説明

エンコーダ、エンコーダの取り付け方法及びモータ装置

【課題】短時間で所期の検出精度が得られるように取り付けることができるエンコーダ、エンコーダの取り付け方法及びモータ装置を提供すること。
【解決手段】パターンを有し、測定対象の回転子に固定される回転部と、パターンを検出する検出部と、回転子を基準とした位置規制面を有し、回転子を回転可能に保持するベアリング部と、位置規制面に当接させた当接部が設けられた本体部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンコーダ、エンコーダの取り付け方法及びモータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
モータの回転軸などを含む回転体の回転数、回転角度、回転位置といった回転情報を検出する装置として、エンコーダが知られている(特許文献1)。エンコーダは、例えばモータの回転軸などに取り付けられて用いられる。エンコーダの一例として、例えば所定の光反射パターン及び磁気パターンが形成された回転部(円板)を回転軸と一体的に回転させ、例えば光反射パターンに光を照射して反射光を読み取ると共に、例えば磁気パターンの変化を検出することで、モータの回転軸の回転情報を検出できるようになっている。
【0003】
上記のような構成のエンコーダにおいては、上記回転部と、例えば反射光や磁気パターンの変化を検出する検出部などを有する本体部とが別々に形成される。このため、エンコーダをモータの回転軸などに取り付ける際には、回転部と本体部とを別々に取り付けるようにしている。この場合、例えば取り付け位置にずれなどが生じると、検出精度が低下してしまう可能性があるため、所定の検出精度が得られるように例えば各部を取り付けた後に回転部と検出部との間で位置調整などの位置合わせ工程を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−20548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の回転部と検出部との間の位置調整は、例えば特殊な工具や信号調整装置などを用いるため、煩雑な作業となってしまい、時間が掛かってしまう。
【0006】
上記のような事情に鑑み、本発明は、短時間で所期の検出精度が得られるように測定対象に取り付けることができるエンコーダ、エンコーダの取り付け方法及びモータ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の態様に従えば、パターンを有し、測定対象の回転子に固定される回転部と、パターンを検出する検出部と、回転子を基準とした位置規制面を有し、回転子を回転可能に保持するベアリング部と、位置規制面に当接させた当接部が設けられた本体部とを備えるエンコーダが提供される。
【0008】
本発明の第二の態様に従えば、パターンを有する回転部を、測定対象の回転子に固定する回転部固定工程と、回転子を回転可能に保持するベアリング部を測定対象の非回転部分に固定される本体部に取り付けるベアリング部取り付け工程と、回転子を基準にベアリング部を用いて位置決めさせつつ、測定対象に本体部を固定する本体部固定工程と、パターンを検出する検出部を本体部に固定する検出部固定工程とを含むエンコーダの取り付け方法が提供される。
本発明の第三の態様に従えば、回転子と、回転子を回転させる駆動部と、回転子に固定され、回転子の位置情報を検出するエンコーダと、を備え、当該エンコーダとして、本発明の第一の態様のエンコーダが用いられている、モータ装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の態様によれば、短時間で所期の検出精度が得られるように取り付けることができるエンコーダ、エンコーダの取り付け方法及びモータ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態に係るエンコーダ及びモータの構成を示す断面図。
【図2】本実施形態に係るエンコーダの一部の構成を示す平面図。
【図3】本実施形態に係るエンコーダの一部の構成を示す平面図。
【図4】本実施形態に係るエンコーダの一部の構成を示す分解斜視図。
【図5】本実施形態に係るエンコーダの取り付け工程を示す図。
【図6】本実施形態に係るエンコーダの取り付け工程を示す図。
【図7】本実施形態に係るエンコーダの取り付け工程を示す図。
【図8】本実施形態に係るエンコーダの取り付け工程を示す図。
【図9】本実施形態に係るエンコーダの他の取り付け工程を示す図。
【図10】本実施形態に係るエンコーダの他の取り付け工程を示す図。
【図11】本実施形態に係るエンコーダの他の取り付け工程を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本実施形態に係るエンコーダECを有するモータ装置MTRの構成を示す断面図である。
図1に示すように、エンコーダECは、例えばモータ装置MTR(測定対象)の回転軸40などの回転体の回転数や回転角度、回転位置などの回転情報を検出する装置である。モータ装置MTRは、駆動機構43によって回転駆動される回転軸40と、当該回転軸40を支持する非回転部分としての筐体41とを有している。
【0012】
本実施形態に係るエンコーダECは、光反射パターンに光を照射して反射光を検出すると共に、磁気パターンによって発生する磁気の変化を検出することで、回転軸40の回転情報を検出できるようになっている。本実施形態のエンコーダECは、回転部R、本体部D及びベアリング部60を有している。図2は、回転部R、本体部D及びモータ装置MTRの平面視での構成を示す図である。以下、図1及び図2を参照して、エンコーダECの構成を説明する。
【0013】
なお、以下の説明においては、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係について説明する。具体的には、モータ装置MTRの回転軸40の軸方向をZ軸方向、回転軸40の軸方向に直交する平面上の所定方向をX軸方向、当該平面上においてX軸方向と直交する方向をY軸方向とする。また、X軸、Y軸、及びZ軸まわりの回転(傾斜)方向をそれぞれ、θX、θY、及びθZ方向とする。例えば、回転軸40の回転方向はθZ方向である。
【0014】
回転部Rは、例えば固定部材50(例えば、ネジなど)を用いてモータ装置MTRの回転軸40に固定されており、回転軸40と一体的に回転させる部分である。回転部Rは、円盤部材10及び磁石部材20を有している。回転部Rは、ネジなどの不図示の固定機構によって回転軸40に一体的に固定されている。
【0015】
円盤部材10は、回転軸40に直接取り付けられる部分である。円盤部材10は、Z方向視での中心が回転軸40のZ方向視での中心に一致するように回転軸40に取り付けられている。円盤部材10は、回転軸40の回転に伴ってθZ方向に回転するようになっている。円盤部材10は、例えばSUSなどの剛性の高い材料で構成されており、耐変形性などに優れている。円盤部材10の構成材料として、他の材料を用いても構わない。
【0016】
円盤部材10は、取付部11及びパターン形成部12を有している。取付部11は、例えば円盤部材10の下面10b側に突出して設けられている。取付部11には、平面視中央部に挿入穴11aが形成されている。挿入穴11aには、上記モータ装置MTRの回転軸40が挿入されている。モータ装置MTRの回転軸40は、挿入穴11aに挿入された状態で、上記の不図示の固定機構などによって固定されている。
【0017】
パターン形成部12は、取付部11の周囲に設けられる円板状の部分である。パターン形成部12には、光反射パターン12aが形成されている。光反射パターン12aは、円盤部材10の上面10aのうち、円盤部材10の外周に沿った円環状の領域に形成されている。光反射パターン12aは、例えば所定の波長の光を反射する光反射部材を用いて形成されている。
【0018】
磁石部材20は、円環状に形成された永久磁石である。磁石部材20は、円盤部材10の上面10aに例えば不図示の接着剤などを介して固定されている。磁石部材20のZ方向視での中心位置は、回転軸40及び円盤部材10のZ方向視での中心位置に一致している。磁石部材20には、所定の磁気パターン20aが形成されている。
【0019】
磁石部材20の磁気パターン20aとして、例えば図2に示すように、Z方向視で磁石部材20の半分の領域(例えば図2の−X側)について、外周側の領域はN極に着磁され、内周側の領域はS極に着磁されていると共に、磁石部材20の他の半分の領域(例えば図2の+X側)については、外周側の領域はS極に着磁され、内周側の領域はN極に着磁されているような構成が挙げられる。勿論、磁気パターン20aとして他の形態を採用しても構わない。
【0020】
本体部Dは、モータ装置MTRの非回転部分である筐体41に固定されている。本体部Dは、検出基板30、第1円筒部材(第1部分)33、第2円筒部材(第2部分)34及び制御部CONTを有している。
【0021】
制御部CONTは、光センサ31からの出力に基づいて回転軸40の回転情報を求めると共に、磁気センサ32からの出力に基づいて回転軸40の回転情報を求める処理を行う。この回転情報としては、例えば回転軸40の回転数、回転方向、回転角度、や回転位置などの情報が含まれる。
【0022】
検出基板30は、例えば平面視円形に形成された板状の基材30aと、光センサ(検出部)31及び磁気センサ(検出部)32とを有している。基材30aは、例えば3つの固定部材51によって第1円筒部材33、第2円筒部材34及びモータ装置MTRに固定されている。基材30aがモータ装置MTRに固定されているため、回転軸40が回転しても、基材30aとモータ装置MTRとの間の相対位置は変化しないようになっている。固定部材51としては、例えばネジなどが用いられる。固定部材51は、基材30a、第2円筒部材34及び第1円筒部材33を貫通してモータ装置MTRの+Z側の面にくい込むように取り付けられている。
【0023】
光センサ31は、例えばZ方向視で光反射パターン12a(光学パターン)に重なる位置に配置されている。光センサ31は、不図示の発光部及び受光部を有している。光センサ31は、基材30aの例えば−Z側の面に取り付けられている。光センサ31は、光反射パターン12aへ向けて発光部から光を射出し、受光部において反射光を読み取ることで光反射パターン12aを検出する部分である。検出結果は、電気信号として制御部CONTに送信されるようになっている。
【0024】
磁気センサ32は、例えばZ方向視で基材30aの中央部に2つ設けられている。2つの磁気センサ32は、それぞれバイアス磁石(不図示)及び磁気抵抗素子(不図示)を有している。磁気センサ32は、例えばθZ方向に90°ずれる位置に配置されている。
【0025】
バイアス磁石は、磁石部材20の磁場との間で合成磁場を形成する。バイアス磁石を構成する材料として、例えばサマリウム・コバルトなどの磁力の大きい希土類磁石などが挙げられる。バイアス磁石は、磁気抵抗素子に接触せず、また、当該磁気抵抗素子に隣接しない位置に配置されている。
【0026】
磁気抵抗素子は、例えば金属配線などによって形成された直交する2つの繰り返しパターンを有している。磁気抵抗素子は、磁場の方向が当該繰り返しパターンに流れる電流の方向の垂直方向に近くなると電気抵抗が低下するようになっている。磁気抵抗素子は、この電気抵抗の低下を利用して磁場の方向を電気信号に変換するようになっている。磁気抵抗素子は、磁石部材20の磁場及びバイアス磁石の磁場による合成磁場を検出するようになっている。検出結果は、電気信号として制御部CONTに送信されるようになっている。
【0027】
第1円筒部材33は、モータ装置MTRの筐体41に取り付けられる部分である。第1円筒部材33は、回転部Rを囲うように形成されている。第1円筒部材33の内壁は、少なくともエンコーダECをモータ装置MTRの回転軸40に取り付けた状態においては、回転部Rに接触しないように形成されている。第1円筒部材33は、例えば固定部材52によって筐体41の固定面41aに固定されている。
【0028】
第2円筒部材34は、検出基板30を支持する支持部材である。第2円筒部材34は、例えば第1円筒部材33にZ方向に重なるように配置されている。第2円筒部材34は、回転部Rを囲うように形成されている。第2円筒部材の外径、内径及び高さ(Z方向の寸法)は、例えば第1円筒部材33の外径、内径及び高さとそれぞれ等しい寸法に形成されている。第2円筒部材34の内壁は、少なくとも、エンコーダECをモータ装置MTRの回転軸40に取り付けた状態においては、回転部Rには接触しないように形成されている。第1円筒部材33の+Z側の端面33sは、第2円筒部材34の−Z側の端面34sに接触するように構成されている。
【0029】
図3は、第1円筒部材33及び第2円筒部材34の構成を示す分解斜視図である。図4は、第一円筒部材33、ベアリング部60及び回転軸40の位置関係を示す図である。
図3に示すように、第1円筒部材33の端面33sには凸部33aが形成されている。凸部33aは、例えば端面33sのうちX方向の両端に1つずつ形成されている。一方、図4に示すように、第2円筒部材34の端面34sには、凹部34aが形成されている。凹部34aは、上記凸部33aとの間でZ方向において重なる位置に形成されている。第1円筒部材33の端面33sと第2円筒部材34の端面34sとが接触した状態において、第1円筒部材33の凸部33aが第2円筒部材34の凹部34aに嵌まった状態となる。このため、第1円筒部材33と第2円筒部材34とが凸部33a及び凹部34aの間で係止されることになる。
【0030】
第1円筒部材33の端面33sには、例えば3箇所に固定用貫通部33bが形成されている。一方、第2円筒部材34の端面34sには、例えば3箇所に固定用貫通部34bが形成されている。固定用貫通部33b及び固定用貫通部34bは、第1円筒部材33と第2円筒部材34とを重ねた状態で連通される位置にそれぞれ形成されている。固定用貫通部33b及び固定用貫通部34bには、上記の固定部材51が挿入される。
【0031】
第1円筒部材33の端面33sには、上記の固定用貫通部33bとは別に、固定用貫通部33cが形成されている。固定用貫通部33cは、例えば円筒の中心を挟んだ2箇所に配置されている。なお、当該固定用貫通部33cは、第1円筒部材33にのみ形成されている。固定用貫通部33cには、例えば上記の固定部材52が挿入される。
【0032】
図1、図2及び図4に示すように、ベアリング部60は、回転軸40を回転可能に支持する。ベアリング部60としては、例えば滑り軸受や転がり軸受などを用いることができる。
【0033】
ベアリング部60は、Z方向について筐体41と回転部Rとの間に配置されている。また、ベアリング部60は、筐体41の固定面41a上に設けられており、回転部Rとの間に隙間を空けて配置されている。したがって、ベアリング部60は、筐体41とは接触しているが、回転部Rとは非接触となっている。また、ベアリング部60は、回転軸40の径方向について当該回転軸40と第一円筒部材33との間に配置されている。
【0034】
ベアリング部60は、外形が円環状に形成されている。ベアリング部60は、円筒面である外周面60a及び内周面60bを有している。外周面60aの径は、第一円筒部材33の内周面33eの径とほぼ等しくなっている。このため、外周面60aは、第一円筒部材33の内周面33eに接している。すなわち、外周面60aは、一周に亘って、内周面33eに当接された状態となっている。
【0035】
内周面60bの径は、回転軸40の外周面40aの径とほぼ等しくなっている。このため、内周面60bは、回転軸40の外周面40aに接している。すなわち、内周面60bは、一周に亘って、外周面40aに当接された状態となっている。
【0036】
このように、ベアリング部60は、外周面60aが第一円筒部材33の内周面33eに当接されており、内周面60bが回転軸40の外周面40aに当接されている。また、ベアリング部60は、回転軸40と第一円筒部材33との間に形成される隙間を埋めるように配置されている。このため、筐体41から回転軸40を伝わる流体のグリスや塵などは、ベアリング部60によって回転部R側への流れが規制されるようになっている。
【0037】
また、回転軸40の径方向における移動は、ベアリング部60と、当該ベアリング部材60に当接する第一円筒部材33とによって規制された状態となっている。このようにベアリング部60は、回転軸40を回転可能に支持すると共に、回転軸40の径方向の位置を規制する。
【0038】
次に、上記のように構成されたエンコーダECをモータ装置MTRに取り付ける工程を説明する。
まず、図5に示すように、第一円筒部材33の内部にベアリング部60を装着させる。ベアリング部60の外周面60aと第一円筒部材33の内周面33eとが一周に亘って接触するように、ベアリング部60を第一円筒部材33の内部に挿入し、ベアリング部60と第一円筒部材33とを一体化する。
【0039】
その後、一体化されたベアリング部60及び第一円筒部材33を筐体41の固定面41aに配置させる。このとき、ベアリング部60の内周面60bと回転軸40の外周面40aとが一周に亘って接触するように、ベアリング部60の内部に回転軸40を挿入する。これにより、筐体41に対してベアリング部60及び第一円筒部材33が取り付けられる(ベアリング部取り付け工程)。
【0040】
当該ベアリング部取り付け工程では、例えば先にベアリング部60を回転軸40に嵌めた状態とし、その後、当該ベアリング部60に第1円筒部材33を嵌めるようにしても構わない。また、例えば第1円筒部材33を先に固定面41a上に配置させてから、回転軸40と第一円筒部材33との間にベアリング部60を配置させるようにしても構わない。
【0041】
ベアリング部取り付け工程においては、ベアリング部60が回転軸40に支持された状態となる。この状態で、第1円筒部材33の内周面33eとベアリング部60の外周面60aとが一周に亘って当接することにより、固定面41a上における第1円筒部材33の位置が規制される。
【0042】
このように、ベアリング部60の外周面60aは、第1円筒部材33の位置を規制する位置規制面として用いられる。ベアリング部60は、内周面60bにおいて回転軸40に支持されるため、位置規制面である外周面60aによって規制される第1円筒部材33の位置は、回転軸40を基準とした位置となる。
【0043】
また、第1円筒部材33の内周面33eは、例えば一周に亘って、ベアリング部60の位置規制面である外周面60aに当接される当接部として用いられる。本実施形態において、第1円筒部材33は、例えば当該第1円筒部材33の中心軸と回転軸40の中心軸とがほぼ一致する位置に配置されることになる。
【0044】
第1円筒部材33の位置決めを行った後、第1円筒部材33の固定を行う(本体部固定工程)。例えば図6に示すように、第1円筒部材33の端面33sのうち2箇所に設けられた固定用貫通部33cに固定部材52を挿入し、第1円筒部材33と筐体41とを固定させる。
【0045】
第1円筒部材33の固定を行った後、回転軸40に回転部Rを固定させる(回転部固定工程)。回転部固定工程では、例えば図7に示すように、回転軸40が円盤部材10の挿入穴11aに挿入されるように円盤部材10を回転軸40に取り付け、固定部材50を用いて円盤部材10と回転軸40とを固定する。
【0046】
回転部Rを固定させた後、検出基板30を第1円筒部材33に取り付ける(検出部固定工程)。図8に示すように、例えば予め検出基板30と第2円筒部材34とを一体化させた状態としておく。この場合、検出基板30を第2円筒部材34に固定させておいても構わない。また、検出基板30の固定用貫通部30bと第2円筒部材34の固定用貫通部34bとを固定部材51によって貫通させた状態とし、検出基板30と第2円筒部材34との間を固定させずに位置決めが行われた状態としても構わない。
【0047】
検出部固定工程では、図8に示すように、検出基板30と第2円筒部材34とが一体化した状態で、第2円筒部材34が第1円筒部材33に取り付けられる。このとき、第2円筒部材34の凹部34aに第1円筒部材33の凸部33aを嵌め込むことで第1円筒部材33と第2円筒部材34との間の位置決めを行うことができる。第2円筒部材34を第1円筒部材33に取り付けた後、固定部材51によって検出基板30及び第2円筒部材34が第1円筒部材33に固定されると共に、これら検出基板30、第2円筒部材34、第1円筒部材33が筐体41に固定される。
以上の各工程を経て、エンコーダECがモータ装置MTRに容易に高精度で取り付けられる。
【0048】
次に、モータ装置MTRに取り付けられたエンコーダECの動作を説明する。
モータ装置MTRの回転軸40が回転すると、当該回転軸40に固定された回転部Rが回転軸40と一体的に回転する。本体部Dについては、回転軸40には接続ないしは接触されていないため、回転せずに静止した状態を維持する。
【0049】
回転部Rが回転すると、当該回転部Rに形成された光反射パターン12aが回転方向に移動する。光センサ31は、移動する光反射パターン12aへ光を射出し、反射光を読み取ることで光反射パターン12aに基づく回転情報(例、回転角度)を検出する。
【0050】
また、回転部Rが回転すると、当該回転部Rに接着された磁石部材20も回転する。磁石部材20が回転すると、当該磁石部材20の磁気パターン20aによって形成される磁場とバイアス磁石によって形成される磁場との合成磁場が周期的に変化する。磁気センサ32は、当該合成磁場の変化を検出することにより、磁石部材20(回転軸)に基づく回転情報(例、多回転情報)を検出する。
【0051】
以上のように、本実施形態に係るエンコーダECは、光反射パターン12a及び磁気パターン20aを有し、モータ装置MTRの回転軸40に固定される回転部Rと、光反射パターン12a及び磁気パターン20aを検出する光センサ31及び磁気センサ32と、回転軸40を基準とした外周面60a(位置規制面)を有し、回転軸40を回転可能に保持するベアリング部60と、外周面60a(位置規制面)に当接させた内周面33e(当接部)が設けられた第一円筒部材33(本体部)とを有する構成となっているので、エンコーダECの取り付けの際にはベアリング部60を用いて回転部Rと本体部Dとの間の位置決めが可能になる。これにより、短時間で所期の検出精度が得られるように取り付けが可能なエンコーダECを提供することができる。
【0052】
また、上記構成において、ベアリング部60が設けられているため、回転軸40を安定して回転させることができると共に、モータ装置MTRから流体のグリスや塵が回転部Rに流れるのを防ぐことができる。このため、ベアリング部60一部品によって、回転部R及び本体部Dの位置決めと、回転軸40の安定回転と、グリスの影響の低減と、を図ることができる。これにより、本実施形態に係るエンコーダECは、部品コストを低減することができる。
【0053】
また、本実施形態に係るエンコーダECの取り付け方法は、光反射パターン12a及び磁気パターン20aを有する回転部Rを、モータ装置MTRの回転軸40に固定する回転部固定工程と、回転軸40を回転可能に保持するベアリング部60をモータ装置MTRの筐体41に固定される本体部Dに取り付けるベアリング部取り付け工程と、回転軸40を基準にベアリング部60を用いて位置決めさせつつ、モータ装置MTRに本体部Dを固定する本体部固定工程と、光反射パターン12a及び磁気パターン20aを検出する光センサ31及び磁気センサ32を本体部Dに固定する検出部固定工程とを含むこととしたので、エンコーダECの取り付けの過程では、ベアリング部60により回転部Rと本体部Dとの間の位置決めが行われることになる。このため、回転部Rと本体部Dとを位置決めするために用いる信号調整などを行わなくても済むことになる。このため、本実施形態に係るエンコーダECは、回転部Rと本体部Dとを位置決めするために用いる信号調整などを行わなくても済むことになる。これにより、本実施形態に係るエンコーダECは、効率的なメンテナンスが可能となる。
【0054】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
例えば、上記実施形態では、本体部Dが2つの円筒部材(第1円筒部材33及び第2円筒部材34)を有する構成としたが、これに限られることは無く、例えば1つの円筒部材のみを有する構成であっても構わない。例えば、図9に示すように、検出基板固定工程において、検出基板30を第1円筒部材33に直接固定させるようにしても構わない。検出基板固定工程を行う前は、上記実施形態と同一の工程を行うようにする。
【0055】
例えば、第1円筒部材33に形成される凸部33aに対応するように、検出基板30の基材30aに凹部30cを形成しておくようにする。検出基板固定工程においては、検出基板30の凹部39cに凸部33aを嵌め込むように検出基板30と第1円筒部材33との間で位置決めを行い、その後、固定部材51を用いて検出基板30と第1円筒部材33とを固定させれば良い。このような構成によれば、本実施形態に係るエンコーダECは、検出基板30を交換する際、第1円筒部材33を固定させた状態で検出基板30のみについて取り外し、取り付けを行うことができるため、効率的なメンテナンスを行うことができる。
【0056】
また、上記説明においては、第1円筒部材33と第2円筒部材34(又は検出基板30)とを位置決めするための構成として、例えば第1円筒部材33形成された凸部33aを、第2円筒部材34に形成された凹部34a(又は検出基板30に形成された凹部30c)に嵌め込むことで第1円筒部材33と第2円筒部材34とを係止させる構成を例に挙げて説明したが、これに限られることは無い。例えば第1円筒部材33に凹部を形成し、第2円筒部材34(又は検出基板30)に凸部を形成しても構わない。
【0057】
また、図10に示すように、例えば第1円筒部材33が、円周方向に沿った環状の係合部33fを有する構成としても構わない。この係合部33fの外周面は、例えば第2円筒部材34の内周面と等しい径を有するように形成しておく。これにより、本実施形態に係るエンコーダECは、第1円筒部材33と第2円筒部材34との間を径方向において位置決めすることができる。
【0058】
なお、円周方向の位置決めについては、例えば第2円筒部材34に固定部材51を挿入し、第2円筒部材34の端面34sから固定部材51を突出させた状態とする。例えば第2円筒部材34を円周方向に回転させながら第1円筒部材33に嵌め込むと、固定部材51が第1円筒部材33の固定用貫通部33bに挿入されることになる。このように、本実施形態に係るエンコーダECは、回転方向の位置決めも容易に行うことができる。
【0059】
また、図11に示すように、本実施形態に係るエンコーダECは、位置決め部を第2円筒部材34に設ける構成であっても構わない。図11に示すように、第2円筒部材34の内周面に沿った位置に環状の係合部34fが設けられている。係合部34fの外周面は、第1円筒部材33の内周面33eとほぼ同一の径を有するように形成されている。この場合であっても、第1円筒部材33と第2円筒部材34との間で容易に位置決めを行うことができる。第2円筒部材34に係合部34fを設ける場合には、係合部34fの−Z側端部がベアリング部60を圧迫しないように、当該係合部34fのZ方向の寸法を設定しておく。
【0060】
なお、係合部33fの構成としては、第2円筒部材34の内周面に当接して位置決めが可能であれば、上記のような環状の構成に限られず、他の構成であっても構わない。例えば、第1円筒部材33の内周面33eに沿って間隔を空けて配置される構成であっても構わない。係合部34fの構成についても、同様の説明が可能である。また、本実施形態に係るエンコーダECやモータ装置MTRは、例えば、ベアリング部60と第1円筒部材33との間の隙間、又はベアリング部60と回転軸40との間の隙間などを、ゴム系やシリコン系の弾性型接着剤を用いて密閉することができる。この密閉により、本実施形態に係るエンコーダECやモータ装置MTRは、流体のグリスや塵が回転部R側などに進入するのを低減できるし、回転軸40による振動を低減することができる。
【符号の説明】
【0061】
EC…エンコーダ MTR…モータ装置 R…回転部 D…本体部 10…円盤部材 30…検出基板 33…第1円筒部材 33s…端面 33a…凸部 33b…固定用貫通部 33c…固定用貫通部 33e…内周面 33f…係合部 34…第2円筒部材 40…回転軸 60…ベアリング部 60a…外周面 60b…内周面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターンを有し、測定対象の回転子に固定される回転部と、
前記パターンを検出する検出部と、
前記回転子を基準とした位置規制面を有し、前記回転子を回転可能に保持するベアリング部と、
前記位置規制面に当接させた当接部が設けられた本体部と
を備えるエンコーダ。
【請求項2】
前記本体部は、前記測定対象の非回転部分に固定される第1部分と、前記第1部分と分離可能に接続された第2部分と、を有する
請求項1に記載のエンコーダ。
【請求項3】
前記第1部分又は前記第2部分に設けられ、前記本体部と前記検出部とを位置決めさせる位置決め部を備える
請求項2に記載のエンコーダ。
【請求項4】
前記ベアリング部は、前記第1部分に保持されている
請求項3に記載のエンコーダ。
【請求項5】
前記検出部は、前記第2部分に固定されている
請求項4に記載のエンコーダ。
【請求項6】
前記第1部分及び第2部分のうち一方には、前記位置決め部として凹部が形成されており、
前記第1部分及び前記第2部分のうち他方には、前記位置決め部として前記凹部に対応する凸部が形成されており、
前記第1部分及び前記第2部分は、前記凹部に前記凸部が挿入された状態で接合されている
請求項3から請求項5のいずれか一項に記載のエンコーダ。
【請求項7】
パターンを有する回転部を、測定対象の回転子に固定する回転部固定工程と、
前記回転子を回転可能に保持するベアリング部を前記測定対象の非回転部分に固定される本体部に取り付けるベアリング部取り付け工程と、
前記回転子を基準に前記ベアリング部を用いて位置決めさせつつ、前記測定対象に前記本体部を固定する本体部固定工程と、
前記パターンを検出する検出部を前記本体部に固定する検出部固定工程と
を含むエンコーダの取り付け方法。
【請求項8】
前記ベアリング部取り付け工程は、前記ベアリング部の位置規制面を前記本体部に設けられた当接部に当接させることを含む
請求項7に記載のエンコーダの取り付け方法。
【請求項9】
前記本体部固定工程は、前記ベアリング部と一体的に設けられた前記本体部に前記回転子を挿入させることを含む
請求項7又は請求項8に記載のエンコーダの取り付け方法。
【請求項10】
前記本体部は、前記測定対象の非回転部分に固定される第1部分と、前記第1部分と分離可能に接続された第2部分と、を有し、
前記本体部固定工程は、前記第1部分及び前記第2部分のうち一方に形成された凹部に、前記第1部分及び前記第2部分のうち他方に形成され前記凹部に対応する凸部を挿入することを含む
請求項7から請求項9のいずれか一項に記載のエンコーダの取り付け方法。
【請求項11】
回転子と、
前記回転子を回転させる駆動部と、
前記回転子に固定され、前記回転子の位置情報を検出するエンコーダと、を備え、
前記エンコーダとして、請求項1から請求項6のうちいずれか一項に記載のエンコーダが用いられている
モータ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−19778(P2013−19778A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153656(P2011−153656)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】