説明

エンジン排気装置

【課題】 簡易な構成で、排気に混ざる液滴が排気ダクトから放出されるのを抑制するためのエンジン排気装置を提供しようとする。
【解決手段】
従来の舶用ガスタービンエンジンの排気を大気に放出するエンジン排気装置にかわって、タービンエンジンの排気口に下方の端部を連通し上方の端部を大気中に開口した管状構造物である排気ダクトと、前記排気ダクトに排気の流れを遮る様に取り付けられ排気に混ざる液滴を捕捉可能なフィルタと、を備えるものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの排気を大気中に放出するためのエンジン排気装置に係る。特に、環境を汚すことを防止するのに好適なエンジン排気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶の推進装置には、タービンエンジンで駆動する形式のものがある。
タービンエンジンは、船舶の甲板より下の区画に据付けられる。
タービンから排出した排気は、排気ダクトを通って大気へ排出される。
排気ダクトは、下方の端部をタービンエンジンの排出口に連通し、甲板を貫通して、上方の端部を大気中に開口する。
【0003】
ところで、タービンエンジンの運用において、タービンエンジンを空運転することがある。
空運転は、タービンエンジンを出力させないで回転する運転であり、ドライモータリングとウエットモータリングとがある。
ドライモータリングは、燃料を供給せずにタービンエンジンを回転させる空運転である。ドライモータリングは、始動前の通常チェック等で行われる。
ウエットモータリングは、燃料を供給し点火ぜずにタービンエンジンを回転させる空運転である。ウエットモータリングは、タービンエンジンの燃料系統のメンテナンスを行なった後などに、燃料もれや圧力をチェックするのに行われる。
【0004】
ウエットモータリングでは、燃料の混ざった空気がタービンエンジンの排出口から排出される。
空気に混ざった燃料は、排気ダクトの中を通過する際に重力の作用により上昇を停止して落下し、排気ダストの底部に設けられたドレイン配管により外部へ排出される。
【0005】
ところで、排気ダクトの長さが短いと、ウエットモータリング中に燃料が排気ダクトの開口から大気中に飛出てしまうことがあった。この様になると、燃料が甲板に飛び散ってしまう。
【0006】
【特許文献1】特開平7−35385号
【特許文献2】特開平8−61728号
【特許文献3】特開2000−5534号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は以上に述べた問題点に鑑み案出されたもので、簡易な構成で、排気に混ざる液滴が排気ダクトから放出されるのを抑制するためのエンジン排気装置を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係るエンジンの排気を大気に放出するエンジン排気装置を、タービンエンジンの排気口に下方の端部を連通し上方の端部を大気中に開口した管状構造物である排気ダクトと、前記排気ダクトに排気の流れを遮る様に取り付けられ排気に混ざる液滴を捕捉可能なフィルタと、を備えるものとした。
【0009】
上記本発明の構成により、排気ダクトがタービンエンジンの排気口に下方の端部を連通し上方の端部を大気中に開口した管状構造物であり、排気に混ざる液滴を捕捉可能なフィルタが排気の流れを遮る様に前記排気ダクトに取り付けられるので、排気に混ざった液滴が、前記排気ダクトの中を通過した場合に、前記フィルタに捕捉される。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように本発明に係る舶用ガスタービンエンジンの排気を案内するエンジン排気装置は、その構成により、以下の効果を有する。
エンジンの排気口に連通する排気ダクトに排気の流れを遮る様にフィルタを設けたので、タービンエンジンの排気に混ざった液滴が、前記排気ダクトの中を通過した場合に、前記フィルタに捕捉される。
従って、簡易な構成で、排気に混ざる液滴が排気ダクトから放出されることを抑制するためのエンジン排気装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係るいくつかの実施形態を説明する。
【0012】
さらに、本発明の実施形態に係るエンジン排気装置は、前記フィルタが、排気の流れを遮る様に配置された金属ワイヤーを編んでできた板状構造体のデミスタを有する。
上記実施形態の構成により、前記デミスタが、排気の流れを遮る様に配置された金属ワイヤーを編んでできた板状構造体であるので、液滴が、排気の流れに乗って移動し、デミスタの金属ワイヤーに効率良く捕捉される。
【0013】
さらに、本発明の実施形態に係るエンジン排気装置は、前記フィルタが排気の流れを遮る様に配置されたデミスタと該デミスタの下流側に重ねられた不織布とを有する。
上記実施形態の構成により、フィルタのデミスタが排気の流れを遮る様に配置され、フィルタの不織布がデミスタの下流側に重ねられるので、排気中の大きな液滴がデミスタに捕捉され、残った細かな液滴が不織布に捕捉され、液滴が効率良く捕捉される。
【0014】
さらに、本発明の実施形態に係るエンジン排気装置は、前記フィルタが前記排気ダクトに上方の端部の開口を塞ぐ様に取り付けられる。
上記実施形態の構成により、前記フィルタが上方の端部の開口を塞ぐ様に前記排気ダクトに取り付けられるので、排気中の液滴が確実にフィルタに捕捉される。
【0015】
さらに、本発明の実施形態に係るエンジン排気装置は、前記フィルタが前記排気ダクトに上方の端部との間に排気の通過可能な隙間を設けて取付られる。
上記実施形態の構成により、前記フィルタが前記排気ダクトに上方の端部との間に排気の通過可能な隙間を設けて取付られるので、排気中の液滴がほぼ確実にフィルタに捕捉され、排気ダクトの圧損が大きくなるのを防止できる。
【0016】
さらに、本発明の実施形態に係るエンジン排気装置は、前記フィルタが前記排気ダクトの下方の端部と上方の端部との間の位置に取り付けられる。
上記実施形態の構成により、前記フィルタが前記排気ダクトの下方の端部と上方の端部との間の位置に取り付けられるので、排気中の液滴がほぼ確実にフィルタに捕捉され、排気ダクトから飛び出すのを抑制できる。
【0017】
さらに、本発明の実施形態に係るエンジン排気装置は、前記フィルタが前記排気ダクトの内壁との間に隙間を設けて取り付けられる。
上記実施形態の構成により、前記フィルタが前記排気ダクトの内壁との間に隙間を設けて取り付けられるので、排気中の液滴がほぼ確実にフィルタに捕捉され、排気ダクトの圧損が大きくなるのを防止できる。
【0018】
さらに、本発明の実施形態に係るエンジン排気装置は、前記排気ダクトから取り外された前記フィルタを収納し液滴を貯留することをできる受け皿であるフィルタ移動用受け皿を、備える。
上記実施形態の構成により、フィルタ移動用受け皿が前記排気ダクトから取り外された前記フィルタを収納し液滴を貯留することをできるので、液滴を捕捉したフィルタを排気ダクトから取り外し、フィルタ移動用受け皿に収納すると、滴下した液滴を貯留することをできる。
【0019】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面を参照して説明する。なお、各図において、共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0020】
最初に、本発明の第一の実施形態に係るエンジン排気装置10を、図を基に、説明する。
図1は、本発明の第一の実施形態に係るエンジン排気装置を備えた船舶の全体図である。図2は、本発明の第一実施形態に係るエンジン排気装置10の側面図である。図3は、本発明の第一の実施形態に係るエンジン排気装置10の平面図である。図4は、本発明の第一実施形態に係るエンジン排気装置10の部分断面図である。図5は、本発明の第一の実施形態に係るフィルタ移動用受け皿の側面図である。図6は、本発明の第一の実施形態に係るフィルタ移動用受け皿の平面図である。図7は、本発明の第一の実施形態に係るフィルタ移動用受け皿の部分断面図である。
【0021】
エンジン排気装置10は、舶用ガスタービンエンジン20の大気に放出する装置であって、排気ダクト30とフィルタ40とフィルタ移動用受け皿50とで構成される。
【0022】
排気ダクト30は、タービンエンジンの排気口に下方の端部を連通し、上方の端部を大気中に開口した管状構造物であって、排気ダクト本体31と排気ダクトフランジ32とドレイン配管系33とで構成される。
排気ダクト本体31は、略水平に延びた下部構造31bの一端と略上下に伸びた上部構造31aの下端とが繋がって略L字形に伸びた管状構造体である。
排気ダクトフランジ32は、排気ダクト本体31の上方の端部に設けられたフランジである。
ドレイン配管系33は、排気ダクト30に溜まった液体を外部へ排出するための配管系統であって、排気ダクト本体31の下部に設けられる。
【0023】
フィルタ40は、排気ダクト30に排気の流れを遮る様に取り付けられ排気中の液滴を捕捉可能なものである。
フィルタ40は、排気の流れを遮る様に配置されたデミスタ41で構成されるのが好ましい。
デミスタは、慣性衝突により気体に混ざる液滴を捕捉する機器である。
特に、デミスタ41は、金属ワイヤーを編んでできた板状構造体であるのが好ましい。
また、フィルタ40は、排気の流れを遮る様に配置されたデミスタ41とデミスタの下流側に重ねられた不織布42とで構成されるのが好ましい。
特に、不織布42は、樹脂製不織布であるのが好ましく、例えば、芳香族ポリアミド製の不織布である。
【0024】
例えば、フィルタ40は、デミスタ41と不織布42と複数の孔空き板43と取付部材44とカバー部材45と組立ねじ46と取付ねじ47と把手48とで構成される。
デミスタ41は、直径Rの円形の板構造をしている。
不織布42は、直径Rの円形の板構造をしている。
孔空き板43は、多数の貫通孔が全面に一様に設けられた直径Rの円形の板状構造体であり、例えば、エキスパンドメタルまたはパンチングメタルでできている。
取付部材44は、フィルタ40を排気ダクト30に取り付ける為の部材であり、側板部44aとフランジ部44bと環状部44cと抑え部44dとで構成される。側板部44aは、内径Rの円筒状の部分である。フランジ部44bは、側板部44aの下部に接続し排気ダクトフランジ32に対応するフランジである。環状部44cは、外周を側板部44aの内壁に接続された環状の部分である。抑え部44dは、十字状に交差した1対の平棒部材である。抑え部44dは、環状部44cの内側の空隙に配され、両端を環状部44cの内周に接続される。
カバー部材45は、取付部材44の上部に取り付けられる部材であり、側板部45aと環状部45bと抑え部45cとで構成される。側板部45aは、側板部44aの外周を覆う円筒状の部分である。環状部45bは、外縁を側板部45aの上縁に接続した環状の部分である。抑え部45cは、十字状に交差した1対の平棒部材である。抑え部45cは、環状部45bの内側の空隙に配され、両端を環状部材45bの内周に接続される。
組立ねじ46は、取付部材44とカバー部材45とを連結するねじである。
取付ねじ47は、フィルタ40を排気ダクト30に連結するねじである。取付ねじ47は、蝶ボルトであるのが好ましい。この様にすると、フィルタ40を容易に排気ダクト30から取りはづすことができる。
把手48は、フィルタ40を取り扱うための把手であり、カバー部材45に固定される。
【0025】
孔空き板43とデミスタ41と孔空き板43と不織布42と孔空き板43とが、下方から上方へ順に重ねて一体となり、取付部材44とカバー部材45とに上下から挟まれる。
【0026】
フィルタ40は、排気ダクト30に上方の端部の開口を塞ぐ様に取り付けられる。
取付部材44のフランジ部44bが、排気ダクト30の排気ダクトフランジ32に乗せられ、取付ねじ47で固定される。
この様にすると、排気ダクト30をとおる排気は、ずべてフィルタ40のデミスタ41と不織布42とを通過する。
【0027】
フィルタ移動用受け皿50は、排気ダクト30から取り外されたフィルタ40を収納し液滴を貯留することをできる受け皿であり、底板部51とフランジ部52と側板部53とで構成される。
底板部51は、円形の板部である。
側板部53は、筒状の部材でできている。側板部53の下部が底板部51の外周に固定される。
フランジ部52は、フィルタ40のフランジ部44bに対応するフランジである。フランジ部52の内周が、側板部53の上部に固定される。
フィルタ40をフィルタ移動用受け皿50に取付ねじ47で固定することができる。
この様にすると、フィルタに捕捉された液滴が滴下して、フィルタ移動用受け皿50に貯留する。
【0028】
本発明の第一の実施形態に係るエンジン排気装置の使用方法と作用とを説明する。
タービンエンジンをウエットモータリングする場合を説明する。
フィルタ40を排気ダクト30に取り付ける。
ウエットモータリングすると、エンジンの排気口から燃料の混じった空気が排出される。
燃料の液滴が混じった空気が排気ダクト30の中を通って、フィルタ40を通過して大気に放出される。
排気に混ざった液滴の一部は、重力の作用により排気ダクト30の中で落下し、ドレイン配管系33から排出される。
残った液滴は、排気に混ざってフィルタ40を通過する。
大粒の液滴がデミスタ41に捕捉される。
残った小粒の液滴が不織布に捕捉される。
従って、燃料の混じらない空気が排気ダクトから大気に放出される。
フィルタ40を排気ダクト30から取り外し、フィルタ移動用受け皿50に取り付ける。フィルタに捕捉された液滴が、滴下して、フィルタ移動用受け皿50に溜まる。
【0029】
次に、本発明の第二の実施形態に係るエンジン排気装置10を説明する。
図8は、本発明の第二の実施形態に係るエンジン排気装置の側面図である。
エンジン排気装置は、舶用ガスタービンエンジン20の排気を案内する装置であって、排気ダクト30とフィルタ40とフィルタ移動用受け皿50とフィルタ支持構造体60で構成される。
【0030】
排気ダクト30とフィルタ40とフィルタ移動用受け皿50の構造は、第一の実施形態に係るエンジン排気装置のものと同じなので、説明を省略する。
但し、フィルタ40のフランジと排気ダクトフランジ32の寸法は、必ずしも同一である必要はない。
フィルタ40が排気ダクト30に上方の端部との間に排気の通過可能な隙間を設けて取付られる。
【0031】
フィルタ支持構造体60は、フィルタ40を排気ダクト30に上方の端部との間に排気の通過可能な隙間を設けて取付けるための支持構造体である。
フィルタ支持構造体60は、下部フランジ61とフランジ連結部材62と上部フランジ63とで構成される。
下部フランジ61は、排気ダクトフランジ32と同寸法のフランジである。
フランジ連結部材62、下部フランジ61と上部フランジ63とを間に空隙を設けて連結する部材である。例えば、フランジ連結部材62は、ラーメン構造を有する。
上部フランジ63は、フィルタ40のフランジ部44bと同寸法のフランジである。
【0032】
次に、本発明の第二の実施形態に係るエンジン排気装置の使用方法と作用とを説明する。
タービンエンジンをウエットモータリングする場合を説明する。
フィルタ40を、フィルタ支持構造60を介して、排気ダクト30に取り付ける。
ウエットモータリングすると、エンジンの排気口から燃料の混じった空気が排気される。
燃料の液滴が混じった空気が排気ダクト30の中を通って、フィルタ40を通過して大気に放出される。
排気に混ざった液滴の一部は、重力の作用により排気ダクト30の中で落下し、ドレイン配管系33から排出される。
残った液滴は、排気に混ざってフィルタ40を通過する。
大粒の液滴がデミスタ41に捕捉される。
残った小粒の液滴が不織布に捕捉される。
空気の一部は、排気ダクト30の上部とフィルタ40との間の隙間から大気へ流れる。
液滴の密度は排気の密度よりも大きいので、液滴の慣性力が排気の慣性力より大きく、大部分の液滴が真っすぐ上方に流れてフィルタに捕捉される。
従って、燃料の混じらない空気が排気ダクトから大気に放出される。
フィルタ40をフィルタ支持構造体60から取り外し、フィルタ移動用受け皿50に取り付ける。フィルタに捕捉された液滴が、滴下して、フィルタ移動用受け皿50に溜まる。
【0033】
次の、本発明の第3の実施形態に係るエンジン排気装置10を、図を基に、説明する。
図9は、本発明の第三の実施形態に係るエンジン排気装置の側面図である。
エンジン排気装置は、舶用ガスタービンエンジン20の排気を案内する装置であって、排気ダクト30とフィルタ40とフィルタ移動用受け皿50とフィルタ支持構造体60で構成される。
【0034】
排気ダクト30とフィルタ40とフィルタ移動用受け皿50の構造は、第一の実施形態に係るエンジン排気装置のものと同じなので、説明を省略する。
但し、フィルタ40のフランジと排気ダクトフランジ32の寸法は、必ずしも同一である必要はない。
フィルタ40が排気ダクト30の下方の端部と上方の端部との間の位置に取り付けられる。
フィルタが、排気ダクトの内壁との間に隙間を設けられて取付られるのが好ましい。
【0035】
フィルタ支持構造体60は、フィルタ40を排気ダクトの下方の端部と上方の端部との間の位置に取り付けるための支持構造体である。
フィルタ40の外径は、排気ダクトの内径よりも小さく、フィルタ40と排気ダクト30の間に環状の隙間が存在する。
フィルタ支持構造体60は、下部フランジ61とフランジ連結部材62と上部フランジ63とで構成される。
下部フランジ61は、フィルタ40のフランジ部44bに対応するフランジである。
フランジ連結部材62、下部フランジ61と上部フランジ63とを間に空隙を設けて連結する部材である。例えば、フランジ連結部材62は、ラーメン構造を有する。
上部フランジ63は、排気ダクトフランジ32に対応するフランジである。
【0036】
次に、本発明の第三の実施形態に係るエンジン排気装置の使用方法と作用とを説明する。
タービンエンジンをウエットモータリングする場合を説明する。
フィルタ40を、フィルタ支持構造体60を介して、排気ダクト30に取り付ける。
ウエットモータリングすると、エンジンの排気口から燃料の混じった空気が排気される。
燃料の液滴が混じった空気が排気ダクト30の中を通って、フィルタ40を通過して大気に放出される。
排気に混ざった液滴の一部は、重力の作用により排気ダクト30の中で落下し、ドレイン配管系33から排出される。
残った液滴は、排気に混ざってフィルタ40を通過する。
大粒の液滴がデミスタ41に捕捉される。
残った小粒の液滴が不織布に捕捉される。
空気の一部は、排気ダクト30の上部とフィルタ40との間の隙間を通過して開口から大気へ流れる。
液滴は慣性があるので、中央部を流れる排気に混じる液滴が真っすぐ流れてフィルタに捕捉される。排気ダクトの内壁の近傍を流れる排気の速度は中央部を流れる排気の速度よりも小さいので、内壁の近傍を流れる排気に混じる液滴は重力の影響により排気ダクトの下部に落下する。
従って、燃料の混じらない空気が排気ダクトの内壁とフィルタの外周との隙間から流れる。
フィルタ40をフィルタ支持構造体60から取り外し、フィルタ移動用受け皿50に取り付ける。フィルタに捕捉された液滴が、滴下して、フィルタ移動用受け皿50に溜まる。
【0037】
上述の実施形態のエンジン排気装置を用いれば、以下の効果を発揮する。
舶用タービンエンジンの排気を大気に放出するための排気ダクトに排気の流れを遮る様にフィルタを設けたので、排気に液滴が混じった際に、フィルタが液滴を捕捉し、液滴が大気に放出されるのを抑制できる。
また、フィルタをデミスタと不織布とを重ね、不織布を排気の上流側に配して、排気ダクトに設けたので、大きな液滴がデミスタに捕捉され、小さな液滴が不織布に捕捉され、フィルタの圧力損失が大きくなるのを抑制できる。
また、デミスタを金属ワイヤーを編んでできた板状構造体としたので、フィルタの圧力損失を大きくせずに、液滴を効率良く捕捉できる。
また、フィルタを排気ダクトの他方の端部に開口を塞ぐ様に取り付けられたので、開口を流れる排気の全てから液滴を回収できる。
また、フィルタと排気ダクトの上部との間に隙間が出来るように、フィルタを排気ダクトに取り付けたので、液滴は慣性によりフィルタにぶつかって捕捉され、空気が隙間を通過するので、排気ダクトの圧力損失を大きくことなく、液滴を捕捉できる。
また、フィルタを排気ダクトの中に設けたので、液滴を効率良く捕捉できる。
また、フィルタの外周と排気ダクトの内壁に隙間を設けたので、液滴は慣性でフィルタにぶつかって捕捉され、空気の一部が隙間を流れて、排気ダクトの圧力損失が大きくなるのを抑制する。
また、フィルタを排気ダクトに取付てタービンエンジンをウエットモータリングし、、ウエットモータリングが終了すると、フィルタを排気ダクトから取り外すので、排気に混じる燃料の液滴が大気中に放出するのを抑制でき、燃料を回収できる。
また取り外したフィルタをフィルタ移動用受け皿に収納するようにしたので、フィルタが捕捉した燃料を回収できる。
【0038】
本発明は以上に述べた実施形態に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で各種の変更が可能である。
排気ダクトの開口が円形であることを前提として、デミスタとフィルタとの形状を直径Rの円形であるとして説明したが、これに限定されず、例えば、多角形、楕円等でもよい。
また、デミスタを金属ワイヤーを編んでできたものであるとして説明したが、これに限定されず、例えば、面を気流の流れに平行にした波板を間隔を空けて積層した形式であるエリミネータ式や、直線上に折れ曲がった板が、面を気流の流れに平行にして、間隔を空けて積層した形式のルーバ式でもよい。
また、フィルタ支持構造を、排気ダクトの上方の端部を基礎としてフィルタを支持する構造であるとして説明したが、これに限定されず。例えば、排気ダクトの内壁を基礎としてフィルタを支持する構造としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の第一の実施形態に係るエンジン排気装置を備えた船舶の全体図である。
【図2】本発明の第一の実施形態に係るエンジン排気装置の側面図である。
【図3】本発明の第一の実施形態に係るエンジン排気装置の平面図である。
【図4】本発明の第一の実施形態に係るエンジン排気装置の部分断面図である。
【図5】本発明の第一の実施形態に係るフィルタ移動用受け皿の側面図である。
【図6】本発明の第一の実施形態に係るフィルタ移動用受け皿の平面図である。
【図7】本発明の第一の実施形態に係るフィルタ移動用受け皿の部分断面図である。
【図8】本発明の第二の実施形態に係るエンジン排気装置の側面図である。
【図9】本発明の第三の実施形態に係るエンジン排気装置の側面図である。
【符号の説明】
【0040】
10 エンジン排気装置
20 タービンエンジン
30 排気ダクト
31 排気ダクト本体
31a上部構造
31b下部構造
32 排気ダクトフランジ
33 ドレイン配管系統
40 フィルタ
41 デミスタ
42 不織布
43 孔空き板
44 取付部材
44a側板部
44bフランジ部
44c環状部
44d抑え部
45 カバー部材
45a側板部
45b環状部
45c抑え部
46 組立ねじ
47 取付ねじ
48 把手
50 フィルタ移動用受け皿
51 底板部
52 フランジ部
53 側板部
60 フィルタ支持構造体
61 下部フランジ
62 フランジ連結部材
63 上部フランジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの排気を大気に放出するエンジン排気装置であって、
タービンエンジンの排気口に下方の端部を連通し上方の端部を大気中に開口した管状構造物である排気ダクトと、
前記排気ダクトに排気の流れを遮る様に取り付けられ排気に混ざる液滴を捕捉可能なフィルタと、
を備えることを特徴とするエンジン排気装置。
【請求項2】
前記フィルタが、排気の流れを遮る様に配置された金属ワイヤーを編んでできた板状構造体のデミスタを有する、
ことを特徴とする請求項1に記載のエンジン排気装置。
【請求項3】
前記フィルタが、排気の流れを遮る様に配置されたデミスタと該デミスタの下流側に重ねられた不織布とを有する、
ことを特徴とする請求項1に記載のエンジン排気装置。
【請求項4】
前記フィルタが前記排気ダクトに上方の端部の開口を塞ぐ様に取り付けられる、
ことを特徴とする請求項1に記載のエンジン排気装置。
【請求項5】
前記フィルタが前記排気ダクトに上方の端部との間に排気の通過可能な隙間を設けて取付られる、
ことを特徴とする請求項1に記載のエンジン排気装置。
【請求項6】
前記フィルタが前記排気ダクトの下方の端部と上方の端部との間の位置に取り付けられる、
ことを特徴とする請求項1に記載のエンジン排気装置。
【請求項7】
前記フィルタが前記排気ダクトの内壁との間に隙間を設けて取り付けられる、
ことを特徴とする請求項6に記載のエンジン排気装置。
【請求項8】
前記排気ダクトから取り外された前記フィルタを収納し液滴を貯留することをできる受け皿であるフィルタ移動用受け皿を、
備えたことを特徴とする請求項1に記載のエンジン排気装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−105072(P2006−105072A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−295501(P2004−295501)
【出願日】平成16年10月8日(2004.10.8)
【出願人】(000000099)石川島播磨重工業株式会社 (5,014)
【Fターム(参考)】