説明

オイルポンプシステム

【課題】 レギュレータバルブからオイルパンに戻る潤滑油の流量を抑制する手段を提供する。
【解決手段】 オイルポンプシステムは、潤滑油を貯留するオイルパンと、オイルポンプと、リリーフバルブと、オイルクーラーと、レギュレータバルブとを備える。オイルポンプは、エンジンの動力によって、オイルパンから潤滑油を吸い上げる。リリーフバルブは、オイルポンプの吐出流量を調整する。オイルクーラーは、オイルポンプから供給された潤滑油を冷却する。レギュレータバルブは、オイルクーラーを通過した潤滑油をオイルパンに戻す。そして、リリーフバルブは、レギュレータバルブの作動圧以上で、かつエンジンが高回転時のときにレギュレータバルブからの吐出流量が閾値以下となる条件で開弁する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オイルポンプシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、エンジンなどに含まれる機構の摩擦や摩耗を抑制するために、これらの機構の摺動部分に潤滑油を供給するオイルポンプが車両に設けられている。かかるオイルポンプによって吸い上げられた潤滑油は、オイルクーラーで冷却された後、オイルギャラリーを介して各部に供給される。なお、低温時等の過大な油圧からオイルポンプを保護するために、オイルポンプの下流側の流路にはリリーフバルブが設けられている。
【0003】
また、上記のオイルポンプはエンジンの動力で駆動するため、エンジンの高回転時にはオイルポンプの吐出性能が過剰となる。そのため、オイルポンプからの流路には、オイルポンプが過剰に吸い上げた潤滑油をオイルパンに戻すレギュレータバルブが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭58−77955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、オイルクーラーにレギュレータバルブが設けられる場合、レギュレータバルブから戻る潤滑油が空気を抱き込んでしまうことがある。そのため、レギュレータバルブからオイルパンに戻る潤滑油が多くなると、オイルパンの潤滑油の泡立ちが多くなることから、オイルポンプから供給される潤滑油の圧力が不安定となり、機構の潤滑不良につながるおそれもある。
【0006】
上記事情に鑑み、レギュレータバルブからオイルパンに戻る潤滑油の流量を抑制する手段を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面のオイルポンプシステムは、潤滑油を貯留するオイルパンと、オイルポンプと、リリーフバルブと、オイルクーラーと、レギュレータバルブとを備える。オイルポンプは、エンジンの動力によって、オイルパンから潤滑油を吸い上げる。リリーフバルブは、オイルポンプの吐出流量を調整する。オイルクーラーは、オイルポンプから供給された潤滑油を冷却する。レギュレータバルブは、オイルクーラーを通過した潤滑油をオイルパンに戻す。そして、リリーフバルブは、レギュレータバルブの作動圧以上で、かつエンジンが高回転時のときにレギュレータバルブからの吐出流量が閾値以下となる条件で開弁する。
【0008】
上記のオイルポンプシステムにおいて、リリーフバルブは、エンジンの回転数が常用域にあるときに開弁するものであってもよい。
【発明の効果】
【0009】
レギュレータバルブの作動圧以上で、かつエンジンが高回転時のときにレギュレータバルブからの吐き出し流量が閾値以下となる条件でリリーフバルブを開弁させる。これにより、レギュレータバルブからオイルパンに戻る潤滑油の流量が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】一の実施形態のオイルポンプシステムの構成例を示す図
【図2】エンジン内でのオイルポンプシステムの要素の配置例を示す図
【図3】一の実施形態でのオイルポンプの吐出圧とエンジン回転数との対応関係の例を示すグラフ
【図4】一の実施形態でのレギュレータバルブからの潤滑油の吐出流量とエンジン回転数との対応関係の例を示すグラフ
【図5】従来のオイルポンプシステム(比較例)でのリリーフバルブの感知圧およびオイルギャラリーでの油圧を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
<一の実施形態の説明>
図1は、一の実施形態のオイルポンプシステムの構成例を示す図である。一の実施形態のオイルポンプシステムは、例えばトラックなどの車両のエンジン部分に搭載されるものであって、エンジンのピストン、シリンダヘッドおよびクランクシャフトや、エアブレーキ用のエアコンプレッサーに潤滑油を供給する役目を果たす。なお、図2は、エンジン内でのオイルポンプシステムの要素の配置例を示している。
【0012】
オイルポンプシステムは、潤滑油を貯留するオイルパン1と、オイルポンプ2と、リリーフバルブ3と、オイルクーラー4と、レギュレータバルブ5と、オイルフィルタ6と、オイルギャラリー7とを備えている。
【0013】
オイルパン1は、例えば、エンジンのシリンダブロック8の下方に配置されている。オイルポンプ2は、エンジンの動力によって、ストレーナー9を介してオイルパン1から潤滑油を吸い上げる。このオイルポンプ2の下流側の流路には、リリーフバルブ3が設けられている。リリーフバルブ3は、低温時等の過大な油圧からオイルポンプ2を保護するために、オイルポンプ2の吐き出し流量を調整する。ここで、リリーフバルブ3の開弁時には、リリーフバルブ3から分岐する管路3aを経て潤滑油の一部がオイルパン1に再び戻される。なお、一の実施形態でのリリーフバルブ3の開弁圧については後述する。
【0014】
オイルポンプ2からの流路は、オイルポンプ2から供給された潤滑油を冷却するオイルクーラー4に接続されている。このオイルクーラー4は、例えば、エンジンのシリンダブロック8に隣接して配置されている。また、オイルクーラー4からの流路は2つに分岐し、一方の流路はオイルの濾過を行うオイルフィルタ6に接続されている。オイルフィルタ6の下流側の流路は、エンジン等の各部に潤滑油を分配するオイルギャラリー7と接続されている。
【0015】
また、オイルクーラー4からの他方の流路は、レギュレータバルブ5に接続されている。レギュレータバルブ5は、例えば、オイルクーラー4に隣接して配置されており、オイルフィルタ6の下流側の流路での潤滑油の圧力が一定以上となったときに開弁する。ここで、レギュレータバルブ5の開弁時には、レギュレータバルブ5から潤滑油がシリンダブロック8内に吹き出される。そして、レギュレータバルブ5から吹き出した潤滑油は、空気を巻き込みつつ、シリンダブロック8の下方に位置するオイルパン1に戻ることとなる。
【0016】
ここで、レギュレータバルブ5からオイルパン1に戻る潤滑油が多くなると、オイルパン1の潤滑油の泡立ちも多くなる。そこで、一の実施形態では、レギュレータバルブ5の作動圧以上で、エンジンが高回転時のときにレギュレータバルブ5からの吐き出し流量が閾値以下となるように、予めリリーフバルブ3から潤滑油を戻すようにする。
【0017】
一例として、一の実施形態でのリリーフバルブ3の動作例を説明する。図3は、一の実施形態でのオイルポンプ2の吐出圧とエンジン回転数との対応関係の例を示すグラフであって、縦軸がオイルポンプ2の吐出圧、横軸がエンジン回転数を示している。一の実施形態の例では、エンジン回転数が1000rpm程度、オイルポンプ2の吐出圧が400kPa程度のときにレギュレータバルブ5が開弁する。これにより、レギュレータバルブ5から一部の潤滑油がオイルパン1に戻るので、エンジン回転数の増加に対するオイルポンプ2の吐出圧の増加は緩やかになる。
【0018】
そして、一の実施形態では、エンジンの常用域であるエンジン回転数が2000rpm程度、オイルポンプ2の吐出圧が600kPa程度のときにリリーフバルブ3が開弁する。これにより、リリーフバルブ3から一部の潤滑油がオイルパン1に戻るので、エンジン回転数の増加に対するオイルポンプ2の吐出圧の増加はさらに緩やかになる。
【0019】
また、図4は、一の実施形態でのレギュレータバルブ5からの潤滑油の吐出流量とエンジン回転数との対応関係の例を示すグラフであって、縦軸がレギュレータバルブ5からの潤滑油の吐出流量、横軸がエンジン回転数を示している。上記のように、一の実施形態の例では、エンジン回転数が1000rpm程度でレギュレータバルブ5が開弁し、レギュレータバルブ5から潤滑油が吐き出されるようになる。そして、リリーフバルブ3が開弁するまで、レギュレータバルブ5からの潤滑油の吐出流量はエンジン回転数の増加に比例して上昇する。その後、エンジン回転数が2000rpmのときにリリーフバルブ3が開弁すると、レギュレータバルブ5よりも上流側で潤滑油の一部がオイルパン1に戻るので、レギュレータバルブ5での潤滑油の吐出流量の増加が緩やかになる。
【0020】
これにより、一の実施形態では、レギュレータバルブ5での吐出流量を閾値Th以下に抑制できる。なお、上記の閾値Thは、潤滑油のエア含有量が許容範囲となる値を実験的に求めて設定すればよい。
【0021】
そして、一の実施形態では、レギュレータバルブ5からオイルパン1に戻る油量が減少することで、オイルパン1の潤滑油に含まれる気泡も少なくなり、オイルポンプ2から供給される潤滑油の圧力はより安定する。また、一の実施形態では、エンジンの高回転時におけるオイルポンプ2の消費馬力も低減させることができる。
【0022】
なお、図5は、比較例として、従来のオイルポンプシステムでのリリーフバルブの感知圧およびオイルギャラリーでの油圧を示す。一般的なリリーフバルブは、作動圧が1.2MPa程度に設定されている。図5に示すように、エンジン回転数が2500rpmのとき、リリーフバルブの感知圧は700kPa程度である。そのため、比較例では、エンジン回転数が常用域の範囲であってもリリーフバルブは動作しないことが分かる。そのため、比較例のオイルポンプシステムでは、オイルギャラリーの油圧はレギュレータバルブの動作で低下させるので、エンジンが高回転になるほどレギュレータバルブからの吐出流量も大きくなる。そして、エンジンの高回転時にはオイルパンの潤滑油の泡立ちも多くなってしまう。
【0023】
以上の詳細な説明により、実施形態の特徴点および利点は明らかになるであろう。これは、特許請求の範囲が、その精神および権利範囲を逸脱しない範囲で前述のような実施形態の特徴点および利点にまで及ぶことを意図する。また、当該技術分野において通常の知識を有する者であれば、あらゆる改良および変更に容易に想到できるはずであり、発明性を有する実施形態の範囲を前述したものに限定する意図はなく、実施形態に開示された範囲に含まれる適当な改良物および均等物によることも可能である。
【符号の説明】
【0024】
1…オイルパン、2…オイルポンプ、3…リリーフバルブ、4…オイルクーラー、5…レギュレータバルブ、6…オイルフィルタ、7…オイルギャラリー、8…シリンダブロック、9…ストレーナー


【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑油を貯留するオイルパンと、
エンジンの動力によって、前記オイルパンから前記潤滑油を吸い上げるオイルポンプと、
前記オイルポンプの吐出流量を調整するリリーフバルブと、
前記オイルポンプから供給された前記潤滑油を冷却するオイルクーラーと、
前記オイルクーラーを通過した前記潤滑油を前記オイルパンに戻すレギュレータバルブと、を備え、
前記リリーフバルブは、前記レギュレータバルブの作動圧以上で、かつ前記エンジンが高回転時のときに前記レギュレータバルブからの吐出流量が閾値以下となる条件で開弁するオイルポンプシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のオイルポンプシステムにおいて、
前記リリーフバルブは、前記エンジンの回転数が常用域にあるときに開弁するオイルポンプシステム。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−127322(P2012−127322A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−281801(P2010−281801)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(000003908)UDトラックス株式会社 (1,028)
【Fターム(参考)】