説明

エンジンの給油装置

【課題】オイルポンプによってエンジンの各部に供給されるオイルの油圧又は油量を制御する油調整装置を備えているエンジンの給油装置において、エンジン冷間時において、エンジンの燃焼性を向上させるとともに、Pfを低減させる。
【解決手段】調圧装置3を、エンジン冷却水の水温が所定水温以下のときには、オイルの油圧を低圧設定値に、エンジン冷却水の水温が所定水温よりも高いときには、オイルの油圧を低圧設定値よりも大きい高圧設定値に制御するように構成する。ピストン冷却用のオイルジェット21の開弁圧を、低圧設定値よりも大きく高圧設定値よりも小さく設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オイルポンプによってエンジンの各部に供給されるオイルの油圧又は油量を制御する油調整装置を備えているエンジンの給油装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
オイルポンプによってエンジンの各部に供給されるオイルの油圧を制御する調圧装置(油調整装置)を備えているエンジンの給油装置が従来技術として知られている。
【0003】
以下、特許文献1により従来の給油装置について説明する。
【0004】
この給油装置の調圧装置は、オイルポンプのオイル出口側のリリーフ弁に、その開弁圧を電気信号により可変する開弁圧可変装置を設ける一方、オイルの油温を検出する油温センサと、エンジン回転数を検出する回転数センサと、オイルポンプのオイル出口側の油圧を検出する油圧センサと、これらのセンサからの信号を受けて開弁圧可変装置を介してリリーフ弁の開弁圧を制御することにより、少なくとも高油温時に中速回転域での開弁圧を低下させる制御装置とを設けてなるものである。このことにより、中速回転域でのエンジンのフリクション及びオイルポンプ駆動抵抗を低下させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−17708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、オイルポンプによってオイルが供給されるエンジンの各部には、一般に、ピストン冷却用のオイルジェットが含まれる。
【0007】
エンジン、特に、高圧縮比・高出力のものでは、高回転・高負荷時におけるプリイグの防止及びピストン過熱の抑制のため、オイルジェットが適切なピストン冷却作動をすることが求められる。
【0008】
しかしながら、オイルジェットによってピストンをエンジン冷間時に冷却すると、エンジンの燃焼性が悪化するとともに、ピストン及びライナーの昇温の遅延化によって摺動抵抗(Pf)が悪化するという課題がある。
【0009】
この課題を解決するため、本発明者たちは、調圧装置によって制御されるオイルの油圧とオイルジェットの開弁圧との関係に着目して、本発明を考え付いた。
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、オイルポンプによってエンジンの各部に供給されるオイルの油圧又は油量を制御する油調整装置を備えているエンジンの給油装置において、エンジン冷間時において、エンジンの燃焼性を向上させるとともに、Pfを低減させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の発明は、オイルポンプによってエンジンの各部に供給されるオイルの油圧又は油量を制御する油調整装置を備えているエンジンの給油装置であって、上記油調整装置は、エンジン冷却水の水温が所定水温以下のとき又は上記オイルの油温が所定油温以下のときには、上記オイルの油圧を低圧設定値に、上記水温が上記所定水温よりも高いとき又は上記油温が上記所定油温よりも高いときには、上記オイルの油圧を上記低圧設定値よりも大きい高圧設定値に制御するように構成されており、上記エンジンの各部には、ピストン冷却用のオイルジェットが含まれており、上記オイルジェットの開弁圧が、上記低圧設定値よりも大きく上記高圧設定値よりも小さく設定されていることを特徴とするものである。
【0012】
これによれば、油調整装置は、エンジン冷却水の水温が所定水温以下のとき又はオイルの油温が所定油温以下のときには、オイルの油圧を低圧設定値に、エンジン冷却水の水温が所定水温よりも高いとき又はオイルの油温が所定油温よりも高いときには、オイルの油圧を低圧設定値よりも大きい高圧設定値に制御するように構成されているとともに、オイルジェットの開弁圧が、低圧設定値よりも大きく高圧設定値よりも小さく設定されているので、オイルジェットは、エンジン冷却水の水温が所定水温以下又はオイルの油温が所定油温以下のエンジン冷間時には、オイルをピストンに向かって噴射しない。つまり、ピストンは、エンジン冷間時には、オイルジェットによって冷却されない。このことにより、エンジン冷間時において、エンジンの燃焼性を向上させるとともに、Pfを低減させることができる。
【0013】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記油調整装置は、エンジン回転数が所定回転数よりも大きいとき又はエンジン負荷が所定負荷よりも大きいときには、上記水温が上記所定水温以下又は上記油温が上記所定油温以下であっても、上記オイルの油圧を上記高圧設定値に制御するように構成されていることを特徴とするものである。
【0014】
これによれば、油調整装置は、エンジン回転数が所定回転数よりも大きいとき又はエンジン負荷が所定負荷よりも大きいときには、エンジン冷却水の水温が所定水温以下又はオイルの油温が所定油温以下であっても、オイルの油圧を高圧設定値に制御するように構成されているので、供給されるオイルの量は、エンジン回転数が所定回転数よりも大きいエンジン高回転領域やエンジン負荷が所定負荷よりも大きいエンジン高負荷領域では、増加する。このことにより、エンジン高回転領域やエンジン高負荷領域において、エンジン潤滑の安定性を向上させることができる。
【0015】
また、油調整装置は、エンジン回転数が所定回転数よりも大きいとき又はエンジン負荷が所定負荷よりも大きいときには、エンジン冷却水の水温が所定水温以下又はオイルの油温が所定油温以下であっても、オイルの油圧を高圧設定値に制御するように構成されているので、オイルジェットは、エンジン回転数が所定回転数よりも大きいエンジン高回転領域やエンジン負荷が所定負荷よりも大きいエンジン高負荷領域では、オイルをピストンに向かって噴射する。つまり、ピストンは、エンジン高回転領域やエンジン高負荷領域では、オイルジェットによって冷却される。このことにより、エンジン高回転領域やエンジン高負荷領域において、プリイグを防止するとともに、ピストンの過熱を抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、油調整装置は、エンジン冷却水の水温が所定水温以下のとき又はオイルの油温が所定油温以下のときには、オイルの油圧を低圧設定値に、エンジン冷却水の水温が所定水温よりも高いとき又はオイルの油温が所定油温よりも高いときには、オイルの油圧を低圧設定値よりも大きい高圧設定値に制御するように構成されているとともに、オイルジェットの開弁圧が、低圧設定値よりも大きく高圧設定値よりも小さく設定されているので、オイルジェットは、エンジン冷却水の水温が所定水温以下又はオイルの油温が所定油温以下のエンジン冷間時には、オイルをピストンに向かって噴射せず、エンジン冷間時において、エンジンの燃焼性を向上させるとともに、Pfを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る給油装置を示す回路図である(この図では開弁圧がONされている)。
【図2】エンジン回転数とオイルの油圧との関係を示すグラフ図である。
【図3】エンジン冷却水の水温とオイルの油圧設定値との関係を示すマップ図である。
【図4】エンジン回転数及びエンジン負荷とオイルの油圧設定値との関係を示すマップ図である。
【図5】調圧装置による開閉弁の制御工程を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0019】
本発明の実施形態に係る給油装置を搭載する直列4気筒エンジンは、その圧縮比が高く設定されており、この高圧縮比を起因として、早期着火が発生しやすく、また、廃熱損失が少なく、暖機性が悪くなっている。
【0020】
図1に示すように、給油装置1は、エンジン潤滑用のオイルをエンジン本体部の各部(例えば要潤滑部)へ圧送するオイルポンプ10と、オイルの異物を取り除くオイルフィルタ11と、オイルを冷却するオイルクーラ12と、オイルをエンジン本体部の各部に供給するための第1〜第5オイル通路13〜17と、オイルポンプ10によってエンジンの各部に供給されるオイルの油圧を切換制御する調圧装置3(油調整装置)とを備えている。
【0021】
第1オイル通路13の上流端部は、オイルポンプ10へ侵入する異物を取り除くオイルストレーナー18に連通している一方、その下流端部は、オイルポンプ10の吸入側に連通している。オイルポンプ10は、例えばエンジン本体部のクランク軸の回転によってオイルパン19内のオイルを吸い上げてエンジン本体部に送り出す従来周知のものである。
【0022】
第2オイル通路14の上流端部は、オイルポンプ10の吐出側に連通している一方、その下流端部は、オイルフィルタ11のオイル入口に連通している。オイルフィルタ11は、循環するオイルの汚れや異物を取り除く従来周知のものである。そして、第2オイル通路14内を流通したオイルは、オイルフィルタ11において異物が取り除かれた後に、オイルフィルタ11のオイル出口に接続されている第3オイル通路15に流出する。
【0023】
第3オイル通路15の下流端部は、オイルクーラ12のオイル入口に連通している。オイルクーラ12は、高温になったオイルを冷やして温度を下げる従来周知のものである。そして、第3オイル通路15内を流通したオイルは、オイルクーラ12において冷却された後に、オイルクーラ12のオイル出口に接続されている第4オイル通路16に流出する。
【0024】
第4オイル通路16の下流端部は、エンジン本体部に内設された第5オイル通路(メインギャラリ)17に連通している。そして、第4オイル通路16内を流通したオイルは、第5オイル通路17を介してクランク軸の軸受20やピストン冷却用のオイルジェット21、シリンダヘッド22などの各部に供給され、その後、オイルパン19に戻される。
【0025】
オイルジェット21は、ピストンの裏側に向かってオイルを噴射する従来周知のものである。具体的には、オイルジェット21は、例えばオイルの流れを1方向にだけ通ずるようにし、逆流に対しては自動的に通路を閉ざすチェックバルブを有している。そして、オイルジェット21に供給されたオイルの油圧がオイルジェット21の開弁圧(この開弁圧は一定値である)よりも大きいときには、その油圧によってチェックバルブが開弁することにより、オイルがピストンに向かって噴射されるようになっている。一方、オイルの油圧がオイルジェット21の開弁圧以下のときには、チェックバルブが閉弁することにより、オイルのピストンへの噴射が停止されるようになっている。オイルジェット21の開弁圧は、低圧設定値よりも大きく高圧設定値よりも小さく設定されている(これらの低圧設定値及び高圧設定値は後述する)。このように、オイルジェット21の開弁圧を低圧設定値と高圧設定値との間の範囲に設定すればよいため、オイルジェット21の設計自由度を向上させることができる。
【0026】
調圧装置3は、開閉弁30と、この開閉弁30が介設された油圧通路31と、開閉弁30を開閉制御する制御装置32と、第2オイル通路14内を流通するオイル(即ち、オイルポンプ10の吐出側のオイル)を第1オイル通路13(即ち、オイルポンプ10の吸入側)に戻すリリーフ弁33と、このリリーフ弁33が介設されたリリーフ通路34とを有している。
【0027】
開閉弁30は、ソレノイド式の従来周知のものである。油圧通路31の上流端部は、第5オイル通路17に連通している一方、その下流端部は、リリーフ弁33に連通している。そして、油圧通路31内を流通したオイルは、リリーフ弁33の弁体に対してその開弁方向に作用するようになっている。
【0028】
制御装置32には、エンジン冷却水の水温を検出する水温センサ35からの検出信号と、エンジン回転数を検出する回転数センサ36からの検出信号と、エンジン負荷を検出する負荷センサ37からの検出信号とが入力されるようになっている。そして、冷却水の水温が所定水温A以下のときには、制御装置32によって開閉弁30がON(即ち、開弁)されることにより、油圧通路31における開閉弁30の上流側と下流側とが連通するようになっている。一方、冷却水の水温が所定水温Aよりも高いときには、制御装置32によって開閉弁30がOFF(即ち、閉弁)されることにより、油圧通路31における開閉弁30の上流側と下流側とが連通しないようになっている。また、エンジン回転数が所定回転数Bよりも大きいとき又はエンジン負荷が所定負荷Cよりも大きいときには、冷却水の水温が所定水温A以下であっても、制御装置32によって開閉弁30がOFFされることにより、油圧通路31における開閉弁30の上流側と下流側とが連通しないようになっている。
【0029】
リリーフ弁33は、ハウジングと、このハウジング内に摺動自在に挿入支持された弁体と、この弁体を閉弁方向に付勢するばね部材とを有している従来周知のものである。リリーフ通路34の上流端部は、第2オイル通路14に連通している一方、その下流端部は、第1オイル通路13に連通している。
【0030】
そして、上述の如く、開閉弁30がONされたとき(即ち、冷却水の水温が所定水温A以下のとき)には、油圧通路31内を流通したオイルの油圧によって弁体がばね部材の付勢力に抗して開弁方向に移動することにより、リリーフ弁33の開弁圧(リリーフ圧)が低圧設定値になるようになっている(図2、図3を参照)。このとき、第2オイル通路14内を流通したオイルの油圧が低圧設定値よりも大きくなると、リリーフ弁33が開弁して、リリーフ通路34におけるリリーフ弁33の上流側と下流側とが連通することにより、第2オイル通路14内を流通したオイルの一部がリリーフ通路34を介して第1オイル通路13に逃がされる。このことにより、オイルの油圧が低圧設定値に維持されるようになっている。尚、この低圧設定値は、エンジンの各部に最低限、供給必要なオイル量に基づいて設定されている。
【0031】
一方、上述の如く、開閉弁30がOFFされたとき(即ち、冷却水の水温が所定水温Aよりも高いとき、エンジン回転数が所定回転数Bよりも大きいとき、又はエンジン負荷が所定負荷Cよりも大きいとき)には、第5オイル通路17内を流通したオイルが油圧通路31内を流通せず、油圧通路31内を流通したオイルの油圧が弁体に対して作用しないことにより、リリーフ弁33の開弁圧が低圧設定値よりも大きい高圧設定値になるようになっている(図2〜図4を参照)。このとき、第2オイル通路14内を流通したオイルの油圧が高圧設定値よりも大きくなると、リリーフ弁33が開弁して、リリーフ通路34におけるリリーフ弁33の上流側と下流側とが連通することにより、第2オイル通路14内を流通したオイルの一部がリリーフ通路34を介して第1オイル通路13に逃がされる。このことにより、オイルの油圧が高圧設定値に維持されるようになっている。
【0032】
尚、オイルの油圧の、最初の立ち上がり特性(図2を参照)は、オイルポンプ10の能力やオイルの油温に基づいて決定される。また、図2に示すように、エンジン回転数が上昇するにつれて低圧設定値や高圧設定値が大きくなるのは、エンジン回転数に比例してオイルポンプ10の回転数が上昇して、オイルの吐出量が増加し、油圧が昇圧するからである。
【0033】
以上のようにして、調圧装置3は、エンジン冷却水の水温が所定水温A以下のときには、オイルの油圧を低圧設定値に、冷却水の水温が所定水温Aよりも高いときには、オイルの油圧を高圧設定値に切換制御するようになっている。また、調圧装置3は、エンジン回転数が所定回転数Bよりも大きいとき又はエンジン負荷が所定負荷Cよりも大きいときには、冷却水の水温が所定水温A以下であっても、オイルの油圧を高圧設定値に切換制御するようになっている。
【0034】
ここで、オイルジェット21の開弁圧は、上述の如く、低圧設定値よりも大きく高圧設定値よりも小さく設定されているため、オイルジェット21は、エンジン冷却水の水温が所定水温A以下のエンジン冷間時には、オイルをピストンに向かって噴射しない。つまり、ピストンは、エンジン冷間時には、オイルジェット21によって冷却されない。このことにより、エンジン冷間時において、ピストンの冷却損失を減少させることができ、燃料の霧化を促進させることができ、よって、燃焼を促進させることができ、燃費やEMを向上させることができる。
【0035】
また、オイルジェット21は、上述の如く、エンジン冷間時には、オイルをピストンに向かって噴射しないため、エンジン冷間時において、ピストンやライナーのオイルへの熱移動を抑制することができる。このことにより、エンジン冷却水の水温の昇温を早期化させることができ、ヒーター性能を向上させることができる。
【0036】
さらに、オイルジェット21は、上述の如く、エンジン冷間時には、オイルをピストンに向かって噴射しないため、エンジン冷間時において、ライナーに付着したオイルの粘度の低減を早期化させることができる。このことにより、Pfを低減させることができ、燃費を向上させることができる。
【0037】
制御装置32による開閉弁30の制御工程を以下、図3、図4のマップ図及び図5のフローチャート図を参照しながら説明する。
【0038】
ステップS1では、水温センサ35からの検出信号に基づいて、エンジン冷却水の水温が所定水温A以下であるか否かを判定する。ステップS1の判定結果がYESで水温が所定水温A以下であるときは、ステップS2に進む。一方、その判定結果がNOで水温が所定水温Aよりも高いときは、ステップS5に進んで開閉弁30をOFFにした後、スタートにリターンする。このように、開閉弁30をOFFにすると、リリーフ弁33の開弁圧が高圧設定値になり、オイルの油圧が高圧設定値に維持される。
【0039】
ステップS2では、回転数センサ36からの検出信号に基づいて、エンジン回転数が所定回転数B以下であるか否かを判定する。ステップS2の判定結果がYESで回転数が所定回転数B以下であるときは、ステップS3に進む。一方、その判定結果がNOで回転数が所定回転数Bよりも大きいときは、ステップS5に進んで開閉弁30をOFFにした後、スタートにリターンする。このように、開閉弁30をOFFにすると、リリーフ弁33の開弁圧が高圧設定値になり、オイルの油圧が高圧設定値に維持される。
【0040】
ステップS3では、負荷センサ37からの検出信号に基づいて、エンジン負荷が所定負荷C以下であるか否かを判定する。ステップS3の判定結果がYESで負荷が所定負荷C以下であるときは、ステップS4に進んで開閉弁30をONにした後、スタートにリターンする。このように、開閉弁30をONにすると、リリーフ弁33の開弁圧が低圧設定値になり、オイルの油圧が低圧設定値に維持される。一方、その判定結果がNOで負荷が所定負荷Cよりも大きいときは、ステップS5に進んで開閉弁30をOFFにした後、スタートにリターンする。このように、開閉弁30をOFFにすると、リリーフ弁33の開弁圧が高圧設定値になり、オイルの油圧が高圧設定値に維持される。
【0041】
−効果−
以上より、本実施形態によれば、調圧装置3は、エンジン冷却水の水温が所定水温A以下のときには、オイルの油圧を低圧設定値に、エンジン冷却水の水温が所定水温Aよりも高いときには、オイルの油圧を低圧設定値よりも大きい高圧設定値に制御するように構成されているとともに、オイルジェット21の開弁圧が、低圧設定値よりも大きく高圧設定値よりも小さく設定されているので、オイルジェット21は、エンジン冷却水の水温が所定水温A以下のエンジン冷間時には、オイルをピストンに向かって噴射しない。つまり、ピストンは、エンジン冷間時には、オイルジェット21によって冷却されない。このことにより、エンジン冷間時において、エンジンの燃焼性を向上させるとともに、Pfを低減させることができる。
【0042】
また、調圧装置3は、エンジン回転数が所定回転数Bよりも大きいとき又はエンジン負荷が所定負荷Cよりも大きいときには、エンジン冷却水の水温が所定水温A以下であっても、オイルの油圧を高圧設定値に制御するように構成されているので、供給されるオイルの量は、エンジン回転数が所定回転数Bよりも大きいエンジン高回転領域やエンジン負荷が所定負荷Cよりも大きいエンジン高負荷領域では、増加する。このことにより、エンジン高回転領域やエンジン高負荷領域において、エンジン潤滑の安定性を向上させることができる。
【0043】
さらに、調圧装置3は、エンジン回転数が所定回転数Bよりも大きいとき又はエンジン負荷が所定負荷Cよりも大きいときには、エンジン冷却水の水温が所定水温A以下であっても、オイルの油圧を高圧設定値に制御するように構成されているので、オイルジェット21は、エンジン回転数が所定回転数Bよりも大きいエンジン高回転領域やエンジン負荷が所定負荷Cよりも大きいエンジン高負荷領域では、オイルをピストンに向かって噴射する。つまり、ピストンは、エンジン高回転領域やエンジン高負荷領域では、オイルジェット21によって冷却される。このことにより、エンジン高回転領域やエンジン高負荷領域において、プリイグを防止するとともに、ピストンの過熱を抑制することができる。
【0044】
(その他の実施形態)
上記実施形態では、調圧装置3は、エンジン冷却水の水温に基づいて、オイルの油圧を制御しているが、オイルの油温に基づいて、オイルの油圧を制御してもよい。具体的には、調圧装置3は、オイルの油温が所定油温以下のエンジン冷間時には、オイルの油圧を低圧設定値に、オイルの油温が所定油温よりも高いときには、オイルの油圧を高圧設定値に制御するように構成されているとともに、エンジン回転数が所定回転数Bよりも大きいとき又はエンジン負荷が所定負荷Cよりも大きいときには、オイルの油温が所定油温以下のエンジン冷間時であっても、オイルの油圧を高圧設定値に制御するように構成されてもよい。このことにより、上記実施形態と同様の作用効果が得られる。尚、エンジン冷却水の水温とオイルの油温との間には概ね比例関係がある。
【0045】
また、上記実施形態では、調圧装置3は、上述の如く構成されているが、これに限らず、調圧装置3として種々様々なものを採用することができる。例えば、上述の如く調圧装置3において、開閉弁30とリリーフ弁33との間に油圧パイロット式の制御弁をさらに配設したものを用いてもよい。
【0046】
さらに、上記実施形態では、油調整装置は、調圧装置3によって構成されているが、これに限らず、オイルポンプ10によってエンジンの各部に供給されるオイルの油量を制御する調量装置によって構成されてもよい。この調量装置は、例えば、ポンプ容積が変更可能なオイルポンプの圧力切換手段として適用することができる。
【0047】
本発明は、実施形態に限定されず、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく他の色々な形で実施することができる。
【0048】
このように、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書には何ら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0049】
以上説明したように、本発明に係るエンジンの給油装置は、エンジン冷間時において、エンジンの燃焼性を向上させるとともに、Pfを低減させることが必要な用途等に適用することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 給油装置
10 オイルポンプ
21 オイルジェット
3 調圧装置(油調整装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オイルポンプによってエンジンの各部に供給されるオイルの油圧又は油量を制御する油調整装置を備えているエンジンの給油装置であって、
上記油調整装置は、エンジン冷却水の水温が所定水温以下のとき又は上記オイルの油温が所定油温以下のときには、上記オイルの油圧を低圧設定値に、上記水温が上記所定水温よりも高いとき又は上記油温が上記所定油温よりも高いときには、上記オイルの油圧を上記低圧設定値よりも大きい高圧設定値に制御するように構成されており、
上記エンジンの各部には、ピストン冷却用のオイルジェットが含まれており、
上記オイルジェットの開弁圧が、上記低圧設定値よりも大きく上記高圧設定値よりも小さく設定されていることを特徴とするエンジンの給油装置。
【請求項2】
請求項1記載のエンジンの給油装置において、
上記油調整装置は、エンジン回転数が所定回転数よりも大きいとき又はエンジン負荷が所定負荷よりも大きいときには、上記水温が上記所定水温以下又は上記油温が上記所定油温以下であっても、上記オイルの油圧を上記高圧設定値に制御するように構成されていることを特徴とするエンジンの給油装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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