説明

エンテカビルの新規な製造方法及びこれに使用される中間体

本発明は、エンテカビルの新規な製造方法及びこれに用いられる新規中間体に関するものであって、本発明によれば、目的とするエンテカビルを新規中間体から高収率で、大量に且つ容易に製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエンテカビル(entecavir)の新規な製造方法及びこれに使用される中間体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンテカビル、[1−S−(1α,3α,4β)]−2−アミノ−1,9−ジヒドロ−9−[4−ヒドロキシ−3−(ヒドロキシメチル)−2−メチレンシクロペンチル]−6H−プリン−6−オンは、B型肝炎ウィルス感染に対する治療剤として使用されている抗ウィルス剤であって、その構造は、シクロペンタン環の1S位にプリン基、2位にエキソメチレン基、3R位にヒドロキシメチル基、そして4S位にヒドロキシ基の置換基を有する。
【0003】
エンテカビルを製造する方法が多く知られているが、その一例として、米国特許第5,206,244号及び国際公開特許第WO98/09964号には、下記反応式1に示されたように行ってエンテカビルを製造する方法が開示されている。
【化1】

【0004】
前記式中、Pはトリチル又は置換されたトリチル基であり、Bnはベンジル基であり、BOMCPはベンジルオキシメチルシクロペンタジエンであり、IpcBHはジイソピノカンフェイルボランであり、DMAPはN,N−ジメチル−4−アミノピリジンであり、DMFはジメチルホルムアミドであり、MCはメチレンクロリドであり、MMTr−Clは4−モノメトキシトリチルクロリドであり、TBAIはテトラブチルアンモニウムヨージドであり、TEAはトリエチルアミンであり、THFはテトラヒドロフランである。
【0005】
しかし、前記方法は、1)シクロペンタジエンモノマーから中間体である化合物(1a)の合成時にシクロペンタジエンモノマーがジシクロペンタジエンに転換されることを防止するためには、シクロペンタジエンモノマーを−30℃以下の温度で保管しなければならず、2)反応後に残留するナトリウムは、水分に対する反応の敏感性が問題を引き起こし、3)また、化学式(1a)の中間体の合成過程で異性体への転換を防ぐためには、−70℃以下の極低温で反応を行わなければならず、4)ヒドロホウ素化反応に(−)−ジイソピノカンフェイルボラン((−)−diisopinocampheylborane,(−)−IpcBH)を使用するためには、デカンテーション(decantation)を行わなければならない、5)中間体である前記(1e)の化合物の合成過程で反応が円滑に進行されず、また、6)最終製造されたエンテカビルを精製するためには、MCI GEL(登録商標)CHP−20P樹脂(Sigma−Aldrich社製)でカラムクロマトグラフィーによる分離をしなければならない等の問題があった。
【0006】
国際公開特許第WO2004/52310号及び米国公開特許第2005/0272932号には、下記中間体(2f)の中間体を使用してエンテカビルを製造する方法が開示されており、前記中間体(2f)は下記反応式2に示された通りに製造される。
【化2】

【0007】
前記式中、Meはメチル基であり、t−Buはt−ブチルであり、Etはエチルであり、n−Hexはn−ヘキサンであり、Phはフェニル基である。
【0008】
中間体(2b)を製造するための前記方法は、−70℃以下の極低温で行わなければならず、また、所望の生成物(2f)を光学的分離工程における収率は、50%未満である。
【0009】
トリフルオロメタンスルホン酸のエノラートを合成する例が多く報告されている。例えば、論文[J.Am.Chem.Soc.,1998,120,12980−12981]の“Preparation of allylsilane 12”は、下記反応式3に示されたように、ヘキサメチルジシラザンカリウム(KHMDS)とN−フェニルビス(トリフルオロメタンスルホンイミド)(PhNTf)との位置選択的な反応を遂行する工程を含むトリフルオロメタンスルホン酸のエノラートを製造するための方法を開示する。米国特許第7,381,746 B2号は、下記反応式4に示されるようなトリフルオロメタンスルホン酸エノラートを製造する方法を開示する。論文[J.Chem.Soc.,PerkisTrans.1,2000,345−351]もまた、トリフルオロメタンスルホン酸のエノラートを製造する方法を開示する。
【化3】

【0010】
前記式中、Rはヒドロキシ保護基であり、Xはハロゲン又はベンジルオキシであり、MOPは2−メトキシ−2−プロピルエーテルであり、TBSはt−ブチルジメチルシリルであり、Tfはトリフルオロメタンスルホニルであり、TMSはトリメチルシリルである。
【0011】
トリフルオロメタンスルホン酸エノラートを製造するための前記論文において、トリフルオロメタンスルホン酸のエノラートを得るプロセスは、極低温で長時間反応させて行わなければならず、前記米国特許第7,381,746 B2号において開示されたトリフルオロメタンスルホン酸エノラートを得るためのプロセスも、−63℃〜−45℃の温度で反応を実施されていた。しかしながら、−30℃程度の反応温度では、トリフルオロメタンスルホン酸エノラートを製造するために使用される出発物質は、容易に分解され、トリフルオロメタンスルホン酸エノラートの大量生産のためには不向きである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許5,206,244号公報
【特許文献2】WO 98/09964号公報
【特許文献3】WO 2004/52310号公報
【特許文献4】米国特開2005/0272932号公報
【特許文献5】米国特許7,381,746号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】J.Am.Chem.Soc.,1998,120,12980−12981
【非特許文献2】J.Chem.Soc.,PerkisTrans.1,2000,345−351
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、本発明の目的は、エンテカビルを高収率で大量製造できる新規なエンテカビルの製造方法及びこれに用いられる新規中間体化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記目的を達成するために、本発明は、
(a)前記化学式(2)のα−エクソメチレン誘導体を加水分解し、下記化学式(3)の化合物を合成するステップと、
(b)前記化学式(3)の化合物を下記化学式(4)のプリン誘導体とミツノブ反応(Mitsunobu reaction)させ、下記化学式(5)のヌクレオシド化合物を製造するステップと、
(c)前記化学式(5)の化合物をテトラブチルアンモニウムフルオリドと反応させ、下記化学式(6)の化合物を製造するステップと、
(d)前記化学式(6)の化合物を加水分解反応させるステップと
を含む、下記化学式(1)のエンテカビルの製造方法を提供する。
【化4】

【0016】
前記式中、
及びRは、それぞれ独立に、ヒドロキシ保護基であるか、またはR及びRとも環状ヒドロキシ保護基を形成することができ、
は、ベンゾイル又はアリールベンゾイルであり、好ましくはベンゾイル又は4−フェニルベンゾイルであり、
Tfは、トリフルオロメタンスルホニルであり、
Xは、ハロゲン又はベンジルオキシである。
【0017】
本発明は、また、前記化学式(1)のエンテカビル又はその溶媒和物の製造に中間体として用いられる前記化学式(2)のα−エクソメチレン誘導体、及び下記化学式(7)のβ−エクソメチレン誘導体、化学式(8)のエポキシド誘導体、化学式(9)の化合物、化学式(10)のトリフルオロメタンスルホン酸のエノラート誘導体、及び化学式(13)の結晶性シクロペンタノール化合物を提供する。
【化5】

【0018】
前記式中、R、R及びTfは、前記で定義した通りであり、Yはアルキルシリル又はアリールシリルである。
【0019】
本発明の更なる側面に従うと、Cu−Kα照射を使用して得られるX線回折(ここではXRDという)スペクトルが、10.2、14.4、14.5、16.6、17.9、18.8、19.3、19.8、21.4、21.9、24.5、25.5、25.8、26.7、29.3及び30.2の回折角(2θ±0.2)で10%以上のピーク強度を有するピークを示す、下記化学式(14)の結晶性エンテカビルジメチルホルムアミドの溶媒和物及びその製造方法を提供する。
【化6】

【0020】
前記式中、DMFはジメチルホルムアミドである。
【発明の効果】
【0021】
本発明の方法によれば、抗ウィルス剤であるエンテカビルを新規中間体から高収率で容易に大量製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、化学式(9)の化合物に対するX線回折スペクトルを示したグラフである。
【図2】図2は、化学式(13)の化合物に対するX線回折スペクトルを示したグラフである。
【図3】図3は、化学式(14)の化合物に対するX線回折スペクトルを示したグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本願に使用されるとき、用語「アルキル」は、直鎖又は分岐鎖C〜C飽和炭化水素基を意味する。ここで使用されるときの「アルキル」の例は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル及びヘキシル等を含むが、これに限定されるものではない。
【0024】
本願で使用されるとき、用語「アルコキシ」とは、−OR基を意味するものであり、ここで、Rは前記で定義したようなアルキルである。ここで使用されるときの「アルコキシ」の例は、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ及びt−ブトキシ等を含むが、これに限定されるものではない。
【0025】
本願で使用されるとき、用語「アリール」とは、炭素数6〜18の芳香族炭化水素基を意味する。芳香族炭化水素基は、任意に置換された単環式又は二環式の芳香族基(例えば、フェニルまたは置換されたフェニル)および縮合環系(例えば、ナフチル、またはフェナントリル等)を含む。「アリール」の例は、これらに限定するものではないが、フェニル、トルイル、キシリル、ビフェニル及びナフチル等を含む。
【0026】
本願で使用されるとき、用語「ヒドロキシ保護基」とは、例えば、フェニル基でモノ、ジ又はトリ置換されたメチル基(例えば、ベンジル基、トリチル及びジフェニルメチル等);アルコキシ又はニトロ基で置換されたベンジル基(例えば、メトキシベンジル及びp−ニトロベンジル等);アルコキシ又はニトロ基で任意に置換されたベンゾイル基(例えば、ベンゾイル、メトキシベンゾイル及びp−ニトロベンゾイル等);アルキル基及びアリール基からなる群から選ばれる少なくとも1種の置換基で任意に置換されたシリル基(例えば、トリメチルシリル、トリエチルシリル、イソプロピルジメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、t−ブチルジフェニルシリル及びヘキシルジメチルシリル等);アリール基;アルコキシアルキル基(例えば、メトキシメチルまたは(2−メトキシエトキシ)メチル等);およびテトラヒドロピラニル基等を意味し、好ましくはトリチル、ベンゾイル又はt−ブチルジフェニルシリルであり、最も好ましくはトリチルまたはt−ブチルジフェニルシリルである。
【0027】
本願で使用されるとき、用語「環状ヒドロキシ保護基」とは、例えば、ベンジリデン、ナフチリデン、4−フェニルベンジリデン、環状アセタール、環状ケタール、環状カーボネート、環状オルト(ortho)エステル及び環状1,3−(1,1,3,3−テトライソプロピル)ジシロキサンジイル等を意味する。
【0028】
本発明に従う化学式(1)のエンテカビルを製造するための方法は、下記反応式5に示されるが、下記反応式5は、本発明による化学式(1)のエンテカビルを製造するための一例であるだけで、本発明がこれに限定されるものではない。
【化7】

【0029】
前記式中、R、R、R、Tf、X及びYは、前記で定義した通りである。
【0030】
前記反応式5に示したような本発明のエンテカビルの製造方法を、ステップ別に、より具体的に説明する。
【0031】
<ステップ1>
化学式(11)の化合物を、塩基の存在下でトリフレート化剤と反応させて、化学式(10)のトリフルオロメタンスルホン酸のエノラート誘導体を製造する。
【0032】
前記塩基の例は、ヘキサメチルジシラザンリチウム(LiHMDS)、ヘキサメチルジシラザンカリウム(KHMDS)、ヘキサメチルジシラザンナトリウム(NaHMDS)、リチウムジイソプロピルアミド(LDA)、n−(C1−6アルキル)リチウム(例えば、n−ブチルリチウム等)、リチウムテトラメチルピペリジド(LiTMP)、カリウムブトキシド、カリウムペントキシド、カリウムアミレート又はこれらの混合物を使用することができ、前記塩基は化学式(11)のケトン化合物1モル当量に対して0.8〜3モル当量の量で使用できる。
【0033】
反応において使用されるトリフレート化剤の例は、トリフルオロメタンスルホン酸無水物等のトリハロメタンスルホン酸無水物、N−フェニルビス(トリフルオロメタンスルホンイミド)(PhNTf)等のC1−6のアルキル又はC6−18アリールN−置換基を有するトリフリミド(triflimide)、又はこれらの混合物を含む。前記トリフレート化剤の量は、好ましくは、化学式(11)の化合物の1モル等量に対して1〜1.5モル当量である。
【0034】
前記反応は化学式(11)のケトン化合物と塩基とを適した有機溶媒に溶解させた後、ここにトリフレート化剤を添加することで行うこともでき(方法1)、又は、塩基とトリフレート化剤との混合物に化学式(11)のケトン化合物を滴加(dropping)することで行うこともできる(方法2)。反応において使用される有機溶媒の例は、これらに限定するものではないが、例えば、テトラヒドロフラン等のエーテル類、メチレンクロリド等のクロロアルカン類、又はこれらの混合物を含む。
【0035】
方法1で行う場合、前記反応は、−30〜−80℃の温度で行ってもよく、好ましくは−50から−73℃〜−30℃までの温度範囲で、1〜2時間に亘って昇温させながら行ってよい。方法2に従う反応は、有機溶媒中で20〜−29℃、好ましくは0〜−20℃の温度範囲で、1〜2時間に亘って行ってよい。
【0036】
方法2で行う場合、カラムクロマトグラフィーによる分離工程無しで、トリフルオロメタンスルホン酸のエノラート誘導体を−29℃以上の温度で容易に合成することができ、その結果、目的とするエンテカビルを高収率で大量生産することができる。
【0037】
このような反応条件の差による反応効果を評価するために、下記表1に示すような条件で化学式(10)のトリフルオロメタンスルホン酸のエノラート誘導体をステップ2において使用し、化学式(9)のシクロアルケン化合物を製造する。分析結果を下記表1に示す。
【表1】

【0038】
表1に示したように、方法2に従い製造された化学式(9)の化合物の収率は、方法1に従って製造された化学式(9)の化合物の収率に比べて高収率で製造することができる。
【0039】
<ステップ2>
前記ステップ1で製造された化学式(10)のトリフルオロメタンスルホン酸のエノラート誘導体を、金属触媒の存在下で、アルキルシリルメチルマグネシウムクロリド又はアリールシリルメチルマグネシウムクロリドと反応させて化学式(9)のシクロアルケン化合物が製造される。
【0040】
反応において使用される金属触媒の例には、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム[Pd(PPh]等が含まれ、使用される金属触媒の量は、好ましくは、化学式(10)のトリフルオロメタンスルホン酸のエノラート化合物1モル当量に対して0.01〜0.1モル当量の量でである。
【0041】
アルキルシリルメチルマグネシウムクロリドの例には、トリメチルシリルメチルマグネシウムクロリド等の(C1−6アルキル)シリルメチルマグネシウムクロリドなどが含まれる。アリールシリルメチルマグネシウムクロリドの例には、t−ブチルジフェニルシリルメチルマグネシウムクロリド等が含まれる。上記で使用されるアルキルシリルメチルマグネシウムクロリド又はアリールシリルメチルマグネシウムクロリドの量は、好ましくは、化学式(10)のトリフルオロメタンスルホン酸のエノラート化合物1モル当量に対して1〜2モル当量の量である。アルキルシリルメチルマグネシウムクロリド又はアリールシリルメチルマグネシウムクロリドは、マグネシウムを(クロロメチル)アルキルシラン又は(クロロメチル)アリールシランで反応する工程を含む通常的な方法の1つにより製造できる。
【0042】
前記化学式(9)のシクロアルケン化合物の製造方法は、有機溶媒中で0〜20℃、好ましくは5〜10℃の温度範囲で、1〜3時間行うことができ、有機溶媒としては、これらに限定するものではないが、ジエチルエーテル又はテトラヒドロフラン等のエーテル類、メチレンクロリド等のクロロアルカン類、又はこれらの混合物を使用することができる。
【0043】
生成された化学式(9)のシクロアルケン化合物の結晶性固体を得るために、エンテカビルの製造のための本方法は、更に、イソプロピルアルコールと水との混合物を使用して式(9)の化合物を結晶化するステップを更に含んでもよい。
【0044】
前記のような方法に従って、化学式(9)のシクロアルケン化合物を86%以上の高い収率で製造できる。
【0045】
<ステップ3>
前記ステップ2で製造された化学式(9)のシクロアルケン化合物を過酸化物と反応させて、化学式(8)のエポキシド化合物を製造する。
【0046】
前記過酸化物の例としては、メタクロロペルオキシ安息香酸、過酸化水素、t−ブチルヒドロぺルオキシド(TBHP)、四酸化オスミウム(OsO)、過ヨウ素酸ナトリウム又はこれらの混合物等を使用することができる。使用される過酸化物の量は、化学式(9)のシクロアルケン化合物1モル当量に対して1〜3モル当量の量で使用できる。
【0047】
前記反応は、有機溶媒中で0〜25℃、好ましくは10〜25℃の温度範囲で、1〜3時間行うことができ、有機溶媒の例としては、これらに限定するものではないが、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、t−ブタノール等の炭素数1〜6のアルコール、アセトニトリル等のニトリル類、メチレンクロリド等のクロロアルカン類、又はこれらの混合物を使用することができる。
【0048】
前記のような方法によって、化学式(8)のエポキシド誘導体を結晶性固体で製造することができる。
【0049】
<ステップ4>
前記ステップ3で製造された化学式(8)のエポキシド誘導体を加水分解反応させて、化学式(7)のβ−エクソメチレン誘導体を製造する。
【0050】
前記加水分解反応は、有機溶媒中で、0〜30℃の温度範囲で行うことができ、有機溶媒の例としては、これらに限定するものではないが、メチレンクロリド等のクロロアルカン類、メタノール等の炭素数1〜6のアルコール、又はこれらの混合物を使用できる。
【0051】
前記のような方法によって、化学式(13)のシクロペンタノール化合物からは5ステップを経て75%の高収率で製造できる。
【0052】
<ステップ5>
前記ステップ4で製造された化学式(7)のβ−エクソメチレン誘導体をトリフェニルホスフィン及びジ(C1−6アルキル)アゾジカルボン酸とミツノブ反応させて、化学式(2)のα−エクソメチレン誘導体を製造する。
【0053】
前記トリフェニルホスフィンの量は、好ましくは、化学式(7)のβ−エクソメチレン化合物1モル当量に対して1〜2モル当量の量で使用できる。
【0054】
前記ジ(C1−6アルキル)アゾジカルボン酸の例としては、これらに限定するものではないが、ジイソプロピルアゾジカルボン酸(DIAD)、ジエチルアゾジカルボン酸(DEAD)及びこれらの混合物等を使用することができ、好ましくは、化学式(7)のβ−エクソメチレン化合物1モル当量に対して1〜2モル当量の量で使用することができる。
【0055】
前記反応には、更に、安息香酸、4−フェニル安息香酸、p−ニトロ安息香酸、p−メトキシ安息香酸からなる群より選択される添加物を使用することができ、これらの添加物の量は、化学式(7)のβ−エクソメチレン化合物1モル当量に対して1〜2モル当量の量で使用することができる。
【0056】
前記反応は、有機溶媒中で0〜25℃、好ましくは0〜5℃の温度範囲で、30分〜2時間行うことができ、有機溶媒の例としては、これらに限定するものではないが、テトラヒドロフラン、メチレンクロリド又はこれらの混合物を使用することができる。
【0057】
前記反応は、方法1に従い行われてもよく、これは、トリフェニルホスフィンを有機溶媒に溶解させて製造した溶液に、DIADを添加して、懸濁液を製造する工程と、化学式(7)のβ−エクソメチレン化合物と安息香酸との混合物にテトラヒドロフランを添加して製造した溶液を、前記で製造したトリフェニルホスフィンとDIADとの懸濁液に添加する工程を含み;あるいは方法2に従い行われてもよく、これは、化学式(7)のβ−エクソメチレン化合物、トリフェニルホスフィン及び安息香酸の混合物にDIADを滴加する工程を含む。
【0058】
方法1に従い製造された化学式(2)の化合物(68.6%)の収率よりも、方法2に従い製造された化学式(2)の化合物の収率は高く、70%である。また、方法2は、1個の反応器を使用するために、エンテカビルの大量生産により有用である。
【0059】
<ステップ6>
前記ステップ5で製造された化学式(2)の化合物を塩基性溶液中で加水分解反応させて、化学式(2)の化合物におけるベンゾイル基を除去することによって、化学式(3)の化合物を製造する。
【0060】
塩基性溶液の形成のために使用される塩基の例としては、これらに限定するものではないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、又はこれらの混合物を使用することができ、塩基の量は、化学式(2)の化合物1モル当量に対して1〜2モル当量の量である。
【0061】
前記加水分解反応は、有機溶媒中で−5℃〜常温、好ましくは0〜5℃の温度範囲で、30分〜5時間行うことができ、有機溶媒の例としては、これらに限定するものではないが、テトラヒドロフラン、メチレンクロリド、又はこれらの混合物を使用することができる。
【0062】
<ステップ7>
前記ステップ6で製造された化学式(3)の化合物を化学式(4)のプリン誘導体とミツノブ反応させて、下記化学式(5)のヌクレオシド化合物を製造する。
【0063】
前記化学式(4)のプリン誘導体の例としては、2−アミノ−6−クロロプリン等の2−アミノ−6−ハロプリン、又は6−0−ベンジルグアニン等を使用することができ、前記プリン誘導体の量は、化学式(3)の化合物1モル当量に対して、1〜2モル当量の量である。
【0064】
前記ミツノブ反応は、トリフェニルホスフィン及びアゾジカルボン酸−ジ−(C1−6アルキル)の存在下で、有機溶媒中で0〜25℃、好ましくは0〜5℃の温度範囲で30分〜2時間行われることが好ましい。
【0065】
前記トリフェニルホスフィンは、化学式(3)の化合物1モル当量に対して1〜2モル当量の量で使用できる。
【0066】
前記アゾジカルボン酸−ジ−(C1−6アルキル)の例には、アゾジカルボン酸ジイソプロピル(DIAD)、アゾジカルボン酸ジエチル(DEAD)及びこれらの混合物等を使用することができ、これらの化合物の量は化学式(3)の化合物1モル当量に対して1〜2モル当量の量で使用することができる。
【0067】
前記有機溶媒の例としては、これらに限定するものではないが、テトラヒドロフラン、メチレンクロリド又はこれらの混合物を使用することができる。
【0068】
前記のような方法によって、固体として化学式(5)のヌクレオシド化合物を64.7%の収率で製造できる。
【0069】
<ステップ8>
前記ステップ7で製造された化学式(5)の化合物をテトラブチルアンモニウムフルオリド(TBAF)と反応させて、保護基Rを脱保護することによって、下記化学式(6)の化合物を製造する。
【0070】
前記テトラブチルアンモニウムフルオリドの量は、好ましくは、化学式(5)の化合物1モル当量に対して、1〜2モル当量の量で使用することができる。
【0071】
前記反応は、有機溶媒中で20〜30℃、好ましくは20〜25℃で、1〜5時間行うことができ、有機溶媒の例としては、テトラヒドロフラン、メチレンクロリド、又はこれらの混合物を使用することができる。
【0072】
<ステップ9>
前記ステップ8で製造された化学式(6)の化合物を加水分解反応させて、化学式(1)のエンテカビル化合物を製造する。
【0073】
前記加水分解反応は、前記化学式(6)の化合物を酸水溶液中で加熱して、保護基R及びXを脱保護することによって行われることができる。
【0074】
上記において使用される酸水溶液としては、塩酸、硫酸、トリフルオロ酢酸からなる群より選択される酸を、水に溶解させて、水中のその混合物を製造したものであってよい。好ましくは、酸性溶液として、2N塩酸溶液を化学式(6)の化合物の10倍〜20倍の重量比で使用される。
【0075】
前記反応は、60〜90℃、好ましくは80〜85℃で、3〜6時間行うことができる。
【0076】
前記酸性溶液中における脱保護化反応の後、水酸化ナトリウム溶液でpHが6〜8になるように中和することが更に行われることが好ましい。
【0077】
前記本発明の製造方法で出発物質として使用される前記化学式(11)のケトン化合物は、公知の方法(韓国特許公開第2010−0076640号参照)の1つを用いて製造されてもよく、又は下記反応式6のような工程により好ましく製造される。
【化8】

【0078】
前記式中、R及びRは、前記で定義した通りである。
【0079】
詳細には、先ず、化学式(12)のシクロペンテン化合物を(+)−ジイソピノカンフェイルボラン((+)−IpcBH)及びHと反応させた後、その結果得られた反応混合物(化学式(13)のシクロペンタノール化合物と副産物であるイソピノカンフェオールとの混合物)をヘプタン、ヘキサン、又はオクタン等の炭化水素系溶媒で抽出し、その結果分離された有機層を、水とアルコール(例えば、メタノール等)との混合物で洗浄し、副産物であるイソピノカンフェオールを選択的に除去し、結晶化助剤として溶媒を添加して結晶化することによって、化学式(13)のシクロペンタノール化合物を結晶性固体に製造する。
【0080】
前記(+)−IpcBH及びHの量は、好ましくは、それぞれ化学式(12)のシクロペンテン化合物1モル当量に対して1〜3モル当量及び1〜7モル当量の量である。
【0081】
また、洗浄プロセスが、1:1〜1:3の範囲の混合物重量比で混合された水とアルコールの混合物を使用することにより2回以上、より好ましくは3回以上行われてよい。更に好ましくは1:1、1:1.5、1:2、1:2.5及び1:3の混合重量比を有する水およびアルコールの混合物の何れかを使用することにより5回洗浄されてよい。
【0082】
また、前記結晶化のための溶媒の例は、ヘキサン、ヘプタン、及びオクタンのような炭化水素系溶媒と、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコールと、水と、又はこれらの混合物を使用できる。
【0083】
前記反応は、有機溶媒中で0〜40℃の温度範囲で行うことができる。
【0084】
次いで、前記製造された化学式(13)のシクロペンタノール化合物を、従来に使用されていたDMP(デス−マーチンペルヨージナン(dess martin periodinane))に比べて低コスト且つ安定したピリジン・SO錯体、トリアルキルアミン及びジメチルスルホキシドの混合物と酸化反応させることによって、化学式(11)のケトン化合物を製造する。製造された化学式(11)のケトン化合物は追加の精製なく後続反応に用いられることができる。
【0085】
前記ピリジン・SO錯体、トリアルキルアミン及びジメチルスルホキシドの量は、それぞれ化学式(13)のシクロペンタノール化合物1モル当量に対して1〜3モル当量、1〜4モル当量及び1〜10モル当量の量が好ましい。
【0086】
前記反応は、有機溶媒中で、0℃〜常温の温度範囲で行うことができる。
【0087】
本発明のもう一つの側面に従うと、前記式(1)のエンテカビルの製造時に有用に使用される中間体である前記化学式(2)のα−エクソメチレン誘導体、化学式(7)のβ−エクソメチレン誘導体、化学式(8)のエポキシド誘導体、化学式(9)シクロアルケン化合物、化学式(10)のトリフルオロメタンスルホン酸のエノラート誘導体、及び化学式(13)の結晶性シクロペンタノール化合物、または中間体としてのその溶媒和物が提供される。
【0088】
前記化学式(9)のシクロアルケン化合物は、結晶性化合物であり、そのCu−Kα照射を使用して得られるX線回折スペクトル(D8 Advance(商標)、Bruker社製)は、図1に示されたように、8.5、8.6、9.3、9.6、10.3、11.4、12.1、12.7、13.6、14.6、15.3、15.5、15.9、17.0、17.4、17.6、18.2、18.7、19.4、19.6、20.8、21.4、21.9、22.3、22.6、23.2、23.5、25.1、27.5及び28.7の回折角(2θ±0.2)で10%以上のピーク強度を有するピークを示す結晶化合物である。また、化学式(13)の結晶性シクロペンタノール化合物は、図2に示されたように、Cu−Kα照射を使用して得られるX線回折スペクトルは、8.5、8.9、10.4、11.8、13.2、13.6、14.0、15.7、17.3、17.9、18.4、18.9、19.4、20.2、20.6、20.9、21.6、22.0及び25.2の回折角(2θ±0.2)で10%以上のピーク強度を有するピークを示す。
【0089】
本発明の更なる側面に従うと、前記化学式(1)の化合物を、ジメチルホルムアミド(DMF)溶媒中に溶解させた後、結晶化し、これを濾過及び乾燥工程を追加実施することで、下記化学式(14)のエンテカビルDMF溶媒和物を製造する方法、及びこれによって製造されたエンテカビルDMF溶媒和物が提供される。
【化9】

【0090】
前記式中、DMFはジメチルホルムアミドである。
【0091】
生成される溶媒和物のうちDMFは、10〜40重量%で含まれる。
【0092】
好ましくは、この溶媒和物は、窒素雰囲気下での乾燥時により安定にDMF一溶媒和物に製造されることができる。
【0093】
また、前記溶媒和物は、Cu−Kα照射を使用して得られるX線回折スペクトルにおいて、10.2、14.4、14.5、16.6、17.9、18.8、19.3、19.8、21.4、21.9、24.5、25.5、25.8、26.7、29.3及び30.2の回折角(2θ±0.2)で10%以上のピーク強度を有するピークを示す。
【0094】
また、前記製造された溶媒和物を通常の溶媒和物の処理方法、具体的には、前記製造されたエンテカビル溶媒和物を、水等の溶媒中に溶解させた後、冷却しながら析出させる再結晶化方法によって、高純度のエンテカビルを製造できる。即ち、前記溶媒和物は、また、エンテカビルの製造のための中間体として使用できる。
【0095】
本発明の製造方法によれば、新規な中間体化合物を用いて、エンテカビルを高純度で、容易に且つ大量に製造することができる。
【0096】
以下、下記実施例によって本発明をより詳細に説明する。但し、下記実施例は、本発明を例示するためのものであるだけで、本発明の範囲がこれらのみに限定されるわけではない。
【0097】
実施例1−1:トリフルオロメタンスルホン酸4−(t−ブチル−ジフェニル−シラニルオキシ)−5−トリチルオキシメチル−1−シクロペンテニルエステル(化学式(10)の化合物)の製造
3−(t−ブチル−ジフェニル−シラニルオキシ)−2−トリチルオキシメチル−シクロペンタノン31g(50.7mmol)を無水テトラヒドロフラン310mlに溶解し、−78℃に冷却した。そこに、ヘキサメチルジシラザンリチウム17.0g(101.5mmol)を添加し、−78℃で1時間攪拌した。得られた混合物にN−フェニルトリフルイミド(N−phenyltriflimide)23.6g(66mmol)を添加して室温に昇温し、室温で一晩中攪拌した。反応が完結した後、飽和重炭酸ナトリウム溶液310mLを添加した。得られた溶液を、酢酸エチル310mLで抽出した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、減圧濃縮した。得られた物質をカラムクロマトグラフィーで精製して、標題化合物33.5g(収率:88.9%)を得た。
【0098】
NMR(300MHz,CDCl3):δ7.36(m,4H),7.09−6.99(m,21H),5.50(s,1H),4.14(d,1H),2.89(dd,1H),2.68(s,1H),2.59(dd,1H),2.37−2.34(m,1H),2.15(d,1H),0.80(s,9H)
実施例1−2:t−ブチル−ジフェニル−(3−トリメチルシリルメチル−2−トリチルオキシメチル−シクロペンテン−3−イルオキシ)−シラン(化学式(9)の化合物)の製造
前記実施例1−1で得られた化学式(10)の化合物33.5g(45.1mmol)を、ジエチルエーテル335mLに溶解した。そこに、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム2.6g(2.25mmol)を室温で添加し、0℃に冷却した。得られた混合物に、1Mトリメチルシリルマグネシウムクロリド90.2mL(90.2mmol)を滴加した後、室温で1時間攪拌した。反応が完結した後、混合物を0℃に冷却し、飽和炭酸水素ナトリウム溶液335mLを滴加してクエンチし、セライト濾過した。得られた固体を酢酸エチルで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、減圧濃縮した。得られた物質を、カラムクロマトグラフィーで精製して、標題化合物26.99g(収率:87.4%)を得た。
【0099】
NMR(300MHz,CDCl3):δ7.59(dd,4H),7.33−7.14(m,21H),5.06(s,1H),4.33(d,1H),2.90(dd,1H),2.78−2.73(m,1H),2.64−2.62(m,1H),2.26−2.24(m,1H),2.09(d,1H),1.50(d,1H),1.23(d,1H),1.00(s,9H),0.01(s,9H)
実施例1−3:3−(t−ブチル−ジフェニル−シラニルオキシ)−1−トリメチルシラニルメチル−2−トリチルオキシメチル−6−オキサ−ビシクロ[3.1.0]ヘキサン(化学式(8)の化合物)の製造
前記実施例1−2で得られた化学式(9)の化合物708g(1.03mol)を、イソプロピルアルコール16Lに溶解して0℃に冷却した。得られた溶液にリン酸ナトリウム2214g(15.59mol)を添加し、次いで77%メタクロロペルオキシ安息香酸699g(3.11mol)を添加した。得られた混合物を0℃で2時間攪拌した。固体を濾過して、標題化合物とリン酸ナトリウムとの混合固体724gを得た。
【0100】
NMR(300MHz,CD2Cl2+D2O):δ7.65−7.22(m,25H),4.74(t,2H),3.44(q,1H),3.27(dd,1H),3.13(s,1H),2.88(t,1H),2.42−2.41(m,1H),1.99−1.88(m,2H),1.02−0.93(m,9H),0.15−0.13(m,9H)
実施例1−4:1−(S)−4−(t−ブチル−ジフェニル−シラニルオキシ)−2−メチレン−3−トリチルオキシメチルシクロペンタノール(化学式(7)の化合物)の製造
前記実施例1−3で得られた化学式(8)の化合物とリン酸ナトリウムとの混合固体724gに、メタノール10Lを入れて室温で攪拌した。77%メタクロロペルオキシ安息香酸350g(1.56mol)及びメチレンクロリド5Lを添加して、反応を完結させた。得られた反応物に、20%硫酸水素ナトリウム水溶液1.5Lと12%炭酸水素ナトリウム溶液1.5Lとの混合溶液を滴加してクエンチした。得られた反応混合物を、メチレンクロリド1.6Lで2回抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥、濾過した後、減圧濃縮して標題化合物494g(化学式(11)の化合物からの収率:60.5%)を得た。
【0101】
NMR(300MHz,CDCl3):δ7.84−7.58(m,5H),7.33−7.18(m,39H),5.40(s,0.2H),5.18(s,1H),5.11(s,0.2H),4.99(s,1H),4.65(d,1H),4.13(q,2H),3.02(m,3H),2.87(m,2H),1.88(d,1H),1.00(s,17H)
実施例1−5:1−ベンゾイル−4−(t−ブチル−ジフェニル−シラニルオキシ)−2−メチレン−3−トリチルオキシメチル−シクロペンタン化合物(化学式(2)の化合物)の製造
トリフェニルホスフィン311g(1.18mol)をテトラヒドロフラン4.9Lに溶解し、0℃に冷却した。その溶液に、アゾジカルボン酸ジイソプロピル(DIAD)233mL(1.18mol)を滴加し、0℃で1時間攪拌して懸濁液を得た。前記実施例1−4で得られた化学式(7)の化合物494g(0.79mol)と安息香酸145g(1.18mol)との混合物にテトラヒドロフラン4.9Lを添加した。トリフェニルホスフィンとアゾジカルボン酸ジイソプロピル(DIAD)との懸濁液を0℃で滴加し、同じ温度で0.5時間攪拌した。こうして得られた反応物を減圧濃縮して溶媒を除去し、酢酸エチル4.9Lを添加し、0.5N水酸化ナトリウム水溶液で洗浄した。得られた物質に硫酸ナトリウムを添加し、濾過し、減圧濃縮した。メタノール4.9Lを添加して結晶化し、濾過して固体状の標題化合物369g(収率:68.6%)を得た。
【0102】
NMR(300MHz,CDCl3):δ8.09(dd,2H),7.56(dd,5H),7.33−7.20(m,23H),5.60(t,1H),5.26(d,2H),4.11(q,1H),3.13−3.08(m,1H),3.02(d,1H),2.85(q,1H),2.24−2.18(m,1H),1.94−1.88(m,1H),1.54(s,3H),0.99(s,9H)
実施例1−6:1−(R)−4−(t−ブチル−ジフェニル−シラニルオキシ)−2−メチレン−3−トリチルオキシメチルシクロペンタノール化合物(化学式(3)の化合物)の製造
前記実施例1−5で得られた化学式(2)の化合物367g(0.5mol)に1%水酸化ナトリウムメタノール溶液7.34Lとメチレンクロリド3.7Lとを添加し、室温で5時間反応させた。反応が完結した後、得られた反応混合物に水7.3Lを添加して水層を分離した。分離された水層は、メチレンクロリド7.3Lで抽出した。得られた物質に硫酸ナトリウムを添加し、乾燥及び濾過して標題化合物404g(収率:>100%)を得た。
【0103】
NMR(300MHz,CDCl3):δ7.65−7.60(m,4H),7.39−7.17(m,21H),5.35(s,1H),5.10(s,1H),4.30(d,1H),2.97(s,1H),2.88−2.79(m,2H),2.73(d,1H),1.78(t,2H),1.02(s,9H)。
【0104】
実施例1−7:9−[4−(tert−ブチル−ジフェニル−シラニルオキシ)−2−メチレン−3−トリチルオキシメチル−シクロペンチル]−6−クロロ−9H−プリン−2−イルアミン(化学式(5)の化合物)の製造
トリフェニルホスフィン13.37g(50.88mmol)をテトラヒドロフラン240mLに溶解し、0℃に冷却した。アゾジカルボン酸ジエチル(DEAD)8.3mL(50.88mmol)を添加し、0℃で1時間攪拌して懸濁液を得た。前記実施例1−6で得られた化学式(3)の化合物15.93g(25.44mmol)と2−アミノ−6−クロロプリン8.64g(50.88mmol)との混合物にテトラヒドロフラン160mLを添加し、次いでトリフェニルホスフィンとアゾジカルボン酸ジエチル(DEAD)との懸濁液を0℃で滴加して、同じ温度で1時間攪拌した。反応が完了した後、酢酸エチル400mLを添加し、0℃で0.5N水酸化ナトリウム水溶液400mLで3回洗浄した。得られた物質を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過した後、減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィーで精製して標題化合物12.8g(収率:64.7%)を得た。
【0105】
NMR(300MHz,DMSO−d6):δ7.82(s,1H),7.61(d,4H),7.49−7.20(m,21H),6.69(brs,2H),5.53(t,1H),4.91(s,1H),4.57(s,1H),4.40(s,1H),3.19−3.13(m,1H),3.08−3.03(m,1H),2.83(s,1H),2.13−2.10(m,2H),1.03(s,9H)。
【0106】
実施例1−8:4−(2−アミノ−6−クロロ−4,5−ジヒドロ−プリン−9−イル)−3−メチレン−2−トリチルオキシメチル−シクロペンタノール(化学式(6)の化合物)の製造
前記実施例1−7で得られた化学式(5)の化合物3.2g(4.12mmol)を無水テトラヒドロフラン32mLに溶解した。得られた溶液に、1Mテトラブチルアンモニウムフルオリドテトラヒドロフラン溶液8.24mL(8.24mmol)を添加し、室温で13時間攪拌した。反応が完結した後、得られた混合物に蒸留水30mLを加えてクエンチした。こうして得られた溶液を、酢酸エチル30mLで抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後に濾過し、濃縮させ、メタノール32mL中で攪拌して標題化合物1.6g(収率:71.6%)を得た。
【0107】
NMR(300MHz,DMSO−d6):δ8.19(s,1H),7.98−7.25(m,15H),6.84(s,2H),5.44(t,1H),5.07(d,1H),4.88(s,1H),4.54(s,1H),4.25(s,1H),3.30−3.17(m,2H),2.64(s,1H),2.26−2.08(m,2H)
実施例1−9:2−アミノ−9−(4−ヒドロキシ−3−ヒドロキシメチル−2−メチレン−シクロペンチル)−1,9−ジヒドロ−プリン−6−オン(化学式(1)のエンテカビル)の製造
前記実施例1−8で得られた化学式(6)の化合物1.38g(2.56mmol)にアセトニトリル30mLと2N塩酸水溶液23.3mLとを添加し、82℃に加熱して12時間攪拌した。反応が完結し後、得られた混合物を室温に冷却し、酢酸エチルで洗浄してトリチルカルビノールを除去した。こうして得られた物質を3N水酸化ナトリウム水溶液13.6mLでpH6.8に中和した後、90℃で1時間攪拌した。こうして得られた溶液を徐々に室温に冷却しつつ攪拌し、室温で1時間さらに攪拌して結晶を得た。得られた物質を6℃に冷却し、1時間攪拌して固体状の標題化合物0.554g(収率:73.1%)を得た。
【0108】
NMR(300MHz,MeOH−d4):δ10.6(s,1H),7.78(s,1H),5.53(t,1H),5.26(t,1H),4.82(t,1H),4.43−4.40(m,1H),3.81(d,2H),2.70(s,1H),2.47−2.38(m,1H),2.27−2.20(m,1H)。
【0109】
実施例1−10:2−アミノ−9−(4−ヒドロキシ−3−ヒドロキシメチル−2−メチレン−シクロペンチル)−1,9−ジヒドロ−プリン−6−オンN,N−ジメチルホルムアミド溶媒和物(化学式(14)の化合物)の製造
前記実施例1−9で得られた化合物1gに、N,N−ジメチルホルムアミド5mLを添加し、室温で2時間攪拌し、0℃で1時間攪拌した。得られた溶液を濾過して、白色固体状の標題化合物0.95g(収率:85.6%)を得た。
【0110】
NMR(300MHz,MeOH−d4):デルタ10.6(s,1H),7.95(s,1H),7.67(s,1H),5.36(t,1H),5.10(t,1H),4.87(d,1H),4.83(t,1H),4.56(t,1H),4.24(s,1H),3.54(t,2H),2.89(s,3H),2.72(s,3H),2.50(m,1H),2.21(m,1H),2.04(m,1H)。
【0111】
実施例1−11:高純度の2−アミノ−9−(4−ヒドロキシ−3−ヒドロキシメチル−2−メチレン−シクロペンチル)−1,9−ジヒドロ−プリン−6−オン1水化物(化学式(1)の化合物)の製造
前記実施例1−10で得られた化学式(14)の化合物1.1gに蒸留水16.5mLを加え、95℃で1時間攪拌した。得られた溶液を室温に徐々に冷却して結晶化し、10℃で1時間攪拌した。得られた固体を濾過し、窒素雰囲気下で乾燥して、白色固体状の標題化合物0.9g(収率:96.9%)を99.8%以上の高純度で得た。
【0112】
実施例2−1:3−(t−ブチル−ジフェニル−シラニルオキシ)−2−トリチルオキシメチル−シクロペンタノール(化学式(13)の化合物)の製造
窒素気流下で、2M BH3DMSテトラヒドロフラン溶液210mL(0.924mol)と無水テトラヒドロフラン300mLとを反応器に入れ、5℃に冷却した。(−)−α−ピネン155mL(0.924mol)を0.5時間滴加した。生成された(+)−Ipc2BHの固相を35℃に昇温し、化学式(2)の化合物であるt−ブチル−ジフェニル−(2−トリチルオキシメチル−シクロ−2−ペンテニルオキシ)シラン100gを加えた。得られた混合物を3時間攪拌した後、反応温度を0〜10℃に維持して3N水酸化ナトリウム水溶液196mLを1時間滴加した。得られた混合物に、過酸化水素105mLを1時間以上滴加し、1時間攪拌した。得られた反応混合物に、10%NaHSO3 250mLと8%NaHCO3 250mLとの混合溶液を滴加して、過剰の過酸化水素を除去した。得られた物質にヘプタン500mLを加えて抽出し、有機層を分離した。分離された有機層を、水とメタノールとの混合物で、その重量比を1:1、1:1.5、1:2、1:2.5及び1:3の重量比に変化させながら5回洗浄して、イソピノカンフェオールを除去した。得られた溶液を減圧濃縮し、ヘプタン300mLに結晶化した後、0℃で濾過して結晶質固体で標題化合物67g(収率:65%)を得た。
【0113】
NMR(300MHz,CDCl3):δ7.57−7.21(m,25H),3.91−3.81(m,2H),3.12(dd,1H),2.74(br,1H),2.68(t,1H),2.34(m,1H),1.77−1.72(m,3H),1.53−1.48(m,1H),1.01(s,9H)
m.p.:95.6℃−97℃。
【0114】
実施例2−2:3−(tert−ブチル−ジフェニル−シラニルオキシ)−2−トリチルオキシメチル−シクロペンタノン(化学式(11)の化合物)の製造
前記実施例2−1で得られた化学式(13)の化合物60g(97.9mmol)をDMSO 36mLとメチレンクロリド300mLと混合した。得られた溶液を0℃に冷却し、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)59.7mL(0.343mol)を加え、ピリジン・SO3錯体31.2g、ピリジン15.9mL、DMSO 36mLの混合溶液を加えた。得られた混合物を30分間攪拌した。反応の完結後、得られた有機層を、飽和塩化アンモニウム水溶液、2M HCl、炭酸水素ナトリウム溶液、塩水それぞれ300mLで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過及び減圧濃縮して、標題化合物60g(収率:99%)を得た。
【0115】
NMR(300MHz,CDCl3):δ7.62−7.18(m,25H),4.53(q,1H),3.34(dd,1H),3.02(dd,1H),2.53(m,1H),2.32(q,1H),2.18(m,1H),1.99−1.88(m,2H),0.89(9H)。
【0116】
実施例2−3:トリフルオロメタンスルホン酸4−(t−ブチル−ジフェニル−シラニルオキシ)−5−トリチルオキシメチル−1−シクロペンテニルエステル(化学式(10)の化合物)の製造
1Mヘキサメチルジシラザンリチウムテトラヒドロフラン溶液2.62L(2.62mol)を、反応器内で0℃に冷却した。前記溶液にN−フェニルビス(トリフルオロメタンスルホンイミド)608.4g(1.70mol)と無水テトラヒドロフラン2.4Lとの混合溶液を1時間添加し、前記実施例2−2で得られた化学式(11)の化合物800g(1.31mol)と無水テトラヒドロフラン2.4Lとの混合溶液を、1〜1.5時間添加した。得られた混合物を、0℃で1時間攪拌した。反応が完結した後、3%炭酸水素ナトリウム溶液8Lを添加し、酢酸エチル8Lで抽出した。こうして分離された有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過及び減圧濃縮した。得られた残渣にヘプタン6Lとセライト(Celite)800gとを加え、室温で2時間攪拌した。得られた混合物をセライト濾過して異物を除去した。こうして得られた有機層をメタノールと水の6:1の混合溶液(重量比)5.6Lで2回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過及び減圧濃縮して、標題化合物892gを得た。
【0117】
NMR(300MHz,CDCl3):δ7.36(m,4H),7.09−6.99(m,21H),5.50(s,1H),4.14(d,1H),2.89(dd,1H),2.68(s,1H),2.59(dd,1H),2.37−2.34(m,1H),2.15(d,1H),0.80(s,9H)。
【0118】
実施例2−4:t−ブチル−ジフェニル−(3−トリメチルシリルメチル−2−トリチルオキシメチル−シクロペンテン−3−イルオキシ)−シラン(化学式(9)の化合物)の製造
削り屑状(turning)マグネシウム33g(5.22mol)を無水テトラヒドロフラン2Lと混合した。そこに、1,2−ジブロモエタン8mLを加えて15分間攪拌した。得られた溶液に、クロロメチルトリメチルシラン364mL(2.61mol)と無水テトラヒドロフラン0.6Lの混合溶液とを10分間にわたって滴加した。得られた混合溶液を40℃に加熱し、徐々に冷却して、トリメチルシリルメチルマグネシウムクロリドを沈殿させた。得られた溶液に、前記実施例2−3で製造された化学式(10)の化合物892gとテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム37.7g(0.033mmol)と無水テトラヒドロフラン4.5Lとの混合溶液を20分間滴加し、室温で1〜2時間攪拌した。反応の完結後、0℃に冷却し、3%重曹水溶液8Lを添加した。混合液をセライト(Celite)濾過した後、酢酸エチル4Lで洗浄した。有機層を分離し、減圧濃縮した。残渣にヘプタン6Lとセライト(Celite)400gとを入れて2時間攪拌した後、濾過し、ヘプタン2Lで洗浄した。得られた有機層をメタノールと水との6:1混合溶液(重量比)5.6Lで2回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥及び濾過した後、減圧濃縮した。残渣をイソプロピルアルコールと水との混合物で結晶化して、結晶質固体として標題化合物786gを得た。
【0119】
NMR(300MHz,CDCl3):δ7.59(dd,4H),7.33−7.14(m,21H),5.06(s,1H),4.33(d,1H),2.90(dd,1H),2.78−2.73(m,1H),2.64−2.62(m,1H),2.26−2.24(m,1H),2.09(d,1H),1.50(d,1H),1.23(d,1H),1.00(s,9H),0.01(s,9H)
m.p.:57.8℃−59.0℃。
【0120】
実施例2−5:3−(t−ブチル−ジフェニル−シラニルオキシ)−1−トリメチルシラニルメチル−2−トリチルオキシメチル−6−オキサ−ビシクロ[3.1.0]ヘキサン(化学式(13)の化合物)の製造
前記実施例2−4で得られた化学式(9)の化合物786g(1.14mol)をイソプロピルアルコール12Lに溶解して0℃に冷却した。リン酸ナトリウム2.78kg(19.58mol)を添加し、次いで77%メタクロロペルオキシ安息香酸292.5g(1.31mol)を添加し、2.5時間攪拌した。こうして得られた固体を濾過して標題化合物とリン酸ナトリウムとの混合固体3.25kgを得た。
【0121】
NMR(300MHz,CD2Cl2+D2O):δ7.65−7.22(m,25H),4.74(t,2H),3.44(q,1H),3.27(dd,1H),3.13(s,1H),2.88(t,1H),2.42−2.41(m,1H),1.99−1.88(m,2H),1.02−0.93(m,9H),0.15−0.13(m,9H)。
【0122】
実施例2−6:1−(S)−4−(t−ブチル−ジフェニル−シラニルオキシ)−2−メチレン−3−トリチルオキシメチルシクロペンタノール(化学式(7)の化合物)の製造
前記実施例2−5で得られた化学式(13)の化合物とリン酸ナトリウムとの混合固体3.25kgに、メタノール8Lとメチレンクロリド4Lとを加えた。ここに77%メタクロロペルオキシ安息香酸292.5gを加え、1〜1.5時間攪拌した。反応が完結した後、得られた混合物を濾過してリン酸ナトリウムを除去し、メチレンクロリド4Lで固体を洗浄した。得られた物質に、20%硫酸水素ナトリウム水溶液2.4Lと6%重曹溶液4.8Lとの混合溶液を滴加して急冷した。有機層を分離した後、水層をメチレンクロリド4Lで抽出した。分離された有機層を組み合わせ、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過した後、減圧濃縮して標題化合物587.3g(化学式(3)の化合物から得られた化学式(7)の化合物の収率:72%)を得た。
【0123】
NMR(300MHz,CDCl3):δ7.84−7.58(m,5H),7.33−7.18(m,39H),5.40(s,0.2H),5.18(s,1H),5.11(s,0.2H),4.99(s,1H),4.65(d,1H),4.13(q,2H),3.02(m,3H),2.87(m,2H),1.88(d,1H),1.00(s,17H)。
【0124】
実施例2−7:1−ベンゾイル−4−(t−ブチル−ジフェニル−シラニルオキシ)−2−メチレン−3−トリチルオキシメチル−シクロペンタン化合物(化学式(2)の化合物)の製造
テトラヒドロフラン10Lに、前記実施例3−6で得られた化学式(7)の化合物500g(0.8mol)、トリフェニルホスフィン314.8g(1.2mol)及び安息香酸146.7g(1.2mol)を加え、0℃に冷却した。ここにアゾジカルボン酸ジイソプロピル(DIAD)242.7mL(1.2mol)を滴加し、0℃で1時間攪拌した。反応の完結後、得られた混合物を減圧下で濃縮して溶媒を除去した。酢酸エチル5Lを添加した後、0.5N水酸化ナトリウム水溶液5Lで洗浄した。こうして分離された有機層に硫酸ナトリウムを添加して乾燥、濾過及び濃縮した。得られた物質を酢酸エチル1Lに溶解し、メタノール4Lを添加して結晶化した。得られた固体を濾過して固体状の標題化合物408.3g(収率:70.0%)を得た。
【0125】
NMR(300MHz,CDCl3):δ8.09(dd,2H),7.56(dd,5H),7.33−7.20(m,23H),5.60(t,1H),5.26(d,2H),4.11(q,1H),3.13−3.08(m,1H),3.02(d,1H),2.85(q,1H),2.24−2.18(m,1H),1.94−1.88(m,1H),1.54(s,3H),0.99(s,9H)
m.p.:142.3℃−144℃。
【0126】
実施例2−8:1−(R)−4−(t−ブチル−ジフェニル−シラニルオキシ)−2−メチレン−3−トリチルオキシメチルシクロペンタノール化合物(化学式(3)の化合物)の製造
反応器に水酸化ナトリウム80g(2mol)及びメタノール4.0Lを順に入れた。実施例2−7で得られた化学式(2)の化合物400g(0.5487mol)とメチレンクロリド2.0Lと、そこに添加し、室温で5時間反応させた。反応が完結した後、得られた混合物を水2Lで洗浄した。こうして分離された有機層に硫酸ナトリウムを添加し、乾燥及び濾過して標題化合物341g(収率:99%)を得た。
【0127】
NMR(300MHz,CDCl3):δ7.65−7.60(m,4H),7.39−7.17(m,21H),5.35(s,1H),5.10(s,1H),4.30(d,1H),2.97(s,1H),2.88−2.79(m,2H),2.73(d,1H),1.78(t,2H),1.02(s,9H)。
【0128】
実施例2−9:9−[4−(t−ブチル−ジフェニル−シラニルオキシ)−2−メチレン−3−トリチルオキシメチル−シクロペンチル]−6−クロロ−9H−プリン−2−イルアミン(化学式(5)の化合物)の製造
トリフェニルホスフィン216g(0.823mol)をテトラヒドロフラン3.43Lに溶解し、0℃に冷却した。アゾジカルボン酸ジエチル(DEAD)130mL(0.823mol)を添加し、0℃で1時間攪拌して懸濁液を得た。前記実施例2−8で得られた化学式(3)の化合物341g(0.5487mol)と2−アミノ−6−クロロプリン140g(0.823mol)を含むテトラヒドロフラン3.43Lとの混合物に、懸濁液を0℃で添加し、同じ温度で1時間攪拌した。反応が完了した後、得られた混合物に酢酸エチル3.43Lを添加し、0℃で0.5N水酸化ナトリウム水溶液3.43Lで洗浄した。得られた物質を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過した後、減圧濃縮して標題化合物426g(収率:99%)を得た。
【0129】
NMR(300MHz,DMSO−d6):δ7.82(s,1H),7.61(d,4H),7.49−7.20(m,21H),6.69(brs,2H),5.53(t,1H),4.91(s,1H),4.57(s,1H),4.40(s,1H),3.19−3.13(m,1H),3.08−3.03(m,1H),2.83(s,1H),2.13−2.10(m,2H),1.03(s,9H)。
【0130】
実施例2−10:4−(2−アミノ−6−クロロ−4,5−ジヒドロ−プリン−9−イル)−3−メチレン−2−トリチルオキシメチル−シクロペンタノール(化学式(6)の化合物)の製造
前記実施例2−9で得られた化学式(5)の化合物426g(0.5487mol)を無水テトラヒドロフラン4Lに溶解して調製した溶液に、1Mテトラブチルアンモニウムフルオリドテトラヒドロフラン溶液1.1L(1.10mol)を添加した後、室温で13時間攪拌した。反応が完結した後、反応混合物に蒸留水2.0Lを加え、酢酸エチル2.0Lで2回抽出した。こうして分離された有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、濾過及び濃縮し、メタノール4.0L中で攪拌して標題化合物212.6g(収率:72%)を得た。
【0131】
NMR(300MHz,DMSO−d6):δ8.19(s,1H),7.98−7.25(m,15H),6.84(s,2H),5.44(t,1H),5.07(d,1H),4.88(s,1H),4.54(s,1H),4.25(s,1H),3.30−3.17(m,2H),2.64(s,1H),2.26−2.08(m,2H)。
【0132】
実施例2−11:2−アミノ−9−(4−ヒドロキシ−3−ヒドロキシメチル−2−メチレン−シクロペンチル)−1,9−ジヒドロ−プリン−6−オン(化学式(1)のエンテカビル)の製造
前記実施例2−10で得られた化学式(6)の化合物200g(0.372mol)にアセトニトリル3Lと2N塩酸水溶液3Lとを混合し、82℃に加熱して12時間攪拌した。反応が完結した後、得られた溶液を室温に冷却し、酢酸エチル3Lで洗浄してトリチルカルビノールを除去した。得られた物質を3N水酸化ナトリウム水溶液1.2Lを用いてpH7に中和した後、90℃で1時間攪拌して溶液を得た。溶液を攪拌しつつ徐々に室温に冷却し、室温で1時間攪拌して結晶化させた。得られた物質を6℃に冷却し、1時間攪拌して固体状の標題化合物80.2g(収率:73%)を得た。
【0133】
NMR(300MHz,MeOH−d4):δ10.6(s,1H),7.78(s,1H),5.53(t,1H),5.26(t,1H),4.82(t,1H),4.43−4.40(m,1H),3.81(d,2H),2.70(s,1H),2.47−2.38(m,1H),2.27−2.20(m,1H)。
【0134】
以上、本発明を前記実施例を中心に説明したが、これは例示に過ぎず、本発明は、本発明の技術分野における通常の知識を有する者が、以下に添付する特許請求の範囲内及びその均等範囲内で、多様に変更して実施することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)下記化学式(2)のα−エクソメチレン誘導体を加水分解し、下記化学式(3)の化合物を得るステップと、
(2)前記化学式(3)の化合物を下記化学式(4)のプリン誘導体とミツノブ反応させ、下記化学式(5)のヌクレオシド化合物を得るステップと、
(3)前記化学式(5)のヌクレオシド化合物をテトラブチルアンモニウムフルオリドと反応させ、下記化学式(6)の化合物を得るステップと、
(4)前記化学式(6)の化合物を加水分解するステップと
を含む、下記化学式(1)のエンテカビルの製造方法。
【化1】

前記式中、
及びRは、それぞれ独立に、ヒドロキシ保護基であるか、またはR及びRともに環状ヒドロキシ保護基を形成し、
は、ベンゾイル又はアリールベンゾイルであり、
Tfは、トリフルオロメタンスルホニルであり、
Xは、ハロゲン又はベンジルオキシである。
【請求項2】
前記ヒドロキシ保護基が、フェニル基でモノ、ジ又はトリ置換されたメチル基;アルコキシ又はニトロ基で置換されたベンジル基;ベンゾイル基;アルコキシ又はニトロ基で置換されたベンゾイル基;シリル基;アルキル基及びアリール基からなる群から選ばれる少なくとも1種の置換基で置換されたシリル基;アリール基;アルコキシアルキル基;およびテトラヒドロピラニル基からなる群から選ばれることを特徴とする、請求項1記載の化学式(1)のエンテカビルの製造方法。
【請求項3】
前記環状ヒドロキシ保護基が、ベンジリデン、ナフチリデン、4−フェニルベンジリデン、環状アセタール、環状ケタール、環状カーボネート、環状オルトエステル及び環状1,3−(1,1,3,3−テトライソプロピル)ジシロキサンジイル基からなる群から選ばれることを特徴とする、請求項1記載の化学式(1)のエンテカビルの製造方法。
【請求項4】
前記化学式(4)のプリン誘導体のXが、クロロ又はベンジルオキシであることを特徴とする、請求項1記載の化学式(1)のエンテカビルの製造方法。
【請求項5】
前記ミツノブ反応が、トリフェニルホスフィン及びアゾジカルボン酸−ジ−(C1−6アルキル)の存在下で行われることを特徴とする、請求項1記載の化学式(1)のエンテカビルの製造方法。
【請求項6】
前記化学式(2)のα−エクソメチレン誘導体が、下記化学式(7)のβ−エクソメチレン誘導体をミツノブ反応させて製造されることを特徴とする、請求項1記載の化学式(1)のエンテカビルの製造方法。
【化2】

前記式中、R及びRは、請求項1で定義した通りである。
【請求項7】
前記ミツノブ反応が、前記化学式(7)のβ−エクソメチレン誘導体をトリフェニルホスフィン及びアゾジカルボン酸−ジ−(C1−6アルキル)と反応させて行われることを特徴とする、請求項6記載の化学式(1)のエンテカビルの製造方法。
【請求項8】
前記化学式(7)のβ−エクソメチレン誘導体が、下記化学式(8)のエポキシド化合物を加水分解反応させて製造されることを特徴とする、請求項6記載の化学式(1)のエンテカビルの製造方法。
【化3】

前記式中、R及びRは、請求項1で定義した通りであり、Yはアルキルシリル又はアリールシリルである。
【請求項9】
前記化学式(8)のエポキシド化合物が、下記化学式(9)の化合物を過酸化物と反応させて製造されることを特徴とする、請求項8記載の化学式(1)のエンテカビルの製造方法。
【化4】

前記式中、R及びRは、請求項1で定義した通りであり、Yはアルキルシリル又はアリールシリルである。
【請求項10】
前記過酸化物が、メタクロロペルオキシ安息香酸、過酸化水素、t−ブチルヒドロぺルオキシド、四酸化オスミウム、過ヨウ素酸ナトリウム及びこれらの混合物からなる群から選ばれることを特徴とする、請求項9記載の化学式(1)のエンテカビルの製造方法。
【請求項11】
前記化学式(9)の化合物が、結晶性固体であることを特徴とする、請求項9記載の化学式(1)のエンテカビルの製造方法。
【請求項12】
前記化学式(9)の化合物が、下記化学式(10)のトリフルオロメタンスルホン酸のエノラート化合物を金属触媒の存在下で、アルキルシリルメチルマグネシウムクロリド又はアリールシリルメチルマグネシウムクロリドと反応させて製造されることを特徴とする、請求項9記載の化学式(1)のエンテカビルの製造方法。
【化5】

前記式中、R及びRは、請求項1で定義した通りであり、Tfはトリフルオロメタンスルホニルである。
【請求項13】
前記金属触媒が、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムであることを特徴とする、請求項12記載の化学式(1)のエンテカビルの製造方法。
【請求項14】
前記化学式(10)のトリフルオロメタンスルホン酸のエノラート化合物が、下記化学式(11)の化合物を塩基の存在下でトリフレート化剤と反応させて製造されることを特徴とする、請求項12記載の化学式(1)のエンテカビルの製造方法。
【化6】

前記式中、R及びRは、請求項1で定義した通りである。
【請求項15】
前記反応が20〜−29℃の温度範囲で行われることを特徴とする、請求項14記載の化学式(1)のエンテカビルの製造方法。
【請求項16】
前記塩基が、ヘキサメチルジシラザンリチウム、ヘキサメチルジシラザンカリウム、ヘキサメチルジシラザンナトリウム、リチウムジイソプロピルアミド、n−(C1−6アルキル)リチウム、リチウムテトラメチルピペリジド、カリウムブトキシド、カリウムペントキシド、カリウムアミレート及びこれらの混合物からなる群から選ばれることを特徴とする、請求項14記載の化学式(1)のエンテカビルの製造方法。
【請求項17】
前記トリフレート化剤が、トリハロメタンスルホン酸無水物、C1−6アルキル又はC6−18アリールN−置換基を有するトリフリミド、及びこれらの混合物からなる群から選ばれることを特徴とする、請求項14記載の化学式(1)のエンテカビルの製造方法。
【請求項18】
前記化学式(11)の化合物が、
下記化学式(12)のシクロペンテン化合物を(+)−ジイソピノカンフェイルボラン及びHと反応させた後、反応物を炭化水素系溶媒で抽出して有機層を収得し、分離された有機層を水とアルコールとの混合物で洗浄し、結晶化助剤として溶媒を添加して結晶化して下記化学式(13)の化合物を結晶性固体に製造するステップと、
前記化学式(13)のシクロペンタノール化合物を、ピリジン・SO錯体、トリアルキルアミン及びジメチルスルホキシドの混合物と酸化反応させるステップと、
を含む製造方法によって製造されることを特徴とする、請求項14記載の化学式(1)のエンテカビルの製造方法。
【化7】

前記式中、R及びRは、請求項1で定義した通りである。
【請求項19】
前記洗浄プロセスが、1:1〜1:3の範囲の混合重量比で混合された水とアルコールの混合物を使用することにより3回以上行われることを特徴とする、請求項18記載の化学式(1)のエンテカビルの製造方法。
【請求項20】
前記洗浄プロセスが、1:1、1:1.5、1:2、1:2.5及び1:3の混合重量比を有する水とアルコールとの混合物の何れかを使用することにより5回行われることを特徴とする、請求項18記載の化学式(1)のエンテカビルの製造方法。
【請求項21】
結晶化助剤として使用される溶媒が、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、水、及びこれらの混合物からなる群から選ばれることを特徴とする、請求項18記載の化学式(1)のエンテカビルの製造方法。
【請求項22】
前記ステップ(d)の加水分解から得られた化合物を、ジメチルホルムアミドで処理して、下記化学式(14)のエンテカビルジメチルホルムアミドの結晶溶媒和物を得ることと、
下記化学式(14)のエンテカビルジメチルホルムアミドの溶媒和物を水から再結晶化することと、
を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の化学式(1)のエンテカビルの製造方法。
【化8】

前記式中、DMFはジメチルホルムアミドである。
【請求項23】
下記化学式(2)のα−エクソメチレン化合物。
【化9】

前記式中、R〜Rは、請求項1で定義した通りである。
【請求項24】
下記化学式(7)のβ−エクソメチレン化合物。
【化10】

前記式中、R〜Rは、請求項1で定義した通りである。
【請求項25】
下記化学式(8)のエポキシド誘導体。
【化11】

前記式中、R〜Rは、請求項1で定義した通りであり、Yはアルキルシリル又はアリールシリルである。
【請求項26】
下記化学式(9)のシクロアルケン化合物。
【化12】

前記式中、R〜Rは、請求項1で定義した通りであり、Yはアルキルシリル又はアリールシリルである。
【請求項27】
Cu−Kα照射を使用して得られるX線回折スペクトルが、8.5、8.6、9.3、9.6、10.3、11.4、12.1、12.7、13.6、14.6、15.3、15.5、15.9、17.0、17.4、17.6、18.2、18.7、19.4、19.6、20.8、21.4、21.9、22.3、22.6、23.2、23.5、25.1、27.5及び28.7の回折角(2θ±0.2)で10%以上のピーク強度を有するピークを示すことを特徴とする請求項26記載のシクロアルケン化合物。
【請求項28】
下記化学式(10)のトリフルオロメタンスルホン酸のエノラート誘導体。
【化13】

前記式中、R〜Rは、請求項1で定義した通りであり、Tfはトリフルオロメタンスルホニルである。
【請求項29】
下記化学式(13)の結晶性化合物。
【化14】

前記式中、R〜Rは、請求項1で定義した通りである。
【請求項30】
Cu−Kα照射を使用して得られるX線回折スペクトルが、8.5、8.9、10.4、11.8、13.2、13.6、14.0、15.7、17.3、17.9、18.4、18.9、19.4、20.2、20.6、20.9、21.6、22.0及び25.2の回折角(2θ±0.2)で10%以上のピーク強度を有するピークを示すことを特徴とする請求項29記載の結晶性化合物。
【請求項31】
Cu−Kα照射を使用して得られるX線回折スペクトルが、10.2、14.4、14.5、16.6、17.9、18.8、19.3、19.8、21.4、21.9、24.5、25.5、25.8、26.7、29.3及び30.2の回折角(2θ±0.2)で10%以上のピーク強度を有するピークを示す、下記化学式(14)の結晶性エンテカビルジメチルホルムアミドの溶媒和物。
【化15】

前記式中、DMFはジメチルホルムアミドである。
【請求項32】
化学式(1)のエンテカビル化合物をジメチルホルムアミドを含む溶媒に溶解するステップと、それから化学式(14)の化合物を結晶化するステップとを含む、請求項31の結晶性エンテカビルジメチルホルムアミドの溶媒和物の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2013−507436(P2013−507436A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−534093(P2012−534093)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【国際出願番号】PCT/KR2010/006306
【国際公開番号】WO2011/046303
【国際公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(510316693)ハンミ・サイエンス・カンパニー・リミテッド (10)
【Fターム(参考)】