説明

オキサリプラチンのナノ粒子及びその製造方法

【課題】水溶性活性物質のオキサリプラチンを、比較的低廉な超臨界流体の製造設備を用いて経済的にナノ粒子を製造して簡単な製造工程と高回収率により商業化が容易であり、現在、注射剤形としてのみ製造されて患者に投与されているオキサリプラチンをナノ粒子化して胃酸に対して安定的で、生体利用率が改善されたオキサリプラチンの経口型製剤の開発を可能にして注射剤使用の不便さと問題点を改善し、患者の順応度を改善し、医療費を低減するオキサリプラチンのナノ粒子及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明によるナノ水準のオキサリプラチン粒子を製造する方法は、水溶性活性物質のオキサリプラチンのナノ粒子、これを含む薬剤学的組成物、及びオキサリプラチンと特定の共溶媒が混合された水性混合溶液に、固体相脂質と界面活性剤が混合された脂質混合溶液を乳化した後、超臨界流体ガスを用いて固体相脂質及び共溶媒を除去して経口投与が可能となることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性活性物質のオキサリプラチンのナノ粒子、これを含む薬剤学的組成物、及びオキサリプラチンと特定の共溶媒が混合された水性混合溶液に、固体相脂質と界面活性剤が混合された脂質混合溶液を乳化した後、超臨界流体ガスを用いて固体相脂質及び共溶媒を除去して経口投与が可能となるナノ水準のオキサリプラチン粒子を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
腫瘍学(oncology)分野は、大部分の患者が経口薬(oral drug)よりも非経口的に(intravenously)治療を受けている医学分野である。過去10年間、非経口薬物治療は増加しており、これに対して経口薬物治療分野はこれといった発展が見られなかった。現在、20種以上の細胞殺傷型(cytotoxic)経口抗癌剤が知られており、開発されている大部分の経口薬物治療製剤は、既に知らされている非経口製剤薬物を新規な剤形に開発して経口投与を可能にした場合である。
【0003】
最近、一部の経口用抗癌剤が承認され、この分野に関する研究が行われている。経口薬物治療療法は、投与方法が便利で、容易であるという長所を持つ。したがって、経口用製剤薬物の開発が盛んになり、今後、経口薬物治療療法の使用が増加傾向になると見込まれる。
【0004】
タキサン系(taxanes)抗癌剤は、経口投与時、生体内の吸収率(bioavailability)を増加させるために、P−糖タンパク質(P−glycoprotein)阻害剤を併用投与する試みがあり、現在もタキサン製剤を経口投与可能にするための研究が行われている。
【0005】
また、胃癌など消化器系の坑癌治療にたくさん用いられる5−フルオロウラシル(5−FU)は、生体内の吸収率が低くて経口投与に適しておらず、下痢などの副作用を誘発すると知られている。カペシタビン(capecitabine)は、経口投与用坑癌治療に用いられる物質であって、腫瘍における酵素反応により5−フルオロウラシルに転換されるプロドラッグ(prodrug)薬物である。カペシタビンは、5−フルオロウラシルを静脈投与した時とほぼ同様の毒性を示し、乳癌と大腸癌に対して全世界的に許可を受けたもので、経口用抗癌剤開発の成功的な事例といえる(非特許文献1)。
【0006】
オキサリプラチンのような白金系抗癌剤のうち、サトラプラチン(satraplatin)が最初の経口用製剤として開発されており、現在まで知らされた唯一の白金系経口用抗癌剤である。
【0007】
数千種の白金錯化合物誘導体が合成されて前臨床段階の試験を行ったが、この中、約30種だけ臨床試験段階にある(非特許文献2)。現在、シスプラチン(cisplatin)、カルボプラチン(carboplatin)、及びオキサリプラチン(oxaliplatin)の3種だけ米国FDAの承認を受けて注射剤の形態で使われている(非特許文献3)。
【0008】
オキサリプラチン(Oxaliplatin)は、白金と1,2−ジアミノシクロヘキサンで構成され、シュウ酸エステル配位子を離脱基として有する有機錯化合物であって、IUPAC名は(R,R)−1,2−ジアミノシクロヘキサン(エタンジオエート−O,O)プラチナである。現在、オキサリプラチンは、エロキサチン(Eloxatin(登録商標))という商品名で進行性大腸癌及び転移性胃癌の治療剤として販売されており、通常、5−フルオロウラシル、ロイコボリンと共に併用投与されることもある。
【0009】
転移性大腸癌の治療には化学療法を用いるが、Eloxatin(登録商標)(オキサリプラチン(oxaliplatin))あるいはFOLFOX(フルオロウラシル(fluorouracil)/ロイコボリン(leucovorin)/オキサリプラチンの併用)、FOLFIRI(フルオロウラシル/ロイコボリン)療法を用い、Genentech/Roche社製のAvastin(登録商標)(bevacizumb)が2004年に米国FDAの承認を受けた。
【0010】
オキサリプラチンは注射剤としてのみ患者に投与されており、エロキサチン(Eloxatin(登録商標))は凍結乾燥製剤の形態になって患者に投与する直前に注射用水またはグルコース溶液に希釈して使用する。凍結乾燥工程は複雑で、製造費用が高く、また、凍結乾燥された製品を用いるためには再構成が必要である。しかし、このような再構成過程でオキサリプラチンの損失、沈殿の発生、再構成における好ましくない粒子の生成、汚染への露出をもたらすなどの問題がある。特に、汚染問題は抗腫瘍物質の毒性のため、非常に深刻である。
【0011】
このようなオキサリプラチンの注射剤用凍結乾燥製剤の不便さと問題点を改善するために、最近、注射用液状製剤の形態で販売しているが、オキサリプラチンを経口用製剤として製造するための試みはまだない。
【0012】
上述したサトラプラチン(satraplatin)が、白金系化合物の唯一最初の経口用製剤として開発され、1993年に最初に論文に報告されたが、前立腺癌治療剤としてアメリカ食品医薬品局(FDA)の承認はまだ受けていない(非特許文献4)。
【0013】
オキサリプラチンが注射剤の形態としてのみ使用しなければならない理由に対して具体的に報告された文献はないが、オキサリプラチンと同じ系列の白金(II)錯化合物のシスプラチン(cisplatin)とカルボプラチン(carboplatin)は、胃腸管内で非常に吸収率が低いものであり、これは経口投与による臨床試験結果から確認された(非特許文献5)。
【0014】
サトラプラチンは、このような白金(II)系化合物の経口投与時、低い生体内吸収率の問題点を改善した白金(IV)系化合物であって、経口用製剤を開発するために新規な構造を有する化合物である。この化合物に対して、最近、臨床第3相の研究結果が報告された(非特許文献6)。
【0015】
結局、経口投与が可能な抗癌剤薬物は、その必要性と注射剤の投与方式に比して長所が多いにもかかわらず、低い生体内吸収率など、多くの制約要因があるため、その発展速度が非常に遅く、成功的な経口剤形の開発が困難であった。
【0016】
オキサリプラチンは、剤形開発と関連して前記問題点を改善するために、安定したオキサリプラチン水溶液製剤の開発が試みられてきた。特許文献1は、濃度が1〜5mg/ml、pHが4.5〜6の範囲のオキサリプラチン水溶液を含む非経口投与用のオキサリプラチン製剤を開示している。また、特許文献2及び特許文献3は、薬学的に安定したオキサリプラチン溶液剤の組成物及びその製造方法を開示している。特許文献4は、安定して凍結乾燥された薬学的配合物を開示しており、特許文献5は、直ちに使用可能なオキサリプラチン含有注射用溶液を開示しており、特許文献6は、非経口投与用オキサリプラチン溶液組成物を開示している。また、特許文献7及び特許文献8などは、より安定した組成物を製造する方法を開示しており、特許文献9は、オキサリプラチン物質の毒性を最小化して安定したオキサリプラチン組成物を製造する方法を開示している。
【0017】
一方、特許文献10は、難溶性物質のパクリタキセルのナノ粒子を含む経口投与用薬学組成物を開示しているが、明細書に例示された各種溶媒は、オキサリプラチンのような水溶性活性物質を溶かすことができないため、これを水溶性活性物質のナノ粒子の製造に適用することができない。
【0018】
現在、医薬品に適用されているナノ技術は、生理活性に優れたにもかかわらず、水溶液に溶けない難溶性薬物を、水溶液に溶かすために使われている。また、薬物の安定性を高めて生体利用率を向上させるか、放出速度を制御して薬物が必要な時間だけ血中薬物の濃度を維持する技術がコア技術として浮び上がっている。このようなナノ技術を用いた薬物安定化技術は、パクリタキセル(paclitaxel)、ドセタキセル(docetaxel)、ドキソルビシン(doxorubicin)など、難溶性及び安定性の問題のために使用が制限されている薬物に適用されて薬物の生体利用率を高め、薬効の長期間の持続に寄与している(非特許文献7)。
【0019】
しかし、上述したように、オキサリプラチンの非経口投与のために、改善された組成物の形態及び製法や難溶性活性物質のナノ粒子化などに対する研究が行われてきたが、水溶性活性物質のオキサリプラチンを単独で含む経口投与用剤形に関する技術はまだ開発されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】米国特許第5,716,988号
【特許文献2】米国特許第6,476,068号
【特許文献3】米国特許第6,306,902号
【特許文献4】大韓民国登録特許第367,752号
【特許文献5】大韓民国登録特許第913,063号
【特許文献6】国際特許WO/2005/020980
【特許文献7】米国公開特許第2003−0109515号
【特許文献8】米国公開特許第2004−0127557号
【特許文献9】大韓民国公開特許第10−2007−0067768号
【特許文献10】米国特許第7,217,735号
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】VJ O'Neil and CJ Twelves, British Jornal of Cancer (2002) 87:933-937
【非特許文献2】Lloyd R Kelland, Expert Opinion on Investigational Drugs (2000) 9(6): 1373-1382
【非特許文献3】Hak Choy et al., Clin. Cancer Res. (2008) 14(6): 1633-1638
【非特許文献4】ボク・イン・ソン, KOTRA動向資料(2007)
【非特許文献5】Lloyd R Kelland, Expert Opinion on Investigational Drugs (2000) 9(6): 1373-1382
【非特許文献6】Hak Choy et al., Clin. Cancer Res. (2008) 14(6): 1633-1638
【非特許文献7】大韓民国特許庁、2006年/紛争に備えた特許マップ作成事業のナノ医薬品開発技術(2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明者は、前記オキサリプラチンのような水溶性活性物質を経口投与用剤形として製造するために研究した結果、オキサリプラチンを特定の共溶媒に溶解させた水性混合溶液に、固体相脂質と界面活性剤が混合された脂質混合溶液を添加して乳化させ、超臨界流体ガスを入れて加圧することによりナノ粒子が得られ、これを経口投与用剤形として製造できることを発見して本発明を完成した。
【0023】
したがって、本発明は、水性混合溶液に脂質混合溶液を添加する乳化工程及び超臨界流体ガスを用いて固体相脂質を除去する工程により製造された、吸収が容易な経口投与用オキサリプラチンのナノ粒子を提供することにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明は、平均粒子径が10〜1000nmである経口投与用オキサリプラチンのナノ粒子及びこれを含む経口投与用薬剤学的組成物を特徴とする。
【0025】
また、本発明は、
(1)オキサリプラチンを水、ジメチルスルホキシド(DMSO)、またはこれらの混合液の共溶媒に溶解して水性混合溶液を得る段階と、
(2)固体相脂質に界面活性剤を混合して脂質混合溶液を得る段階と、
(3)前記水性混合溶液に脂質混合溶液を添加して乳化液を得、これを冷却して乾燥させることにより固形物を得る段階と、
(4)前記固形物を反応器に投入し、超臨界流体ガスを入れて超臨界条件以上の圧力で加圧した後、超臨界流体ガスを用いて固体相脂質及び共溶媒を除去することにより、オキサリプラチンのナノ粒子を得る段階と、
を含む経口投与用オキサリプラチンのナノ粒子の製造方法を他の特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、現在、注射剤形としてのみ製造されて患者に投与されるオキサリプラチンをナノ粒子化して胃酸に対して安定的で、生体利用率が改善されたオキサリプラチンの経口型製剤の開発を可能にし、注射剤使用の不便さと問題点を改善して患者の順応度を改善し、医療費を低減することができる。また、水溶性活性物質のオキサリプラチンを、比較的低廉な超臨界流体の製造設備を用いて経済的にナノ粒子化できるため、簡単な製造工程と高回収率により商業化が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】超臨界流体ガスを用いたオキサリプラチンのナノ粒子の製造工程を示す図面である。
【図2】実施例5により製造されたオキサリプラチンのナノ粒子のSEM写真である。
【図3】実施例5により製造されたオキサリプラチンのナノ粒子のSEM写真である。
【図4】通常のオキサリプラチン粉末のSEM写真である。
【図5】実施例6により製造されたオキサリプラチンのナノ粒子のSEM写真である。
【図6】実施例5により製造されたオキサリプラチンのナノ粒子とオキサリプラチン原末のpH4.0USPアセテートバッファにおける溶解度の経時変化を比較したグラフである。
【図7】実施例5により製造されたオキサリプラチンのナノ粒子とオキサリプラチン原末のpH6.8フォスフェイトバッファにおける溶解度の経時変化を比較したグラフである。
【図8】オキサリプラチン原末とナノ粒子のSW620細胞株に対するGI50値を算出して比較したグラフである。
【図9】オキサリプラチン原末とナノ粒子のHCT116細胞株に対するGI50値を算出して比較したグラフである。
【図10】実施例5により製造されたオキサリプラチンのナノ粒子を腫瘍を持つヌードマウスに経口投与した場合とエロキサチンを注射した場合において、腫瘍の相対的大きさを比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、水溶性活性物質のオキサリプラチンのナノ粒子に関するものであって、前記ナノ粒子の製造方法は、(1)オキサリプラチンを水、ジメチルスルホキシド(DMSO)、またはこれらの混合液の共溶媒に溶解して水性混合溶液を得る段階と、(2)固体相脂質に界面活性剤を混合して脂質混合溶液を得る段階と、(3)前記水性混合溶液に脂質混合溶液を添加して乳化液を得、これを冷却して乾燥させることにより固形物を得る段階と、(4)前記固形物を反応器に投入し、超臨界流体ガスを入れて超臨界条件以上の圧力で加圧した後、超臨界流体ガスを用いて固体相脂質及び共溶媒を除去することによりオキサリプラチンのナノ粒子を得る段階と、を含む。
【0029】
以下、本発明のナノ粒子の製造方法を各段階別に詳細に説明する。
【0030】
先ず、水溶性活性物質のオキサリプラチンを共溶媒に溶解して水性混合溶液を得る。これは、本発明に用いられる固体相脂質は水溶性活性物質を十分に溶かすことができないからである。前記共溶媒としては水、ジメチルスルホキシド(DMSO)、またはこれらの混合物を用い、前記共溶媒は一般的なアルコールなどの溶媒とは異なり、極性が大きいため、オキサリプラチンを十分に溶解し、超臨界条件でCO2ガスに対する溶解度が高いため、最終に得られる組成物に残留しないようにすることができる。
【0031】
オキサリプラチンを前記共溶媒に溶解する時、追って製造されるナノ粒子の凝集を防止するために凝集防止剤をさらに追加することができる。前記凝集防止剤としては単糖類、多糖類、食物繊維、ガム類、またはタンパク質などが挙げられ、より好ましくはマンニトール、スクロース、ラクトース、グルコース、トレハロース、グリセロール、フルクトース、マルターゼ、デキストラン、ポリエチレングリコール、グリシン、アラニン、リジンなどであり、最も好ましくはマンニトールである。前記凝集防止剤は、オキサリプラチン100重量部に対して10〜100重量部、より好ましくは20〜60重量部である。
【0032】
次に、固体相脂質に界面活性剤を混合して脂質混合溶液を得る。
【0033】
前記固体相脂質は、室温で固体相を維持し、その融点が比較的低い30〜100℃であるため、加熱により容易に溶けて前記活性物質に対する溶媒として作用でき、超臨界流体に対する高溶解度の脂質が用いられる。前記固体相脂質としては、炭素数10〜22のアルコール、飽和脂肪酸及びそのエステル、炭素数10〜22の飽和脂肪酸基を有するモノグリセリド化合物またはジグリセリド化合物、炭素数16以上の炭化水素及び炭素数10〜22のトリグリセリド化合物の脂肪酸還元化合物からなる群から選択され、好ましくは炭素数10〜22のアルコール、より好ましくは炭素数12〜15のアルコールである。
【0034】
本発明に用いられる界面活性剤は、活性物質のオキサリプラチンの凝集を防止し、前記固体相脂質によく溶解されて乳化反応を円滑に進行するようにして、製造されるナノ粒子の大きさを容易に調節し、かつ超臨界流体により容易に除去されてはいけないため、好ましくはゲルシル(Gelucire)、ソルトール(solutol)、ポロキサマ(poloxamer)などを用いる。前記界面活性剤は、強い効能(potency)を有するため、粒子の大きさが小さく、均一なオキサリプラチンのナノ粒子が得られる。
【0035】
前記界面活性剤の使用量は、オキサリプラチンと界面活性剤の重量比が1:0.1〜2.0、より好ましくは1:0.5〜1.5の範囲である。界面活性剤が前記範囲よりも少ない場合は、乳化物に対する安定性に問題が生じ、前記範囲を超える場合は、界面活性剤との凝集によりナノサイズの粒子が形成できない問題がある。
【0036】
前記脂質混合溶液を前記水性混合溶液に添加して乳化液を得る。この時、脂質混合溶液を徐々に添加して乳化させるが、混合時、固体相脂質が水溶性活性物質に対する溶媒として作用するように40〜100℃に加熱して行うことが好ましく、より好ましくは50〜80℃に維持する。最終収得物のオキサリプラチンを300nm以下の小くて均一なナノ粒子として得るためには、前記乳化過程が大変重要である。水性混合溶液を脂質混合溶液に添加すると、2つの溶液の相が分離されて乳化が進行しないため、必ず脂質混合溶液を水性混合溶液に徐々に添加しながら加熱して乳化させ、好ましくは水性混合溶液内にオキサリプラチンが1g含まれた場合、50〜100g/minの速度で脂質混合溶液を添加する。
【0037】
次に、前記乳化液を冷却して乾燥させることにより固形物を得る。この時、乳化状態で、室温への自然冷却により固形化されると、粒子の大きさが大きくなって本発明で求められるナノ粒子が得られなくなるため、加熱状態で10〜60秒で20〜30℃まで急速冷却し、前記温度で乾燥させる。
【0038】
前記得られた固形物を超臨界抽出機の反応器に投入し、超臨界流体ガスを入れて超臨界条件以上の圧力で加圧する。この時、固形物は粉砕して使用することが好ましいが、前記粉砕は周知の方法で行われ、粉砕された粒子の大きさが小さくて粒子の表面積が大きくなるほど固体相脂質などの除去工程に有利である。
【0039】
前記超臨界流体ガスとは、二酸化炭素気体または窒素気体のように反応性がない気体であり、かつ特定温度と特定圧力、すなわち、超臨界温度と超臨界圧力下では超臨界流体(supercritical fluid)となる気体をいう。
【0040】
前記超臨界流体ガスを徐々に反応器に投入し、超臨界流体となる圧力、すなわち超臨界条件以上の圧力で加圧する。この時、反応器内の圧力は、反応器の大きさと混合物の量に応じて決定されるが、一般的に50〜200気圧の範囲に調節することが好ましく、温度は固体相脂質の融点以下の温度、好ましくは10〜40℃に維持する。反応器内の温度が高すぎると、界面活性剤が溶けるようになり、これによって混合物内に均一に分布していた活性物質及び凝集防止剤などが結晶成長して均一なナノ粒子が得られなくなる。反応器内の圧力が上昇して超臨界流体ガスが超臨界流体または亜臨界流体になる圧力に到達すると、その状態で反応器を回転させて超臨界流体または亜臨界流体が十分に固形物内に入り込むようにすることが好ましい。
【0041】
前記超臨界流体ガスを用いてオキサリプラチンのナノ粒子を製造する工程の例を図1に示す。前記工程は、超臨界流体バッファタンク(CO2 buffer tank、(1)〜(3))、反応器(reactor、(4))、分離器(separator、(5))など、大きく3つの部分からなる。先ず、前記得られた固形物を粉砕して反応器に投入した後、超臨界流体バッファタンクから超臨界流体を反応器に注入し、反応器を回転させる。そして、反応器内の圧力を50〜200気圧に調節し、固体相脂質と共溶媒を除去するために超臨界流体を循環させる。圧力差により、固体相脂質と共溶媒は超臨界流体に溶けて分離器内に収集され、反応器にはオキサリプラチンのナノ粒子と界面活性剤が混合された形態で残る。
【0042】
前記製造方法により最終的に得られたオキサリプラチンのナノ粒子は10〜1000nmの大きさを有し、好ましくは10〜500nm、より好ましくは10〜300nmの大きさを有する。
【0043】
また、前記オキサリプラチンのナノ粒子は、共溶媒に分散する時、−30〜−70mVのゼータ電位(zeta potential)を有するため、粒子間に凝集が発生せず、安定した状態で製剤化することができる。ゼータ電位は、粒子の外部的に活性化された電位である。また、個別粒子間の静電気的相互作用の測定値であって、懸濁液、特に分散された超微粒子を含有する分散液を安定化させる因子である。前記ゼータ電位の範囲内では粒子間の強い反発があるため、分散液が安定的に維持されるが、ゼータ電位の絶対値が前記範囲よりも小さい場合は粒子間の反発が弱くてファンデルワールス力により凝集物が形成される問題が発生する。
【0044】
一方、本発明は、前記オキサリプラチンのナノ粒子を含む薬剤学的組成物を権利範囲とする。
【0045】
前記製造方法により固体相脂質と共溶媒は除去され、オキサリプラチンのナノ粒子と界面活性剤が混合された状態の組成物が得られ、前記組成物内のオキサリプラチンのナノ粒子と界面活性剤の重量比は、最初に添加された量とほぼ同様で、1:0.1〜2.0、好ましくは1:0.5〜1.5の範囲である。
【0046】
前記薬剤学的組成物は、賦形剤、結合剤、崩壊剤、及び滑沢剤のうち1つ以上の補助剤をさらに含んで経口用剤形として製造され、錠剤、懸濁液剤、カプセル剤などとして製造されることが経口投与に好ましい。
【0047】
前記賦形剤としては、ラクトース、微結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、小麦デンプン、白糖、D−マンニトール、沈降炭酸カルシウム、デキストリンまたは予備ゼラチン化されたデンプンがあり、前記結合剤としては、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、デキストリン、ゼラチン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ペーストまたはアラビアゴムがあり、前記崩壊剤としては、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、デンプン、カルボキシメチルセルロースカルシウムがあり、前記滑沢剤としては、コロイド状二酸化ケイ素、ステアリン酸マグネシウム、タルクまたは無水結晶ケイ酸などがある。
【0048】
以下、下記実施例では本発明によるナノ粒子の製造方法を具体的に例示するが、これによって本発明が限定されることはない。
【0049】
実施例1
オキサリプラチン(oxaliplatin)1gをジメチルスルホキシド25gに70℃で完全に溶解させて水性混合溶液を得た。また、固体相脂質としてミリスチールアルコール(myristyl alcohol)60gにポロキサマ(poloxamer)0.5gを5分間完全に溶かして脂質混合溶液を得た。前記水性混合溶液に脂質混合溶液を溶かした後、前記混合溶液をホモジナイザーを用いて10,000rpm以上に撹拌しながらゆっくり添加して乳化させるが、乳化温度は80℃を維持した。前記乳化過程から得られた乳化液を25℃に急速冷却してオキサリプラチンが脂質に微細粒子として均一に分布された固形物を製造した後、これを粉砕機で粉砕した。前記粉砕物を超臨界抽出機の反応器に投入し、CO2ガスを注入しながら反応器を回転させた。反応器内の圧力を70気圧以上に維持しながらCO2を循環させ、固体相脂質のミリスチールアルコール及びジメチルスルホキシドを除去し、最終的に平均粒子径300nm以下のオキサリプラチンのナノ粒子が含まれた組成物1.5gを得た。
【0050】
実施例2
オキサリプラチン(oxaliplatin)1gをジメチルスルホキシド25gに70℃で完全に溶解させて水性混合溶液を得た。また、固体相脂質としてミリスチールアルコール(myristyl alcohol)60gにソルトール(solutol)0.2gを70℃で5分間完全に溶かして脂質混合溶液を得た。前記水性混合溶液に脂質混合溶液をホモジナイザーを用いて10,000rpm以上に撹拌しながらゆっくり添加して乳化させるが、乳化温度は80℃を維持した。前記乳化過程から得られた乳化液を25℃に急速冷却してオキサリプラチンが脂質に微細粒子として均一に分布された固形物を製造した後、これを粉砕機で粉砕した。前記粉砕物を超臨界抽出機の反応器に投入し、CO2ガスを注入しながら反応器を回転させた。反応器内の圧力を70気圧以上に維持しながらCO2を循環させ、固体相脂質のミリスチールアルコール及びジメチルスルホキシドを除去し、最終的に平均粒子径300nm以下のオキサリプラチンのナノ粒子が含まれた組成物1.2gを得た。
【0051】
実施例3
オキサリプラチン(oxaliplatin)1gをマンニトール(mannitol)0.4gと共に精製水90gに70℃で完全に溶解させて水性混合溶液を得た。また、固体相脂質としてミリスチールアルコール(myristyl alcohol)90gにゲルシル(Gelucire)44/14 1gを70℃で5分間完全に溶かして脂質混合溶液を得た。前記水性混合溶液に脂質混合溶液をホモジナイザーを用いて10,000rpm以上に撹拌しながらゆっくり添加して乳化させるが、乳化温度は80℃を維持した。前記乳化過程から得られた乳化液を25℃に急速冷却してオキサリプラチンが脂質に微細粒子として均一に分布された固形物を製造した後、これを粉砕機で粉砕した。前記粉砕物を超臨界抽出機の反応器に投入し、CO2ガスを注入しながら反応器を回転させた。反応器内の圧力を70気圧以上に維持しながらCO2を循環させ、固体相脂質のミリスチールアルコール及び精製水を除去し、最終的に平均粒子径300nm以下のオキサリプラチンのナノ粒子が含まれた組成物2.4gを得た。
【0052】
実施例4
オキサリプラチン(oxaliplatin)1gをマンニトール(mannitol)0.4gと共に精製水90gに70℃で完全に溶解させて水性混合溶液を得た。また、固体相脂質としてミリスチールアルコール(myristyl alcohol)90gにソルトール(solutol)1gを70℃で完全に溶かして脂質混合溶液を得た。前記水性混合溶液に脂質混合溶液をホモジナイザーを用いて10,000rpm以上に撹拌しながらゆっくり添加して乳化させるが、乳化温度は80℃を維持した。前記乳化過程から得られた乳化液を25℃に急速冷却してオキサリプラチンが脂質に微細粒子として均一に分布された固形物を製造した後、これを粉砕機で粉砕した。前記粉砕物を超臨界抽出機の反応器に投入し、CO2ガスを注入しながら反応器を回転させた。反応器内の圧力を70気圧以上に維持しながらCO2を循環させ、固体相脂質のミリスチールアルコール及び精製水を除去し、最終的に平均粒子径300nm以下のオキサリプラチンのナノ粒子が含まれた組成物2.4gを得た。
【0053】
実施例5
オキサリプラチン(oxaliplatin)1gをマンニトール(mannitol)0.4gと共に精製水90gに70℃で完全に溶解させて水性混合溶液を得た。また、固体相脂質としてミリスチールアルコール(myristyl alcohol)90gにポロキサマ(poloxamer)1gを70℃で5分間完全に溶かして脂質混合溶液を得た。前記水性混合溶液に脂質混合溶液をホモジナイザーを用いて10,000rpm以上に撹拌しながらゆっくり添加して乳化させるが、乳化温度は80℃を維持した。前記乳化過程から得られた乳化液を25℃に急速冷却してオキサリプラチンが脂質に微細粒子として均一に分布された固形物を製造した後、これを粉砕機で粉砕した。前記粉砕物を超臨界抽出機の反応器に投入し、CO2ガスを注入しながら反応器を回転させた。反応器内の圧力を70気圧以上に維持しながらCO2を循環させ、固体相脂質のミリスチールアルコール及び精製水を除去し、最終的に平均粒子径300nm以下のオキサリプラチンのナノ粒子が含まれた組成物2.4gを得た。
【0054】
実施例6
オキサリプラチン(oxaliplatin)1gをジメチルスルホキシド25gに70℃で完全に溶解させて水性混合溶液を得た。また、固体相脂質としてミリスチールアルコール(myristyl alcohol)60gにポロキサマ(poloxamer)3.0gを5分間完全に溶かして脂質混合溶液を得た。前記水性混合溶液に脂質混合溶液を溶かした後、前記混合溶液をホモジナイザーを用いて10,000rpm以上に撹拌しながらゆっくり添加して乳化させるが、乳化温度は80℃を維持した。前記乳化過程から得られた乳化液を25℃に急速冷却してオキサリプラチンが脂質に微細粒子として均一に分布された固形物を製造した後、これを粉砕機で粉砕した。前記粉砕物を超臨界抽出機の反応器に投入し、CO2ガスを注入しながら反応器を回転させた。反応器内の圧力を70気圧以上に維持しながらCO2を循環させ、固体相脂質のミリスチールアルコール及びジメチルスルホキシドを除去し、最終的にオキサリプラチン粒子が含まれた組成物4.0gを得た。
【0055】
実験例1:オキサリプラチンのナノ粒子の粒度分布及びゼータ電位の測定
前記実施例により製造されたオキサリプラチンのナノ粒子5gを無水エタノール10mLに完全に分散させた後、粒度分析器(OTSUKA社製、ELS−Z)を用いて粒度分布を測定し、その結果を下記表1に示す。
オキサリプラチンのナノ粒子の粒度分布(nm)
【表1】

前記表1に示すように、実施例の製造方法により平均300nm以下の粒子が得られるが、特に、製造されたナノ粒子が狭い粒度分布(narrow distribution)を示すことを確認した。
また、溶媒に分散されたナノ粒子の安定性を確認するために、ELS−8000(OTSUKA社製)を用いて製造されたオキサリプラチンのナノ粒子のコロイド状態のゼータ電位(zeta potential)を測定し、その結果を下記表2に示す。
【表2】

一般的にゼータ電位が−30mV程度であれば、粒子間の凝集や結晶化が発生しないと知らされているが、本発明のオキサリプラチンのナノ粒子は、約−35〜−60mVのゼータ電位を有するため、溶液内で非常に優れた静電気的安定性を示すことを確認した。
【0056】
実験例2:オキサリプラチンのナノ粒子のSEM測定
実施例5により製造されたオキサリプラチンのナノ粒子は、電子顕微鏡(Scanning Electron Micrograph(S−4700N、Hitachi社製))を用いて粒子の大きさ及び形態を確認し、その写真を図2及び3に示す。また、粒子の大きさを比較するために、原料として用いられたオキサリプラチン原末のSEM写真を図4に示す。
前記図2及び3に示すように、実施例5のオキサリプラチンのナノ粒子は、均一なナノサイズの粒子として製造されることを確認した。
ただし、実施例6により製造されたオキサリプラチン粒子のSEM写真を図5に示すが、この場合、過量の界面活性剤によりナノ粒子が凝集されて50μm以上の粒子が形成されることを確認した。したがって、大きさが均一で、かつ安定したナノ粒子を製造するためには、界面活性剤の含量を調節することが好ましいことを確認した。
【0057】
実験例3:オキサリプラチンのナノ粒子の溶解度測定
前記実施例5により製造されたオキサリプラチンのナノ粒子12mgを、25℃でpH4.0USPアセテートバッファ50mL及びpH6.8フォスフェイトバッファ50mLにそれぞれ分散させた。次に、時間の経過に伴ってそれぞれ1mLのサンプルを取り、15分間3500rpmで遠心分離した後、HPLC分析(Agilent 1200 series、Hewlett Packard社製、USA)を行った。
HLPC条件
Capcell Pak C18カラム、流速1.1mL/min、検出波長210nm
移動相:pH3.0、リン酸/アセトニトリル=99/1(v/v)
また、オキサリプラチン原末5mgに対しても上記のように時間の経過に伴って濃度を測定して比較し、その結果を図6及び7に示す。
前記図6及び7に示すように、本発明のオキサリプラチンのナノ粒子は5分内に90%に近い溶解度を有するが、オキサリプラチン原末は、2時間が経過して最大溶解度を有することを確認した。このような溶解度の改善は、ナノ粒子化による表面積の増加に起因したことで、これによって、懸濁液剤などの経口製剤への剤形化を容易にすることができる。
【0058】
実験例4:細胞生存分析
SW620及びHCT116細胞株(ATCC CCL−227、USA)を96−ウェルプレートに1ウェル当たり5×103cells/50μlを分注して4時間が経過した後、実施例5のオキサリプラチン粒子とオキサリプラチン原末の濃度を10mMにしてプレートに処理した。次に、37℃で72時間培養した後、100μlCellTiter−Glo(CellTiter−Glo、Promega、Cat.#.G7573)試薬により処理した。オービタルシェーカーに2分間細胞溶解した後、10分間照度計(Luminometer)(Envision、PerkinElmer)に入れて安定化してルミネセンス(Luminescence)を測定する。
前記過程により測定されたルミネセンス値を用いてGI50値を算出した後、オキサリプラチン原末とナノ粒子の濃度による坑癌活性グラフをそれぞれ図8及び9に示す。
前記図8及び図9に示すように、オキサリプラチン原末のGI50値はSW620及びHCT116細胞株がそれぞれ2.22μM及び0.55μMであるが、オキサリプラチンのナノ粒子は0.92μM、0.13μMに過ぎず、大腸癌細胞に対する坑癌活性が約2.4倍、4.2倍程度向上することを確認した。
【0059】
実験例5:生体内の坑癌活性比較
人間HT−29大腸癌細胞を約7×107cells/mlの濃度でPBSと混ぜてヌードマウスの皮下部位に0.1ml接種した後、腫瘍の広さが5cm2以上になると、試験化合物の投与を開始した。
前記腫瘍を持つヌードマウスは、総4グループに分け、それぞれ0.5%カルボキシルメチルセルロースナトリウム10ml/kg、実施例5のオキサリプラチンのナノ粒子5mg/kg、20mg/kg、及びエロキサチン(Eloxatin)5mg/kgを投与した。この時、カルボキシルメチルセルロースナトリウム及びオキサリプラチンのナノ粒子は20日間毎日経口投与し、エロキサチンは1週に1回ずつ3回静脈注射を投与した。21日過ぎた後、腫瘍の大きさを測定し、その結果を下記表3に示し、時間経過に伴う腫瘍の相対的大きさを比較したグラフを図10に示す。腫瘍の大きさは、腫瘍の最も広い幅をW、最も長い長さをLとし、(W2×L)/2を適用して計算した。
【表3】

前記表3及び図10に示すように、本発明のオキサリプラチンのナノ粒子は経口投与されるため、従来の注射剤によるエロキサチンに比べて優れるか、ほぼ同様の腫瘍成長抑制効果を奏することを確認した。
【0060】
製造例1:懸濁液剤
実施例5のオキサリプラチンのナノ粒子10gをふるい(35mesh)にかけた後、カルボキシメチルセルロースナトリウム100mgが含まれた精製水20mLに入れて懸濁液を得た。
【0061】
製造例2:錠剤
実施例5のオキサリプラチンのナノ粒子12gをふるい(35mesh)にかけた後、クロスポビドン3g、ラクトース18.35g、及びポリビニルピロリドン0.9gを入れて混合し、ステアリン酸マグネシウム0.45g及びコロイド状二酸化ケイ素0.3gで5分間滑沢した後、加圧して錠剤を作った。
【0062】
製造例3:錠剤
実施例5のオキサリプラチンのナノ粒子6gをふるい(35mesh)にかけた後、クロスポビドン3g、ラクトース24.35g、及びポリビニルピロリドン0.9gを入れて混合し、ステアリン酸マグネシウム0.45g及びコロイド状二酸化ケイ素0.3gで5分間滑沢した後、加圧して錠剤を作った。
【0063】
製造例4:カプセル剤
実施例5のオキサリプラチンのナノ粒子12gをふるい(35mesh)にかけた後、クロスポビドン1gと混合し、ステアリン酸マグネシウム0.1gで滑沢した。また、前記混合物を適当な装置を用いて硬いゼラチンカプセルに充填した。
【0064】
比較例:錠剤
オキサリプラチン原末5gをふるい(35mesh)にかけた後、ポロキサマ5g、マンニトール2g、クロスポビドン3g、ラクトース18.35g、及びポリビニルピロリドン0.9gを入れて混合し、ステアリン酸マグネシウム0.45g及びコロイド状二酸化ケイ素0.3gで5分間滑沢した後、加圧して錠剤を作った。
【0065】
実験例6:オキサリプラチンのナノ粒子の薬物動態パラメーター測定
前記製造例1〜3及び比較例により製造された錠剤及び懸濁剤10mg/kgをSprague−Dawley(SD)系のラットに経口投与した。前記投与後、5、10、15、30分、1、2、4、7、24時間に採血し、採取した血液の白金濃度を分析して薬物動態パラメーターを測定した。前記薬物動態パラメーターにおける生体利用率は、対照物質としてエロキサチン(Eloxatin)5mg/kgを静脈投与した場合を100とし、その相対的な比率を示した相対的生体利用率を意味する。
【表4】

オキサリプラチン製剤の薬物動態パラメーター(実験動物(ラット)数=6)
前記表4に示すように、本発明により製造されたオキサリプラチンのナノ粒子を錠剤または懸濁液化して投与した結果、従来のオキサリプラチン原末を静脈投与した場合に比して、血漿最高濃度、AUC、生体利用率が顕著に増加することを確認した。したがって、本発明のナノ粒子化により薬物の生体内吸収率を大きく増加させることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径が10〜1000nmであることを特徴とする経口投与用オキサリプラチンのナノ粒子。
【請求項2】
平均粒子径が10〜500nmであることを特徴とする請求項1に記載の経口投与用オキサリプラチンのナノ粒子。
【請求項3】
前記ナノ粒子は、共溶媒に分散する時、−30〜−70mVのゼータ電位を有することを特徴とする請求項1に記載の経口投与用オキサリプラチンのナノ粒子。
【請求項4】
請求項1に記載の経口投与用オキサリプラチンのナノ粒子を有効性分として含むことを特徴とする薬剤学的組成物。
【請求項5】
前記組成物内のオキサリプラチンのナノ粒子と界面活性剤の重量比が1:0.1〜2.0の範囲であることを特徴とする請求項4に記載の薬剤学的組成物。
【請求項6】
前記界面活性剤は、ポロキサマ、ソルトール、またはゲルシルであることを特徴とする請求項5に記載の薬剤学的組成物。
【請求項7】
錠剤、懸濁剤、またはカプセル製剤として製造され、経口投与が可能であることを特徴とする請求項4に記載の薬剤学的組成物。
【請求項8】
賦形剤、結合剤、崩壊剤、及び滑沢剤から選択された1種または2種以上の補助剤をさらに含むことを特徴とする請求項4に記載の薬剤学的組成物。
【請求項9】
(1)オキサリプラチンを水、ジメチルスルホキシド、またはこれらの混合液の共溶媒に溶解して水性混合溶液を得る段階と、
(2)固体相脂質に界面活性剤を混合して脂質混合溶液を得る段階と、
(3)前記水性混合溶液に脂質混合溶液を添加して乳化液を得、これを冷却して乾燥させることにより固形物を得る段階と、
(4)前記固形物を反応器に投入し、超臨界流体ガスを入れて超臨界条件以上の圧力で加圧した後、超臨界流体ガスを用いて固体相脂質及び共溶媒を除去することにより、オキサリプラチンのナノ粒子を得る段階と、
を含むことを特徴とする経口投与用オキサリプラチンのナノ粒子の製造方法。
【請求項10】
前記固体相脂質は、炭素数10〜22のアルコールであることを特徴とする請求項9に記載の経口投与用オキサリプラチンのナノ粒子の製造方法。
【請求項11】
前記オキサリプラチンと界面活性剤の重量比が1:0.1〜2.0の範囲であることを特徴とする請求項9に記載の経口投与用オキサリプラチンのナノ粒子の製造方法。
【請求項12】
前記界面活性剤は、ゲルシル、ソルトール、及びポロキサマから選択されることを特徴とする請求項9に記載の経口投与用オキサリプラチンのナノ粒子の製造方法。
【請求項13】
前記(1)段階で、共溶媒にマンニトールを凝集防止剤としてさらに添加することを特徴とする請求項9に記載の経口投与用オキサリプラチンのナノ粒子の製造方法。
【請求項14】
前記水性混合溶液に脂質混合溶液を添加して乳化する時、40〜100℃に加熱して行うことを特徴とする請求項9に記載の経口投与用オキサリプラチンのナノ粒子の製造方法。
【請求項15】
前記(4)段階の超臨界条件以上の圧力は50〜200気圧であり、反応器の温度を10〜40℃の範囲内に調節して固体相脂質を除去することを特徴とする請求項9に記載の経口投与用オキサリプラチンのナノ粒子の製造方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図1】
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【公表番号】特表2013−505291(P2013−505291A)
【公表日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−530778(P2012−530778)
【出願日】平成22年9月20日(2010.9.20)
【国際出願番号】PCT/KR2010/006459
【国際公開番号】WO2011/034394
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(512072142)ジェイダブリュー ファーマシューティカル コーポレイション (1)
【出願人】(512072153)バイオ−シネクティクス インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】