説明

エンジンの排気浄化装置

【課題】DPFの再生中に、DPFからPMを離脱させEGRさせ得るエンジンの排気浄化装置を提供する。
【解決手段】エンジン10の排気通路40の途中を分岐した分岐通路50、52のうち、分岐通路50に配設されたDPF60と、DPF60より上流側の分岐通路50、及び分岐通路52をそれぞれ開閉する第1バルブ50a、第2バルブ52aと、DPF60より上流側で第1バルブ50aより下流側の分岐通路50とエンジン10の吸気通路20とを連通するEGR管54と、DPF60の再生時に、分岐通路50を閉じる一方、分岐通路52を開くように第1バルブ50a、第2バルブ52aを制御するECU80と、を含んで排気浄化装置を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気から粒子状物質(PM)を除去するエンジンの排気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンから排出された排気を浄化する排気浄化装置として、排気に含まれたPMを捕集除去するディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)を排気管に配設したものがある。かかるDPFは、捕集したPMの増加により目詰まりを発生するので、捕集したPMを焼却、酸化除去するなどの定期的な再生処理が不可欠である。しかし、PMを着火焼却する強制再生式は、例えば、PMが一気に燃焼するとDPFが過熱し、溶損や破損などの熱害を発生させるおそれがある。また、PMを酸化除去する連続再生式は、触媒温度によっては十分な酸化反応が得られず不十分な再生処理となる場合があり得る。このため、特開2004−108194号公報(特許文献1)に記載されるように、排気下流に向かう流れとは逆方向の高圧気体によりDPFを逆洗することで、熱害の発生を防止しつつ、触媒温度に左右されないDPFの再生技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−108194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の提案技術では、熱害の発生を防止しつつ、酸化反応の生じにくい低温であってもPMを除去できるものの、逆洗したPMをDPFの上流側に設けた容器に収集する構成であるため、エンジンの停止後でなければ、DPFの再生処理を実行できなかった。また、収集したPMの除去処理は、容器の取り外しを伴い、作業が煩雑であった。
【0005】
そこで、本発明は、以上のような従来の問題点に鑑み、DPFを排気で逆洗することで、DPFからPMを離脱させて再生すると共に、この離脱PMを含む排気をEGRさせ得るエンジンの排気浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このため、請求項1記載のエンジンの排気浄化装置は、エンジンの排気通路の途中を複数に分岐した分岐通路のうち、少なくとも1つの分岐通路を除いた分岐通路に配設され、排気中のPMを捕集するフィルタと、前記フィルタが配設されている分岐通路では、フィルタより上流側の分岐通路を開閉し、前記フィルタが配設されてない分岐通路では、該分岐通路を開閉する分岐通路開閉手段と、前記フィルタより上流側で前記分岐通路開閉手段より下流側の分岐通路と前記エンジンの吸気通路とを連通するEGR管と、フィルタの再生時に、前記フィルタが配設されている分岐通路を閉じる一方、前記フィルタが配設されてない分岐通路を開くように前記分岐通路開閉手段を制御する制御手段と、フィルタの再生時に、各分岐通路が合流する合流部より下流側の排気通路の開度を調整する開度調整手段と、を含んで構成されたことを特徴とする。
【0007】
また、請求項2記載のエンジンの排気浄化装置は、前記EGR管が、前記エンジンに設けられた過給器のコンプレッサより上流側の吸気通路に連通していることを特徴とする。
請求項3記載の発明では、前記制御手段は、前記エンジンの運転時間を積算し、該積算時間が所定時間以上になると、フィルタの再生開始時であると判定することを特徴とする。
【0008】
請求項4記載の発明では、前記制御手段は、エンジン運転状態に応じたPMの排出流量を推定し、該排出流量の積算値が第1所定値以上になると、フィルタの再生開始時であると判定することを特徴とする。
【0009】
請求項5記載の発明では、フィルタの上流側と下流側との差圧を検出する差圧検出手段をさらに含んで構成され、前記制御手段は、検出した差圧が所定圧力以上であれば、フィルタの再生開始時であると判定することを特徴とする。
【0010】
請求項6記載の発明では、前記制御手段は、フィルタの再生開始時から、エンジン運転状態又は高圧気体の供給流量に対応してフィルタから離脱するPMの離脱流量を推定し、該離脱流量の積算値が第2所定値以上になると、フィルタの再生完了時と判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明によれば、フィルタの再生時に、フィルタが配設されている分岐通路のフィルタより上流側を閉じる一方、フィルタが配設されてない分岐通路を開くようにする。これにより、排気は、フィルタが配設されてない分岐通路へ流れ、分岐通路が合流する合流部において、その一部が分流して、フィルタが配設されている分岐通路へと逆流する。そして、この逆流排気が、フィルタを逆洗して捕集PMを離脱させ、EGR管を介して、エンジンの吸気通路へ還流される。このため、熱害を生じさせず且つ排気温度に左右されずに、エンジン運転状態のままでフィルタを再生することができると共に、捕集PMをEGRさせて除去することができる。また、フィルタの再生時に、分岐通路の合流部から下流側の排気通路の開度を調整することにより、再生対象のフィルタが配設されている分岐通路へと逆流する排気流量を調整できるので、EGR率を調整することができる。
【0012】
請求項2記載の発明によれば、EGR管が過給器のコンプレッサよりも上流側の吸気通路に連通される。ここでの吸気圧はコンプレッサよりも下流側の吸気通路に比べて低圧であるので、広範なエンジン運転状態において、離脱PMを含む排気を容易に還流させることができる。
【0013】
請求項3〜5記載の発明によれば、積算したエンジン運転時間が所定時間以上になったとき、エンジン運転状態に応じて推定したPM排出流量の積算値が第1所定値以上になったとき、検出した差圧が所定圧力以上であるとき、をフィルタの再生開始時と判定し、フィルタの再生を開始することができる。
【0014】
請求項6記載の発明によれば、エンジン運転状態に応じて推定したPM離脱流量の積算値が第2所定値以上になったときを、フィルタの再生完了時と判定する。このため、フィルタを逆洗する流体の流量に応じて再生完了時を変動させるフィルタ再生が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1の実施形態に係るエンジンの排気浄化装置の全体図
【図2】フィルタ再生処理を説明するフローチャート
【図3】第2の実施形態に係るエンジンの排気浄化装置の全体図
【図4】第3の実施形態に係るエンジンの排気浄化装置の全体図
【図5】(a)はPM排出マップ、(b)はPM離脱マップの説明図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付された図面を参照して本発明を詳述する。
図1に、エンジンの排気浄化装置の第1の実施形態を示す。ディーゼルエンジン10は、吸気通路20に介装されたコンプレッサ30a及び排気通路40に介装されたタービン30bを含んで構成されるターボ過給器30を備えている。
【0017】
排気通路40は、その途中が複数、例えば、第1分岐通路50と第2分岐通路52との2つに分岐した分岐構造となっている。2つの分岐通路のうち少なくとも1つの分岐通路を除いた分岐通路、例えば、第1分岐通路50には、排気流通方向に沿って、その通路を開閉する遠隔操作可能な第1バルブ50aと、排気中のPMを捕集するDPF60と、がこの順番で配設される。また、第1バルブ50aとDPF60との間に位置する第1分岐通路50には、ディーゼルエンジン10の吸気通路20に排気を還流させる方向にのみ開弁するチェックバルブ54aが配設されたEGR管54が接続される。一方、第2分岐通路52には、その通路を開閉する遠隔操作可能な第2バルブ52aが配設される。なお、分岐通路開閉手段として、2つの分岐通路50、52に2つのバルブ50a、52aをそれぞれ配設したが、2つの分岐通路50、52へと分岐する分岐部40aに3方向切替弁のような多方向切替弁を配設するようにしてもよい。
【0018】
また、2つの分岐通路が合流する合流部40bの排気下流に位置する排気通路40には、その排気流路面積を全開〜全閉に亘って多段階又は連続的に制御するバタフライバルブ42が配設される。
【0019】
DPF60の上流側と下流側との差圧を検出する差圧検出手段として、分岐部40aの排気上流に位置する排気通路40内の排気圧を検出する圧力センサ70aと、合流部40bの排気下流に位置する排気通路40内の排気圧を検出する圧力センサ70bと、が取り付けられる。なお、差圧検出手段としては、1つのセンサでDPF60の上流側と下流側との差圧を検出するものであってもよい。また、ディーゼルエンジン10には、エンジンの回転速度Neを検出するエンジン回転速度センサ72と、燃料噴射量、吸気流量、吸気負圧、要求トルク、過給圧などのエンジン負荷Qを検出するエンジン負荷センサ74と、が取り付けられる。
【0020】
そして、各センサ70a、70b、72、74から出力される圧力信号Pa、Pb、回転速度Ne、エンジン負荷Qが、コンピュータ内蔵の電子制御ユニット(ECU)80へ入力される。ECU80は、そのROM(Read Only Memory)などに記憶された制御プログラムを実行することで、例えば、圧力信号Pa、Pbから得られる差圧Pや、回転速度Ne及びエンジン負荷Qなどのエンジン運転状態に応じて、第1バルブ50a、第2バルブ52a及びバタフライバルブ42などを適宜駆動制御する。
【0021】
ディーゼルエンジン10始動時におけるバルブの初期状態は、例えば、第1バルブ50aが開状態であり、第2バルブ52aは閉状態である。この状態で、ディーゼルエンジン10から排気が排出されると、かかる排気は、エキゾーストマニホールドからタービン30bを回転させて排気通路40へ流れ、分岐部40aから第1分岐通路50へと導かれてEGR管54及びDPF60へと流れる。EGR管54に導かれた排気は、チェックバルブ54aを経て、過給器30より下流側の吸気通路20へ還流される。DPF60へ導かれた排気は、PMが捕集された後、合流部40bから排気通路40へ流れる。このとき、バタフライバルブ42の開度が調整されて、EGR率が制御される。
【0022】
図2は、図1のECU80において、エンジン始動を契機として繰り返し実行される制御プログラムの内容を示す。
ステップ1(図では「S1」と略記する。以下同様)では、DPF60の再生開始時であるか否かを判定する。ここでは、検出した圧力信号Pa、Pbの差圧Pがエンジン出力に影響を与えない第1の所定圧力以上であれば、DPF60の再生開始時と判定してステップ2へ進む(Yes)。一方、それ以外であれば、DPF60の再生開始時ではないと判定してステップ6へ進む(No)。ステップ6では、エンジン運転状態に応じて、EGR率を演算し、これに基づきバタフライバルブ42の開度を調整して、EGR率を調整する。
【0023】
ステップ2では、第1バルブ50aを閉じ、第2バルブ52aを開き、フィルタ再生開始時のバルブ切換制御を実行する。このバルブ切換制御により、フィルタ再生中に排気通路40を流れる排気は、分岐部40aから第2分岐通路52へと流れ、合流部40bにおいて、その一部が分流して、第1分岐通路50へと逆流する。そして、この逆流排気が、DPF60を逆洗することにより、捕集PMを離脱させて再生し、さらに、離脱PMを含む排気が、EGR管54へと流れて還流される。これにより、熱害を生じさせず且つ排気温度に左右されずに、ディーゼルエンジン10の運転状態のままで、DPF60を十分に再生することができると共に、離脱PMを除去することができる。
【0024】
ステップ3では、エンジン運転状態に応じてEGR率を演算し、これに基づいてバタフライバルブ42の開度を調整して、EGR率を調整する。例えば、ディーゼルエンジン10が完全燃焼の運転状態にある場合には、PMの発生が少ないことから、NOx排出量低減のため、EGR率を大きくする。この場合には、排気通路40の開度を小さくするようにバタフライバルブ42の開度を絞り制御して、EGR率を増加させる。なお、EGR率は、例えば、EGR管54が連通するインテークマニホールドにNOxセンサを設けてNOx濃度を測定したり、エンジン運転状態に応じた排出NOxマップから排気中のNOx濃度を演算し、この結果に基づき演算するようにしてもよい。この場合、EGR率の演算に用いられる吸気流量のパラメータは、例えば、エアフローセンサを設けて吸気流量を測定したり、エンジン運転状態に応じた吸気流量マップから吸気流量を演算するなどして求めることができる。
【0025】
ステップ4では、DPF60の再生完了時であるか否かを判定する。ここでは、差圧Pが第1の所定圧力よりも小さい第2の所定圧力未満になれば、DPF60の再生完了時と判定してステップ5へ進む(Yes)。一方、それ以外であれば、DPF60の再生完了時でないと判定してステップ3へ戻り(No)、バタフライバルブ42の開度調整を繰り返す。
【0026】
ステップ5では、第1バルブ50aを開き、第2バルブ52aを閉じて、バルブを初期状態に復帰するフィルタ再生完了時のバルブ切換制御を実行する。
以上の排気浄化装置は、排気通路40の途中を2本に分岐した分岐構造としたが、2本以上に分岐した分岐構造であってもよい。また、DPF60は、CSF(Catalyzed Soot Filter)でもよく、DPF60より上流側にディーゼル用酸化触媒(DOC)を配置したり、DPF60より上流側にCSF及び下流側に触媒化DPFを配置するようにしてもよい。さらに、複数の分岐通路にフィルタを配設する場合には、例えば、分岐通路の1段目にCSFを配設し、2段目にCSF、DPF及び触媒化DPFの順番で配設するなどの組み合わせを適宜適用することができる。これは、後述する各実施形態でも同様である。
【0027】
図3に、エンジンの排気浄化装置の第2の実施形態を示す。ここでは、第1の実施形態の構成を基本にして、2つの分岐通路にそれぞれDPFを配設し、このうち一方でPMを捕集しながら、他方を適宜再生する。以下、第1の実施形態と共通の構成は、その説明を適宜省略する。
【0028】
第1分岐通路50には、排気流通方向に沿って、その通路を開閉する遠隔操作可能な第1バルブ50aと、排気中のPMを捕集する第1DPF62と、がこの順番で配設される。同様に、第2分岐通路52には、排気流通方向に沿って、その通路を開閉する遠隔操作可能な第2バルブ52aと、排気中のPMを捕集する第2DPF64と、がこの順番で配設される。
【0029】
第1バルブ50aと第1DPF62との間に位置する第1分岐通路50には、少なくとも分岐通路側が独立した第1独立形状部56及び第2独立形状部58を有するEGR管54の第1独立形状部56が接続され、第2バルブ52aと第2DPF64との間に位置する第2分岐通路52には、第2独立形状部58が接続される。第1独立形状部56には、その流路を開閉する遠隔操作可能な第1EGRバルブ56aが配設され、第2独立形状部58にも、その流路を開閉する遠隔操作可能な第2EGRバルブ58aが配設される。なお、EGR管開閉手段として、2つの独立形状部56、58に2つのEGRバルブ56a、58aを配設したが、2つの独立形状部56、58が合流する合流部に3方向切替弁のような多方向切替弁を配設するようにしてもよい。
【0030】
ディーゼルエンジン10始動時におけるバルブの初期状態は、例えば、第1バルブ50a及び第1EGRバルブ56aが開状態であり、第2バルブ52a及び第2EGRバルブ58aは閉状態である。排気は、第1の実施形態と同様の流路を辿る。
【0031】
第1DPF62、第2DPF64の再生処理は、第1の実施形態におけるDPF60の再生処理と基本的に同一であるが、2つのDPFを交互に再生するので、図2におけるステップ2の再生開始時のバルブ切換制御、及び、ステップ5の再生完了時のバルブ切換制御が異なる。
【0032】
第1DPF62の再生開始時のバルブ切換制御では、第1バルブ50aを閉じ、第2バルブ52aを開く。このバルブ切替制御により、排気は、第1の実施形態と同様の経路を辿ることに加えて、第2DPF64でPMが捕集され、第1DPF62から離脱PMを含む排気となり、第1独立形状部56へと流れて還流される。これにより、熱害を生じさせず且つ排気温度に左右されずに、ディーゼルエンジン10の運転状態のままで、第1DPF62を再生及び離脱PMを除去しながら、第2DPF64でPMを捕集することができる。
【0033】
再生完了時のバルブ切換制御では、第1EGRバルブ56aを閉じ、第2EGRバルブ58aを開く。これにより、第2DPF64をメインとしたPM捕集に切り替わる。
第2DPF64の再生開始時及び再生完了時のバルブ切換制御では、フィルタ再生中に分流した逆流排気が第2DPF64を逆洗すると共にこれを還流させ、フィルタ再生完了後に第1DPF62がPM捕集するように、第1DPF62のフィルタ再生処理と同じようなバルブ切換制御を実行する。
【0034】
図4に、エンジンの排気浄化装置の第3の実施形態を示す。ここでは、第2の実施形態の構成を基本にして、高圧気体を用いて交互にフィルタを再生する。以下、第2の実施形態と同様の構成は、その説明を適宜省略する。
【0035】
第1分岐通路50には、第1DPF62より下流側に、その通路を閉塞する遠隔操作可能な第3バルブ50bが配設され、第2分岐通路52にも、第2DPF64より下流側に、その通路を閉塞する遠隔操作可能な第4バルブ52bが配設される。
【0036】
第1DPF62と第3バルブ50bとの間に位置する第1分岐通路50には、高圧気体を供給する高圧気体供給手段としてのエアリザーバ90へ接続する第1供給通路92が連結される。同様に、第2DPF64と第4バルブ52bとの間に位置する第2分岐通路52には、エアリザーバ90へ接続する第2供給通路94が連結される。供給通路92、94は、エアリザーバ90側で合流するマニホールド形状になっている。また、第1供給通路92には、エアリザーバ90からの高圧気体を第1分岐通路50へ導入する遠隔操作可能な第1切替バルブ92aが配設され、第2供給通路94にも、エアリザーバ90からの高圧気体を第2分岐通路52へ導入する遠隔操作可能な第2切替バルブ94aが配設される。なお、分岐通路閉塞手段として2つの分岐通路50、52に2つのバルブ50b、52bを配設し、及び、供給通路切替手段として2つの供給通路92,94に2つの切替バルブ92a、94aを配設したが、合流部40b、及び、2つの供給通路92、94の合流部に、3方向切替弁のような多方向切替弁をそれぞれ配設するようにしてもよい。
【0037】
ディーゼルエンジン10始動時におけるバルブの初期状態は、例えば、第3バルブ50b及び第4バルブ52bが開状態であり、第1切替バルブ92a及び第2切替バルブ94aが閉状態である。
【0038】
第1DPF62、第2DPF64の再生処理は、第2の実施形態におけるフィルタ再生処理と基本的に同一であるが、高圧気体を用いて2つのDPFを交互に再生するので、再生開始時のバルブ切換制御、及び、再生完了時のバルブ切換制御が異なる。
【0039】
第1DPF62の再生処理では、第2の実施形態の再生開始時のバルブ切換制御に加えて、第3バルブ50bを閉じ、第1切替バルブ92aを開き、エアリザーバ90による高圧気体の供給を開始する。これにより、第2の実施形態の逆流排気の代わりに、高圧気体が第1DPF60を逆洗して再生し、第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。その後、第2の実施形態の再生完了時のバルブ切換制御に加えて、第3バルブ50bを開き、第1切替バルブ92aを閉じ、高圧気体の供給を停止する。
【0040】
第2DPF64の再生処理における再生開始時及び再生完了時のバルブ切換制御でも、第1DPF62の再生処理と同じようなバルブ切換制御を実行する。
なお、各実施形態の構成において、EGR管54を過給器30のコンプレッサ30aよりも上流側の吸気通路20に接続するようにしてもよい。これによれば、離脱PMを含む排気は、コンプレッサ30aで圧縮される前の吸気に還流されるので、容易にEGRされる。同様に、離脱PMを含む高圧気体も、容易に流入させることができる。
【0041】
以上の各実施形態では、DPFの再生開始時の判定に、差圧Pが第1の所定圧力以上になった条件を用いたが、他の条件を適用することもできる。例えば、(1)走行距離が所定距離に達したとき、(2)エンジン運転時間を積算し、この積算時間が平均的なエンジン運転状態においてフィルタに目詰まりが生じると考えられる所定時間以上になったとき、(3)PM排出流量を、図5(a)に示すような回転速度Ne及びエンジン負荷Qに応じた単位時間当たりのPM排出流量が設定されたPM排出マップを参照して推定し、その積算値がフィルタに目詰まりが生じると考えられるPM排出流量(第1所定値)以上になったとき、などを適用することができる。
【0042】
また、DPFの再生完了時の判定に、差圧Pが第2の所定圧力未満になった条件を用いたが、他の条件を適用することもできる。例えば、(1)PM離脱流量を、図5(b)に示すような回転速度Ne及びエンジン負荷Qや高圧気体の供給流量に応じてDPFから離脱する単位時間当たりのPM離脱流量が設定されたPM離脱マップから推定し、その積算値がフィルタの再生が完了したと考えられるPM離脱流量(第2所定値)以上になったとき、(2)DPFの再生開始時からエンジンの運転時間を積算し、この積算時間がフィルタの再生が完了したと考えられる所定時間以上になったとき、などを適用することができる。
【0043】
さらに、DPFの再生開始時の判定では、以上の各条件を任意に2つ以上組み合わせ、何れかの条件が成立したときを再生開始時と判定するとよく、また、DPFの再生完了時では、以上の各条件を組み合わせ、全ての条件が成立したときを再生完了時と判定するとよい。これにより、DPF再生処理の信頼性を向上することができる。
さらにまた、以上の各実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0044】
10 ディーゼルエンジン
20 吸気通路
30 過給器
30a コンプレッサ
30b タービン
40 排気通路
42 バタフライバルブ
50、52 分岐通路
50a、52a バルブ
54 EGR管
60 DPF
70a、70b 圧力センサ
72 回転速度センサ
74 エンジン負荷センサ
80 ECU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの排気通路の途中を複数に分岐した分岐通路のうち、少なくとも1つの分岐通路を除いた分岐通路に配設され、排気中の粒子状物質を捕集するフィルタと、
前記フィルタが配設されている分岐通路では、フィルタより上流側の分岐通路を開閉し、前記フィルタが配設されてない分岐通路では、該分岐通路を開閉する分岐通路開閉手段と、
前記フィルタより上流側で前記分岐通路開閉手段より下流側の分岐通路と前記エンジンの吸気通路とを連通するEGR管と、
フィルタの再生時に、前記フィルタが配設されている分岐通路を閉じる一方、前記フィルタが配設されてない分岐通路を開くように前記分岐通路開閉手段を制御する制御手段と、
フィルタの再生時に、各分岐通路が合流する合流部より下流側の排気通路の開度を調整する開度調整手段と、
を含んで構成されたことを特徴とするエンジンの排気浄化装置。
【請求項2】
前記EGR管は、前記エンジンに設けられた過給器のコンプレッサより上流側の吸気通路に連通していることを特徴とする請求項1記載のエンジンの排気浄化装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記エンジンの運転時間を積算し、該積算時間が所定時間以上になると、フィルタの再生開始時であると判定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエンジンの排気浄化装置。
【請求項4】
前記制御手段は、エンジン運転状態に応じた粒子状物質の排出流量を推定し、該排出流量の積算値が第1所定値以上になると、フィルタの再生開始時であると判定することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のエンジンの排気浄化装置。
【請求項5】
フィルタの上流側と下流側との差圧を検出する差圧検出手段をさらに含んで構成され、
前記制御手段は、検出した差圧が所定圧力以上であれば、フィルタの再生開始時であると判定することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のエンジンの排気浄化装置。
【請求項6】
前記制御手段は、フィルタの再生開始時から、エンジン運転状態に対応してフィルタから離脱する粒子状物質の離脱流量を推定し、該離脱流量の積算値が第2所定値以上になると、フィルタの再生完了時と判定することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のエンジンの排気浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−52553(P2012−52553A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251288(P2011−251288)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【分割の表示】特願2007−258146(P2007−258146)の分割
【原出願日】平成19年10月1日(2007.10.1)
【出願人】(000003908)UDトラックス株式会社 (1,028)
【Fターム(参考)】