オイルセパレータ
【課題】オイルミストの分離効率を向上させることができるとともに、フィルタの目詰まり発生時にガス通路が閉塞されるおそれを抑制することができるオイルセパレータを提供する。
【解決手段】ハウジング21内において、流入口22と流出口23との間に、フィルタ25を通して連通する第1経路24と、フィルタ25を通すことなく小径の穿孔27を通して連通する第2経路26とを設ける。第1経路24の圧損を第2経路26の圧損よりも低くなるように設定する。第2経路26における穿孔27の下流側の出口近傍に、第1経路24のフィルタ25の一部を分離衝突部25cとして対向配置する。
【解決手段】ハウジング21内において、流入口22と流出口23との間に、フィルタ25を通して連通する第1経路24と、フィルタ25を通すことなく小径の穿孔27を通して連通する第2経路26とを設ける。第1経路24の圧損を第2経路26の圧損よりも低くなるように設定する。第2経路26における穿孔27の下流側の出口近傍に、第1経路24のフィルタ25の一部を分離衝突部25cとして対向配置する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内燃機関のクランク室と吸気通路との間に設けられ、オイルミスト含有ガスであるブローバイガスからオイルミストを分離するようにしたオイルセパレータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のオイルセパレータとしては、例えば図11に示すような構成が知られている。この従来構成では、ハウジング41内において、ブローバイガスの流入口42と流出口43との間に円筒状のフィルタ44が配置されている。このフィルタ44の上流側の開口端部が流入口42に連通されるとともに、下流側の開口端部が閉塞板45によって閉塞されている。そして、流入口42からハウジング41内に流入するブローバイガスが、フィルタ44を通して流出口43側に流れることにより、そのガス中からオイルミストがフィルタ44に捕捉されて分離される。
【0003】
ところが、この図11の従来構成では、ハウジング41内において、すべてのブローバイガスがフィルタ44を通して流れるため、フィルタ44に大量のオイルミストが捕捉されると、目詰まり状態となる。この状態においては、クランク室と吸気通路との間のガス通路が閉塞して、クランク室やガス通路内の圧力が高騰して、シール部分等からガス漏れやオイル漏れが生じるおそれがあった。
【0004】
このような問題に対処するため、フィルタ44を交換部品とすることも考えられる。しかしながら、このようにした場合には、フィルタ交換の手間が必要になるため、メンテナンスや部品のコストが上昇する。加えて、ハウジング41をフィルタ44の脱着が可能にした構成にしたり、内燃機関ルーム内においてオイルセパレータをメンテナンス可能な位置に設置したりする設計上及びレイアウト上の制約が生じる。
【0005】
また、図11の従来構成における問題に対処するため、例えば図12に示すような構成も提案されている。この従来構成においては、フィルタ44の下流側の開口端部を閉塞する閉塞板45に、リリーフバルブ46が設けられている。そして、フィルタ44が目詰まり状態になって、フィルタ44内の圧力が高騰したとき、リリーフバルブ46が開放されて、ブローバイガスがフィルタ44の内側から流出口43側に流出するようになっている。
【0006】
ところが、この図12の従来構成では、リリーフバルブ46を設けているため、部品点数が増加して、構成が複雑化する。また、リリーフバルブ46が開放されたときには、ブローバイガスがフィルタ44を通ることなく流れるため、大量のオイルミストが内燃機関側に流出する結果となる。さらに、リリーフバルブ46は通常時に閉鎖状態にあるとともに、ブローバイガスに晒されているため、リリーフバルブ46がカーボン等を含んだオイルの付着によって開放不能に陥りやすいという問題もあった。このように、リリーフバルブ46が開放不能になった場合は、前記のように、ガス通路閉塞にともなうガス漏れやオイル漏れが生じるおそれがある。
【0007】
一方、従来のオイルセパレータとしては、例えば特許文献1及び特許文献2に開示されるような構成も提案されている。特許文献1に記載の従来構成では、図13に示すように、ハウジング41内において、流入口42と対応する位置には捕集板47が配置され、その捕集板47の前面には多孔質材料層48が設けられている。そして、流入口42からハウジング41内に流入するブローバイガスが捕集板47に衝突することにより、ガスに含まれるオイルミストが捕集板47に捕捉される。このとき、捕集板47で捕捉できないオイルミストが多孔質材料層48に付着して捕捉される。
【0008】
また、特許文献2に記載の従来構成では、図14に示すように、ハウジング41内において、流入口42と対応する位置には第1流路管49が配置され、その第1流路管49内には邪魔板50及び第1フィルタ51が設けられている。また、ハウジング41内には第2流路管52がその入口をハウジング41の内部に開口した状態で配置され、その第2流路管52内には第1フィルタ51よりも圧力損失(以下、単に圧損という)の小さい複数の第2フィルタ53が設けられている。そして、流入口42からハウジング41内に流入するブローバイガスが第1流路管49内の第1フィルタ51を通過することにより、ガスに含まれる粒径の大きいオイルミストが分離される。また、ブローバイガスが第2流路管52内の第2フィルタ53を通過することにより、ガスに含まれる粒径の小さいオイルミストが分離される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平9−47617号公報
【特許文献2】特開平8−173740公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、これらの従来のオイルセパレータにおいては、次のような問題があった。
特許文献1に記載の従来構成では、捕集板47及び多孔質材料層48によって捕捉されなかったオイルミストが捕集板47の周側から流出口43側に流出する。このため、フィルタにブローバイガスを通してオイルミストを捕捉する方式と比較して、オイルセパレータの長期間の使用によって多孔質材料層48に大量のオイルが捕捉された状態においては、オイルミストの分離効率が良くないという問題があった。
【0011】
また、特許文献2に記載の従来構成では、邪魔板50及び第1フィルタ51を内部に設けた第1流路管49と、第2フィルタ53を内部に設けた第2流路管52とがハウジング41内に設置されているため、構造が複雑である。しかも、両フィルタ51,53が目詰まりした場合には、ハウジング内のガス通路が閉塞されるおそれがあり、このような場合には、前記のように、ガス漏れやオイル漏れが生じるおそれが生じるという問題があった。
【0012】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、オイルミストの分離効率を向上させることができるとともに、フィルタの目詰まり発生時にガス通路が閉塞されるおそれを抑制することができ、しかも構成が簡単なオイルセパレータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために、この発明は、内燃機関のクランク室と吸気通路とを連通するオイルミスト含有ガス通路上に設けられるオイルセパレータであって、ハウジングの流入口と流出口との間に、フィルタを通して連通する第1経路と、前記フィルタを通すことなく穿孔を通して連通する第2経路とを備え、前記第1経路の圧損を第2経路の圧損よりも低く設定するとともに、前記第2経路における穿孔の下流側の出口近傍には前記第1経路のフィルタの一部を分離衝突部として対向配置したことを特徴としている。
【0014】
従って、この発明のオイルセパレータにおいては、第1経路の圧損が第2経路の圧損よりも低く設定されていることで、通常時には流入口から流入するオイルミスト含有ガスが、第1経路中のフィルタを通して流れて、そのガスに含まれるオイルミストが分離捕捉される。また、フィルタに目詰まりが発生して、第1経路の圧損が第2経路の圧損よりも高くなった場合には、流入口から流入するオイルミスト含有ガスが、穿孔を通して第2経路に流れる。そして、ガスが穿孔の出口近傍に対向配置された分離衝突部としての第1経路のフィルタの一部に衝突することにより、そのガスに含まれるオイルミストが分離捕捉される。よって、第1経路及び第2経路にフィルタを別々に設ける必要がなく、構成を簡略化することができるとともに、1つのフィルタによりオイルミストを効率良く分離捕捉することができる。また、フィルタの目詰まり発生時には、ガス通路が閉塞したり、オイルミストが捕捉されることなく流出したりするおそれを抑制することができる。
【0015】
前記の構成において、前記フィルタはオイルミスト含有ガスの透過方向において密度が粗密となるように構成され、下流側が粗で上流側が密に形成されているとよい。
前記の構成において、前記穿孔の下流側の出口近傍にはフィルタの粗の部分が対向配置されているとよい。
【0016】
前記の構成において、前記フィルタは撥油処理されているとよい。
前記の構成において、前記流出口の上流側には、オイルミスト含有ガスが衝突する邪魔板が設けられているとよい。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、この発明によれば、オイルミストの分離効率を向上させることができるとともに、フィルタの目詰まり発生時にガス通路が閉塞されるおそれを抑制することができるという効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態におけるオイルセパレータを示す断面図。
【図2】図1の2−2線における断面図。
【図3】第2実施形態のオイルセパレータを示す断面図。
【図4】図3の4−4線における断面図。
【図5】第3実施形態のオイルセパレータを示す平断面図。
【図6】第1実施形態の変更例を示す部分断面図。
【図7】図6の7−7線における断面図。
【図8】第1実施形態の別の変更例を示す部分断面図。
【図9】第2実施形態の変更例を示す断面図。
【図10】第3実施形態の変更例を示す平断面図。
【図11】従来のオイルセパレータの一構成を示す断面図。
【図12】従来のオイルセパレータの他の構成を示す断面図。
【図13】従来のオイルセパレータの別の構成を示す断面図。
【図14】従来のオイルセパレータのさらに別の構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1実施形態)
以下に、この発明を具体化したオイルセパレータの第1実施形態を図1及び図2に従って説明する。
【0020】
この実施形態のオイルセパレータにおいては、ハウジング21が四角箱状に形成されている。ハウジング21の一側端部には、内燃機関のクランク室に連通する流入口22が形成されている。ハウジング21の他側端部には、内燃機関の吸気通路に接続した流出口23が形成されている。そして、内燃機関の運転時には、前記吸気通路内の負圧により、オイルミスト含有ガスであるブローバイガスがクランク室から流入口22を介してハウジング21内に流入し、後述のように、オイルミストが分離されて、流出口23から内燃機関の吸気通路に向かって流出する。
【0021】
図1及び図2に示すように、前記ハウジング21内において流入口22と流出口23との間には、フィルタ25を通して連通する第1経路24と、フィルタ25を通すことなく小径の穿孔27を通して連通する第2経路26とが設けられている。ハウジング21内には、フィルタ25を支持するための一対の支持板28A,28B、及び両経路24,26を屈曲形状に形成するための複数の邪魔板29A,29B,29Cが形成されている。フィルタ25は不織布等により襞折り状に形成され、そのフィルタ繊維には撥油処理が施されている。この撥油処理は、繊維表面に撥油コーティングや撥油への改質を施したり、あるいは繊維を撥油性の材質によって構成したりして実現される。同様に撥水処理を併せて施すことにより、ブローバイガス中に含まれる水分を分離することもできる。また、フィルタ25は、第1経路24におけるオイルミスト含有ガスの透設方向、すなわちフィルタ25の厚さ方向に密部25aと粗部25bにより密度の粗密が形成されるように構成され、上流側が密で下流側が粗に形成されている。
【0022】
図1及び図2に示すように、前記第2経路26の穿孔27は、フィルタ25を支持するための一方(上流側)の支持板28Aに形成されている。そして、この穿孔27の開口径及び形成個数を調整することにより、第1経路24の圧損(圧力損失)が第2経路26の圧損よりも低くなるように設定されている。第2経路26における穿孔27の下流側の出口近傍には、前記第1経路24のフィルタ25の一部である襞の側壁が分離衝突部(インパクタ)25cとして対向配置され、オイルミスト含有ガスが穿孔27を通過して分離衝突部25cに当たり、そこでオイルミストが分離されるようになっている。この場合、フィルタ25における粗部25bが穿孔27の出口に対向配置されている。
【0023】
次に、前記のように構成されたオイルセパレータの作用を説明する。
以上のように構成されたオイルセパレータにおいて、内燃機関が運転されると、ブローバイガスが流入口22からハウジング21内に流入する。このとき、第1経路24の圧損が第2経路26の圧損よりも低くなるように設定されているため、流入口22から流入するブローバイガスは、第1経路24側に流れて、不織布からなるフィルタ25を通り抜ける。そして、そのガスに含まれるオイルミストが、フィルタ25によって捕捉されて、ブローバイガスから分離される。
【0024】
この場合、フィルタ25の繊維に撥油処理が施されている。そのため、フィルタ25で分離捕捉されたオイルミストは、フィルタ繊維にあまり付着保持されることなく、フィルタ25上からハウジング21の内底部に落下して、オイル排出孔30からシリンダヘッド側に排出される。よって、オイルセパレータの短期間の使用において、フィルタ25に目詰まりを発生するおそれはない。
【0025】
また、オイルセパレータの長期間の使用に伴って、フィルタ25に目詰まりが発生すると、第1経路24の圧損が第2経路26の圧損よりも高くなる。この状態で、エンジンが運転されると、流入口22から流入するオイルミスト含有ガスが第2経路26側に流れる。そして、第2経路26において小径の穿孔27から高速で流出するオイルミスト含有ガスが、分離衝突部25cとしての第1経路24のフィルタ25の粗部25bに衝突することにより、ガスに含まれるオイルミストが分離捕捉される。
【0026】
このように、第1経路24側のフィルタ25に目詰まりが発生した場合には、オイルミスト含有ガスの流路が第2経路26側に切り換えられ、第1経路24のフィルタ25の一部を用いてオイルミストの分離捕捉が続行される。よって、フィルタ25の目詰まりによりガス通路が閉塞されたり、オイルミストが捕捉されないまま流出したりするおそれをなくすことができる。また、第1経路24のフィルタ25を脱着交換する必要もない。
【0027】
従って、この実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)このオイルセパレータでは、ハウジング21内において流入口22と流出口23との間に、フィルタ25を通して連通する第1経路24と、フィルタ25を通すことなく小径の穿孔27を通して連通する第2経路26とが設けられている。この場合、第1経路24の圧損が第2経路26の圧損よりも低くなるように設定されている。第2経路26における穿孔27の下流側の出口近傍には、第1経路24のフィルタ25の粗部25bが分離衝突部25cとして対向配置されている。
【0028】
このため、通常時には第1経路24の圧損が第2経路26の圧損よりも低く設定されていることで、流入口22から流入するオイルミスト含有ガスが、第1経路24中のフィルタ25を通して流れて、そのガスに含まれるオイルミストが分離捕捉される。また、フィルタ25に目詰まりが発生して、第1経路24の圧損が第2経路26の圧損よりも高くなった場合には、流入口22から流入するオイルミスト含有ガスが、小径の穿孔27を通して第2経路26に流れる。そして、ガスが穿孔27の出口近傍に対向配置された第1経路24の分離衝突部25cに衝突することにより、そのガスに含まれるオイルミストが分離捕捉される。
【0029】
よって、第1経路24及び第2経路26にフィルタを別々に設ける必要がなく、構成を簡略化することができるとともに、1つのフィルタ25によりオイルミストを効率良く分離捕捉することができる。また、フィルタ25の目詰まり発生時には、ガス通路が閉塞したり、オイルミストが捕捉されることなく流出したりするおそれを抑制することができる。従って、オイルセパレータをメンテナンスフリーにすることが可能である。
(2)このオイルセパレータでは、フィルタ25がオイルミスト含有ガスの透過方向において密度が粗密となるように構成され、下流側が粗部25bで上流側が密部25aに形成されている。このため、第1経路24において粒子径の大小にかかわらずオイルミストを有効に分離捕捉することができる。
(3)このオイルセパレータでは、フィルタ25のガス透過方向における上流側の密度が密、下流側の密度が粗に形成されている。従って、前記穿孔27の出口においてはフィルタ25の粗部25bが対向配置されている。このため、穿孔27からのガスがフィルタ25の分離衝突部25cに衝突して、オイルミストが分離捕捉される際に、フィルタ25の粗部25bに捕捉されるとともに、密部25aに当たって分離され、オイルミストを効率良く分離捕捉することができる。この状態では、フィルタ25の密部25aがオイルを含んで板面に近くなっている。従って、密部25aがインパクタとして有効に機能し、分離効率が高い。
(4)このオイルセパレータでは、前記フィルタ25のフィルタ繊維に撥油処理が施されている。このため、フィルタ25で分離捕捉されたオイルミストが、フィルタ繊維にあまり付着保持されることなく、フィルタ25上からはじかれて落下する。よって、フィルタ25を、長期間にわたって目詰まりが生じることなく使用することができる。
(5)このオイルセパレータでは、前記流出口23の上流側にオイルミスト含有ガスが衝突する邪魔板29B,29Cが設けられている。このため、第2経路26を流れるガスが邪魔板29B,29Cに当たってその表面で液滴化し、オイルミストを効果的に分離捕捉することができる。
(第2実施形態)
次に、この発明を具体化したオイルセパレータの第2実施形態を、前記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0030】
さて、この第2実施形態においては、図3及び図4に示すように、ハウジング21が両側端部を閉塞した円筒状に形成され、その一側端部に流入口22が形成されるとともに、他側端部に流出口23が形成されている。ハウジング21の内部には開口33bを有する枠体33がハウジング21の軸線方向に延びるように一体形成され、その下流側は有底筒部33aとなっている。該有底筒部33aの周壁には周方向に90度間隔をおいて穿孔27が形成されている。有底筒部33aの周壁の穿孔27より下流側の外周面には支持突起37が設けられている。
【0031】
前記フィルタ25は枠体33の外周に支持されるとともに、その下流側は支持突起37に支持されている。第1経路24を含むフィルタ25の大部分は密部25aで構成され、第2経路26における分離衝突部25c側において穿孔27と対向する位置には粗部25bが形成されている。すなわち、フィルタ25における粗部25bが穿孔27の出口に対向配置され、オイルミストが分離捕捉される際に、フィルタ25の粗部25bで捕捉されるとともに、密部25aに当たって液滴となり落下しやすくなっている。
【0032】
従って、この第2実施形態においても、前記第1実施形態における(1)〜(3)に記載の効果とほぼ同様の効果を得ることができる。
(第3実施形態)
次に、この発明を具体化したオイルセパレータの第3実施形態を、前記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0033】
さて、この第3実施形態においては、図5に示すように、ハウジング21がほぼ四角箱形状に形成されている。ハウジング21内において流入口22と流出口23との間には、第1経路24を構成する平板状のフィルタ25が一対の支持板28A,28Bにより支持されている。前記フィルタ25を支持する一方の支持板28Aには屈折部34が形成され、その屈折部34に第2経路26の穿孔27が形成されている。
【0034】
そして、この穿孔27の下流側の出口近傍に、フィルタ25の粗部25bが分離衝突部25cとして対向配置されている。フィルタ25は、第1経路24を含む大部分が密部25aで構成され、第2経路26における分離衝突部25cの部位が粗部25bで構成されている。従って、フィルタ25における粗部25bが穿孔27の出口に対向配置されている。
【0035】
よって、この第3実施形態においても、前記第1実施形態における(1)〜(3)に記載の効果とほぼ同様の効果を得ることができる。
(変更例)
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
【0036】
・ 図6及び図7に示すように、前記第1実施形態と同様な構成において、第2経路26の穿孔27を支持板28Aの端縁に形成した凹部により構成すること。このように構成した場合には、ハウジングの樹脂成形型にスライド機構を設ける必要がなくて、成形型を簡素化することができる。
【0037】
・ 図8に示すように、前記第1実施形態と同様の構成において、第2経路26の穿孔27を上流側の入口端部ほど下降傾斜するように形成すること。このように構成した場合には、穿孔27の内周面に付着したオイルが穿孔27の入口側に流出しやすくなって、そのオイルが穿孔27の出口側に流入するのを抑制することができる。
【0038】
・ 図9に示すように、前記第2実施形態と同様な構成において、円筒状のフィルタ25の先端内周に環状の凹部35を形成する。そして、この凹部35の内周面を、有底筒部33aに形成された第2経路26の穿孔27の下流側の出口近傍に対向配置すること。
【0039】
・ 図10に示すように、前記第3実施形態と同様な構成において、フィルタ25の端部に折曲部36を形成し、その折曲部36を第2経路26の穿孔27の下流側の出口近傍に対向配置すること。
【0040】
・ 図1に破線で示すように、支持板28Aのフィルタ25側に支持突起37を設け、支持板28Aとフィルタ25との間の空間を保持するように構成すること。
・ 第1実施形態において、穿孔27を支持板28Aの上下方向にフィルタ25に対向するように並べて複数形成すること。
【0041】
・ 各実施形態においてフィルタ25に粗密を設けることなく、全体を一様な密度で構成すること。
【符号の説明】
【0042】
21…ハウジング、22…流入口、23…流出口、24…第1経路、25…フィルタ、25a…密部、25b…粗部、25c…分離衝突部、26…第2経路、27…穿孔、29B,29C…邪魔板。
【技術分野】
【0001】
この発明は、内燃機関のクランク室と吸気通路との間に設けられ、オイルミスト含有ガスであるブローバイガスからオイルミストを分離するようにしたオイルセパレータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のオイルセパレータとしては、例えば図11に示すような構成が知られている。この従来構成では、ハウジング41内において、ブローバイガスの流入口42と流出口43との間に円筒状のフィルタ44が配置されている。このフィルタ44の上流側の開口端部が流入口42に連通されるとともに、下流側の開口端部が閉塞板45によって閉塞されている。そして、流入口42からハウジング41内に流入するブローバイガスが、フィルタ44を通して流出口43側に流れることにより、そのガス中からオイルミストがフィルタ44に捕捉されて分離される。
【0003】
ところが、この図11の従来構成では、ハウジング41内において、すべてのブローバイガスがフィルタ44を通して流れるため、フィルタ44に大量のオイルミストが捕捉されると、目詰まり状態となる。この状態においては、クランク室と吸気通路との間のガス通路が閉塞して、クランク室やガス通路内の圧力が高騰して、シール部分等からガス漏れやオイル漏れが生じるおそれがあった。
【0004】
このような問題に対処するため、フィルタ44を交換部品とすることも考えられる。しかしながら、このようにした場合には、フィルタ交換の手間が必要になるため、メンテナンスや部品のコストが上昇する。加えて、ハウジング41をフィルタ44の脱着が可能にした構成にしたり、内燃機関ルーム内においてオイルセパレータをメンテナンス可能な位置に設置したりする設計上及びレイアウト上の制約が生じる。
【0005】
また、図11の従来構成における問題に対処するため、例えば図12に示すような構成も提案されている。この従来構成においては、フィルタ44の下流側の開口端部を閉塞する閉塞板45に、リリーフバルブ46が設けられている。そして、フィルタ44が目詰まり状態になって、フィルタ44内の圧力が高騰したとき、リリーフバルブ46が開放されて、ブローバイガスがフィルタ44の内側から流出口43側に流出するようになっている。
【0006】
ところが、この図12の従来構成では、リリーフバルブ46を設けているため、部品点数が増加して、構成が複雑化する。また、リリーフバルブ46が開放されたときには、ブローバイガスがフィルタ44を通ることなく流れるため、大量のオイルミストが内燃機関側に流出する結果となる。さらに、リリーフバルブ46は通常時に閉鎖状態にあるとともに、ブローバイガスに晒されているため、リリーフバルブ46がカーボン等を含んだオイルの付着によって開放不能に陥りやすいという問題もあった。このように、リリーフバルブ46が開放不能になった場合は、前記のように、ガス通路閉塞にともなうガス漏れやオイル漏れが生じるおそれがある。
【0007】
一方、従来のオイルセパレータとしては、例えば特許文献1及び特許文献2に開示されるような構成も提案されている。特許文献1に記載の従来構成では、図13に示すように、ハウジング41内において、流入口42と対応する位置には捕集板47が配置され、その捕集板47の前面には多孔質材料層48が設けられている。そして、流入口42からハウジング41内に流入するブローバイガスが捕集板47に衝突することにより、ガスに含まれるオイルミストが捕集板47に捕捉される。このとき、捕集板47で捕捉できないオイルミストが多孔質材料層48に付着して捕捉される。
【0008】
また、特許文献2に記載の従来構成では、図14に示すように、ハウジング41内において、流入口42と対応する位置には第1流路管49が配置され、その第1流路管49内には邪魔板50及び第1フィルタ51が設けられている。また、ハウジング41内には第2流路管52がその入口をハウジング41の内部に開口した状態で配置され、その第2流路管52内には第1フィルタ51よりも圧力損失(以下、単に圧損という)の小さい複数の第2フィルタ53が設けられている。そして、流入口42からハウジング41内に流入するブローバイガスが第1流路管49内の第1フィルタ51を通過することにより、ガスに含まれる粒径の大きいオイルミストが分離される。また、ブローバイガスが第2流路管52内の第2フィルタ53を通過することにより、ガスに含まれる粒径の小さいオイルミストが分離される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平9−47617号公報
【特許文献2】特開平8−173740公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、これらの従来のオイルセパレータにおいては、次のような問題があった。
特許文献1に記載の従来構成では、捕集板47及び多孔質材料層48によって捕捉されなかったオイルミストが捕集板47の周側から流出口43側に流出する。このため、フィルタにブローバイガスを通してオイルミストを捕捉する方式と比較して、オイルセパレータの長期間の使用によって多孔質材料層48に大量のオイルが捕捉された状態においては、オイルミストの分離効率が良くないという問題があった。
【0011】
また、特許文献2に記載の従来構成では、邪魔板50及び第1フィルタ51を内部に設けた第1流路管49と、第2フィルタ53を内部に設けた第2流路管52とがハウジング41内に設置されているため、構造が複雑である。しかも、両フィルタ51,53が目詰まりした場合には、ハウジング内のガス通路が閉塞されるおそれがあり、このような場合には、前記のように、ガス漏れやオイル漏れが生じるおそれが生じるという問題があった。
【0012】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、オイルミストの分離効率を向上させることができるとともに、フィルタの目詰まり発生時にガス通路が閉塞されるおそれを抑制することができ、しかも構成が簡単なオイルセパレータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために、この発明は、内燃機関のクランク室と吸気通路とを連通するオイルミスト含有ガス通路上に設けられるオイルセパレータであって、ハウジングの流入口と流出口との間に、フィルタを通して連通する第1経路と、前記フィルタを通すことなく穿孔を通して連通する第2経路とを備え、前記第1経路の圧損を第2経路の圧損よりも低く設定するとともに、前記第2経路における穿孔の下流側の出口近傍には前記第1経路のフィルタの一部を分離衝突部として対向配置したことを特徴としている。
【0014】
従って、この発明のオイルセパレータにおいては、第1経路の圧損が第2経路の圧損よりも低く設定されていることで、通常時には流入口から流入するオイルミスト含有ガスが、第1経路中のフィルタを通して流れて、そのガスに含まれるオイルミストが分離捕捉される。また、フィルタに目詰まりが発生して、第1経路の圧損が第2経路の圧損よりも高くなった場合には、流入口から流入するオイルミスト含有ガスが、穿孔を通して第2経路に流れる。そして、ガスが穿孔の出口近傍に対向配置された分離衝突部としての第1経路のフィルタの一部に衝突することにより、そのガスに含まれるオイルミストが分離捕捉される。よって、第1経路及び第2経路にフィルタを別々に設ける必要がなく、構成を簡略化することができるとともに、1つのフィルタによりオイルミストを効率良く分離捕捉することができる。また、フィルタの目詰まり発生時には、ガス通路が閉塞したり、オイルミストが捕捉されることなく流出したりするおそれを抑制することができる。
【0015】
前記の構成において、前記フィルタはオイルミスト含有ガスの透過方向において密度が粗密となるように構成され、下流側が粗で上流側が密に形成されているとよい。
前記の構成において、前記穿孔の下流側の出口近傍にはフィルタの粗の部分が対向配置されているとよい。
【0016】
前記の構成において、前記フィルタは撥油処理されているとよい。
前記の構成において、前記流出口の上流側には、オイルミスト含有ガスが衝突する邪魔板が設けられているとよい。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、この発明によれば、オイルミストの分離効率を向上させることができるとともに、フィルタの目詰まり発生時にガス通路が閉塞されるおそれを抑制することができるという効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態におけるオイルセパレータを示す断面図。
【図2】図1の2−2線における断面図。
【図3】第2実施形態のオイルセパレータを示す断面図。
【図4】図3の4−4線における断面図。
【図5】第3実施形態のオイルセパレータを示す平断面図。
【図6】第1実施形態の変更例を示す部分断面図。
【図7】図6の7−7線における断面図。
【図8】第1実施形態の別の変更例を示す部分断面図。
【図9】第2実施形態の変更例を示す断面図。
【図10】第3実施形態の変更例を示す平断面図。
【図11】従来のオイルセパレータの一構成を示す断面図。
【図12】従来のオイルセパレータの他の構成を示す断面図。
【図13】従来のオイルセパレータの別の構成を示す断面図。
【図14】従来のオイルセパレータのさらに別の構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1実施形態)
以下に、この発明を具体化したオイルセパレータの第1実施形態を図1及び図2に従って説明する。
【0020】
この実施形態のオイルセパレータにおいては、ハウジング21が四角箱状に形成されている。ハウジング21の一側端部には、内燃機関のクランク室に連通する流入口22が形成されている。ハウジング21の他側端部には、内燃機関の吸気通路に接続した流出口23が形成されている。そして、内燃機関の運転時には、前記吸気通路内の負圧により、オイルミスト含有ガスであるブローバイガスがクランク室から流入口22を介してハウジング21内に流入し、後述のように、オイルミストが分離されて、流出口23から内燃機関の吸気通路に向かって流出する。
【0021】
図1及び図2に示すように、前記ハウジング21内において流入口22と流出口23との間には、フィルタ25を通して連通する第1経路24と、フィルタ25を通すことなく小径の穿孔27を通して連通する第2経路26とが設けられている。ハウジング21内には、フィルタ25を支持するための一対の支持板28A,28B、及び両経路24,26を屈曲形状に形成するための複数の邪魔板29A,29B,29Cが形成されている。フィルタ25は不織布等により襞折り状に形成され、そのフィルタ繊維には撥油処理が施されている。この撥油処理は、繊維表面に撥油コーティングや撥油への改質を施したり、あるいは繊維を撥油性の材質によって構成したりして実現される。同様に撥水処理を併せて施すことにより、ブローバイガス中に含まれる水分を分離することもできる。また、フィルタ25は、第1経路24におけるオイルミスト含有ガスの透設方向、すなわちフィルタ25の厚さ方向に密部25aと粗部25bにより密度の粗密が形成されるように構成され、上流側が密で下流側が粗に形成されている。
【0022】
図1及び図2に示すように、前記第2経路26の穿孔27は、フィルタ25を支持するための一方(上流側)の支持板28Aに形成されている。そして、この穿孔27の開口径及び形成個数を調整することにより、第1経路24の圧損(圧力損失)が第2経路26の圧損よりも低くなるように設定されている。第2経路26における穿孔27の下流側の出口近傍には、前記第1経路24のフィルタ25の一部である襞の側壁が分離衝突部(インパクタ)25cとして対向配置され、オイルミスト含有ガスが穿孔27を通過して分離衝突部25cに当たり、そこでオイルミストが分離されるようになっている。この場合、フィルタ25における粗部25bが穿孔27の出口に対向配置されている。
【0023】
次に、前記のように構成されたオイルセパレータの作用を説明する。
以上のように構成されたオイルセパレータにおいて、内燃機関が運転されると、ブローバイガスが流入口22からハウジング21内に流入する。このとき、第1経路24の圧損が第2経路26の圧損よりも低くなるように設定されているため、流入口22から流入するブローバイガスは、第1経路24側に流れて、不織布からなるフィルタ25を通り抜ける。そして、そのガスに含まれるオイルミストが、フィルタ25によって捕捉されて、ブローバイガスから分離される。
【0024】
この場合、フィルタ25の繊維に撥油処理が施されている。そのため、フィルタ25で分離捕捉されたオイルミストは、フィルタ繊維にあまり付着保持されることなく、フィルタ25上からハウジング21の内底部に落下して、オイル排出孔30からシリンダヘッド側に排出される。よって、オイルセパレータの短期間の使用において、フィルタ25に目詰まりを発生するおそれはない。
【0025】
また、オイルセパレータの長期間の使用に伴って、フィルタ25に目詰まりが発生すると、第1経路24の圧損が第2経路26の圧損よりも高くなる。この状態で、エンジンが運転されると、流入口22から流入するオイルミスト含有ガスが第2経路26側に流れる。そして、第2経路26において小径の穿孔27から高速で流出するオイルミスト含有ガスが、分離衝突部25cとしての第1経路24のフィルタ25の粗部25bに衝突することにより、ガスに含まれるオイルミストが分離捕捉される。
【0026】
このように、第1経路24側のフィルタ25に目詰まりが発生した場合には、オイルミスト含有ガスの流路が第2経路26側に切り換えられ、第1経路24のフィルタ25の一部を用いてオイルミストの分離捕捉が続行される。よって、フィルタ25の目詰まりによりガス通路が閉塞されたり、オイルミストが捕捉されないまま流出したりするおそれをなくすことができる。また、第1経路24のフィルタ25を脱着交換する必要もない。
【0027】
従って、この実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)このオイルセパレータでは、ハウジング21内において流入口22と流出口23との間に、フィルタ25を通して連通する第1経路24と、フィルタ25を通すことなく小径の穿孔27を通して連通する第2経路26とが設けられている。この場合、第1経路24の圧損が第2経路26の圧損よりも低くなるように設定されている。第2経路26における穿孔27の下流側の出口近傍には、第1経路24のフィルタ25の粗部25bが分離衝突部25cとして対向配置されている。
【0028】
このため、通常時には第1経路24の圧損が第2経路26の圧損よりも低く設定されていることで、流入口22から流入するオイルミスト含有ガスが、第1経路24中のフィルタ25を通して流れて、そのガスに含まれるオイルミストが分離捕捉される。また、フィルタ25に目詰まりが発生して、第1経路24の圧損が第2経路26の圧損よりも高くなった場合には、流入口22から流入するオイルミスト含有ガスが、小径の穿孔27を通して第2経路26に流れる。そして、ガスが穿孔27の出口近傍に対向配置された第1経路24の分離衝突部25cに衝突することにより、そのガスに含まれるオイルミストが分離捕捉される。
【0029】
よって、第1経路24及び第2経路26にフィルタを別々に設ける必要がなく、構成を簡略化することができるとともに、1つのフィルタ25によりオイルミストを効率良く分離捕捉することができる。また、フィルタ25の目詰まり発生時には、ガス通路が閉塞したり、オイルミストが捕捉されることなく流出したりするおそれを抑制することができる。従って、オイルセパレータをメンテナンスフリーにすることが可能である。
(2)このオイルセパレータでは、フィルタ25がオイルミスト含有ガスの透過方向において密度が粗密となるように構成され、下流側が粗部25bで上流側が密部25aに形成されている。このため、第1経路24において粒子径の大小にかかわらずオイルミストを有効に分離捕捉することができる。
(3)このオイルセパレータでは、フィルタ25のガス透過方向における上流側の密度が密、下流側の密度が粗に形成されている。従って、前記穿孔27の出口においてはフィルタ25の粗部25bが対向配置されている。このため、穿孔27からのガスがフィルタ25の分離衝突部25cに衝突して、オイルミストが分離捕捉される際に、フィルタ25の粗部25bに捕捉されるとともに、密部25aに当たって分離され、オイルミストを効率良く分離捕捉することができる。この状態では、フィルタ25の密部25aがオイルを含んで板面に近くなっている。従って、密部25aがインパクタとして有効に機能し、分離効率が高い。
(4)このオイルセパレータでは、前記フィルタ25のフィルタ繊維に撥油処理が施されている。このため、フィルタ25で分離捕捉されたオイルミストが、フィルタ繊維にあまり付着保持されることなく、フィルタ25上からはじかれて落下する。よって、フィルタ25を、長期間にわたって目詰まりが生じることなく使用することができる。
(5)このオイルセパレータでは、前記流出口23の上流側にオイルミスト含有ガスが衝突する邪魔板29B,29Cが設けられている。このため、第2経路26を流れるガスが邪魔板29B,29Cに当たってその表面で液滴化し、オイルミストを効果的に分離捕捉することができる。
(第2実施形態)
次に、この発明を具体化したオイルセパレータの第2実施形態を、前記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0030】
さて、この第2実施形態においては、図3及び図4に示すように、ハウジング21が両側端部を閉塞した円筒状に形成され、その一側端部に流入口22が形成されるとともに、他側端部に流出口23が形成されている。ハウジング21の内部には開口33bを有する枠体33がハウジング21の軸線方向に延びるように一体形成され、その下流側は有底筒部33aとなっている。該有底筒部33aの周壁には周方向に90度間隔をおいて穿孔27が形成されている。有底筒部33aの周壁の穿孔27より下流側の外周面には支持突起37が設けられている。
【0031】
前記フィルタ25は枠体33の外周に支持されるとともに、その下流側は支持突起37に支持されている。第1経路24を含むフィルタ25の大部分は密部25aで構成され、第2経路26における分離衝突部25c側において穿孔27と対向する位置には粗部25bが形成されている。すなわち、フィルタ25における粗部25bが穿孔27の出口に対向配置され、オイルミストが分離捕捉される際に、フィルタ25の粗部25bで捕捉されるとともに、密部25aに当たって液滴となり落下しやすくなっている。
【0032】
従って、この第2実施形態においても、前記第1実施形態における(1)〜(3)に記載の効果とほぼ同様の効果を得ることができる。
(第3実施形態)
次に、この発明を具体化したオイルセパレータの第3実施形態を、前記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0033】
さて、この第3実施形態においては、図5に示すように、ハウジング21がほぼ四角箱形状に形成されている。ハウジング21内において流入口22と流出口23との間には、第1経路24を構成する平板状のフィルタ25が一対の支持板28A,28Bにより支持されている。前記フィルタ25を支持する一方の支持板28Aには屈折部34が形成され、その屈折部34に第2経路26の穿孔27が形成されている。
【0034】
そして、この穿孔27の下流側の出口近傍に、フィルタ25の粗部25bが分離衝突部25cとして対向配置されている。フィルタ25は、第1経路24を含む大部分が密部25aで構成され、第2経路26における分離衝突部25cの部位が粗部25bで構成されている。従って、フィルタ25における粗部25bが穿孔27の出口に対向配置されている。
【0035】
よって、この第3実施形態においても、前記第1実施形態における(1)〜(3)に記載の効果とほぼ同様の効果を得ることができる。
(変更例)
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
【0036】
・ 図6及び図7に示すように、前記第1実施形態と同様な構成において、第2経路26の穿孔27を支持板28Aの端縁に形成した凹部により構成すること。このように構成した場合には、ハウジングの樹脂成形型にスライド機構を設ける必要がなくて、成形型を簡素化することができる。
【0037】
・ 図8に示すように、前記第1実施形態と同様の構成において、第2経路26の穿孔27を上流側の入口端部ほど下降傾斜するように形成すること。このように構成した場合には、穿孔27の内周面に付着したオイルが穿孔27の入口側に流出しやすくなって、そのオイルが穿孔27の出口側に流入するのを抑制することができる。
【0038】
・ 図9に示すように、前記第2実施形態と同様な構成において、円筒状のフィルタ25の先端内周に環状の凹部35を形成する。そして、この凹部35の内周面を、有底筒部33aに形成された第2経路26の穿孔27の下流側の出口近傍に対向配置すること。
【0039】
・ 図10に示すように、前記第3実施形態と同様な構成において、フィルタ25の端部に折曲部36を形成し、その折曲部36を第2経路26の穿孔27の下流側の出口近傍に対向配置すること。
【0040】
・ 図1に破線で示すように、支持板28Aのフィルタ25側に支持突起37を設け、支持板28Aとフィルタ25との間の空間を保持するように構成すること。
・ 第1実施形態において、穿孔27を支持板28Aの上下方向にフィルタ25に対向するように並べて複数形成すること。
【0041】
・ 各実施形態においてフィルタ25に粗密を設けることなく、全体を一様な密度で構成すること。
【符号の説明】
【0042】
21…ハウジング、22…流入口、23…流出口、24…第1経路、25…フィルタ、25a…密部、25b…粗部、25c…分離衝突部、26…第2経路、27…穿孔、29B,29C…邪魔板。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関のクランク室と吸気通路とを連通するオイルミスト含有ガス通路上に設けられ、ハウジングの流入口から流入したオイルミスト含有ガス中のオイルを分離して流出口から流出させるように構成したオイルセパレータであって、
前記流入口と流出口との間に、フィルタを通して連通する第1経路と、前記フィルタを通すことなく穿孔を通して連通する第2経路とを備え、前記第1経路の圧損を第2経路の圧損よりも低く設定するとともに、前記第2経路における穿孔の下流側の出口近傍には前記第1経路のフィルタの一部を分離衝突部として対向配置したことを特徴とするオイルセパレータ。
【請求項2】
前記フィルタはオイルミスト含有ガスの透過方向において密度が粗密となるように構成され、下流側が粗で上流側が密に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のオイルセパレータ。
【請求項3】
前記穿孔の下流側の出口近傍にはフィルタの粗の部分が対向配置されていることを特徴とする請求項2に記載のオイルセパレータ。
【請求項4】
前記フィルタは撥油処理されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のオイルセパレータ。
【請求項5】
前記流出口の上流側には、オイルミスト含有ガスが衝突する邪魔板が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のオイルセパレータ。
【請求項1】
内燃機関のクランク室と吸気通路とを連通するオイルミスト含有ガス通路上に設けられ、ハウジングの流入口から流入したオイルミスト含有ガス中のオイルを分離して流出口から流出させるように構成したオイルセパレータであって、
前記流入口と流出口との間に、フィルタを通して連通する第1経路と、前記フィルタを通すことなく穿孔を通して連通する第2経路とを備え、前記第1経路の圧損を第2経路の圧損よりも低く設定するとともに、前記第2経路における穿孔の下流側の出口近傍には前記第1経路のフィルタの一部を分離衝突部として対向配置したことを特徴とするオイルセパレータ。
【請求項2】
前記フィルタはオイルミスト含有ガスの透過方向において密度が粗密となるように構成され、下流側が粗で上流側が密に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のオイルセパレータ。
【請求項3】
前記穿孔の下流側の出口近傍にはフィルタの粗の部分が対向配置されていることを特徴とする請求項2に記載のオイルセパレータ。
【請求項4】
前記フィルタは撥油処理されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のオイルセパレータ。
【請求項5】
前記流出口の上流側には、オイルミスト含有ガスが衝突する邪魔板が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のオイルセパレータ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−12987(P2012−12987A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−149918(P2010−149918)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】
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