説明

オゾン水応用機器及びそのカビ防止方法

【課題】既存の機能を極力利用し、機器内のカビを防止できるオゾン水応用機器を提供する。
【解決手段】洗浄対象物xを洗浄するための洗浄槽2と、圧力変動吸着式の酸素濃縮器3と、その酸素濃縮器3からの高濃度酸素でオゾンを生成するオゾン発生器4と、洗浄槽2に給水する給水ライン17と、洗浄槽2を通した水とオゾン発生器4からのオゾンとを混合してオゾン水を製造するオゾン水製造ライン18とを備え、洗浄槽2内にオゾン水を供給して洗浄対象物xをオゾン洗浄し、オゾン水を排水して洗浄槽2から洗浄対象物xを取り出した後、洗浄槽2を洗浄するためのオゾン水応用機器1において、洗浄槽2の残留物を水リンスで排除するための洗浄手段と、洗浄槽2をオゾン水で殺菌する殺菌手段と、洗浄槽2を乾燥させる乾燥手段とを備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済みの内視鏡などの洗浄対象物を洗浄槽でオゾン洗浄し、洗浄槽から洗浄対象物を取り出して排水した後、洗浄槽を洗浄するためのオゾン水応用機器及びそのカビ防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オゾン水の強い酸化力を利用したオゾン水応用機器として内視鏡洗浄機(オゾン水内視鏡洗浄機)がある。内視鏡は、衛生管理上、使用のたびに入念な洗浄・殺菌を行い、次の使用に備える必要がある。オゾン水を利用した内視鏡洗浄機では、オゾン水の洗浄および殺菌効果を用いて内視鏡の外面および管内部を効果的に洗浄できる。
【0003】
大まかな工程としては、水による内視鏡の内外面の予備洗浄工程、オゾン水生成工程、所定濃度のオゾン水に内視鏡を所定時間浸漬する洗浄殺菌工程、酸素や空気で脱気するオゾン分解工程、排水工程などがある。選択式のプロセスモードとして、オゾン水処理後に内視鏡洗浄機の細管内をアルコールフラッシュおよび送気することで、乾燥促進することも可能である。
【0004】
このような内視鏡洗浄機では、オゾン(オゾン水)は電源があれば装置内で生成できるため薬剤の補充などが不要であり、またオゾン(オゾン水)は自己分解して酸素になるため残留の危険がないことが大きなメリットである。
【0005】
内視鏡を洗浄する別の方法として薬剤を使用する方法もある。薬剤としてはグルタラールなどがある。グルタラールは残留性があり、また皮膚に付着した場合、皮膚の着色や発疹、発赤などの過敏症状を起こすことがあり、また、蒸気は眼や呼吸器などの粘膜に対して刺激作用を示すことなどから、その使用には十分な注意が必要である。
【0006】
内視鏡洗浄機では、オゾン水から揮散したオゾンガスを用いて内視鏡が配される空間、またはその周辺の空間の気体を脱臭および殺菌できることも特徴のひとつである。
【0007】
一例として、図6に示すようなオゾン水応用機器61では、まず、洗浄槽62に給水ライン63から給水して水を貯留し、洗浄対象物xを入れる。圧力変動吸着(PSA:Pressure Swing Adsorption)方式の酸素濃縮器64で高濃度酸素を製造し、その高濃度酸素からオゾナイザ65でオゾンを生成する。
【0008】
このオゾンをオゾン製造ライン66のアスピレータ67に導き、他方そのアスピレータ67を介して洗浄槽62の水を吸込ポンプ68で吸い込み、オゾン水製造ライン66でオゾンと水を混合してオゾン水を製造する。洗浄槽62にオゾン水を供給し、そのオゾン水をオゾン水循環ライン69と循環ポンプ70で循環させ、洗浄対象物xをオゾン洗浄する。
【0009】
その後、オゾン水を排水ライン71から排水し、内部にオゾンが残留していないことを確認した上で、洗浄槽62から洗浄対象物xを取り出す。洗浄中に水に溶解しなかったオゾンや、排水後に残留しているオゾンは、ヒータ72で触媒が加熱されたオゾン分解器73で分解され、排気ファン74で排気される。
【0010】
一方、水を利用して洗浄対象物を洗浄する代表的な装置として洗濯機がある。
【0011】
従来から洗濯機の洗濯槽は、洗剤および衣類からの栄養源と、多湿という環境要因とによって、洗濯槽の壁面に黒カビなどが発生しやすい場所と一般的に認知されてきた。そのため、いろいろな防カビ対策も試みられている。
【0012】
例えば、樹脂製洗濯槽に有機系や無機系の抗菌・防カビ剤を練りこんだり、ステンレス製洗濯槽では抗菌・防カビ効果のある銅を添加したりしている。また、光触媒酸化チタン微粒子にブラックライトを照射する方法も提案されている。抗菌効果のある薬剤水溶液をメカ的に洗濯槽へ流したり、噴霧したりする方法もある。揮発性薬剤を洗濯槽に徐放する方法も提案されている。
【0013】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、次のものがある。
【0014】
【特許文献1】特開2002−336197号公報
【特許文献2】特開2005−118198号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、従来のオゾン水応用機器61では、そのメリットであるオゾン残留性の無さが逆にデメリットとなり、運転停止時に機器内に殺菌剤が残らず、殺菌効果が期待できない。
【0016】
また、機器内の水系統は排水をしていても、水滴や死水は若干残り、水系統は高湿度環境となる。
【0017】
さらに当然のことながら、内視鏡洗浄機自身は清浄な状態で処理を完了するが、従来のオゾン水応用機器61では、機器自身の内部の洗浄度についてはあまり注意を払っていない状態であった。すなわち、患者由来の有機物や、アルコールフラッシュに使用したアルコールなどが残留し、配管系統中にカビの栄養源となる有機物(例えば、生物化学的酸素要求量(BOD:Biochemical Oxygen Demand))や、化学的酸素要求量(COD:Chemical Oxygen Demandで定量化される)が残留する可能性があった。
【0018】
つまり、従来のオゾン水応用機器61では、カビ発生の原因となる栄養分、水分が機器内に残り、外部から胞子が侵入すると、湿度や温度によっては黒カビが発生してしまう。
【0019】
また内視鏡洗浄機では、運転直後の装置内にはカビ胞子がなくても、その機能上、内視鏡を出し入れするために、外部に開放される扉(蓋)が洗浄槽に設置されており、その開閉の管理はユーザが運用管理しているので、カビ胞子が外部環境から飛来・混入することを完全に防止することは不可能である。
【0020】
すなわち、殺菌剤も残留していない状態なので、洗濯機と同様に、内視鏡洗浄機は、湿度環境や有機物の残留という点では、黒カビなどが発生する可能性があった。
【0021】
従来のオゾン水応用機器61は、内視鏡を洗浄するたびに、発生したカビもオゾン水で殺菌されるため、内視鏡の洗浄機能に問題は生じないが、洗浄中にカビが浮遊して見た目が悪いなど、ユーザの心象が悪くなりやすい問題があった。
【0022】
ただし、内視鏡洗浄機は、対象とする機器が経口機器(人体としては外部にあたる)であり、設置対象には小さなクリニックなども含まれる。このため、注射薬の製薬会社や外科手術用機器の殺菌装置のように、高レベルな殺菌(滅菌)状態を得るべく大掛かりで高価格な洗浄機能(例えば、定置洗浄(CIP:Cleaning In Place),機器を分解することなく洗浄できるように、設備構成の中に洗浄機能を組み込んで洗浄する方式)や、殺菌機能(例えば、定置滅菌(SIP:Sterilization In Place))や、死水のないサニタリーバルブを付加することは容易ではない。
【0023】
また、オゾン水応用機器では、構成材料はオゾン耐久性のあるものに限られるため、従来の洗濯機に採用・提案されているような、抗菌・防カビ剤の構成体への練りこみ・添加・コーティングは安易には採用できない。
【0024】
特に内視鏡洗浄機では、その性格上、不用意に抗菌・防カビ剤の装置内への噴霧や蒸気暴露は行えない。
【0025】
そこで、本発明の目的は、既存の機能を極力利用し、機器内のカビを防止できるオゾン水応用機器及びそのカビ防止方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明は上記目的を達成するために創案されたものであり、請求項1の発明は、洗浄対象物を洗浄するための洗浄槽と、圧力変動吸着式の酸素濃縮器と、その酸素濃縮器からの高濃度酸素でオゾンを生成するオゾン発生器と、上記洗浄槽に給水する給水ラインと、上記洗浄槽を通した水と上記オゾン発生器からのオゾンとを混合してオゾン水を製造するオゾン水製造ラインとを備え、上記洗浄槽内にオゾン水を供給して上記洗浄対象物をオゾン洗浄し、オゾン水を排水して上記洗浄槽から上記洗浄対象物を取り出した後、上記洗浄槽を洗浄するためのオゾン水応用機器において、
上記洗浄槽の残留物を水リンスで排除するための洗浄手段と、上記洗浄槽を上記オゾン水で殺菌する殺菌手段と、上記洗浄槽を乾燥させる乾燥手段とを備えたオゾン水応用機器である。
【0027】
請求項2の発明は、上記洗浄槽に、上記給水ラインと、上記洗浄槽のオゾン水を排水する排水ラインとを接続し、上記オゾン水製造ラインを上記オゾン発生器と上記洗浄槽間に接続し、これら給水ライン、排水ライン、オゾン水製造ラインを、上記洗浄手段と、上記殺菌手段と、上記乾燥手段とで共用で備えた請求項1記載のオゾン水応用機器である。
【0028】
請求項3の発明は、上記洗浄手段は、上記洗浄槽に上記給水ラインから水を給水し、給水した水を上記洗浄槽、上記オゾン水製造ライン間で循環させ、上記洗浄槽の残留物を水リンスで排除する請求項2記載のオゾン水応用機器である。
【0029】
請求項4の発明は、上記殺菌手段は、上記オゾン水製造ラインで製造したオゾン水を上記洗浄槽、上記オゾン水製造ライン間で循環させ、上記洗浄槽を上記オゾン水で殺菌する請求項1〜3いずれかに記載のオゾン水応用機器である。
【0030】
請求項5の発明は、上記乾燥手段は、上記オゾン発生器を迂回させて上記給水ライン、上記オゾン水製造ラインに乾燥気体を供給する乾燥気体供給ラインを備えた請求項2〜4いずれかに記載のオゾン水応用機器である。
【0031】
請求項6の発明は、上記乾燥手段は、さらに上記洗浄槽に接続されたヒータと、そのヒータに接続されて外気を上記ヒータに供給する外気供給ラインと、上記外気を上記乾燥気体供給ラインへ送る送風機とを備えた請求項5記載のオゾン水応用機器である。
【0032】
請求項7の発明は、上記乾燥手段は、外気を上記外気供給ラインから上記ヒータに供給して加熱し、加熱した外気を上記乾燥気体として上記送風機で上記乾燥気体供給ラインへ送り、これを上記洗浄槽、上記オゾン水製造ライン、上記排水ラインに供給し、上記洗浄槽を乾燥させる請求項5または6記載のオゾン水応用機器である。
【0033】
請求項8の発明は、上記乾燥手段は、外気と共に、上記酸素濃縮器からの高濃度酸素を上記乾燥気体供給ラインへ送り、これらを上記洗浄槽、上記オゾン水製造ライン、上記排水ラインに供給し、上記外気と上記洗浄槽からの高濃度酸素を上記ヒータで加熱し、加熱した外気と高濃度酸素を上記乾燥気体として上記送風機で上記乾燥気体供給ラインへ戻し、上記洗浄槽を乾燥させる請求項5または6記載のオゾン水応用機器である。
【0034】
請求項9の発明は、上記乾燥手段は、上記酸素濃縮器からの乾燥仕上げ用の高濃度酸素を上記乾燥気体として上記乾燥気体供給ラインへ送り、これを上記洗浄槽、上記オゾン水製造ライン、上記排水ラインに供給し、上記洗浄槽を仕上げ乾燥させる請求項5〜8いずれかに記載のオゾン水応用機器である。
【0035】
請求項10の発明は、洗浄対象物を洗浄するための洗浄槽と、圧力変動吸着式の酸素濃縮器と、その酸素濃縮器からの高濃度酸素でオゾンを生成するオゾン発生器と、上記洗浄槽に給水する給水ラインと、上記洗浄槽を通した水と上記オゾン発生器からのオゾンとを混合してオゾン水を製造するオゾン水製造ラインとを備え、上記洗浄槽内にオゾン水を供給して上記洗浄対象物をオゾン洗浄し、上記洗浄槽から取り出して排水した後、上記洗浄槽を洗浄するためのオゾン水応用機器のカビ防止方法において、
上記洗浄槽の残留物を水リンスで排除する洗浄工程と、上記洗浄槽を上記オゾン水で殺菌する殺菌工程と、上記洗浄槽を乾燥させる乾燥工程とを備えたオゾン水応用機器のカビ防止方法である。
【0036】
請求項11の発明は、上記乾燥工程は、加熱した外気で上記洗浄槽を乾燥させる温風乾燥工程、及び/又は上記酸素濃縮器からの乾燥仕上げ用の高濃度酸素で上記洗浄槽を仕上げ乾燥させる乾燥仕上げ工程である請求項10記載のオゾン水応用機器のカビ防止方法である。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、機器内は有機物が低減され、残留水分排除により湿度が下がるため、カビ防止効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、本発明の好適な実施形態を添付図面にしたがって説明する。
【0039】
図1は、本発明の好適な実施形態を示すオゾン水応用機器の概略図である。
【0040】
図1に示すように、本実施形態に係るオゾン水応用機器1は、使用済みの内視鏡などの洗浄対象物xを洗浄すると共に、洗浄対象物xを取り出した後に機器内のカビ発生の防止を図った狭い室内にも設置可能な比較的小型のオゾン水応用機器である。以下では、オゾン水応用機器を主に内視鏡洗浄機として利用する例で説明する。
【0041】
オゾン水応用機器1は、洗浄対象物xを洗浄するための洗浄槽(オゾン水チャンバ)2と、圧力変動吸着(PSA:Pressure Swing Adsorption)方式の酸素濃縮器3と、その酸素濃縮器3からの高濃度酸素(PSA酸素、あるいはPSA乾燥酸素ガス)をオゾン化してオゾンを生成するオゾン発生器としてのオゾナイザ4とを備えて主に構成される。
【0042】
洗浄槽2は、横断面が矩形あるいは円形である筒状のケース2aと、そのケース2aの上部を覆う開閉自在なフタ2bとからなり、内部に貯水できるものである。
【0043】
酸素濃縮器3は、空気を圧縮するコンプレッサ5と、その上流側に空気中の水分を吸着する活性アルミナからなる吸湿剤mを充填すると共に、下流側に空気中の窒素を選択的に吸着するゼオライトからなる吸着剤aをそれぞれ充填した2つの吸着筒6a,6bと、コンプレッサ5からの圧縮空気を各吸着筒6a,6bに交互に供給して吸着剤aに窒素を吸着させ、他方、各吸着筒6a,6bの窒素を脱着させて排気するための2つの三方向弁からなる切替弁7とを備えて主に構成される。
【0044】
切替弁7は、酸素濃縮器3の通常運転(酸素製造)時、コンプレッサ5からの圧縮空気を一方の吸着筒6aに供給する流路である酸素供給ライン8と、他方、一方の吸着筒6aの吸着剤aに吸着した窒素を脱着して排気する流路である排気ライン9とを切り替えるものである。他方の吸着筒6bについても同様である。排気ライン9の排気口には、排気音を消音するサイレンサ10が接続される。
【0045】
各吸着筒6a,6bの下流側には、各吸着筒6a,6bに共用の酸素供給ライン11が接続され、その酸素供給ライン11と各吸着筒6a,6b間に、各吸着筒6a,6b内の圧力を調整するためのオリフィス12がそれぞれ設けられる。
【0046】
酸素供給ライン11の途中には、各吸着筒6a,6bからの高濃度酸素を一時蓄えると共に、運転停止時に高濃度酸素の一部を窒素および水分のパージガスとして各吸着筒6a,6bに供給するバッファタンク(Oバッファタンク)13が設けられる。
【0047】
バッファタンク13の下流側となる酸素供給ライン11には、オゾナイザ4へ供給される高濃度酸素の流量を調整するためのレギュレータ14が設けられる。レギュレータ14の下流側となる酸素供給ライン11には、バッファタンク13内の圧力を調整するためのオリフィス15が設けられる。レギュレータ14とオゾナイザ4間の酸素供給ライン11には、下流側閉止弁としての電磁弁からなるオゾナイザ閉止弁16が設けられる。
【0048】
この酸素濃縮器3では、コンプレッサ5で吸着筒6a,6bに高圧の空気を流入し、空気中の窒素を一方の吸着筒6aの吸着剤に吸着させて分離する吸着工程と、切替弁7で流路を切り替え、他方の吸着筒6bの圧力を下げることで、吸着筒6bの吸着剤に吸着した窒素をサイレンサ10を介して放出し、吸着剤の再生を行う再生工程(脱着工程)とを交互に繰り返し、高濃度酸素を連続的に製造している。
【0049】
一方、洗浄槽2の上部には、洗浄槽2に水道水などの水を供給する給水ライン17が接続され、洗浄槽2の下部側方となるオゾナイザ4と洗浄槽2間に、洗浄槽2を通した水とオゾナイザ4からのオゾンとを混合してオゾン水を製造し、これを洗浄槽2に供給するオゾン水製造ライン18が接続される。
【0050】
給水ライン17には、電磁弁からなる給水用閉止弁19が設けられる。オゾン水製造ライン18は、上流側から順に、電磁弁からなる製造ライン用閉止弁20と、洗浄槽2内の水やオゾン水とオゾナイザ4からのオゾンとを吸引して混合するための吸引器としてのアスピレータ21と、洗浄槽2の水を吸い込む吸込ポンプ22とを備える。
【0051】
洗浄槽2の下部には、洗浄槽2内の水やオゾン水を排水する排水ライン23が接続され、その排水ライン23に電磁弁からなる排水用閉止弁24が設けられる。
【0052】
洗浄槽2の側方には、洗浄槽2内でオゾン水や水を循環させるためのオゾン水循環ライン25が接続される。オゾン水循環ライン25は、上流側から順に、電磁弁からなる循環ライン用閉止弁26と、洗浄槽2内のオゾン水や水を吸い込む循環ポンプ27とを備える。
【0053】
さて、オゾン水応用機器1は、洗浄槽2内で洗浄対象物xをオゾン洗浄し、オゾン水を排水して洗浄槽2から洗浄対象物xを取り出した後、洗浄槽2とその周辺部材を洗浄するためのものである。
【0054】
このオゾン水応用機器1は、洗浄槽2に残留物(洗浄前の洗浄対象物xに付着していたもの)を水リンスで排除するための洗浄手段と、洗浄槽2をオゾン水で殺菌する殺菌手段と、洗浄槽2を乾燥させる乾燥手段とを備える。
【0055】
洗浄手段と、殺菌手段と、乾燥手段とは、給水ライン17、排水ライン23、オゾン水製造ライン18、オゾン水循環ライン25を、さらに厳密には酸素濃縮器3とオゾナイザ4とをも、共用で備える。
【0056】
洗浄手段、殺菌手段、乾燥手段の詳しい作用は、オゾン水応用機器1の動作とそのカビ防止方法で後述する。
【0057】
また、乾燥手段は、オゾナイザ4を迂回させて(経由しないで)給水ライン17、オゾン水製造ライン18、オゾン水循環ライン25に、乾燥気体を供給する乾燥気体供給ライン28を備える。
【0058】
さらに、乾燥手段は、洗浄槽2の上部に接続されてオゾンを外部に排気する排気ライン29と、その排気ライン29に設けられて洗浄槽2内のオゾンなどの雰囲気を加熱するヒータ30と、そのヒータ30の側方に接続されて外気をヒータ30に供給する外気供給ライン31と、ヒータ30の下流側の排気ライン29に接続されて洗浄槽2からのオゾンを触媒を用いて分解するオゾン分解器32と、そのオゾン分解器32の下流側の排気ライン29に接続されて乾燥気体を後述する排気用乾燥ライン28cを介して分岐乾燥ライン28aへ送る送風機としての排気ファン33とを備える。
【0059】
ヒータ30は、従来と同様、オゾン分解器32に充填した触媒を所定温度(例えば、約150〜200℃)に加熱する機能も有する。排気ファン33も、従来と同様、オゾン分解後の酸素を排気する機能も有する。
【0060】
排気ライン29には、洗浄槽2とヒータ30間に電磁弁からなる第1排気用閉止弁34aが設けられ、排気ファン33よりも下流側に電磁弁からなる第2排気用閉止弁34bが設けられる。外気供給ライン31には、電磁弁からなる外気用閉止弁35が設けられる。
【0061】
また、上述した殺菌手段は、乾燥手段が備える部材のうち、排気ライン29、ヒータ30、オゾン分解器32、排気ファン33も共用で備える。
【0062】
乾燥気体供給ライン28は、オリフィス15とオゾナイザ閉止弁16間の酸素供給ライン11から分岐され、オゾン水循環ライン25まで至る分岐乾燥ライン28aと、その分岐乾燥ライン28aから分岐され、分岐乾燥ライン28aとオゾン水製造ライン18間を結ぶオゾン水製造用乾燥ライン28bと、分岐乾燥ライン28aから分岐され、分岐乾燥ライン28aと排気ファン33の下流側の排気ライン29との間を結ぶ排気用乾燥ライン28cと、分岐乾燥ライン28aから分岐され、分岐乾燥ライン28aと給水ライン17間を結ぶ給水用乾燥ライン28dとからなる。
【0063】
分岐乾燥ライン28aには、後述するカビ防止工程を実現するための電磁弁からなる閉止弁が複数個設けられる。
【0064】
より詳細には、分岐乾燥ライン28aとオゾン水製造用乾燥ライン28bの分岐点よりも、上流側の分岐乾燥ライン28aには、第1乾燥用弁36aが設けられる。オゾン水製造用乾燥ライン28bの下流側には、第2乾燥用弁36bが設けられる。オゾン水製造用乾燥ライン28bの下流端は、オゾン水製造ライン18の製造ライン用閉止弁20よりも下流側に接続される。排気用乾燥ライン28cには、第3乾燥用弁36cが設けられる。給水用乾燥ライン28dの下流側には、第4乾燥用弁36dが設けられる。給水用乾燥ライン28dの下流端は、給水ライン17の給水用閉止弁19よりも下流側に接続される。給水用乾燥ライン28dとの分岐点よりも下流側の分岐乾燥ライン28aには、第5乾燥用弁36eが設けられる。分岐乾燥ライン28aの下流端は、オゾン水循環ライン25の循環ライン用閉止弁26よりも下流側に接続される。
【0065】
さらに、オゾン水応用機器1は、図示しない制御手段を備えており、その制御手段により、酸素濃縮器3の切替弁7を始め、各弁の開閉やその順序を制御すると共に、コンプレッサ5、オゾナイザ4、ヒータ30、排気ファン33、各ポンプの運転(作動)・停止を制御する。
【0066】
この制御手段は、後述するオゾン水応用機器1のカビ防止方法において、4つの工程(モード)からなるカビ防止工程を実施すべく、各工程を適宜選択・組み合わせてオゾン水応用機器1の運転・停止を制御したり、各工程の繰り返し回数、実施時間などを予め設定しておいたりする機能も有する。
【0067】
次に、オゾン水応用機器1の(水回りの)カビ防止方法を、オゾン水応用機器1の動作と共に説明する。
【0068】
オゾン水応用機器1のカビ防止方法に先立ち、洗浄対象物xの洗浄方法を簡単に説明する。
【0069】
(通常運転)
通常運転に先立ち、制御手段は、乾燥気体供給ライン28の第1〜4乾燥用弁28a〜28dを閉にし、外気供給ライン31の外気用閉止弁35を閉にし、第1,2排気用閉止弁34a,34bを開にしておく。
【0070】
まずフタ2bを開け、洗浄槽2に給水ライン17から給水して水(ここでは、水道水)を貯留し、洗浄対象物xを入れてフタ2bを閉める。酸素濃縮器3で高濃度酸素(例えば、酸素濃度が約80〜97%)を製造し、その高濃度酸素からオゾナイザ4でオゾンを生成する。
【0071】
高濃度酸素の酸素濃度や供給量(製造量あるいは流量)は、コンプレッサ5の吐出圧、オリフィス12,15の設定値、バッファタンク13の容量、レギュレータ14の調整量を適宜設定することで、圧縮空気の流量、吸着筒6a,6b内の圧力を変更して決定する。本実施形態では、コンプレッサ5の吐出圧を0.2MPa、バッファタンク13の容積を300mL、高濃度酸素の供給量を0.8L/分にした。
【0072】
また、オゾン濃度は、そのまま大気開放できる1ppm以下、好ましくは0.5ppm以下にするとよい。オゾン濃度の調整は、アスピレータ21内でオゾンと水を混合する際のバブリング量で行う。
【0073】
このオゾンをオゾン製造ライン18のアスピレータ21に導き、他方そのアスピレータ21を介して洗浄槽2の水を吸込ポンプ22で吸い込み、オゾン製造ライン18でオゾンと水を混合してオゾン水を製造する。洗浄槽2にオゾン水を供給し、そのオゾン水をオゾン循環ライン25の循環ポンプ27で循環させ、洗浄対象物xを所定時間(約15〜20分)オゾン洗浄(殺菌・滅菌も含む)する。
【0074】
その後、酸素濃縮器3とオゾナイザ4を停止した後、オゾン水を排水ライン23から排水し、洗浄槽2内部にオゾンが残留していないことを確認した上でヒータ30と排気ファン33を停止し、フタ2bを開け、洗浄槽2から洗浄対象物xを取り出す。洗浄中に水に溶解しなかったオゾンや、排水後に残留しているオゾンは、ヒータ30で触媒が加熱されたオゾン分解器32で分解され、排気ファン33で排気される。
【0075】
(カビ防止工程)
さて、制御手段は、
1)洗浄工程としてのCIPモード(CIP工程)
2)殺菌工程としての殺菌モード(SIP工程)
3)乾燥工程のうちの温風乾燥モード(温風乾燥工程)
4)乾燥工程のうち、乾燥仕上げ工程としての冷風による乾燥仕上げモード(PSA乾燥工程)
の4つの工程からなるカビ防止工程を実施する。
【0076】
1)のCIPモードは、制御手段が洗浄手段を制御することで、その洗浄手段が水リンスによって洗浄槽2や各配管内の残留有機物を排除するモードを実施し、
2)の殺菌モードは、制御手段が殺菌手段を制御することで、その殺菌手段がオゾン水によって洗浄槽2や各配管内を殺菌・洗浄するモードを実施し、
3)の温風乾燥モードは、制御手段が乾燥手段を制御することで、その乾燥手段がヒータ30や排気ファン33などによる加熱して得られる温風で洗浄槽2や各配管内を乾燥するモードを実施し、
4)乾燥仕上げモードは、制御手段が乾燥手段を制御することで、その乾燥手段が加熱しない高濃度酸素などの乾燥気体によって、洗浄槽2や各配管内を仕上げ乾燥するモード
である。
【0077】
制御手段は、1)〜4)の各モードの実施に先立ち、いったん酸素濃縮器3、オゾナイザ4、吸込ポンプ22、循環ポンプ27を停止しておく。
【0078】
1)CIPモード
図2に示すように、CIPモードでは、カビの栄養となる汚れを取り除く。通常運転と同様に水道水を給水し、機器内の各種ポンプ22,27を運転しながら、水系統の洗浄を行い、所定の時間で排水する運転を必要回数反復する。反復回数は、予め実験で決められた目標COD値を達成する回数としてもよいし、制御手段にCOD検知機能を設けて、所定のCODに低下するまで反復してもよい。
【0079】
より詳細いえば、洗浄対象物xを取り出した後、フタ2bを閉める。洗浄手段は、排水用閉止弁24を一時閉め、給水用閉止弁19を開き、洗浄槽2に給水ライン17から水道水などの水を給水して貯留し、給水用閉止弁19を閉める(図2の(i))。
【0080】
この水をオゾン水循環ライン25により、洗浄槽2、オゾン水製造ライン18、オゾン水循環ライン25間で循環させて循環洗浄し(図2の(ii))、所定時間後に排水用閉止弁24を開けて排水し、洗浄槽2、オゾン水製造ライン18、オゾン水循環ライン25の残留物を水リンスで排水ライン23から排除する(図2の(iii))。その後、上述したCIPモードを残留物の量に応じて必要回数繰り返してもよい。
【0081】
2)殺菌モード
図3に示すように、殺菌モードでは、基本的には通常運転と同様に、オゾン水を供給し、機器内の各種ポンプ22,27を運転しながら、水系統の殺菌・洗浄を行い、所定の時間で排水する運転を必要回数反復する。反復回数は、予め決めておいて制御手段に設定してもよいし、ユーザが選択してもよい。
【0082】
より詳細にいえば、洗浄対象物xを取り出した後、フタ2bを閉める。殺菌手段は、洗浄槽2に給水ライン17から水を給水して貯留し、給水用閉止弁19を閉める(図3の(i))。
【0083】
酸素濃縮器3の運転を再開して高濃度酸素を製造し、その高濃度酸素からオゾナイザ4でオゾンを生成する。オゾン濃度は、通常運転と同程度でよい。オゾン製造ライン18でオゾンと洗浄槽2を通した水とを混合してオゾン水を製造する。洗浄槽2にオゾン水を供給し、このオゾン水をオゾン水循環ライン25により、洗浄槽2、オゾン水製造ライン18、オゾン水循環ライン25間で循環させ、洗浄槽2、オゾン水製造ライン18、オゾン水循環ライン25を所定時間(約15〜20分)オゾン洗浄(殺菌・滅菌も含む)する(図3の(ii))。
【0084】
所定時間後、酸素濃縮器3、オゾナイザ4、各ポンプ22,27を停止し、排水用閉止弁24を開けてオゾン水を排水ライン23から排水する(図3の(iii))。オゾン洗浄中に水に溶解しなかったオゾンや、排水後に残留しているオゾンは、ヒータ30で触媒が加熱されたオゾン分解器32で分解され、排気ファン33で排気される(オゾン脱気・分解)。洗浄槽2内部にオゾンが残留していないことを確認した上で、作動していたヒータ30と排気ファン33を停止する。その後、上述した殺菌モードを必要回数繰り返してもよい。
【0085】
3)温風乾燥モード
3a)外気利用型
図4に示すように、温風乾燥モードでは、オゾン分解系統に導入した外気Aを加熱して得られる温風を、給水系統、オゾン水循環系統、オゾン水製造系統に送風して、所定時間乾燥する。乾燥気体(乾燥エア)としての加熱した外気HAは、洗浄槽2を経て、排水系等に排気されることで、全水系統を乾燥する。乾燥時間は予め決めておいて制御手段に設定してもよいし、ユーザが選択してもよい。
【0086】
より詳細にいえば、洗浄対象物xを取り出した後、フタ2bを閉める。乾燥手段は、給水用閉止弁19、製造ライン用閉止弁20、循環ライン用閉止弁26、排水用閉止弁24を開、第1排気用閉止弁34aを開、第2排気用閉止弁34b、オゾナイザ閉止弁16を閉の状態で、乾燥気体供給ライン28の第1乾燥用閉止弁36aを閉、第2〜第5乾燥用弁36b〜36eを開にし、ヒータ30と排気ファン33の作動を再開する。
【0087】
乾燥手段は、外気Aを外気供給ライン31からヒータ30に供給して加熱し、加熱した外気HAを乾燥気体として排気ファン33で、排気用乾燥ライン28cを介して乾燥気体供給ライン28へ送る。
【0088】
そして乾燥手段は、加熱した外気HAを、オゾン水製造用乾燥ライン28bを介してオゾン水製造ライン18、給水用乾燥ライン28dを介して給水ライン17、乾燥気体供給ライン28の下流側を介してオゾン水循環ライン25にそれぞれ供給し、さらに洗浄槽2と排水ライン23に供給する(図4の(i))。
【0089】
これにより、加熱した外気HAで各水系統のラインと洗浄槽2を、制御手段に予め設定した時間乾燥させる。その後、作動していたヒータ30と排気ファン33を停止し、各弁をすべて閉にする。
【0090】
3b)外気+酸素濃縮器利用型
乾燥手段は、上述した3a)の際、オゾナイザ閉止弁16、第1乾燥用弁36aを開にし、酸素濃縮器3の運転を再開し、さらに酸素濃縮器3からの高濃度酸素HOを乾燥気体供給ライン28へ送る。この高濃度酸素HOをオゾン水製造用乾燥ライン28bを介してオゾン水製造ライン18、給水用乾燥ライン28dを介して給水ライン17、乾燥気体供給ライン28の下流側を介してオゾン水循環ライン25にそれぞれ供給し、さらに洗浄槽2に供給する。
【0091】
乾燥手段は、外気と洗浄槽2からの高濃度酸素HOをヒータ30で加熱し、加熱した外気HAと高濃度酸素HOを、乾燥気体として排気ファン33で排気用乾燥ライン28cを介して乾燥気体供給ライン28へ戻す(図4の(ii))。
【0092】
これにより、加熱した外気HAと高濃度酸素HOで各水系統のラインと洗浄槽2を、制御手段に予め設定した時間乾燥させる。その後、ヒータ30と排気ファン33を停止し、各弁をすべて閉にする。
【0093】
上述した3a)および3b)の温風乾燥モードでは、各水系統を同時に温風乾燥したが、制御手段により各弁を適宜開閉制御し、各水系統を個別に温風乾燥してもよい。
【0094】
4)乾燥仕上げモード
図5に示すように、乾燥仕上げモードでは、乾燥仕上げ用の冷風である高濃度酸素HOを、給水系統、オゾン水循環系統、オゾン水製造系統に送風して、所定時間乾燥する。乾燥気体としての高濃度酸素HOは、洗浄槽2を経て、排水系等に排気されることで、全水系統を乾燥する。乾燥時間は予め決めておいて制御手段に設定してもよいし、ユーザが選択してもよい。
【0095】
より詳細にいえば、洗浄対象物xを取り出した後、フタ2bを閉める。乾燥手段は、給水用閉止弁19、製造ライン用閉止弁20、循環ライン用閉止弁26、排水用閉止弁24を開、第1排気用閉止弁34aを開、第2排気用閉止弁34b、オゾナイザ閉止弁16を閉の状態で、乾燥気体供給ライン28の第1〜第5乾燥用弁36a〜36eを開にし、ヒータ30を停止したまま、排気ファン33の作動を再開する。
【0096】
乾燥手段は、高濃度酸素HOを乾燥気体供給ライン28からオゾン水製造用乾燥ライン28bを介してオゾン水製造ライン18、給水用乾燥ライン28dを介して給水ライン17、乾燥気体供給ライン28の下流側を介してオゾン水循環ライン25にそれぞれ供給し、さらに洗浄槽2と排水ライン23に供給する(図5の(i))。
【0097】
これにより、高濃度酸素HOで各水系統のラインと洗浄槽2を、制御手段に予め設定した時間仕上げ乾燥させる。その後、作動していた排気ファン33を停止し、各弁をすべて閉にする。
【0098】
上述した4)の乾燥仕上げモードでは、各水系統を同時に冷風乾燥したが、制御手段により各弁を適宜開閉制御し、各水系統を個別に冷風乾燥してもよい。
【0099】
以上説明した1)〜4)の各モードの実施は、制御手段による完全自動運転でも、ユーザがモード選択した後、選択したモードで制御手段によるユーザ選択式自動運転でもよい。
【0100】
完全自動運転としては、例えば、洗浄対象物xを取り出した後、フタ2bを閉め、所定時間経過すると、1)〜4)の各モードを順に実施する方法がある。
【0101】
また、ユーザ選択式自動運転としては、通常運転におけるオゾン洗浄後には、毎回1)のモードのみ、夜間は1)+4)のモード、週末は1)+2)+4)、オゾン水応用機器1の長期停止時には、全モード完全乾燥などの方法がある。
【0102】
本実施形態の作用を説明する。
【0103】
オゾン水応用機器1は、従来と同様の洗浄槽2、酸素濃縮器3、オゾナイザ4、給水ライン17、オゾン水製造ライン18、オゾン水循環ライン25を備えており、さらに洗浄手段、殺菌手段、乾燥手段を備える点に特徴がある。
【0104】
オゾン水応用機器1では、洗浄槽2から洗浄済みの洗浄対象物xを取り出した後、これら洗浄手段、殺菌手段、乾燥手段により、上述した1)CIPモード、2)SIPモード、3)温風乾燥モード、4)乾燥仕上げモードを、適宜組み合わせて実施している。
【0105】
これにより、オゾン水応用機器1によれば、洗浄槽2や各水系統などの機器内はカビの栄養源となる有機物が低減され、さらに残留水分排除により湿度が下がるため、機器内のカビの発生を防止できる。
【0106】
完全に乾燥できれば効果も完全であるが、乾燥気体を流通して湿度を下げるだけでも十分な効果がある。例えば、PSA流量0.8L/min=48L/hr、水系統の体積がその約半分の場合は、1hrに2回換気できる。高濃度酸素の湿度はほぼゼロ(ガス温度30℃程度で大気圧露点20℃程度のため、計算上は2.2RH(相対湿度))である。
【0107】
副次的な効果として、酸素濃縮器3の運転頻度が増加するため、酸素濃縮器3(特に吸着筒6a,6b内に充填した吸着剤)の劣化防止効果も得られる。
【0108】
また、洗浄手段、殺菌手段、乾燥手段は、給水ライン17、排水ライン23、オゾン水製造ライン18、オゾン水循環ライン25を共用で備えるため、機器のカビ防止効果を発揮させるための部材を必要最小限にできる。
【0109】
特に、オゾン水応用機器1は、基本的には図6で説明した従来のオゾン水応用機器61に、図1に示す乾燥気体供給ライン28と、外気供給ライン31と、各弁と(図1〜図5中の太実線で示す部分)を追加して乾燥手段を構成し、これらを動作させるための機能を有するように制御手段を変更すればよいので、既存の機能を最大限利用して機器内のカビ発生を抑制できる。
【0110】
オゾン水応用機器1では、従来のオゾン水応用機器61に対し、オゾン水製造ライン18に製造ライン用閉止弁20を追加すると共に、オゾン水循環ライン25に循環ライン用閉止弁26を追加した。これにより、乾燥気体などのガス送風時に、ガスの流れが一方通行となり、ガスが流通しないエリアがなくなる。
【0111】
一般にオゾン水応用機器では、機種ごとに使用するオゾン発生量が異なるため、PSA容量や、オゾン分解用ヒータ・ファン容量は異なるが、オゾン水応用機器1によれば、これらの条件を各モードの運転時間の設定でクリアできる。
【0112】
また、オゾン濃度、乾燥気体流量、温風温度・流量などは製品固有の仕様なので、オゾン水応用機器1では、これらについても、運転時間の設定で必要な機能を発揮できる。
【0113】
さらに、オゾン水応用機器1では、薬剤を使用せずに機器内のカビの発生を防止できるメリットもある。
【0114】
オゾン水応用機器1において、通常運転停止直後、夜間、ユーザ選択式など、カビ防止工程を使用するタイミングはいずれでもよいが、なるべく運転直後がよい。また、できるだけ水配管系統や洗浄槽2には、残留物や水分を下流側に流すため、水平面に対して下向きに勾配を設けるとよい。
【0115】
上記実施形態の変形例として、外部環境とつながる給水系統、排水系統、オゾンガス供給系統、オゾンガス分解系統に無菌フィルタを設置すると共に、洗浄対象物xを出し入れするフタ2b上部にHEPAフィルタによる無菌エアダウンフローを用意することで、機器内部へのカビ胞子混入を低減してもよい。
【0116】
2)のモードを実施する際、さらに病院の蒸気ユーティリティを導入し、高レベルな蒸気SIPを実施してもよい。
【0117】
オゾン水応用機器1自体の発熱(主にヒータ30周辺で発生する)を利用して、排熱経路と水系統が熱交換できるような配管レイアウトとし、排熱を利用した水系統の乾燥を行ってもよい。
【0118】
本実施形態に係るオゾン水応用機器1は、内視鏡洗浄機だけでなく、卵や野菜などの食品洗浄機、目薬用容器などの医療用容器洗浄機にも応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】本発明の好適な実施形態を示すオゾン水応用機器の概略図である。
【図2】図1に示したオゾン水応用機器の動作(CIPモード)の一例を示す概略図である。
【図3】図1に示したオゾン水応用機器の動作(殺菌モード)の一例を示す概略図である。
【図4】図1に示したオゾン水応用機器の動作(温風乾燥モード)の一例を示す概略図である。
【図5】図1に示したオゾン水応用機器の動作(乾燥仕上げモード)の一例を示す概略図である。
【図6】従来のオゾン水応用機器の概略図である。
【符号の説明】
【0120】
1 オゾン水応用機器
2 洗浄槽
3 酸素濃縮器
4 オゾナイザ(オゾン発生器)
28 乾燥気体供給ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄対象物を洗浄するための洗浄槽と、圧力変動吸着式の酸素濃縮器と、その酸素濃縮器からの高濃度酸素でオゾンを生成するオゾン発生器と、上記洗浄槽に給水する給水ラインと、上記洗浄槽を通した水と上記オゾン発生器からのオゾンとを混合してオゾン水を製造するオゾン水製造ラインとを備え、上記洗浄槽内にオゾン水を供給して上記洗浄対象物をオゾン洗浄し、オゾン水を排水して上記洗浄槽から上記洗浄対象物を取り出した後、上記洗浄槽を洗浄するためのオゾン水応用機器において、
上記洗浄槽の残留物を水リンスで排除するための洗浄手段と、上記洗浄槽を上記オゾン水で殺菌する殺菌手段と、上記洗浄槽を乾燥させる乾燥手段とを備えたことを特徴とするオゾン水応用機器。
【請求項2】
上記洗浄槽に、上記給水ラインと、上記洗浄槽のオゾン水を排水する排水ラインとを接続し、上記オゾン水製造ラインを上記オゾン発生器と上記洗浄槽間に接続し、これら給水ライン、排水ライン、オゾン水製造ラインを、上記洗浄手段と、上記殺菌手段と、上記乾燥手段とで共用で備えた請求項1記載のオゾン水応用機器。
【請求項3】
上記洗浄手段は、上記洗浄槽に上記給水ラインから水を給水し、給水した水を上記洗浄槽、上記オゾン水製造ライン間で循環させ、上記洗浄槽の残留物を水リンスで排除する請求項2記載のオゾン水応用機器。
【請求項4】
上記殺菌手段は、上記オゾン水製造ラインで製造したオゾン水を上記洗浄槽、上記オゾン水製造ライン間で循環させ、上記洗浄槽を上記オゾン水で殺菌する請求項1〜3いずれかに記載のオゾン水応用機器。
【請求項5】
上記乾燥手段は、上記オゾン発生器を迂回させて上記給水ライン、上記オゾン水製造ラインに乾燥気体を供給する乾燥気体供給ラインを備えた請求項2〜4いずれかに記載のオゾン水応用機器。
【請求項6】
上記乾燥手段は、さらに上記洗浄槽に接続されたヒータと、そのヒータに接続されて外気を上記ヒータに供給する外気供給ラインと、上記外気を上記乾燥気体供給ラインへ送る送風機とを備えた請求項5記載のオゾン水応用機器。
【請求項7】
上記乾燥手段は、外気を上記外気供給ラインから上記ヒータに供給して加熱し、加熱した外気を上記乾燥気体として上記送風機で上記乾燥気体供給ラインへ送り、これを上記洗浄槽、上記オゾン水製造ライン、上記排水ラインに供給し、上記洗浄槽を乾燥させる請求項5または6記載のオゾン水応用機器。
【請求項8】
上記乾燥手段は、外気と共に、上記酸素濃縮器からの高濃度酸素を上記乾燥気体供給ラインへ送り、これらを上記洗浄槽、上記オゾン水製造ライン、上記排水ラインに供給し、上記外気と上記洗浄槽からの高濃度酸素を上記ヒータで加熱し、加熱した外気と高濃度酸素を上記乾燥気体として上記送風機で上記乾燥気体供給ラインへ戻し、上記洗浄槽を乾燥させる請求項5または6記載のオゾン水応用機器。
【請求項9】
上記乾燥手段は、上記酸素濃縮器からの乾燥仕上げ用の高濃度酸素を上記乾燥気体として上記乾燥気体供給ラインへ送り、これを上記洗浄槽、上記オゾン水製造ライン、上記排水ラインに供給し、上記洗浄槽を仕上げ乾燥させる請求項5〜8いずれかに記載のオゾン水応用機器。
【請求項10】
洗浄対象物を洗浄するための洗浄槽と、圧力変動吸着式の酸素濃縮器と、その酸素濃縮器からの高濃度酸素でオゾンを生成するオゾン発生器と、上記洗浄槽に給水する給水ラインと、上記洗浄槽を通した水と上記オゾン発生器からのオゾンとを混合してオゾン水を製造するオゾン水製造ラインとを備え、上記洗浄槽内にオゾン水を供給して上記洗浄対象物をオゾン洗浄し、上記洗浄槽から取り出して排水した後、上記洗浄槽を洗浄するためのオゾン水応用機器のカビ防止方法において、
上記洗浄槽の残留物を水リンスで排除する洗浄工程と、上記洗浄槽を上記オゾン水で殺菌する殺菌工程と、上記洗浄槽を乾燥させる乾燥工程とを備えたことを特徴とするオゾン水応用機器のカビ防止方法。
【請求項11】
上記乾燥工程は、加熱した外気で上記洗浄槽を乾燥させる温風乾燥工程、及び/又は上記酸素濃縮器からの乾燥仕上げ用の高濃度酸素で上記洗浄槽を仕上げ乾燥させる乾燥仕上げ工程である請求項10記載のオゾン水応用機器のカビ防止方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−39614(P2009−39614A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−205243(P2007−205243)
【出願日】平成19年8月7日(2007.8.7)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】