説明

オピオイド鎮痛薬の低用量舌下錠剤及びその調製方法

本発明は、舌下錠剤及びその調製方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低用量のオピオイド鎮痛薬を含む薬物錠剤並びにその調製方法に関する。本発明の錠剤は、特に前記活性成分の舌下投与に有用である。
【0002】
本発明は、本発明の錠剤を利用する疼痛の治療方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
舌下投与は、経口投与された場合に、実質的な初回通過代謝及び肝臓による酵素分解にさらされ、分子を変換して不活性とするかまたはこの生物変換によってその活性を低減する肝臓酵素の活性に関連して、迅速な代謝及び治療活性の喪失を生じる活性成分について、利点を有する。
【0004】
舌下経路は、頬粘膜のかなりの浸透性及び血管新生のため、作用の迅速な開始を生み出すことができる。経口投与の場合には、錠剤は嚥下され、胃腸粘膜のレベルで初めて、すなわち後で、全身性薬剤送達が起こる。
【0005】
更にまた、舌下投与は、経口投与の後に胃粘膜又は消化管粘膜のレベルで通常は吸収されない、あるいはまた錠剤の摂取後に酸性媒質中で部分的または完全に分解する、活性成分の投与をも可能にしうる。
【0006】
舌下投与の代替手段は、頬の粘膜を経る経粘膜投与である。オピオイド鎮痛薬であるクエン酸フェンタニルは、現在、Actiq(登録商標)の商品名で市販されており、経粘膜投与用の持ち手つきキャンディ(ロリポップ)の形態で入手することができる。この特定形態に関連する問題は、フェンタニルの所望の量を得るためには、患者が前記ロリポップを少なくとも15分間口の中に保持せねばならないことである。更にまた、吸収されるフェンタニルの量は、唾液嚥下の頻度に依存し、然るに高度に患者に依存する。したがって、フェンタニルの吸収量を正確に確認することは困難である。最後に、頬の粘膜からの吸収は、一般的に舌下吸収よりも効率が悪い。
【0007】
このため、オピオイド鎮痛薬、例えばフェンタニルの、舌下錠剤の形態での処方が有利であろうと考えられている。
【0008】
従来技術より知られる舌下錠剤は、通常は活性成分及び圧縮のための賦形剤、例えば希釈剤、結合剤、崩壊剤、及びアジュバントを含む粉末の混合物の直接圧縮によって調整される。
【0009】
別の調製方法では、活性成分及び圧縮賦形剤が、予め乾式もしくは湿式で粒状化されていてよい。
【0010】
この場合は、活性成分を錠剤内部全般に分布させる。
【0011】
WO00/16750には、迅速に崩壊し、且つ定序混合物(ordered mixture)を含む、舌下用途のための錠剤を開示されており、前記定序混合物中では活性成分が微小粒子の形態であって、この活性微小粒子はその支持体を構成する実質的によりサイズの大きな水溶性粒子の表面に付着しており、この組成物は粘膜接着剤を更に含む。
【0012】
WO00/57858には、吸収の促進を企図する発泡システムと組み合わせた活性成分、及び更にpH調整剤を含む、舌下用途のための錠剤が開示されている。
【0013】
舌下用途は、錠剤を配置しようとする舌下腔のサイズ、活性成分を溶解するための唾液の量の制限、あるいはまた頬粘膜を通過しうる活性成分の活性成分の量の制限のために、かなりの制限を伴う投与経路である。
【0014】
これらの制限のため、錠剤内部に活性成分が不均一に分布する錠剤は、本発明が解決しようとするかなりの欠点を有する。
【0015】
内部に活性成分が分布するこれらの錠剤の第1の欠点は、錠剤のサイズと活性成分の用量との間に存在する従属関係である。然るに、様々な用量の錠剤を提供しようとするならば、様々なサイズの錠剤とする必要がある。
【0016】
従って、最高用量を含む錠剤のサイズ、特に直径は、もはや舌下投与に適さなくなりうる。
【0017】
このことは、当業者に最高用量を含む錠剤の処方を、そのサイズが舌下用途に適合するように変更することを強いる。その意味するところは、最終的には、同一の活性成分に対して様々な質的及び/又は量的処方を有する錠剤が存在することになり、これは経済的に望ましくないのみならず、安全性の点でも望ましくない。
【0018】
さらにまた、舌下投与は、直径が通常の技術、例えばレーザー回析によって測定して10μm未満、好ましくは5μm未満である集団から通常は構成される特定粒径の活性成分の使用を要する。
【0019】
この選択は、唾液中に前記活性成分を迅速且つ完全に溶解させることを確実にすると共に即時の及び十分な全身性通過を可能にし、即座に効果を得ることを目的としているが、これは疼痛の管理のために非常に望ましいことである。
【0020】
ここで、錠剤中におけるこのサイズの粒子の使用は、圧縮の際に錠剤の含有物の均一性を損ないがちである、錠剤圧縮機の供給ホッパーにおける分離現象の発生を観察することなく、その中に活性成分が均一に分布した定序混合物を得るために、錠剤の内部を構成する賦形剤の粒径を適合させること及び粉体内部についての混合パラメーターを非常に正確に定義することが更に必要であることを意味する。
【0021】
分離現象の発生の危険性は、各錠剤中の活性成分の単位用量が少ない場合に一層増大する。これは、例えば、その単位用量が一般的に1ミリグラム未満乃至数ミリグラムであるフェンタニルの場合に該当することである。
【0022】
この場合、同一バッチについて全圧縮工程を通して内容物の許容される均一性を得ることが困難であり、活性成分は賦形剤の粉体混合物中で高度に希釈される。
【0023】
活性成分が内部中に均一に分散された舌下投与用の錠剤については、活性成分の放出は、錠剤の崩壊の速度にも依存する。
【0024】
従来技術には、迅速に崩壊し、舌下投与に適当であり、活性成分が錠剤の内部中に分布する錠剤が開示されている。
【0025】
これらの錠剤は通常、硬度が低く、しばしば40N未満であり、過度に高い脆性を呈して取扱いに注意を要する。
【0026】
より高い硬度を有する錠剤の場合には、崩壊時間が増大し、活性成分を放出しつつ錠剤の外部表面からその中心に向かって、錠剤は徐々に破壊される。
【0027】
したがって、迅速に活性成分を放出することができ、且つその即時吸収を可能にすることができ、この放出が錠剤の崩壊速度または硬度に依存することのない、舌下投与のための処方を有することが特に有利である。
【0028】
錠剤が、迅速に、噛むことなしに崩壊することが企図される場合、崩壊によって、無意識に嚥下され得るパルプまたは懸濁液の生成がもたらされる。
パルプまたは懸濁液の粘度は、崩壊剤の使用または崩壊の促進を企図する膨張剤の使用に関連しており、嚥下反射を引き起こしうる。
結果として、活性成分の一部が、頬粘膜から吸収される前に嚥下される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0029】
【特許文献1】WO00/16750
【特許文献2】WO00/57858
【非特許文献】
【0030】
【非特許文献1】"Oral Mucosal Drug Delivery", Hao Zhang et al., Clin. Pharmacokinet. 2002, 41, (9) 661-680
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0031】
したがって、活性成分の生物学的利用能が直接依存する、頬粘膜のレベルでの吸収は、このタイプの迅速崩壊処方において使用される賦形剤の性質に依存する。
【課題を解決するための手段】
【0032】
本発明者は、微小粒子から形成される低用量の活性成分を含む舌下錠剤を利用することによって、これら全ての欠点を解消できることを示した。本発明の錠剤は、特に前記活性成分の舌下投与のために有用である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】Actiq(登録商標)に対して本発明の平均を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明による舌下錠剤は、中性コアの形態で直接圧縮性賦形剤を含み、前記中性コアは低用量の活性成分を含む少なくとも一つの層で被覆され(以降、「活性層」とも呼称される)、前記活性成分は舌下投与に適したオピオイド鎮痛薬である。
【0035】
本発明に照らして、「中性コア」なる語は、蔗糖及び澱粉を含む本質的に球状の粒子を意味すると解される。
【0036】
本発明に照らして特に重要な中性コアは、蔗糖を91.5%未満含む。
【0037】
本発明は球状粒子を利用して、錠剤化しようとするブレンドの優れた流動性及び優れた均一性を確実にしている。
【0038】
前記中性コアは、その優れたレオロジー特性によって、直接圧縮性賦形剤の優れた候補である。欧州薬局方に記載の試験条件下では、中性コアの流動時間は10秒よりもずっと短い。この特性のため、錠剤圧縮機への非常に効率の良い供給が可能である。更に、前記中性コアは非常に小さな圧縮体積を有する。
【0039】
前記中性コアは、粉塵を発生させない直接圧縮賦形剤を構成するという利点を有する。
【0040】
最後に、前記中性コアは15分間よりずっと短い溶解時間を有する。
【0041】
さらに、本発明は、錠剤化しようとする全ての粒子が同一サイズを有することから、直接圧縮において一般的に観察される分離の問題の回避を可能にする。
【0042】
前記中性コアは、100乃至2000μm、好ましくは150乃至600μm、あるいは好ましくは150乃至500μm、例えば180乃至250μmまたは400乃至500μmのサイズを有する。
【0043】
本発明による錠剤において有利な活性成分は、特にその活性成分が、口腔内における吸収の手段(window of absorption)を有するか、または従来の経口投与に代わる投与経路を要する、肝臓からのかなりの初回通過作用を有する場合、あるいはまた発作、例えば狭心症の発作、不安発作、急性疼痛、アレルギー発作、喘息発作、または例えば鎮痛薬もしくはアルコールの使用中止によって引き起こされる禁断発作の作用を解消するために非常に迅速な全身性効果を得ることが求められている場合に、その薬物動態特性のために口腔または舌下投与に適当である活性成分である。
【0044】
こうした活性成分の例は、文献"Oral Mucosal Drug Delivery", Hao Zhang et al., Clin. Pharmacokinet. 2002, 41, (9) 661-680に挙げられている。
【0045】
本発明においては、活性成分は、舌下投与に適したオピオイド鎮痛薬から選択される。適当なオピオイド鎮痛薬の例には、ブプレノルフィン、ノルブプレノルフィン、フェンタニル、メタドン、レボルファノール、モルヒネ、ヒドロモルヒネ、オキシモルホン、コデイン、オキシコドン、ヒドロコドン、及びこれらの製薬品として許容される塩が含まれる。
【0046】
本発明においては、活性成分としての「フェンタニル」はフェンタニル及びその誘導体を意味することを企図する。
【0047】
フェンタニルの誘導体には、アルフェンタニル、スフェンタニル、及びレミフェンタニルが含まれる。
【0048】
「製薬品として許容される塩」なる語は、製薬品として活性なベース化合物が塩基または酸との塩に変換された、記載の化合物の誘導体を意味することを企図しており、製薬品として活性な塩の例には、特に塩基性残基、例えばアミンの有機酸及び無機酸塩、酸性残基、例えばカルボン酸のアルカリ金属誘導体または有機酸等が含まれる。
【0049】
フェンタニルの製薬品として許容される塩の例には、クエン酸フェンタニル、及びフェンタニル塩酸塩が含まれる。フェンタニルの誘導体の製薬品として許容される塩の例には、アルフェンタニル塩酸塩、クエン酸スフェンタニル、及びレミフェンタニル塩酸塩が含まれる。
【0050】
好ましい活性成分は、フェンタニル塩基、クエン酸フェンタニル、アルフェンタニル、アルフェンタニル塩酸塩、スフェンタニル、クエン酸スフェンタニル、レミフェンタニル、及びレミフェンタニル塩酸塩である。
【0051】
活性成分は、あらゆる多形形態、ラセミ体、またはその鏡像異性体、または鏡像異性体の混合物の形態で使用してよい。
【0052】
活性成分は、粉末の形態、例えば微粉末化パウダーまたはマイクロクリスタルの形態であって良い。
【0053】
活性成分の量は、好ましくは錠剤1つ当たり20mg未満、更に好ましくは錠剤1つ当たり10mg未満、例えば錠剤1つ当たり0.1乃至10mg、好ましくは錠剤1つ当たり0.1乃至2mgである。活性成分の量は、活性成分のタイプによって上記制限内に調整される。
【0054】
錠剤が低用量のものであるならば、通常は、中性コアの上に適用された活性成分を含む被覆組成物(以降、「活性層」とも呼称される)に、賦形剤を更に加える必要はない。微小粒子は、好ましくは、その表面に活性成分が吸収された中性コアを含む。
【0055】
好ましい実施態様では、前記活性層はいかなる賦形剤も含まない。
【0056】
前記と無関係に、賦形剤が中性コア上への活性層適用の実行に好ましいことが判明したならば、そのそれぞれの組成及び量は、中性コアの錠剤化特性を実質的に変更することのないよう、または活性成分の放出を変更することのないように選択される。
【0057】
前記活性層中に任意に存在する製薬品として許容される賦形剤は、結合剤、溶解剤、界面活性剤、吸収促進剤、生体接着剤、帯電防止剤、発泡を起こす酸/塩基対、甘味料、香料、着色料、及びこれらの混合物から選択される。
【0058】
前記活性層中に任意に存在する結合剤は、被覆の乾燥重量に対して上限95重量%、好ましくは活性層の乾燥重量に対して上限30重量%の範囲をとりうる割合で使用される。
【0059】
その役割は、原料の損失なしに中性コアに活性成分を結合させること、または、中性コアの周囲に均等に分配された、活性成分および別の賦形剤の均一な層を形成することである。
【0060】
前記結合剤は、好ましくは、親水性及び/又は唾液のpHで可溶性であって、活性成分、例えばポリビニルピロリドン及びセルロースベースのポリマー、アクリルポリマー、及びポリエチレングリコール等の即時放出を可能にするようなポリマーから選択される。
【0061】
前記ポリビニルピロリドンは、10000乃至50000の分子量を有するポリマーから選択することができる。
【0062】
前記セルロースベースのポリマーは、ヒドロキシル化誘導体、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、及びヒドロキシプロピルメチルセルロースアセトスクシネートから選択される。
【0063】
好ましいヒドロキシプロピルメチルセルロースは、見かけ粘度(USP法、2%m/m、20℃での水溶液)が2.4乃至18cP、更により好ましくは2.4乃至5cPであるものから選択される。
【0064】
好ましいポリエチレングリコールは、名目上の分子量が4000乃至6000g/molであるものから選択される。
【0065】
活性層中に任意に存在しうる前記溶解剤は、活性層の乾燥重量に対して算出されるところの上限90重量%、好ましくは1乃至60重量%、更により好ましくは30乃至60重量%をとりうる割合で使用される。
【0066】
この溶解剤は、特に活性成分を含む被覆の溶解を促進することによって、活性成分の溶解を改善するために使用される。
【0067】
前記溶解剤は、糖類、例えば蔗糖、ラクトース、またはデキストロース、ポリオール類、例えばマンニトール、ソルビトール、またはラクチトール、あるいは無機塩、例えば塩化ナトリウムの群から選択することができる。
【0068】
活性層中に任意に存在する前記界面活性剤は、単独のカチオン性、アニオン性、非イオン性、または両性の作用剤、または混合物として選択することができる。
【0069】
前記界面活性剤は、例えばラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン化ソルビタンのモノオレエート、モノラウレート、モノパルミテート、モノステアレート、トリオレエート、トリステアレート、または他のあらゆるエステル、好ましくはTween(登録商標)20、40、60、または80、ポリオキシエチレン化脂肪酸のグリセリド(これら脂肪酸は飽和もしくは不飽和であり、少なくとも8の炭素原子を含む)、ポロキサマー、例えばポロキサマー188、エチレンオキシド/プロピレンオキシドブロックコポリマー、例えばPluronic(登録商標)F68またはF87、レシチン、ステアリルアルコール、セテアリルアルコール、コレステロール、ポリオキシエチレン化ヒマシ油、脂肪アルコールポリオキシエチレン化エステル、例えばBrij(登録商標)製品、及びポリオキシエチレン化ステアレートなどの化合物から選択することができる。
【0070】
前記界面活性剤は、有利には、活性層の全乾燥重量に対して上限20%、好ましくは0.1乃至20重量%の範囲をとりうる割合で存在する。
【0071】
活性層中に任意に存在する吸収促進剤は、活性成分の口腔壁から血流への吸収の改善を可能にする化合物である。
【0072】
これらの化合物は、例えばラウリル硫酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、またはキトサン、並びにP-糖タンパク質(P-gp)阻害剤、例えばポリソルベート80、Cremophor(登録商標)EL(水添ヒマシ油)またはSoltol(登録商標)HS-15(PEG-HSまたはポリエチレングリコール-660 12-ヒドロキシステアレート)を含む群から選択することができる。
【0073】
活性層中に任意に存在する生体接着剤は、例えばカーボマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、ゼラチン、グアーガム、ポリ(エチレンオキシド)(商品名Polyox(登録商標))、及びデキストランを含む群から選択することができる。
【0074】
活性層中に任意に存在する帯電防止剤は、コロイドシリカ、好ましくは沈降シリカ、微粉化タルク、及びこれらの混合物からなる群より選択することができる。
【0075】
前記帯電防止剤は、圧縮コアの周囲に適用された被覆の乾燥重量に対して算出されるところの上限60重量%の範囲をとりうる割合で使用される。
【0076】
活性層中に任意に存在する発泡を起こす酸/塩基対は、製薬品として許容されるものから、水の存在下での気体の放出を可能にするように選択される、アルカリ性剤と酸性剤とから生成される。
【0077】
活性成分を含む被覆中に発泡性混合物を使用する利点は、唾液との接触に際して微小粒子の周囲に形成された活性層の迅速な溶解を促進し、ひいては製薬品として許容される気体の放出及び口腔マイクロpHの誘発を通して、口腔または舌下粘膜での活性成分の迅速な溶解を得ると共に、口腔内の活性成分の感触を減じて官能特性を改善するかまたは僅かに酸味のある快い味を誘発すると同時に全身性薬剤送達の改善を得ることである。
【0078】
前記酸性剤は、アルカリ性剤と反応して気体を生成し、その中で前記気体が放出される、液体の発泡を引き起こすことができるプロトン供与性化合物である。
【0079】
前記酸性剤は、遊離酸、酸無水物、または酸塩の形態の、無機または有機の酸から成るものであってよい。
【0080】
前記酸は、特に酒石酸、クエン酸、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、アジピン酸、スクシン酸、乳酸、グリコール酸、アルファ-ヒドロキシ酸、アスコルビン酸、及びアミノ酸、並びにこれらの酸の塩及び誘導体を含む群より選択される。
【0081】
前記アルカリ性剤は、プロトン供与性化合物との反応によって気体を発生することのできる化合物からなる。生成する気体は、二酸化炭素、酸素、または他のあらゆるタイプの生体適合性気体である。
【0082】
前記アルカリ性剤は、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸アンモニウム、炭酸L-リシン、炭酸アルギニン、炭酸グリシンナトリウム、アミノ酸の炭酸ナトリウム、過ホウ酸ナトリウム無水物、発泡性過ホウ酸塩、過ホウ酸ナトリウム一水和物、過炭酸ナトリウム、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム、及びこれらの混合物を含む群から選択される。
【0083】
本発明の背景では、「炭酸塩」なる用語は、区別なしに炭酸塩、セスキ炭酸塩、及び炭酸水素塩を意味することを企図する。
【0084】
酸性剤とアルカリ性剤のそれぞれの量は、アルカリ性剤と酸によって放出されるプロトンとの反応が十分な発泡を得るために十分な量の気体を発生させるように調整される。
【0085】
酸性剤単独またはアルカリ性剤単独を、活性成分が主に塩基形態、すなわち吸収画分となることを確実にする適合量で被覆中に使用することもできる。
【0086】
活性層中に任意に存在する適当な甘味料は、特にアスパルテーム、アセスルファムカリウム、サッカリン酸ナトリウム、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン、スクラロース、グリシルリチン酸モノアンモニウム、及びこれらの混合物を含む群から選択してよい。
【0087】
活性層中に任意に存在する適当な香料及び着色剤は、錠剤の調製に薬局で通常使用されるものである。
【0088】
本発明の中性コアの被覆中への甘味料及び/又は香料の導入は、特に所定の活性成分の苦みを隠すために有利である。
【0089】
前記着色料は、薬局で通常使用されるものである。前記着色料は、中性コアの周囲に提供される層の乾燥量に対して算出されるところの上限1重量%の範囲をとりうる割合で使用される。
【0090】
特段の実施態様では、活性層は甘味料も香料も含まない。
【0091】
活性層中の賦形剤の組成は、錠剤が崩壊した際に活性成分が完全に溶解するように調整される。
【0092】
活性層を含む中性コア(以降「活性コア」と定義される)は、pH調整化合物を含む層で任意に被覆されていてよく、前記層は、pH調整層と呼称する。
【0093】
一実施態様によれば、pH調整層は、活性層の上または下に存在してよい。
【0094】
別の実施態様によれば、pH調整化合物は活性層中に存在してよい。
【0095】
前記pH調整層により、口腔内に錠剤が置かれた際にアルカリ性または酸性の局所的pHを与えることができ、これは粘膜による活性成分の吸収を促進する。
【0096】
適当なpH調整化合物は、クエン酸及びクエン酸ナトリウムまたはクエン酸カリウム、水酸化ナトリウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、重炭酸ナトリウムまたは重炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、酒石酸、プロピオン酸、乳酸、リンゴ酸、及びグルタミン酸1ナトリウムを含む。
【0097】
pH調整化合物の選択は、使用される活性成分の性質に依存する。頬粘膜による活性成分の吸収がアルカリ性条件下で増進される場合は、アルカリ性化合物はpH調整化合物として使用される。頬粘膜による活性成分の吸収が酸性条件下で増進される場合は、酸性化合物はpH調整化合物として使用される。
【0098】
pH調整層の組成は活性成分が唾液と接触した際に完全に溶解するように調整され、口腔領域周辺のpHは活性成分の舌下吸収に好ましい値に調整される。
【0099】
前記pH調整層は活性層中に存在するものと同一の賦形剤を任意に含んでよい。
【0100】
活性成分がフェンタニルである場合には、任意のpH調整層はアルカリ性化合物を含むアルカリ性層である。
【0101】
一実施態様によれば、アルカリ性被覆層はフェンタニル層の上または下に存在してよい。
【0102】
別の実施態様によれば、前記アルカリ性化合物はフェンタニル層中に存在してよい。
【0103】
前記アルカリ性層により、口腔内に錠剤が置かれた際にアルカリ性の局所的pHを与えることができ、これは粘膜からのフェンタニルの吸収を促進する。
【0104】
前記アルカリ性層は、フェンタニルを含む層中に存在するものと同一の賦形剤を任意に含んでよい。
【0105】
前記アルカリ性化合物は、有利には、トリス、酒石酸塩、酢酸塩、リン酸塩、好ましくはリン酸ナトリウム、及びこれらの混合物を含む群から選択される。
【0106】
本発明はまた、本発明の錠剤の中性コアを調製する方法にも関する。
【0107】
前記方法は、舌下投与に適した活性成分及び任意に少なくとも一つの製薬品として許容される賦形剤を含む溶液、懸濁液、またはコロイド分散物を、中性コア上に噴霧することによって、中性コアに活性層を適用する工程を含む。
【0108】
活性成分及び賦形剤は、本発明の錠剤に関して上述したものである。
【0109】
好ましい実施態様では、活性成分はフェンタニルまたは製薬品として許容されるその塩の、あらゆる多形形態、ラセミ体、または鏡像異性体である。
【0110】
前記活性層は、中性微小粒子の表面上に均一に分布される。
【0111】
特に、水不溶性物質については、親水性ポリマーと活性成分との共沈によって得られる、活性成分がその中に固体分散物の形態で存在する層を形成することができる。
【0112】
噴霧は、有孔ドラム中または流動床塗布機中で実行することができる。好ましい実施態様では、中性微小粒子上への活性層の噴霧は、有孔ドラム中で、特に特許出願EP1044064に記載のように、三角形の断面を有する切片が互いに平行に隙間をとって並ぶ有孔ドラム中で行われる。
【0113】
前記被覆組成物は、有機または水性溶媒あるいはこれらの混合物中の溶液、懸濁液、またはコロイド分散物の形態で噴霧され、その後乾燥される。
【0114】
前記有機溶媒は、エタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、イソプロピルエーテル、アセトン、メチルエチルケトン、塩化メチレン、またはこれら溶媒の混合物から選択することができる。
【0115】
被覆が発泡剤を含まない場合は、精製水が好ましく使用される溶媒である。その一方で、噴霧される組成物が発泡性の酸/塩基対を含む場合は、有機溶媒が使用されねばならない。
【0116】
一実施態様では、中性コアの調製方法は、好ましくはpH調整化合物及び任意に少なくとも一つの製薬品として許容される賦形剤を含む溶液、懸濁液、コロイド分散物を中性コア上に噴霧することによって、前記コアにpH調整層を適用する工程を含む。
【0117】
前記活性成分がフェンタニルまたはその製薬品として許容される塩である場合には、pH調整化合物はアルカリ性化合物であり、pH調整層はアルカリ性層である。
【0118】
前記pH調整層は、活性層の上または下に、活性層と同時に適用してよい。
【0119】
pH調整層の噴霧は、例えば有孔ドラム中または流動床塗布機中で適用することができる。
【0120】
好ましい実施態様では、中性コアへのpH調整層の噴霧は、有孔ドラム中で、特に特許出願EP1044064に記載のように、三角形の断面を有する切片が互いに平行に隙間をとって並ぶ有孔ドラム中で行われる。
【0121】
装置の選択により、調整層の適用を制御すると共に、pH調整性被覆組成物の賦形剤の活性成分の性質に関連し、且つ当該方法の様々なパラメーター(温度、気圧、溶液流速)に関連する、あらゆる固着現象を回避することができる。
【0122】
pH調整化合物を含む被覆組成物は、有機または水性溶媒あるいはこれらの混合物中の溶液、懸濁液、またはコロイド分散物の形態で噴霧され、その後乾燥される。
【0123】
結合剤の量は、中性コアの表面に噴霧される活性成分の性質及び量によって調整される。
【0124】
特に、水不溶性物質については、親水性ポリマーと活性成分との共沈によって得られる、活性成分がその中に固体分散物の形態で存在する層を形成することができる。
【0125】
被覆の適用に使用される溶媒は、一般的に、水または他の、適当な乾燥工程を伴うあらゆる認定された溶媒である。
【0126】
被覆が発泡剤を含まない場合は、精製水が好ましく使用される溶媒である。その一方で、噴霧される組成物が発泡性の酸/塩基対を含む場合は、有機溶媒が使用されねばならない。
【0127】
前記有機溶媒は、エタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、イソプロピルエーテル、アセトン、メチルエチルケトン、塩化メチレン、またはこれら溶媒の混合物から選択することができる。
【0128】
本発明の舌下錠剤は、下記:
1.舌下投与に適した活性成分及び任意に少なくとも一つの製薬品として許容される賦形剤を含む溶液または懸濁液を、中性コア上に噴霧することによる、活性成分を含む微小粒子の調製工程;及び
2.工程1で得られる微小粒子の圧縮により舌下錠剤を得る工程;
の少なくとも一つの工程を含む方法によって調製することができる。
【0129】
一実施態様では、本発明の錠剤の調製方法の工程1は、前記コアにpH調整層を適用する段階を含む。
【0130】
前記pH調整層は、活性層の上または下に、活性層と同時に適用してよい。
【0131】
本発明の方法は、従来の粒状化及び/又は圧縮工程の場合に行われるような、粉体混合物の形態での活性成分の取り扱いを回避し、活性成分を噴霧溶液または懸濁液の形態で使用することによって製品を配合することができるため、安全であるという点で有利である。
【0132】
特に高度に毒性の活性成分の場合には、本発明の方法が、従来の粒状化及び/又は圧縮工程で行われるような、これらの物質の粉体混合物の形態での取り扱いを回避し、活性成分を噴霧溶液または懸濁液の形態で使用することによって高度に毒性の活性成分を配合できることが評価される。
【0133】
本発明の錠剤の調製方法の工程1の条件及び詳細は、本発明の中性コアの調製方法について上述される通りである。
【0134】
任意に、工程1で得られる微小粒子には、圧縮工程において一つ以上の滑剤を添加することができる。
【0135】
前記滑剤は、錠剤の重量に対して1重量%未満、好ましくは0.10乃至0.75重量%、更に好ましくは錠剤の重量に対して0.10乃至0.50重量%のオーダーで存在してよい。
【0136】
滑剤は、粒子間及び粒子と圧縮型との間の摩擦の低減を可能にする。これはまた、粒子のパンチへの接着を低減して一定の光沢を得ることを可能にする。前記滑剤は、例えばステアリン酸マグネシウム、亜鉛、もしくはカルシウム、タルク、Aerosil(登録商標)、ステアリン酸、ステアリルフマル酸ナトリウム、及びPEGから選択される。
【0137】
本発明の舌下錠剤は、300乃至500mgのオーダーの質量を有する錠剤について、5%よりずっと少なく1%のオーダーの質量で均一性、1%未満の脆性、37℃での15分未満の溶解、及び0乃至200Nのオーダーの硬度を示す。これらのパラメーターは、錠剤化パラメーターの相互作用によって調整することができる。
【0138】
工程2で適用される圧縮力は、圧縮表面積が1cm2である場合は、有利には5乃至50kN(すなわち50乃至500MPa)、好ましくは10乃至30kNである。前記圧縮力は、硬度が、欧州薬局方(2.9.8.)の方法に従って測定されるところの、好ましくは10乃至180N、更に好ましくは15乃至100Nである錠剤が得られるように調整される。
【0139】
好ましくは、本発明の錠剤の硬度は、欧州薬局方の方法に従って測定されるところの1重量%未満の脆性が得られるように調整される。
【0140】
本発明による錠剤の利点は、これらが15分間未満、好ましくは5乃至15分間の崩壊時間を有することである。
【0141】
前記崩壊時間は、被覆された錠剤を口腔中に配置することにより、またストップウォッチを使用して、測定の開始と被覆された錠剤が咀嚼を伴わずに唾液の作用下で完全に崩壊して粘性パルプのみを形成する瞬間との間に経過する時間を測定することにより測定され、患者はこの間中、顎のいかなる動作を使用せずとも良い。
【0142】
本発明の錠剤は、2乃至4mmの直径及び、丸型、長円形、楕円、または別の形状を有してよく、平坦、凸状、または別の表面を有してよく、任意に彫刻を有してもよい。
【0143】
好ましくは、本発明の錠剤は、丸型の両凸形状を有して、これは錠剤化方法、並びに前記錠剤が口腔内に配置された際の被覆された錠剤と唾液との接触のいずれについても有利な形状である。
【0144】
特段の実施態様によれば、本発明による舌下錠剤は、その外観を改善するため、または活性成分の色を隠すため、または空気中の光、水分、または酸素から活性成分を保護するために、フィルム被覆されていてよい。
【0145】
本発明の別の実施態様によれば、活性成分のタイプ及び用量を示すためのコードとして、錠剤の被覆に着色剤を使用することができる。実際のところ、用量によらず、錠剤のサイズは同一であって良い。異なる用量間で相違を示すために、特定の用量には特定の着色が関連してよい。
【0146】
特に有利な実施態様では、本発明による舌下錠剤の調製方法は、下記:
1.活性成分として舌下投与に適したオピオイド鎮痛薬、好ましくはフェンタニル、及び任意の製薬品として許容される賦形剤を含む微小粒子の中性コア上での調製工程;及び
2.工程1で得られる微小粒子を任意に滑剤と共に圧縮して錠剤を得る工程;
の少なくとも一つの工程を含み、「フェンタニル」なる語は以上に定義される通り理解される。
【0147】
この実施態様の工程1及び2の条件及び詳細は、本発明による錠剤の一般的な調製方法に関して上述される通りである。
【0148】
任意に、本発明の錠剤を調製する方法は、更にアルカリ性化合物を含む溶液または懸濁液を中性コア上に噴霧する工程を含む。前記工程は、中性コア上に直接(工程1の前に)、あるいは活性成分を含む被覆の噴霧工程と同時に(工程1と同時に)、または工程1で得られる活性層上に行うことができる。
【0149】
特定の選択によれば、本発明によるフェンタニル含有舌下錠剤は、その外観を改善するため、または活性成分の色を隠すため、または空気中の光、水分、または酸素から活性成分を保護するために、フィルム被覆されていてよい。
【0150】
本発明はまた、舌下投与に適した、低用量のオピオイド鎮痛薬を含む少なくとも一つの活性層で被覆された中性コアを99乃至100重量%、及び滑剤を0乃至1重量%含む組成物からなる錠剤化プレミックスに直接関する。前記組成物は、直接圧縮に処することを企図される。
【0151】
本発明による錠剤化プレミックスの被覆されたコアは、活性層を含む中性コア及びこれらの調製に関して本明細書中に上述される通りのpH調整層を含んでよい。
【0152】
活性成分は、好ましくは中性コアの5重量%未満を占める。
【0153】
好ましい実施態様では、オピオイド鎮痛薬はフェンタニルであり、ここでは「フェンタニル」なる語は以上に定義される通りに理解される。
【0154】
本発明はまた、上述の錠剤化プレミックスの直接圧縮による、本発明の舌下錠剤の調製方法にも関する。この方法によれば、圧縮力は、有利には圧縮表面積が1cm2である場合に5乃至50kN(すなわち50乃至500MPa)、好ましくは10乃至30kNである。
【0155】
更にまた、本発明は、舌下錠剤形態で活性成分の治療向け有効量を患者の口腔に導入する工程を含む、疼痛の治療方法に関し、ここで活性成分は、舌下投与に適したオピオイド鎮痛薬、例えば、ブプレノルフィン、ノルブプレノルフィン、フェンタニル、アルフェンタニル、スフェンタニル、レミフェンタニル、メタドン、レボルファノール、モルヒネ、ヒドロモルヒネ、オキシモルホン、コデイン、オキシコドン、ヒドロコドン、及びこれらの製薬品として許容される塩を含む群から選択される。特に好ましい活性成分は、フェンタニル、クエン酸フェンタニル、アルフェンタニル、アルフェンタニル塩酸塩、スフェンタニル、クエン酸スフェンタニル、レミフェンタニル、及びレミフェンタニル塩酸塩である。
【0156】
特に有利な実施態様では、本発明による疼痛治療の方法は、中性コアの形態で直接圧縮性賦形剤を含む舌下錠剤の治療向け有効量を患者の口腔に導入する工程を含み、ここで前記中性コアは活性成分としての低用量のフェンタニルで被覆されており、「フェンタニル」なる語は以上に定義されるように理解される。
【0157】
本発明による疼痛治療方法は、特に突出痛、特に癌性突出痛を治療するために有用である。これは、潜在的な持続性疼痛のためのオピオイド療法を既に受けているかまたはこれに耐性である患者の治療に特に適当である。
【0158】
オピオイド耐性とみなされる患者は、少なくとも一日に60mgのモルヒネ、少なくとも1時間に25μgの経皮フェンタニル、少なくとも一日に30mgのオキシコドン、少なくとも一日に8mgの経口ヒドロモルホン、または等鎮痛薬用量の別のオピオイドを一週間またはそれ以上に亘って摂取している者である。
【0159】
本発明はまた、舌下投与に適したオピオイド鎮痛薬、例えば、ブプレノルフィン、ノルブプレノルフィン、フェンタニル、アルフェンタニル、スフェンタニル、レミフェンタニル、メタドン、レボルファノール、モルヒネ、ヒドロモルヒネ、オキシモルホン、コデイン、オキシコドン、ヒドロコドン、及びこれらの製薬品として許容される塩の、本発明による舌下錠剤の製造のための使用に関する。
【0160】
フェンタニル及びその誘導体のあらゆる多形形態、ラセミ体、または鏡像異性体の形態、または鏡像異性体の混合物の形態、塩基形態または製薬品として許容される塩の形態が、好ましい活性成分である。特に好ましい有効成分は、フェンタニル、クエン酸フェンタニル、アルフェンタニル、アルフェンタニル塩酸塩、スフェンタニル、クエン酸スフェンタニル、レミフェンタニル、及びレミフェンタニル塩酸塩である。
【0161】
本発明によりこうして得られる舌下錠剤は、突出痛、特に癌性突出痛の治療のために特に有用である。これは、潜在的な持続性疼痛のためのオピオイド療法を既に受けているかまたはこれに耐性である患者の治療に特に適当である。
【0162】
本発明は、本発明の範囲をなんら制限することのない、以下の実施例により一層明確に理解されるであろう。
【実施例】
【0163】
以下の実施例は、下記の製品が使用される。
中性コア「Neutres SP」(400-500μm) 、NPPHARMより入手可能。
中性コア「NPTAB 200」(180-250μm)、NPPHARMより入手可能。
HPMC 603(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、商品名Pharmacoat 603としてShin-Etsuより入手可能。
「PEG 6000」、商品名Renex PEG 6000としてQuimassoより入手可能。
ステアリン酸マグネシウム、Quimdisより入手可能。
記載のパーセンテージは重量で表示される。
【0164】
(実施例1)
1−中性コアの被覆
水中のクエン酸フェンタニル及びPEG6000の被覆溶液は、流動床塗布機で1000gの中性コアSPに噴霧される。
被覆された微小粒子の処方を表1に記載する。
【0165】
【表1】

【0166】
2−潤滑及び圧縮
被覆された微小粒子は、0.12%のステアリン酸マグネシウムを用いて潤滑される。
その後、微小粒子は、面取りした丸形平型パンチ(直径11mm)を装備した交互加圧機(alternating press)(Frogerais OA)で加圧される。
本発明によって得られる錠剤は、クエン酸フェンタニル0.63mgの単位用量、すなわち0.4mgのフェンタニル塩基を有する。
【0167】
(実施例2)
1−クエン酸フェンタニルを用いる中性コアの被覆
水中のクエン酸フェンタニル及びHPMC603の被覆溶液は、空気流動層で700gの中性コアNPTAB200に噴霧される。
被覆された微小粒子の処方を表1に記載する。
【0168】
【表2】

【0169】
2−潤滑及び圧縮
被覆された微小粒子は、0.22%のステアリン酸マグネシウムを用いて潤滑される。
その後、微小粒子は、丸形凹型パンチ(直径5.5mm)を装備した交互加圧機(SVIAC PR12)で加圧される。
本発明によって得られる錠剤の処方を表3に記載する。
【表3】

本発明によって得られる錠剤は、クエン酸フェンタニル0.63mgの単位用量、すなわち0.4mgのフェンタニル塩基を有する。
【0170】
(実施例3)
実施例2により調製された錠剤の、Actiq(登録商標)0.4mgに対する単一用量比較生物学的利用能交差研究を、絶食条件下にある健康な男性のボランティアにおいて行った。
この試験的研究の目的は、絶食条件下にある健康な男性のボランティアにおける両方の処方の単一用量の生物学的利用能を相対評価することであった。
それぞれ10名の患者に投与された、実施例2によって調製された錠剤及び参照製品について、Cmax、Tmax、及びAUCを測定した。
参照製品は、経粘膜吸収を促進するために設計され、且つActiq(登録商標)の商品名で世界中で市販されている、クエン酸フェンタニル処方(取扱いの際は固体薬剤マトリックス)である。
本発明のものと参照製品との両方が、クエン酸フェンタニルを、フェンタニル塩基0.4mgと等量で含む。
血液採取点は、投与前及び各周期でのその後の下記時点:
5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、75、90分間及び投与後2、3、4、6、8、12、及び24時間である。
AUC 0-t、AUC∝、Cmax、tmax薬物動態パラメーターは、血漿中のフェンタニルについて算出される。
【0171】
【表4】

Actiq(登録商標)に対する本発明の平均比を下記の表5に算出する。
【0172】
【表5】

【0173】
結果は図1にも示される。
本発明は、Actiq(登録商標)と同様の生体利用能及びCmaxを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中性コアの形態で直接圧縮性賦形剤を含む舌下錠剤であって、前記中性コアが、舌下投与に適した低用量のオピオイド鎮痛薬を含む少なくとも一つの活性層で被覆されている、舌下錠剤。
【請求項2】
前記オピオイド鎮痛薬が、ブプレノルフィン、ノルブプレノルフィン、フェンタニル、メタドン、レボルファノール、モルヒネ、ヒドロモルヒネ、オキシモルホン、コデイン、オキシコドン、ヒドロコドン、及びこれらの製薬品として許容される塩の、あらゆる多形形態、ラセミ体、または鏡像異性体からなる群より選択される構成員である、請求項1に記載の舌下錠剤。
【請求項3】
前記オピオイド鎮痛薬が、フェンタニル塩基、クエン酸フェンタニル、アルフェンタニル、アルフェンタニル塩酸塩、スフェンタニル、クエン酸スフェンタニル、レミフェンタニル、及びレミフェンタニル塩酸塩からなる群より選択される構成員である、請求項1に記載の舌下錠剤。
【請求項4】
前記活性層が、いかなる賦形剤も含まない、請求項1に記載の舌下錠剤。
【請求項5】
前記中性コアが、pH調整層で被覆されている、請求項1に記載の舌下錠剤。
【請求項6】
前記中性コアが、アルカリ性層で被覆されている、請求項3に記載の舌下錠剤。
【請求項7】
前記中性コアのサイズが、100乃至2000μmである、請求項1に記載の舌下錠剤。
【請求項8】
前記中性コアのサイズが、200乃至600μmである、請求項1に記載の舌下錠剤。
【請求項9】
前記中性コアのサイズが、200乃至400μmである、請求項1に記載の舌下錠剤。
【請求項10】
0乃至200Nの硬度を有する、請求項1に記載の舌下錠剤。
【請求項11】
0乃至1%の脆性を有する、請求項1に記載の舌下錠剤。
【請求項12】
15分未満の崩壊時間を有する、請求項1に記載の舌下錠剤。
【請求項13】
一つ又は複数の滑剤を、錠剤の重量に対して1重量%未満の量で更に含む、請求項1に記載の舌下錠剤。
【請求項14】
前記滑剤の含量が、錠剤の重量に対して0.125乃至0.75重量%である、請求項1に記載の舌下錠剤。
【請求項15】
前記滑剤の含量が、錠剤の重量に対して約0.25重量%である、請求項1に記載の舌下錠剤。
【請求項16】
前記活性成分の量が、一錠当たり20mg未満である、請求項1に記載の舌下錠剤。
【請求項17】
前記活性成分の量が、一錠当たり5mg未満である、請求項1に記載の舌下錠剤。
【請求項18】
下記:
(1)舌下投与に適した活性成分を含む溶液、懸濁液、またはコロイド分散物を、中性コア上に噴霧することによる、活性成分を含む微小粒子の調製工程;及び
(2)工程1で得られる微小粒子を圧縮して舌下錠剤を得る工程;
の少なくとも一つの工程を含む、請求項1に記載の舌下錠剤の調製方法。
【請求項19】
活性成分を含む前記溶液、懸濁液、またはコロイド分散物が、いかなる賦形剤も含まない、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
活性成分を含む前記溶液、懸濁液、またはコロイド分散物が、少なくとも一つの製薬品として許容される賦形剤を更に含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記活性成分が、オピオイド鎮痛薬である、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記活性成分が、ブプレノルフィン、ノルブプレノルフィン、フェンタニル、メタドン、レボルファノール、モルヒネ、ヒドロモルヒネ、オキシモルホン、コデイン、オキシコドン、ヒドロコドン、及びこれらの製薬品として許容される塩の、あらゆる多形形態、ラセミ体、または鏡像異性体からなる群より選択されるオピオイド鎮痛薬である、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記活性成分が、フェンタニル塩基、クエン酸フェンタニル、アルフェンタニル、アルフェンタニル塩酸塩、スフェンタニル、クエン酸スフェンタニル、レミフェンタニル、及びレミフェンタニル塩酸塩からなる群より選択されるオピオイド鎮痛薬である、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記工程1が、アルカリ性層を適用する段階を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記工程1が、pH調整剤層を適用する段階を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項26】
中性コアを含む微小粒子であって、前記中性コアが舌下投与に適した低用量のオピオイド鎮痛薬を含む少なくとも一つの活性層で被覆されている、微小粒子。
【請求項27】
前記活性層が、いかなる賦形剤も含まない、請求項26に記載の舌下錠剤。
【請求項28】
前記中性コアが、pH調整層で被覆されている、請求項26に記載の舌下錠剤。
【請求項29】
前記オピオイド鎮痛薬が、フェンタニルまたはその製薬品として許容される塩の、あらゆる多形形態、ラセミ体、または鏡像異性体である、請求項26に記載の微小粒子。
【請求項30】
前記中性コアが、アルカリ性層で被覆されている、請求項29に記載の舌下錠剤。
【請求項31】
舌下投与に適した活性成分を含む溶液、懸濁液、またはコロイド分散物を、中性コア上に噴霧することにより、中性コアに活性層を適応する工程を含む、請求項26に記載の微小粒子の調製方法。
【請求項32】
活性成分を含む前記溶液、懸濁液、またはコロイド分散物が、いかなる賦形剤も含まない、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
活性成分を含む前記溶液、懸濁液、またはコロイド分散物が、少なくとも一つの製薬品として許容される賦形剤を更に含む、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記活性成分が、舌下投与に適したオピオイド鎮痛薬である、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
前記活性成分が、フェンタニルまたはその製薬品として許容される塩の、あらゆる多形形態、ラセミ体、または鏡像異性体である、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
アルカリ性層を適用する工程を更に含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
pH調整層を適用する工程を更に含む、請求項31に記載の方法。
【請求項38】
(a)99乃至100重量%の、舌下投与に適した低用量のオピオイド鎮痛薬を含む少なくとも一つの活性層で被覆された中性コア、及び
(b)0乃至1重量%の滑剤、
を含み、直接圧縮に処されることを企図する、錠剤化プレミックス。
【請求項39】
前記オピオイド鎮痛薬が、中性コアの5重量%未満を占める、請求項38に記載の錠剤化プレミックス。
【請求項40】
前記中性コアが、pH調整層で被覆されている、請求項38に記載の錠剤化プレミックス。
【請求項41】
前記オピオイド鎮痛薬が、フェンタニルまたはその製薬品として許容される塩の、あらゆる多形形態、ラセミ体、または鏡像異性体である、請求項38に記載の錠剤化プレミックス。
【請求項42】
前記中性コアが、アルカリ性層で被覆されている、請求項41に記載の錠剤化プレミックス。
【請求項43】
請求項38に記載のプレミックスからの舌下錠剤の調製方法であって、5乃至5kNの圧縮力を用いて前記プレミックスを直接圧縮し、中性コアの形態で直接圧縮性賦形剤を含む舌下錠剤をもたらす工程を含み、前記中性コアが、舌下投与に適した低用量のオピオイド鎮痛薬を含む少なくとも一つの活性層で被覆されている、方法。
【請求項44】
前記圧縮力が、10乃至30kNである、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
請求項1に記載の舌下錠剤の治療向け有効量を患者の口腔に導入する工程を含む、疼痛の治療方法。
【請求項46】
前記疼痛が、突出痛である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記疼痛が、癌性突出痛である、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
前記患者が、既にオピオイド療法を受けている、請求項45に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2009−539808(P2009−539808A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−513705(P2009−513705)
【出願日】平成19年6月8日(2007.6.8)
【国際出願番号】PCT/EP2007/055652
【国際公開番号】WO2007/141328
【国際公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(501435026)
【Fターム(参考)】