説明

エンジンオイル分離装置用の改良型オイル排出装置

【課題】オイル分離装置とサンプの間を移動するオイルに対するブローバイガスの妨害を、最小限に抑える改良型オイル排出装置を提供する。
【解決手段】内燃機関におけるオイル分離装置用10のオイル排出装置22は、第一室30と、第二室40と、コネクタ50と、導管60とを含む。第一室は、オイル分離装置からオイルを受け入れる。第二室はサンプに連結される。コネクタは、第一室と第二室の間を延びる。コネクタは、オイルが第一室と第二室の間を流れることを可能にするための流路を形成する。コネクタ内に配置された導管は、流路とは別の、クランクケース・ブローバイガス用の通路を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関用のブローバイガス還元装置(positive crankcase ventilation: PCV)に関する。より具体的には、本発明は、クランクケースガスから除去されたオイル用の流路とは別の、ブローバイガス用の専用路を具備する改良型オイル排出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関は通常、燃焼室とクランクケースを含み、混合気は、一連の往復ピストンを作動させるべく燃焼室において燃焼され、クランクケースは、ピストンによって駆動されるクランク軸を収容する。稼働中に「ブローバイ」が生じることは、エンジンにとって一般的なことであり、燃焼ガスは、燃焼室から、ピストンの傍を通り過ぎてクランクケース内に漏出する。これらの燃焼ガスやブローバイガスは、燃焼工程による水分、酸、及びその他の望ましくない副生成物を含有している。
【0003】
エンジンは通常、エンジン由来の有害ガスを除去するブローバイガス還元装置(PCV)システムを含み、前記ガスの大気中への放出を防止する。PCVシステムは、マニホルド真空を用いることによって、蒸発燃料をクランクケースから吸気マニホルド内に引き込む。蒸発燃料は次に、燃料/空気混合物と共に燃焼室の吸気マニホルド内に運ばれ、燃焼される。一般的に、本システム内の流れや循環は、PCV弁によって制御される。該PCV弁は、クランクケース換気システム及び公害防止装置の両方の機能を果たす。
【0004】
また、ブローバイガスが非常に細かいオイルミストを含有することも普通のことである。オイルミストは、PCVシステムによってマニホルドに運ばれる。オイルミストは次に、燃料/空気混合物と共に燃焼室内で燃焼される。その結果、オイル消費量が増加する。ブローバイガスからオイルを除去する公知の方法には、ラビリンス型の穿孔衝突板(punched-hole impact plate:PIP)やサイクロン型の分離装置構造が用いられる。小さな
油滴が通過し、より大きな油滴に収集する通路が提供される。油滴は次に、再循環され、排出装置を経由してサンプ(sump)に戻る。一般的にサンプは、システム内の剰余オイルを保有する。オイル分離装置の例は、ブーゼン(Busen)らの二つの米国特許(特許文献
1と特許文献2)に開示される。これらの米国特許は、両方ともバルター・ヘングスト社(Walter Hengst GmbH & Co. KG)が譲り受けている。
【特許文献1】米国特許第6,279,556号明細書
【特許文献2】米国特許第6,626,163号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のオイル排出装置は、ブローバイガス及びオイル双方に対して、単一の通路を具備する。ブローバイガスは、マニホルドとサンプの間の差圧によってマニホルドに付勢され、オイルは重力によってサンプに付勢される。ブローバイガスの流れは、サンプに向かうオイルの流れを妨害したり阻止したりする。
【0006】
従って、オイル分離装置とサンプの間を移動するオイルに対するブローバイガスの妨害を、最小限に抑える改良型オイル排出装置の提供が依然として望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面によれば、内燃機関におけるオイル分離装置用のオイル排出装置が提供される。本発明は、オイル用の流路とは別に、ブローバイガス用の専用路を提供すること
によって、従来の構造よりも改善している。ブローバイガスの流れが、オイルの流れを妨害しないので、従来の構造に比較してオイル排出装置の排出効率は高くなる。オイル排出装置は、第一室と、第二室と、コネクタと、導管とを含む。第一室は、オイル分離装置からオイルを受け入れる。第二室はサンプに連結される。コネクタは第一室と第二室の間を延びる。コネクタは流路を形成し、オイルは該流路に沿って、第一室と第二室の間を流れることができる。導管はコネクタ内に配置され、前記流路とは別の、クランクケース・ブローバイガス用の通路を提供する。
【0008】
本発明の別の側面によれば、内燃機関におけるオイル分離装置用のオイル排出装置が提供される。オイル排出装置は、第一室と、第二室と、コネクタとを含む。第一室は、オイル分離装置からオイルを受け入れる。第二室はサンプに連結される。コネクタは、第一室と第二室の間を延びる。流路は、コネクタを通って延び、オイルは、該流路に沿って、第一室と第二室の間を流れることができる。通路はコネクタを通って延び、クランクケース・ブローバイガスは前記通路を通って流れることができる。クランクケース・ブローバイガスは、流路に沿って流れるオイルから、実質的に隔離されたままである。
【0009】
本発明の効果は、添付の図面と合わせて考慮し、以下の詳細な説明を参照することによって、一層分かり易くなり、評価し易い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、内燃機関のPCVガスからオイルを除去するオイル分離装置に用いられるオイル排出装置を提供する。オイル排出装置は、オイル分離装置によってPCVガスから分離されたオイルの収集と排出を向上させる。本発明は、オイル用流路とは別の、ブローバイガス用の専用路を提供することによって、従来の構造に比較して改善されている。ブローバイガスの流れは、オイルの流れを妨害しないため、従来の構造に比較して、オイル排出装置10の排出効率が増大する。
【0011】
図1を参照すると、オイル分離装置が10で示される。図面に示すオイル分離装置10は、ラビリンス型に配置された壁を備えるラビリンス構造である。当業者にとって全く当然のことながら、オイル分離装置10は、螺旋型の壁を備える螺旋構造のような任意の型にすることができる。螺旋構造の例は、2004年10月8日に出願された同時係属中の米国特許出願第10/961,557号明細書において提供され、その全体は本明細書に盛り込まれている。
【0012】
オイル分離装置10は、入口部12と出口部14を有する。クランクケースガスは、管16を介してオイル分離装置10の入口部12に供給される。実質的に脱油されたガスと、オイル分離装置10から排出されたオイルとは、収集/オイル排出装置22に運ばれる。ガスは、図1に示すように、水平向きの穿孔板20aと衝突板20b(PIP)の配列を通るように方向付けられる。穿孔板20aは複数の穴21を有し、該穴をガスが通過できる。衝突板20bは、全般的に穿孔板20aに平行であり、前記穿孔板との間隔を狭くすることによって、ガス中に残存する小さな油滴を除去し易くする。脱油されたガスは、PIP配列20から、縦方向に延びるトンネル18に移動する。脱油されたガスは次に、出口部14を通ってトンネル18から排出され、マニホルドに導入される。排出ガスから分離されたオイルは、オイル排出装置内に向けられる。次に、オイル排出装置の幾つかの実施形態を、以下により詳細に説明する。
【0013】
図2〜図4において、オイル排出装置の第一実施形態は、22で示される。装置22は第一室30を含む。第一室30は、間隔を置いて向い合う上壁32と底壁34を含む。上壁32と底壁34は、外壁38の間を延びる。穴36は底壁34内に形成される。第一室30の底壁34は、外壁38に対して下方に傾斜させることによって、穴36にオイルが
注ぎ込み易くする。第二室40は、第一室30の下方に配置される。第二室40は、間隔を置いて向い合う上壁42と下壁44を具備する。開口又は穴46は、第二室40の上壁42内に形成される。
【0014】
第一室30と第二室40の穴36,46は、全体的に軸芯についてアライメントされる。コネクタ50は、第一室30の底壁34と第二室40の上壁42の間を延びる側壁51を含む。コネクタ50の側壁51は、第一室30と第二室40の穴36,46の間に流路を形成する内面51を具備する。流路は、図面に示すように下方を指す矢印によって例示される。
【0015】
導管60は、第一室30と第二室40の間にブローバイガス用の通路を提供する。ブローバイガス用の通路は、図面に示すように上方を指す矢印によって例示される。導管60は、上端64と底端66の間を延びる全体的に円筒状の壁62を具備する。壁62は、オイル用の流路を、ブローバイガス用の通路から隔離する。導管60の上端64は、第一室30の底壁34を越えて上方に延びるので、ブローバイガスは、流路へのオイルの流れを妨害しない。導管60の底端66は、逆漏斗の形態で外方に張り広がるフランジ67を含む。壁62の底端66は、ブローバイガスが通過する入口部を備える。
【0016】
図3において、第一室30と第二室40は、互いに組立てられる直前の分解図で示される。コネクタ50は、第二室40に一体形成される。フランジ52は、コネクタ50の先端から外方に延びる。突起54はフランジ52から外方に延びる。突起54は、第一室30の底壁34に形成された、対応する凹部56内に延びる。フランジ52は次に、接着や超音波溶接のような、当業者にとって公知な任意の適した方法によって、底壁34に固定される。図4に示すように、複数の突起54及び凹部56は、第一室30に対してコネクタ50を設置すべく用い得る。導管60の張り広がった底端66は、第二室40の上壁42に固定される。従って、第一室30と第二室40の組立ての際、導管60の上端64は、まず、底壁34における穴36を通って挿入される。当然のことながら、前述の突起54と凹部56の配列を用いることによっても、コネクタを第二室40に固定し得る。
【0017】
使用時、クランクケースガスは、入口部12を通ってオイル分離装置10に入る。オイルミストは、オイル分離装置10においてガスから分離される。オイルは、第一室30の底壁34に沿って集まる。該オイルは、底壁34の角度によって、穴36に向かって注ぎ込まれる。オイルは、導管60とコネクタ50の側壁51との間に形成される流路を通って、第一室30から第二室40に移動する。同時に、ブローバイガスも、導管60を介してコネクタ50を通過し得る。本発明は、オイル用の流路とは別の、ブローバイガス用の専用路を提供することによって、従来の構造に比較して改善している。ブローバイガスの流れは、オイルの流れを妨害しないため、従来の構造に比較してオイル排出装置10の排出効率が増大する。オイルは次に、クランクケースを通って、再循環すべくサンプ80に送られる。脱油されたガスは、PIP配列20を通るように方向付けられる。穿孔板20aと衝突板20bの間の高圧によって、残存するファイルオイルミストがガスから分離される。オイルは、重力によって排出装置22に移動する。脱油されたガスは、続いてトンネルに移動し、出口部14を通ってマニホルドに出て行く。
【0018】
図5〜図7を参照すると、オイル排出装置の第二実施形態は122で示される。この実施形態において、第一室130と第二室140の間のオイル用の流路は、複数の管70によって形成され、該管は底壁34及び上壁42の間を延びる。管70は、全般的に導管160と平行である。管70は、導管壁162に隣接して配置される。図6によく表されているように、管70は第二室140の上壁142に一体形成されている。管70の上端は、前記実施形態における突起154と凹部156の配列によって、第一室130の底壁134に配置され且つ固定される。 図8を参照すると、オイル排出装置の第三実施形態は
222で示される。この実施形態において、コネクタ250の壁は、全体的に45度の角度に向けられることによって、第二室240の上壁242における穴246に向かってオイルが注ぎ込まれ易くする。
【0019】
本発明を例示による方法で説明してきた。従って、当然のことながら、用いられる専門用語は、制限よりはむしろ説明の言葉の範疇内に入れようとするものである。本発明の多くの改善および変型は上記の教示に鑑みて可能である。従って、添付の請求項の範囲内において、本発明を具体的に記載した以外にも実行し得る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明によるオイル分離装置及び排出装置の斜視図。
【図2】本発明の第一実施形態によるオイル排出装置の断面図。
【図3】第一実施形態のオイル排出装置の部分分解断面図。
【図4】第一実施形態のオイル排出装置の、図3におけるA−A断面図。
【図5】本発明の第二実施形態によるオイル排出装置の断面図。
【図6】第二実施形態のオイル排出装置の部分分解断面図。
【図7】第二実施形態のオイル排出装置の、図6におけるB−B断面図。
【図8】本発明の第三実施形態によるオイル排出装置の断面図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関におけるオイル分離装置用のオイル排出装置であって、該オイル排出装置は、
前記オイル分離装置からオイルを受け入れる第一室と、
サンプに連結される第二室と、
前記第一室と前記第二室の間を延びるコネクタであって、前記コネクタは、オイルが前記第一室と前記第二室の間を流れることを可能にするための流路を形成することと、
前記コネクタ内に配置される導管であって、該導管は、前記流路とは別の、クランクケース・ブローバイガス用の通路を提供するように構成されていることと
を具備するオイル排出装置。
【請求項2】
前記第一室は、オイルを前記流路に流入可能にするための穴を有する底壁を含むことを特徴とする請求項1に記載のオイル排出装置。
【請求項3】
前記第二室は、オイルを前記コネクタから前記第二室に流れ込ませるための開口を有する上壁を含むことを特徴とする請求項2に記載のオイル排出装置。
【請求項4】
前記導管は上端を含み、前記ブローバイガスの流れが前記流路への前記オイルの流れを妨害しないように、前記上端は、前記第一室の前記底壁から上下方向に離間するように構成されていることを特徴とする請求項2に記載のオイル排出装置。
【請求項5】
前記導管の前記底端はフランジを有し、該フランジは、前記ブローバイガスを前記オイルから分離し易い逆漏斗を形成するように外方に張り広がるように構成されていることを特徴とする請求項3に記載のオイル排出装置。
【請求項6】
前記導管はフランジを有し、前記ブローバイガスによる妨害を最小にしつつオイルが前記コネクタから前記第二室内に流れ込むことを許容するため、前記フランジは前記第二室の前記上壁から上下方向に離間するように構成されていることを特徴とする請求項5に記載のオイル排出装置。
【請求項7】
前記底壁は前記穴に向かって下方に傾斜するように構成されていることを特徴とする請求項2に記載のオイル排出装置。
【請求項8】
前記コネクタは突起を備え、該突起は、前記第一室及び前記第二室のうちの一つに形成された対応する凹部内に延びるように構成され、
前記第一室及び前記第二室のうちの前記一つに前記コネクタを結合すべく、前記突起は対応する前記凹部に固定されるように構成されている請求項3に記載のオイル排出装置。
【請求項9】
内燃機関におけるオイル分離装置用のオイル排出装置であって、該オイル排出装置は、
前記オイル分離装置からオイルを受け入れる第一室と、
サンプに連結される第二室と、
前記第一室と前記第二室の間を延びるコネクタと、
オイルが前記第一室と前記第二室の間を流れることを可能にするように前記コネクタを通って延びる流路と、
前記流路に沿って流れる前記オイルからクランクケース・ブローバイガスを実質的に隔離した状態においてクランクケース・ブローバイガスが流れることを可能にするように前記コネクタを通って延びる通路と
を具備するオイル排出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−211779(P2007−211779A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−60870(P2007−60870)
【出願日】平成19年2月9日(2007.2.9)
【出願人】(505438890)トヨタ エンジニアリング アンド マニュファクチャリング ノース アメリカ インコーポレイテッド (15)
【氏名又は名称原語表記】TOYOTA ENGINEERING & MANUFACTURING NORTH AMERICA, INC.
【Fターム(参考)】