説明

オリゴアミノシランの製造法および安定化法

本発明の対象は、一般式(II)Sin2n+2で示されるオリゴハロゲン化シランを一般式(III)R−NH2で示される第一級アミンと、溶剤としての炭化水素中で反応させることにより、一般式(I)Sin2n+2で示されるオリゴアミノシランを製造する方法であり、上記式中、Xは、塩素、臭素および沃素から選択され、Yは、ハロゲン、水素またはR−NHを表わし、Rは、1〜20個の炭素原子を有する炭化水素基を表わし、およびnは、1〜20の値を表わし、但し、基Yの最大35モル%は、水素を表わし、および基Yの最大15モル%は、ハロゲンを表わし、この場合反応混合物には、活性炭が添加される。同様に、本発明の対象は、一般式(I)のオリゴアミノシランを安定化させる方法であり、この場合オリゴアミノシランには、活性炭が添加される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オリゴアミノシランをオリゴハロゲン化シランおよび第一級アミンから製造する方法、この場合反応混合物には、活性炭が添加され、ならびにオリゴアミノシランの安定化に関する。
【0002】
アミノシラン化合物は、Si−N−層およびSi−O−層の形成にとって著しく重要であり、このためにアミノ置換されたモノシランは、既に試験されたものであり、また、若干のジシランは、良好な性質を示す。その限りにおいて、高い珪素含量を有する化合物が重要である。
【0003】
WO 03/045959には、ヘキサキスエチルアミノジシランをヘキサクロロジシランおよびペンタン中のエチルアミンから製造することが記載されている。また、こうして製造されたヘキサキスエチルアミノジシランは、水および空気の厳格な遮断下に制限されてのみ貯蔵安定性である。
【0004】
オリゴアミノシラン、例えばヘキサキスエチルアミノジシランの使用には、高い純度が必要とされるので、貯蔵の際に分解、ひいては汚染傾向を有しない生成物に対する高い要求が課されていた。
【0005】
本発明の対象は、
一般式(II)
Sin2n+2 (II)
で示されるオリゴハロゲン化シランを
一般式(III)
R−NH2 (III)
で示される第一級アミンと、溶剤としての炭化水素中で反応させることにより、一般式(I)
Sin2n+2 (I)
で示されるオリゴアミノシランを製造する方法であり、
上記式中、Xは、塩素、臭素および沃素から選択され、
Yは、ハロゲン、水素またはR−NHを表わし、
Rは、1〜20個の炭素原子を有する炭化水素基を表わし、および
nは、1〜20の値を表わし、
但し、基Yの最大35モル%は、水素を表わし、および
基Yの最大15モル%は、ハロゲンを表わし、この場合反応混合物には、活性炭が添加される、一般式(I)のオリゴアミノシランを製造する方法である。
【0006】
一般式(I)のオリゴアミノシランを製造する際に活性炭を存在させることによって、オリゴアミノシランの貯蔵安定性は、明らかに向上される。一般式(I)のオリゴアミノシランの収量も改善させることができる。更に、また、生成物の塩素含量は、減少される。
【0007】
本方法に使用される活性炭は、特に炭素少なくとも90質量%を有する。BET表面積は、特に活性炭1g当たり少なくとも200m2、殊に少なくとも400m2である。活性炭は、植物性、動物性、鉱物性または石油化学性の出発物質から製造されてよい。この製造は、特に出発物質を脱水剤、例えば塩化亜鉛、硫酸または燐酸で500〜900℃で処理することによって行なわれるか、または乾式蒸留によって行なわれる。こうして得られた粗製活性炭は、引続き700〜1000℃で水蒸気または二酸化炭素を用いてか、または空気を用いて酸化活性化される。
【0008】
一般式(I)において、基Yの特に最大20モル%、特に有利に最大10モル%、殊に0モル%は、水素を意味する。
【0009】
一般式(I)において、基Yの特に最大1モル%、特に有利に最大0.1モル%、殊に最大0.01モル%、殊に有利に0モル%は、ハロゲンを意味する。
【0010】
ハロゲンXおよび場合によりYは、特に塩素である。
【0011】
Rは、殊に直鎖状または分枝鎖状のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルケニル基またはアリールアルキル基であることができる。好ましくは、基Rは、1〜12個、殊に1〜6個の炭素原子を有する。特に好ましい基Rは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、第三ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基または第三ペンチル基およびフェニル基である。
【0012】
nは、特に1〜6の値を表わし、特に好ましくは、1、2、3および4の値である。
【0013】
炭化水素溶剤としては、1バールで120℃までの沸点または沸騰範囲を有する溶剤および溶剤混合物が好ましい。このような溶剤の例は、3〜10個の炭素原子を有するアルカン、6〜12個の炭素原子を有する芳香族化合物、1〜3個のハロゲン化アルカンおよびこれらの混合物である。好ましい例は、ジクロロメタン、テトラクロロメタン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエンおよびキシレン、およびこれらの異性体混合物である。
【0014】
有利に製造された一般式(I)のオリゴアミノシランは、長鎖状または分枝鎖状である。特に有利に製造された一般式(I)のオリゴアミノシランは、一般式(IV)
Y(SiY2mSiY3 (IV)
〔式中、Yは、前記の意味を有し、nは、1、2、3、4または5の値を表わす〕で示される直鎖状オリゴアミノシランである。
【0015】
同様に、有利に製造された、一般式(I)のオリゴアミノシランは、一般式(V)
3Si(SiZ2)SiY3 (V)
〔式中、Yは、前記の意味を有し、Zは、水素、ハロゲンまたはSiY3を表わす〕で示されるオリゴアミノシランである。
【0016】
特に、一般式(III)の第一級アミンは、一般式(II)のオリゴハロゲン化シランに対して過剰量で使用される。特に、第一級アミンの過剰量は、それぞれオリゴハロゲン化シラン中の基X1モルに対して少なくとも1.1:1、特に有利に少なくとも2:1、殊に少なくとも5:1および特に最大20:1である。
【0017】
オリゴハロゲン化シラン中の基X1モル当たり、活性炭特に少なくとも0.5g、特に有利に少なくとも2g、特に最大30g、特に有利に最大10gが使用される。
【0018】
1つの好ましい実施態様において、活性炭は、オリゴハロゲン化シラン中の基X少なくとも50%、殊に75%の反応後に反応混合物に添加される。
【0019】
更に、好ましい実施態様において、一般式(III)の第一級アミンは、溶剤中に装入され、一般式(II)のオリゴハロゲン化シランが供給される。特に、オリゴハロゲン化シランの添加後に、活性炭が添加される。特に好ましくは、最初に過剰量のアミンが除去され、その後に活性炭が添加される。
【0020】
特に、反応の温度は、少なくとも−80℃、特に有利に少なくとも−40℃および特に最大100℃、特に有利に最大30℃である。
【0021】
特に、反応の圧力は、0.5バール、特に有利に少なくとも1バール、特に最大10バールである。易揮発性の第一級アミン、例えばメチルアミンおよびエチルアミンを使用する場合には、1バールを上廻る圧力の使用は、好ましい。
【0022】
特に、活性炭は、反応混合物の後処理の際に濾別される。
【0023】
同様に、本発明の対象は、一般式(I)のオリゴアミノシランを安定化させる方法であり、この場合オリゴアミノシランには、活性炭が添加される。そのために、特に活性炭が断片の形で使用される。
【0024】
前記式の全ての前記の符号は、それらの意味を、それぞれ互いに無関係に有する。全ての式において、珪素原子は、四価である。
【0025】
以下の実施例では、そのつど別記されていなければ、全ての量および%の記載は、質量に対するものであり、全ての圧力は、1バール(絶対圧)であり、かつ全ての温度は20℃である。
【実施例】
【0026】
例1:ヘキサキスエチルアミノジシランの製造(本発明による)
フラスコ中にイソヘキサン1300gを供給する。このフラスコ中で、エチルアミン720gを縮合させる。このために、この溶液を−40℃に冷却する。引続き、冷却下にヘキサクロロジシラン270gを、温度が0℃を上廻らないように計量供給する。計量供給の終結後、1時間攪拌し、引続きフラスコ内容物をフィルター中に移す。得られた溶液から過剰量のエチルアミンおよびイソヘキサン約400gを留去する。このために、真空に印加し、約40℃の温度で連続的に400ミリバールに上昇させる。更に、得られた濃厚物(約1100g)を活性炭30gで撹拌下に10時間処理する。活性炭を濾別し、濃厚物を蒸留する。目的生成物のヘキサキスエチルアミノジシランは、120℃の塔頂温度および2.5ミリバールで取り出される。
【0027】
例2:ヘキサキスエチルアミノジシランの製造(本発明によらない)
フラスコ中にイソヘキサン1300gを供給する。このフラスコ中で、エチルアミン720gを縮合させる。このために、この溶液を−40℃に冷却する。引続き、冷却下にヘキサクロロジシラン270gを、温度が0℃を上廻らないように計量供給する。計量供給の終結後、1時間攪拌し、引続きフラスコ内容物をフィルター中に移す。引続き、この溶液を蒸留する。このために、連続的に60℃の温度で真空を1〜3ミリバールに上昇させる。その後に、温度を1〜3ミリバールで上昇させる。目的生成物のヘキサキスエチルアミノジシランは、120℃の塔頂温度および2.5ミリバールで取り出される。
【0028】
生成物の試験
例1および2により製造されたヘキサキスエチルアミノジシランの安定性を物質約5gを加熱することによってネジ締めされた鋼製管中で150℃で試験する。ヘキサキスエチルアミノジシランの百分率での取り出し量は、次の通りである:
1日目/150℃ 5日目/150℃
例2の生成物 −24% −53%
例1の生成物 −4% −23%
本発明によらない
また、活性炭での本発明による処理によって、収量は、上昇される。収量は、全ての画分に関して次の通りである:
例2(本発明によらない)の生成物 77%
例1の生成物 82%
本発明による研究方法によって、生成物の塩素含量も減少される。イオンクロマトグラフィーにより測定した塩素含量は、次の通りである:
例2(本発明によらない)の生成物 25ppm
例1の生成物 13ppm

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(II)
Sin2n+2 (II)
で示されるオリゴハロゲン化シランを
一般式(III)
R−NH2 (III)
で示される第一級アミンと、溶剤としての炭化水素中で反応させることにより、
一般式(I)
Sin2n+2 (I)
で示されるオリゴアミノシランを製造する方法であって、
上記式中、Xは、塩素、臭素および沃素から選択され、
Yは、ハロゲン、水素またはR−NHを表わし、
Rは、1〜20個の炭素原子を有する炭化水素基を表わし、および
nは、1〜20の値を表わし、
但し、基Yの最大35モル%は、水素を表わし、および
基Yの最大15モル%は、ハロゲンを表わし、この場合反応混合物には、活性炭が添加される、一般式(I)のオリゴアミノシランを製造する方法。
【請求項2】
Rは、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基を表わす、請求項1記載の方法。
【請求項3】
一般式(IV)
Y(SiY2mSiY3 (IV)
〔式中、Yは、請求項1に記載の意味を有し、
mは、1、2、3、4または5の値を表わす〕で示される直鎖状オリゴアミノシランを製造する、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
一般式(V)
3Si(SiZ2)SiY3 (V)
〔式中、Yは、請求項1に記載の意味を有し、
Zは、水素、ハロゲンまたはSiY3を表わす〕で示されるオリゴアミノシランを製造する、請求項1または2記載の方法。
【請求項5】
一般式(III)の第一級アミンを一般式(III)のオリゴハロゲン化シランに対して過剰量で使用する、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
活性炭をオリゴハロゲン化シラン中の基X少なくとも75%の反応後に反応混合物に添加する、請求項5記載の方法。
【請求項7】
一般式(III)の第一級アミンを溶剤中に装入し、一般式(II)のオリゴハロゲン化シランを供給し、オリゴハロゲン化シランの添加後に活性炭を添加する、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
反応の温度は、−80℃〜100℃である、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1記載の一般式(I)のオリゴアミノシランを安定化する方法において、
オリゴアミノシランに活性炭を添加することを特徴とする、請求項1記載の一般式(I)のオリゴアミノシランを安定化する方法。

【公表番号】特表2012−518611(P2012−518611A)
【公表日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−550522(P2011−550522)
【出願日】平成22年2月11日(2010.2.11)
【国際出願番号】PCT/EP2010/051672
【国際公開番号】WO2010/094610
【国際公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(390008969)ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト (417)
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】