説明

オイルミストセパレータ

【課題】オイルミストの捕捉効率を向上させることができると共に、フィルタの圧損を低減させることができ、さらにフィルタの目詰まりを抑制してその寿命を延長させることができるオイルミストセパレータを提供する。
【解決手段】オイルミスト20を含むブローバイガスからオイルミスト20を分離するためのハウジング12にはブローバイガスの流入口13及び流出口14が設けられ、流入口13から流出口14へブローバイガスが流れるガス流路15が形成されている。ブローバイガス中に含まれるオイルミスト20を分離するための上流側の第1フィルタ21及び下流側の第2フィルタ23がガス流路15を横切るように固定されている。第1フィルタ21の上流側には、事前に粒子径の大きいオイルミスト20aと粒子径の小さいオイルミスト20bに分離する事前分離手段としてのノズル体16が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばエンジンのシリンダヘッドカバー上に設けられたハウジング内において、ブローバイガス流路中のブローバイガスに含まれるオイルミストを油滴化して除去するためのオイルミストセパレータに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のエンジンの作動中に発生するブローバイガスがオイルミストを含んだまま吸気系統に還流されると、オイルが消費されるだけではなく、オイルミストがスロットルや吸気バルブなどの吸気系部品に付着、堆積し、不具合の原因となるおそれがある。そのため、オイルミストセパレータでオイルミストが除去され、ガス分のみがエンジンの負圧を利用してインテークマニホールド等の吸気路に還流されて燃焼されるようにしている。この種のオイルミストセパレータとしては、ブローバイガス流路にフィルタを配置し、該フィルタによってブローバイガス中のオイルミストを除去するフィルタ式のオイルミストセパレータが知られている。
【0003】
例えば、排気ガス中のパティキュレート物質を捕集しかつ電圧印加可能な第1フィルタをハウジング内に配設し、該第1フィルタの下流に同様の第2フィルタを配設し、第1フィルタと第2フィルタとは極性が異なる電位差が印加されるように構成されたディーゼルパティキュレートフィルタが知られている(特許文献1を参照)。該ディーゼルパティキュレートフィルタによれば、パティキュレート物質が第1フィルタを通過することによって負に帯電され、そのパティキュレート物質が正に帯電された第2フィルタで捕集され、捕集効率を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−182524号公報(第2頁及び第4頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1に記載のディーゼルパティキュレートフィルタにおいては、パティキュレート物質は第1フィルタを通過することにより負に帯電された後、正に帯電された第2フィルタを通過するように構成されている。ところで、被濾過物であるパティキュレート物質は、複数の粒子径、複数の電荷等の物性の異なるものが集合して形成されている。しかしながら、特許文献1に記載のパティキュレート物質は同じ第2フィルタで濾過されている。このため、被濾過物の捕捉効率が次第に低下すると共に、フィルタには目詰まりが生じやすく、フィルタの寿命が短くなる上に、圧損も発生するという問題があった。
【0006】
そこで、本発明の目的とするところは、オイルミストの捕捉効率を向上させることができると共に、フィルタの目詰まりを抑制して圧損を低減させることができ、さらにフィルタの寿命を延長させることができるオイルミストセパレータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明のオイルミストセパレータは、オイルミスト含有ガスに含まれるオイルミストを分離するためのハウジングにはオイルミスト含有ガスの流入口及び流出口を設け、流入口から流出口へオイルミスト含有ガスが流れる流路を形成し、オイルミスト含有ガス中に含まれるオイルミストを分離するフィルタを該流路を横切るように固定して構成されている。そして、前記フィルタの上流側にはオイルミストの物性に応じて事前にオイルミストを複数に分離する事前分離手段を備え、該事前分離手段により事前分離された各オイルミストをそれぞれに適したフィルタで捕捉するように構成することを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明のオイルミストセパレータは、請求項1に係る発明において、前記事前分離手段はオイルミストの慣性力を利用して粒子径の大きいオイルミストと粒子径の小さいオイルミストとを事前分離するものであり、事前分離された粒子径の大きいオイルミストは濾目の粗いフィルタで捕捉し、事前分離された粒子径の小さいオイルミストは濾目の細かいフィルタで捕捉するように構成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明のオイルミストセパレータ用のフィルタは、請求項1に係る発明において、前記事前分離手段は正電荷及び負電荷を印加してカーボンを含むオイルミストとカーボンを含まないオイルミストとを事前分離するものであり、事前分離されたカーボンを含むオイルミストはカーボンを分離するフィルタで捕捉し、事前分離されたカーボンを含まないオイルミストはオイルを分離するフィルタで捕捉するように構成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明のオイルミストセパレータは、請求項3に係る発明において、前記正電荷はハウジングの底壁側の部分に印加され、負電荷はハウジングの上壁側の部分に印加されるように構成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明のオイルミストセパレータは、請求項1に係る発明において、前記事前分離手段はオイルミストの流速を変化させて粒子径の大きいオイルミストと粒子径の小さいオイルミストとを事前分離するものであり、事前分離された粒子径の大きいオイルミストは濾目の粗いフィルタで捕捉し、事前分離された粒子径の小さいオイルミストは濾目の細かいフィルタで捕捉するように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、次のような効果を発揮することができる。
本発明のオイルミストセパレータにおいては、フィルタの上流側にオイルミストの物性に応じて事前にオイルミストを複数に分離する事前分離手段が設けられている。このため、該事前分離手段によりオイルミストの粒子径、電荷等の物性に応じて各オイルミストを事前分離することができる。その後、事前分離された各オイルミストをそれぞれに適したフィルタで捕捉することができる。
【0013】
従って、本発明によれば、オイルミストの捕捉効率を向上させることができると共に、フィルタの目詰まりを抑制して圧損を低減し、さらにフィルタの寿命を延長させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1実施形態におけるオイルミストセパレータを示す縦断面図。
【図2】図1の2−2線における断面図であって、オイルミストセパレータを示す横断面図。
【図3】第2実施形態のオイルミストセパレータを示す要部断面図。
【図4】第3実施形態のオイルミストセパレータを示す要部断面図。
【図5】本発明の別例のオイルミストセパレータを示す要部断面図。
【図6】本発明のさらに別例のオイルミストセパレータを示す要部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化したオイルミストセパレータの第1実施形態を図1及び図2に基づいて詳細に説明する。
【0016】
図1及び図2に示すように、エンジンのシリンダブロックに設けられたシリンダヘッドカバー10上には、ブローバイガス中のオイルミストからオイルを回収するオイルミストセパレータ11が設けられている。該オイルミストセパレータ11のハウジング12は四角筒状に形成され、その底壁12aにはブローバイガスが導入される流入口13が設けられると共に、上壁12bにはブローバイガスが排気される流出口14が設けられている。そして、エンジンの吸気圧を利用してハウジング12内では図中矢印で示すように流入口13から流出口14に向かってブローバイガスが流れるガス流路15が形成されている。なお、ハウジング12の底壁12aはシリンダヘッドカバー10と一体的に形成されている。
【0017】
前記ハウジング12内の流入口13と流出口14との間には、事前分離手段を構成するほぼテーパ状のノズル体16が配設されている。該ノズル体16を構成するテーパ壁17はガス流路15方向の前方に向かって縮径されている。このノズル体16の下流側端部の位置には仕切り壁19が上壁12bと底壁12aとの間においてガス流路15と直交するように支持されている。該ノズル体16の下流側端部には多数の貫通孔18が形成されている。このノズル体16によりオイルミスト20を含むガス流がガス流路15の中心部に集められて流速が速められ、貫通孔18を通ることにより流速がさらに速められるようになっている。
【0018】
ノズル体16の下流側位置には粒子径の大きいオイルミスト20aを衝突させて捕捉するための不織布よりなる第1フィルタ21が、ノズル体16の貫通孔18の形成部位と対向するように配置されている。そして、後述のように、貫通孔18を通過した粒子径の大きいオイルミスト20aがその慣性力によって第1フィルタ21に衝突し、捕捉されるように構成されている。第1フィルタ21の外周部とハウジング12の上壁12b及び底壁12aとの間には、第1フィルタ21で捕捉されなかった粒子径の小さいオイルミスト20bを含むガス流が通過する通路22が形成されている。
【0019】
第1フィルタ21の下流側位置には粒子径の小さいオイルミスト20bを捕捉するための第2フィルタ23が上壁12bと底壁12aとの間にガス流路15全体を横切るように配設されている。そして、前記貫通孔18を通過し、第1フィルタ21の周囲へ流れ通路22を経て第2フィルタ23に到った粒子径の小さいオイルミスト20bがこの第2フィルタ23に捕捉されるように構成されている。第2フィルタ23より下流側の底壁12aには、円孔状のオイル排出孔24が貫通形成されている。
【0020】
次に、上記のように構成されたオイルミストセパレータ11について作用を説明する。
さて、エンジンの吸気圧によりハウジング12の流入口13からハウジング12内へ導入されたブローバイガスはガス流路15に沿って下流へ流れ、ノズル体16に到る。このノズル体16においては、粒子径の大きいオイルミスト20a及び粒子径の小さいオイルミスト20bは共にテーパ壁17によりガス流の中心部へ集められ、その流速が速められた状態で仕切り壁19の貫通孔18を通過する。このとき、粒子径の大きいオイルミスト20aはその慣性力が大きいためガス流路15方向に沿って直線的に進行し、その前方の第1フィルタ21に衝突する。第1フィルタ21は濾目の粗いフィルタで構成されていることから、粒子径の大きいオイルミスト20aは第1フィルタ21に同第1フィルタ21が目詰まりを起こすことなく、付着して捕捉され、油滴化される。
【0021】
一方、粒子径の小さいオイルミスト20bは慣性力が小さいため、仕切り壁19の貫通孔18を通過した後、ガス流に乗って上下に拡散され、第1フィルタ21の上下の通路22を通過し、その下流に位置する第2フィルタ23に到る。第2フィルタ23は濾目の細かいフィルタで構成されていることから、粒子径の小さいオイルミスト20bは第2フィルタ23に付着して捕捉され、そこで油滴化される。
【0022】
そして、このように油滴化されたオイルは自重により第1フィルタ21及び第2フィルタ23の繊維表面を伝って下降し、第1フィルタ21及び第2フィルタ23の下端部からハウジング12の底壁12a上に溜まる。底壁12a上に溜まったオイルはブローバイガスの風圧によって下流側へ流されてオイル排出孔24から排出される。一方、第2フィルタ23を通過したブローバイガスはオイルミスト20が除去された状態で流出口14から排気され、インテークマニホールドに還流されて燃焼される。
【0023】
以上の第1実施形態により発揮される効果について以下にまとめて記載する。
(1) 本第1実施形態のオイルミストセパレータ11によれば、第1フィルタ21の上流側にはオイルミスト20の物性に応じて事前にオイルミスト20を2つに分離する事前分離手段としてのノズル体16及び貫通孔18が設けられている。このため、該ノズル体16及び貫通孔18により粒子径の異なるオイルミスト20を事前分離することができ、その後事前分離されたオイルミスト20をそれぞれに適したフィルタで捕捉することができる。
【0024】
すなわち、ノズル体16及び貫通孔18により、オイルミスト20の慣性力の差を利用して粒子径の大きいオイルミスト20aと粒子径の小さいオイルミスト20bとを事前分離することができる。そして、事前分離された粒子径の大きいオイルミスト20aは濾目の粗い目詰まりしにくい第1フィルタ21で捕捉され、事前分離された粒子径の小さいオイルミスト20bは濾目の細かい捕捉能力の高い第2フィルタ23で捕捉される。
【0025】
よって、オイルミスト20をそれに適したフィルタによって捕捉できるため、オイルミスト20の捕捉効率を向上させることができ、しかも目詰まりを抑制でき、第1フィルタ21及び第2フィルタ23の圧損を低減させることができると共に、第1フィルタ21及び第2フィルタ23の寿命を延長させることができる。
【0026】
(2) 第1フィルタ21及び第2フィルタ23の圧損を低減できるため、エンジンのクランク室内の圧力高騰を防止でき、エンジンの不具合原因を未然に回避することができる。
(第2実施形態)
続いて、本発明を具体化したオイルミストセパレータ11の第2実施形態を図3に基づいて説明する。
【0027】
図3に示すように、前記ノズル体16の仕切り壁19にはその下端部が正電極25に接続されて仕切り壁19の下部が正に帯電されると共に、上端部が負電極26に接続されて仕切り壁19の上部が負に帯電されている。従って、負に帯電したカーボンを含むオイルミスト20cは仕切り壁19の下部へ誘引され、下部の貫通孔18を通過する一方、カーボンを含まない正に帯電したオイルミスト20dは仕切り壁19の上部に誘引されることにより、事前分離されるように構成されている。
【0028】
仕切り壁19の下流位置において、ハウジング12の底壁12a上にはカーボンを含むオイルミスト20cを分離する第3フィルタ27がガス流路15の下半部に立設されている。該第3フィルタ27はカーボンを含むオイルミスト20cを分離しやすい、例えば撥油性のフッ素繊維等により形成されている。この第3フィルタ27の上端部とハウジング12の上壁12bとの間には、カーボンを含まないオイルミスト20dが通過する上部通路28が形成されている。さらに、第3フィルタ27の下流側位置におけるハウジング12の上壁12bと底壁12aとの間には、オイルを分離する第4フィルタ29がガス流路15を遮るように配設されている。該第4フィルタ29はオイルを分離しやすい、例えば親油性のポリプロピレン繊維等により形成されている。事前分離手段は、前記正電極25及び負電極26により帯電された仕切り壁19等によって構成されている。
【0029】
さて、ハウジング12の流入口13からハウジング12内へ導入され、ノズル体16に到ったオイルミスト20のうちカーボンを含み負に帯電されたオイルミスト20cは、正に帯電された仕切り壁19の下部に誘引され、下部の貫通孔18を通過する。一方、カーボンを含まない正に帯電されたオイルミスト20dは、負に帯電された仕切り壁19の上部に誘引され、上部の貫通孔18を通過する。
【0030】
そして、下部の貫通孔18を通過したカーボンを含むオイルミスト20cは仕切り壁19の下流側に位置する第3フィルタ27に衝突する。この第3フィルタ27はカーボンを分離することに適したフィルタであることから、第3フィルタ27に衝突したカーボンを含むオイルミスト20cは第3フィルタ27に容易に付着して捕捉され、油滴化される。一方、仕切り壁19上部の貫通孔18を通過したカーボンをほとんど含まないオイルミスト20dは、第3フィルタ27にほとんど衝突することなく、上部通路28を通過して第4フィルタ29に当たる。この第4フィルタ29はノーカーボンオイルを分離することに適したフィルタであることから、第4フィルタ29に当ったカーボンを含まないオイルミスト20dは第4フィルタ29に容易に付着して捕捉され、油滴化される。
【0031】
(3) 従って、この第2実施形態によれば、事前分離手段を構成する仕切り壁19は正電圧及び負電圧が印加され、カーボンを含むオイルミスト20cとカーボンを含まないオイルミスト20dとを事前分離するようになっている。このため、事前分離されたカーボンを含むオイルミスト20cはカーボンを分離する第3フィルタ27で分離され、事前分離されたカーボンを含まないオイルミスト20dはオイルを分離する第4フィルタ29で分離される。よって、オイルミスト20中のカーボンの有無に基づいてオイルミスト20を事前分離し、得られたオイルミスト20をそれぞれに適した第3フィルタ27及び第4フィルタ29により有効に分離することができる。
【0032】
(4) この場合、仕切り壁19において、正電荷がハウジング12の底壁12a側に帯電され、負電荷がハウジング12の上壁12b側に帯電されるように構成されていることにより、カーボンのもつ負電荷を利用してカーボンを含むオイルミスト20cを下方へ落としやすく、オイルミスト20を一層有効に分離することができる。
【0033】
(5) 従って、カーボンがエンジンの吸気系に導入されることを抑止でき、エンジンバルブに対するカーボン付着などの不都合な事態を回避することができる。
(第3実施形態)
次に、本発明を具体化したオイルミストセパレータ11の第3実施形態を図4に基づいて説明する。
【0034】
図4に示すように、ハウジング本体12Aは、その上流側が幅狭の上流側筒体12Bにより構成されると共に、上流側下部側壁12dが上流側上部側壁12eよりも下流側に位置するように構成されている。さらに、下流側側壁12fの中心部から下流側は幅狭の下流側筒体12Cにより構成されている。上流側筒体12Bの下流側にはコの字状に形成され、上流側筒体12B内のガス流路15に対向するように遮蔽板30が支持されている。
【0035】
この遮蔽板30の下部とハウジング本体12Aの上流側下部側壁12dとの間の下側通路31の断面積は、遮蔽板30の上部とハウジング本体12Aの上流側上部側壁12eとの間の上側通路32の断面積よりも小さくなるように設定されている。従って、下側通路31を流れるガス流の流速が上側通路32を流れるガス流の流速よりも速くなるように構成され、下側通路31を粒子径の大きいオイルミスト20aが流れ、上側通路32を粒子径の小さいオイルミスト20bが流れるようになっている。下側通路31におけるガス流の流速と上側通路32におけるガス流の流速の比率、すなわち下側通路31の断面積と上側通路32の断面積との比率は、粒子径の大きいオイルミスト20aと粒子径の小さいオイルミスト20bの分離が良好に行われるように設定される。事前分離手段は、前記遮蔽板30、下側通路31、上側通路32等によって構成されている。
【0036】
遮蔽板30の下流側には、該遮蔽板30下流側面の上下中央位置から下流側筒体12Cの中心方向へ延びる区画壁33が設けられている。この区画壁33の下面には下流側がハウジング本体12Aの下流側下部側壁12gに密接する濾目の粗い第1フィルタ21が配設され、区画壁33の上面には下流側がハウジング本体12Aの下流側上部側壁12hに密接する濾目の細かい第2フィルタ23が配設されている。従って、第1フィルタ21で粒子径の大きいオイルミスト20aが捕捉され、第2フィルタ23で粒子径の小さいオイルミスト20bが捕捉されるように構成されている。なお、この第3実施形態においても、前記第1実施形態と同様な流入口13、流出口14及びオイル排出孔24が備えられている。
【0037】
さて、上流側筒体12B内を流れるオイルミスト20のうち粒子径が大きく、重いオイルミスト20aは下側通路31へ誘導され、速い速度で下側通路31を通過し、第1フィルタ21に到る。第1フィルタ21は濾目の粗いフィルタで構成されていることから、粒子径の大きいオイルミスト20aが良好に付着、捕捉される。一方、粒子径が小さく、軽いオイルミスト20bは上側通路32へ誘導され、遅い速度で上側通路32を通過し、第2フィルタ23に到る。第2フィルタ23は濾目の細かいフィルタで構成されているため、粒子径の小さいオイルミスト20bが良好に付着、捕捉される。
【0038】
(6) この第3実施形態によれば、事前分離手段を構成する下側通路31及び上側通路32がオイルミスト20の流速を変化させ、粒子径が大きく、重いオイルミスト20aと、粒子径が小さく、軽いオイルミスト20bとを事前分離することができる。このため、事前分離された粒子径の大きいオイルミスト20aは濾目の粗い第1フィルタ21で捕捉され、事前分離された粒子径の小さいオイルミスト20bは濾目の細かい第2フィルタ23で捕捉される。従って、粒子径の相違するオイルミスト20を流速の変化に基づいて事前分離し、得られたオイルミスト20をそれぞれに適したフィルタにより有効に分離することができる。
【0039】
なお、前記実施形態を次のように変更して実施することも可能である。
・ 図5に示すように、事前分離手段をハウジング12の上壁12bと底壁12aとの間にガス流路15を横切るように設けられた仕切り板34と、該仕切り板34の下部に形成された複数の貫通孔18と、仕切り板34の下流側面から下流側へ延びる区画板35と、該区画板35に透設された挿通孔36とにより構成することができる。前記区画板35と底壁12aとの間の下側通路37には濾目の粗い第1フィルタ21が配設され、区画板35と上壁12bとの間の上側通路38には濾目の細かい第2フィルタ23が配設されている。
【0040】
そして、仕切り板34の貫通孔18を通過した粒子径の大きいオイルミスト20aはその慣性力により下側通路37の第1フィルタ21に衝突し、付着、分離されると共に、仕切り板34の貫通孔18を通過した粒子径の小さいオイルミスト20bは区画板35の挿通孔36を通って上側通路38に入り、第2フィルタ23に当って付着、分離される。
【0041】
・ 図6に示すように、事前分離手段を構成するノズル体16は下流側が断面横台形状をなし、その下流側壁39には複数の貫通孔18が形成されている。該ノズル体16の下流側には、ノズル体16の下流側壁39に対向するように開口された筒部40を有する断面逆L字状の捕集筒体41がハウジング12の底壁12aを貫通して設けられている。該筒部40内には濾目の粗い第1フィルタ21が配置されている。捕集筒体41の外周部には通路22が形成されている。さらに、捕集筒体41の下流位置には、濾目の細かい第2フィルタ23が配置されている。
【0042】
そして、下流側壁39の貫通孔18を通過した粒子径の大きいオイルミスト20aはその慣性力により捕集筒体41の筒部40内に入って第1フィルタ21に衝突し、付着、捕捉される。一方、下流側壁39の貫通孔18を通過した粒子径の小さいオイルミスト20bは捕集筒体41の筒部40外周の通路22を通って第2フィルタ23に当たり、そこで付着、捕捉される。
【0043】
・ 前記事前分離手段として、第1実施形態の慣性力を利用する形態と第2実施形態の電荷を利用する形態とを組合せ、例えば粒子径の大きいオイルミスト20a及びカーボンを含むオイルミスト20cと、粒子径の小さいオイルミスト20b及びカーボンを含まないオイルミスト20dとを事前分離するように構成することもできる。
【0044】
・ 前記事前分離手段として、第2実施形態の電荷を利用する形態と第3実施形態の流速を利用する形態とを組合せ、例えば粒子径の大きいオイルミスト20a及びカーボンを含むオイルミスト20cと、粒子径の小さいオイルミスト20b及びカーボンを含まないオイルミスト20dとを事前分離するように構成することもできる。
【0045】
・ 前記第2実施形態において、ノズル体16をなくし、ハウジング12内の底部に正に帯電したバッフルプレートを立設したり、複数のバッフルプレートをガス流が蛇行するように形成し、バッフルプレート間の底壁12a上に正に帯電した帯電域を設けたりすることも可能である。
【0046】
・ 第1、第2実施形態において貫通孔18をなくし、ノズル体16の下流側端部を全面的に開放してもよい。このようにしても、ノズル体16によりガス流を増速させることができる。
【0047】
・ 第4フィルタ29として、撥油性の材質のものを用いてもよい。
【符号の説明】
【0048】
11…オイルミストセパレータ、12…ハウジング、12a…底壁、12b…上壁、13…流入口、14…流出口、15…ガス流路、16…事前分離手段としてのノズル体、20…オイルミスト、20a…粒子径の大きいオイルミスト、20b…粒子径の小さいオイルミスト、20c…カーボンを含むオイルミスト、20d…カーボンを含まないオイルミスト、21…粒子径の大きいオイルミストを分離する第1フィルタ、23…粒子径の小さいオイルミストを分離する第2フィルタ、27…カーボンを含むオイルミストを分離する第3フィルタ、29…カーボンを含まないオイルミストを分離する第4フィルタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オイルミスト含有ガスに含まれるオイルミストを分離するためのハウジングにはオイルミスト含有ガスの流入口及び流出口を設け、流入口から流出口へオイルミスト含有ガスが流れる流路を形成し、オイルミスト含有ガス中に含まれるオイルミストを分離するフィルタを該流路を横切るように固定したオイルミストセパレータであって、
前記フィルタの上流側にはオイルミストの物性に応じて事前にオイルミストを複数に分離する事前分離手段を備え、該事前分離手段により事前分離された各オイルミストをそれぞれに適したフィルタで捕捉するように構成することを特徴とするオイルミストセパレータ。
【請求項2】
前記事前分離手段はオイルミストの慣性力を利用して粒子径の大きいオイルミストと粒子径の小さいオイルミストとを事前分離するものであり、事前分離された粒子径の大きいオイルミストは濾目の粗いフィルタで捕捉し、事前分離された粒子径の小さいオイルミストは濾目の細かいフィルタで捕捉するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のオイルミストセパレータ。
【請求項3】
前記事前分離手段は正電荷及び負電荷を印加してカーボンを含むオイルミストとカーボンを含まないオイルミストとを事前分離するものであり、事前分離されたカーボンを含むオイルミストはカーボンを分離するフィルタで捕捉し、事前分離されたカーボンを含まないオイルミストはオイルを分離するフィルタで捕捉するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のオイルミストセパレータ。
【請求項4】
前記正電荷はハウジングの底壁側の部分に印加され、負電荷はハウジングの上壁側の部分に印加されるように構成されていることを特徴とする請求項3に記載のオイルミストセパレータ。
【請求項5】
前記事前分離手段はオイルミストの流速を変化させて粒子径の大きいオイルミストと粒子径の小さいオイルミストとを事前分離するものであり、事前分離された粒子径の大きいオイルミストは濾目の粗いフィルタで捕捉し、事前分離された粒子径の小さいオイルミストは濾目の細かいフィルタで捕捉するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のオイルミストセパレータ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−94507(P2011−94507A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−247512(P2009−247512)
【出願日】平成21年10月28日(2009.10.28)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】