説明

オキソノール染料を含有する着色剤組成物

本発明は、(i)一般式(I)
〔式中、R及びRは、互いに独立して、直鎖又は分岐鎖C〜Cアルキル残基であり;R、R及びRは、互いに独立して、水素か、非置換であるか又はヒドロキシ−若しくはアミノ置換されていることができ、場合により酸素原子で中断されていることができるC〜C14アルキル残基であり、そしてRは、非置換であるか又はヒドロキシ−若しくはアミノ置換されていることができ、場合により酸素原子で中断されていることができるC〜C14アルキル残基である〕
で示される少なくとも1つのオキソノール染料と、(ii)少なくとも1つの硝酸セルロース結合剤とを含む着色剤組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱安定性オキソノール染料及びそれらを含む着色剤組成物に関する。本発明は、印刷着色剤における及び高分子物質の着色における熱安定性オキソノール染料の使用に更に関連する。
【0002】
オキソノール染料と赤外線吸収基を有するポリマーとの組み合わせは、WO2001/94123によって知られている。
【0003】
JP−A−2001−342364は、一般に、印刷着色剤における、また、可溶性の高い化合物の記載はないが更なる用途におけるオキソノール染料の使用を開示する。
【0004】
少なくとも1つのオキソノール染料と少なくとも1つの金属錯体とを含む組成物が、WO03/042989によって知られている。
【0005】
幾つかのオキソノール染料、それらの調製方法及びプラスチック又は高分子物品の着色方法、並びに印刷インク及び印刷着色剤におけるそれらの使用が、WO05/030876に開示されている。
【0006】
GB−A−2,156,373は、写真構築に使用される漂白されうる染料、例えば、式(II):
【0007】
【化3】

【0008】
で示される化合物を教示する。
【0009】
これらの漂白されうる染料は、写真構築に組み込まれると、処理の際に写真に有用な種を放出する。
【0010】
本発明の目的は、有機溶媒に極めて容易に可溶性であり、水では可溶性が限られており、80℃までの温度で安定し、可溶性印刷染料、木材ステインとして、及び極性プラスチックの着色に使用することができる、高い着色力を有する化合物を提供することである。このことは、現在知られている化合物を使用して十分に達成することはできない。当該技術で既知のオキソノール染料は、有機溶媒における可溶性において及び高温での望ましい安定性を有することにおいて両方とも十分ではない。当該技術で既知のオキソノール染料は、固体の状態で焼結する強い傾向を示し、多くの場合、約30℃の温度で既に始まっている。
【0011】
驚くべきことに、窒素原子に結合している低分子量アルキル鎖を含有する、選択されたアンモニウム塩の形態の特定のオキソノール染料は、上記の目的を相当な程度で達成することが、現在見出されている。WO05/030876の教示は、単に高い着色力を有し、有機溶媒に十分に可溶性であるオキソノール染料に焦点を当てている。対照的に、本発明は、固体状態での改善された耐熱性により更に特徴付けられ、したがって、優れた保存安定性によって現在の市場の要求を満たしているオキソノール染料を教示する。
【0012】
本発明は、
(i)一般式(I):
【0013】
【化4】

【0014】
〔式中、
及びRは、互いに独立して、直鎖又は分岐鎖C〜Cアルキル、好ましくはC〜Cアルキル残基であり;
、R及びRは、互いに独立して、水素か、非置換であるか又はヒドロキシ−若しくはアミノ置換されていることができ、場合により酸素原子で中断されていることができるC〜C14アルキル残基であり、そして
は、非置換であるか又はヒドロキシ−若しくはアミノ置換されていることができ、場合により酸素原子で中断されていることができるC〜C14アルキル残基である〕
で示される少なくとも1つのオキソノール染料と、
(ii)少なくとも1つの硝酸セルロース結合剤と
を含む着色剤組成物に関する。
【0015】
場合により、本発明の着色剤組成物は、フタル酸エステル、クエン酸エステル及びアジピン酸エステルの群より選択される少なくとも1つの可塑剤を更に含む。
【0016】
及び/又はRがn−ブチル又はn−ペンチルである着色剤組成物が、特に好ましい。
【0017】
また好ましいものは、R、R、R及びRが、互いに独立して直鎖又は分岐鎖C〜Cアルキル残基である着色剤組成物、さらにより好ましいものは、R、R、R及びRが、互いにn−ブチル残基であるものである。
【0018】
式(II)、(III)又は(IV):
【0019】
【化5】

【0020】
で示されるオキソノール染料を含む着色剤組成物が、特に好ましい。
【0021】
本発明の式(I)のオキソノール染料及び着色剤組成物は、印刷着色剤又は印刷ペーストの調製に適している。
【0022】
結合剤として使用される本発明の着色剤組成物の硝酸セルロースは、分子量及び窒素含有量のような要素を大きく変えることができる。約13重量%までの窒素含有量を有する硝酸セルロースが好ましい。約11.5〜約13%の窒素含有量を有する硝酸セルロースが特に好ましい。異なる粘度及び異なる窒素含有量の広範囲な硝酸セルロースが入手可能である。結合剤は、有機溶媒又は有機溶媒の混合物に容易に可溶性であるべきである。
【0023】
エタノールのような低級アルコールに適切な可溶性を示すもののような、アルコール可溶性硝酸セルロースが好ましい。しかし、ケトン可溶性硝酸セルロースも適している。
【0024】
硝酸セルロースの代わりに、ポリ(塩化ビニル−酢酸コビニル)を、R、R、R、R、R及びRが上記に定義されたとおりである一般式(I)の少なくとも1つのオキソノール染料を含む着色剤組成物における結合剤として使用することもできる。好ましくは、ポリ(塩化ビニル−酢酸コビニル)は、約15,000〜約44,000の分子量、約40〜約80℃のガラス移転温度を有する。
【0025】
本発明の着色剤組成物を使用する印刷着色剤又は印刷ペーストの調製において、形成されたインク像に十分な耐水性及び耐摩耗性をもたらすために、可塑剤を添加することが好ましい。可塑剤は、好ましくは、フタル酸ジブチル、フタル酸ジフェニル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジシクロヘキシル、ブチルフタリルブチルグリコレート及びフタル酸ブチルベンジルを含む群から選択されるフタル酸アルキル又はアリールである。クエン酸エステルも適している。
【0026】
本発明は、場合により他の染料も一緒にした、印刷着色剤又は印刷ペーストの調製における本発明の式(I)のオキソノール染料又は着色剤組成物の使用、並びに得られた印刷着色剤又は印刷ペーストにも関する。
【0027】
印刷着色剤又は印刷ペーストに添加されるオキソノール染料の量は、所望の色の濃さによって決まり、一般に、印刷される物質に基づいて0.01〜15重量%、特に0.02〜10重量%の量が適していることが実証されている。
【0028】
印刷では、慣用の増粘剤が使用され、例えば、改質若しくは未改質天然生成物、例えば、アルギン酸塩、イギリスゴム、アラビアゴム、結晶ゴム、イナゴマメ粉、トラガカント、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、デンプン、或いは合成生成物、例えば、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸若しくはそのコポリマー、又はポリビニルアルコールである。
【0029】
印刷ペーストは、所望であれば、ブチロールアセトン又はリン酸水素ナトリウムのような酸供与体、防腐剤、金属イオン封鎖剤、乳化剤、有機溶媒、例えばアルコール、エステル、トルエン及びキシレン、結合剤、例えば、ニトロセルロース及びビニルコポリマー、軟化剤、例えばクエン酸、酸化剤、脱気剤、光安定剤及びUV安定剤も含む。
【0030】
印刷では、印刷ペーストが、印刷される物質の全面に又はその一部分に直接適用され、慣用型の印刷機械、例えば、フレキソ/凹版印刷、オフセット印刷、輪転又は平板フィルム印刷機が有利に使用される。本発明の印刷ペーストも転写印刷に適している。
【0031】
本発明の式(I)のオキソノール染料又は着色剤組成物は、上記の物質、特にポリエステル物質に、非常に良好な使用堅牢特性を有するむらのない色合いを付与する。
【0032】
本発明の式(I)のオキソノール染料又は着色剤組成物は、印刷インク、特にインクジェット法で使用されるインクの調製に使用することもできる。
【0033】
本発明は、式(I)の少なくとも1つのオキソノール染料又は本発明の少なくとも1つの着色剤組成物を含む、インクジェット印刷法で使用されるインクにも関する。
【0034】
インクに存在する式(I)のオキソノール染料の総量は、好ましくは、インクの総重量に基づいて、0.5〜35重量%、特に1〜30重量%、とりわけ1〜20重量%である。特に好ましい下限は1.2重量%、特に1.5重量%である。特に好ましい上限は15重量%、特に10重量%である。
【0035】
本発明のインクは、少なくとも1つの硝酸セルロース結合剤を含む。硝酸セルロース結合剤は、ニトロ化の程度によって、エステル可溶型(窒素含有量約12%)及びエステルにも可溶性であるアルコール可溶型(窒素含有量約11%)に分類される。両方の型は、多様なレベルの溶液粘度を付与する多様な重合度で提供される。低粘度でアルコール可溶性の等級が、印刷インクに特に適している。これらの溶液粘度は、他の樹脂と比較して非常に高く、したがって、濃度は12〜18%に制限される。硬質樹脂(例えば、マレイン酸樹脂)を加えて固形分を増加し、それによって皮膜特性を改善し、プリントの光沢を増加させる。
【0036】
上記の硝酸セルロース結合剤が非常に脆性であるので、インク膜は、好ましくは弾性にされる(すなわち、軟化される)。したがって、本発明のインクは、好ましくは、フタル酸エステル、クエン酸エステル及びアジピン酸エステルの群より選択される少なくとも1つの可塑剤を含む。添加される可塑剤の量は、硝酸セルロースに基づいて35〜50%である。
【0037】
インクは、好ましくは、可溶化剤又は保湿剤を含み、C〜Cアルコール、例は、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール又はイソブタノール;アミド、例は、ジメチルホルムアミド又はジメチルアセトアミド;ケトン又はケトンアルコール、例は、アセトン、メチルイソブチルケトン、ジアセトンアルコール;エーテル、例は、テトラヒドロフラン又はジオキサン;窒素含有複素環式化合物、例は、N−メチル−2−ピロリドン又は1,3−ジメチル−2−イミダゾリドン;ポリアルキレングリコール、好ましくは100〜800の分子量を有する低分子量ポリエチレングリコール、例は、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール200、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400若しくはポリエチレングリコール600、特に150〜400の分子量を有するもの、又は低分子量ポリプロピレングリコール、例は、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコールP400若しくはポリプロピレングリコールP425;ポリアルキレングリコールのC〜Cアルキルエーテル、例は、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、2−(2−エトキシエトキシ)エタノール、2−〔2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ〕エタノール又は2−〔2−(2−エトキシエトキシ)エトキシ〕エタノール;C〜Cアルキレングリコール又はチオグリコール、例は、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール;更には、ポリオール、例は、グリセロール又は1,2,6−ヘキサントリオール;或いは、多価アルコールのC〜Cアルキルエーテル、例は、2−メトキシエタノール又は1−メトキシプロパン−2−オールである。
【0038】
より詳細には、インクは、150〜400の分子量を有するポリエチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、N−メチル−2−ピロリドン及びグリセロールからなる群、特に、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール400、ジエチレングリコールモノブチルエーテル及びグリセロールからなる群より選択される少なくとも1つの可溶化剤又は保湿剤を、インクの総重量に基づいて、通常2〜30重量%、特に5〜25重量%、とりわけ20〜25重量%の量で含む。
【0039】
インクは、加えて、可溶化剤、例えばε−カプロラクタムを含むことができる。
【0040】
本発明のインクにおける保湿剤としては、好ましくは0.1〜30重量%、特に2〜30重量%の量の、例えば、尿素、又は乳酸ナトリウム(有利には、50%〜60%水溶液の形態)と、グリセロール及び/又はプロピレングリコールとの混合物も考慮される。
【0041】
インクは、とりわけ粘度の調整のために、天然又は合成由来の増粘剤を含むことができる。
【0042】
記述することができる増粘剤の例には、市販のアルギン酸塩増粘剤、デンプンエーテル及びイナゴマメ粉エーテル、特にアルギン酸ナトリウムそれ自体又は変性セルロース、例えば、メチル、エチル、カルボキシメチル、ヒドロキシエチル、メチルヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル又はヒドロキシプロピルメチルセルロースと、特に好ましくは20〜25重量%のカルボキシメチルセルロースとの混合物が挙げられる。合成増粘剤として更に記述することができるものは、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸又はポリ(メタ)アクリルアミドに基づくものである。
【0043】
インクは、そのような増粘剤を、インクの総重量に基づいて、例えば0.01〜2重量%、特に0.01〜1重量%、とりわけ0.01〜0.5重量%の量で含有する。
【0044】
インクは、緩衝物質、例えばホウ砂、ホウ酸塩、リン酸塩、ポリリン酸塩又はクエン酸塩を含むこともできる。記述することができる例は、ホウ砂、ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、ペンタポリリン酸ナトリウム、またクエン酸ナトリウムである。これらは、特に、例えば4〜9、特に5〜8.5のpH値を確立するために、インクの総重量に基づいて0.1〜3重量%、とりわけ0.1〜1重量%の量で使用される。
【0045】
インクに存在することができる更なる添加剤は、界面活性剤又は湿潤剤である。
【0046】
考慮される界面活性剤又は湿潤剤は、市販のアニオン性又は非イオン性界面活性剤である。
【0047】
更にインクは、加えて、慣用の添加剤、例えば、消泡剤又は特に真菌及び/若しくは細菌増殖を抑制する物質を含むことができる。そのような添加剤は、通常、インクの総重量に基づいて0.01〜1重量%の量で使用される。
【0048】
適切な防腐剤には、ホルムアルデヒド生成剤、例えばパラホルムアルデヒド及びトリオキサン、特にホルムアルデヒド水溶液、例は30〜40重量%のホルムアルデヒド溶液、イミダゾール化合物、例えば2−(4−チアゾリル)ベンゾイミダゾール、チアゾール化合物、例えば1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン若しくは2−n−オクチル−イソチアゾリン−3−オン、ヨウ素化合物、ニトリル、フェノール、ハロアルキルチオ化合物、又はピリジン誘導体、特に1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン若しくは2−n−オクチル−イソチアゾリン−3−オンが含まれる。
【0049】
インクは、例えば、所望の量のエタノール又は水で個々の構成成分を一緒に混合する慣用の方法で調製することができる。インクに存在する懸濁物質及び不溶性成分は、例えば0.2〜0.5μmの孔径を有するフィルタを通して濾過することによって除去される。
【0050】
好ましいものは、1〜40mPa・s、特に1〜20mPa・s、とりわけ1〜10mPa・sの粘度を有するインクである。
【0051】
本発明のインクは、インクが小型の開口部から液滴の形態で圧出され、平面基材に向けられ、その上に像が形成される記録系における使用に適している。適切な基材には、例えば、紙、プラスチックフィルム又は織物繊維物質、好ましくは紙又はプラスチックフィルム、特にプラスチック被覆紙が含まれる。適切な記録系には、例えば、紙印刷又は織物印刷に使用される市販のインクジェットプリンタが含まれる。
【0052】
本発明のインクで印刷することができる紙の例としては、市販のインクジェット紙、写真用紙、光沢紙、プラスチック被覆紙、例えば、Epson Ink-jet Paper、Epson Photo Paper、Epson Glossy Paper、Epson Glossy Film、HP Special Ink-jet Paper、Encad Photo Gloss Paper及びIlford Photo Paperを記述することができる。本発明のインクで印刷することができるプラスチックフィルムは、例えば、透明又は白濁/不透明である。適切なプラスチックフィルムは、例えば、3M Transparency Filmである。好ましいものは、例えばEpson Glossy Paperのような光沢紙である。
【0053】
織物繊維物質としては、特に窒素含有又はヒドロキシ基含有繊維物質が考慮され、例えばセルロース、絹、羊毛又は合成ポリアミド、特に絹製の織布である。
【0054】
インクジェット印刷法の場合では、インクの個々の液滴が制御された方法でノズルから基材上に噴霧される。この目的のために使用されるものは、主に連続インクジェット法及びドロップオンデマンド(drop-on-demand)法である。連続インクジェット法の場合、液滴は、連続的に生成され、印刷動作に必要ではない液滴は、容器の中に放出され、再利用される。他方、ドロップオンデマンド法の場合では、液滴は要求どおりに産出されて印刷に使用され、すなわち、液滴は印刷動作に必要なときにのみ生成される。液滴の生成は、例えば、圧電式インクジェットヘッドを用いて又は熱エネルギー(バブルジェット)により実施することができる。本発明の目的において、圧電式インクジェットヘッドを用いる印刷が好ましいが、また好ましいものは、連続インクジェット法による印刷である。
【0055】
式(I)のオキソノール染料は、例えば、下記式:
【0056】
【化6】

【0057】
で示される化合物の1モル及び下記式:
【0058】
【化7】

【0059】
で示される化合物の1モルと、下記式:
【0060】
【化8】

【0061】
で示される化合物の1モルとを、有機溶媒中及び塩基の存在下で反応させて、下記式:
【0062】
【化9】

【0063】
(R、R、R、R、R及びRは、上記で提示された定義及び好ましい意味を有する)で示される化合物を形成する、それ自体既知の方法によって調製することができる。
【0064】
アンモニウムカチオンは、対応する水酸化物から誘導される。
【0065】
この場合の溶媒は、水又は有機極性溶媒、例えばアルコール、アミド、ケトン又はアミンであることもできる。溶媒としてアミン(例えば、ピリジン、トリエチルアミン)が使用される場合、対応するピリジニウム又はトリエチルアンモニウム塩が得られ、次にそれを対応する所望のカチオンで処理することによって可溶性生成物に変換することができる。同じように、無機塩基を使用して、対応するオキソノール塩を調製することが可能であり、同様に可溶性の高い染料を生じる。反応温度は、一般に、室温(およそ20℃)から使用する溶媒の沸点であることができる。
【0066】
式(V)〜(VII)の化合物は、既知であるか、それ自体既知の方法によって調製することができる。
【0067】
本発明の染料が可溶性である有機溶媒は、例えば、直鎖、分岐鎖又は環状アルコール、直鎖、分岐鎖又は環状ケトン、カルボン酸エステル、トルエン及びキシレンである。
【0068】
式(I)のオキソノール染料は、極性溶媒、特にメタノール、エタノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン及びイソブチルメチルケトンに特に非常に容易に可溶性である。
【0069】
式(I)のオキソノール染料は、着色プラスチック又は高分子着色粒子の製造方法であって、高分子量有機物質と、式(I)の少なくとも1つのオキソノール染料の着色有効量とを互いにブレンドすることを含む方法に使用することもできる。
【0070】
式(I)のオキソノール染料を使用する高分子量の有機物質の着色は、例えば、そのような染料と、そのような基材とを、ロールミル、又は混合若しくは粉砕装置を使用して混合することによって実施され、その結果、染料が高分子量物質中に溶解又は微細分布される。次に、染料と混合された高分子量有機物質を、例えば、圧延、圧縮成形、押出し、塗布、回転、流し込み又は射出成形のようなそれ自体既知の方法により加工され、それによって着色物質が最終形状となる。染料の混合は、例えば、粉末染料と粒状又は粉末高分子量有機物質とを、また場合により添加剤のような追加の成分を、同時に連続的に押出機の取り入れ区域に直接供給し、構成成分が加工の直前に混合されることによって、実際の加工工程の直前に実施することもできる。しかし一般に好ましいことは、よりむらのない着色基材が得られるので、予め高分子量有機物質の中に染料を混合しておくことである。
【0071】
非脆性成形品を製造するか、又は脆性を減少させるために、多くの場合、いわゆる可塑剤を高分子量化合物にその造形の前に混和することが望ましい。可塑剤としては、例えばリン酸、フタル酸又はセバシン酸のエステルを使用することができる。着色プラスチック又は高分子着色粒子の製造の方法において、可塑剤を、着色剤の混和の前又は後にポリマーに混和することができる。異なる色合いを得るために、高分子量有機物質に、式(I)の染料に加えて、更なる染料又は他の着色剤を、場合により更なる添加剤、例えば充填剤又は乾燥剤と一緒に、任意の所望の量で加えることも可能である。
好ましいことは、特に繊維又は膜の形態の熱可塑性プラスチックの着色である。
【0072】
着色することができる好ましい高分子量有機物質は、極めて一般的に、誘電率≧2.5を有するポリマー、特にポリエステル、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン/アクリロニトリル(SAN)及びアクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)である。特に好ましいものは、ポリエステル及びポリアミドである。とりわけ好ましいものは、テレフタル酸とグリコール、特にエチレングリコールとの重縮合により得られる直鎖芳香族ポリエステル、又はテレフタル酸と1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンとの縮合物、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)若しくはポリブチレンテレフタレート(PBTP);またポリカーボネート、例は、α,α−ジメチル−4,4−ジヒドロキシ−ジフェニルメタン及びホスゲンから得られるもの、又はポリ塩化ビニルに基づくポリマー及びポリアミドに基づくポリマー、例は、ポリアミド−6若しくはポリアミド−6,6である。
【0073】
上記に記載されたオキソノール染料は、上記の物質に、特にポリエステル及びポリアミド物質に、非常に良好な使用堅牢特性、特に光に対する良好な堅牢性を有する濃い色合いを付与する。
【0074】
本発明の式(I)のオキソノール染料又は着色剤組成物は、半合成性、特に合成の疎水性繊維物質、とりわけ織物物質の印刷に、また紙、プラスチックフィルム又は金属箔、特にアルミニウム箔の印刷に使用することもできる。
【0075】
考慮される半合成織物物質は、特に2 1/2酢酸セルロース及びトリ酢酸セルロースである。
【0076】
合成疎水性織物物質は、特に、直鎖芳香族ポリエステル、例えば、テレフタル酸とグリコール、特にエチレングリコールとのポリエステル又はテレフタル酸と1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンとの縮合物から;ポリカーボネート、例えばα,α−ジメチル−4,4’−ジヒドロキシ−ジフェニルメタン及びホスゲンから得られるポリカーボネートから、並びにポリ塩化ビニルに基づく繊維及びポリアミドに基づく繊維から構成される。
【0077】
上記に記載されたオキソノール染料は、また、ポリエステル/羊毛及びポリエステル/セルロース繊維のブレンドの印刷に極めて適している。
【0078】
前記織物物質は、多様な加工形態、例えば、繊維、糸又は不織布の形態、織布又は編物生地の形態であることができる。
【0079】
式(I)のオキソノール染料を使用前に染料調製物に変換することが有益である。そのために、染料を、その粒径が平均0.1〜10ミクロンになるよう粉砕する。粉砕は、分散剤の存在下で実施することができる。例えば、乾燥染料は分散剤と共に粉砕されるか、又は分散剤と共にペースト形態に混練され、次に真空下で又は噴霧により乾燥される。このようにして得た調製物を、有機溶媒の添加後、印刷着色剤又は印刷ペーストの調製のために使用することができる。
【0080】
本発明は、例えば、半合成又は合成の疎水性繊維物質、特に織物物質の印刷方法における本発明の式(I)のオキソノール染料及び着色剤組成物の上記使用であって、前記物質に式(I)のオキソノール染料又は本発明の印刷インク組成物を適用することを含む使用にも関する。上記の疎水性繊維物質は、好ましくは織物ポリエステル物質である。
本発明の方法により処理できる更なる基材、また好ましい加工条件は、本明細書の上記のより詳細な説明で見出すことができる。
【0081】
本発明は、前記方法を使用して印刷される、疎水性繊維物質、好ましくはポリエステル織物物質、紙及びプラスチックフィルム又は金属箔にも関する。
【0082】
本発明の式(I)のオキソノール染料は、更に、他の記録方法、例えば、熱転写印刷に適している。
【0083】
以下の実施例は本発明を説明するのに役立つ。特に指示のない限り、部は重量部であり、%は重量%である。温度は摂氏で提示される。重量部と容量部の関係は、gとcmの関係と同じである。
【0084】
実施例1:
1−ブチル−4−メチル−2,6−ジオキソ−1,2,5,6−テトラヒドロ−ピリジン−3−カルボニトリル42.92g(0.208mol)及び酢酸カリウム9.91g(0.10mol)を、窒素下で、n−ブタノール300mlに導入し、次に1,1,3,3−テトラメトキシプロパン16.67g(0.102mol)を100〜105℃で30分間かけて加えた。混合物を撹拌しながら105〜110℃で更に4時間還流した。濃い青色に着色された懸濁液を得た。懸濁液を50℃に冷却した。溶媒の残留残渣を除去し、固体をそれぞれ50mlのn−ブタノールにより室温で2回洗浄した。カリウム塩47.55g(0.098mol)(収率98%)を、固体を100hPa下、60℃で乾燥した後で得た。
前記カリウム塩47.90g(0.098mol)を脱イオン水400mlに懸濁した。次に得られた青色懸濁液を60℃まで加熱し、n−ブタノール350ml、次にテトラブチルアンモニウムブロミド32.24(0.10mol)を加えた。有機相を5分後に分離した。残りの水相を、n−ブタノール50mlで1回抽出した。合わせた有機相を高真空下で完全に濃縮した。そのようにして、濃い青色に着色された結晶生成物66.27g(0.096mol)を得た。1,1,3,3−テトラメトキシプロパンを参照すると、両方の反応工程の全体的な収率は96%であった。
(λmax=603nm、ε=DMF中219203)
【0085】
【化10】

【0086】
実施例2:
1−ペンチル−4−メチル−2,6−ジオキソ−1,2,5,6−テトラヒドロ−ピリジン−3−カルボニトリル45.38g(0.206mol)及び酢酸カリウム9.91g(0.1mol)を、窒素下で、n−ブタノール200mlに導入し、次に1,1,3,3−テトラメトキシプロパン16.67g(0.1mol)を100〜105℃で30分間かけて加えた。混合物を撹拌しながら105〜110℃で更に4時間還流した。濃い青色に着色された懸濁液を得た。懸濁液を50℃に冷却した。溶媒の残留残渣を除去し、緑色の固体をそれぞれ50mlのn−ブタノールにより室温で2回洗浄した。カリウム塩47.23g(収率91%)を、固体を100hPa下、60℃で乾燥した後で得た。
前記カリウム塩46.71g(0.098mol)を脱イオン水400mlに懸濁した。pHをギ酸により2.6に調整した。次に得られた青紫色懸濁液を37℃まで加熱し、n−ブタノール350ml、次にテトラブチルアンモニウムブロミド29.94(0.091mol)を加えた。有機相を60分後に分離した。残りの水相を、n−ブタノール50mlで1回抽出した。合わせた有機相を高真空下で完全に濃縮した。そのようにして、濃い青色に着色された結晶生成物62.43g(0.087mol)を得た。1,1,3,3−テトラメトキシプロパンを参照すると、両方の反応工程の全体的な収率は84%であった。
(λmax=603nm、ε=DMF中200169)
【0087】
【化11】

【0088】
表1及び2に提示された以下の化合物を実施例1と同様にして調製した。
【0089】
【化12】

【0090】
【表1】

【0091】
【表2】

【0092】
【表3】

【0093】
【表4】

【0094】
50℃試験は、試験する生成物を熱風キャビネット中に50℃で18時間保存することを含んだ。陽性試験結果は、生成物が熱処理の後で固体及び粉末状態のままで存在することを示した。生成物がこの温度で焼結過程を被る及び/又は溶融を開始する場合、試験結果は、陰性であると分類した。
【0095】
実施例3(印刷着色剤):
2.0重量%の式(II):
【0096】
【化13】

【0097】
で示される染料を、下記:
− 12.0重量%のNC AH 27(ATBC20%)〔ニトロセルロース、エタノールに可溶性、アセチルクエン酸トリブチル20重量%含有〕、
− 2.0重量%のHercolyn DE〔撥水剤〕、
− 10.0重量%のエトキシプロパノール、
− 20.0重量%の酢酸エチル、及び
− 56.0重量%のエタノール
からなる配合物98.0重量%の中で、均質な溶液が得られるまで撹拌した。
【0098】
印刷着色剤は、紙、プラスチックフィルム又は金属箔に対して鮮明で濃い青色の着色を与えた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)一般式(I):
【化1】


〔式中、
及びRは、互いに独立して、直鎖又は分岐鎖C〜Cアルキル残基であり;
、R及びRは、互いに独立して、水素か、非置換であるか又はヒドロキシ−若しくはアミノ置換されていることができ、場合により酸素原子で中断されていることができるC〜C14アルキル残基であり、そして
は、非置換であるか又はヒドロキシ−若しくはアミノ置換されていることができ、場合により酸素原子で中断されていることができるC〜C14アルキル残基である〕
で示されるオキソノール染料と、
(ii)少なくとも1つの硝酸セルロース結合剤と
を含む着色剤組成物。
【請求項2】
フタル酸エステル、クエン酸エステル及びアジピン酸エステルの群より選択される少なくとも1つの可塑剤を更に含む、請求項1記載の着色剤組成物。
【請求項3】
及びRが互いに独立して直鎖又は分岐鎖C〜Cアルキル残基である、請求項1又は2記載の着色剤組成物。
【請求項4】
及びRが互いに独立してn−ブチル又はn−ペンチル残基である、請求項3記載の着色剤組成物。
【請求項5】
、R、R及びRが互いに独立して直鎖又は分岐鎖C〜Cアルキル残基である、請求項1〜4のいずれか1項記載の着色剤組成物。
【請求項6】
、R、R及びRが互いにn−ブチル残基である、請求項5記載の着色剤組成物。
【請求項7】
式II:
【化2】


で示される、請求項1〜6のいずれか1項記載の着色剤組成物。
【請求項8】
半合成又は合成疎水性繊維物質を印刷する方法であって、前記物質に、一般式(I)の少なくとも1つのオキソノール染料及び/又は請求項1〜7のいずれか1項記載の着色剤組成物を適用するか又は混和することを含む方法。
【請求項9】
半合成又は合成疎水性繊維物質がポリエステル繊維を含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
紙、プラスチックフィルム又は金属箔を着色又は印刷する方法であって、前記物質に、一般式(I)の少なくとも1つのオキソノール染料及び/又は請求項1〜7のいずれか1項記載の着色剤組成物を適用するか又は混和することを含む方法。
【請求項11】
半合成又は合成疎水性繊維物質、紙、プラスチックフィルム又は金属箔の着色又は印刷における、一般式(I)の少なくとも1つのオキソノール染料及び/又は請求項1〜7のいずれか1項記載の着色剤組成物の使用。
【請求項12】
請求項8〜10のいずれか1項記載の方法により得られる着色又は印刷された物質。
【請求項13】
インクジェット印刷における、一般式(I)の少なくとも1つのオキソノール染料及び/又は請求項1〜7のいずれか1項記載の着色剤組成物の使用。

【公表番号】特表2009−507083(P2009−507083A)
【公表日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−527439(P2008−527439)
【出願日】平成18年8月16日(2006.8.16)
【国際出願番号】PCT/EP2006/065331
【国際公開番号】WO2007/023112
【国際公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.バブルジェット
【出願人】(396023948)チバ ホールディング インコーポレーテッド (530)
【氏名又は名称原語表記】Ciba Holding Inc.
【Fターム(参考)】