説明

オピオイド送達系

痛みの治療または管理における肺性投与のためのオピオイド処方、肺性薬剤送達装置、投与の方法、キット、およびキットの使用。前記処方は、少なくとも一つの即効開始型オピオイドを含み、好ましくはまた、投与の回数を減らすための徐放効果型オピオイドを含む。本発明はオピオイド処方の副作用を使用し、薬剤の取り込みを患者自身が自己制限することができるようにする。その結果、毒作用を回避し、同時に痛覚脱失を達成することができる。投与のための最適な薬剤処方と最適なパラメータを決定するために、薬物動態学的および薬力学的モデルが使用される。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
[0001] 本発明は、薬学的製剤および該製剤を投与する方法、より詳しくは、オピオイドに基づいた痛覚脱失剤(鎮痛剤)およびこれを投与するための方法に関する。
【発明の背景】
【0002】
[0002] オピオイドは、現存する中で最も古い薬剤の一つであり、今なお疼痛処理のメーンステーとなっている。アヘン(原物のオピオイド)は、ケシ植物に由来する。「アヘン剤」は、アヘンの天然誘導体であって、モルヒネ、メサドンおよびヘロインが含まれる。「オピオイド」は、アヘン、アヘン剤、およびアヘンと同じ薬理学的効果を有する合成薬を含む、より広範な種類の薬剤である。一般に使用された合成オピオイドには、メペリジン、フェンタニル、アルフェンタニル、スフェンタニル、およびレミフェンタニルが含まれる。
【0003】
[0003] オピオイドは、脊髄および脳ならびに周辺組織のmu受容体の結合を通してその効果を発揮すると考えられている。mu受容体との結合は、多種多様な薬理学的効果を誘導し、その薬理学的効果には、例えば痛覚脱失、鎮静、および腸運動低下といった治療学的効果や、嘔気、嘔吐、尿貯留、そう痒、換気抑制(ventilatory depression)、嗜癖、および毒性(例えば重篤な換気抑制、意識喪失および死)といった副作用が含まれる。
【0004】
[0004] オピオイドは、送達の経路、その物理化学的組成物、薬物吸収速度、薬物動態学および薬力学を含む多くの点において互いに異なる。オピオイド送達の非侵襲性経路には、経口、直腸、経皮、径粘膜、および吸入が含まれる。オピオイド送達の侵襲性の経路には、静脈、筋肉、硬膜、脊髄、および関節への注入が含まれる。静脈内注射が行われるとき、いくらかのオピオイドが急速に脳および脊髄に入り、薬剤作用の非常に迅速な開始をもたらす(例えば、アルフェンタニルおよびレミフェンタニル)。一方、他の方法は、作用部位にゆるやかに吸収され、薬剤作用の非常に遅い開始をもたらす(例えばモルヒネ)。いくつかのオピオイドでは、非常に迅速な代謝のために、その薬剤作用は非常に短期である(例えば、レミフェンタニル)。一方、その他のオピオイドでは、非常にゆっくりとした代謝および持続効果を有する(例えばメサドン)。薬力学の点では、オピオイドの作用強度は、非常に強力なオピオイド、例えばカーフェンタニルおよびエトルフィン(共にゾウを気絶させるために使用される)から、比較的強力でない薬剤、例えばメサドンおよびモルヒネに至るまで、約5オーダーの大きさをカバーする。オピオイドの等価作用強度(「治療学的等価率」として測定される)は、特定の文献において十分に確立されており、一つのオピオイドから他のオピオイドに患者の治療措置を変化させるときにしばしば使用される。
【0005】
[0005] これらの差異にもかかわらず、全てのオピオイドは、深刻なレベルの痛覚脱失と、致命的になる低酸素症からの深刻な毒性の両方を生み出す潜在力を有する。低酸素症の危険のため、医師は、急性および慢性的な疼痛を治療するためにオピオイドの適切な投与を使用するのを嫌う。その結果、より良い疼痛管理を提供され得た何十万人もの患者は、オピオイドの不十分な投与を受ける。逆に言えば、さらに疼痛の治療に対するヘルスケアコミュニティによる非常に注意深い手法でさえ、毎年、多くの患者は、オピオイドで誘導された換気抑制が原因で死亡している。
【0006】
[0006] 疼痛は、非常に変化しやすく、かつ非常に主観的なものである。異なる患者は、オピオイドに対して異なる応答を示す。結果として、異なる患者は、その疼痛を治療するために異なる量のオピオイドを必要とする。このように、患者が受ける鎮痛薬の量を、患者に応じて変えることが望まれていた。
【0007】
[0007] 患者へのオピオイド投薬を良好に調整する一つの試みは、「自己調節痛覚脱失(または自己調節鎮痛)(patient controlled analgesia)」(「PCA」)の導入であった(Ballantyne JC, et al. Postoperative patient-controlled analgesia : Meta-analyses of initial randomized control trials. J Clin Anesth 1993: 5: 182-193. )。PCA系では、本剤が与えられる前により多くのオピオイドを受け取るために、患者は覚醒し、送達機構を活性化しなければならない。患者がオピオイドを過剰投与された場合、患者は無意識状態になって追加的な薬剤を要求しない。このように、与えられるオピオイドの量を調節するために、PCA系は、オピオイドの副作用(鎮静)を使用する。PCA系に関する一つの問題は、PCAで最も多用される薬剤はモルヒネであるため、患者がそれを要求した後に本剤が急速に注射されるということである(典型的には、薬剤投与の時間枠は1分未満である)。血漿から作用部位までゆっくりと移動する薬剤 −これは、薬剤を患者が要求してからその薬剤の鎮痛効果が現れるまでにある程度の時間を要することを意味する。この遅延の結果として、患者は、オピオイドの第一の注入の効果レベルがまだ上昇している間に、本剤の第二(または第三)の投与をしばしば要求する。PCA系は「ロックアウト」期間(一般には5分間)を含み、オピオイド薬剤作用がまだ上昇している間により多くのオピオイドを患者に投与することを防止するのを助ける。ロックアウト期間は、典型的には医療提供者によって定義またはプログラムされながら調節されているが、ロックアウト期間をプログラミングする際のユーザーエラーまたは不注意が患者を死に至らせた多くの例が存在する。患者もまた、投薬の患者の制御が難しいので、このロックアウトにしばしば失望感を抱いている。PCAの他の不利益は、侵襲性の非経口(静脈内)投与にある。そして、高価な注入ポンプは、施設に収容された患者にPCAの使用を制限する。
【0008】
[0008] 患者でよりよくオピオイド投薬を調整する第二の試みは、出産に付随する陣痛の間の亜酸化窒素の自己投与である。亜酸化窒素マスクは子宮収縮の間、患者によって顔に押し付けられ、十分な鎮痛が達成された時点で顔から放される。しかしながら、この投薬システムを使用する亜酸化窒素の過剰投与はあまり関係がなく、このメカニズムは鎮痛効果に対する滴定であり、安全なメカニズムとして使用されていない。さらに、亜酸化窒素は、貯蔵のための大型鋼鉄タンクを必要とし、かつ投与のための複雑な送達系を必要とするガスである。従って、亜酸化窒素の使用は、主に病院環境に制限され、外来患者には適用されない。亜酸化窒素に関するさらなる潜在的問題は、その低い作用強度に関し、それゆえ酸素中において潜在的な低酸素混合物とともに高濃度(50%以上)の亜酸化窒素を投与する必要性がある。
【0009】
[0009] 本発明は、オピオイドの2つの生理反応(鎮静および換気抑制)を使用し、患者が受けるオピオイドの全量を制限することを試みる。このように、本発明は、PCAまたは他の既存のオピオイド投与方法で現在達成される安全性を上回る、オピオイド薬剤の送達の安全性を得ることを試み、これによって、危険な高レベルのオピオイド薬剤作用に患者がさらされることを制限する。本発明はまた、PCA系において現在必要とされ、フラストレーションおよびユーザーエラーの可能性を取り除く「ロックアウト」期間の必要性を取り除くことによって、鎮静の使用を向上させる。
【発明の概要】
【0010】
[0010] 従って、本発明は、第一の側面において、毒性を回避している間、患者に鎮痛作用をもたらす方法において使用するためのオピオイド処方を提供する; 前記方法には、痛覚脱失を生む肺性薬剤送達装置を使用して前記処方を連続的に吸入させ、十分な痛覚脱失が達成されるかまたは副作用の発症時に吸入を停止させることが含まれる; 前記肺性薬剤送達装置は、効果的速度で肺内の処方の粒子を沈澱させるのに適している; 前記処方には、有効量の少なくとも1つの即効開始型オピオイドと、有効量の少なくとも1つの徐放効果型オピオイドと、薬剤的に許容可能なキャリアとが含まれる; 各オピオイドの濃度およびタイプは、吸入の間、痛覚脱失が前記副作用の発症の前に達成され、かつ前記副作用の発症が毒性の発症の前に起こるように選択され、かつ最大総オピオイド血漿濃度が毒性レベルに達しないように選択される。その結果、前記副作用の発症が毒性を回避するために吸入を終了する患者によって使用され得る。
【0011】
[0011] 一実施態様において、前記処方は、各オピオイドの濃度およびタイプが、副作用を発症させる最大総オピオイド血漿濃度が、最大総オピオイド血漿濃度の66%未満または80%未満になるように選択される処方である。
【0012】
[0012] 他の実施態様において、前記処方は、少なくとも一つの即効開始型オピオイドがフェンタニル、アルフェンタニル、スフェンタニルまたはレミフェンタニルである。
【0013】
[0013] 他の実施態様において、少なくとも1つの徐放効果型オピオイドには、モルヒネ、モルヒネ-6-グルクロニド、メサドン、ヒドロモルフォン、メペリジン、肺表面で薬剤の放出を遅延させる生物適合性キャリア内に被包されたオピオイド、またはリポソームで被包されたオピオイドがある。リポソームで被包されたオピオイドには、リポソームで被包されたフェンタニルがある。
【0014】
[0014] 一実施態様において、オピオイド処方は、250〜1500mcg/mlの総オピオイド濃度を有する。
【0015】
[0015] 一実施態様において、処方におけるオピオイドは、遊離フェンタニルおよびリポソームで被包されたフェンタニルからなる。
【0016】
[0016] 一実施態様において、遊離フェンタニル対リポソームで被包されたフェンタニルの濃度比は、1:5〜2:1である。
【0017】
[0017] 他の実施態様において、遊離フェンタニル対リポソームで被包されたフェンタニルの濃度比は、約2:3である。
【0018】
[0018] 他の実施態様において、オピオイド処方には、100〜750mcg/mlの濃度で遊離フェンタニルが含まれる。
【0019】
[0019] 他の実施態様において、オピオイド処方には、250〜1500mcg/mlの濃度でリポソームで被包されたフェンタニルが含まれる。
【0020】
[0020] 他の実施態様において、オピオイド処方は、約500mcg/ml濃度の総オピオイド、約200mcg/ml濃度の遊離フェンタニルおよび約300 mcg/ml濃度のリポソームで被包されたフェンタニルを有する。
【0021】
[0021] 他の実施態様において、前記処方には、前記オピオイドが遊離フェンタニルとリポソームで被包されたフェンタニルのみである処方を除く、二以上の異なるオピオイドが含まれる。
【0022】
[0022] 他の実施態様において、処方中のオピオイドは、アルフェンタニルおよびモルヒネからなる。
【0023】
[0023] 他の実施態様において、前記処方には、300〜6700 mcg/mlの濃度においてアルフェンタニルが含まれる。
【0024】
[0024] 他の実施態様において、前記処方には、650〜13350 mcg/mlの濃度においてモルヒネが含まれる。
【0025】
[0025] 本発明の他の側面は、毒性を回避している間、患者に痛覚脱失を与えるオピオイド処方を投与する方法であって、以下の工程を含む方法である:
エアゾール粒子の処方を、痛覚脱失を与えるために効果的速度で、肺に送達させるように適合化された肺性薬剤送達装置を使用して処方を連続的に吸入させる工程;および
十分な痛覚脱失が達成されるかまたは副作用の発症時に吸入を停止させる工程。
前記処方は、有効量の少なくとも一つの即効開始型オピオイドと薬学的に許容可能なキャリアとを含む。各オピオイドの濃度およびタイプ、粒子の送達の効果的速度は、吸入の間、痛覚脱失が前記副作用の発症前に達成され、前記副作用の発症が毒性の発症前に起こるように選択され、かつ最大総オピオイド血漿濃度が毒性レベルに達しないように選択される。その結果、前記副作用の発症は、毒性を回避するために吸入を終了する患者によって使用され得る。
【0026】
[0026] 一実施態様において、前記処方は、1〜5ミクロンの質量媒体空気力学的直径で、肺性薬剤送達装置によって分配される。
【0027】
[0027] 他の実施態様において、前記処方は、1〜3ミクロンの質量媒体空気力学的直径で、肺性薬剤送達装置によって分配される。
【0028】
[0028] 他の実施態様において、前記処方は、1.5〜2ミクロンの質量媒体空気力学的直径で、肺性薬剤送達装置によって分配される。
【0029】
[0029] 本発明の他の実施態様は、各オピオイドの濃度およびタイプが、副作用を発症させる最大総オピオイド血漿濃度が、最大総オピオイド血漿濃度の66%未満または80%未満になるように選択される方法である。
【0030】
[0030] 本発明の他の実施態様は、少なくとも一つの即効開始型オピオイドが、フェンタニル、アルフェンタニル、スフェンタニルおよびレミフェンタニルから選択される方法である。
【0031】
[0031] 本発明の他の実施態様は、徐放性の放出を提供する有効量の少なくとも一つの徐放効果型オピオイドをさらに含む方法である。ここで、処方中の各オピオイドの濃度およびタイプは、吸入の間、痛覚脱失が前記副作用の発症前に達成され、前記副作用の発症が毒性の発症前に起こるように選択され、かつ最大総オピオイド血漿濃度が、毒性レベルに達しないように選択される。その結果、前記副作用の発症が、毒性を回避するために吸入を終了する患者によって使用され得る。
【0032】
[0032] 他の実施態様は、少なくとも一つの徐放効果型オピオイドが、モルヒネ、モルヒネ-6-グルクロニド、メサドン、ヒドロモルフォン、メペリジン、肺表面で薬剤の放出を遅延させる生物適合性キャリア内に被包されたオピオイド、およびリポソームで被包されたオピオイドから選択される方法である。
【0033】
[0033] 他の実施態様は、リポソームで被包されたオピオイドがリポソームで被包されたフェンタニルである方法である。
【0034】
[0034] 他の実施態様は、少なくとも一つの徐放効果型のオピオイドがモルヒネおよびリポソームで被包されたフェンタニルから選択される方法である。
【0035】
[0035] 他の実施態様は、前記処方中のオピオイドが遊離フェンタニルおよびリポソームで被包されたフェンタニルからなる方法である。
【0036】
[0036] 他の実施態様は、遊離フェンタニル対リポソームで被包されたフェンタニルの濃度比が1:5〜2:1である方法である。
【0037】
[0037] 他の実施態様は、遊離フェンタニル対リポソームで被包されたフェンタニルの濃度比が約2:3である方法である。
【0038】
[0038] 他の実施態様は、総オピオイド濃度が250〜1500mcg/mlである方法である。
【0039】
[0039] 他の実施態様は、前記処方が100〜750mcg/ml濃度の遊離フェンタニルを含む方法である。
【0040】
[0040] 他の実施態様は、前記処方が250〜1500mcg/ml濃度のリポソームで被包されたフェンタニルを含む方法である。
【0041】
[0041] 他の実施態様は、総オピオイド濃度が約500mcg/mlであり、遊離フェンタニル濃度が約200mcg/mlであり、かつリポソームで被包されたフェンタニル濃度が約300mcg/mlである方法である。
【0042】
[0042] 他の実施態様は、4〜50mcg/分の遊離フェンタニルが吸入の間に肺に堆積される方法である。
【0043】
[0043] 他の実施態様は、10〜20mcg/分の遊離フェンタニルが吸入の間に肺に堆積される方法である。
【0044】
[0044] 他の実施態様は、約15mcg/分の遊離フェンタニルが吸入の間に肺に堆積される方法である。
【0045】
[0045] 他の実施態様は、5〜150mcg/分のリポソームで被包されたフェンタニルが吸入の間に肺に堆積される方法である。
【0046】
[0046] 他の実施態様は、10〜90mcg/分のリポソームで被包されたフェンタニルが吸入の間に肺に堆積される方法である。
【0047】
[0047] 他の実施態様は、15〜60mcg/分のリポソームで被包されたフェンタニルが吸入の間に肺に堆積される方法である。
【0048】
[0048] 他の実施態様は、20〜45mcg/分のリポソームで被包されたフェンタニルが吸入の間に肺に堆積される方法である。
【0049】
[0049] 他の実施態様は、5〜200mcg/分の総オピオイドが吸入の間に肺に堆積される方法である。
【0050】
[0050] 他の実施態様は、10〜40mcg/分の総オピオイドが吸入の間に肺に堆積される方法である。
【0051】
[0051] 他の実施態様は、30〜35mcg/分の総オピオイドが吸入の間に肺に堆積される方法である。
【0052】
[0052] 他の実施態様は、前記処方が二以上の異なるオピオイドを含む(但し、2つのオピオイドが遊離フェンタニルおよびリポソームで被包されたフェンタニルからなる処方を除く)方法である。
【0053】
[0053] 他の実施態様は、投与が50〜500の吸入を超えて行われる方法である。
【0054】
[0054] 他の実施態様は、処方中のオピオイドがアルフェンタニルおよびモルヒネからなる方法である。
【0055】
[0055] 他の実施態様は、前記処方が300〜6700mcg/ml濃度のアルフェンタニルを含む方法である。
【0056】
[0056] 他の実施態様は、100〜500mcg/分のアルフェンタニルが吸入の間に肺に堆積される方法である。
【0057】
[0057] 他の実施態様は、約250mcg/分のアルフェンタニルが吸入の間に肺に堆積される方法である。
【0058】
[0058] 他の実施態様は、前記処方が650〜13350mcg/ml濃度のモルヒネを含む方法である。
【0059】
[0059] 他の実施態様は、100〜2000mcg/分のモルヒネが吸入の間に肺に堆積される方法である。
【0060】
[0060] 他の実施態様は、200〜1000mcg/分のモルヒネが吸入の間に肺に堆積される方法である。
【0061】
[0061] 他の実施態様は、約500mcg/分のモルヒネが吸入の間に肺に堆積される方法である。
【0062】
[0062] 発明の他の側面は、オピオイド毒性を防ぐオピオイドの副作用の使用である。
【0063】
[0063] 発明の他の側面は、患者において痛覚脱失を得るためのオピオイド処方を含む、肺性薬剤送達装置であって、前記装置は、以下のものを含む:
上述したような処方を含む容器;
前記容器に結合した出口;ならびに
前記出口を通して前記処方の粒子を分配するための、および意識のある患者の力による活動を通して肺に前記処方の粒子を分配するための、および効果的速度で前記処方の粒子を分配するための前記容器と結合した手段であって、吸入の間、痛覚脱失がオピオイド副作用の発症前に達成され、かつ前記副作用の発症が毒性の発症前に起こり、その結果、最大の総オピオイド血漿濃度が毒性レベルに達しない、かつ、前記副作用の発症が毒性を回避する吸入を停止する患者によって使用され得る手段。
【0064】
[0064] 本発明の他の側面は、患者の痛覚脱失を得るためのオピオイド処方を含む肺性薬剤送達装置であって、前記装置は:
有効量の少なくとも一つの即効型オピオイドおよび薬学的に許容可能なキャリアを含む処方を含む容器;
前記容器に結合した出口;
前記出口を通して前記処方の粒子を分散させるための、および肺に前記処方の粒子を分散させるための容器と結合した手段であって、意識ある患者の力を必要とする手段;
ここで、各オピオイドの濃度およびタイプならびに粒子の送達の効果的速度が、吸入の間、痛覚脱失がオピオイド副作用の発症前に達成され、かつ前記副作用の発症が毒性の発症前に起こり、その結果、最大の総オピオイド血漿濃度が毒性レベルに達しない、かつ、前記副作用の発症が毒性を回避する吸入を停止する患者によって使用され得るように選択される。
【0065】
[0065] 他の実施態様は、前記処方が選択された閾値未満で分配される、速度を制限する送達速度制御手段をさらに含む装置である。
【0066】
[0066] 他の実施態様は、前記出口が処方が分配されるために患者の唇によって封止される開窓部を含む装置である。
【0067】
[0067] 他の実施態様は、前記分配手段が呼吸(吸息作動)に基づく装置である。
【0068】
[0068] 他の実施態様は、前記粒子が1〜5ミクロンの質量媒体空気力学的直径を有する装置である。
【0069】
[0069] 他の実施態様は、前記粒子が1〜3ミクロンの質量媒体空気力学的直径を有する装置である。
【0070】
[0070] 他の実施態様は、前記粒子が1.5〜2ミクロンの質量媒体空気力学的直径を有する装置である。
【0071】
[0071] 他の実施態様は、各オピオイドの濃度およびタイプが、副作用の発症時の最大総オピオイド血漿濃度が、最大総オピオイド血漿濃度の66%以上になるように選択される装置である。
【0072】
[0072] 他の実施態様は、各オピオイドの濃度およびタイプが、副作用の発症時の最大総オピオイド血漿濃度が、最大総オピオイド血漿濃度の80%以上になるように選択される装置である。
【0073】
[0073] 他の実施態様は、少なくとも一つの即効開始型オピオイドが、フェンタニル、アルフェンタニル、スフェンタニルおよびレミフェンタニルから選択される装置である。
【0074】
[0074] 他の実施態様は、徐放性の放出を提供する、有効量の少なくとも一つの徐放効果型のオピオイドをさらに含む装置である。ここで、処方中の各オピオイドの濃度およびタイプは、吸入の間、痛覚脱失が前記副作用の発症前に達成され、前記副作用の発症が毒性の発症前に起こるように選択され、かつ最大総オピオイド血漿濃度が、毒性レベルに達しないように選択される。その結果、前記副作用の発症が、毒性を回避するために吸入を終了する患者によって使用され得る。
【0075】
[0075] 他の実施態様は、少なくとも一つの徐放効果型オピオイドが、モルヒネ、モルヒネ-6-グルクロニド、メサドン、ヒドロモルフォン、メペリジン、肺表面で薬剤の放出を遅延させる生物適合性キャリア内に被包されたオピオイド、およびリポソームで被包されたオピオイドから選択される装置である。
【0076】
[0076] 他の実施態様は、リポソームで被包されたオピオイドが、リポソームで被包されたフェンタニルである装置である。
【0077】
[0077] 他の実施態様は、少なくとも一つの徐放効果型のオピオイドがモルヒネおよびリポソームで被包されたフェンタニルから選択される装置である。
【0078】
[0078] 他の実施態様は、前記処方中のオピオイドが遊離フェンタニルおよびリポソームで被包されたフェンタニルからなる装置である。
【0079】
[0079] 他の実施態様は、遊離フェンタニル対リポソームで被包されたフェンタニルの濃度比が1:5〜2:1である装置である。
【0080】
[0080] 他の実施態様は、遊離フェンタニル対リポソームで被包されたフェンタニルの濃度比が約2:3である装置である。
【0081】
[0081] 他の実施態様は、総オピオイド濃度が250〜1500mcg/mlである装置である。
【0082】
[0082] 他の実施態様は、前記処方が100〜750mcg/ml濃度の遊離フェンタニルを含む装置である。
【0083】
[0083] 他の実施態様は、前記処方が250〜1500mcg/ml濃度のリポソームで被包されたフェンタニルを含む装置である。
【0084】
[0084] 他の実施態様は、総オピオイド濃度が約500mcg/mlであり、遊離フェンタニル濃度が約200mcg/mlであり、かつリポソームで被包されたフェンタニル濃度が約300mcg/mlである装置である。
【0085】
[0085] 他の実施態様は、4〜50mcg/分の遊離フェンタニルが吸入の間に肺に堆積される装置である。
【0086】
[0086] 他の実施態様は、10〜20mcg/分の遊離フェンタニルが吸入の間に肺に堆積される装置である。
【0087】
[0087] 他の実施態様は、約15mcg/分の遊離フェンタニルが吸入の間に肺に堆積される装置である。
【0088】
[0088] 他の実施態様は、5〜150mcg/分のリポソームで被包されたフェンタニルが吸入の間に肺に堆積される装置である。
【0089】
[0089] 他の実施態様は、10〜90mcg/分のリポソームで被包されたフェンタニルが吸入の間に肺に堆積される装置である。
【0090】
[0090] 他の実施態様は、15〜60mcg/分のリポソームで被包されたフェンタニルが吸入の間に肺に堆積される装置である。
【0091】
[0091] 他の実施態様は、20〜45mcg/分のリポソームで被包されたフェンタニルが吸入の間に肺に堆積される装置である。
【0092】
[0092] 他の実施態様は、5〜200mcg/分の総オピオイドが吸入の間に肺に堆積される装置である。
【0093】
[0093] 他の実施態様は、10〜40mcg/分の総オピオイドが吸入の間に肺に堆積される装置である。
【0094】
[0094] 他の実施態様は、30〜35mcg/分の総オピオイドが吸入の間に肺に堆積される装置である。
【0095】
[0095] 他の実施態様は、前記処方が二以上の異なるオピオイドを含む(但し、2つのオピオイドが遊離フェンタニルおよびリポソームで被包されたフェンタニルからなる処方を除く)装置である。
【0096】
[0096] 他の実施態様は、処方におけるオピオイドがアルフェンタニルおよびモルヒネからなる装置である。
【0097】
[0097] 他の実施態様は、前記処方が300〜6700mcg/ml濃度のアルフェンタニルを含む装置である。
【0098】
[0098] 他の実施態様は、100〜500mcg/分のアルフェンタニルが吸入の間に肺に堆積される装置である。
【0099】
[0099] 他の実施態様は、約250mcg/分のアルフェンタニルが吸入の間に肺に堆積される装置である。
【0100】
[0100] 他の実施態様は、前記処方が650〜13350mcg/ml濃度のモルヒネを含む装置である。
【0101】
[0101] 他の実施態様は、100〜2000mcg/分のモルヒネが吸入の間に肺に堆積される装置である。
【0102】
[0102] 他の実施態様は、200〜1000mcg/分のモルヒネが吸入の間に肺に堆積される装置である。
【0103】
[0103] 他の実施態様は、約500mcg/分のモルヒネが吸入の間に肺に堆積される装置である。
【0104】
[0104] 他の実施態様は、前記手段が、一吸入当たり0.2%〜1%の処方を分配する装置である。
【0105】
[0105] 本発明の他の側面は、以下のものを含むオピオイド投与キットである:
上述したような肺性薬剤送達装置;および
処方を連続的に吸入する工程と、十分な痛覚脱失が達成されるときかまたは副作用の発症時に吸入を停止させる工程とを含む前記装置を使用するための説明書(インストラクション)。
【0106】
[0106] 本発明の他の側面は、以下のものを含むオピオイド投与キットである:
有効量の少なくとも一つの即効開始型オピオイドおよび薬剤的に許容可能なキャリアを含む処方;
容器、前記容器と結合した出口、ならびに容器内部に含まれる処方の粒子を前記出口を通して分散させるための、および意識ある患者の力による活動を通して肺に分散させるための、および効果的速度で処方の粒子を分散させるための容器と結合した手段を含む肺性薬剤送達装置(吸入の間、痛覚脱失が前記副作用の発症の前に達成され、かつ前記副作用の発症が毒性の発症の前に起こるように選択され、かつ最大総オピオイド血漿濃度が毒性レベルに達しないように選択される。その結果、前記副作用の発症が毒性を回避するために吸入を終了する患者によって使用され得る);ならびに
容器を前記処方で充満させる工程と、前記装置を使用して前記処方を連続的に吸入させる工程と、十分な痛覚脱失が達成されたときかまたは副作用の発症時に吸入を停止させる工程とを含む、前記装置を使用するための説明書。
【0107】
[0107] 他の実施態様は、前記処方が有効量の少なくとも一つの徐放効果型オピオイドを含むオピオイド投与キットである。
【0108】
[0108] 本発明の他の側面は、患者に痛覚脱失を与える方法において使用するためのオピオイド処方であって、前記オピオイド処方には以下のものが含まれる:
150〜250 mcg/mlの遊離フェンタニル;
200〜400 mcg/mlのリポソームで被包されたフェンタニル;および
薬学的に許容可能なキャリア。
【0109】
[0109] 本発明の他の側面は、肺投与経路を通して患者に痛覚脱失を与える方法において使用するためのオピオイド処方であって、前記オピオイド処方は以下のものを含む:
二以上の異なるオピオイド(但し、2つのオピオイドがフェンタニルおよびリポソームで被包されたフェンタニルからなる処方を除く);および
薬剤的に許容可能なキャリア。
【0110】
[0110] 発明のさらなる側面に基づいて、患者に対する痛覚脱失の提供における、および同じ効果を発揮する薬剤の製造における、本発明の処方の使用が与えられる。
【0111】
[0111] 本発明による投与のための有用な薬剤処方およびパラメータは、既知の薬理学的データに基づいて、ならびに本明細書中に記載されたような薬物動態学的および薬力学的モデリングを通して、当業者によって決定され得る。このようなモデリングは、痛覚脱失の効果が副作用の発症前に達成され、かつ副作用の発症が毒性に先立って起こり、かつ一旦患者が処方を吸入することを停止すると、血漿中の総オピオイド濃度が毒性レベルにまで連続的に上昇しない。
【発明の詳細な説明】
【0112】
[0134] この出願において、以下の用語は、以下の意味をもつ:
[0135] 「痛覚脱失効果(鎮痛効果)」または「痛覚脱失(鎮痛)」は、薬剤の作用から生じる疼痛の軽減を意味する。
【0113】
[0136] 「薬剤送達」は、患者に投与された薬剤の量および速度、ならびに肺、血漿および薬剤作用部位に濃縮して吸入される薬物動態学関連の投与量によって決定される、経時にわたる薬剤作用部位での薬剤の濃縮を意味する。
【0114】
[0137] 「低酸素症」は、オピオイド投与の毒性効果であり、90%未満の飽和度に至るまでの血中O2濃度の低下として本出願において定義される。
【0115】
[0138] 「換気抑制」は、肺内部への空気の割合、一回換気量および/または流速の減少を意味する。換気抑制は、眩暈感、息切れまたは呼吸数で徐脈化として現れる可能性がある。「オピオイド誘導型抑制」は、薬剤作用部位でのオピオイドの作用によって引き起こされる換気抑制をいう。
【0116】
[0139] 「鎮静」とは、注意力、精神的認知力、焦点力の減少、およびオピオイドによって引き起こされる意識の状態を意味する。これはまた、身体的強度の欠如(筋疲労)、自発的活動の欠如、無気力、嗜眠状態および眠気としても現れる。「オピオイド誘導型鎮静」は、薬剤作用部位でのオピオイドの作用によって引き起こされる鎮静をいう。
【0117】
[0140] 「即効開始型」は、薬剤処方について説明するのに用いられるとき、血漿オピオイド濃度の急激な上昇後に鎮痛効果をもたらす処方を意味する。「即効開始型オピオイド」は、投与後 5分以内で鎮痛効果をもたらすオピオイドである。
【0118】
[0141] 「徐放効果型」は、数時間にわたって維持される鎮痛効果をもたらす処方を意味する。「徐放効果型オピオイド」は、2時間にわたって持続する鎮痛効果を有するオピオイドを意味する。
【0119】
[0142] 「副作用」は、鎮痛性または毒性以外のオピオイドの効果を意味する。
【0120】
例えば、重度換気抑制は、オピオイド毒性の例であり、軽度換気抑制および鎮静は、オピオイド毒性の徴候とはみなさず、オピオイドの副作用とみなす。
【0121】
[0143] 「作用部位」は、患者内における薬剤作用の身体的または仮定的部位をいう。「作用部位」は、体(例えば脳、肝臓または脾臓)の区画であってもよく、あるいは、相互関係および薬物動態学的モデリングに基づく理論的および未知的位置であってもよい。例えば、オピオイドは脊髄の膠様質において、鎮痛作用を発揮することが知られており、これはオピオイド鎮痛効果の部位である。作用部位のオピオイドの濃度は、直接測定によって、または薬物動態学的および薬力学的モデリングの使用を通して測定されてもよい。
【0122】
[0144] 「効果的量」は、鎮痛効果に達するために必要な薬剤の量を意味する。
【0123】
[0145] 「質量媒体空気力学的直径(mass medium aerodynamic diameter)」は、エアゾールの空気力学的な直径を意味し、全ての粒子の累積的質量の半分がより小さい(またはより大きい)直径をもつ粒子に含まれる。そして、空気力学的な直径は、測定される粒子と同じ重力設定速度をもつ単位-密度球体の直径として定義される。
【0124】
[0146] 「呼吸速度」は、時間単位当りに行われる呼吸の数を意味する。
【0125】
[0147] 「効果に対する滴定」は、十分な鎮痛効果が患者によって感知されるまでオピオイドを投与し、その後にオピオイドの投与を終えることを意味する。
【0126】
[0148] 「副作用に対する滴定」は、副作用が感じられるまでオピオイドを投与し、その後に投与を終えることを意味する。投与を終えることは、自発的(例えば、眠気、眩暈、または息切れを感じ始めたときに、患者が投与を終えるよう指示する)であっても、あるいは非自発的(例えば、換気抑制または鎮静のためにオピオイドの効果的投薬量を示すことができなくなったとき)であってもよい。
【0127】
[0149] 用語「有毒な」、「毒性」、「毒作用」および「オピオイド毒性」は、患者を死の危険性に至らせるオピオイドの効果をいう。例えば、オピオイドは、一般には患者に対する危険がほとんどない適度な換気抑制をもたらす。これは、オピオイド毒性の例とはみなされない。しかしながら、重度の換気抑制は、低酸素、意識喪失および死の危険性を有する。このように、軽度の換気抑制はオピオイド毒性の徴候とはみなされないが、重度の換気抑制はオピオイド毒性の例である。
【0128】
[0150] 本発明は、オピオイドの患者の自己投与において使用されるためにある。本発明は患者に与えられるオピオイドの量を自己制限するためにオピオイドの副作用を利用し、それによって投与量を変え、患者の鎮痛性必要条件を達成する一方で、毒性および死を回避する。
【0129】
[0151] 本発明の使用は、疼痛の患者の知覚で始まる。中軽度の疼痛を処置する多くの物理療法があるが、オピオイドは中等度から重度の疼痛のための処置のメーンステーである。中等度から重度の疼痛に対して、患者または患者の介護医療提供者が、液体溶液またはエマルジョン中においてオピオイドの補充されたバイアルを開ける。液体は、噴霧器に加えられる。
【0130】
[0152] 噴霧器は、その後口に運ばれ、手で握る。噴霧器は、自己制限機構の妨げになるので、ストラップで顔面には取り付けない。
【0131】
[0153] 各々の呼吸で、噴霧器はエアゾールとして少量の液体オピオイドを放出する。
【0132】
エアゾールは患者の口を通して気管および肺に入り、エアロゾル化したオピオイドが堆積される。
【0133】
[0154] この特許出願の全体を通じて、噴霧器はまた、吸入器またはエアゾール肺性薬剤送達装置と呼ばれる。吸入器は、噴霧器であっても、圧縮空気または酸素の供給源と組み合わされた噴霧器であっても、あるいは肺経由の薬剤の投与のための他の任意のエアゾール生成装置であってもよい。エアゾール肺性薬剤送達装置は、肺に送達するための物質のエーロゾル状散布を可能にする任意の装置をいう。多様な噴霧器技術が知られており、当該技術において利用可能である。
【0134】
[0155] オピオイド薬剤作用の開始の速度は、オピオイドが肺に入る速度、体循環への吸収速度およびオピオイドが脳血液関門を通過する速度によって指示されると考えられる。いくつかのオピオイド(例えばアルフェンタニルおよびレミフェンタニル)は、脳血液関門を迅速に通過し、薬剤作用の非常に急速な開始をもたらす。他のオピオイド(例えばモルヒネおよびモルヒネ-6-グルクロニド)は、非常にゆっくりと脳血液関門を通過し、ゆっくりとした開始と徐放性効果をもたらす。
【0135】
[0156] オピオイドが脳血液関門を通過するにつれて、それは薬剤作用の部位で効果を発揮し始める。いくつかの例において、患者はオピオイドの濃度が増加するにつれて、異なる効果を感じる。効果の任意の順序は、鎮痛効果、副作用および毒作用の順序である。
【0136】
[0157] 換気抑制は、オピオイド(換気を抑制する)と二酸化炭素(換気を増加させる)との対向作用によって上下に制御される。これは、以下のようにフィードバック循環において行われる:まず最初に、オピオイドが換気を抑制する。患者は、同程度の二酸化炭素を吐き出せないので、患者の血液中の二酸化炭素のレベルが上昇する。二酸化炭素が上昇するにつれて、換気が刺激され、部分的には、オピオイドによって誘導された換気抑制が相殺される。オピオイドによって誘導される換気抑制は十分に迅速にもたらされる必要がある(すなわち、患者がオピオイドを吸入するにつれてもたらされるように)。これは、吸入されるオピオイドの量を制限するのに役立つ。しかしながら、二酸化炭素がオピオイドによって誘導された換気抑制を上昇および相殺する機会を有する前に、毒作用の危険に患者をさらすほどに急速にやってはならない。
【0137】
[0158] 毎分、患者によって吸入されるオピオイドの量は、その時間の換気量に比例する。換気が抑制されるにつれて、肺へのオピオイド送達の速度は比例して抑制される。このように、送達の速度は、換気抑制によって遅くなり、患者が中毒量のオピオイドを自己投与する機会を減少させる。換気抑制によるオピオイドのゆるやかな取り込みは、鎮静の開始を通して薬剤送達の完全な休止の機会を生み出す。
【0138】
[0159] オピオイドが鎮痛効果を発揮するにつれて、患者は鎮静状態になり、オピオイドの副作用による疼痛の緩和がもたらされる。鎮静状態が患者で大きくなるにつれて、装置を口に保持しておくことが難しくなるので、シールを唇に貼り付け、さらなるオピオイドを投与するために装置を通して呼吸する。代わりに、患者は鼻から呼吸を始めるかまたは噴霧器のマウスピースに口を付けて呼吸し始める。鎮静状態が強くなると、腕が気道から落下し(口元から腕がはずれる)、装置が口から取り外される。わざと装置を重くすることによって、あるいは重りを装置に加えることによって、より低いレベルの鎮静で腕の落下が起こるように促してもよい。装置の重さは、個々の患者の事前鎮静に対する強さに従い、各患者ごとに調整し得る。
【0139】
[0160] オピオイドの副作用は通常はより低いオピオイド濃度(オピオイド毒性効果と比較すると)で起こるので、より安全な、患者の自己制限型オピオイド投与が、副作用の開始と毒性の開始との間の時間的隙間を可能にし、十分に遅い速度でオピオイド(またはオピオイドの組合せ)の肺性投与を通して確立される。速度はまた、投薬されている間に副作用を開始させるために、オピオイドの開始の速度と比較して十分にゆっくりとしたものでなければならない。
【0140】
[0161] この発明に関する臨床試験では、健康な被験者は、10〜25分にわたって、急速に作用する遊離したフェンタニルと徐放性のあるリポソームで被包されたフェンタニルからなるフェンタニル製剤の一定用量を吸入するように命じられた。この研究において、数人の被験者は、自己の限界まで投与を試み、全ての投与を受けるために外部の援助を要求した。数人の被験者は、吸入される薬の量を減らして換気速度を減少させるとともに、オピオイドによって誘導された換気抑制のために投与量を自己制限した。他の被験者は、鎮静状態に陥り、フェンタニルを吸入し続けるために装置を口に保持することができなくなり、投与量を自己制限した。数人の被験者は、両方の副作用を示した。この試みは、患者が、毒性レベルのフェンタニルが投与される前に、肺経路を通したフェンタニル投与を自己制限するであろうことを実証した。この際、1)薬剤が、意図的に長期間(例えば最高25分)にわたって吸入され、2)薬剤が与えられている間(かつ中毒量が投与される前に)、オピオイドによって誘導された換気抑制が起こり、および/または 3)薬剤が与えられている間(かつ中毒量が投与される前に)、鎮静が起こる。我々は、これらの因子が、オピオイドが患者に与えられる速度を設計することによって、制御し得ることを見出した。
【0141】
[0162] 好ましくは、オピオイド製剤は、4〜25分にわたって投与される。
【0142】
4〜25分にわたって投与されるオピオイドの総量は、送達されるオピオイドまたはオピオイドの組合せの種類、および吸入される粒子の質量媒体空気力学的直径(MMAD)を含む、幾つかの因子に依存する。この投与期間は、投与の速度によって影響される効果に対して開始の速度をもたらし、患者は、換気抑制および鎮静の開始を通して、投与量を無意識に自己制限することができる。我々は、アルフェンタニル/モルヒネ配合剤について、100〜500mcg/分の範囲のアルフェンタニルと200〜1000mcg/分の範囲のモルヒネが最適であることを見出した(患者の肺に送達された薬剤として測定(「全身的に利用可能な薬剤」)。
【0143】
[0163] 遊離性およびリポソームで被包されたフェンタニル処方について、我々は、全身的に利用可能な薬剤についてのレベルが、10〜25mcg/分の遊離フェンタニルと10〜50mcg/分のリポソームで被包されたフェンタニルで最適になることを見出した。
【0144】
[0164] 他のオピオイド処方について、我々は、全身的に利用可能な薬剤の治療的に等しい速度が類似の利益を有すると予測する。
【0145】
[0165] 患者が、少なくとも一つの即効開始型オピオイドと少なくとも一つの徐放効果型オピオイドとを含む多数のオピオイド処方中の薬剤を取り出すことを止める濃度よりもより強力であるオピオイドの効果のピークを防ぐために、投与された徐放効果型オピオイド 対 即効開始型オピオイドの比は、治療的な等しい作用強度の観点において、1:1未満であるべきである。
【0146】
[0166] オピオイドの投与の速度に影響を与える他の因子は、患者の呼吸速度である。我々は、1分毎に10〜15回の呼吸速度が好ましいことを見出した(すなわち「正常な」呼吸速度)。
【0147】
[0167] オピオイド反応は、個々に取り扱われる。これは、痛みを伴う刺激のレベルを変えることを反映する。非常に重度の疼痛において、オピオイドの非常に多い投与量は、過度の毒性を伴わずに投与され得る。慢性的にオピオイドを投与されている患者は、所望の治療効果とオピオイド毒性の両方を生み出すために、より高い投与量を必要とする。これはまた、オピオイドに対する耐性の発現を反映する。医師らは、個々に取り扱われた患者の必要に合わせてオピオイドを十分に調整するために必要な広範な投与量のために、オピオイド投与の改良された手段を捜していた。
【0148】
[0168] 本発明では、痛覚脱失を与える大量のオピオイドを必要とする患者は、大容量の薬剤を投与するか(より長期間にわたって吸入)、あるいはおおよそ4〜25分にわたって吸入される、より濃縮された薬剤の溶液を与えられる。いずれの方法においても、オピオイドで誘導された換気抑制と鎮静は減衰し、毒性的投与量が吸入される前に薬剤投与を終了させる。好ましくは、患者はより長期間にわたって本剤を吸入する。逆に言えば、小用量だけを必要とする患者は、より短期間の吸入後、所望の鎮痛を経験するであろう。患者は、追加的な薬剤を吸入しないようにすることができる。所望の鎮痛を得たにも関わらず、オピオイドを自己投与し続ける患者は、換気抑制と鎮静を経験するであろう。この換気抑制と鎮静は、自発的(患者に与えられる指示によって)、あるいは非自発的(それらの副作用による)に、オピオイドの中毒量の吸入の前に薬剤投与を減少および終了させる。従って、患者は、ロックアウト期間を伴わず、かつ、毒性のより低い危険性の中で、鎮痛効果を自己滴定することができる。
【0149】
[0169] オピオイドとオピオイド濃度の選択(上記に開示されたような、または他のもの)は、肺から血漿までのオピオイド吸収の時間経過の考慮を必要とし、かつ血漿から薬剤作用部位(例えば、脳または脊髄)までのオピオイドの移動の時間経過の考慮を必要とする。
【0150】
[0170] 一部のオピオイドは、肺から体循環までの非常に迅速な吸収と関係している。例えば、遊離フェンタニルの肺から血漿中への吸収は、ほぼ瞬間的である。これは、レミフェンタニル、アルフェンタニルおよびスフェンタニルでは事実であろう。リポソーム被包性フェンタニルから放出された遊離フェンタニルの吸収は、肺から血漿までは非常に遅い。
【0151】
[0171] 一部のオピオイドは、血漿から薬剤作用部位まで非常に迅速な移動を行う。例えば、薬剤作用部位でのアルフェンタニルおよびレミフェンタニルの濃度のピークは、静脈注射後2分以内にもたらされる。他のオピオイドは、血漿から薬剤作用部位まで非常に遅い移動を行う。例えば、モルヒネの静脈内投与による薬剤作用のピークは、注射時点から10〜15分ほど遅れる。
【0152】
[0172] オピオイド送達系(opioid delivery system)を自己制限するために、オピオイドのうちの一つは、肺から血漿までの急速な移動と、血漿からオピオイド薬剤作用部位までの急速な移動とを担うべきである。フェンタニル、アルフェンタニル、スフェンタニル、およびレミフェンタニルには、全てこの特徴(急速な開始)がある。メペリジンおよびメサドンにもこの効果がある可能性があるが、今のところ解明されていない。単一オピオイドで発明の必要なパラメータを得ることが可能であるにも関わらず、我々は、即効開始型オピオイドをより遅く作用する徐放効果型オピオイドと組み合わせることが、患者がより長期間にわたる鎮痛効果を感じる好ましい結果を与えることを見出した。
【0153】
[0173] オピオイド鎮痛効果を維持することが目的である場合、即効開始型オピオイドをより遅い開始をもたらす徐放効果型オピオイドと組み合わせる必要がある。そのような処方の例には、(1) フェンタニルとリポソーム被包性のフェンタニルの処方、(2) レミフェンタニル、アルフェンタニル、スフェンタニル、またはモルヒネと組み合わされたフェンタニルの処方、および(3) レミフェンタニル、アルフェンタニル、スフェンタニル、またはメタドンと組み合わされたフェンタニルの処方がある。徐放効果型オピオイドの最大作用時点で、第二の「ピーク」の作用を妨げるためにケアを行う必要がある。この第二のピークは、即効開始型オピオイドに起因するピークよりも高く、患者は彼らが薬剤を投与されている間に副作用を感じる。
【0154】
[0174] 即効開始型オピオイドが徐放性効果をもつオピオイドと組み合わされるとき、両オピオイド濃度は、即効開始型オピオイドの自己制限効果が、遅延開始型オピオイドへの患者の曝露を制限するように調節される。即効開始型オピオイドは、十分な時間枠内において副作用を誘発する簡単な早期警戒システムとして作用する。
【0155】
[0175] 我々は、中毒状態に至る前に副作用が現れることを見出した。より詳しくは、投薬終了後または投薬完了直後に副作用を経験した被験者は、毒性副作用への進行は見られなかったが、一方で、投薬中に副作用を発症した患者または薬剤を吸入し続けるよう指示された患者は、中毒状態、特に、低酸素症への進行が見られた。
【0156】
[0176] 上記の記載によって認められ得るように、本発明の完成には、1) 一以上のオピオイドの薬物動態学および薬力学の理解と、2) オピオイド、二酸化炭素の生産および除去と、換気との間の関係の理解と、3) 一以上のオピオイドの慎重な選択と、4) 薬剤の所望の臨床効果を達成するために、最終処方における各オピオイドの最適濃度の正確な決定が必要である。最終的な処方は、最良の患者の安全状態を示し、かつ十分な鎮痛反応を提供する投与量を見出すために行われる投与最適化とともに、システムパラメーターの薬物動態学的および薬力学的モデリングによって決定される。
【0157】
図面に関して
[0177] 図1は、図1は、鎮静のコンピューターシミュレーションモデルを表すフローチャートである。全てのフローチャートにおいて、正方形は量を表し、矢印は速度(単位時間当たりの量)を表し、円は計算値、速度、または定数を表す。
【0158】
[0178] 図2は、換気抑制のコンピューターシミュレーションモデルを表すフローチャートである。
【0159】
[0179] 図3は、吸入装置のコンピューターシミュレーションモデルを表すフローチャートである。
【0160】
[0180] 図4は、肺経路を通して患者に投与されるオピオイドの薬物動態学的側面のコンピューターシミュレーションモデルを表すフローチャートである。
【0161】
[0181] 図5Aおよび5Bは、単一のオピオイドの投与の薬物動態学のStella TMコンピューターシミュレーションを表すフローチャートである。図5Aは、装置モデルおよび薬物動態学的モデル側面のシミュレーションを示し、図5Bは、換気抑制モデルおよび鎮静モデル側面のシミュレーションを表す。
【0162】
[0182] 図6は、吸入装置内および患者肺内のオピオイドの量の時間経過として表される図5Aおよび5B(換気抑制および鎮静モデルを無効)のStella TMコンピューターシミュレーションの出力を表すグラフである。X軸は、分単位の時間を表す。Y軸は、mg中の処方の線量単位を表す。吸入器内の薬剤の量は、刺激の開始10分にわたって徐々に低下した。肺内の薬剤の量は、肺への薬剤の吸入の正味のプロセスと、肺から体循環への薬剤の吸収を反映する。
【0163】
[0183] 図7は、図5Aおよび5B(換気抑制および鎮静モデルを無効)のStella TMコンピューターシミュレーションにおける換気抑制の時間経過を表すグラフである。換気抑制(基線換気の画分として表される)は、時間(分)のシミュレーションにおいて表された。
【0164】
[0184] 図8は、図5Aおよび5B(換気抑制モデルを有効、鎮静モデルを無効)のStella TMコンピューターシミュレーションにおいて、吸入装置内および患者肺内のオピオイドの量の時間経過を表すグラフである。X軸は、分単位の時間を表す。Y軸は、mg中の処方の線量単位を表す。患者の換気は約25%の基線換気まで低下し、このような抑制が約5〜10分間にわたって持続した。
【0165】
[0185] 図9は、図5Aおよび5B(換気抑制モデルを有効、鎮静モデルを無効)のStella TMコンピューターシミュレーションにおける換気抑制の時間経過を表すグラフである。換気抑制(基線換気の画分として表される)は、時間(分)のシミュレーションにおいて表された。オピオイド取り込みの自己制限によって引き起こされる換気の変化は、患者に十分な安全性を提供する(図7と比較して)。
【0166】
[0186] 図10は、図5Aおよび5B(換気抑制および鎮静モデルを有効)のStella TMコンピューターシミュレーションにおける、吸入装置内および患者肺内のオピオイドの量の時間経過を表すグラフである。X軸は、時間(分)を表す。Y軸は、処方の線量単位(mg)を表す。薬剤吸入は、鎮静状態が達成され、かつ薬剤摂取の自己制限のために、約8分間で完全に停止した。
【0167】
[0187] 図11は、図5Aおよび5B(換気抑制および鎮静モデルを有効)のStellaTMコンピューターシミュレーションにおける換気抑制の時間経過を表すグラフである。換気抑制(基線換気の画分として表された)は、時間(分)のシミュレーションにおいて表された。
【0168】
[0188] 図12は、2つのオピオイドの投与についてのコンピューターシミュレーションモデルを表すフローチャートである。
【0169】
[0189] 図13A、13Bおよび13Cは、2つのオピオイドの投与の薬物動態学のStella TMコンピューターシミュレーションを表すフローチャートである。
【0170】
[0190] 図14は、吸入装置および患者の肺におけるオピオイドの総量の時間経過として表される図13A、13Bおよび13C(換気抑制および鎮静モデルを有効)のStella TMコンピューターシミュレーションの出力を表すグラフである。Y軸は、経時(分)にわたる薬剤のng/ml(フェンタニル等価物)において表された、(1) 吸入器における処方のフェンタニル等価物、(2) 肺における即効開始型オピオイドのフェンタニル等価物、および(3) 肺における徐放効果型オピオイドのフェンタニル等価物である。約12分後、オピオイドによって誘導された鎮静を受けて、患者はより多くのオピオイドを吸入するのを止めた。
【0171】
[0191] 図15は、図13A、13Bおよび13C (換気抑制および鎮静モデルを有効)のStella TMコンピューターシミュレーションにおける作用部位での各オピオイドおよび全オピオイドの濃度の時間経過を表すグラフである。作用部位での即効開始型オピオイド(1)、徐放効果型オピオイド(2)、および即効開始型オピオイドと徐放効果型オピオイドとの組合せ(3)の量は、経時(分)にわたるフェンタニル等価物のng/mlにおいて示された。
【0172】
[0192] 図16は、図13A、13Bおよび13C(換気抑制および鎮静モデルを有効)のStella TMコンピューターシミュレーションにおける、オピオイドの送達中および送達後の換気抑制の時間経過を表すグラフである。換気抑制(基線換気の画分として表されて)は、時間(分)のシミュレーションにおいて表された。2つのオピオイドの組合せは、第一のオピオイドの投与の間にピークに達する。
【0173】
[0193] 図17A、17Bおよび17Cは、2つのオピオイドの投与の薬物動態学のStella TMコンピューターシミュレーションを表すフローチャートである。投与される2つのオピオイドはアルフェンタニルおよびモルヒネである。図17Aおよび17Bは、シミュレーションの装置モデルおよび薬物動態学的モデル側面を表し、図17Cは、シミュレーションの換気抑制モデル、鎮静モデルおよび2つの薬剤モデル側面を表す。
【0174】
[0194] 図18は、図17A、17Bおよび17C(換気抑制および鎮静モデルを有効)のStella TMコンピューターシミュレーションにおける、作用部位でのアルフェンタニル、モルヒネおよび混合性オピオイドの濃度の時間経過を表すグラフである。ライン1は、アルフェンタニルの濃度を表し;ライン2はモルヒネの濃度を表し、かつライン3は混合性オピオイドの濃度を表す。全ての薬剤レベルは、効果の部位で表され、経時(分)にわたるフェンタニル等価物のng/mlにおいて表される。
【0175】
[0195] 図19は、図17A、17Bおよび17C(換気抑制および鎮静モデルを有効)のStella TMコンピューターシミュレーションにおける、換気抑制の時間経過を表すグラフである。換気抑制(基線換気の画分として表されて)は、時間(分)のシミュレーションにおいて表された。換気は、薬剤投与中において基線の約65%まで減少する。
【0176】
[0196] 図20は、患者に投与されたオピオイドの血漿中におけるオピオイドの投与濃度の終点に対する、血漿中のオピオイドの最大濃度を表すグラフである。図20Aは、肺経路を通してフェンタニルおよびリポソームで被包されたフェンタニルの組合せを投与された患者を表す。図20Bは、静脈内にフェンタニルを投与された患者を表す。オピオイドの最大濃度は、投与の終点での濃度と比較してそれ程高くはなかった。「投与の終点」の量が非毒性である場合、被験者によって摂取されたオピオイドの最大濃度もまた非毒性であることを示す。
【0177】
[0197] 図21は、副作用/毒性効果に対する時間 対 肺経路を通してフェンタニルおよびリポソームで被包されたフェンタニルの組合せを投与された患者の副作用および毒性効果についての投与の終点での時間を表すグラフである。全てのケースにおいて、毒性に対する時間は、副作用に対する時間と等しいかまたはより長い。
【0178】
[0198] 図22は、副作用 対 毒作用の統計学的な相互関係を表す表である。副作用は、p<.04で毒作用と相関している。
【0179】

[0199] 以下の例は、本発明の実施態様を制限するものではない。
【0180】
例1: オピオイドの送達についての理論的モデル
[0200] 例2〜4は、オピオイド送達についての理論モデルに基づいている; この理論モデルは、例1において詳細に記載されている。
【0181】
[0201] オピオイドの送達についての理論モデルは、コンピューターシミュレーションパッケージ「Stella」(High Performance Systems, Lebanon, NH)にプログラムされた。図中およびテキスト中におけるこの例において示される要素は、Stellaモデル表示から適合され、かつシミュレーションのプログラミングと刺激がどのように働くかについて説明する。
【0182】
[0202] 図中において、長方形は、物質の蓄積を示す変数を表す(以下に留意すべき例外を示す)。白抜きの矢印は、積算項(accumulator)への流入または流出を表し、黒色の矢印は流れを制御する要素を表す。いくつかの黒色の矢印は、表示を単純化するために省略される。長円形は、モデルパラメータ(入力)および時間非依存性の算出を表す。多くのモデルパラメータおよび定数が、先行技術から得られた(Scott JC, Stanski DR Decreased fentanyl and alfentanil dose requirements with age. A simultaneous pharmacokinetic and pharmacodynamic evaluation. J Pharmacol Exp Ther. 1987 Jan; 240(1) : 159-66を参照)。
【0183】
(a) 鎮静モデル
[0203] オピオイド誘導型の鎮静モデルを設計した(図1−鎮静モデル)。「作用部位のオピオイド1010」を、薬剤作用部位でのオピオイドの濃度を意味する変数として使用した。一以上のオピオイドが薬剤作用の部位に存在する場合、「作用部位のオピオイド1010」を、それらの相対的な作用強度に各々標準化された、存在するオピオイドの合計を表すように構築した(例えば、以下の例3および4)。
【0184】
[0204] 「鎮静の閾値1020」を、患者が吸入器を使用できなくなるであろう「オピオイド濃度1010」として定義した。「鎮静の閾値1020」を、実験を通してかまたはオピオイドの既知の薬物動態学を通して決定した。
【0185】
[0205] 「鎮静の上昇1030」は、「オピオイド濃度1010」が「鎮静の閾値1020」を超えるか否かの試験とした。「オピオイド濃度1010」が「鎮静の閾値1020」を上回る場合、「鎮静の上昇」は、「鎮静状態1040」の値を0から1まで変換した。「鎮静状態1040」は、長方形が物質の堆積を表すという規則の例外とした:代わりに、モデル範囲内の「鎮静状態1040」の役割は、オピオイドが鎮静閾値を超えたことを記憶する、記憶構成要素としての役割である。後のモデルにおいて、「鎮静状態1040」からのデータは、オピオイドの更なる投与をなくすために機能し、患者の鎮静を刺激し、吸入器が口から外れるようにする。
【0186】
(b) 換気抑制モデル
[0206] 換気抑制シミュレーションを、プログラムした(図2)。このモデルにおいて、CO2は、ある速度 [CO2 産生2010] で体の代謝活性によって生産され、血漿中に流れ込む(血漿CO2 2020)。CO2産生2010は、実験的に決定されるかまたは先行技術から知得した(例えば、Bouillon T, Schmidt C, Garstka G, Heimbach D, Stafforst D, Schwilden H, Hoeft A. Pharmacokinetic-pharmacodynamic modeling of the respiratory depressant effect of alfentanil. Anesthesiology. 1999 Ju1 ; 91 (1): 144-55 and Bouillon T, Bruhn J, Radu-Radulescu L, Andresen C, Cohane C, Shafer SL. A model of the ventilatory depressant potency of remifentanil in the non-steady state.Anesthesiology. 2003 Oct; 99 (4): 779-87.を参照)。「血漿CO2 2020」は、ある速度(「脳−血漿CO2平衡2030」)で、脳内のCO2(「脳CO2 2040」)を平衡化した。CO2を、パラメータ「換気抑制2060」によって媒介された速度「CO2除去2050」で、空気の肺からの発散をシミュレートする方法において血漿から除去した。
【0187】
[0207] 薬剤作用部位でのオピオイド濃度(「作用部位のオピオイド1010」)が増加するにつれて、「換気抑制2060」が増加した。換気抑制は、肺からのCO2の除去(「CO2除去2050」)を減少させ、脳内のCO2を上昇させた(「脳CO2 2040」)。「脳CO2 2040」が増加すると、「換気抑制2060」上での負の作用を通して換気が刺激された。そして、「換気抑制2060」上での正の作用を通して「作用部位のオピオイド1010」の抑制効果が部分的に相殺された。
【0188】
[0208] 他のパラメータは、「換気抑制2060」をもたらすように設計され; これらのパラメータの合計は、「モデルパラメータ2070」としてこのモデルにおいて例示された; 「モデルパラメータ2070」を含むパラメータは、図5Aおよび5Bでより詳細に記載された。これらの「モデルパラメータ2070」は「換気抑制2060」をもたらし、同様に「CO2除去2050」および「脳CO2 2040」をもたらす。
【0189】
[0209] Stellaへのこのシミュレーションのプログラミングは新規であるが、換気抑制モデルは当該技術において知られ、「間接的な反応モデル」として参照される。
【0190】
(c) 装置モデル
[0210] 吸入装置のモデルは、図3において表される。「投与量3050」は、吸入器に加えられるオピオイドの総量を表す。「オピオイド投与量3050」は、ある速度「吸入器への充填 3010」で吸入器に加えられる。この速度は、シミュレーションを行うために必要であるが、瞬間的な速度で算出される。「吸入器内の処方3020」は、吸入器内に含まれるオピオイドを表す。患者は、肺への吸入の速度(「吸入3030」)で処方を吸入する(「肺内の処方3040」)。「吸入3030」は、「換気抑制2060」および「鎮静状態1040」によってもたらされる。具体的には、「吸入3030」は「換気抑制2060」の増加によって遅くなる。例えば、「換気抑制2060」が基線の50%であった場合、薬剤は基線速度の半分で吸入された(「吸入3030」は、基線の半分であった)。しかしながら、「鎮静状態1040」=1である場合、肺末端へ薬剤が吸入され、かつ更なる薬剤が吸入される。
【0191】
(d) 薬物動態学的モデル
[0211] 全身性オピオイドについての薬物動態学的モデルをプログラムした。肺内の処方3040は、ある速度「全身性吸収4010」で全身の血漿中に吸入された(「血漿中のオピオイド 4020」)。「血漿中のオピオイド4020」は、薬剤作用部位のオピオイド(「作用部位のオピオイド1010」)とともに、ある速度「血漿-作用部位の薬剤平衡4030」で平衡化された。オピオイドはまた、ある速度「オピオイド再分配4050」で組織「組織内のオピオイド4060」に再分布されるか、あるいはある速度「オピオイド除去4070」で血漿から除去された。「組織内のオピオイド4060」および「オピオイド再分配4050」が、使用される特定のオピオイドの薬物動態学的モデルに従って使用され得または使用され得ない、任意のパラメータとしてプログラムされた。速度「全身性吸収4010」、「血漿−作用部位の薬物平衡4030」、「オピオイド除去4070」、および「オピオイド再分配4050」は全て、投与される特定のオピオイドの薬物動態学的パラメータのベクターによって決定され、「オピオイド薬物動態学的パラメータ4080」としてモデルにおいて表され、かつ薬物動態学的モデリングによって計算された。
【0192】
[0212] Stellaへのこのシミュレーションのプログラミングは新規であるが、薬物動態学的モデルは当該技術において既知であり、かつ「作用部位を含む乳頭状の薬物動態学的なモデル」として参照される。上記に表された乳頭状のモデルは、一般には0、1または2つの組織区画を有し、それぞれ作用部位とともに1、2、または3つの区画モデルとして参照されるモデルを産生する。
【0193】
例2:単一のオピオイドの投与
[0213] この例は、例1の応用である:オピオイド送達の理論的なモデル。この例は、使用中のオピオイド送達のための理論的モデルを例示することを意味する;モデルパラメータは、任意の特異的なオピオイドを反映していない。その代わりに、この例におけるモデルパラメータは、明らかにオピオイド送達の提示されたシステムの自己制限的側面を実証するように設計された。この例は、例1に記載されたような4つのシミュレーションの統合と、シミュレーションを実行するときのモデルからの出力とを表す。
【0194】
(a) モデルの統合
[0214] 図5Aと5Bは、例1に記載されたモデルの要素を示し、一種類のオピオイドが呼気を通して投与される。図5は、2つの部分:図5Aと図5Bに分けられる。図5Aには、図3の全体として例1で示されかつ説明された装置モデルに相当する「装置モデル5010」と;図4の全体として例1において示されかつ説明された薬物動態学的モデルに相当する「薬物動態学的モデル5020」とが含まれる(任意のパラメータ「組織内のオピオイド4060」および「オピオイド再分配4050」の除外を除いて、さらに、「オピオイド薬物動態学的パラメータ4080」が、「全身性吸収4010」、「オピオイド除去4070」および「血漿-作用部位の平衡4030」、および分離パラメータとして示されていないもので構築されることを除いて※より詳細な情報についてはソースコードを参照)。図5Bには、図2の全体として例1において示されかつ説明された「換気抑制モデル」に相当する「換気抑制モデル5030」{「モデルパラメータ2070」が「拡大された」形態(「モデルパラメータ2070」、すなわちPACO2@0 2071、KelCO2 2072、ke0CO2 2073、C50 2074、ガンマ2075、およびF 2076を含む様々な要素)において示されることを除く}; および、図1に示された鎮静モデルに相当する「鎮静モデル5040」が含まれる。図5Aおよび5Bに示されるモデルは、同じシミュレーションの一部であるが、参照が容易なため、2つの図において示される。図5Aおよび5Bに示される4つのモデルの機構は、以下にその機構の説明のある「モデルパラメータ2070」の範囲を除いて、例1において詳細に記載されている。
【0195】
[0215] 「基線CO2 2071」は、オピオイドの投与前の基線でのCO2である。「kel CO2 2072」は、「血漿CO2 2020」と「CO2除去2050」と関係する除去速度である。基線(すなわち、換気抑制の喪失)では、「CO2除去2050」=「kel CO2 2072」×「血漿CO2 2020」の関係が成立する。
【0196】
[0216] 基線では、体中の二酸化炭素が非常に安定し、「CO2除去2050」=「CO2産生2010」の関係が成立する。これは、「CO2産生2010」=「kel CO2 2072」×「基線血漿CO2 2071」として「基線CO2 2071」および「kel CO2 2072」の観点においてCO2産生(一定である)の速度の算出を可能にする。
【0197】
[0217] 「脳-血漿平衡2020」の速度は、パラメータ「keO CO2 2073」によって測定される。すなわち、「脳血漿平衡2020」=「ke0 CO2 2073」×(「血漿CO2 2020」−「脳CO2 2040」)。
【0198】
[0218] オピオイドは、「作用部位のオピオイド1030」と、パラメータ「C50 2074」(最大の作用の50%に付随したオピオイド濃度)と、「ガンマ2075」(濃度勾配 対 反応の関係)のS字形の関数として換気を抑制する。換気抑制に対するオピオイドの貢献は以下の式として表される。
【数1】

【0199】
[0219] 逆に言えば、二酸化炭素は換気を刺激する。換気の増加は、「基線CO2 2071」、「脳CO2 2040」、および「F 2076」の関数としてモデル化され得、パラメータは以下の関係の勾配をもつ:
【数2】

【0200】
[0220] これらをまとめると、「換気抑制2060」は以下のように記載され得る
【数3】

【0201】
[0221] 「換気抑制2060」を定義すると、我々は、オピオイドで誘導された換気抑制の存在下において以下の式として「CO2除去2050」を完全に定義することができる:
「CO2除去2050」=「kel CO2 2072」×「血漿CO2 2020」×「換気抑制2060」
[0222] この方法において、例1のモデルは、オピオイド作用の一つのモデルに組み合わされる。図5Aおよび5Bに示されたこのモデルはまた、Stellaプログラミング言語(ソースコード)において表された、以下の数学的モデルによって説明され得る:
【数4】

【0202】

【0203】

【0204】
(b)換気抑制モデルおよび鎮静モデルを無効にして行われたときのモデルの出力
[0223] (a)において設計および記載されたモデルは、以下の初期パラメータを使用する、オピオイド作用のシミュレーションとして行われた:「吸入器内の処方3020」=5mL(時間)=0。該モデルを2時間のタイムコースで行った。このシミュレーションでは、換気抑制モデルの薬剤摂取の側面でのフィードバック循環(すなわち、「装置モデル5010」での「換気抑制2060」の効果のフィードバック)および鎮静モデルを無効にした。実行されたときの該モデルの出力を、図6および7において様々なパラメータについてプロットした。
【0205】
[0224] 図6は、オピオイドの患者自己制限型の吸入の喪失下において行われるモデルの出力を示す(すなわち、換気抑制モデルおよび鎮静モデルを無効にした)。図6は、本発明の自己制限的側面の欠損下において、吸入器内の薬剤の時間経過を示し(「吸入器内の処方3020」−ライン1)、肺内の薬剤の時間経過を示す(「肺内の処方3040」−ライン2)。吸入器内の薬剤の量は、最初の10分間のシミュレーションで速度「吸入3030」で安定的に低下した。肺内の薬剤の量は、薬剤の肺への吸入の全体のプロセスを反映し、かつ肺から全身性循環への薬剤の吸収を反映する。
【0206】
[0225] 図7は、同一シミュレーション(換気抑制モデルおよび鎮静モデルを無効にした)についての、経時にわたる「換気抑制2060」を示す。グラフ出力は、患者の換気がこのシミュレーションにおける基線換気の約25%まで低下することを示した。換気抑制は、約5〜10分間にわたって持続された。二酸化炭素が患者の血漿中に堆積されるにつれて、換気の低下が抑制された。また、同じ速度で、患者の肺においても換気の低下が抑制され、その結果として、換気におけるオピオイドの抑制作用を相殺した。換気の低下は、低酸素による障害からの危険に患者をさらした。
【0207】
(c)換気抑制モデルを有効にして行われたときのモデルの出力
[0226] (b)において使用されたシミュレーションが、換気抑制モデルを有効にすることによって修飾され、「吸入器内の処方3020」=5 mL(0時間)の同じ初期パラメータで再度行われた。様々なパラメータの出力を、経時にわたってプロットした。図8は、換気抑制{本発明の二つの自己制限的側面の一つ(もう一つは鎮静)}の存在下において、吸入器において放出される薬剤の量を示す「吸入器内の処方3020」(ライン1)と、肺内の薬剤の量を示す「肺内の処方3040」(ライン2)とを表す。例2(b)と比較したときに、予期されたように、シミュレーションが、換気抑制モデルを有効にして行われたときに薬剤をより長く吸入した−すなわち、図8における薬剤の吸入は、図6の10分間に対して約17分間にわたって行われた。これは、換気抑制によって引き起こされる換気の減少に起因するものであり、患者がオピオイドにさらされる量が制限された。換気の減少は、同じシミュレーションについて経時にわたる「換気抑制2060」をプロットした図9において詳細に例証される。「換気抑制2060」は、図9において50%まで減少した。図7において示されたシミュレーションと比較したとき、患者は、シミュレーションが不活性化された換気抑制モデル(図7)で行われたときと比較して半分程度の呼吸を行う(図9)。このシミュレーションは、オピオイド摂取の自己制限によって引き起こされる換気の変化が、患者に十分な安全を与えることを示している。
【0208】
(d)換気抑制モデルおよび鎮静モデルを有効にして行われたときのモデルの出力
[0227] 同じシミュレーション(吸入器の処方3020=5 mL(時間=0))が、換気抑制モデル5030および鎮静モデル5040を可能にして行われた。様々なパラメータの出力が経時にわたってプロットされた。図10は、換気抑制および鎮静の存在下において、吸入器の処方3020(ライン1)および肺の処方3040(ライン2)の経時変化を示す。図において見られるように、8分後に薬剤の吸入を完全に停止させた。その理由は、患者が鎮静状態に至り、吸入器を口元にあて続けることができなくなったからである (0〜1まで変化する「鎮静状態1040」としてシミュレートされた)。この時点で、約2 mLが「吸入器内の処方3020」にとどまり、その結果、約40%のオピオイド投与量が吸入器内にとどまり、吸入されなかった。図11は、このシミュレーションの時間経過にわたる「換気抑制2060」をプロットする。図11における換気の最大の抑制は約60%である。図9と比較すると、オピオイドによって誘導された鎮静に起因する向上した安全性は明らかである。
【0209】
[0228] 従って、例2は、シミュレーションを通して、図5〜11に図示されたように、本明細書中に記載されたようなオピオイド送達の自己制限的システムの効果および利益を実証する。
【0210】
例3:二つのオピオイドの投与
[0229] このシミュレーションでは、モデルパラメータは、任意の特異的オピオイドを反映しないが、オピオイド送達の提示されたシステムの自己制限的側面を実証するように調整された。該シミュレーションは、異なる薬物動態学を示す二つの異なるオピオイドを含むオピオイド組成物について、同じ変化、時間でモデル化されかつ測定された。
【0211】
(a)二つのオピオイドモデルの構築
[0230] 図12は、二つのオピオイドがどのようにして該モデルのための単一のオピオイドに組み合わされるのかについて知らせる。二つのオピオイドのシミュレーションにおいて、「作用部位の即効型オピオイド12010」は、即効開始型オピオイドの濃度を表す;「作用部位の遅延型オピオイド12020」は、遅延開始型オピオイドを表す。これらの各々は、単一のオピオイドモデル(例2)と同様に並行してかつ同じ方法において決定される。しかしながら、各々は別々に決定され、その後に組み合わされて、「組み合わされたオピオイド作用部位の濃度12030」を決定する。「組み合わされたオピオイド作用部位の濃度12030」は、各オピオイドの既知の相対的効力「相対的効力12040」を使用して計算される。「組み合わされたオピオイド作用部位の濃度12030」は、図13A、13B、13Cおよび図17A、17Bおよび17Cにおいて例示された二つのオピオイドモデルにおける「作用部位のオピオイド1010」と等しい。
【0212】
[0231] 図13A、13Bおよび13Cは、二つのオピオイドモデルのシミュレーションについてのアルゴリズムを示す。これは、装置モデル5010に相当しかつ装置モデル5010として説明される「装置モデル13010」; 図4、5Aおよび5Bにおいて図示され、かつ例1および2において説明され、かつ各々が並行して実行され、その後、図12において記載されたように、二つの薬剤モデル13050を使用して組み合わされた、薬物動態学的モデル5020の二つの例(一つは即効型オピオイド、一つは遅延型オピオイド)の組み合わせを含む「薬物動態学的モデル13020」; 図2および図5Aおよび5Bにおいて図示され、かつ例1および2において説明された、「換気抑制モデル5030」; ならびに図2、図5Aおよび5Bにおいて図示され、かつ例1および2において説明された「鎮静モデル5040」、が包含される。
【0213】
[0232] 図13A、13Bおよび13Cに示されたモデルはまた、Stellaプログラミング言語(ソースコード)において表された、以下の数学的モデルによって記載され得る。
【数5】

【0214】

【0215】

【0216】

【0217】
(b)換気抑制モデルおよび鎮静モデルを可能にして行われたときのモデルの出力
[0233] 同一のシミュレーション(吸入器の処方3020=5 mL(時間=0))が、例3 (a)および図13A、13Bおよび13Cにおいて図示されたような二つのオピオイドモデルにおいて行われた。図14は、換気抑制および鎮静の存在下における、吸入器の処方3020(ライン1)、肺の処方(即効型オピオイド)3040(ライン2)、および肺の処方(遅延型オピオイド)3040(ライン3)の時間経過を示す。該シミュレーションは、12分間の実施にわたり、薬剤が患者に吸入されることを示す。吸入器内の薬剤の量の低下の速度は完全に直線ではなく、オピオイド誘導型の換気抑制によって遅くなった呼気を反映する。約12分後、患者はさらなるオピオイドを吸入することを止め、オピオイドによって誘導された鎮静を反映した。即効性作用のオピオイドは、全身性循環において急速に上昇し、肺内に堆積された量が制限され、患者がさらなるオピオイドを吸入することを止めたとき、肺内の濃度は急激に低下した。遅延性作用のオピオイドは、肺でゆるやかに上昇し、吸入中の肺内にさらなる薬剤が堆積され得、患者へのオピオイド送達の終了後2時間を経過して全身性循環にオピオイドが堆積された。
【0218】
[0234] 図15は、同一シミュレーションについての異なる変化を示す。図15において、ライン1は、経時にわたる作用部位(「即効型薬剤の作用部位」)における即効性作用のオピオイド濃度を示し、かつ迅速な吸収と急速な血漿作用部位の平衡に起因する急速な上昇について実証する。ライン2は、経時にわたる作用部位(「遅延型薬剤の作用部位」)における遅延性作用のオピオイド濃度であり、かつ遅延性の吸収と遅延性の血漿作用部位の平衡に起因する濃度のゆっくりとした上昇について実証する。ライン3は、即効開始型および遅延開始型薬剤の組み合わされた濃度(「組み合わされたオピオイド作用部位の濃度」)を示す。図を見てわかるように、組み合わせ薬剤は、最初のオピオイドの投与の間にピークに達する。
【0219】
[0235] 図15および図14は、同一の実行シミュレーションについての異なる変化を示す(同じくX軸(時間))。従って、約12分後に患者が薬剤の自己投与を止めることを示す図14を参照できる。図14が図15で干渉されると、即効性作用のオピオイドの濃度が12分後に無視できるほどになったとき、遅延性作用のオピオイドに対する患者の反応が反映されるのが解る。しかしながら、全体のオピオイド濃度は、経時にわたってかなり安定していた。これは、即効性作用のオピオイドが「即効性薬剤の浄化(クリアランス)」を通して系から除去されるにつれて、「作用部位のオピオイド」において即効性作用のオピオイドを徐々に置換する遅延性作用のオピオイドを反映するためである。
【0220】
[0236] 図16は、同一の実行シミュレーションにおける、二つのオピオイドの送達系でのオピオイドの送達中および送達後の「換気抑制2060」の時間経過を示す。図16は、基線の約60%までの換気の初期低下を実証した。先に言及したように(図11についての説明)、この低下は患者にとって十分に耐えうるものである。CO2が増加すると換気が刺激される。この初期降下後の換気の低下は非常に小さいものであった。その理由は、換気を制御し続ける患者の十分なCO2の堆積にある。
【0221】
[0237] 図13A、13B、13C、14および15によって実証されたように、装置の二つの薬剤の実施態様において、第一の薬剤は、患者のオピオイドに対する感受性の「標識」として機能し、第一および第二のオピオイドの両方の投与量を制限する。この方法において、患者は、過剰な投与を受けることなく、遅延性作用のオピオイドを受けることができる。二つのオピオイドの組み合わせ、その一つ即効性作用型は、オピオイド単独、特に遅延性作用のオピオイド単独の安全性側面を増加させるために使用され得る。
【0222】
例4:二つの薬剤モデルにおけるオピオイドの例としての「アルフェンタニルおよびモルヒネ」
[0238] この例は、二つの特定の薬剤、すなわちアルフェンタニルとモルヒネに対する例3の適用を示す。アルフェンタニルは即効性作用のオピオイドであり、モルヒネは遅延性作用のオピオイドである。
【0223】
[0239] 図17A、17Bおよび17Cは、図5Aおよび5Bにおいて記載されかつ例1において説明された「2装置モデル5010」を含む「装置モデル17010」を包含する。各装置モデルは並行して実行されるが、各装置モデルはオピオイド(アルフェンタニルおよびモルヒネ)の特定の既知のパラメータで修飾および再標識される(図17Aおよび17Bにおいて図示)。図2において記載された換気抑制モデル5030、図1において記載された鎮静モデル5040、および図12において記載された二つの薬剤モデル17050は、特定の薬剤(アルフェンタニルおよびモルヒネ)を反映するために再標識される(図17Cにおいて図示)。図17A、17Bおよび17Cは、換気抑制モデル17030の全てのパラメータ2070を公開する。モルヒネおよびアルフェンタニルについての薬物動態学的モデル17020のパラメータ4080が完全に公開される。アルフェンタニルおよびモルヒネは、それぞれ作用部位を含む3つの区画の乳頭状モデルによって表される。
【0224】
[0240] 図17A、17Bおよび17Cで表されるモデルはまた、Stellaプログラム言語で表される以下の数学的モデルによって記載することができる。アルフェンタニルおよびモルヒネのための定数は、これらの薬剤についての既存の文献に基づく。
【数6】

【0225】

【0226】

【0227】

【0228】

【0229】

【0230】
[0241] 該シミュレーションは、吸入器(0時間)における700mcgの生物利用可能なアルフェンタニルと67mcgの生物利用可能なモルヒネの開始パラメータで行われた(「吸入器のアルフェンタニル」=700mcg(0時間);「吸入器のモルヒネ」=67mcg(0時間))。図18および19は、該シミュレーションが行われたときの様々なパラメータの濃度を示す。図18は、組み合わされた製品の吸入後の作用部位での経時(分)にわたるアルフェンタニル(ng/ml, ライン1)、モルヒネ(ng/ml, ライン2)および組み合わされたオピオイド(フェンタニル当量のng/ml, ライン3)の濃度を示す。この例において、薬剤投与は、吸入された薬剤の90%が送達された後、患者の鎮静のために終了に至った。図に示すように、アルフェンタニルの濃度は、作用部位において急激に上昇し(ライン1)、即効性の薬剤作用を生み出す。モルヒネ薬剤作用は、作用部位において極めてゆるやかに上昇し、遅延性上昇型の薬剤作用を生み出す。ライン3は、組み合わされたオピオイドの作用部位における濃度を示し、各薬剤は、フェンタニルに比例してその作用強度について調整を受ける。三つのライン全てが、異なるY尺度をもち、Y軸上に示すように、相対的な作用強度のために作用部位における濃度を標準化する。ライン3に示されるように、最も高いオピオイドの露出は吸入の時点で起こる。これは、ほとんど全体的にアルフェンタニルによるものである。しかしながら、アルフェンタニルが作用部位から浄化されるにつれて、アルフェンタニルは作用部位へのモルヒネの流入によって正確に置換される。アルフェンタニル尺度で25ng/ml未満の作用部位での濃度(その相対的な作用強度のためにモルヒネ尺度で37.5ng/mlおよびフェンタニル尺度で0.5ng/mlに相当)は、治療量以下と考えられる。患者は、典型的には50ng/mlと100ng/ml(アルフェンタニル尺度で)の間で痛覚脱失作用を感じるであろう。そして、75〜125ng/ml(アルフェンタニル尺度で)の間で副作用を、125ng/ml(アルフェンタニル尺度で)を超えると毒作用を感じるであろう。
【0231】
[0242] 図19は、アルフェンタニル・モルヒネの組合せオピオイド送達系の吸入からの換気抑制を表している。図19に示されるように、換気は、薬剤投与の間に基線の約65%まで低下し、その後にCO2が堆積されるにつれて基線の約80%まで回復する。換気は、モルヒネ作用が維持されるので、続く4時間を通して基線の80%で維持される。
【0232】
[0243] 図17A、17B、17C、18および19において実証されたように、アルフェンタニル・モルヒネの組み合わせオピオイド送達系(文献から取り出されたパラメータ値を使用するシミュレーションに基づく)において、患者の自己制限型のオピオイド送達系は、オピオイドの中毒量の投与を防止し、かつ、遅延性作用のオピオイドと即効性作用のオピオイドとを組み合わせることによって遅延性作用のオピオイドの安全な送達を提供する。さらにまた、即効性作用のオピオイドの作用を利用して患者が受けるオピオイド総量を制限する。
【0233】
例5:ヒト被験体におけるフェンタニル製剤の臨床試験
(a) 遊離型およびリポソーム被包型のフェンタニル製剤の調製方法
[0244] 遊離型およびリポソーム被包型のフェンタニルの混合物を含む製剤は、エタノール相を水相と混合することによって調製された。エタノール相は、エタノール、クエン酸フェンタニル、ホスファチジルコリンおよびコレステロールで構成される。水相は、注入用の水で構成される。混合する前に、両方の相を、摂氏約56〜60℃の温度まで加熱した。二つの相を混合し、かつ、混合物を摂氏56〜60℃でさらに10分間にわたって撹拌した。その後、混合物は、約2時間にわたって室温下で冷却された。一般に、最終的な水性処方には、注入用の水の溶液中において、1mL当たり500mcgのフェンタニル(800mcgのクエン酸フェンタニル)、40mgのホスファチジルコリン、4mgのコレステロール、および100mgのエタノールが含まれる。充填後、製剤を最終的滅菌のためにオートクレーブした。最終製剤には、35〜45%のフェンタニルが遊離型の薬剤として含まれる(残りは被包型の画分である)。
【0234】
(b) 治療手順
[0245] 以下の例の手順は、患者の肺を通した遊離型およびリポソーム被包型のフェンタニルの混合物の投与が、どのように治療学的有効濃度を血流に送達するのか、そして、低酸素症の副作用が、投与期間中の眠気、眩暈感または鎮静の後にどのようにもたらされるのかについて示す(但し、低酸素症の副作用が常に投与期間中の眠気などの後にもたらされるわけではない)。
【0235】
[0246] 健康なボランティアの被験者に対して、8 L/分の圧縮された空気を送り出すことができるAeroEclipse(商標)噴霧器 吸息作動型ユニットを使用して遊離型およびリポソーム被包型のフェンタニルの混合物の単回または多回投与で治療を行った。各投薬期間中、噴霧器に、遊離型(40%)およびリポソーム被包型(60%)のフェンタニルの3mLの混合物を充填し、被験者は該装置が吸入のためのエアロゾルを生成しなくなるまで噴霧された薬剤を吸入するように指示を受けた。吸入期間中、嗜眠感、眠気、眩暈感がある被験者は、噴霧器がエアロゾルを生成しなくなるまで、薬剤を自己投与し続けるよう促した。血漿サンプルを投与期間にわたって回収し、投与開始後12時間について、血漿フェンタニル濃度をモニターした。また、呼吸数の変化や低酸素症を含むあらゆる毒性事象について被験者をモニターした。
【0236】
[0247] 対照の患者には、フェンタニルを静脈内注射した。
【0237】
(c)最大血漿濃度の測定および服用血漿濃度の終点
[0248] 被験者が、毒作用が発症する前に、薬剤を自己制限することによって薬剤の毒性レベルを防ぐことができるか否かについて決定するために、最大血漿濃度(Cmax)を、投与の終点での血漿濃度(Ceod)に対してプロットした(図20A)。Ceodは、ほとんどの場合にCmaxの80%〜100%の範囲になることが解った。この結果は、オピオイドの最大濃度が、被験者がオピオイドを摂取することを止めた時点での濃度と比較してあまり高くないことを示している。この結果は、静脈注射でフェンタニルを与えられた被験者が、Ceod濃度よりもかなり高いCmax濃度を示したこととは際立って対照的な結果である。そして、この結果は、オピオイドの濃度(および結果として生じる毒作用)が、被験者がオピオイドの摂取を停止した後にそれほど上昇しないので、被験者による薬剤の滴定において安全性が増加したことを示す。さらに、この結果は、比較的長期間(2〜20分)にわたって吸入されたオピオイド処方の開示された濃度において、「投与量の終点」が非毒性である場合、被験者によって摂取されたオピオイドの最大濃度もまた非毒性であることを示す。
【0238】
(d)副作用および毒作用の到達時間の決定
[0249] 被験者自身が効果的に自己滴定するためには、嗜眠状態、眩暈感または換気抑制のような薬剤の副作用が毒作用の開始前に起こる必要がある。この毒作用は、本実験においては被験者の正常状態の90%未満の血液酸素飽和度で発症する血液低酸素症として定義した。副作用が毒作用の前に起こるか否かを決定するために、副作用に至る時間および毒作用に至る時間を、投与の終わりまでの時間に対してプロットした(図21)。あらゆる投与時間の終点について、副作用に至る時間は、毒作用に至る時間と同等またはより短時間であった。この結果は、嗜眠状態、眩暈感または換気抑制が、毒作用に至る時間と同等またはその時間の前に常に発生することを示す。
【0239】
(e)毒作用と副作用の間の相関関係の決定
[0250] 被験者自身が効果的に自己滴定するためには、毒作用が、原則的には、薬剤の投与の休止をもたらす(または知らせる)副作用の後に起こる必要がある。図22は、本研究の全被験者について、副作用が毒作用と密接に関連していることを示す。この結果は、毒作用を示す患者は副作用も示す可能性が極めて高いことを示す。
【0240】
[0251] この例は、ヒト被験者の制御された治験において、(1)毒作用が副作用の後にほぼ常に起こること、(2)吸入されたオピオイドのCmax濃度は、この例において与えられた投与の側面において、Ceod濃度にほぼ等しいということを示す。従って、副作用が感じられたときにオピオイドの投与を停止した被験者は、毒作用に必要なオピオイド濃度レベルに達しない。
【0241】
例6:薬剤の最適な送達のための様々な噴霧器技術の試験
[0252] 図3、5、13および17は、長期間にわたる吸入の速度および肺に送達された薬剤の量に依存する装置モデルを図示したものである。図5、13および17の換気抑制モデルは、副作用がどのように吸入速度を制限するかについて予測する。さらに、肺上でのオピオイド堆積の速度を作用部位での効果の発症の速度と釣り合わせる必要がある。薬剤処方が4〜20分の期間にわたって都合よく、安全かつ効果的に投与されるように、一回の吸入で投与される薬剤の量を、選択した閾値未満に制御しなければならない。処方と装置の選択の最適化を援助するために、特定の処方での装置の性能を、インビトロで特徴づけることができる。以下の例は、薬剤の肺への最適な送達のための噴霧器技術の試験を例証する。
【0242】
[0253] 遊離フェンタニルとリポソーム被包されたフェンタニルの混合物を含む製剤を、例5に記載された方法を使用して調製した。最終的な製剤は、遊離薬剤として35〜45%のフェンタニルを含み、残りは被包された画分に含まれる。
【0243】
[0254] The Andersen Cascade Impactor(ACI)技術は、噴霧器から放出されるエアロゾルの特性決定のための十分に確立された方法である(USP 26-NF21-2003, Chapter 601: Physical tests and determinations: aerosols. United States Pharmacopoeia, Rockville, MD, 2105-2123. United States Federal Drug Administration. 1998. Draft guidance: metered dose inhaler(MDI) and dry powder inhaler(DPI) drug products chemistry, manufacturing and controls documentation, Docket 98D-0997. United States Federal Drug Administration, Rockville, MD. Mitchell, JP; PA Costa; S Waters. 1987. An assessment of an Andersen Mark-lI Cascade Impactor. J. Aerosol Sci. 19: 213-221)。オピオイド出力、MMADおよび微細な粒子画分の速度を含む種々のパラメータを、この技術で決定することができる。特定の処方を含む商業的に利用可能な噴霧器を試験するために、周囲実験室条件下でACIを28.3 L/分で操作した。MMADを米国食品医薬品局プロトコル601に従って算出し(USP 26-NF21-2003, Chapter 601: Physical Tests and Determinations: Aerosols. United States Pharmacopoeia, Rockville, MD, 2105-2123. United States Federal Drug Administration (FDA). )、4.7ミクロン未満のパラメータを切り捨てた微細な粒子投与量を、プレート上に堆積されたACIに集められた総量のエアロゾル出力の画分として決定した。異なる段階のACIに堆積された全オピオイド薬剤および脂質担体の量を、HPLC分析によって決定した。
【0244】
[0255] 様々な商業的に利用可能な小さな体積の噴霧器である、呼吸作動型AeroEclipse (Trudell Medical, London, Ontario)、呼吸増強型Pari-LC Plus (PARI GmbH, Starnberg, Germany)、および二つの従来型の小さな体積の噴霧器である、MistyNeb (Allegiance Healthcare Corp., McGraw Park, IL)およびOptiMist (Maersk Medical Inc., McAllen, Texas)について、ACI技術で試験を行った。各デバイスについて、肺中のフェンタニルの堆積の理論的な速度を、実験的に決定されたオピオイド出力の速度(mcg/秒)を使用して算出し、1分間の吸入の平均時間(20秒)によって乗じ、実験的に決定された微細な粒子画分について修正を行った。
【0245】
[0256] 健康なボランティアの被験者に対して、多様な噴霧器(上述したような)を使用して遊離のフェンタニルおよびリポソームで被包されたフェンタニル(上述した)の混合物の単回投与を行い、肺深部に堆積される理論的なフェンタニルが、インビボでの全フェンタニルの送達の平均速度と関連があるか否かを決定した。結果の概要を以下に示す:
【数7】

【0246】
[0257] この実験は、特定のフェンタニル組成物(例5において記載された)での吸入の速度が、肺深部へのフェンタニルの堆積の速度の範囲を決定する。呼吸作動型AeroEclipse噴霧器および呼吸増強型Pari-LC Plus噴霧器で、理論的堆積と実際の堆積との間に非常に密接な関係が生み出された。従来型の小さな体積のジェット式噴霧器(MistyNebおよびOptiMist)で、理論的堆積と実際の堆積との間に密接な関係は観察されず、実際のインビボでの堆積は、インビトロでの研究によって予測されたよりも低かった。この実験はまた、異なる噴霧器と組み合わされた、組成物の他の組み合わせ(異なる濃度のオピオイドまたは異なる比率のオピオイド)について行い、オピオイドの堆積の所望の速度を算出し、広く行われている実験手法を通して最適なオピオイドと噴霧器との組み合わせ決定する方法について記載する。
【0247】
例7:ヒト被験者におけるフェンタニル製剤の定性的作用の臨床試験:
[0258] 以下の例は、適切に吸入された薬剤処方の鎮痛作用と副作用が、患者によってどのように使用され、治療学的有効量の鎮痛を与えるのかについて示す。
【0248】
[0259] 遊離フェンタニルとリポソームで被包されたフェンタニルの混合物を含む製剤を、例5において記載された方法を使用して調製した。最終的な製剤は、遊離薬剤として35〜45%のフェンタニルを含み、残りは被包された画分に含まれる。
【0249】
[0260] 関節鏡の前十字靱帯修復を受けている術後患者について研究を行った。 標準化された全身麻酔薬は、手術時のオピオイド鎮痛薬として静脈内注射でフェンタニルを投与した。手術後、患者はPost Anesthetic Care Unit (PACU)において回復を受け、患者が中度または重度の痛みを訴えたとき、8 L/分に設定された圧縮された空気を供給するAeroEclipse(商標)噴霧器・呼吸作動型ユニットを使用して遊離フェンタニルとリポソームで被包されたフェンタニルの混合物を患者に与えた。患者は、遊離フェンタニルとリポソームで被包されたフェンタニルの混合物(3ml)を充填したAeroEclipse(商標)噴霧器のマウスピースから吸入を自発的に行い、フェンタニルの投与を自己制限した。患者に対して、知覚可能な痛覚脱失の開始の時間を報告し、有効な痛みの開始の時点または副作用の開始の時点で自己投与を停止するように指示を与えた。噴霧器がエアロゾルを生成しなくなった時点で有効な痛覚脱失を得られなかった患者については、遊離フェンタニルとリポソームで被包されたフェンタニルの混合物(3ml)を充填した第二の噴霧器を与えた。この方法において、患者は、事実上「無制限に」治療を受けた。噴霧薬剤を患者が自己投与する方法は、患者自身の手で噴霧器をつかむ工程と、噴霧器のマウスピースを患者自身の口元に丈夫なシールで固定する工程と、呼吸サイクルの吸気期間中に噴霧器を作動させる工程が含まれる。患者に対して、痛覚脱失が達成されるまで治療を通して「普通に呼吸を行う」ように指示を与えた。
【0250】
[0261] 呼吸数の変化や低酸素症を含むあらゆる毒性事象について患者をモニターした。また、患者に対して、噴霧薬剤の自己投与前および後に、痛みのレベルを「特になし」、「低度」、「中度」、または「重度」として記載し、痛みがなくなった最初の経験の時点を記録するように指示を与えた。
【0251】
[0262] この「単回投与」または「単回治療期間」の研究の間、従来の痛覚脱失薬剤(静脈注射のモルヒネ)は、患者が痛みを脱した時点で全ての患者に利用可能とした。
【0252】
[0263] 手術後の患者の大部分(80%)は、噴霧薬剤での治療に適任であり、PACUにおいて「中度」(46%)〜「重度」(34%)の術後の痛みを報告した。「低度」の術後の痛みを報告した患者については除外した。
【0253】
[0264] 治療の適用対象となった患者の95%は、本研究の薬剤を使用して噴霧を開始した直後に知覚可能な痛覚脱失を直ちに達成し、噴霧を止めることによって十分かつ効果的な痛覚脱失の時点でその投与を自己適定することができた。最初の知覚可能な痛覚脱失効果までの平均時間は5.2分であった。効果的な痛覚脱失までの平均時間は、薬剤の自己投与から22.8分であった。十分かつ効果的な痛覚脱失が得られた(痛み特になしが5%、「低度」の痛みが78%、そして「重度」から「中度」まで痛みが治まった患者が12%)。十分かつ効果的な痛覚脱失を達成した患者に対して、痛みの喪失についてモニターした。17%の患者は、12時間の研究期間中にさらなるオピオイドを必要としなかった。83%の患者までが、吸入の終了後平均2時間後以降に痛みの喪失を経験し、静脈内注射のモルヒネの投与を必要とした。
【0254】
[0265] 治療された患者について、95%が、噴霧薬剤の自己投与後に有効な痛覚脱失を報告し、毒作用については誰も経験しなかった。84%の患者は、十分なレベルの痛覚脱失に達したときに薬剤の自己投与を停止した。11%の患者は、副作用(眠気または悪心)を感じ報告した後、短時間(3分間)で薬剤の自己投与を停止した。
【0255】
[0266] これらの結果は、適切に吸入された薬剤処方の痛覚脱失作用および副作用が患者によって使用され得、治療学的有効量の痛覚脱失を与える一方、毒作用を回避できることを示す。
【0256】
例8:薬剤の最適な送達のための様々な処方の試験
[0267] 以下の例は、本発明に使用するための様々な適切なオピオイド処方を示す。該処方は、薬剤成分の既知の薬物動態学的かつ薬力学的側面、フェンタニルと比較した既知の等価作用強度(equivalent potency)、および上述の臨床試験の結果に基づいている。
【0257】
[0268] オピオイドの混合物を含む製剤は、以下に表された処方チャートに基づいて調製される:
【数8】

【0258】
[0269] 先の記述は、一例に過ぎず、以下のクレームによって定義された発明の範囲を制限するように解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0259】
【図1】図1は、鎮静のコンピューターシミュレーションモデルを表すフローチャートである。
【図2】図2は、換気抑制のコンピューターシミュレーションモデルを表すフローチャートである。
【図3】図3は、吸入装置のコンピューターシミュレーションモデルを表すフローチャートである。
【図4】図4は、肺経路を通して患者に投与される、オピオイドの薬物動態学的なプロファイリングのコンピューターシミュレーションモデルを表すフローチャートである。
【図5A】図5Aおよび5Bは共に、単一オピオイドの投与の薬物動態学のStella TMコンピューターシミュレーションを表すフローチャートである。図5Aは、装置モデルおよび薬物動態学的モデル側面のシミュレーションを表し、図5Bは、換気抑制モデルおよび鎮静モデル側面のシミュレーションを示す。
【図5B】図5Aおよび5Bは共に、単一オピオイドの投与の薬物動態学のStella TMコンピューターシミュレーションを表すフローチャートである。図5Aは、装置モデルおよび薬物動態学的モデル側面のシミュレーションを表し、図5Bは、換気抑制モデルおよび鎮静モデル側面のシミュレーションを示す。
【図6】図6は、吸入装置内および患者肺内のオピオイドの量の時間経過として表された、図5Aおよび5B(換気抑制および鎮静モデルを無効)のStella TMコンピューターシミュレーションの出力を表すグラフである。
【図7】図7は、図5Aおよび5B(換気抑制および鎮静モデルを無効)のStella TMコンピューターシミュレーションにおける換気抑制の時間経過を示すグラフである。
【図8】図8は、図5Aおよび5B(換気抑制モデルを有効、鎮静モデルを無効)のStella TMコンピューターシミュレーションにおける、吸入デバイス内および患者肺内のオピオイドの量の時間経過を示すグラフである。
【図9】図9は、図5Aおよび5B(換気抑制モデルを有効、鎮静モデルを無効)のStella TMコンピューターシミュレーションにおける換気抑制の時間経過を表すグラフである。
【図10】図10は、図5Aおよび5B(換気抑制および鎮静モデルを有効)のStella TMコンピューターシミュレーションにおける、吸入デバイス内および患者肺内のオピオイドの量の時間経過を表すグラフである。
【図11】図11は、図5Aおよび5B(換気抑制および鎮静モデルを有効)のStella TMコンピューターシミュレーションにおける換気抑制の時間経過を表すグラフである。
【図12】図12は、2つのオピオイドの投与についてのコンピューターシミュレーションモデルを表すフローチャートである。
【図13A】図13A、13Bおよび13Cは、2つのオピオイドの投与の薬物動態学のStella TMコンピューターシミュレーションを表すフローチャートである。
【図13B】図13A、13Bおよび13Cは、2つのオピオイドの投与の薬物動態学のStella TMコンピューターシミュレーションを表すフローチャートである。
【図13C】図13A、13Bおよび13Cは、2つのオピオイドの投与の薬物動態学のStella TMコンピューターシミュレーションを表すフローチャートである。
【図14】図14は、吸入デバイスおよび患者の肺におけるオピオイドの総量の時間経過として表された、図13A、13Bおよび13CのStella TMコンピューターシミュレーションの出力を表すグラフである(換気抑制および鎮静モデルを有効)。
【図15】図15は、図13A、13Bおよび13CのStella TMコンピューターシミュレーションにおける作用部位での全オピオイドの濃度の時間経過を表すグラフである(換気抑制および鎮静モデルを有効)。
【図16】図16は、図13A、13Bおよび13CのStella TMコンピューターシミュレーションにおけるオピオイドの送達中および後の換気抑制の時間経過を表すグラフである(換気抑制および鎮静モデルを有効)。
【図17A】図17A、17Bおよび17Cは、投与される2つのオピオイドがアルフェンタニルおよびモルヒネである、2つのオピオイドの投与の薬物動態学のStella TMコンピューターシミュレーションを表すフローチャートである。17A図および17Bは、シミュレーションの装置モデルおよび薬物動態学的モデル側面のシミュレーションを表し、図17Cは、換気抑制モデル、鎮静モデル、および二つの薬剤モデル側面のシミュレーションを示す。
【図17B】図17A、17Bおよび17Cは、投与される2つのオピオイドがアルフェンタニルおよびモルヒネである、2つのオピオイドの投与の薬物動態学のStella TMコンピューターシミュレーションを表すフローチャートである。17A図および17Bは、シミュレーションの装置モデルおよび薬物動態学的モデル側面のシミュレーションを表し、図17Cは、換気抑制モデル、鎮静モデル、および二つの薬剤モデル側面のシミュレーションを示す。
【図17C】図17A、17Bおよび17Cは、投与される2つのオピオイドがアルフェンタニルおよびモルヒネである、2つのオピオイドの投与の薬物動態学のStella TMコンピューターシミュレーションを表すフローチャートである。17A図および17Bは、シミュレーションの装置モデルおよび薬物動態学的モデル側面のシミュレーションを表し、図17Cは、換気抑制モデル、鎮静モデル、および二つの薬剤モデル側面のシミュレーションを示す。
【図18】図18は、図17A、17Bおよび17CのStella TMコンピューターシミュレーションにおける作用部位でのアルフェンタニル、モルヒネおよび混合性オピオイドの濃度の時間経過を表すグラフである(換気抑制および鎮静モデルを有効)。
【図19】図19は、図17A、17Bおよび17CのStella TMコンピューターシミュレーションにおける換気抑制の時間経過を表すグラフである(換気抑制および鎮静モデルを有効)。
【図20A】図20は、オピオイドを投与された患者の血漿中におけるオピオイドの投与濃度の終わりに対する、血漿中のオピオイドの最大濃度を表すグラフである。図20Aは、肺経路を通してフェンタニルおよびリポソームの組合せで被包されたフェンタニルを投与された患者を表す。図20Bは、静脈内にフェンタニルを投与された患者を表す。
【図20B】図20は、オピオイドを投与された患者の血漿中におけるオピオイドの投与濃度の終わりに対する、血漿中のオピオイドの最大濃度を表すグラフである。図20Aは、肺経路を通してフェンタニルおよびリポソームの組合せで被包されたフェンタニルを投与された患者を表す。図20Bは、静脈内にフェンタニルを投与された患者を表す。
【図21】図21は、副作用/毒性効果 対 肺経路を通してフェンタニルおよびリポソームで被包されたフェンタニルの組合せを投与された患者の副作用および毒性効果についての投与の終わりまでの時間を示すグラフである。
【図22】図22は、副作用と毒性効果の統計学的相互関係を表す表である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
毒性を回避する間、患者に痛覚脱失を与える方法において使用するためのオピオイド処方であって; 前記方法には、痛覚脱失を生み出す肺性薬剤送達装置を使用して前記処方を連続的に吸入させ、十分な痛覚脱失が達成されるかまたは副作用の発症時に吸入を停止させることが含まれ; 前記肺性薬剤送達装置は、効果的速度で肺内に処方の粒子を堆積させるのに適合し; 前記処方には、有効量の少なくとも1つの即効開始型オピオイドと、有効量の少なくとも1つの徐放効果型オピオイドと、薬剤的に許容可能なキャリアとが含まれ; 各オピオイドの濃度およびタイプは、吸入の間、痛覚脱失が前記副作用の発症の前に達成され、かつ前記副作用の発症が毒性の発症の前に起こるように選択され、および最大オピオイド血漿濃度が毒性レベルに達しないように選択され、その結果、前記副作用の発症が毒性を回避するために吸入を終了する患者によって使用され得る、オピオイド処方。
【請求項2】
前記各オピオイドの濃度およびタイプが、副作用の発症時の最大オピオイド血漿濃度が、66%以上の最大オピオイド血漿濃度になるように選択される請求項1に記載の処方。
【請求項3】
前記各オピオイドの濃度およびタイプが、副作用の発症時の最大オピオイド血漿濃度が、80%以上の最大オピオイド血漿濃度になるように選択される請求項1に記載の処方。
【請求項4】
前記少なくとも1つの即効開始型オピオイドが、フェンタニル、アルフェンタニル、スフェンタニルおよびレミフェンタニルから選択される請求項1〜3のいずれか一項に記載の処方。
【請求項5】
前記少なくとも1つの即効開始型オピオイドが、フェンタニルおよびアルフェンタニルから選択される請求項4に記載の処方。
【請求項6】
前記少なくとも1つの徐放効果型オピオイドが、モルヒネ、モルヒネ-6-グルクロニド、メサドン、ヒドロモルフォン、メペリジン、肺表面で薬剤の放出を遅延させる生物適合性キャリア内に被包されたオピオイド、およびリポソームで被包されたオピオイドから選択される請求項1〜5のいずれか一項に記載の処方。
【請求項7】
前記リポソームで被包されたオピオイドが、リポソームで被包されたフェンタニルである請求項6に記載の処方。
【請求項8】
前記少なくとも1つの徐放効果型オピオイドが、モルヒネおよびリポソームで被包されたフェンタニルから選択される請求項7に記載の処方。
【請求項9】
前記処方におけるオピオイドが、遊離フェンタニルおよびリポソームで被包されたフェンタニルからなる請求項1〜8のいずれか一項に記載の処方。
【請求項10】
前記総オピオイド濃度が、250〜1500mcg/mlである請求項9に記載のオピオイド処方。
【請求項11】
前記遊離フェンタニル対リポソームで被包されたフェンタニルの濃度比が、約2:3である請求項10に記載の処方。
【請求項12】
濃度100〜400 mcg/mlの遊離フェンタニルを含む請求項10または11に記載のオピオイド処方。
【請求項13】
濃度250〜750 mcg/mlのリポソームで被包されたフェンタニルを含む請求項10〜12のいずれか一項に記載のオピオイド処方。
【請求項14】
前記総オピオイド濃度が約500 mcg/mlであり、前記遊離フェンタニル濃度が約200 mcg/mlであり、かつ前記リポソームで被包されたフェンタニル濃度が約300 mcg/mlである請求項10〜13のいずれか一項に記載のオピオイド処方。
【請求項15】
前記オピオイドが遊離フェンタニルおよびリポソームで被包されたフェンタニルのみからなる処方を除く、二以上の異なるオピオイドを含む請求項1〜9のいずれか一項に記載の処方。
【請求項16】
前記処方におけるオピオイドが、アルフェンタニルおよびモルヒネからなる請求項1〜15のいずれか一項に記載の処方。
【請求項17】
300〜6700 mcg/mlの濃度においてアルフェンタニルを含む請求項16に記載の処方。
【請求項18】
650〜13350 mcg/mlの濃度においてモルヒネを含む請求項16または17に記載の処方。
【請求項19】
毒性を回避する間、患者に痛覚脱失を与えるオピオイド処方を投与する方法であって、
痛覚脱失を生み出す効果的速度で肺内に処方の粒子を送達するように適合された、肺性薬剤送達装置を使用して前記処方を連続的に吸入させる工程と、
十分な痛覚脱失が達成されるかまたは副作用の発症時に吸入を停止させる工程と
を含み、
前記処方には、有効量の少なくとも1つの即効開始型オピオイドと、薬剤的に許容可能なキャリアとが含まれ; 各オピオイドの濃度およびタイプ、および前記粒子の送達の効果的速度は、吸入の間、痛覚脱失が前記副作用の発症の前に達成され、かつ前記副作用の発症が毒性の発症の前に起こるように選択され、および最大オピオイド血漿濃度が毒性レベルに達しないように選択され、その結果、前記副作用の発症が毒性を回避するために吸入を終了する患者によって使用され得る、方法。
【請求項20】
前記処方が、1〜5ミクロンの質量媒体空気力学的直径で、肺性薬剤送達装置によって分配される請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記処方が、1〜3ミクロンの質量媒体空気力学的直径で、肺性薬剤送達装置によって分配される請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記処方が、1.5〜2ミクロンの質量媒体空気力学的直径で、肺性薬剤送達装置によって分配される請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記各オピオイドの濃度およびタイプが、副作用の発症時の最大オピオイド血漿濃度が、最大オピオイド血漿濃度の66%以上になるように選択される請求項19〜22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記各オピオイドの濃度およびタイプが、副作用の発症時の最大オピオイド血漿濃度が、最大オピオイド血漿濃度の80%以上になるように選択される請求項19〜23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記少なくとも一つの即効開始型オピオイドが、フェンタニル、アルフェンタニル、スフェンタニル、およびレミフェンタニルから選択される請求項19〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記少なくとも一つの即効開始型オピオイドが、フェンタニルおよびアルフェンタニルから選択される請求項25に記載の方法。
【請求項27】
徐放性の放出を提供する有効量の少なくとも一つの徐放効果型オピオイドをさらに含む請求項19〜26のいずれか一項に記載の方法であって、前記処方における各オピオイドの濃度およびタイプが、吸入の間、痛覚脱失が前記副作用の発症前に達成され、かつ前記副作用の発症が毒性の発症前に起こるように選択され、および最大総オピオイド血漿濃度が毒性レベルに達しないように選択され、その結果、前記副作用の発症が毒性を回避するために吸入を終了する患者によって使用され得る、方法。
【請求項28】
前記少なくとも一つの徐放効果型オピオイドが、モルヒネ、モルヒネ-6-グルクロニド、メサドン、ヒドロモルフォン、メペリジン、肺表面で薬剤の放出を遅延させる生物適合性キャリア内に被包されたオピオイド、およびリポソームで被包されたオピオイドから選択される請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記リポソームで被包されたオピオイドが、リポソームで被包されたフェンタニルである請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記少なくとも一つの徐放効果型オピオイドが、モルヒネおよびリポソームで被包されたフェンタニルから選択される請求項27〜29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記処方におけるオピオイドが、遊離フェンタニルおよびリポソームで被包されたフェンタニルからなる請求項27〜30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記遊離フェンタニル対リポソームで被包されたフェンタニルの濃度比が、1:5〜2:1である請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記遊離フェンタニル対リポソームで被包されたフェンタニルの濃度比が、約2:3である請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記総オピオイド濃度が、250〜1500 mcg/mlである請求項31〜33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記処方が、100〜400 mcg/mlの濃度において遊離フェンタニルを含む請求項19〜33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記処方が、250〜750 mcg/mlの濃度においてリポソームで被包されたフェンタニルを含む請求項19〜33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記オピオイド濃度が約500 mcg/mlであり、前記遊離フェンタニル濃度が約200 mcg/mlであり、かつリポソームで被包されたフェンタニル濃度が約300 mcg/mlである請求項19〜36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
4〜50 mcg/分の遊離フェンタニルが、吸入中に肺に堆積される請求項31〜37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
10〜20 mcg/分の遊離フェンタニルが、吸入中に肺に堆積される請求項38の方法。
【請求項40】
約15 mcg/分の遊離フェンタニルが、吸入中に肺に堆積される請求項39の方法。
【請求項41】
5〜150 mcg/分のリポソームで被包されたフェンタニルが、吸入中に肺に堆積される請求項31〜37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
10〜90 mcg/分のリポソームで被包されたフェンタニルが、吸入中に肺に堆積される請求項41に記載の方法。
【請求項43】
15〜60 mcg/分のリポソームで被包されたフェンタニルが、吸入中に肺に堆積される請求項42に記載の方法。
【請求項44】
20〜45 mcg/分のリポソームで被包されたフェンタニルが、吸入中に肺に堆積される請求項43に記載の方法。
【請求項45】
5〜100 mcg/分の総オピオイドが、吸入中に肺に堆積される請求項19〜44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
10〜40 mcg/分の総オピオイドが、吸入中に肺に堆積される請求項45に記載の方法。
【請求項47】
30〜35 mcg/分の総オピオイドが、吸入中に肺に堆積される請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記処方が、二以上の異なるオピオイドを含む請求項19〜30のいずれか一項に記載の方法(但し、二つのオピオイドが遊離フェンタニルおよびリポソームで被包されたフェンタニルからなる処方を除く)。
【請求項49】
前記処方におけるオピオイドが、アルフェンタニルとモルヒネからなる請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記処方が、300〜6700 mcg/mlの濃度においてアルフェンタニルを含む請求項49に記載の方法。
【請求項51】
100〜500 mcg/分のアルフェンタニルが、吸入中の肺において堆積される請求項49または50に記載の方法。
【請求項52】
約250 mcg/分のアルフェンタニルが、吸入中の肺において堆積される請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記処方が、650〜13350 mcg/mlの濃度においてモルヒネを含む請求項49〜52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
100〜2000 mcg/分のモルヒネが、吸入中の肺において堆積される請求項49〜53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
200〜1000 mcg/分のモルヒネが、吸入中の肺において堆積される請求項54に記載の方法。
【請求項56】
約500 mcg/分のモルヒネが、吸入中の肺において堆積される請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記投与が、50〜500回の吸入を通して行われる請求項19〜56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
オピオイド毒性を防ぐオピオイドの副作用の使用。
【請求項59】
患者において痛覚脱失を生み出すオピオイド処方を含む肺性薬剤送達装置であって、前記装置が、
請求項1〜18のいずれか一項に記載の処方を含む容器と、
前記容器に連結された出口と、
前記出口を通して前記処方の粒子を、自発的な患者の努力による作動を通して効果的な速度で肺に分配するための、容器に連結された手段であって、吸入中、痛覚脱失がオピオイド副作用の開始前に達成され、かつ前記副作用の開始が毒作用の開始前に起こり、その結果、最大オピオイド血漿濃度が毒性値に達成しない、ならびに、前記副作用の開始が、毒作用を回避するために吸入を停止する患者によって使用され得る手段と
を具備する肺性薬剤送達装置。
【請求項60】
患者において痛覚脱失を与えるオピオイド処方を含む肺性薬剤送達装置であって、前記装置が、
有効量の少なくとも一つの即効開始型オピオイドと薬学的に許容可能なキャリアとを含む処方を含む容器と、
容器に結合した出口と、
前記処方の粒子を前記出口を通して肺に分配するために、容器に連結された手段であって、作動させるためには患者の自発的な努力が必要である手段と
を具備し、
各オピオイドの濃度および種類、ならびに粒子の送達の有効な速度が、吸入中、痛覚脱失が前記副作用の開始前に達成され、かつ前記副作用の開始が毒作用の開始前に起こり、その結果、最大オピオイド血漿濃度が毒性値に達成せず、それによって、前記副作用の開始が、毒作用を回避するために吸入を停止する患者によって使用され得る
肺性薬剤送達装置。
【請求項61】
前記処方が選択された閾値未満で分配される速度に制限するための、送達速度制限手段をさらに含む請求項59または60に記載の装置。
【請求項62】
前記出口が、前記処方を分配するために、患者の唇によって封止される必要のある開窓を含む請求項59〜61のいずれか一項に記載の装置。
【請求項63】
前記分配手段が、呼吸によって作動される請求項59〜61のいずれか一項に記載の装置。
【請求項64】
前記粒子が、1〜5ミクロンの質量媒体空気力学的直径を有する請求項59〜63のいずれか一項に記載の装置。
【請求項65】
前記粒子が、1〜3ミクロンの質量媒体空気力学的直径を有する請求項64に記載の装置。
【請求項66】
前記粒子が、1.5〜2ミクロンの質量媒体空気力学的直径を有する請求項65に記載の装置。
【請求項67】
前記粒子を分配するための手段が、一吸入当たり0.2%〜1%の処方を分配する請求項61〜63のいずれか一項に記載の装置。
【請求項68】
前記各オピオイドの濃度および種類が、副作用の開始時点の最大オピオイド血漿濃度が最大オピオイド血漿濃度の66%以上になるように選択される請求項60〜67のいずれか一項に記載の装置。
【請求項69】
前記各オピオイドの濃度および種類が、副作用の開始時点の最大オピオイド血漿濃度が最大オピオイド血漿濃度の80%以上になるように選択される請求項60〜67のいずれか一項に記載の装置。
【請求項70】
前記少なくとも一つの即効開始型オピオイドが、フェンタニル、アルフェンタニル、スフェンタニルおよびレミフェンタニルから選択される請求項60〜69のいずれか一項に記載の装置。
【請求項71】
前記少なくとも一つの即効開始型オピオイドが、フェンタニルおよびアルフェンタニルから選択される請求項70に記載の装置。
【請求項72】
徐放性の放出を提供する有効量の少なくとも一つの徐放効果型オピオイドをさらに含む請求項60〜71のいずれか一項に記載の装置であって、前記処方における各オピオイドの濃度および種類が、吸入中、痛覚脱失が前記副作用の開始前に達成され、かつ前記副作用の開始が毒作用の開始前に起こり、その結果、最大オピオイド血漿濃度が毒性値に達成せず、それによって、前記副作用の開始が、毒作用を回避するために吸入を停止する患者によって使用され得るように選択される装置。
【請求項73】
前記少なくとも一つの徐放効果型オピオイドが、モルヒネ、モルヒネ-6-グルクロニド、メサドン、ヒドロモルフォン、メペリジン、肺表面で薬剤の放出を遅延させる生物適合性キャリア内に被包されたオピオイド、およびリポソームで被包されたオピオイドから選択される請求項72に記載の装置。
【請求項74】
前記リポソームで被包されたオピオイドが、リポソームで被包されたフェンタニルである請求項73に記載の装置。
【請求項75】
前記少なくとも一つの徐放効果型オピオイドが、モルヒネおよびリポソームで被包されたフェンタニルから選択される請求項72〜74のいずれか一項に記載の装置。
【請求項76】
前記処方中のオピオイドが、遊離フェンタニルおよびリポソームで被包されたフェンタニルからなる請求項72〜75のいずれか一項に記載の装置。
【請求項77】
遊離フェンタニル対リポソームで被包されたフェンタニルの濃度比が、1:5〜2:1である請求項76に記載の装置。
【請求項78】
遊離フェンタニル対リポソームで被包されたフェンタニルの濃度比が、約2:3である請求項77に記載の装置。
【請求項79】
前記総オピオイド濃度が、250〜1500 mcg/mlである請求項59〜78のいずれか一項に記載の装置。
【請求項80】
前記処方が、100〜400 mcg/mlの濃度の遊離フェンタニルを含む請求項59〜79のいずれか一項に記載の装置。
【請求項81】
前記処方が、250〜1500 mcg/mlの濃度のリポソームで被包されたフェンタニルを含む請求項59〜80のいずれか一項に記載の装置。
【請求項82】
前記総オピオイド濃度が約500 mcg/mlであり、かつ前記遊離フェンタニル濃度が約00 mcg/mlであり、かつ前記リポソームで被包されたフェンタニル濃度が約300 mcg/mlである請求項59〜81のいずれか一項に記載の装置。
【請求項83】
4〜50 mcg/分の遊離フェンタニルが、吸入中の肺において堆積される請求項76〜82のいずれか一項に記載の装置。
【請求項84】
10〜20 mcg/分の遊離フェンタニルが、吸入中の肺において堆積される請求項83に記載の装置。
【請求項85】
15 mcg/分の遊離フェンタニルが、吸入中の肺において堆積される請求項84に記載の装置。
【請求項86】
5〜150 mcg/分のリポソームで被包されたフェンタニルが、吸入中の肺において堆積される請求項76〜85のいずれか一項に記載の装置。
【請求項87】
10〜90 mcg/分のリポソームで被包されたフェンタニルが、吸入中の肺において堆積される請求項86に記載の装置。
【請求項88】
15〜60 mcg/分のリポソームで被包されたフェンタニルが、吸入中の肺において堆積される請求項87に記載の装置。
【請求項89】
20〜45 mcg/分のリポソームで被包されたフェンタニルが、吸入中の肺において堆積される請求項88に記載の装置。
【請求項90】
5〜100 mcg/分の総オピオイドが、吸入中の肺において堆積される請求項59〜89のいずれか一項に記載の装置。
【請求項91】
10〜40 mcg/分の総オピオイドが、吸入中の肺において堆積される請求項90に記載の装置。
【請求項92】
30〜35 mcg/分の総オピオイドが、吸入中の肺において堆積される請求項91に記載の装置。
【請求項93】
前記処方が、二以上の異なるオピオイドを含む請求項59〜75のいずれか一項に記載の装置(但し、二つのオピオイドが遊離フェンタニルおよびリポソームで被包されたフェンタニルからなる処方を除く)。
【請求項94】
前記処方中のオピオイドが、アルフェンタニルおよびモルヒネからなる請求項93に記載の装置。
【請求項95】
前記処方が、300〜6700 mcg/mlの濃度においてアルフェンタニルを含む請求項94に記載の装置。
【請求項96】
100〜500 mcg/分のアルフェンタニルが、吸入中の肺において堆積される請求項94または95に記載の装置。
【請求項97】
約250 mcg/分のアルフェンタニルが、吸入中の肺において堆積される請求項96に記載の装置。
【請求項98】
前記処方が、650〜13350 mcg/mlの濃度においてモルヒネを含む請求項93〜97のいずれか一項に記載の装置。
【請求項99】
100〜2000 mcg/分のモルヒネが、吸入中の肺において堆積される請求項93〜98のいずれか一項に記載の装置。
【請求項100】
200〜1000 mcg/分のモルヒネが、吸入中の肺において堆積される請求項99に記載の装置。
【請求項101】
約500 mcg/分のモルヒネが、吸入中の肺において堆積される請求項100に記載の装置。
【請求項102】
請求項59〜101のいずれか一項に記載の肺性薬剤送達装置と、
前記装置を使用して前記処方を継続的に吸入する工程と、満足な痛覚脱失が達成されたときかまたは副作用の開始時点で吸入を停止させる工程とを含む、前記デバイスを使用するための指示書と
を含むオピオイド投与キット。
【請求項103】
有効量の少なくとも一つの即効開始型オピオイドと薬学的に許容可能なキャリアとを含む処方と、
容器と、前記容器に連結された出口と、その内部に含まれた処方の粒子を前記出口を通して分配させ、自発的な患者の努力による作動を通して効果的な速度で肺に至らせるための、前記容器に連結された手段であって、吸入中、痛覚脱失がオピオイド副作用の開始前に達成され、かつ前記副作用の開始が毒作用の開始前に起こり、その結果、最大オピオイド血漿濃度が毒性値に達成しない、ならびに、前記副作用の開始が、毒作用を回避するために吸入を停止する患者によって使用され得る手段とを含む肺性薬剤送達装置と、
前記処方を前記容器に充填させる工程と、前記装置を使用して前記処方を継続的に吸入する工程と、満足な痛覚脱失が達成されたときかまたは副作用の開始時点で吸入を停止させる工程とを含む、前記デバイスを使用するための指示書と
を含むオピオイド投与キット。
【請求項104】
前記処方が、有効量の少なくとも一つの徐法性効果型オピオイドを含む請求項103に記載のオピオイド投与キット。
【請求項105】
患者に痛覚脱失を与える方法において使用するためのオピオイド処方であって、
150〜250 mcg/mlの遊離フェンタニルと、
200〜400 mcg/mlのリポソームで被包されたフェンタニルと、
薬学的に許容可能なキャリアと
を含むオピオイド処方。
【請求項106】
肺性経路の投与を通して患者に痛覚脱失を与える方法において使用するためのオピオイド処方であって、
二以上の異なるオピオイド(但し、二つのオピオイドが、遊離フェンタニルおよびリポソームで被包されたフェンタニルからなる処方を除く)と、
薬学的に許容可能なキャリアと
を含むオピオイド処方。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17A】
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【図17B】
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【図17C】
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【図18】
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【図19】
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【図20A】
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【図20B】
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【図21】
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【図22】
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【公表番号】特表2007−525528(P2007−525528A)
【公表日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−501074(P2007−501074)
【出願日】平成16年8月27日(2004.8.27)
【国際出願番号】PCT/CA2004/001578
【国際公開番号】WO2005/082369
【国際公開日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(505325109)デレックス・セラピューティクス・インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】