説明

エンジン用可変バルブタイミング機構

【課題】熱処理によるカバー部材の変形量を低減させてカバー部材の製造コストを安価にさせるエンジン用可変バルブタイミング機構を提供することにある。
【解決手段】カバー部材26の摺接面56は、レーザ光66を照射することによって焼き入れされたものであるため、強度が必要である摺接面56だけにレーザ光66を照射することによる焼き入れを行い面積的および厚み的に最小限の部分だけにしか熱処理を行わないので、カバー部材26の変形量を大幅に低減させることができカバー部材26の製造コストを安価にさせることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン用可変バルブタイミング機構の製造コストを安価にする技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、エンジン用可変バルブタイミング機構は、たとえば特許文献1に示すように、カムシャフトと一体となって回転する第1回転体と、エンジン(内燃機関)のクランクシャフトに駆動連結されたドリブンギアと一体回転する第2回転体とが備えられており、負荷や回転数などのエンジンの運転状態に応じて上記第1回転体と第2回転体との間に設けられた圧力室の中の流体圧を変化させてその第1回転体と第2回転体との回転位相を変化させることによってバルブ開閉タイミングを調節するものである。また、上記エンジン用可変バルブタイミング機構には、上記流体圧の供給が十分でないエンジン始動時に可変バルブタイミング機構の動作が不安定となることを防止するためにカムシャフトによるバルブ開閉タイミングを固定つまり上記第1回転体と第2回転体とを相対回転不能にするためにロック位置と非ロック位置とに移動させられるロックピンと、非ロック位置のロックピンが摺接させられる摺接面を一面の一部に局部的に有するカバー部材とが備えられている。
【特許文献1】特開平11−2108号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、前記ロックピンと摺接する前記摺接面を有するカバー部材は、その摺接面の摩耗を抑制するためにカバー部材全体に熱処理(たとえば浸炭焼き入れ)を行って必要強度を確保しているが、その熱処理によってカバー部材の変形(反り)量が大きくなってしまうため、カバー部材は、その後の研削工程でその変形量分の取り代が必要となって材料歩留りが低くなりカバー部材が安価に製造できないという問題があった。
【0004】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであって、その目的とするところは、熱処理によるカバー部材の変形量を低減させてカバー部材の製造コストを安価にさせるエンジン用可変バルブタイミング機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的を達成するための請求項1に係る発明の要旨とするところは、エンジン始動時にカムシャフトによるバルブ開閉タイミングを固定するためにロック位置と非ロック位置とに移動させられるロックピンと、非ロック位置のロックピンが摺接させられる摺接面を一面の一部に局部的に有するカバー部材とを備えるエンジン用可変バルブタイミング機構であって、前記カバー部材の摺接面は、レーザ光を照射することによって焼き入れされたものである。
【0006】
また、請求項2に係る発明の要旨とするところは、請求項1に係る発明において、前記カバー部材は、円板形状であって両側に隔てられた互いに平行な挟圧面をそれぞれ有する一対の押さえ治具によって両側から挟圧された状態でその摺接面にレーザ光を照射することによって焼き入れされたものである。
【0007】
また、請求項3に係る発明の要旨とするところは、請求項2に係る発明において、前記一対の押さえ治具の一方には、前記カバー部材の摺接面と同じ形状の貫通穴が備えられていることにある。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る発明のエンジン用可変バルブタイミング機構によれば、前記カバー部材の摺接面は、レーザ光を照射することによって焼き入れされたものであるため、強度が必要である摺接面だけにレーザ光を照射することによる焼き入れを行い面積的および厚み的に最小限の部分だけにしか熱処理を行わないので、カバー部材の変形量を大幅に低減させることができカバー部材の製造コストを安価にさせることができる。
【0009】
また、請求項2に係る発明のエンジン用可変バルブタイミング機構によれば、前記カバー部材は、円板形状であって、両側に隔てられた互いに平行な挟圧面をそれぞれ有する一対の押さえ治具によって両側から挟圧された状態でその摺接面にレーザ光を照射することによって焼き入れされたものであるため、前記レーザ光を照射することによる焼き入れによってカバー部材の摺接面以外の面の変形が一対の押さえ治具によって抑制することができるのでカバー部材の変形量をさらに低減させることができる。
【0010】
また、請求項3に係る発明のエンジン用可変バルブタイミング機構によれば、前記一対の押さえ治具の一方には、前記カバー部材の摺接面と同じ形状の貫通穴が備えられているため、前記カバー部材の厚み方向において前記貫通穴と前記摺接面との形状を合わせることによって一対の押さえ治具を好適に前記摺接面以外の面に圧力をかけた挟圧状態にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において、図は簡略化されており、それら各部の寸法等は必ずしも正確に描かれていない。
【実施例1】
【0012】
図1は、本発明の一実施例のエンジン用可変バルブタイミング機構10を示す断面図であり、可変バルブタイミング機構10は、図示されていない内燃機関すなわちエンジンのバルブを開閉駆動させるカムシャフト12と、そのカムシャフト12をその軸心回りに回転可能に支持する軸受14と、カムシャフト12の軸心回りに回転させられる略円筒形状の第1回転体16と、図示されていないエンジンのクランクシャフトがタイミングベルトを介して回転駆動するドリブンギア18と、カムシャフト12の軸心回りに回転させられる第1回転体16の厚みよりも薄い略円筒形状の第2回転体20とによって構成されている。
【0013】
また、図1に示すように、可変バルブタイミング機構10には、カムシャフト12と第1回転体16とが一体的に回転するように取り付けられたセンターボルト22と、ドリブンギア18と第2回転体20とが一体的に回転するように取り付けられた複数本の本実施例では4本のボルト24とが備えられている。
【0014】
図2に示すように、第1回転体16は、その外周面に第1回転体16の径方向に突き出した複数の本実施例では4つのベーン16aが備えられており、それらベーン16aの先端部分は、第2回転体20の内周面に摺接されている。
【0015】
また、図2に示すように、第2回転体20は、その内周面に第2回転体20の径方向に突き出した複数の本実施例では4つの突起20aが備えられており、それら突起20aの先端部分は、第1回転体16の外周面に摺接されている。それら4つの第2回転体20の突起20aは、第1回転体16の各ベーン16aとの間に配設されるものである。また、第1回転体16のベーン16aの先端部分は第2回転体20の内周面に摺接され、第2回転体20の突起20aの先端部分は第1回転体16の外周面に摺接されているため、第1回転体16と第2回転体20とは、カムシャフト12の軸心回りに互いに相対回動が可能になっている。
【0016】
第2回転体20には、図1に示すように第1回転体16、ベーン16a、第2回転体20、突起20aのドリブンギア18側とは反対側の側面を覆うように配設されたカバー部材26が備えられており、そのカバー部材26は、前記ボルト24によって第2回転体20に取り付けられているため第2回転体20と共に一体的に回転することができる。
【0017】
図1、2に示すように、第2回転体20の各突起20aの間には、カバー部材26、ドリブンギア18、第1回転体16、ベーン16aによって囲まれた一対の圧力室28,30が備えられており、その圧力室28,30には、軸受14、カムシャフト12、ドリブンギア18、第1回転体16に形成された油圧通路P1,P2のどちらかを経由してオイルコントロールバルブ30から作動油が供給されるようになっている。油圧通路P1に送られた作動油は、圧力室30に供給され、油圧通路P2に送られた作動油は、圧力室28に供給されるものである。
【0018】
第1回転体16のベーン16aおよび第2回転体20の突起20aの先端部分には、図2に示すような断面が矩形の溝32,34が形成されており、その溝32,34内には、シール部材36,38が配設されている。そのシール部材36,38と溝32,34との間には、板ばね40が備えられており、その板ばね40によってシール部材36は第1回転体16の外周面側に付勢され、シール部材38は第2回転体20の内周面側に付勢されるので、ベーン16a或いは突起20aを介して隣接する圧力室28,30間への作動油の漏洩を抑制することができる。
【0019】
以上のように構成された可変バルブタイミング機構10によれば、オイルコントロールバルブ30から供給される作動油の供給量が変化させられて、たとえば図2に示すように、油圧通路P1を経由して圧力室30内に作動油が供給されると、その作動油の供給量に応じて圧力室30内の油圧が高められるので、第1回転体16は図2の状態から第2回転体20を基準に図3の矢印E方向に回動させられる。この第2回転体20を基準に第1回転体16が回動した角度すなわち相対角度は、圧力室28,30の差圧に応じた値となるため、オイルコントロールバルブ30を制御してその差圧を調節すると、所望の上記相対角度を実現することができる。
【0020】
前述したように、第1回転体16、第2回転体20は、それぞれカムシャフト12、ドリブンギア18に固定されているため、第1回転体16と第2回転体20との上記相対角度が変化させられるときには、同時にカムシャフト12とドリブンギア18との相対角度も同じ大きさだけ変化させられる。これにより、オイルコントロールバルブ30が電子制御装置42によってエンジンの運転状態に応じて制御されると、カムシャフト12とドリブンギア18との回転位相が最適に変化させられ、そのカムシャフト12により開閉駆動される吸・排気バルブの開閉時期(バルブ開閉タイミング)が、エンジンの運転状態に応じて最適化される。
【0021】
また、圧力室28,30に十分な量の作動油を供給することができないエンジン始動時においてベーン16aと突起部20aとが衝突するのを防ぐために、上記可変バルブタイミング機構10には、第1回転体16と第2回転体20とを相対回転不能にさせるすなわちカムシャフト12によるバルブ開閉タイミングを固定させるロック機構44が備えられている。
【0022】
ロック機構44は、図1、4に示すように第1回転体16の複数のベーン16aの1つにカムシャフト12の軸方向に貫通させた貫通孔46と、カムシャフト12の軸心方向に平行な方向の移動が可能なように貫通孔46内に挿入されたロックピン48と、そのロックピン48をドリブンギヤ16側に常時付勢するためにロックピン48とカバー26との間に配設されたスプリング50と、ドリブンギア18と第1回転体16とを相対回転不能とするときロックピン48が差し入れられるようにドリブンギヤ18上に穿設された係合穴52とによって構成されており、ロックピン48がロック位置または非ロック位置に移動させられることによって第1回転体16と第2回転体20とが相対回転不能にさせられたり相対回転可能にさせられたりするものである。また、カバー部材26は、ベーン16aの貫通穴46の一端を塞ぐものであるため、カバー部材26は、スプリング50の受け皿およびロックピン48の脱落を防ぐストッパーとしての機能を有している。
【0023】
また、ロック機構44には、ロックピン48と第1回転体16のベーン16aとによって形成された環状の圧力室54が設けられており、その圧力室54には前記油圧経路P1を経由してオイルコントロールバルブ30からの作動油が供給されるようになっている。
【0024】
以上のように構成されたロック機構44は、エンジン始動時において図1、4のようにロックピン48がスプリング50の付勢力によって係合穴52に差し込まれるすなわちロックピン48が前記ロック位置に移動させられるため、第1回転体16と第2回転体20とがそのロックピン48を介して相対回転不能に係合されるのでベーン16aと突起20aとの衝突を抑えることができる。また、エンジン始動時、圧力室54内の圧力によってロックピン48がカバー部材26側に移動させられる力は、スプリング50の付勢力よりも小さいものである。
【0025】
図5は、エンジン始動後のロック機構44を示すものであり、その図5によれば、エンジン始動後、圧力室28,30にオイルコントロールバルブ30から十分な作動油が供給されると、その十分な作動油は油圧経路P1を経由して圧力室30および圧力室54に供給されので、図5のように圧力室54内の圧力が上昇しロック機構44のロックピン48は、スプリング50の付勢力に抗じてカバー部材26側に移動させられてカバー部材26に当接されるつまりロックピン48が前記非ロック位置に移動されられるので第1回転体16と第2回転体20との相対回転が可能になる。
【0026】
その後、可変バルブタイミング機構10は、負荷や回転数などのエンジンの運動状態に応じてバルブ開閉タイミングを最適にするように絶えずカフシャフト12と一体的に回転する第1回転体16の回転位相を変更させる。
【0027】
第1回転体16が絶えず第2回転体20との回転位相を変更している間、ロックピン48およびスプリング50は前記非ロック位置つまり図5のようにカバー部材26に当接された状態であるため、そのロックピン48およびスプリング50によってカバー部材26の一面の一部の面は摺接される。そのため、カバー部材26の一部分すなわちロックピン48およびスプリング50とカバー部材26との摺動する部分(摺接面)56は他の部分より耐摩耗性すなわち硬度が高いものである。
【0028】
図6、7、8はカバー部材26の製造工程を説明する図であり、以下においてその製造工程を説明する。
【0029】
カバー部材26は、焼き入れされることによって硬化する材料たとえば炭素鋼板であり、その炭素鋼板を打ち抜きなどで所定形状すなわち図6のような円板形状に成形されたものである。図6で示す一点鎖線部分は、カバー部材26の一面の一部であって、ロックピン48およびスプリング50とカバー部材26との間で摺動する扇状の摺接面56を示し、以下の工程によってその摺接面56にレーザ光を照射することによって焼き入れが施される。
【0030】
カバー部材26は、図7に示すように、カバー部材26の両側に隔てられた互いに平行な挟圧面58a,60aをそれぞれ有する一対の押さえ冶具58,60との間に配設され、一対の押さえ冶具58,60の挟圧面58a,60aによってカバー部材26は挟圧されその挟圧状態が一対の押さえ冶具58,60によって保持される。一対の押さえ冶具58,60の一方の押さえ冶具58には、図8に示すように、カバー部材26の摺接面56と同形状の貫通穴62が設けられており、カバー部材26が一対の押さえ冶具58,60との間に配設される際、押さえ冶具58の貫通穴62とカバー部材26の摺接面56とは、カバー部材26の厚み方向すなわち矢印H方向において形状が同じになるように配置される。
【0031】
その後、レーザ光源64であるYAGレーザ発振器からレーザ光66が発せられ、そのレーザ光66は、レーザ光66を反射させるミラー68によって反射されて押さえ冶具58の貫通穴62を通りカバー部材26の摺接面56に照射される。摺接面56におけるレーザ光66の照射スポットの面積は小さいが、そのレーザ光66の照射スポットは、ミラー68の角度を変化させることによってレーザ光66の照射スポットをカバー部材26の径方向すなわち図7の矢印F方向に振動させる偏回装置70と、一対の押さえ冶具58,60との間に配設されたカバー部材26をそのカバー部材26の中心回りすなわち矢印G方向に回転させることによってレーザ光66の照射スポットをカバー部材26の周方向に相対移動させる回転台72とによって、カバー部材26の摺接面56全体に移動させられてレーザ光66をカバー部材26の摺接面56全体に照射する。
【0032】
レーザ光66が照射されることによってカバー部材26の摺接面56は急速に表面温度が上昇させられる。それによって、カバー部材26の摺接面56およびその摺接面56付近の厚み方向の一部分はオーステナイト組織の状態に変態させられる。そして、レーザ光66が照射されなくなるとカバー部材26の摺接面56およびその摺接面56付近の厚み方向の一部分は、カバー部材26内部への熱拡散による自己冷却によってレーザ光66によって加熱された温度から臨界冷却速度以上の速さで急速冷却されるのでそれまでオーステナイト組織の状態であった摺接面56およびその摺接面56付近の厚み方向の一部分は、マルテンサイト組織の状態となり摺接面56およびその摺接面56付近の厚み方向の一部分の硬度が他の部分よりも高くなる。また、このレーザ光66を照射することによるカバー部材26の摺接面56の加熱によって摺接面56およびその摺接面56付近の厚み方向の一部分の温度は融点を超えないものである。
【0033】
レーザ焼き入れ(熱処理)後、カバー部材26は、硬度が必要であるカバー部材26の摺接面56だけすなわちカバー部材26の面積的および厚み的に最小限の部分だけにしか熱処理が行われておらず、さらに、一対の押さえ冶具58,60の挟圧面58a,60aによって摺接面56以外の面をすべて挟圧し摺接面56以外の面の変形を抑制した状態で焼き入れされるので、カバー部材26は、その熱処理によって変形せずこの後研削工程によってカバー部材26を所定形状に仕上研削する必要がない。また、レーザ光66を照射することによる焼き入れを摺接面56だけにしか行わないため、熱処理によるコストを下げることができる。
【0034】
また、カバー部材26は、レーザ焼き入れによって硬化された摺接面56がロックピン48およびスプリング50が摺接されない位置に誤って第2回転体20に組み付けられないようにすなわちカバー部材26の誤組みを防止するように、カバー部材26が前記ボルト24によって第2回転20に取り付けられる4つ貫通穴74は、カバー部材26の中心から各貫通穴74への距離がずらされているかまたはカバー部材26の周方向において各貫通穴74の隣り合う貫通穴74間の距離がずれるように配設されている。
【0035】
本実施例のエンジン用可変バルブタイミング機構10によれば、カバー部材26の摺接面56は、レーザ光66を照射するによって焼き入れされたものであるため、強度が必要である摺接面56だけにレーザ光66を照射することによる焼き入れを行い面積的および厚み的に最小限の部分だけにしか熱処理を行わないので、カバー部材26の変形量を大幅に低減させることができカバー部材26の製造コストを安価にさせることができる。
【0036】
また、本実施例のエンジン用可変バルブタイミング機構10によれば、カバー部材26は、円板形状であって、両側に隔てられた互いに平行な挟圧面58a,60aをそれぞれ有する一対の押さえ治具58,60によって両側から挟圧された状態でその摺接面56にレーザ光66を照射することによって焼き入れされたものであるため、レーザ光66を照射することによる焼き入れによってカバー部材26の摺接面56以外の面の変形が一対の押さえ治具58,60によって抑制することができるのでカバー部材26の変形量をさらに低減させることができる。
【0037】
また、本実施例のエンジン用可変バルブタイミング機構10によれば、一対の押さえ治具58,60の一方58には、カバー部材26の摺接面56と同じ形状の貫通穴62が備えられているため、カバー部材26の厚み方向において貫通穴62と摺接面56との形状を合わせることによって一対の押さえ治具58,60を好適に摺接面56以外の面に圧力をかけた挟圧状態にすることができる。
【0038】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて説明したが、本発明はその他の態様においても適応される。
【0039】
たとえば、本発明の一実施例では、レーザ光を照射することによってロックピン48とカバー部材26との間で摺動する摺接面56にだけ焼き入れをしたがその摺接面56を含む広い範囲にレーザ光を照射することによって焼き入れをしても従来のカバー部材全体に熱処理をするものに比べて十分な熱処理による変形抑制効果が得られる。
【0040】
また、本発明の一実施例では、レーザ光66を発生させる装置として固体レーザであるYAGレーザが使用されたが他のレーザ光発生装置が使用されてもよい。たとえば、気体レーザである炭酸ガスレーザが使用されてもよい。
【0041】
その他一々例示はしないが、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施例のエンジン用可変バルブタイミング機構を示す断面図である。
【図2】図1のエンジン用可変バルブタイミング機構の正面図である。
【図3】図2のエンジン用可変バルブタイミング機構のバルブ開閉タイミング変更時を説明する図である。
【図4】エンジン用可変バルブタイミング機構に備えられたロック機構のロック位置を示す図である。
【図5】エンジン用可変バルブタイミング機構に備えられたロック機構の非ロック位置を示す図である。
【図6】エンジン用可変バルブタイミング機構の一部品のカバー部材を示す図である。
【図7】カバー部材の摺接面にレーザ光を照射することによって焼き入れされている状態を示す図である。
【図8】図7の矢印H方向から見た図である。
【符号の説明】
【0043】
10:エンジン用可変バルブタイミング機構
12:カムシャフト
26:カバー部材
48:ロックピン
56:摺接面
58,60:一対の押さえ冶具
58a,60a:挟圧面
62:貫通穴
66:レーザ光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン始動時にカムシャフトによるバルブ開閉タイミングを固定するためにロック位置と非ロック位置とに移動させられるロックピンと、非ロック位置の該ロックピンが摺接させられる摺接面を一面の一部に局部的に有するカバー部材とを備えるエンジン用可変バルブタイミング機構であって、
前記カバー部材の摺接面は、レーザ光を照射することによって焼き入れされたものであることを特徴とするエンジン用可変バルブタイミング機構。
【請求項2】
前記カバー部材は、円板形状であって、両側に隔てられた互いに平行な挟圧面をそれぞれ有する一対の押さえ治具によって両側から挟圧された状態で前記摺接面にレーザ光を照射することによって焼き入れされたものである請求項1のエンジン用可変バルブタイミング機構。
【請求項3】
前記一対の押さえ治具の一方には、前記カバー部材の摺接面と同じ形状の貫通穴が備えられていることを特徴とする請求項2のエンジン用可変バルブタイミング機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−202438(P2008−202438A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−37208(P2007−37208)
【出願日】平成19年2月17日(2007.2.17)
【出願人】(390005670)豊生ブレーキ工業株式会社 (104)
【Fターム(参考)】