説明

エンジンフード部の通気構造

【課題】エンジンルーム内の熱気を外部へ効率よく排気し、外部からの雨水、泥土等がエンジンルーム内に侵入するのを防ぐとともにエンジンルーム内から外部への音漏れを軽減する。
【解決手段】オフセットしたエンジンフード本体1Aにおける側面位置とエンジンフード補強梁2位置とにそれぞれ通気孔3A,3Bを穿設し、エンジンフード本体1Aの内側面とエンジンフード補強梁2とで断面が閉構造に形成された空隙部をエンジンルーム4内の熱気を外部に排出する排気路Vとして構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の建設機械におけるエンジンフード部の通気構造に関するものであり、特に、エンジンルーム内の熱気を外部へ効率よく排気するとともに外部からの雨水、泥土等がエンジンルーム内に侵入するのを防ぐことが可能なエンジンフード部の通気構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、次のような建設機械の騒音低減装置並びにこの装置に用いるカバー及び排気部が知られている。この従来技術は、エンジンをファンで生起する空気流で冷却し、前記エンジン及びファンをカバー(エンジンフード)で覆った建設機械において、前記カバーの上面に前記ファンの回転軸の軸線に対し角度θをもって流出する空気流を許容しつつ外部に排出する複数の開口を備えた排気部を設け、少ない排気抵抗で前記空気流を外部に排出できるようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、他の従来技術として、例えば、次のような建設機械の冷却構造が知られている。この従来技術は、エンジンで回転されるファンにより外気を吸入してラジエータを冷却し、冷却後の冷却風を機械室上部のエンジンカバー(エンジンフード)より排出する建設機械の冷却構造において、前記エンジンカバーのエンジンの前部上方部分に凹部を形成し、該凹部のファン側の傾斜部に排気口を形成し、前記冷却風の排気効率を高めるようにしている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−254976号公報
【特許文献2】特開平8−268088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の従来技術においては、カバー(エンジンフード)の上面にファンの回転軸の軸線に対し角度θをもって流出する空気流を許容しつつ外部に排出する複数の開口を設けている。しかしながら、角度θの複数の開口は、カバー(エンジンフード)の上面に設けているため、逆に、外部からの雨水、泥土等の侵入物が角度θをもってエンジンルーム内に入り込むおそれがある。
【0006】
また、特許文献2に記載の従来技術においては、エンジンカバー(エンジンフード)におけるエンジンの前部上方部分に凹部を形成し、該凹部の部分に排気口を形成しているため、外部からの雨水、泥土等の侵入物が凹部の部分の排気口から、上記と同様にエンジンルーム内に入り込むおそれがある。
【0007】
そこで、エンジンルーム内の熱気を外部へ効率よく排気し、外部からの雨水、泥土等がエンジンルーム内に侵入するのを防ぐとともにエンジンルーム内から外部への音漏れを軽減し、エンジンフードに新たなダクト等を設ける必要がなくエンジンルーム内の空間を有効活用することを可能とするために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、エンジンフード本体の内側面と対向するようにエンジンフード補強梁が設けられ、該エンジンフード本体の内側面とエンジンフード補強梁とで断面が閉構造の空隙部が形成された構成を有するエンジンフード部の通気構造であって、オフセットした前記エンジンフード本体における側面位置と前記エンジンフード補強梁位置とにそれぞれ通気孔を穿設し、前記空隙部をエンジンルーム内の熱気を外部に排出する排気路として構成したエンジンフード部の通気構造を提供する。
【0009】
この構成によれば、オフセットしたエンジンフード本体における側面位置とエンジンフード補強梁位置とにそれぞれ通気孔を穿設したことで、エンジンフード本体の内側面とエンジンフード補強梁とで断面が閉構造に形成された空隙部が排気路として機能し、エンジンルーム内の熱気が外部へ効率よく排気される。また、エンジンフード本体の通気孔とエンジンフード補強梁の通気孔とはオフセット位置に穿設されていることで、外部からの雨水、泥土等がエンジンルーム内に侵入するのが防止されるとともにエンジンルーム内から外部への音漏れが軽減される。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、上記エンジンフード本体における側面位置の通気孔部分もしくは上記エンジンフード補強梁の通気孔部分の少なくともいずれかにルーバを取付けたエンジンフード部の通気構造を提供する。
【0011】
この構成によれば、エンジンフード本体の通気孔部分もしくはエンジンフード補強梁の通気孔部分の少なくともいずれかにルーバを取付けたことで、エンジンルーム内の熱気が、より一層効率よく外部へ排気される。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明は、エンジンフード本体の内側面とエンジンフード補強梁とで形成された空隙部を排気路として機能させたことでエンジンルーム内の熱気を外部へ効率よく排気することができる。エンジンフード本体の通気孔とエンジンフード補強梁の通気孔とはオフセット配置としたことで外部からの雨水、泥土等がエンジンルーム内に侵入するのを防止することができるとともにエンジンルーム内から外部への音漏れを軽減することができる。また、エンジンフードに新たなダクト等を設ける必要がなくエンジンルーム内の空間を有効活用することができるという利点がある。
【0013】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加えてさらに、エンジンルーム内の熱気を、より一層効率よく外部へ排気することができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例に係るエンジンフード部の通気構造を示すものであり、(a)はエンジンフードの平面図、(b)は図(a)の側面図、(c)は図(a)中のX−X線に沿う部分の拡大断面図。
【図2】図1(b)中のY−Y線に沿う部分の拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、エンジンフード本体とエンジンフード補強梁とにそれぞれ通気孔を設けることでエンジンルーム内の熱気を外部へ効率よく排気し、エンジンフード本体の通気孔とエンジンフード補強梁の通気孔とはオフセット配置にすることで、外部からの雨水、泥土等がエンジンルーム内に侵入するのを防ぐとともにエンジンルーム内から外部への音漏れを軽減し、エンジンフードに新たなダクト等を設ける必要がなくエンジンルーム内の空間を有効活用することを可能とするという目的を達成するために、エンジンフード本体の内側面と対向するようにエンジンフード補強梁が設けられ、該エンジンフード本体の内側面とエンジンフード補強梁とで断面が閉構造の空隙部が形成された構成を有するエンジンフード部の通気構造であって、オフセットした前記エンジンフード本体における側面位置と前記エンジンフード補強梁位置とにそれぞれ通気孔を穿設し、前記空隙部をエンジンルーム内の熱気を外部に排出する排気路として構成することにより実現した。
【実施例1】
【0016】
以下、本発明の好適な実施例を図1の(a)、(b)、(c)及び図2を参照して説明する。まず、本実施例に係るエンジンフード部の通気構造の構成を図1の(a)、(b)、(c)及び図2を用いて説明する。図1において、エンジンフード1には、エンジンフード本体1Aの内側面と対向するようにエンジンフード補強梁2が設けられ、該エンジンフード本体1Aの内側面とエンジンフード補強梁2とで断面が閉構造の空隙部が形成されている(同図(c))。
【0017】
前記エンジンフード本体1Aの側面とエンジンフード補強梁2位置には、該エンジンフード本体1Aの外部側方から見てオフセットした各位置に、それぞれ方形状の通気孔3A,3Bが穿設され(同図(b))、前記閉構造の空隙部がエンジンルーム4内の熱気を外部に排出するための排気路Vとして構成されている。図2に示すように、前記各通気孔3A,3Bの部分には、それぞれルーバ5a,5bが取付けられている。また、図2に示されている構成例の排気路Vは、端部がエンジンルーム4内に解放されている。
【0018】
前記通気孔3A,3Bは、エンジンフード本体1Aやエンジンフード補強梁2の形状等に関係なく穿設可能であり、各通気孔3A,3Bの大きさ、形状、数量は、これを穿設する部材等に合わせて設定変更が可能である。また、前記排気路Vは、エンジンフード本体1Aにおける前後左右の各内側面部に設けることが可能である。
【0019】
次に、上述のように構成されたエンジンフード部の通気構造の作用を説明する。オフセットしたエンジンフード本体1Aにおける側面位置とエンジンフード補強梁2位置とにそれぞれ通気孔3A,3Bを穿設したことで、エンジンフード本体1Aの内側面とエンジンフード補強梁2とで断面が閉構造に形成された空隙部が排気路Vとして機能する。
【0020】
そして、エンジンルーム4内の熱気が、エンジンフード補強梁2の通気孔3Bから入り込む流れe、排気路Vの端部から回り込んで入り込む流れf等となって、排気路V内にそれぞれ流れ込み該排気路V内の流れg,iとなって排気路V内を流れる。この排気路V内の流れgが、エンジンフード本体1Aの通気孔3Aから外部へ流出する流れhとなって、エンジンルーム4内の熱気が外部へ効率よく排気される。
【0021】
このとき、エンジンフード本体1Aの通気孔3A部分及びエンジンフード補強梁2の通気孔3B部分には、それぞれルーバ5a,5bが取付けられていることで、エンジンルーム4内の熱気は、より一層効率よく外部へ排気される。
【0022】
また、エンジンフード本体1Aの通気孔3Aとエンジンフード補強梁2の通気孔3Bとはオフセット位置に穿設されていることで、外部からの雨水、泥土等がエンジンルーム4内に侵入するのが防止されるとともにエンジンルーム4内から外部への音漏れが軽減する。
【0023】
上述したように、本実施例に係るエンジンフード部の通気構造においては、エンジンフード本体1Aの内側面とエンジンフード補強梁2とで形成された空隙部を排気路Vとして機能させたことでエンジンルーム4内の熱気を外部へ効率よく排気することができる。
【0024】
エンジンフード本体1Aの通気孔3Aとエンジンフード補強梁2の通気孔3Bとはオフセット配置としたことで外部からの雨水、泥土等がエンジンルーム4内に侵入するのを防止することができるとともにエンジンルーム4内から外部への音漏れを軽減することができる。
【0025】
エンジンフード本体1Aの内側面とエンジンフード補強梁2とで断面が閉構造に形成された空隙部を排気路Vとして機能させたことで、エンジンフード1に新たな排気ダクト等を設ける必要がなくエンジンルーム4内の空間を有効活用することができる。
【0026】
エンジンフード本体1Aの通気孔3A部分及びエンジンフード補強梁2の通気孔3B部分には、それぞれルーバ5a,5bを取付けたことで、エンジンルーム4内の熱気を、より一層効率よく外部へ排気することができる。
【0027】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変をなすことができ、そして、本発明が該改変されたものにも及ぶことは当然である。
【産業上の利用可能性】
【0028】
エンジンルーム内の熱気を外部へ効率よく排気し、外部からの雨水、泥土等がエンジンルーム内に侵入するのを防ぐとともにエンジンルーム内から外部への音漏れを軽減することが不可欠な油圧ショベル及び道路舗装機械等のエンジンルームを備えた建設機械に広く適用することが可能である。
【符号の説明】
【0029】
1 エンジンフード
1A エンジンフード本体
2 エンジンフード補強梁
3A,3B 通気孔
4 エンジンルーム
5a,5b ルーバ
V 排気路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンフード本体の内側面と対向するようにエンジンフード補強梁が設けられ、該エンジンフード本体の内側面とエンジンフード補強梁とで断面が閉構造の空隙部が形成された構成を有するエンジンフード部の通気構造であって、
オフセットした前記エンジンフード本体における側面位置と前記エンジンフード補強梁位置とにそれぞれ通気孔を穿設し、前記空隙部をエンジンルーム内の熱気を外部に排出する排気路として構成したことを特徴とするエンジンフード部の通気構造。
【請求項2】
上記エンジンフード本体における側面位置の通気孔部分もしくは上記エンジンフード補強梁の通気孔部分の少なくともいずれかにルーバを取付けたことを特徴とする請求項1記載のエンジンフード部の通気構造。

【図1】
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【図2】
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