説明

エンジンの巻き掛け伝動装置

【課題】ボス締結具が緩みにくく、ボス締結具の腐食が抑制される、エンジンの巻き掛け伝動装置を提供する。
【解決手段】回転軸1にボス締結具4を取り付け、このボス締結具4の締結力で、このボス締結具4と回転軸1側の受け座1aとの間に取付ボス2を挟み付けて固定し、巻き掛け伝動輪3に巻き掛け伝動帯5を巻き掛けたエンジンの巻き掛け伝動装置において、取付ボス2を主取付ボス2とし、この主取付ボス2を巻き掛け伝動輪3とは別部品とし、主取付ボス2の前側にあるボス締結具4の前方で、巻き掛け伝動輪3に補助取付ボス6を設け、主取付ボス2に巻き掛け伝動輪3を連結し、主取付ボス2と補助取付ボス6とで巻き掛け伝動輪3を回転軸1に取り付け、巻き掛け伝動輪3と補助取付ボス6とでボス締結具4を周囲と前方から覆っている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの巻き掛け伝動装置に関し、詳しくは、ボス締結具が緩みにくく、ボス締結具の腐食が抑制される、エンジンの巻き掛け伝動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンの巻き掛け伝動装置として、回転軸に取付ボスを嵌め、この取付ボスを介して回転軸に巻き掛け伝動輪を取り付けるに当たり、回転軸にボス締結具を取り付け、このボス締結具の締結力で、このボス締結具と回転軸側の受け座との間に取付ボスを挟み付けて固定し、巻き掛け伝動輪に巻き掛け伝動帯を巻き掛けたものがある。
この種の装置によれば、簡易な構造によって、回転軸と他の回転軸との間で動力の伝動ができる利点がある。
しかし、この従来技術では、巻き掛け伝動輪が1個所の取付ボスのみで回転軸に取り付けてられていることや、ボス締結具が巻き掛け伝動輪の前方に対して露出していることにより、問題が生じている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−158722号公報(図1参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
《問題1》 ボス締結具が緩むことがある。
巻き掛け伝動輪が1個所の取付ボスのみで回転軸に取り付けてられているため、巻き掛け伝動帯の張力が強い場合には、巻き掛け伝動輪が回転軸の中心軸に対して傾斜し、ボス締結具が緩みやすい。
【0005】
《問題2》 ボス締結具が腐食しやすい。
ボス締結具が巻き掛け伝動輪の前方に対して露出しているので、ボス締結具に泥水等がかかり、締結具が腐食しやすい。
【0006】
本発明の課題は、ボス締結具が緩みにくく、ボス締結具の腐食が抑制される、エンジンの巻き掛け伝動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明の発明特定事項は、次の通りである。
図1に例示するように、回転軸(1)に取付ボス(2)を嵌め、この取付ボス(2)を介して回転軸(1)に巻き掛け伝動輪(3)を取り付けるに当たり、回転軸(1)にボス締結具(4)を取り付け、このボス締結具(4)の締結力で、このボス締結具(4)と回転軸(1)側の受け座(1a)との間に取付ボス(2)を挟み付けて固定し、巻き掛け伝動輪(3)に巻き掛け伝動帯(5)を巻き掛けたエンジンの巻き掛け伝動装置において、
上記取付ボス(2)を主取付ボス(2)とし、この主取付ボス(2)を巻き掛け伝動輪(3)とは別部品とし、主取付ボス(2)の前側にあるボス締結具(4)の前方で、巻き掛け伝動輪(3)に補助取付ボス(6)を設け、主取付ボス(2)に巻き掛け伝動輪(3)を連結し、主取付ボス(2)と補助取付ボス(6)とで巻き掛け伝動輪(3)を回転軸(1)に取り付け、
巻き掛け伝動輪(3)と補助取付ボス(6)とでボス締結具(4)を周囲と前方から覆っている、ことを特徴とするエンジンの巻き掛け伝動装置。
【発明の効果】
【0008】
(請求項1に係る発明)
請求項1に係る発明は、次の効果を奏する。
《効果1》 ボス締結具が緩みにくい。
主取付ボス(2)を巻き掛け伝動輪(3)とは別部品とし、主取付ボス(2)の前側にあるボス締結具(4)の前方で、巻き掛け伝動輪(3)に補助取付ボス(6)を設け、主取付ボス(2)に巻き掛け伝動輪(3)を連結し、主取付ボス(2)と補助取付ボス(6)とで巻き掛け伝動輪(3)を回転軸(1)に取り付けているので、巻き掛け伝動帯(5)の張力が強い場合でも、巻き掛け伝動輪(3)が回転軸(1)に対して傾斜しにくく、ボス締結具(4)が緩みにくい。
【0009】
《効果2》 ボス締結具の腐食が抑制される。
巻き掛け伝動輪(3)と補助取付ボス(6)とでボス締結具(4)を周囲と前方から覆っているので、ボス締結具(4)に泥水等がかかりにくく、ボス締結具(4)の腐食が抑制される。
【0010】
(請求項2に係る発明)
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果3》 主取付ボスの廻り止めの負担が軽減される。
主取付ボス(2)は回転軸(1)にキー(7)で廻り止めし、補助取付ボス(6)は回転軸(1)にスプライン(8)で廻り止めしたので、主取付ボス(2)の廻り止めの負担が軽減される。主取付ボス(2)の廻り止めの負担が軽減される。
【0011】
(請求項3に係る発明)
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果4》 伝動輪連結ボルトの破断が防止される。
主取付ボス(2)にフランジ(2a)を設け、このフランジ(2a)の後面に摩擦板(9)を沿わせ、巻き掛け伝動輪(3)とフランジ(2a)とを貫通させた伝動輪連結ボルト(10)をフランジ(2a)側のメネジ孔(11)に螺着させ、この伝動輪連結ボルト(10)の締結力で巻き掛け伝動輪(3)と摩擦板(9)との間にフランジ(2a)を挟み付けて、主取付ボス(2)に巻き掛け伝動輪(3)を連結したため、巻き掛け伝動帯(5)の張力が強く、巻き掛け伝動帯(5)と巻き掛け伝動輪(3)との間の摩擦抵抗が大きい場合でも、フランジ(2a)の後面に沿わせた摩擦板(9)により、巻き掛け伝動輪(3)とフランジ(2a)との間で十分な滑り止めがなされ、これらの滑りに起因する伝動輪連結ボルト(10)の破断が防止される。
【0012】
(請求項4に係る発明)
請求項4に係る発明は、請求項1から請求項3のいずれかに係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果5》 上記効果が顕在化する。
巻き掛け伝動輪(3)に複数の巻き掛け伝動帯(5a)(5b)を捲き掛けた場合には、捲き掛け伝動帯(5)の張力が強い場合の課題解決の効果、すなわち上記効果1、3、4が顕在化する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係るエンジンの捲き掛け伝動装置を説明する縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は本発明の実施形態に係るエンジンの捲き掛け伝動装置を説明する縦断側面図であり、この実施形態では、ディーゼルエンジンのベルト伝動装置について説明する。
【0015】
このベルト伝動装置の概要は、次の通りである。
回転軸(1)に取付ボス(2)を嵌め、この取付ボス(2)を介して回転軸(1)に巻き掛け伝動輪(3)を取り付けるに当たり、回転軸(1)にボス締結具(4)を取り付け、このボス締結具(4)の締結力で、このボス締結具(4)と回転軸(1)側の受け座(1a)との間に取付ボス(2)を挟み付けて固定し、巻き掛け伝動輪(3)に巻き掛け伝動帯(5)を巻き掛けている。
回転軸(1)はクランク軸である。捲き掛け伝動輪(3)はベルト伝動プーリである。ボス締結具(4)はボス締結ナットである。回転軸(1)側の受け座(1a)はクランク軸の径大部の端面である。後述するカラー(15)やクランクギヤ(16)をクランク軸に締まり嵌めで固定している場合には、このカラー(15)やクランクギヤ(16)が回転軸(1)側の受け座(1a)となる。捲き掛け伝動帯(5)は、エンジン冷却ファン(図外)とコンプレッサ(図外)にそれぞれクランク軸の動力を伝動するファンベルト(5a)とコンプレッサ連動ベルト(5b)である。コンプレッサ連動ベルト(5b)に代えて、コンバインのグレンタンクのスクリューコンベア駆動ベルト等の他の連動ベルトを用いてもよい。捲き掛け伝動輪(3)をスプロケットとし、捲き掛け伝動帯(5)をチェーンとしてもよい。
【0016】
上記取付ボス(2)を主取付ボス(2)とし、この主取付ボス(2)を巻き掛け伝動輪(3)とは別部品とし、主取付ボス(2)の前側にあるボス締結具(4)の前方で、に巻き掛け伝動輪(3)に補助取付ボス(6)を設け、主取付ボス(2)に巻き掛け伝動輪(3)を連結し、主取付ボス(2)と補助取付ボス(6)とで巻き掛け伝動輪(3)を回転軸(1)に取り付け、巻き掛け伝動輪(3)と補助取付ボス(6)とでボス締結具(4)を周囲と前方から覆っている。
【0017】
主取付ボス(2)は回転軸(1)にキー(7)で廻り止めし、補助取付ボス(6)は回転軸(1)にスプライン(8)で廻り止めしている。主取付ボス(2)にフランジ(2a)を設け、このフランジ(2a)の後面に摩擦板(9)を沿わせ、巻き掛け伝動輪(3)とフランジ(2a)とを貫通させた伝動輪連結ボルト(10)をフランジ(9)側のメネジ孔(11)に螺着させ、この伝動輪連結ボルト(10)の締結力で巻き掛け伝動輪(3)と摩擦板(9)との間にフランジ(2a)を挟み付けて、主取付ボス(2)に巻き掛け伝動輪(3)を連結している。
【0018】
捲き掛け伝動輪(3)は、補助取付ボス(6)とリム(12)とをアーム(13)で連結したもので、アーム(13)は円錐台形に形成し、その内部にボス締結具(4)を収容している。摩擦板(9)は円環形で、主取付ボス(2)に嵌め、止め輪(14)で抜け止めしている。ボス締結具(4)と回転軸(1)の受け座(1a)との間には取付ボス(2)だけでなく、カラー(15)とクランクギヤ(16)も配置し、これらも取付ボス(2)とともに、ボス締結具(4)の締結力で巻き掛け伝動輪(3)と摩擦板(9)との間に挟み付けている。カラー(15)には、ギヤケース(17)のオイルシール(18)を接当させている。
【符号の説明】
【0019】
(1) 回転軸
(1a) 受け座
(2) 主取付ボス
(2a) フランジ
(3) 巻き掛け伝動輪
(4) ボス締結具
(5) 巻き掛け伝動帯
(5a) ファンベルト
(5b) コンプレッサ連動ベルト
(6) 補助取付ボス
(7) キー
(8) スプライン
(9) フランジ
(10) 伝動輪連結ボルト
(11) メネジ孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸(1)に取付ボス(2)を嵌め、この取付ボス(2)を介して回転軸(1)に巻き掛け伝動輪(3)を取り付けるに当たり、回転軸(1)にボス締結具(4)を取り付け、このボス締結具(4)の締結力で、このボス締結具(4)と回転軸(1)側の受け座(1a)との間に取付ボス(2)を挟み付けて固定し、巻き掛け伝動輪(3)に巻き掛け伝動帯(5)を巻き掛けたエンジンの巻き掛け伝動装置において、
上記取付ボス(2)を主取付ボス(2)とし、この主取付ボス(2)を巻き掛け伝動輪(3)とは別部品とし、主取付ボス(2)の前側にあるボス締結具(4)の前方で、巻き掛け伝動輪(3)に補助取付ボス(6)を設け、主取付ボス(2)に巻き掛け伝動輪(3)を連結し、主取付ボス(2)と補助取付ボス(6)とで巻き掛け伝動輪(3)を回転軸(1)に取り付け、
巻き掛け伝動輪(3)と補助取付ボス(6)とでボス締結具(4)を周囲と前方から覆っている、ことを特徴とするエンジンの巻き掛け伝動装置。
【請求項2】
請求項1に記載したエンジンの巻き掛け伝動装置において、
主取付ボス(2)は回転軸(1)にキー(7)で廻り止めし、補助取付ボス(6)は回転軸(1)にスプライン(8)で廻り止めした、ことを特徴とするエンジンの巻き掛け伝動装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載したエンジンの巻き掛け伝動装置において、
主取付ボス(2)にフランジ(2a)を設け、このフランジ(2a)の後面に摩擦板(9)を沿わせ、
巻き掛け伝動輪(3)とフランジ(2a)とを貫通させた伝動輪連結ボルト(10)をフランジ(9)側のメネジ孔(11)に螺着させ、この伝動輪連結ボルト(10)の締結力で巻き掛け伝動輪(3)と摩擦板(9)との間にフランジ(2a)を挟み付けて、主取付ボス(2)に巻き掛け伝動輪(3)を連結した、ことを特徴とするエンジンの巻き掛け伝動装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載したエンジンの巻き掛け伝動装置において、
巻き掛け伝動輪(3)に複数の巻き掛け伝動帯(5a)(5b)を捲き掛けた、ことを特徴とするエンジンの巻き掛け伝動装置。

【図1】
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【公開番号】特開2010−216369(P2010−216369A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−63933(P2009−63933)
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】