説明

オフセット印刷機及びディスプレイパネルの製造方法

【課題】加熱手段や冷却手段を設けることなく、高精度のディスプレイパネルを提供することができるオフセット印刷機およびこれを用いたディスプレイパネルの製造方法を提供する。
【解決手段】印刷版1と、この印刷版からインキパターンを受理する円柱状のブランケット2と、このブランケットの外周表面に臨む位置に配設された乾燥手段3とを有し、ブランケットに受理した上記インキパターンをガラス板に転写するオフセット印刷機とした。また、乾燥手段には、ブランケットの外周面に沿って円弧状に湾曲形成された板状のカバー部材を具備する乾燥手段本体と、この乾燥手段本体に接続されて、空気をカバー部材とブランケットとの間に流通させる空気供給手段と、乾燥手段本体から排出される空気を吸引する吸引手段6とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極やブラックマトリックス等のパターンをガラス板に転写するのに適したオフセット印刷機およびこのオフセット印刷機を用いたプラズマディスプレイの前面板、背面板やカラーフィルタなどのディスプレイパネルの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記ディスプレイパネル等の精密機器製造用のオフセット印刷機は、一般に、クリーンルーム内に設置されている。この印刷機の一例としては、例えば、特許文献1に示すように、インキ供給部を備えた印刷版と、この印刷版からインキパターンを受理する円柱状のブランケットと、このブランケットからインキパターンをガラス板に転写した後に、上記ブランケットを40℃〜250℃に加熱してインキ溶剤を蒸発させる加熱手段と、この加熱後のブランケットを15℃〜55℃に冷却させる冷却手段とを設けたものが提案されている。このブランケットは、同ブランケットからガラス板にインキパターンを全て転写させるべく、その外周表面がシリコーンゴムによって形成されている。
【0003】
このオフセット印刷機によれば、加熱手段によって、インキパターンをガラス板に転写した後にブランケットに温風を供給して、ブランケットに吸収されたインキ溶剤を蒸発させることにより、ブランケットの膨潤によるインキパターンの線幅の拡大等の転写精度の低下を防止することができる。さらには、ブランケットとインキとの親和性の増大によるインキパターンの線幅の拡大等を防止することができ、次いで、冷却手段によって、ブランケットに冷風を供給して、加熱したブランケット表面の温度を低下させることにより、繰り返し、印刷版からインキパターンを受理して、ガラス板に転写させることができる。
【0004】
しかしながら、上述のオフセット印刷機は、15〜55℃のブランケットをガラス板に接触させることとなるため、ガラス板が熱膨張する恐れがあり、インキパターンを高い精度で転写しても、ガラス板の熱膨張によりディスプレイパネルの印刷精度が低下してしまうという恐れがあった。
加えて、加熱や冷却に処理時間を要する上に、この加熱・冷却の繰り返しによってクリーンルームの温度管理の悪化だけでなく、ブランケットの劣化を招く恐れがあり、その結果、インキパターンの転写精度そのものが低下してしまうことにより、印刷精度が著しく低下する恐れがあった。
【0005】
さらには、加熱手段や冷却手段から供給される温風や冷風によってクリーンルーム内に残存する少量の塵等であっても巻き上げられる恐れがあり、巻き上げられた塵等がガラス板に付着すると、インキパターンによって電極パターンを形成した場合には、この塵等が原因となって電極パターンが焼き切れてしまう恐れがある。また、インキパターンによってブラックマトリックスを形成した場合にも、この塵等が後工程において赤、青、緑の蛍光体を形成する際に不良を招く原因となりうるという問題があった。
【0006】
【特許文献1】特開2004−66804号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、加熱手段や冷却手段を設けることなく、インキパターンのガラス板への転写精度の低下を防止でき、特には、高い印刷精度のディスプレイパネルを提供することができるとともに、クリーンルーム内に残存するゴミ等の巻き上げによる欠陥製品の製造や温度管理を含める空調管理の乱れを防止することができるオフセット印刷機およびこれを用いたディスプレイパネルの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、請求項1に記載の発明は、インキ供給部を備えた印刷版と、この印刷版からインキパターンを受理する円柱状のブランケットと、このブランケットの外周表面に臨む位置に配設された乾燥手段とを有し、上記ブランケットに受理した上記インキパターンをガラス板に転写するオフセット印刷機であって、上記乾燥手段は、上記ブランケットの外周面に沿って円弧状に湾曲形成された板状のカバー部材を具備する乾燥手段本体と、この乾燥手段本体に接続されて、空気を上記カバー部材と上記ブランケットとの間に流通させる空気供給手段と、上記乾燥手段本体から排出される上記空気を吸引する吸引手段とを有し、かつ上記空気供給手段は、5℃以上であって、かつ30℃以下の空気を上記乾燥手段本体に供給することを特徴としている。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のオフセット印刷機において、上記ブランケットが軸線回りに回転可能に設けられており、かつ上記ガラス板が上記インキパターンを上記ガラス板に転写すべく、上記ブランケットの下部に臨む位置に向けて水平移動可能に設けられることを特徴としている。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2記載のオフセット印刷機において、上記空気供給手段は、上記ブランケットの直径方向に向けて上記空気を導入する空気導入部を有しており、上記カバー部材は、上記ブランケットの軸線方向の両端部を覆うように幅広に形成されるとともに、上記空気導入部から空気が供給される空気供給口が上記ブランケットの周方向の一端部に上記幅方向に向けて細長状に形成されており、かつ上記乾燥手段本体は、上記カバー部材の幅方向の両端部からそれぞれ上記ブランケット側に向けて突出する側壁部材と、これらの側壁部材の間の上記空気供給口に臨む位置に設けられ、上記空気供給手段から供給された空気を上記ブランケットの周方向に向けて流通させる流通方向調整手段を備えた壁材とを有し、上記空気が排出される排出口が上記カバー部材の周方向の他端部に上記幅方向に向けて細長状に設けられていることを特徴としている。
【0011】
請求項4に記載の発明に係るディスプレイパネルの製造方法は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のオフセット印刷機を用いて、上記印刷版からブランケットにインキパターンを受理した後に、当該インキを上記乾燥機から供給される空気によって乾燥させることにより、当該インキの粘度を増加させ、次いで、この粘度が増加したインキパターンをガラス板に転写させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
請求項1ないし4の何れか一項に記載の発明によれば、空気供給手段によって乾燥手段本体に供給された空気がカバー部材とブランケットとの間を流通することにより、印刷版からインキパターンを受理するブランケットの外周表面を乾燥させることができ、インキの溶剤によるブランケットの膨潤を防止できるだけでなく、ブランケットの加熱及び冷却等を原因とした劣化、延いては、インキパターンの転写精度そのものの低下を阻止することができる。
【0013】
さらには、空気供給手段によって、5℃以上であって、かつ30℃以下の空気を供給することにより、クリーンルーム内の温度管理を容易にすることができる。
【0014】
また、乾燥手段は、吸引手段によって、乾燥手段本体から排出された上記空気を吸引するため、空気供給手段から供給され、カバー部材とブランケットとの間を流通する空気がクリーンルーム内に残存する塵等を巻き上げて、ガラス板上に付着させることにより、電極パターンが焼き切れる等の欠陥製品の製造原因となることを防止できる。加えて、上述の加熱及び冷却や塵等の巻き上げによる空調管理の悪化を防止することができる。
【0015】
また、請求項2に記載の発明によれば、上記ガラス板を水平移動させているために、当該搬送手段として汎用のコンベア等を用いることができるとともに、ブランケットを固定構造にすることができるために、装置全体の小型化が可能になる。
【0016】
特に、請求項3に記載の発明によれば、乾燥手段本体は、カバー部材をブランケットの軸線方向の両端部を覆うように幅広に形成したため、インキパターンを受理するブランケットの軸線方向全体を乾燥させることができる。また、カバー部材のブランケットにおける周方向の一端部に幅方向に向けて細長状の空気供給口を形成するとともに、他端部に幅方向に向けて細長状の排出口を設けたため、空気を効率的にカバー部材とブランケットとの間に流通させるとともに、乾燥手段本体から排出して、吸引手段によって吸引することができる。
【0017】
このため、乾燥手段は、吸引手段をカバー部材の他端部に臨む位置の一方のみに設置すればよく、省スペースであっても設置することができるとともに、カバー部材とブランケットとの間を流通する空気の流通量が増加して、ブランケットの外周表面を効率的に乾燥させることができ、その結果、インキパターンの転写精度そのものの低下をより確実に阻止することができる。
【0018】
さらには、側壁部材を設けることによって、一端部から他端部に向けて供給される空気の乾燥手段本体から外方に向けての流出を防止することができる。加えて、流通方向調整手段によって、空気供給手段から供給された空気を周方向に向けて流通させることにより、空気を上記一端部から他端部に向けて乱流等を起こすことなく、速やかに供給することができ、より確実に空気の乾燥手段本体から外方への流出を防止して、塵等の巻き上げを効果的に防止することができる。
【0019】
また、請求項4に記載によれば、印刷版からブランケットにインキパターンを受理した後に、当該インキを乾燥機から供給される空気によって、溶剤分を蒸発させて、インキの粘度を増加させることにより、ブランケットの外周表面に付着しているインキパターンを全てガラス板に転写することができるとともに、線幅等の転写精度も向上させることができる。このため、インキパターンによって形成された電極パターンの厚さの相違による電極の抵抗の増減等を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係るプラズマディスプレイの電極形成用のオフセット印刷機について、図1及び図2を用いて説明する。
【0021】
本実施形態のオフセット印刷機は、凹版(印刷版)1と、この凹版1からインキパターンを受理するブランケット2と、このブランケット2の外周上面部に臨む位置に配設された乾燥手段3と、ブランケット2の最下面に臨む位置にガラス板wを搬送する搬送台9とを有している。ここで、ブランケット2には、当該ブランケット2を上下方向に微少量移動させることにより、その最下面のガラス板wに対する圧接力を調整可能とする制御手段が設けられている。
【0022】
この凹版1は、軸線周りに回転可能な円柱状に形成されたグラビア版胴であり、その外方には、インク溜め(図示を略す)及びこのインク留めから凹版1にインキを供給するファニッシャーロール(図示を略す)を具備するインキ供給部と、このインキ供給部によって凹版1に供給された余分なインキを掻き落とすドクターブレード(図示を略す)とが備えている。
【0023】
このインク溜めには、無機粉末又は有機粉末から構成される粉末成分、樹脂成分及び溶剤成分を含有するインキが収容されている。
この粉末成分としては、金属粉末、金属酸化物、金属窒化物又はそれらの混合粉末からなる顔料や染料が用いられる。
【0024】
この樹脂成分としては、アクリルースチレン系共重合体、アクリルーウレタン系共重合体、アクリルーエポキシ系共重合体、ウレタンアクリレート又はエポキシアクリレートを含むものが用いられている。この樹脂成分は、インキに高い凝集力を付与し、ブランケット2からガラス板wへの転写の際に、インキ内部の凝集破壊が抑制するものである。この樹脂成分の分子量は、好ましくは数百〜数百万であり、低分子量の場合には速乾性を有し、高分子量の場合にはインキ内部での凝集破壊を一段と抑制するため、より転写性に優れている。
【0025】
また、溶剤成分としては、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、γ−ブチルラクトン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、ポリエステルポリオール[炭素数が2〜12の脂肪族多塩基酸・炭素数が2〜12の脂肪族多価アルコール]、ポリエステルポリオール[炭素数が8〜15の芳香族多塩基・炭素数が2〜12の脂肪族多価アルコール]及び水酸基含有液状アクリル樹脂からなる群より選ばれた1種又は2種以上を含むものが用いられる。これらの溶剤成分を含有することによって、上記樹脂成分を溶解することが可能であり、ブランケット2に受理した際に溶剤成分の一部がブランケット2のシリコーンゴムに吸収されることによって、インキとブランケット2との間に弱境界層(WBL)が形成されるため、インキパターンをブランケット2に残すことなく転写することができる。
【0026】
さらに、上記インキは、上述の樹脂成分が5〜20質量%、溶剤成分が5〜30質量%の割合で配合されていることが好ましく、また、上述の粉末成分、樹脂成分及び溶剤成分に加えて、印刷表面を平滑にすべく、1〜10質量%の割合で分散剤が含まれていることがより好ましい。
【0027】
一方、ブランケット2は、円柱状に形成されるとともに、外周表面がシリコーンゴムによって形成されており、そのシリコーンゴムの表面が凹版1の外周表面と互いに軸線方向に沿って接触するように配設されて、軸線周りに凹版1と同期して回転可能に設けられている。これにより、1枚のガラス板wに転写されるインキパターンを凹版1から受理するようになっている。
【0028】
上記乾燥手段3は、ブランケット2の外周面に沿って円弧状に湾曲形成された板状のカバー部材40を有する乾燥手段本体4と、この乾燥手段本体4に5℃〜30℃の乾燥空気を供給する空気供給手段と、乾燥手段本体4から排出された空気を吸引する吸引手段6とによって概略構成されている。
【0029】
このカバー部材40は、ブランケット2の外周面に受理された一枚のガラス板wに転写されるインキパターンを覆うように、ブランケット2の周方向に向けて長く形成されるとともに、ブランケット2の軸線方向の両端部を覆うように幅広に形成されている。そして、乾燥手段本体4は、カバー部材40の幅方向の両端部からそれぞれブランケット2側に向けて一定の長さ寸法を有するように円弧板状に形成された1対の側壁部材41がカバー部材40と一体的に設けられている。
【0030】
これらの側壁部材41には、それぞれブランケット2の回転方向の中央部に、ボルト等の接合部材を設置するための貫通穴70が形成された板状の固定部材7が取り付けられており、この固定部材7は、貫通穴70に挿通させた接合部材を枠体(図示を略す)に取り付けることによって、乾燥手段本体4を所定寸法だけブランケット2から離間して設置させており、その取り付け高さを変更することによって、乾燥手段本体4とブランケット2との間隔が調整可能である。
【0031】
また、これらの側壁部材41は、カバー部材40よりもブランケット2の回転方向前方側に突出して形成されており、乾燥手段本体4は、側壁部材41の突出部に直角三角柱状の流通方向調整壁43が一体的に設けられている。さらには、乾燥手段本体4は、側壁部材41がカバー部材40よりもブランケット2の回転方向前方側に突出して形成されることにより、カバー部材40の上記回転方向の前方端部(一端部)から前方に、幅方向に向けて細長状の開口(空気供給口)42が形成されており、この開口42に乾燥空気を供給する略矩形筒状に形成された空気導入部5が一体的に設けられている。
【0032】
この空気導入部5は、上記回転方向の後方側にブランケット2の直径方向に向けて配設された後方板51の下部に上記回転方向後方側に向けて傾斜する傾斜部52を有しており、この傾斜部52の下端部がカバー部材40の上記前方端部と一体的に設けられている。また、上記回転方向の前方側にブランケット2の直径方向に向けて配設された前方板53の下部には、流通方向調整壁43が一体に形成されており、この流通方向調整壁43は、その斜面(流通方向調整手段)44が、開口42に臨む位置に傾斜部52と略平行に配設されて、開口42から供給された乾燥空気をブランケット2の周方向に向けて流通させるようになっている。
【0033】
そして、後方板51及び前方板53と一体の一対の側方板は、それぞれ下部が側壁部材41と一体的に設けられており、空気導入部5の上端部は、ブランケット2の軸線方向の中央部に乾燥空気の供給管71が接続されるとともに、供給管71との接続部を除いて閉口されている。
【0034】
この供給管71は、その最上流部にクリーンルーム内に配置された送風ブロワー73が設置されており、この送風ブロワー73及び空気導入部5とともに上記空気供給手段を構成している。これにより、空気供給手段は、乾燥空気を供給管71から空気導入部5を介して乾燥手段本体4に供給するようになっており、乾燥手段本体4内に供給された乾燥空気は、流通方向調整壁43の斜面44によってカバー部材40とブランケット2との間をブランケット2の外周面に沿って流通するようになっている。
【0035】
他方、乾燥手段本体4は、カバー部材40の上記回転方向後方部(他端部)とブランケット2との間に、カバー部材40の幅方向に向けて細長状の開口(排出口)45が形成されており、この開口45に臨む位置に上記吸引手段6が配設されている。
【0036】
この吸引手段6は、吸引力が乾燥手段本体4のカバー部材40とブランケット2との間を正圧に保つ程度に設定されており、カバー部材40から離間して配設されるとともに、ブランケット2の外周面に沿ってカバー部材40と同一中心及び同一半径を有する円弧状に湾曲形成された板状のカバー部材61を有している。
このカバー部材61は、カバー部材40と同様に、ブランケット2の軸線方向の両端部を覆うように幅広に形成されるとともに、その幅方向の両端部からブランケット2に向けて一定の長さ寸法を有するように円弧板状に形成された側壁部材62が一体的に設けられている。
【0037】
また、吸引手段6は、側壁部材62の上記回転方向における後方部に板状の壁材63が一体的に設けられて、上記回転方向後方部が閉口されており、カバー部材61の幅方向の中央部に、空気の排出管72が接続されている。この排出管72は、その最下流部にクリーンルーム内に配置された排気ブロワー74が設置されている。
【0038】
次いで、上記第1の実施形態のオフセット印刷機を用いて電極を形成して、プラズマディスプレイパネルを製造する方法について、説明する。
【0039】
予め、上述の溶剤、樹脂及び分散剤に、粉末成分としての銀粉及びビスマスガラスを加えて、ミキサーで予備混合し、その後、3本ロールミルを用いて混練することにより、得られたインキをインク溜めに入れる。
【0040】
次ぎに、凹版1及びブランケット2を同期させて、凹版1を時計方向に回転させるとともに、ブランケット2を反時計方向に回転させる。すると、順次、凹版1のパターンにインク溜め内のインキがファニッシャーロールによって充填された後に、凹版1の回転方向前方部でドクターブレードによって上記パターンから溢れた余分なインキが掻き落とされる。その後、凹版1のパターンに充填された一定量のインキが順次、ブランケット2に受理された後に、凹版1及びブランケット2の回転によって、全てのインキパターンが乾燥手段本体4に臨む位置に配置される。
【0041】
次いで、送風ブロワー73及び排気ブロワー74を作動させることによって、乾燥空気が供給管71から空気導入部5に供給されて、流通方向調整壁43によりブランケット2の周方向に向けて流通するとともに、カバー部材40によりブランケット2の表面に沿って流通する。すると、ブランケット2の表面のインキパターンは、乾燥して、溶剤量が減少することにより、粘度が高くなるとともに、凝集力が大きくなる。
【0042】
また、開口45から排出された乾燥空気を、吸引手段6によって吸収することによって、同空気がブランケット2の外方に流出して、塵等を巻き上げることを防止するとともに、カバー部材40とブランケット2との間を正圧に保つことにより、この間に外部の巻き上げた塵等が引き込まれることを防止する。
【0043】
次いで、凹版1及びブランケット2をそれぞれ逆方向に同期して回転させるとともに、搬送台9を作動させることによって、ガラス板wをブランケット2の真下に供給して、ブランケット2からガラス板wにインキパターンを転写しつつ、漸次、ガラス板wを進行方向に移動させることにより、インキパターン全てをガラス板wの全面に転写させる。その際、インキパターンは、インキの凝集力が大きくなっているため、転写性が良好である。
【0044】
続いて、繰り返し、上述のように凹版1及びブランケット2を同期して回転させ、凹版1のパターンに充填された一定量のインキをブランケット2に受理した後に、インキパターンの全てを乾燥手段本体4に臨む位置に配置する。次いで、乾燥空気をカバー部材40に沿って供給することによってインキパターンを乾燥させた後、凹版1及びブランケット2を逆回転させるとともに、搬送台9を作動させることによって、ガラス板wをブランケット2の真下に供給するとともに、ブランケット2に設けた制御手段によって、ブランケット2の最下面をガラス板wに所定の圧接力によって当接させることにより、インキパターン全てをガラス板wの全面に転写させる。
【0045】
これにより、順次、電極パターンが形成されたガラス板wが得られるため、この電極パターンが形成されたガラス板wに、誘電体膜、さらに保護膜又は隔壁部材や蛍光体等を形成することによってプラズマディスプレイの前面板又は背面板を製造する。
【0046】
上述の実施形態のオフセット印刷機及びディスプレイパネルの製造方法によれば、乾燥手段3は、ブランケット2の軸線方向の両端部を覆うように幅広に形成したカバー部材40を有する乾燥手段本体4と、カバー部材40の上記回転方向前方端部から前方に向けて設けられた開口42に乾燥空気を供給する矩形筒状の空気導入部5を有する空気供給手段とを設けたため、乾燥空気をブランケット2のインキパターンの受理面全体に沿って流通させることができ、その結果、ブランケット2に受理されたインキパターンを全て乾燥させることができる。また、空気導入部5の後方板51に上記回転方向後方側に傾斜する傾斜部52を形成したため、乾燥空気の流路抵抗を減少させることができ、乾燥空気を効率的に供給し、インキを効率的に乾燥させることができる。
【0047】
さらに、カバー部材40の幅方向の両端部からブランケット2に向けて設けた側壁部材41によって、乾燥手段本体4から外方にむけての空気の流出を防止することができる。
加えて、この側壁部材41の突出部に斜面44が形成された流通方向調整壁43を一体的に設けたため、開口42から供給された乾燥空気を乱流等の生成を防止して、速やかに開口45に向けて流通させることができ、確実に空気の流出を防止して、塵等の巻き上げを効果的に防止することができる。
【0048】
その結果、ブランケット2に受理されたインキパターンを転写したガラス板wに塵等が付着して、インキパターンによって形成されたプラズマディスプレイの前面板や背面板の電極パターンが焼き切れてしまうことを防止できる。
また、供給管51の最上流部に配置された送風ブロワー73をクリーンルーム内に設置したため、乾燥手段3の乾燥空気の温度や湿度等によってクリーンルーム内の空調が乱されることなく、空調管理を容易に行うことができる。
【0049】
加えて、吸引手段6を、乾燥手段本体4におけるカバー部材40の上記回転方向後方部とブランケット2との間の開口45に臨む位置に配設したため、開口45から排出された乾燥空気を効率的に吸引することができ、乾燥空気が滞留することを防止して、塵等の巻き上げを確実に防止することができる。
【0050】
上述の実施形態のオフセット印刷機によれば、ガラス板wが、軸線回りに回転するブランケット2の下部に臨む位置に向けて水平移動することにより、ブランケット2よりインキパターンが転写される。そのうえ、制御手段によってガラス板wの圧接力が調整可能であるため、ブランケット2との圧接を調節することによって、インキパターンの転写精度の低下を防止することができる。また、圧接によるガラス板の破損も防止することができる。なおかつ、ガラス板wが水平移動することにより、当該搬送手段として汎用のコンベアなどを用いることができるとともに、ブランケット2を固定構造することができるために装置全体が簡易的になるため小型化も可能となる。
【0051】
なお、本発明は、上述の実施形態により何ら限定されるものではなく、例えば、乾燥手段本体4と吸引手段6とが連続して形成されていてもよく、空気導入部5がカバー部材40の上記回転方向の前方端部でなく、カバー部材40の上記回転方向の中央部に設けられていてもよいものである。
また、オフセット印刷機を用いて電極パターンを形成して、プラズマディスプレイを製造する方法に代えて、同印刷機を用いてブラックマトリックスを形成して、同ディスプレイを製造する方法であっても、同印刷機を用いて、電極パターン又はブラックマトリックスを形成してカラーフィルタを製造する方法であってもよいものである。この場合、粉末成分としては、上述のものに限らず、有機顔料、無機顔料、光輝性顔料、有機染料が用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明に係るオフセット印刷機の概念説明図である。
【図2】乾燥手段3の縦断面説明図である。
【符号の説明】
【0053】
1 凹版(印刷版)
2 ブランケット
3 乾燥手段
4 乾燥手段本体
5 空気導入部
6 吸引手段
9 搬送台
40 カバー部材
41 側壁部材
43 流通方向調整壁(壁材)
44 斜面(流通方向調整手段)
w ガラス板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インキ供給部を備えた印刷版と、この印刷版からインキパターンを受理する円柱状のブランケットと、このブランケットの外周表面に臨む位置に配設された乾燥手段とを有し、上記ブランケットに受理した上記インキパターンをガラス板に転写するオフセット印刷機であって、
上記乾燥手段は、上記ブランケットの外周面に沿って円弧状に湾曲形成された板状のカバー部材を具備する乾燥手段本体と、この乾燥手段本体に接続されて、空気を上記カバー部材と上記ブランケットとの間に流通させる空気供給手段と、上記乾燥手段本体から排出される上記空気を吸引する吸引手段とを有し、かつ
上記空気供給手段は、5℃以上であって、かつ30℃以下の空気を上記乾燥手段本体に供給することを特徴とするオフセット印刷機。
【請求項2】
上記ブランケットは、軸線回りに回転可能に設けられており、かつ上記ガラス板は、上記インキパターンを上記ガラス板に転写すべく、上記ブランケットの下部に臨む位置に向けて水平移動可能に設けられることを特徴とする請求項1に記載のオフセット印刷機。
【請求項3】
上記空気供給手段は、上記ブランケットの直径方向に向けて上記空気を導入する空気導入部を有しており、
上記カバー部材は、上記ブランケットの軸線方向の両端部を覆うように幅広に形成されるとともに、上記空気導入部から空気が供給される空気供給口が上記ブランケットの周方向の一端部に上記幅方向に向けて細長状に形成されており、かつ
上記乾燥手段本体は、上記カバー部材の幅方向の両端部からそれぞれ上記ブランケット側に向けて突出する側壁部材と、これらの側壁部材の間の上記空気供給口に臨む位置に設けられ、上記空気供給手段から供給された空気を上記ブランケットの周方向に向けて流通させる流通方向調整手段を備えた壁材とを有し、上記空気が排出される排出口が上記カバー部材の周方向の他端部に上記幅方向に向けて細長状に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のオフセット印刷機。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載のオフセット印刷機を用いて、上記印刷版からブランケットにインキパターンを受理した後に、当該インキを上記乾燥機から供給される空気によって乾燥させることにより、当該インキの粘度を増加させ、次いで、この粘度が増加したインキパターンをガラス板に転写させることを特徴とするディスプレイパネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−143163(P2008−143163A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−119033(P2007−119033)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【分割の表示】特願2007−65042(P2007−65042)の分割
【原出願日】平成19年3月14日(2007.3.14)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】