)6−CO−)−QRFSR;
C−(−HN−(CH2)6−CO−)−QRF−S(O−オクタノイル)−R;
C(−HN−(CH2)12−CO−)QRF−S(O−オクタノイル)−R;
C−(−HN−(CH2)12−CO−)−QRFS−dR;
C−(−HN−(CH2)12−CO−)−QRF−S(O−オクタノイル)−β3R;
C−(−HN−(CH2)8−CO−)−QRF−S(O−オクタノイル)β3R;
であり、ここで:
Cβ2がH2NOCH2−SH)−CH2−CO−であり;
β3Rが−NH−CH2−C[−(CH2)3−NH−C(NH)(NH2)]−COOHであり;
−S(−O−オクタノイル)が、ヒドロキシル基がドデカノイル基で置換されたセリンを意味し;
−S(−O−ドデカノイル)が、ヒドロキシル基がドデカノイル基で置換されたセリンを意味する;
前記ペプチド誘導体。
【請求項6】
中性エンドペプチダーゼNEP及び/又はアミノペプチダーゼAP−Nに対して阻害活性を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載のペプチド誘導体。
【請求項7】
ヒトAP−Nに対して阻害活性を有する、請求項2に記載のペプチド誘導体。
【請求項8】
ヒトNEPに対して阻害活性を有する、請求項3に記載のペプチド誘導体。
【請求項9】
中性エンドペプチダーゼNEP及び/又はアミノペプチダーゼAP−Nに対する二機能性阻害因子である、請求項4に記載のペプチド誘導体。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の1つ以上のペプチド誘導体、及び医薬として許容される担体を含む組成物。
【請求項11】
処置を要する対象の疾患又は障害を処置する方法であり、膜メタロエクトペプチダーゼの活性の調節を意図して、疾患又は障害を処置するための量の、請求項1〜9のいずれか1項に記載の1つ以上のペプチド誘導体を対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項12】
前記膜メタロエクトペプチダーゼが膜−亜鉛メタロペプチダーゼである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記膜メタロペプチダーゼがNEP及び/又はAP−Nである、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
疼痛、抑鬱障害(depressive disorder)、セクシャリティと関連する社会活動の障害、及び性行動の障害からなる群から選択される疾患又は障害を処置するための、請求項11〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
膜メタロエクトペプチダーゼの活性の調節を意図して、疾患又は障害の治療において使用するための、請求項1〜9のいずれか1項に定義されるペプチド誘導体。
【請求項16】
前記膜メタロエクトペプチダーゼが膜亜鉛メタロペプチダーゼである、請求項15に記載のペプチド誘導体。
【請求項17】
前記膜メタロエクトペプチダーゼがNEP及び/又はAP−Nである、請求項15又は16に記載のペプチド誘導体。
【請求項18】
疼痛、抑鬱障害、セクシャリティと関連する社会活動の障害、及び性行動の障害からなる群から選択される疾患又は障害の処置において使用するための、請求項15〜17のいずれか1項に記載のペプチド誘導体。
【請求項19】
前記ペプチド誘導体が天然アミノ酸からなる請求項1〜9のいずれか1項に記載のペプチド誘導体をコードする配列を含む核酸。
【請求項20】
請求項1〜9のいずれか1項で定義されるペプチド誘導体に対する抗体。
【請求項1】
式Iのペプチド誘導体:
ζ−AA1−AA2−AA3−AA4−AA5−OH (I)
[式中、
ζは、水素原子、チロシン、Y−[リンカー]−又はZnキレート基、例えばシステイン、C−[リンカー]−、N−アセチル−システイン、N−メルカプトアセチル(HS−CH2−CO−)、ヒドロキサム酸(HO−NH−CO−)、又は任意で置換されるヒドロキシキノリンであり、
AA1は、Q又はGlpであり、
AA2は、K、R又はH、好ましくはRであり、
AA3は、Y、G、N、F又はF(X)、好ましくはF又はF(X)であり、
AA4は、P、S又はS(OAlk)、好ましくはS又はS(OAlk)であり、
AA5は、K又はR、好ましくはRであり、
C−[リンカー]−は、Cys−[NH−(CH2)n−CO]−を意味し、nは1〜20の整数であり、
Y−[リンカー]−は、Tyr−[NH−(CH2)n’−CO]−を意味し、n’は1〜20の整数であり、
F(X)は、フェニル基が1つ以上のハロゲン原子で置換されたフェニルアラニンを意味し、
S(OAlk)は、ヒドロキシル基がリンカー又は1〜20個の炭素原子を有する分岐アルキル基で置換されたセリンを意味し、
AA1、AA2、AA3、AA4及びAA5は、独立してL型又はD型のいずれかであり、そして任意のAA1、AA2、AA3、AA4及びAA5のいずれか1つがβアミノ酸、アザ−アミノ酸又はβ−アザ−アミノ酸であってもよい]
であり、該ペプチド誘導体がシステインを含む場合、該ペプチド誘導体は任意でダイマーであり、但し該ペプチドは、QRFSR、QHNPR、QRGPR、YQRFSR又はGlpRFSRではない、前記ペプチド誘導体。
【請求項2】
請求項1に記載のペプチド誘導体であり、式(II):
ζa−Q−AAa2−AAa3−P−R−OH (II)
[式中、
ζaは、水素原子、又はZnキレート基、例えばシステイン、C−[リンカー]−、N−アセチル−システイン、N−メルカプトアセチル(HS−CH2−CO−)、ヒドロキサム酸(HO−NH−CO−)、又は任意で置換されるヒドロキシキノリンであり、
AAa2はR又はH、好ましくはRであり、
AAa3はG、N、F又はF(X)、好ましくはFであり、
C−[リンカー]−、F(X)及びS(OAlk)は請求項1において定義され、Q、AA2、AA3、P、及びRは、独立してL型又はD型のいずれかであり、そして任意のQ、AA2、AA3、P、及びRのいずれか1つがβアミノ酸、アザ−アミノ酸又はβ−アザ−アミノ酸であってもよい]
で表され、該ペプチド誘導体がシステインを含む場合、該ペプチド誘導体は任意でダイマーであり、但し該ペプチドは、QHNPR又はQRGPRではない、前記ペプチド誘導体。
【請求項3】
請求項1に記載のペプチド誘導体であり、式(III):
ζn−AA1−AAn2−AAn3−AAn4−AAn5−OH (III)
[式中、
ζnは、水素原子、チロシン又はY−[リンカー]−であり、
AA1は、Q又はGlp、好ましくはQであり、
AAn2は、K又はR、好ましくはRであり、
AAn3は、Y、F又はF(X)、好ましくはF又はF(X)であり、
AAa4は、S又はS(OAlk)であり、
AAn5はK又はR、好ましくはRであり、
Y−[リンカー]−、F(X)及びS(OAlk)は請求項1において定義され、AA1、AA2、AA3、AA4、及びAA5は、独立してL型又はD型のいずれかであり、そして任意のAA1、AA2、AA3、AA4、及びAA5のいずれか1つがβアミノ酸、アザ−アミノ酸又はβ−アザ−アミノ酸であってもよい]
で表され、但し該ペプチドがQRFSR、QHNPR、YQRFSR又はGlpRFSRではない、前記ペプチド誘導体。
【請求項4】
請求項1に記載のペプチド誘導体であり、式(IV):
ζm−Q−R−AAm3−AAm4−R−OH (IV)
[式中、
ζmは、水素原子、又はZnキレート基、例えばシステイン、C−[リンカー]−、N−アセチル−システイン、N−メルカプトアセチル(HS−CH2−CO−)、ヒドロキサム酸(HO−NH−CO−)、又は任意で置換されるヒドロキシキノリンであり、
AAn3は、F又はF(X)、好ましくはF(X)であり、
AAm4は、S又はS(OAlk)、好ましくはS又はS(OAlk)であり、
C−[リンカー]−、F(X)及びS(OAlk)は請求項1において定義され、Q、R、AA3、AA4、及びRは、独立してL型又はD型のいずれかであり、そして任意のQ、R、AA3、AA4、及びRのいずれか1つがβアミノ酸、アザ−アミノ酸又はβ−アザ−アミノ酸であってもよい]
で表され、該ペプチド誘導体がシステインを含む場合、該ペプチド誘導体は任意でダイマーであり、但し該ペプチドは、QRFSR又はYQRFSRではない、前記ペプチド誘導体。
【請求項5】
請求項1に記載のペプチド誘導体の内、
QRFSR−NH2;
QR−F[4Br]−SRであり、−F[4Br]−が、フェニル基のパラ位が臭素原子で置換されたフェニルアラニンであるもの;
QRFPR;
(アセチル)−QRFSR;
C−(−HN−(CH2)8−CO−)−QRFSR;
ビオチン−(−HN−(CH2)6−CO−)−QRFSR;
dR−dS−dF−dR−dQ;
Y−(−HN−(CH2)6−CO−)−QRFSR;
Y−(−HN−(CH2)12−CO−)−QRFSR;
QRF−S(O−オクタノイル)−R;
CQRFSR;
CQRF−S(O−オクタノイル)−R;
CQRF−S(O−ドデカノイル)−R;
C−(−HN−(CH2)8−CO−)−QRFSR;
C−(−HN−(CH2)12−CO−)−QRFSR;
C−(−HN−(CH2)8−CO−)−QRF−S(O−オクタノイル)−R;
[Cβ2]QRF−S(O−オクタノイル)−R;
C−(−HN−(CH2)8−CO−)−QRFS−[β3R];
C−[dQ]−RF−S(O−オクタノイル)−[dR];
C−(−HN−(CH2)8−CO−)−QRFS−[dR];
[dC]−QRF−S(O−オクタノイル)−[dR];
[Cβ2]−QRF−S(O−オクタノイル)−[β3R];
[CQRFSR]2;
QRYSR;
QR−F[4F]−SRであり、−F[4F]−が、フェニル基のパラ位が臭素原子で置換されたフェニルアラニンであるもの;
QKFSR;
QRFSK;
C−(−HN−(CH2)6−CO−)−QRFSR;
C−(−HN−(CH2)6−CO−)−QRF−S(O−オクタノイル)−R;
C(−HN−(CH2)12−CO−)QRF−S(O−オクタノイル)−R;
C−(−HN−(CH2)12−CO−)−QRFS−dR;
C−(−HN−(CH2)12−CO−)−QRF−S(O−オクタノイル)−β3R;
C−(−HN−(CH2)8−CO−)−QRF−S(O−オクタノイル)β3R;
であり、ここで:
Cβ2がH2NOCH2−SH)−CH2−CO−であり;
β3Rが−NH−CH2−C[−(CH2)3−NH−C(NH)(NH2)]−COOHであり;
−S(−O−オクタノイル)が、ヒドロキシル基がドデカノイル基で置換されたセリンを意味し;
−S(−O−ドデカノイル)が、ヒドロキシル基がドデカノイル基で置換されたセリンを意味する;
前記ペプチド誘導体。
【請求項6】
中性エンドペプチダーゼNEP及び/又はアミノペプチダーゼAP−Nに対して阻害活性を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載のペプチド誘導体。
【請求項7】
ヒトAP−Nに対して阻害活性を有する、請求項2に記載のペプチド誘導体。
【請求項8】
ヒトNEPに対して阻害活性を有する、請求項3に記載のペプチド誘導体。
【請求項9】
中性エンドペプチダーゼNEP及び/又はアミノペプチダーゼAP−Nに対する二機能性阻害因子である、請求項4に記載のペプチド誘導体。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の1つ以上のペプチド誘導体、及び医薬として許容される担体を含む組成物。
【請求項11】
処置を要する対象の疾患又は障害を処置する方法であり、膜メタロエクトペプチダーゼの活性の調節を意図して、疾患又は障害を処置するための量の、請求項1〜9のいずれか1項に記載の1つ以上のペプチド誘導体を対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項12】
前記膜メタロエクトペプチダーゼが膜−亜鉛メタロペプチダーゼである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記膜メタロペプチダーゼがNEP及び/又はAP−Nである、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
疼痛、抑鬱障害(depressive disorder)、セクシャリティと関連する社会活動の障害、及び性行動の障害からなる群から選択される疾患又は障害を処置するための、請求項11〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
膜メタロエクトペプチダーゼの活性の調節を意図して、疾患又は障害の治療において使用するための、請求項1〜9のいずれか1項に定義されるペプチド誘導体。
【請求項16】
前記膜メタロエクトペプチダーゼが膜亜鉛メタロペプチダーゼである、請求項15に記載のペプチド誘導体。
【請求項17】
前記膜メタロエクトペプチダーゼがNEP及び/又はAP−Nである、請求項15又は16に記載のペプチド誘導体。
【請求項18】
疼痛、抑鬱障害、セクシャリティと関連する社会活動の障害、及び性行動の障害からなる群から選択される疾患又は障害の処置において使用するための、請求項15〜17のいずれか1項に記載のペプチド誘導体。
【請求項19】
前記ペプチド誘導体が天然アミノ酸からなる請求項1〜9のいずれか1項に記載のペプチド誘導体をコードする配列を含む核酸。
【請求項20】
請求項1〜9のいずれか1項で定義されるペプチド誘導体に対する抗体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公表番号】特表2011−517940(P2011−517940A)
【公表日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−503426(P2011−503426)
【出願日】平成21年4月7日(2009.4.7)
【国際出願番号】PCT/EP2009/054171
【国際公開番号】WO2009/124948
【国際公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(591282984)アンスティテュ パストゥール (17)
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT PASTEUR
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月7日(2009.4.7)
【国際出願番号】PCT/EP2009/054171
【国際公開番号】WO2009/124948
【国際公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(591282984)アンスティテュ パストゥール (17)
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT PASTEUR
【Fターム(参考)】
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