説明

オルガニルオキシ基を有する有機ケイ素化合物の製造方法

本発明は、少なくとも1個のシラノール基を有する有機ケイ素化合物(A)と、少なくとも2個のオルガニルオキシ基を有する有機ケイ素化合物(B)とを反応させることによる、オルガニルオキシ基を有する有機ケイ素化合物の製造方法に関し、この場合、この方法は、成分(A)、成分(B)及び場合により他の成分(C)を互いに機械的に混合し、その際、エネルギー入力量は、(A)、(B)及び場合により(C)から成る混合物1kg当たり少なくとも0.2kWであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オルガノニルオキシ基を有する有機ケイ素化合物の製造方法並びに室温で架橋される材料中でのその使用に関する。
【0002】
RTV1−シーリング材、つまりは水の排除下で貯蔵可能な、室温で水の添加の際にエラストマーに硬化される1成分系シーリング材は公知である。これは、建築工業においてジョイント材料(Verfugungsmaterial)及びパッキング材料として多く使用されている。この硬化中には、通常、加水分解により酢酸又はアルコールが生じる。
【0003】
加水分解による酢酸を分離するRTVI−シーリング材のためのポリマー有機ケイ素化合物は、極めて容易に製造することができる。これは、鎖末端にシラノール基を有する長鎖オルガノポリシロキサンと、ケイ素に対して少なくとも2個の結合したアセトキシ基を有する有機ケイ素化合物とを、簡単に混合することで十分である。数分内に、いわゆるエンドキャッピングが生じる。これは、ポリマー鎖末端のOH基とアセトキシシランとが反応することを意味する。
【0004】
RTV1シーリング材のためのポリマー有機ケイ素化合物の製造は、加水分解の際にアルコールを遊離するものであって本質的に消費的である。したがって、OH基を有する有機ケイ素化合物とアルコキシシランとの混合物は、より高い温度においては互いに反応しない。しかしながら、触媒、たとえば錫又はチタン化合物を添加する場合には、これら成分は反応して直接的に3次元架橋された生成物を生じる。
【0005】
この反応は、アルコキシシランがアルコキシ基よりも反応性の加水分解可能な基を有する場合には、このアルコキシシランの使用によってしばしば良好に制御することができる。したがってEP-B-98 369には、ジヒドロキシジオルガノポリシロキサンとアルコキシオキシモシランとの反応が記載されており、かつUS-A-3 147 047にはアルコキシアミドシランとの反応が記載されている。しかしながら、この混合シランの製造は極めてコスト消費的である。さらに、反応混合物から生じる加水分解産物の除去は可能ではあるけれども、通常、専ら極めて困難である。
【0006】
しかしながら、望ましいエンドキャッピング反応を極めて迅速に導く触媒及び触媒系がさらに見出された。これは極めて反応性ではあるけれども、たとえばEP-B-457 693に記載された水酸化物イオンのように、望ましくないポリマー転位反応を招く。さもなければ、たとえばEP-B 678 541中に開示されているフッ化物イオンのように、高粘度の溶液からの不都合な沈澱によって不活性化しなければならない。
【0007】
少ない反応性の触媒は、一般に極めて長い反応時間及び追加の高い温度を必要とする。したがって US-A-5 055 502では、触媒としての亜鉛錯体、たとえば亜塩ジアセチルアセトネートが請求されている。エンドキャッピング反応は、1時間に亘って80℃で反応混合物の攪拌下で実施する。EP-B-304 701 Blは、触媒としての酸性のアミン塩の使用を教示している。エンドキャッピング反応は、1時間〜3時間に亘って70〜100℃で反応混合物の攪拌下で実施する。
【0008】
US-A-2005/0234208は、線状のヒドロキシ末端基を有するポリジメチルシロキサンといわゆるα−シラン、たとえばN−(シクロヘキシルアミノメチル)−トリエトキシシランとの反応を記載している。この反応は、OH末端基を有するポリジメチルシロキサンとα−シランとを15〜60分に亘って室温で混合した後に、白金混合物系と一緒におこない、その際、さらにブチルリチウムを触媒として添加する。
【0009】
本発明の対象は、少なくとも1個のシラノール基を有する有機ケイ素化合物(A)と、少なくとも2個のオルガニルオキシ基を有する有機ケイ素化合物(B)とを反応させることによって、オルガニルオキシ基を有する有機ケイ素化合物を製造する方法であり、この場合、この方法は、成分(A)、成分(B)並びに場合によっては他の成分(C)を互いに機械的に混合し、その際、(A)、(B)及び場合により(C)からの混合物1kg当たりエネルギー入力量が少なくとも0.2kWであることを特徴とする。
【0010】
本発明により使用されたシラノール基を有する有機ケイ素化合物(B)は、好ましくは、式(I)
【化1】

[式中、Rは同じかまたは異なって、SiC−結合された、場合により置換された炭化水素基を意味し、
aは0、1、2又は3であり、好ましくは1又は2であり、かつ、
bは0、1又は2であり、好ましくは0又は1である]の単位を有するものであるが、但し、a+bの合計は≦4であり、かつ1分子当たりbが0ではない少なくとも1個の式(I)の単位を有する。
【0011】
本発明により使用される有機ケイ素化合物(A)は、シラン、即ち、a+b=4を有する式(I)の化合物であってもよいし、シロキサン、即ちa+b≦3を有する式(I)の単位を有する化合物であってもよい。好ましくは、本発明によって使用される有機ケイ素化合物(A)はオルガノポリシロキサンであり、特に式(I)の単位から構成されるオルガノポリシロキサンである。
【0012】
本発明の範囲内において、オルガノポリシロキサンの概念は、ポリマー、オリゴマー並びにダイマーのシロキサンも一緒に包含されてもよい。
【0013】
Rに関する例はアルキル基、たとえばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、1−n−ブチル基、2−n−ブチル基、イソブチル基、tert.−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオ−ペンチル基、tert.−ペンチル基;ヘキシル基、例えばn−ヘキシル基;ヘプチル基、例えばn−ヘプチル基;オクチル基、例えばn−オクチル基及びイソオクチル基、例えば2,2,4−トリメチルペンチル基;ノニル基、例えばn−ノニル基;デシル基、例えばn−デシル基;ドデシル基、例えばn−ドデシル基;オクタデシル基、例えばn−オクタデシル基;シクロアルキル基、たとえばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基及びメチルシクロヘキシル基;アルケニル基、例えばビニル基、1−プロペニル基及び2−プロペニル基;アリール基、例えばフェニル基、ナフチル基、アントリル基及びフェナントリル基;アルカリール基、例えばo−、m−、p−トリル基;キシリル基及びエチルフェニル基;及びアルアルキル基、例えばベンジル基、α−フェニルエチル基及びβ−フェニルエチル基である。
【0014】
置換された基Rに関する例は、ハロゲンアルキル基、例えば、3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル基、2,2,2,2’,2’,2’−ヘキサフルオロイソプロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基及びハロゲンアリール基、例えばo−、m−及びp−クロロフェニル基;並びにγ−官能化プロピル基、例えば3−アミノプロピル基、3−(2−アミノエチル)アミノプロピル基、3−グリシドキシプロピル基、3−メルカプトプロピル基及び3−メタクリルオキシプロピル基又はα−官能化メチル基、例えばN−シクロヘキシルアミノメチル基である。
【0015】
基Rに関して好ましくは、1〜18個の炭素原子を有する炭化水素基、この場合、これは場合によってはハロゲン原子、アミノ基、エーテル基、エステル基、エポキシ基、メルカプト基、シアノ基又はポリグリコール基によって置換されており、その際、ポリグリコール基はオキシエチレン及び/又はオキシプロピレン単位から構成される。特に好ましい基Rは、1〜8個の炭素原子を有する炭化水素基であり、特にメチル基である。
【0016】
好ましくは、有機ケイ素化合物(A)は、1個又は2個のシラノール基を有する有機ケイ素化合物である。
【0017】
本発明によって使用される有機ケイ素化合物(A)は、好ましくは本質的に線状のオルガノポリシロキサンである。
【0018】
特に好ましくは、有機ケイ素化合物(A)は、それぞれ鎖末端にそれぞれ1個のシラノール基を有する線状のジオルガノポリシロキサンである。
【0019】
本発明により使用される有機ケイ素化合物(A)は、25℃でそれぞれ、好ましくは5〜10mPas、特に好ましくは1000〜350000mPasの粘度を有する。
【0020】
本発明によって使用される有機化合物(A)に関する例は、
【化2】

【0021】
有機ケイ素化合物(A)は、市販の製品又は化学において常用の方法によって製造可能である。
【0022】
成分(A)は製造において要求されるわずかな量の水を含有していてもよく、好ましくは500質量ppmまで、特に好ましくは100質量ppmまでの水を含有していてもよい。
【0023】
本発明により使用されるオルガニルオキシ基を有する有機ケイ素化合物(B)は、好ましくは、式(II)
【化3】

[式中、Rは同じか又は異なっていてもよく、かつ基Rに関して示された意味を有し、Rは同じか又は異なっていてもよく、かつ場合によっては置換された炭化水素基を意味し、この場合、これは酸素原子によって中断されていてもよく、
cは0、1、2又は3であり、
dは0、1、2、3又は4であり、かつ、
eは0又は1であり、好ましくは0である]の単位を含有するものであるが、但し、c+d+eの合計は≦4であり、かつ1分子あたり少なくとも2個の基−ORが存在する。
【0024】
本発明によって使用される化合物(B)はシラン、すなわち、c+d+e=4である式(II)の化合物であってもよく、同様にシロキサン、すなわち、c+d+e≦3である式(II)の単位を含有する化合物であってもよい。好ましくは、本発明によって使用される化合物(B)は、式(II)のシランであり、その際、dはしたがって、好ましくは3又は4であり、及び/又はこれらの部分加水分解物である。
【0025】
部分加水分解物とは、部分ホモ(homo)加水分解物並びに部分コ(co)加水分解物であってもよい。
【0026】
基Rの例は、基Rに関して挙げた例である。
【0027】
好ましくは、基Rはメチル基、エチル基、n−プロプル基、イソプロピル基、1−n−ブチル基、2−n−ブチル基、イソブチル基、tert.−ブチル基、フェニル基、シクロヘキシルアミノメチル基及びビニル基であり、その際、シクロヘキシルアミノメチル基、メチル基及びビニル基が特に好ましい。
【0028】
基Rの例は、基Rに関して挙げた例である。
【0029】
好ましくは、基Rはメチル基、エチル基及びイソプロピル基であり、その際、エチル基が特に好ましい。
【0030】
好ましくは、化合物(B)は、少なくとも3個のオルガニルオキシ基を有する有機ケイ素化合物であり、特に好ましくは3個のオルガニルオキシ基を有する有機ケイ素化合物である。
【0031】
本発明によって使用される化合物(B)の例は、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、テトラメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、tert−ブチルトリメトキシシラン、(N−シクロヘキシルアミノメチル)−トリエトキシシラン及び(N−シクロヘキシルアミノメチル)メチル−ジエトキシシラン並びにこれらの部分加水分解物であり、その際、(N−シクロヘキシルアミノメチル)−トリエトキシシラン、(N−シクロヘキシルアミノメチル)メチル−ジエトキシシラン、テトラメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、(N−シクロヘキシルアミノメチル)−トリエトキシシラン及び(N−シクロヘキシルアミノメチル)メチル−ジエトキシシラン並びにその部分加水分解物が好ましい。特に好ましくは、成分(B)はビニルトリエトキシシラン及び(N−シクロヘキシルアミノメチル)−トリエトキシシランである。
【0032】
成分(B)は、市販の製品であるか、あるいは化学において通常の方法により製造可能である。
【0033】
成分(B)は、製造条件においてわずかな量のアルコールを含有していてもよく、好ましくは5.0質量%まで、特に好ましくは1.0質量%までを含有する。
【0034】
本発明による方法により、成分(B)は好ましくは0.1〜200質量部、特に好ましくは1〜100質量部の量で、特に1〜20質量部の量で、それぞれ100質量部の有機ケイ素化合物(A)に対して使用する。
【0035】
好ましくは、成分(B)は、(A)のシラノール基の数に対して化学量論的過剰量で使用する。特に好ましくは(A)のシラノール基の数に対して1より大きい化学量論的過剰量で、かつ特に好ましくは3よりも大きい化学量論的過剰量で使用する。
【0036】
本発明による方法において使用することができる、場合により使用された他の成分(C)に関する例は、反応速度に作用しうる生成物、たとえば触媒である。
【0037】
好ましくは、成分(C)は触媒である。
【0038】
場合により使用される成分(C)に関する例は、カルボン酸、鉱酸、金属水酸化物、ルイス酸、アミン、金属キレート及び金属アルコキシレート、たとえばチタンアルコキシレート又はこれらの組合せ物である。
【0039】
好ましくは、場合により使用される成分(C)は、カルボン酸、鉱酸、金属水酸化物、ルイス酸、アミン、金属キレート及び金属アルコキシレート、たとえばチタンアルコキシレート又はこれらの組合せ物である。
【0040】
本発明による方法において触媒(C)を使用する場合には、それぞれ100質量部の有機ケイ素化合物(A)に対して、好ましくは0.0001〜5質量部の量である。
【0041】
本発明による方法は、好ましくは成分(C)を使用しない。
【0042】
本発明による方法は、個々の成分を、任意の順序で、かつ従来公知の技術及び方法で互いに混合することができる。これは個々の成分又は前混合物、たとえば成分(B)と成分(C)との混合物から製造することができ、その後に他の成分と一緒に混合する。
【0043】
さらに成分(B)又は成分(C)を時間的に前後して、部分量で混合導入することも可能である。
【0044】
本発明による方法において使用される成分は、それぞれ、前記成分の1種類でも、それぞれの成分の少なくとも2種類の混合物であることができる。
【0045】
本発明による方法は、任意の構成される混合室中で成分を、混合過程におけるエネルギー入力量が、その都度(A)、(B)及び場合により(C)からなる混合物1kgに対して、少なくとも0.2kW、好ましくは少なくとも0.5kW、特に好ましくは1.0〜100kwである程度に、互いに機械的に混合する。
【0046】
望ましい場合には、反応をそれぞれ任意の時点で中断することは好ましくない。好ましくは、反応はシラノール基が完全に反応するまで実施する。
【0047】
本発明による方法は、好ましくは付加的な加熱又は冷却なしに、周囲温度又は個々の成分の混合の際に生じる温度で実施する。これに関して、好ましくは10〜150℃、特に好ましくは15〜100℃の温度である。
【0048】
エネルギー入力量は、一般に混合物の加熱を導く。この加熱は好ましくは1℃を上回り、特に好ましくは2℃を上回り、かつ特に好ましくは5〜100℃である。
【0049】
本発明による方法は、連続的又は断続的に実施することができ、好ましくは連続的に実施する。
【0050】
本発明による方法は、好ましくは周囲雰囲気の圧力下で、すなわち900〜1100hPaで実施するか、あるいは、混合系の使用によって生じる圧力で実施する。したがって、特に好ましくは連続的操作方法で、過圧下で、たとえば1100〜40000hPaの絶対圧で実施する。この圧力は、一般に閉鎖系で、運搬の際の圧力及び使用された材料の蒸気圧によって高められた温度で生じる。
【0051】
本発明による方法は、好ましくは湿分の排除下で実施し、たとえば乾燥空気中又はデッドスペースなしの混合集成装置中で実施する。
【0052】
本発明による方法では、混合物中へのエネルギー入力量を、混合作用を生じさせる自体公知の技術的方法で実施し、この場合、これは例えば噴霧、吹き付け、運搬、振とう、衝突又は剪断である。
【0053】
本発明による方法では、エネルギー入力量を、好ましくは混合物の強力な剪断によって実施し、その際、剪断下で、混合物の液体層の移動が相互に生じる。
【0054】
本発明による方法では、混合集成装置の混合室は、好ましくは完全に混合物で満たされ、その結果、デッドスペースが存在することなく、その後に、特に好ましくはエネルギー導入を剪断により実施する。
【0055】
強力な剪断作用は、好ましくは高速回転する混合機構(Mischorgane)により達成されるか、及び/又は、上下にか、あるいは内壁又は他の混合要素に対して極めて狭い剪断スリットを示すようにして配置された回転する混合要素によって達成される。
【0056】
本発明によるエネルギー入力量は、任意及び公知の方法によって実施することができる。
【0057】
本発明による実施態様において、しかしながらこれはあまり好ましくはないが、混合物の攪拌を、迅速に回転する混合機構を備えた混合機中で、たとえばディスルバー混合機を用いて実施する。このディソルバーは、好ましくは10m/sを上廻り、特に好ましくは20m/sを上廻り、かつ特に30m/sを上廻る回転速度を有する。この際、混合要素自体は任意の形状を有していてもよく、好ましくは、たとえば下向き及び/又は上向きに反った歯を有するディスク形状の要素又はいわゆるバタフライミキサ要素である。この混合機は、通常、液体中への固体の断続的な分散に使用されるものと同一であってもよい。本発明によるこの実施態様は、特に、少ない生産量に適している。
【0058】
本発明による方法の好ましい実施態様によれば、外部ハウジングの内壁が回転し、かつ同時に、混合容器の回転運動が遊星系により生じる混合機を使用する。迅速に移動する混合室と混合物との表面境界から内部へ混合物の剪断が生じる。
【0059】
本発明による方法の特に好ましい実施態様によれば、混合物の運動エネルギーは、ローター/ステーターミキサ系を使用することにより高い乱流を有する流れエネルギーの形で役立つ。ここで、混合物の強力な剪断は、ローターとステーターとの間の剪断帯域中で、軸方向の生成物供給口と半径方向の生成物搬出口との間において実施する。ローターの直径は、好ましくは10cmを上廻り、特に好ましくは15〜200cmである。好ましくは、ローターへの運搬要素、たとえばインボリュート形状の運搬要素を配置する。ローター及びステーターは、任意の複数個の歯及びスリットを有していてもよい。さらに複数個のローター/ステーター対を並べて配置することが可能である。ローター/ステーター系中で生じる運搬流に加えて、特に高粘度の混合物の場合には、前方に配置された拍動なしの輸送ポンプを用いて運搬流を増大させる。適したローター/ステーター混合系は、たとえば混合タービンであり、これは、30kWの電気エネルギー入力量で、混合室中に10kg未満の混合物量を有する。
【0060】
本発明による方法の他の好ましい実施態様では、運搬プロセスに使用されるような集成装置を使用する。したがって、たとえば歯車ポンプにより還流比を適切に調整することが可能であり、その結果、混合物の本発明による優れた機械的要求を達成する。このような集成装置の利点は、特に、混合物に、デッドスペースが不在であることに起因する強力な剪断およびこれに伴う優れた混合作用が提供されることである。
【0061】
本発明による方法の他の好ましい実施態様では、動的ミキサー、すなわち、混合室中に軸方向に配置された混合シャフトを備えた混合装置を使用し、この場合、混合対象物は軸方向に貫流する。このような混合機は、混合要素が運搬作用を有しないかまたはわずかに有する場合には、混合物の機械的要求の強さを、流量とは無関係に、混合シャフトの回転数により変更することができるといった利点を有する。これに関して、流量の調整は付加的な運搬装置、たとえばポンプによって実施することができる。
【0062】
本発明による方法の場合には、反応の終了後に、反応混合物の揮発分を除去することができ、その際、揮発分の除去は同装置中で又は後続の装置中での減圧によって、不活性ガス供給を用いるかまたは用いないで、室温又は高められた温度で実施する。易揮発性の構成成分は、好ましくはアルコール、たとえばメタノール又はエタノールである。
【0063】
本発明による方法は、0.1〜3600秒、特に好ましくは2〜300秒の混合時間を有する。これに関して、断続的操作方法の場合には、混合時間は、混合物の機械的要求の持続時間から直接的に得られるか、さもなければ連続的操作方法の場合には、貫流量及び容器の容積から平均滞留時間として算出される。
【0064】
本発明による方法によれば、多数の、オルガニルオキシ基を有する有機ケイ素化合物を製造することができる。
【0065】
本発明により製造されるオルガニルオキシ基を有する有機ケイ素化合物に関する例は、
【化4】

【0066】
本発明により製造される有機ケイ素化合物の場合は、好ましくは10〜10000個、特に好ましくは100〜2000個のケイ素原子を有するものである。
【0067】
本発明により製造されるオルガニルオキシ基を有する有機ケイ素化合物は、従来オルガニルオキシ基を有する有機ケイ素化合物が使用されているすべての目的のために使用することができる。
【0068】
特に、縮合反応によって架橋可能な材料を製造するのに適している。
【0069】
縮合反応によって架橋可能な材料を製造するために、本発明により製造されるオルガニルオキシ基を有する有機ケイ素化合物の他に通常使用される構成成分(D)は、架橋剤、この場合、成分(B)で記載されたのと同一の化合物であってよく、縮合触媒、助剤、結合剤、充填剤、可塑剤、安定化剤、染料、殺菌剤及びレオロジー添加剤の群から選択されるものである。この構成成分(D)は、文献においてすでに多く記載されている。これに加えて、たとえばEP-B1-1 397 428及びEP-B1-1 640 416に示されており、これは本発明の開示に含まれる。
【0070】
この構成成分(D)は、本発明により使用される構成成分(A)、(B)及び場合による(C)の反応直後に添加することができ、その結果、本発明により製造されるオルガニルオキシ基を有する有機ケイ素化合物をベースポリマーとして有する架橋可能な材料を、反応容器中で製造することができる。しかしながらさらに、構成成分(D)を、本発明により製造されるオルガニルオキシ基を有する有機ケイ素化合物の中間保存(Zwischenlagerung)後、数分から数ヶ月まで添加することができる。
【0071】
本発明による方法によれば、あまり好ましくはないけれども、1個又は複数個の構成成分(D)、たとえば充填剤又は可塑剤を、成分(A)と一緒にすでに本発明による反応の前に混合することも可能である。
【0072】
本発明による方法は、簡単な技術及び方法で、短い反応時間で、オルガニルオキシ基を有する有機ケイ素化合物を製造することができるといった利点を有する。
【0073】
本発明による方法は、オルガニルオキシ基を有する有機ケイ素化合物が、反応容器の外的加熱なしで製造することができるといった利点を有する。
【0074】
本発明による方法は、製造されたオルガニルオキシ基を有する有機ケイ素化合物が、場合による貯蔵後であっても混濁を示すことなく、それによって透明な硬化可能な材料の製造に関して最適化して使用することができる。
【0075】
本発明による方法は、本発明により製造されたオルガニルオキシ基を有する有機ケイ素化合物を、予めの単離又は後処理、たとえば中和、濾過又は高い温度による触媒の不活性化なしで、製造した直後に架橋可能な材料を製造するために使用することができるといった利点を有する。
【0076】
さらに本発明による方法は、連続的に実施することができるといった利点を有する。
【0077】
以下の実施例では、部で示される全ての表示は、特にその他の記載がない限り、質量に対するものである。他に記載がない限り、以下の実施例は、周囲雰囲気の圧力、すなわち約1000hPaで、かつ室温、すなわち約20℃又は反応物を室温で付加的な加熱又は冷却をせずに合わせる場合に生じる温度で実施される。実施例において挙げられた全ての粘度データは、25℃の温度に関するものである。
【0078】
以下、製造されたアルコキシ末端ポリジメチルシリコンの評価を、いわゆるチタネート−クイックテストに基づいて、本質的なシラノール基の不含につき実施する:
10gの製造されたポリマー(たとえば、反応前に78000mPa.sの粘度で、420質量ppmのSi−結合OH基を含有するもの)及びイソプロピルチタネート(約0.1g)をスパチュラで3分に亘って撹拌した。上方に引かれた検体が、細い糸状で下方に流れた場合には、この検体はほぼシラノール不含である。上方に引かれた検体がちぎれた場合には、なおも30質量−ppmを上廻るSi−結合OH基を含有する。
【0079】
このテストの利点は、特に、エンドキャッピング反応直後に迅速に実施できることである。
【0080】
例1
混合ユニットとして混合機(I)を使用し、この場合、これは、回転する混合容器を有し、この容器は同様に回転する板上に配置されており、その際、混合容器中に他の混合要素が存在することはない。運転は、回転流モーター(Drehstrommotor)を介して実施する。このような混合機は、たとえばEP-B-1 293 245中で記載されており、これは本発明の開示に含まれる。
【0081】
混合機(I)中に、78000mPa・sの粘度(25℃で回転式粘度計を用いて測定されたもの)を有するα,ω−ジヒドロキシポリジメチルシロキサン50g及びシクロへキシルアミノメチルトリエトキシシラン1.5gを、3500回転/分の混合容器の回転数で60秒に亘って、円筒状PEカップ中で互いに混合する。この円筒状で内部が滑らかな混合容器はポリエチレンから成り約150mlの容積を有し、かつねじ込みぶたで栓がなされている。回転板は、約18cmの直径を示す。
【0082】
ポリマーのSi−結合されたOH含量は、反応前に420ppmである。触媒は使用しない。成分の出発温度は25℃である。
【0083】
混合対象物(Mischgut)中へのエネルギー入力量は、市販の測定装置を用いて、「空」で回転する、すなわち混合カップ中に混合物が存在しない混合機と、「充満」で回転する、すなわちPEカップ中に51.5gの混合物が存在する混合機とのその都度測定された電気的エネルギーの差として把握される。
【0084】
空の混合機の測定されたエネルギーは178.9Wである。充満された混合機の測定されたエネルギーは274.4Wである。これにより、95.5Wのエネルギー入力量が算定される。したがって混合対象物は、1kgのエダクト混合物あたり1.85kWの本発明による特別なエネルギー入力量を機械的に要求する。
【0085】
混合後すぐに実施したチタネートテストはネガティブであり、これは、エンドキャッピング反応がすでにこの短い反応時間内に終了したことを意味する。
【0086】
例2
例1中に記載された方法を繰り返すが、但し、両成分を、1分当たり2500回転の混合容器の回転数で混合する。
【0087】
空の混合機の測定されたエネルギーは151.1Wである。充満された混合機の測定されたエネルギーは185.8Wである。これにより、34.7Wのエネルギー入力量が算定される。したがって混合対象物は、1kgのエダクト混合物あたり0.67kWの本発明による特別なエネルギー入力量を機械的に要求する。
【0088】
混合後すぐに実施したチタネートテストはネガティブであり、これは、エンドキャッピング反応がすでにこの短い反応時間内に終了したことを意味する。
【0089】
比較例1
例1で記載された方法を繰り返したが、但し、両成分を、1分当たり1500回転の混合容器の回転数で混合する。
【0090】
空の混合機の測定されたエネルギーは128.1Wである。充満された混合機の測定されたエネルギーは131.2Wである。これにより、3.1Wのエネルギー入力量が算定される。したがって混合対象物は、1kgの出発混合物あたり0.06kWのわずかな特別なエネルギー入力量を機械的に要求する。
【0091】
混合後すぐに実施したチタネートテストはポジティブであり、これは、エンドキャッピング反応が、この短い反応時間内でなおも完了していないことを意味する。
【0092】
比較例2
例1で使用したα,ω−ジヒドロキシポリジメチルシロキサン及びシクロヘキシルアミノメチルトリエトキシシランを、互いに別個に4時間に亘って60℃に加熱する。1.5gのシクロヘキシルアミノメチルトリエトキシシランを、50gのα,ω−ジヒドロキシポリジメチルシロキサンに添加した後に、60秒に亘って1分当たり1500回転で混合する。
【0093】
エンドキャッピング反応は完了しておらず、したがってその直後に実施したチタネート試験はポジティブである。
【0094】
例3
例1で記載したα,ω−ジヒドロキシポリジメチルシロキサンとシクロヘキシルアミノメチルトリエトキシシランとの反応を、実験室用ディソルバー(混合機II)中で、周囲雰囲気の圧力で実施する。
【0095】
これに関して400gのα,ω−ジヒドロキシポリジメチルシロキサンと、12gのシクロヘキシルアミノメチルトリエトキシシランを、25℃の開始温度で、3分に亘って互いに強力に混合する。ディソルバー歯車リムを備えた混合シャフトは、その直径が約6.5cmであり、1分当たり5000回転に調整した。混合容器は薄鋼板から成り、約12cmの直径及び約12cmの高さを有するものであって、冷却及び加熱されていない。
【0096】
回転流モーターの動力エネルギー(Antriebsleistung)は、製造指示書によれば、1分当たり100回転の混合シャフトの回転数の場合には、0.75kWである。したがって、電気モーターから歯車運動を介して混合シャフトへの簡単なエネルギー伝達が生じ、0.9の効率と見積もることができる。その際、この効率は、混合中のディソルバーディスク(Dissolverscheibe)による混合エネルギーの機械的入力量と、モーターの電気的エネルギー消費量との商である。0.75kWのエネルギー消費量及び0.9の効率から、0.68kWの機械的エネルギー入力量が計算される。したがって、本発明による特別なエネルギーは、エダクト混合物1kg当たり1.65kWである。
【0097】
混合工程の直後に実施されたチタネートテストはネガティブであり、これは、エンドキャッピング反応が3分の混合時間内で完了したことを意味する。
【0098】
例4
例1で記載された78000mPa・sの粘度を有するα,ω−ジヒドロキシポリジメチルシロキサンと、シクロヘキシルアミノメチルトリエトキシシランとの反応を、連続的に、ローター/ステーター混合系を備えたミキサー中で、EP-B-101 46 395に記載されたようにして実施した。この場合、前記文献は、本発明の開示に含まれる(混合機III)。
【0099】
23℃の温度を有する双方の出発材料を、100:3の質量比で互いに別個に、かつ連続的に周囲雰囲気の圧力及び室温で、供給開口部を介して上部から自由落下により混合室中に計量供給する。この混合室はハウジングから構成され、その中で、26cmの直径を有する水平に配置された円盤状のローターが回転し、インボリュート形状の混合要素は3.0cmの高さを有する。外部ローター周囲から1cmの離れて、固定された動かないステーターの内側が存在し、これは周囲に沿ってそれぞれ約0.7cm間隔で46個の歯を有する。このローターは、1分当たり800回転で操作する。これに関して、混合内容物は遠心力によって外側に押し出され、その際、ステーターに衝突し、かつローターとステーターとの間で強力に剪断される。このステーター下方約1cmで、混合内容物は放射状に配置された搬出開口部に押し出される。搬出口すぐ後方の遮断装置(Absperrvoreichtung)を閉めることにより、計量供給量を適切に調節され、搬出口において約1800hPaの圧力で1000kg/kの流量に調整される。
【0100】
出発材料のための上部に取り付けられた供給開口部なしで約5cmの高さの円筒状混合室は、常に約3.0kgの混合内容物で完全に充填されている。空のスペースは存在しない。
【0101】
混合対象物の平均滞在可能時間は、混合室上0.003時間であった。
【0102】
混合により、混合対象物は33℃に加熱された。1000kgの混合対象物を10℃加熱するためには、約15500kJ必要である(ポリジメチルシロキサンの特別な熱容量;1.55J/gK)。これは、4.3kW時間のエネルギー量に相当し、この場合、これは1時間当たりの機械的エネルギーを熱エネルギーに変換したものである。したがって、全混合室の混合対象物量を考慮すると、1時間に亘って4.3kWのエネルギー入力量及び混合室中エダクト混合物1kgあたり少なくとも1.43kWの特別なエネルギー入力量となる。このエネルギー入力量を、たとえばローターの混合要素により上乗せされた容積及びステーターの容積に適用する場合には、算出されたエネルギー入力量はさらに本質的に高くなり、すなわち約0.2lに対して4.3kWであり、したがってエダクト混合物1kg当たり20kWを上廻る。
【0103】
混合後すぐに検体について実施されたチタネート試験は、遮断装置から搬出された直後にネガティブであり、これは、エンドキャッピング反応が完了したことを意味する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1個のシラノール基を有する有機ケイ素化合物(A)と、少なくとも2個のオルガニルオキシ基を有する有機ケイ素化合物(B)とを反応させることによって、オルガニルオキシ基を有する有機ケイ素化合物を製造する方法において、成分(A)、成分(B)並びに場合によっては他の成分(C)を互いに機械的に混合し、その際、エネルギー入力量は(A)、(B)及び場合により(C)の混合物1kg当たり少なくとも0.2kWであることを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
シラノール基を有する有機ケイ素化合物(A)が、式(I)
【化1】

[式中、Rは同じかまたは異なって、SiC−結合され、場合により置換された炭化水素基を意味し、
aは0、1、2又は3であり、かつ、
bは0、1又は2である]の単位を含むものであるが、但し、a+bの合計は≦4であり、かつ1分子当たりbが0ではない少なくとも1個の式(I)の単位を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
化合物(B)が、式(II)
【化2】

[式中、Rは同じかまたは異なっていてもよく、かつ基Rに関して示された意味を有し、Rは同じかまたは異なっていてもよく、かつ、酸素原子で中断されていてもよい場合により置換された炭化水素基を意味し、
cは0、1、2又は3であり、
dは0、1、2、3又は4であり、
eは0又は1であり、好ましくは0である]の単位を含むもの及び/又はその部分加水分解物であるが、但し、c+d+eの合計は≦4であり、かつ1分子当たり少なくとも2個の基−ORが存在する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
成分(B)を、有機ケイ素化合物(A)100質量部に対して0.1〜200質量部の量で使用する、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
成分(C)が触媒である、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
混合過程でのエネルギー入力量が、(A)、(B)及び場合により(C)から成る混合物1kgに対して少なくとも0.5kWである、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
混合過程でのエネルギー入力量が、(A)、(B)及び場合により(C)から成る混合物1kgに対して1.0〜100kWである、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
連続的に実施する、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2010−534259(P2010−534259A)
【公表日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−517358(P2010−517358)
【出願日】平成20年7月16日(2008.7.16)
【国際出願番号】PCT/EP2008/059257
【国際公開番号】WO2009/013185
【国際公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(390008969)ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト (417)
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】