説明

エンジンのガス燃料供給装置

【課題】ガス貯蔵タンクに使用されないで残される燃料ガス量を少なくするエンジンのガス燃料供給装置を提供する。
【解決手段】ガス貯蔵タンク10に貯蔵された燃料ガスをレギュレータ3が減圧してエンジン1に供給するガス燃料供給装置にあって、ガス貯蔵タンク10はその内部を燃料ガスを貯蔵するガス貯蔵室12と背圧室13に仕切る可動隔壁11と、この可動隔壁11をガス貯蔵室12の容積を縮小する方向に付勢する加圧スプリング15とを備え、この加圧スプリング15の付勢力によってガス貯蔵室12内の燃料ガスを加圧する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス貯蔵タンクに貯蔵された燃料ガスをエンジンに供給する装置の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、CNGエンジン等に設けられるガス燃料供給装置として、燃料ガスを貯蔵するガス貯蔵タンクと、ガス貯蔵タンクから取り出される燃料ガスをエンジンに導くガス供給パイプと、ガス供給パイプに介装されるレギュレータとを備え、レギュレータがガス貯蔵タンクから供給される燃料ガスの圧力を一定圧まで減圧しエンジンに供給するものがある。
【0003】
特許文献1に開示されたガス燃料供給装置は、タンク内に貯蔵された液体を加圧気体を供給することにより排出するようになっている。
【特許文献1】特開2006−272276号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来CNGエンジン等に設けられるガス燃料供給装置にあっては、タンク内圧力がレギュレータの設定圧より低下するとエンジンに対する燃料ガスの供給が停止するため、ガス貯蔵タンクに充填されても使用されない燃料ガスの残量が多くなるという問題点があった。
【0005】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、ガス貯蔵タンクに使用されないで残される燃料ガス量を少なくするエンジンのガス燃料供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では、ガス貯蔵タンクに貯蔵された燃料ガスをレギュレータが減圧してエンジンに供給するガス燃料供給装置にあって、ガス貯蔵タンクはその内部を燃料ガスを貯蔵するガス貯蔵室と背圧室に仕切る可動隔壁と、この可動隔壁をガス貯蔵室の容積を縮小する方向に付勢する加圧スプリングとを備え、この加圧スプリングの付勢力によってガス貯蔵室内の燃料ガスを加圧する構成とした。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、エンジンが運転されてガス貯蔵タンクに貯蔵された燃料ガスの残量が少なくなると、可動隔壁が移動してガス貯蔵室の圧力が略一定値に保たれ、ガス貯蔵タンクに使用されないで残される燃料ガス量を従来のものに比べて少なくする。このため、タンク内圧力がレギュレータの設定圧より低下する時期を延長し、車両の走行距離を伸ばせる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明を圧縮天然ガスを燃料とするCNGエンジンに適用した実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0009】
図1に示すように、ガス燃料供給装置は燃料ガスを貯蔵するガス貯蔵タンク10と、このガス貯蔵タンク10から取り出される燃料ガスをCNGエンジン1に導くガス供給パイプ2と、ガス供給パイプ2に介装されるレギュレータ3とを備える。レギュレータ3はガス貯蔵タンク10から供給される燃料ガスの圧力を一定圧まで減圧し、レギュレータ3で減圧された燃料ガスがエンジン1に供給される。
【0010】
ガス供給パイプ2のレギュレータ3より上流側には圧力センサ4が介装される。圧力センサ4によって検出された燃料ガスの圧力はモニター8に表示される。
【0011】
ガス貯蔵タンク10は高圧燃料ガスを貯蔵する密閉容器であり、ガス供給パイプ2が接続される出口を開閉する吐出弁5と、ガス充填パイプ7が接続される入口を開閉する充填弁6とを備える。燃料ガス供給源からガス充填パイプ7を通して供給される燃料ガスは、充填弁6が開かれると、ガス貯蔵タンク10内に充填される。
【0012】
そして本発明の要旨とするところであるが、ガス貯蔵タンク10はその内部を燃料ガスを貯蔵するガス貯蔵室12と背圧室13に仕切る可動隔壁11と、この可動隔壁11をガス貯蔵室12の容積を縮小する方向に付勢する加圧スプリング15とを備え、加圧スプリング15の付勢力によってガス貯蔵室12内の燃料ガスを加圧する。
【0013】
ガス貯蔵タンク10は有底円筒状に形成され、可動隔壁11は円盤状に形成され、可動隔壁11がガス貯蔵タンク10内に摺動可能に介装される。可動隔壁11の外周部とガス貯蔵タンク10の内壁面の間は図示しないシール等を介して密封される。
【0014】
加圧スプリング15は可動隔壁11の背面とガス貯蔵タンク10の底部14の間に予め圧縮された状態で介装され、可動隔壁11をガス貯蔵室12の容積を縮小する方向に付勢する。
【0015】
以上のように構成されて、次に作用及び効果について説明する。
【0016】
燃料ガスの充填時、ガス充填パイプ7をガス貯蔵タンク10に接続し、充填弁6を開き、燃料ガス供給源から供給される高圧の燃料ガスがガス貯蔵タンク10内に充填される。燃料ガスがガス貯蔵タンク10のガス貯蔵室12に充填され、ガス貯蔵室12の圧力が上昇するのに伴って可動隔壁11が加圧スプリング15を圧縮しながら底部14に近付く方向(図中右方向)に移動する。
【0017】
エンジン1の運転時、ガス貯蔵タンク10に貯蔵された高圧の燃料ガスはガス供給パイプ2を通して供給され、レギュレータ3で減圧された燃料ガスがエンジン1に供給される。ガス貯蔵室12から燃料ガスが流出し、ガス貯蔵室12の圧力が所定値より低下すると、可動隔壁11が加圧スプリング15の付勢力によって底部14から離れる方向(図中左方向)に移動し、ガス貯蔵室12の容積が次第に縮小する。
【0018】
図1のモニター8にはガス貯蔵室12の圧力(タンク内圧力)が変化する様子が表示されている。これに表示されるように、ガス貯蔵タンク10からエンジン1に燃料ガスを供給する使用期間が長くなるのにしたがってガス貯蔵室12の圧力(タンク内圧力)が次第に低下するが、ガス貯蔵室12の圧力が所定値より低下すると、可動隔壁11が加圧スプリング15の付勢力によって移動し、ガス貯蔵室12を次第に縮小することにより、ガス貯蔵室12の圧力が略一定値に保たれる。可動隔壁11が所定のストローク移動して停止すると、ガス貯蔵室12の圧力がレギュレータ3の設定圧(ガス使用限界値)より低下し、エンジン1に対する燃料ガスの供給が停止する。
【0019】
図2のモニター8に表示された特性は、従来のガス貯蔵タンクが備えるものであり、可動隔壁11が移動してガス貯蔵室12の圧力が略一定値に保たれる期間が無いため、ガス貯蔵タンクに充填されても使用されない燃料ガス量が多く、タンク内圧力がレギュレータの設定圧(ガス使用限界値)より低下する時期が早まる。
【0020】
以上のように、本発明は、ガス貯蔵タンク10に貯蔵された燃料ガスをレギュレータ3が減圧してエンジン1に供給するガス燃料供給装置にあって、ガス貯蔵タンク10はその内部を燃料ガスを貯蔵するガス貯蔵室12と背圧室13に仕切る可動隔壁11と、この可動隔壁11をガス貯蔵室12の容積を縮小する方向に付勢する加圧スプリング15とを備え、加圧スプリング15の付勢力によってガス貯蔵室12内の燃料ガスを加圧する構成としたため、可動隔壁11が移動してガス貯蔵室12の圧力が略一定値に保たれる期間が設けられ、エンジンが運転されてガス貯蔵タンクに貯蔵された燃料ガスの残量が少なくなると、ガス貯蔵タンク10に使用されないで残される燃料ガス量を従来のものに比べて少なくし、タンク内圧力がレギュレータ3の設定圧(ガス使用限界値)より低下する時期を延長し、車両の走行距離を伸ばせる。
【0021】
また、ガス貯蔵タンク10内を加圧するのにエンジン1の動力を使用しないため、エンジン1の燃費悪化が避けられる。さらに、燃料ガスの圧力回路を変更する必要がなく、容易に実施できる。
【0022】
なお、ガス貯蔵室12と背圧室13に仕切る可動隔壁11は、上記したようにガス貯蔵タンク10内を摺動するピストン式のものに限らず、伸縮可能なベローズ等を用いても良い。
【0023】
本発明は上記の実施形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明のEGR装置は、CNGエンジンに限らず、他の燃料ガスを用いるエンジンに利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態を示すエンジンのガス燃料供給装置の構成図。
【図2】従来例を示す使用期間とタンク内圧力の関係を示す図。
【符号の説明】
【0026】
1 エンジン
2 ガス供給パイプ
3 レギュレータ
5 吐出弁
6 充填弁
7 ガス充填パイプ
10 ガス貯蔵タンク
11 可動隔壁
12 ガス貯蔵室
13 背圧室
15 加圧スプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス貯蔵タンクに貯蔵された燃料ガスをレギュレータが減圧してエンジンに供給するガス燃料供給装置にあって、
前記ガス貯蔵タンクはその内部を燃料ガスを貯蔵するガス貯蔵室と背圧室に仕切る可動隔壁と、
この可動隔壁を前記ガス貯蔵室の容積を縮小する方向に付勢する加圧スプリングとを備え、
この加圧スプリングの付勢力によって前記ガス貯蔵室内の燃料ガスを加圧する構成としたことを特徴とするエンジンのガス燃料供給装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−202720(P2008−202720A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−40757(P2007−40757)
【出願日】平成19年2月21日(2007.2.21)
【出願人】(000003908)日産ディーゼル工業株式会社 (1,028)
【Fターム(参考)】