説明

エンコーダの着磁装置

【課題】円輪状の被検出面にN極とS極とを円周方向に交互に配置した永久磁石を有するエンコーダを造る際に、この永久磁石となるべき永久磁石素材14の着磁のピッチ精度を良好にできる構造を実現する。
【解決手段】円周方向に並べて配置した着磁端子9a、9aの先端面の径方向外端縁11a、11a及び径方向内端縁12a、12aの形状を、円周方向片側で円周方向他側よりも外径側に位置する形状とする。これにより、円周方向に隣り合う1対の着磁端子9a、9aの先端面のうち、円周方向他側に存在する先端面の円周方向片側の端縁を、円周方向片側に存在する先端面の円周方向他側の端縁よりも、外径側に寄った位置に配置する。又、図示しない着磁コイルを、前記各着磁端子9a、9aの外周面を、それぞれ全周に亙り囲む状態で配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車の車輪や工作機械の主軸の回転速度を検出する為の回転速度検出装置に組み込むエンコーダを造る為に利用する、エンコーダの着磁装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のアンチロックブレーキシステム(ABS)やトラクションコントロールシステム(TCS)を制御する為には、車輪の回転速度を検出する必要がある。この回転速度の検出を磁気的に行う場合には、その磁気特性が円周方向に関して交互に且つ等間隔で変化するエンコーダを使用する。この様なエンコーダのうちで、被検出面にN極とS極とを円周方向に関して交互に且つ等間隔に配置した永久磁石を備えたエンコーダは、センサ側の構造を簡単にし、しかも低速時の検出精度を確保する面から、近年使用する場合が増大している。
【0003】
図4〜5は、この様な永久磁石を備えたエンコーダの1例を示している。このエンコーダ1は、芯金2と、永久磁石3とから成る。このうちの芯金2は、軟鋼板等の磁性金属板により、断面L字形で全体を円環状に造られており、円筒部4と、この円筒部4の軸方向一端部から径方向外方に直角に折れ曲がった円輪部5とを備える。又、前記永久磁石3は、円輪状に造られたゴム磁石或いはプラスチック磁石等であり、前記円輪部5の側面に、前記芯金2と同心に固定されている。この様な永久磁石3のうち、前記円輪部5と反対側の側面は、N極とS極とを円周方向に関して交互に且つ等間隔に配置した、被検出面としている。
【0004】
この様なエンコーダ1を使用して、車輪の回転速度を検出する場合には、例えば、車輪支持用転がり軸受ユニットを構成する、車輪と共に回転する回転輪の一部に、前記エンコーダ1を支持固定する。この為に、この回転輪の一部に前記芯金2の円輪部5を、締り嵌めで外嵌する。又、前記車輪支持用転がり軸受ユニットを構成する静止輪等の使用時にも回転しない部材の一部に、センサ6を支持し、このセンサ6の先端部に設けた検出部を、前記エンコーダ1の被検出面に対向させる。このセンサ6の先端部には、検出部を構成する、ホール素子、ホールIC、MR素子、GMR素子等、磁束の向きや強さに応じて特性を変化させる磁気検出素子が組み込まれている。この状態で、前記車輪と共に前記エンコーダ1が回転すると、前記センサ6の検出部の近傍を、前記被検出面に配置されたN極とS極とが交互に通過する。この結果、この検出部を構成する磁気検出素子の特性が変化し、前記センサ6の出力が変化する。この様にして出力が変化する周波数は、前記車輪の回転速度に比例する為、この出力を処理回路に送れば、この車輪の回転速度を求められる。
【0005】
上述の様なエンコーダ1は、前記芯金2を構成する円輪部5の側面に、前記永久磁石3となるべき永久磁石素材を固定(フェライト等の強磁性材を混入したゴム或いは合成樹脂等の高分子材料を加硫固定或いは射出成形により固定)した後、この永久磁石素材を着磁する事により製造される。又、この際の着磁方法として従来から、全周の着磁を同時に行う一発着磁法と、全周の着磁を円周方向に関して1乃至複数箇所ずつ順番に行うインデックス着磁法とが知られている。このうちの一発着磁法を実施する為の着磁装置は、特許文献1等に記載されている様に、例えば図6〜7に示す様な、円環状の着磁ヨーク7を備えている。
【0006】
この着磁ヨーク7は、円環状の基台8と、この基台8の軸方向側面に円周方向に関して等間隔に配置された多数の着磁端子9、9と、これら各着磁端子9、9の周囲に配設されたコイル10(図7にのみ図示。図6には図示省略)とから成る。このうちの着磁端子9、9は、前記被検出面に存在する磁極(N極、S極)の総数と同じ数だけ存在する。又、これら各着磁端子9、9の先端面は、単一の仮想平面内で、前記被検出面に存在する各磁極と同じピッチで、円周方向に等間隔に配置されている。又、前記各着磁端子9、9の先端面の形状は、それぞれ径方向に長い短冊状であり、特に、これら各先端面の径方向外端縁11、11及び径方向内端縁12、12の形状は、それぞれ前記基台8の中心軸を中心とする単一の仮想円の一部を構成する円弧状、若しくは、この仮想円に接する直線状である。又、前記コイル10は、前記各着磁端子9、9の軸方向(図6〜7の表裏方向)に重ねて設けられた、2つの環状蛇行コイル部13a、13bを備える。これら両環状蛇行コイル部13a、13bは、それぞれ前記各着磁端子9、9同士の間を縫う様にして円周方向に(全周に亙り)蛇行配置されており、且つ、円周方向に関する配置の位相が互いに半ピッチずれている。つまり、この状態で、前記コイル10を構成する導線は、前記各着磁端子9、9の外周面を、それぞれ全周に亙り囲んでいる。
【0007】
上述の様な着磁ヨーク7を使用して、前記永久磁石素材を着磁する場合には、図7に示す様に、前記各着磁端子9、9の先端面に、前記永久磁石3(図4〜5)となるべき永久磁石素材14を、これら各先端面と同心に重ねて配置する。そして、この状態で、前記コイル10に通電する事により、前記両環状蛇行コイル部13a、13bに円周方向に関して互いに逆向きの電流を流す事で、前記各着磁端子9、9の外周面を取り囲む位置に、それぞれ隣り合う着磁端子9、9同士で互いに逆向きの環状電流を流した如き状態とする。これにより、前記永久磁石素材14を配置した位置を含む、前記各着磁端子9、9の先端面と対向する位置に、これら各着磁端子9、9の先端面から出入りし、且つ、隣り合う先端面同士で出入りの向きが互いに逆になる態様の磁束(着磁磁界)を発生させる。そして、この様な磁束により、前記永久磁石素材14の全周を同時に着磁し、この永久磁石素材14を前記永久磁石3(図4〜5)とする。
【0008】
図8は、この様にして造られた永久磁石3の円周方向一部分を、径方向から見た模式図である。この図8に示す様に、前記永久磁石3の円周方向複数箇所で、被検出面に存在するN極とS極との境界に対応する位置には、それぞれ磁壁15、15と呼ばれる部分が存在する。図9は、これら各磁壁15部分を拡大して(円周方向の寸法を拡大して)、図8と同方向から見た模式図である。この図9に示す様に、前記永久磁石3の内部に於ける磁束の向き(図8〜9中の矢印の向き)は、前記各磁壁15、15部分で、円周方向片側(図8〜9に於ける左側)から他側(同じく右側)に向かうに従って徐々に反転する様に変化する。即ち、前記永久磁石3の内部に於ける磁束の向きは、前記各磁壁15部分で、円周方向片側から他側に向かうに従って、図9の(A)(a)又は(B)(a)に示す様に、徐々に時計周りに反転する様に変化するか、又は、同図の(A)(b)又は(B)(b)に示す様に、徐々に反時計回りに反転する様に変化する。又、前記各磁壁15、15部分で、それぞれ磁束の反転方向が何れの方向(時計回り、反時計回り)になるかは、前記永久磁石3を造る際の着磁の仕方による。
【0009】
例えば、上述の図6〜7に示した着磁ヨーク7を使用して着磁を行う場合には、着磁対象となる永久磁石素材14(永久磁石3)の径寸法によって、前記各磁壁15、15部分での磁束の反転方向が変わってくる。即ち、前記着磁ヨーク7は高価である為、通常は、この着磁ヨーク7として、前記各着磁端子9、9の先端面と対向する位置に設けられる着磁可能範囲Tの径方向幅が広いものを使用する。これにより、被検出面に配置する磁極(N極、S極)の総数が同じで、径寸法が互いに異なる、複数サイズの永久磁石3の製造に際して、1つの着磁ヨーク7を共通使用できる様にしている。この場合に、例えば、前記着磁可能範囲Tの径方向幅との関係で、着磁対象となる永久磁石素材14の径寸法が、中程度の大きさである場合、即ち、上述の図7に示した様に、この永久磁石素材14を、前記着磁可能範囲Tの径方向中央付近に配置した状態で着磁を行う場合には、この永久磁石素材14の外径側と内径側との着磁磁界の分布に、殆ど差がなくなる。この為、前記各磁壁15、15部分での磁束の向きの反転方向は、それぞれ偶発的な要素で決まり、一定の方向に定まらなくなる(各部分で不一致になる)。これに対し、前記着磁可能範囲Tの径方向幅との関係で、着磁対象となる永久磁石素材14の径寸法が、比較的大きい又は小さい場合、即ち、この永久磁石素材14を、前記着磁可能範囲Tの外周寄り部分又は内周寄り部分に配置した状態で着磁を行う場合には、この永久磁石素材14の外径側と内径側との着磁磁界の分布に、比較的明確な差が生じる。この為、前記各磁壁15、15部分での磁束の向きの反転方向が、一定の方向に定まる(各部分で一致する)様になる。
【0010】
上述の様に、従来の着磁ヨーク7を使用して着磁を行う場合には、着磁対象となる永久磁石素材14の径寸法によって、前記各磁壁15、15部分での磁束の向きの反転方向が不一致になる場合がある。この様に各磁壁15、15部分での磁束の向きの反転方向が不一致になると、同じく一致する場合に比べて、前記永久磁石3の被検出面に存在する各磁極(N極、S極)のピッチ精度が悪化した状態となり、その分だけ、回転速度検出の信頼性が低下すると言った問題が生じる。
【0011】
尚、着磁対象となる永久磁石素材14の径寸法に拘らず、着磁後の永久磁石3に関して、前記各磁壁15、15部分での磁束の向きの反転方向を常に一致させられる様にする為に、図10に示す様な着磁ヨーク7a、即ち、コイル10aを構成する環状蛇行コイル部13aの数を1つとする事で、各着磁端子9、9の先端面と対向する部分の着磁磁界に、それぞれ径方向に関する「強」「弱」の分布が生じる様にした着磁ヨーク7aを使用する事も考えられる。しかしながら、この着磁ヨーク7aの場合には、当該径方向に関する「強」「弱」の分布が、円周方向に隣り合う位置で、互いに径方向に反転した状態になっている。この為、特に、着磁可能範囲Tの外周寄り部分又は内周寄り部分で着磁を行う場合に、前記ピッチ精度が悪化し易い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2006−58258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上述の様な事情に鑑み、着磁対象となる永久磁石素材の径寸法に拘らず、即ち、複数の着磁端子の先端面と対向する位置に設けられた着磁可能範囲のうち、何れの径方向位置で前記永久磁石素材の着磁を行うかに拘らず、着磁後の永久磁石に関して、被検出面に存在する各磁極のピッチ精度を良好にできる着磁装置を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のエンコーダの着磁装置を使用して製造されるエンコーダは、円輪状の被検出面を有すると共に、この被検出面にN極とS極とを円周方向に関して交互に配置した永久磁石を備える。
そして、本発明のエンコーダの着磁装置は、上述の様なエンコーダを製造する際に、この永久磁石となるべき永久磁石素材を着磁すべく、複数の着磁端子と、コイルとを備える。
このうちの各着磁端子は、前記被検出面に存在する磁極の総数と同じ数だけ存在し、且つ、それぞれの先端面が、単一の仮想平面内で、前記被検出面に存在する各磁極と同じピッチで円周方向に間隔をあけて配置されている。
又、前記コイルは、前記各着磁端子の外周面をそれぞれ全周に亙り囲む状態で配置され、通電に伴ってこれら各着磁端子の先端面が対向する部分に、前記永久磁石素材を着磁する為の磁束を発生させる。
特に、本発明のエンコーダの着磁装置に於いては、前記各着磁端子の先端面の径方向外端縁の形状と径方向内端縁の形状とを、それぞれ円周方向片側部分が円周方向他側部分よりも外径側に位置する形状としている。これにより、円周方向に隣り合う1対の着磁端子の先端面のうち、円周方向他側に存在する先端面の円周方向片側の端縁を、円周方向片側に存在する先端面の円周方向他側の端縁よりも、外径側に寄った位置に配置している。
【0015】
上述の様な本発明を実施する場合には、例えば請求項2に記載した発明の様に、前記各着磁端子の先端面の径方向外端縁の形状と径方向内端縁の形状とを、それぞれ円周方向に関して他側から片側に向かう程外径側に向かう方向に傾斜した直線形状とする。
或いは、請求項3に記載した発明の様に、前記各着磁端子の先端面の径方向外端縁の形状と径方向内端縁の形状とを、それぞれ円周方向中間部に段部を有するクランク形状とする。
【発明の効果】
【0016】
上述の様に構成する本発明のエンコーダの着磁装置によれば、着磁対象となる永久磁石素材の径寸法に拘らず、即ち、複数の着磁端子の先端面と対向する位置に設けられた着磁可能範囲のうち、何れの径方向位置で前記永久磁石素材の着磁を行うかに拘らず、着磁後の永久磁石に関して、被検出面に存在する各磁極のピッチ精度を良好にできる。
【0017】
即ち、本発明のエンコーダの着磁装置の場合には、前記各着磁端子の先端面の径方向外端縁及び径方向内端縁の形状を工夫する事により、円周方向に隣り合う1対の着磁端子の先端面のうち、円周方向他側に存在する先端面の円周方向片側の端縁を、円周方向片側に存在する先端面の円周方向他側の端縁よりも、外径側に寄った位置に配置している。この為、前記各着磁端子の先端面を軸方向から見た場合に、これら各先端面から出入りし、且つ、円周方向に隣り合う各先端面同士の間を行き交う磁束の方向を、それぞれ円周方向に対して同方向(円周方向に関して片側から他側に向かう程、径方向に関して内側から外側に向かう方向)に傾斜させる事ができる。従って、着磁対象となる永久磁石素材の径寸法が異なる場合でも、即ち、前記各着磁端子の先端面と対向する位置に設けられた着磁可能範囲のうち、何れの径方向位置で前記永久磁石素材の着磁を行う場合でも、着磁後の永久磁石に関して、この永久磁石の内部に存在する磁束の向きが各磁壁部分で反転する方向(円周方向片側から他側に向けて、時計回りに反転するか、又は、反時計回りに反転するか)を、常に一致させる事ができる。又、本発明の場合には、前述の図6〜7に示した従来構造の場合と同様、前記各着磁端子の周囲に配置するコイルを、これら各着磁端子の外周面をそれぞれ全周に亙り囲む状態で配置している。この為、このコイルに通電する事により、前記各着磁端子の先端面と対向する部分に着磁磁界を発生させた状態で、この着磁磁界に、径方向に関して、問題となる程度の「強」「弱」の分布が生じる事を防止できる。
以上の理由により、本発明の場合には、着磁対象となる永久磁石素材の径寸法に拘らず、即ち、前記着磁可能範囲のうち、何れの径方向位置で前記永久磁石素材の着磁を行うかに拘らず、着磁後の永久磁石に関して、被検出面に存在する各磁極のピッチ精度を良好にできる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態の第1例を、コイルを省略して示す、図7と同様の図。
【図2】同第2例を示す、図1と同様の図。
【図3】同第3例を示す、図1と同様の図。
【図4】製造対象となるエンコーダの1例を示す部分断面図。
【図5】エンコーダの被検出面の円周方向一部分を軸方向から見た図。
【図6】エンコーダの着磁装置の従来構造の1例に組み込まれる着磁ヨークを、コイルを省略して軸方向から見た図。
【図7】コイルを組み付けた状態で示す、図6のX部拡大図。
【図8】エンコーダを構成する永久磁石の円周方向一部分を径方向から見た模式図。
【図9】エンコーダを構成する永久磁石の内部に於ける磁束の向きが、磁壁部分で円周方向に関して徐々に反転する態様の4例を、この磁壁部分の円周方向寸法を拡大して、図8と同方向から見た模式図。
【図10】好ましくない構造を備えた着磁ヨークの1例を示す、図7と同様の図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[実施の形態の第1例]
図1は、請求項1、2に対応する、本発明の実施の形態の第1例を示している。尚、本例のエンコーダの着磁装置の特徴は、着磁ヨーク7bを構成する各着磁端子9a、9aの先端面の形状にある。その他の部分の構造及び作用は、これら各着磁端子9a、9aの周囲に配置するコイル10(図1には図示省略、図7参照)の構成を含み、前述の図6〜7に示した従来構造の1例の場合と同様である。この為、重複する図示並びに説明は省略若しくは簡略にし、以下、本例の特徴部分を中心に説明する。
【0020】
本例の場合には、図1に示す様に「円周方向片側」と「円周方向他側」とを定義した場合に、前記各着磁端子9a、9aの先端面の径方向外端縁11a、11aと径方向内端縁12a、12aとを、それぞれ円周方向片側部分で円周方向他側部分よりも外径側に位置させている。この為に、具体的には、前記各径方向外端縁11a、11aの形状と、前記各径方向内端縁12a、12aの形状とを、それぞれ円周方向に関して他側から片側に向かう程外径側に向かう方向に傾斜した直線形状としている。これにより、本例の場合には、円周方向に隣り合う1対の着磁端子9a、9aの先端面のうち、円周方向他側に存在する先端面の円周方向片側の端縁を、円周方向片側に存在する先端面の円周方向他側の端縁よりも、外径側に寄った位置に配置している。尚、本例の場合、着磁可能範囲T1は、前記各着磁端子9a、9aの先端面のうちで、前記各径方向外端縁11a、11aの円周方向他端縁を通過する仮想円と、前記各径方向内端縁12a、12aの円周方向片端縁を通過する仮想円との間に挟まれた部分に対し、軸方向に対向する部分となる。この理由は、前記各着磁端子9a、9aの先端面に対し軸方向に対向する部分であっても、前記着磁可能範囲T1から径方向に外れた部分では、安定した着磁磁界を発生させる事ができない為である。
【0021】
上述の様に、本例のエンコーダの着磁装置の場合には、前記各着磁端子9a、9aの先端面の径方向外端縁11a、11a及び径方向内端縁12a、12aの形状を工夫する事により、円周方向に隣り合う1対の着磁端子9a、9aの先端面のうち、円周方向他側に存在する先端面の円周方向片側の端縁を、円周方向片側に存在する先端面の円周方向他側の端縁よりも、外径側に寄った位置に配置している。この為、前記各着磁端子9a、9aの先端面を軸方向から見た場合に、これら各先端面から出入りし、且つ、円周方向に隣り合う各先端面同士の間を行き交う磁束の方向(図1中の矢印の方向)を、それぞれ円周方向に対して同方向(円周方向に関して片側から他側に向かう程、径方向に関して内側から外側に向かう方向)に傾斜させる事ができる。従って、着磁対象となる永久磁石素材14の径寸法が異なる場合でも、即ち、前記着磁可能範囲T1のうち、何れの径方向位置で前記永久磁石素材14の着磁を行う場合でも、着磁後の永久磁石3(図4、5、8、9参照)に関して、この永久磁石3の内部に存在する磁束の向き(図8〜9中の矢印の向き)が各磁壁15、15部分で反転する方向{円周方向片側から他側に向けて、図9の(A)(a)又は(B)(a)に示す様に、時計周りに反転するか、又は、同図の(A)(b)又は(B)(b)に示す様に、反時計回りに反転するか}を、常に一致させる事ができる。
【0022】
又、本例の場合には、前述の図6〜7に示した従来構造の場合と同様、前記各着磁端子9a、9aの周囲に配置するコイル10(図1には図示省略、図7参照)を、これら各着磁端子9a、9aの外周面をそれぞれ全周に亙り囲む状態で配置している。この為、このコイル10に通電する事により、前記各着磁端子9a、9aの先端面と対向する部分に着磁磁界を発生させた状態で、この着磁磁界に、径方向に関して、問題となる程度の「強」「弱」の分布が生じる事を防止できる。
以上の理由により、本例の場合には、着磁対象となる永久磁石素材14の径寸法に拘らず、言い換えれば、前記着磁可能範囲T1のうち、何れの径方向位置で前記永久磁石素材14の着磁を行うかに拘らず、着磁後の永久磁石3に関して、被検出面に存在する各磁極(N極、S極)のピッチ精度を良好にできる。
【0023】
[実施の形態の第2例]
図2は、請求項1、3に対応する、本発明の実施の形態の第2例を示している。本例の場合には、各着磁端子9b、9bの先端面の径方向外端縁11b、11bと径方向内端縁12b、12bとを、それぞれ円周方向片側部分で円周方向他側部分よりも外径側に位置させる為に、これら各端縁11b、12bの形状を、それぞれ中間部に段部を有するクランク形状としている。その他の構成及び作用は、上述した第1例の場合と同様である。
【0024】
[実施の形態の第3例]
図3は、請求項1、3に対応する、本発明の実施の形態の第3例を示している。本例の場合には、各着磁端子9c、9cの先端面の円周方向片側の端縁の外径側端部と、円周方向他側の端縁の内径側端部とに、それぞれ円周方向に突出する突出部16a、16bを設けている。そして、これら各突出部16a、16bに存在に基づいて、着磁可能範囲T3の径方向外端部及び内端部の着磁磁界の安定性を高められる様にしている。その他の構成及び作用は、上述した第2例の場合と同様である。
【符号の説明】
【0025】
1 エンコーダ
2 芯金
3 永久磁石
4 円筒部
5 円輪部
6 センサ
7、7a、7b 着磁ヨーク
8 基台
9、9a、9b、9c 着磁端子
10、10a コイル
11、11a、11b 径方向外端縁
12、12a、12b 径方向内端縁
13a、13b 環状蛇行コイル部
14 永久磁石素材
15 磁壁
16a、16b 突出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円輪状の被検出面を有すると共に、この被検出面にN極とS極とを円周方向に関して交互に配置した永久磁石を備えたエンコーダを製造する際に、この永久磁石となるべき永久磁石素材を着磁すべく、複数の着磁端子と、コイルとを備え、
このうちの各着磁端子は、前記被検出面に存在する磁極の総数と同じ数だけ存在し、且つ、それぞれの先端面が、単一の仮想平面内で、前記被検出面に存在する各磁極と同じピッチで円周方向に間隔をあけて配置されており、
前記コイルは、前記各着磁端子の外周面をそれぞれ全周に亙り囲む状態で配置され、通電に伴ってこれら各着磁端子の先端面が対向する部分に、前記永久磁石素材を着磁する為の磁束を発生させるものである
エンコーダの着磁装置に於いて、
前記各着磁端子の先端面の径方向外端縁の形状と径方向内端縁の形状とを、それぞれ円周方向片側部分が円周方向他側部分よりも外径側に位置する形状とする事により、円周方向に隣り合う1対の着磁端子の先端面のうち、円周方向他側に存在する先端面の円周方向片側の端縁を、円周方向片側に存在する先端面の円周方向他側の端縁よりも、外径側に寄った位置に配置した事を特徴とする
エンコーダの着磁装置。
【請求項2】
前記各着磁端子の先端面の径方向外端縁の形状と径方向内端縁の形状とを、それぞれ円周方向に関して他側から片側に向かう程外径側に向かう方向に傾斜した直線形状としている、請求項1に記載したエンコーダの着磁装置。
【請求項3】
前記各着磁端子の先端面の径方向外端縁の形状と径方向内端縁の形状とを、それぞれ円周方向中間部に段部を有するクランク形状としている、請求項1に記載したエンコーダの着磁装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−89758(P2013−89758A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228812(P2011−228812)
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】