説明

エンジンの給油装置

【課題】エンジン停止時に潤滑油がエンジン各部から抜けても、給油管内に残量が存在し、次のエンジン始動時に給油タイミングが早く、無潤滑状態を極力抑制し、また給油に指向性があり、適量の給油でよく、過剰な油量の設定が必要なく、さらに、潤滑油内の細かな異物は給油管内の最下端に沈降し、開口を塞ぎ気味になることもなく、給油の長期安定性を図るエンジンの給油装置を提供する。
【解決手段】給油管31の開口50がエンジン載置状態で、垂直方向(VER)に対して所定の角度θで斜め下方に動弁機構に指向して設けられ、開口50が給油管31内の最下端から所定高さLをもって外部に開放していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数の気筒の動弁機構に対してその上方に気筒列方向に延びて筒状の給油管が配置され、各動弁機構に対して上記給油管の各開口から給油するようなエンジンの給油装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数気筒の動弁機構に対して給油を行なうエンジンの給油装置としては、カムシャフト内部にオイル通路を形成し、カムシャフトの軸受部から送られる油を、該オイル通路に流通させた後に、カムシャフトの所定部位に径方向に形成した横向きのオイル噴出用の開口から動弁系に給油するように構成したものが一般的である。
しかし、この従来装置においては、カムシャフト内部にオイル通路を形成する必要があり、その加工が複雑で、かつコスト高となる問題点があった。
【0003】
このような問題点を解決するために、従来、特許文献1に開示されたエンジンの給油装置が既に発明されている。
すなわち、複数の気筒の動弁機構に対してその上方に気筒列方向に延びる管状の給油管としてのシャワーパイプを配設し、各気筒の動弁機構に対して該シャワーパイプのオイル噴孔から給油を行なうように構成したものである。
【0004】
このように、カムシャフト内部にオイル通路を形成する従前の構造に対して、シャワーパイプを用いるものでは、動弁系の外部からオイルを給油することができ、部品点数は増加するものの、その加工が容易であって、エンジンの給油装置を低コストで構成することができる。
上述のシャワーパイプにおけるオイル噴孔の向きは、下向きまたは上向きとするものであるが、オイル噴孔を下向きに形成した場合には、エンジン停止時にオイルポンプがストップし、シャワーパイプ内に作用する油圧力がなくなった際、該パイプ内のオイルが抜けて、その残量がなくなるため、エンジン始動時において給油遅れが発生し、無給油状態下でオイルを伴わない状動での摺動が行なわれる関係上、信頼性が悪化する問題点があった。
【0005】
オイル噴孔を上向きに形成した場合には、エンジン停止時においてもシャワーパイプ内にオイル残量を確保することができるという利点がある反面、動弁機構に対するオイル噴霧の指向性がなく、オイル噴孔から噴出したオイルはシリンダヘッドカバーの下面に当って跳ね返り散布されるので、動弁機構に対する給油の確実性を高めるためには、噴油量を多く必要とし、給油効率が悪い問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−25395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、この発明は、給油管の開口をエンジン載置状態で、垂直方向に対して所定の角度で斜め下方に動弁機構に指向して設け、かつ該開口を給油管内の最下端から所定高さをもって外部に開放することにより、エンジン停止時に潤滑油がエンジン各部から抜けても、給油管内に残量が存在し、このため、次のエンジン始動時に給油タイミングが早く、無潤滑状態を極力抑制することができ、また給油に指向性があるため、適量の給油でよく、過剰な油量の設定が必要なくなり、さらには、潤滑油内の細かな異物は給油管内の最下端に沈降し、開口を塞ぎ気味になることもなく、給油の長期安定性を図ることができるエンジンの給油装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明によるエンジンの給油装置は、複数の気筒の動弁機構に対してその上方に気筒列方向に延びて筒状の給油管が配置され、各動弁機構に対して上記給油管の各開口から給油するエンジンの給油装置であって、上記開口がエンジン載置状態で、垂直方向に対して所定の角度で斜め下方に動弁機構に指向して設けられると共に、該開口が給油管内の最下端から所定高さをもって外部に開放しているものである。
上記構成によれば、給油管の開口は該給油管内の最下端から所定高さをもって外部に開放しているので、エンジン停止時に潤滑油がエンジン各部から抜けても、給油管内に残量が存在する。
【0009】
この結果、次のエンジン始動時に給油タイミングが早く、無潤滑状態を極力抑制することができ、信頼性の向上を図ることができる。
また、上記開口はエンジン載置状態で、垂直方向に対して所定の角度で斜め下方に動弁機構に指向して設けられており、これにより給油の指向性確保を図ることができるので、適量の給油でよく、過剰な油量の設定が必要なくなり、給油効率の向上を図ることができる。
さらには、潤滑油内の細かな異物は給油管内の最下端に沈降し、上記開口を塞ぎ気味とすることもなく、給油の長期安定性を図ることができる。
【0010】
この発明の一実施態様においては、上記給油管は、エンジン停止後に該給油管内に油溜まりが維持されるように構成されたものである。
上記構成によれば、上述の油溜まりにより、給油管内に確実に潤滑油残量を確保することができる。このため、次のエンジン始動時において給油タイミングが早く、無潤滑状態を極力抑制することができて、信頼性の向上を図ることができる。
【0011】
この発明の一実施態様においては、上記給油管はその一端側に給油連結部を有し、全体に該給油連結部より高い位置に配置されたものである。
上記構成によれば、給油管の開口から潤滑油中の気泡を逃がすことができて、給油管で、供給される潤滑油内の気泡逃がしを兼ねることができる。
因に、オイルパンの中の潤滑油をエンジンの被潤滑部位に循環させている関係上、潤滑油中には気泡が発生する。上記給油管には気泡が入っても不都合は生じないが、特に、油圧力を必要とする部分は気泡が混入すると不都合が生じる。そこで上記給油管にて気泡逃がしを兼ねて、斯る不都合を解消するものである。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、給油管の開口をエンジン載置状態で、垂直方向に対して所定の角度で斜め下方に動弁機構に指向して設け、かつ該開口を給油管内の最下端から所定高さをもって外部に開放することにより、エンジン停止時に潤滑油がエンジン各部から抜けても、給油管内に残量が存在し、このため、次のエンジン始動時に給油タイミングが早く、無潤滑状態を極力抑制することができ、また給油に指向性があるため、適量の給油でよく、過剰な油量の設定が必要なくなり、さらには、潤滑油内の細かな異物は給油管内の最下端に沈降し、開口を塞ぎ気味になることもなく、給油の長期安定性を図ることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】エンジンの給油装置を示す平面図
【図2】図1のA−A線矢視断面図
【図3】(a)はカムキャップの平面図、(b)はその側面図、(c)は底面図
【図4】(a)はカムキャップの平面図、(b)はその側面図、(c)は底面図、(d)は図4(c)のB−B線矢視断面図
【図5】(a)はシャワーパイプの平面図、(b)はその正面図
【図6】(a)は図5(a)のC−C線矢視断面図、(b)は図5(a)のD−D線矢視断面図、(c)は図5(a)のE−E線矢視断面図
【図7】(a)はシャワーパイプの平面図、(b)はその正面図
【図8】(a)は図7(a)のF−F線矢視断面図、(b)は図7(a)のG−G線矢視断面図、(c)は図7(a)のH−H線矢視断面図
【図9】図2の要部拡大図
【図10】図9の要部拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
エンジン停止時に給油管内に潤滑油の残量を確保し、次のエンジン始動時における無潤滑状態を抑制して、信頼性の向上を図り、また給油に指向性をもたせて給油効率の向上を図り、さらに、潤滑油中の細かな異物を給油管内の最下端に沈降させ、開口の塞ぎ気味を防止して、給油の長期安定性を図るという目的を、複数の気筒の動弁機構に対してその上方に気筒列方向に延びて筒状の給油管が配置され、各動弁機構に対して上記給油管の各開口から給油するエンジンの給油装置において、上記開口がエンジン載置状態で、垂直方向に対して所定の角度で斜め下方に動弁機構に指向して設けられると共に、該開口が給油管内の最下端から所定高さをもって外部に開放しているという構成にて実現した。
【実施例】
【0015】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面はエンジンの給油装置を示し、図1はシリンダヘッドカバーを取外した状態で、シリンダヘッドおよびその内部構造を示す平面図(但し、図示の便宜上、HLA、バルブスプリング、ロッカアームは図示省略している)、図2は図1のA−A線矢視断面図である。
【0016】
この実施例では、直列4気筒DOHCエンジンを示し、図2に示すように、エンジン1はシリンダブロック(図示せず)に締結固定されたシリンダヘッド2と、このシリンダヘッド2の上部に取付けられたシリンダヘッドカバー3と、を備えている。
【0017】
DOHCエンジンの動弁機構4は、図1、図2に示すように、シリンダヘッド2の所定部に配設したハイドロラッシュアジャスタ5,5(いわゆる、HLA)におけるプランジャ上端のピボット6,6を支点として可動するロッカアーム7,7を設け、これらロッカアーム7,7の中間部にローラ軸8,8を介してローラ9,9を配設し、これらのローラ9,9を吸気側カムシャフト10、排気側カムシャフト11(図1参照)に一体的に設けたカム12,13で操作することにより、ロッカアーム7,7他端のバルブ当接部14で吸気弁15および排気弁16をそれぞれのバルブステム17,18を介して開閉操作すべく構成している。
【0018】
また、上述の各バルブステム17,18は、シリンダヘッド2の所定部にバルブガイド19,19を介して配設したステムで、これらのバルブステム17,18の上端にはスプリングリテーナ20,20を嵌合し、シリンダヘッド2側のバネ座と上述のスプリングリテーナ20,20下面との間には、それぞれバルブスプリング21,21を張架している。
この実施例では、気筒の一側に2つの吸気弁15,15を配設し、気筒の他側に2つの排気弁16,16を配設して、吸気2弁、排気2弁タイプのエンジンを構成している。
【0019】
図1、図2に示すように、シリンダヘッド2の一側には気筒当り2つの吸気ポート22,22を形成し、図2に示すように、シリンダヘッド2の他側には気筒当り2つの排気ポート23(但し、図面では1つのみを示す)を形成している。
【0020】
図1に平面図で示すように、吸気側カムシャフト10は、該カムシャフト10のフロント側端部に位置する軸受キャップとしてのカムキャップ24と、各カム12,12間に位置するカムキャップ25…とで軸受されている。
【0021】
同様に、排気側カムシャフト11は、該カムシャフト11のフロント側端部に位置する軸受キャップとしてのカムキャップ26と、各カム13,13間に位置するカムキャップ27…とで軸受されている。
そして、これらの各カムキャップ24,25,26,27は締結ボルト28,28を用いて、シリンダヘッド2の上面部に締結固定されている。
【0022】
図1に示すように、複数の気筒の動弁機構4に対してその上方に気筒列方向に延びる管状の給油管としての2本のシャワーパイプ31,32を配置している。
一方のシャワーパイプ31は、動弁機構4において最も高い部位に位置するカム12のさらに上方において吸気側カムシャフト10に沿うように配設されており、カムキャップ25と対応する該シャワーパイプ31の長手方向中間位置2箇所が、ブラケット33およびボルト34を用いて、対応するカムキャップ25に固定されている。
【0023】
同様に、他方のシャワーパイプ32は、動弁機構4において最も高い部位に位置するカム13のさらに上方において排気側カムシャフト11に沿うように配設されており、カムキャップ27と対応する該シャワーパイプ32の長手方向中間位置2箇所が、ブラケット35およびボルト36を用いて、対応するカムキャップ27に固定されている。
【0024】
図3は吸気側カムシャフト10のフロント側端部を軸受するカムキャップ24を示し、図3の(a)は平面図、図3の(b)は側面図、図3の(c)は底面図である。
【0025】
図3に示すように、該カムキャップ24は締結ボルト28,28を挿通するための2つのボルト挿通孔24a,24aと、吸気側カムシャフト10を軸受する側面視半円状の軸受部24bと、シャワーパイプ31に対して潤滑油(以下、単にオイルと略記する)を供給するためのオイル孔24cと、このオイル孔24cの孔縁上端に形成されたシャワーパイプ取付け座部24d(給油管取付け座部)と、を備えている。
【0026】
図3の(c)に示すように、シリンダヘッド2からの給油位置Xと、上述のオイル孔24cとがオフセットしているので、カムキャップ24の合せ面24eには、該給油位置Xとオイル孔24c下部とを連通させる凹部37(凹状の油路)を形成し、シリンダヘッド2からのオイルが給油位置X、凹部37を通ってオイル孔24cに至るように構成している。
【0027】
図4は排気側カムシャフト11のフロント側端部を軸受するカムキャップ26を示し、図4の(a)は平面図、図4の(b)は側面図、図4の(c)は底面図、図4の(d)は図4の(c)のB−B線矢視断面図である。
【0028】
図4に示すように、該カムキャップ26は締結ボルト28,28を挿通するための2つのボルト挿通孔26a,26aと、排気側カムシャフト11を軸受する側面視半円状の軸受部26bと、シャワーパイプ32に対してオイルを供給するためのオイル孔26cと、このオイル孔26cの孔縁上端に形成されたシャワーパイプ取付け座部26d(給油管取付け座部)と、図1に示すオイルコントロールバルブ38を取付けるためのバルブ取付け部26eと、を備えている。
【0029】
図4の(c)に示すように、シリンダヘッド2からの給油位置Yと、上述のオイル孔26cとがオフセットしているので、カムキャップ26の合せ面26fには、該給油位置Yとオイル孔26c下部とを連通させる凹部39(凹状の油路)を形成し、シリンダヘッド2からのオイルが給油位置Y、凹部39を通ってオイル孔26cに至るように構成している。
【0030】
図5、図6は吸気側に位置するシャワーパイプ31を示し、図5の(a)は平面図、図5の(b)は正面図、図6の(a)は図5の(a)のC−C線矢視断面図、図6の(b)は図5の(a)のD−D線矢視断面図、図6の(c)は図5の(a)のE−E線矢視断面図である。
【0031】
上述のシャワーパイプ31の上流端(図5の左端)には給油連結部としてのジョイントブッシュ40が連結されており、このジョイントブッシュ40を、ボルト41(図1参照)を用いて、カムキャップ24のシャワーパイプ取付け座部24d(図3参照)に取付ける。
上述のボルト41には、その内部の軸方向に延びる縦油路と、この縦油路をジョイントブッシュ40内の油路40aに連通するために径方向に延びる横油路とを有し、該ボルト41の締結完了時にカムキャップ24のオイル孔24c(図3参照)とシャワーパイプ31の上流端とを連通すると共に、ボルト41頭部でジョイントブッシュ40の油路40a上端を閉止するように構成している。
【0032】
また、上述のシャワーパイプ31は、ジョイントブッシュ40との連結部から、立上がりながらエンジン軸方向に延びてカム12の真上を通る上流部31aと、この上流部31aのエンジン幅方向端部から吸気側カムシャフト10に沿って気筒列方向に延びるメインパイプ部31bと、下流端をかしめ加工によりオイルが流出しないように閉止したエンド端部31cと、を有し、この吸気側に位置するシャワーパイプ31においては、図2に示すオイルフィラ部42との干渉を回避する目的で、メインパイプ部31bの長手方向中間には、エンジン幅方向内方へ屈曲した屈曲部31dを一体形成している。
つまり、シャワーパイプ31はその一端側(上流端側)に給油連結部としてのジョイントブッシュ40を有し、該シャワーパイプ31のメインパイプ部31b、屈曲部31d、エンド端部31cを含む略全体が、ジョイントブッシュ40よりも高い位置に配置されたものである。
【0033】
さらに、図6の(c)に示すように、シャワーパイプ31をカムキャップ25に取付けるブラケット33は、メインパイプ部31bを下側から保持する保持部33aと、該保持部33aのエンジン幅方向の内端部から略水平に延びる取付け部33bと、この取付け部33bに形成されて上述のボルト34を挿通させるためのボルト挿通孔33cとを有し、保持部33aをメインパイプ部31bにロー付け等の手段により一体化したものである。
【0034】
図7、図8は排気側に位置するシャワーパイプ32を示し、図7の(a)は平面図、図7の(b)は正面図、図8の(a)は図7の(a)のF−F線矢視断面図、図8の(b)は図7の(a)のG−G線矢視断面図、図8の(c)は図7の(a)のH−H線矢視断面図である。
【0035】
上述のシャワーパイプ32の上流端(図7の左端)には給油連結部としてのジョイントブッシュ43が連結されており、このジョイントブッシュ43を、ボルト44(図1参照)を用いて、カムキャップ26のシャワーパイプ取付け座部26d(図4参照)に取付ける。
上述のボルト44には、その内部の軸方向に延びる縦油路と、この縦油路をジョイントブッシュ43内の油路43aに連通するために径方向に延びる横油路とを有し、該ボルト44の締結完了時にカムキャップ26のオイル孔26c(図4参照)とシャワーパイプ32の上流端とを連通すると共に、ボルト44頭部でジョイントブッシュ43の油路43a上端を閉止するように構成している。
【0036】
また、上述のシャワーパイプ32は、ジョイントブッシュ43との連結部から、立上がりながらエンジン軸方向に延びてカム13の真上を通る上流部32aと、この上流部32aのエンジン幅方向端部から排気側カムシャフト11に沿って気筒列方向に延びるメインパイプ部32bと、下流端をかしめ加工によりオイルが流出しないように閉止したエンド端部32cと、を有するものである。
つまり、シャワーパイプ32はその一端側(上流端側)に給油連結部としてのジョイントブッシュ43を有し、該シャワーパイプ32のメインパイプ部32b、エンド端部32cを含む略全体が、ジョイントブッシュ43よりも高い位置に配置されたものである。
【0037】
さらに、図8の(c)に示すように、シャワーパイプ32をカムキャップ27に取付けるブラケット35は、メインパイプ部32bを下側から保持する保持部35aと、該保持部35aのエンジン幅方向の内端部から略水平に延びる取付け部35bと、この取付け部35bに形成されて上述のボルト36を挿通させるためのボルト挿通孔35cとを有し、保持部35aをメインパイプ部32bにロー付け等の手段により一体化したものである。
【0038】
図5の(a)および図7の(a)に図示の便宜上、黒丸で示すように、シャワーパイプ31,32のカム12,13と対応する部位には、各動弁機構4に対してオイルを噴出給油するための開口50…がそれぞれ形成されている。
これらの各開口50…は、図6の(a)、図6の(b)、図8の(a)、図8の(b)にそれぞれ示すように、シャワーパイプ31,32の上流部31a,32aに開口されたものも、またシャワーパイプ31,32のメインパイプ部31b,32bに開口されたものも、対応するカム12,13の外周部に向けて、オイルを噴出給油するように構成されている。
【0039】
図9は図2の要部の拡大図、図10は図9の要部拡大図であって、シャワーパイプ31に開口形成されたオイル噴出給油用の開口50は、エンジン1を車両に載置した状態下において、図10に仮想線(VER)で示す垂直方向に対して所定の角度θ(例えば、45度)で斜め下方に動弁機構4のカム12外周に指向して設けられると共に、この開口50は同図に示すようにシャワーパイプ31内の最下端から所定高さLをもって外部に開放したものである。
この構成により、シャワーパイプ31は、エンジン停止後において、該シャワーパイプ31内に油溜まりZが維持されるように構成したものである。
【0040】
なお、図10においては、シャワーパイプ31のメインパイプ部31bの開口50についてのみ図示したが、他の開口50、すなわち、シャワーパイプ31の上流部31aの開口50、シャワーパイプ32のメインパイプ部32bの開口50、シャワーパイプ32の上流部32aの開口50についても、同様に形成されている。
【0041】
図示実施例は上記の如く構成するものにして、以下作用を説明する。
エンジン1を駆動すると、図示しないオイルポンプが駆動するので、シリンダブロック内の給油路およびシリンダヘッド2の給油路を介して、図3、図4に示すカムキャップ24,26の給油位置X,Yにオイルが供給される。
【0042】
シリンダヘッド2からの給油位置X,Yに供給されたオイルは、図3、図4の凹部37,39、カムキャップ24,26のオイル孔24c,26c、図1に示すボルト41,44の縦油路および横油路、図6、図8に示すジョイントブッシュ40,43内の油路40a,43aをこの順に介してシャワーパイプ31,32の上流端に供給される。
【0043】
シャワーパイプ31,32内に供給されたオイルは各パイプ31,32のカム12,13対応位置に形成されたオイル噴出給油用の開口50から、それぞれのカム12,13外周部に向けて噴出され、複数気筒の動弁機構4を潤滑する。
一方、エンジンの停止時においてオイルがエンジン各部から抜けても、図10に示すように、シャワーパイプ31,32内には油溜まりZに相当するオイル残量が存在するので、次のエンジン始動時において給油タイミングが早くなり、無潤滑状態を極力抑制することができるものである。
【0044】
このように、上記実施例のエンジンの給油装置は、複数の気筒の動弁機構4に対してその上方に気筒列方向に延びて筒状のシャワーパイプ31,32が配置され、各動弁機構4に対して上記シャワーパイプ31,32の各開口50から給油するエンジンの給油装置であって、上記開口50がエンジン載置状態で、垂直方向(VER)に対して所定の角度θで斜め下方に動弁機構4に指向して設けられると共に、該開口50がシャワーパイプ31,32内の最下端から所定高さLをもって外部に開放しているものである(図1、図2、図10参照)。
【0045】
この構成によれば、シャワーパイプ31,32の開口50は該シャワーパイプ31,32の最下端から所定高さLをもって外部に開放しているので、エンジン停止時にオイルがエンジン各部から抜けても、シャワーパイプ31,32内に残量が存在する。
この結果、次のエンジン始動時に給油タイミングが早く、無潤滑状態を極力抑制することができ、信頼性の向上を図ることができる。
【0046】
また、上記開口50はエンジン載置状態で、垂直方向(VER)に対して所定の角度θで斜め下方に動弁機構4に指向して設けられており、これにより給油の指向性確保を図ることができるので、適量の給油でよく、過剰な油量の設定が必要なくなり、給油効率の向上を図ることができる。
さらには、オイル内の細かな異物はシャワーパイプ31,32内の最下端に沈降し、上記開口50を塞ぎ気味とすることもなく、給油の長期安定性を図ることができる。
【0047】
加えて、上記シャワーパイプ31,32は、エンジン停止後に該シャワーパイプ31,32内に油溜まりZが維持されるように構成されたものである(図10参照)。
この構成によれば、上述の油溜まりZにより、シャワーパイプ31,32内に確実にオイル残量を確保することができる。このため、次のエンジン始動時において給油タイミングが早く、無潤滑状態を極力抑制することができて、信頼性の向上を図ることができる。
【0048】
さらに、上記シャワーパイプ31,32はその一端側に給油連結部(ジョイントブッシュ40,43参照)を有し、全体に該給油連結部(ジョイントブッシュ40,43参照)より高い位置に配置されたものである(図6、図8参照)。
この構成によれば、シャワーパイプ31,32の開口からオイル中の気泡を逃がすことができて、シャワーパイプ31,32で、供給されるオイル内の気泡逃がしを兼ねることができる。
【0049】
因に、オイルパンの中の潤滑油をエンジンの被潤滑部位に循環させている関係上、潤滑油中には気泡が発生する。上記シャワーパイプ31,32には気泡が入っても不都合は生じないが、特に、油圧力を必要とする部分は気泡が混入すると不都合が生じる。そこで上記シャワーパイプ31,32にて気泡逃がしを兼ねて、斯る不都合を解消するものである。
【0050】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明の管状の給油管は、実施例のシャワーパイプ31,32に対応し、
以下同様に、
給油連結部は、ジョイントブッシュ40,43に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
例えば、上記実施例においては、シャワーパイプ31,32の下流端をかしめ加工することにより、オイルの流出を閉止するエンド端部31c,32cと成したが、かしめ加工を省略し、シャワーパイプ31,32の下流端にプラグを取付ける構造を採用してもよい。
【0051】
また、上記実施例においてはDOHCエンジンにおいて、吸気側と排気側との双方に気筒列方向に延びる合計2本のシャワーパイプ31,32を配設したので、吸気側動弁機構と排気側動弁機構とを適切に潤滑することができる。
【符号の説明】
【0052】
1…エンジン
4…動弁機構
31,32…シャワーパイプ(給油管)
40,43…ジョイントブッシュ(給油連結部)
50…開口
Z…油溜まり

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の気筒の動弁機構に対してその上方に気筒列方向に延びて筒状の給油管が配置され、
各動弁機構に対して上記給油管の各開口から給油するエンジンの給油装置であって、
上記開口がエンジン載置状態で、垂直方向に対して所定の角度で斜め下方に動弁機構に指向して設けられると共に、該開口が給油管内の最下端から所定高さをもって外部に開放している
エンジンの給油装置。
【請求項2】
上記給油管は、エンジン停止後に該給油管内に油溜まりが維持されるように構成された
請求項1記載のエンジンの給油装置。
【請求項3】
上記給油管はその一端側に給油連結部を有し、全体に該給油連結部より高い位置に配置された
請求項1または2記載のエンジンの給油装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−2154(P2012−2154A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−138865(P2010−138865)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】