説明

オルガノポリシロキサン親水性組成物、その塗膜、その硬化物、およびその用途

【課題】防汚性、低汚染性、汚染の自己洗浄性、帯電防止性などに優れた塗膜や硬化物を形成可能なオルガノポリシロキサン組成物を提供すること。
【解決手段】(A)1分子中にシラノール基(Si−OH)を2個以上含有するオルガノポリシロキサンと、(B)Si原子に結合した親水性基Qと、Si原子に結合し、該シラノール基(Si−OH)と縮合反応可能な官能基Xとを有する、ケイ素含有化合物(B0)、その部分加水分解物、およびこれらの縮合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物とを含有するオルガノポリシロキサン親水性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オルガノポリシロキサン親水性組成物、その塗膜、その硬化物、およびその用途に関し、より詳細には室温硬化性シリコーンゴム組成物として好適なオルガノポリシロキサン親水性組成物、その塗膜、その硬化物、およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、種々の室温硬化性シリコーンゴム組成物(以下「RTV」ともいう。)が知られており、RTVは防汚塗料、帯電防止用材料、シーラント、ポッティング材などの他多用な分野に適用されている。
【0003】
このRTVの諸物性を調整する方法としては、RTV中の充填材や添加物を適宜選択する方法も有効な方法である。またシロキサンポリマーそのものの構造を変えるような様々な方法が提案されている。
【0004】
たとえば、架橋剤中の反応性官能基を変えることにより、RTVの硬化性、接着性、非腐食性を調整する方法が提案されている。
また、シロキサンポリマーをベースとしてブロック共重合体やグラフト重合体を合成する方法も提案されている。しかし、この方法では、反応が複雑であると共に、両末端に架橋のためのOH基を有する長鎖のポリシロキサンポリマーの合成が難しい等の難点がある。
【0005】
シロキサンポリマーとシリコーン架橋剤との反応時に、所望の物性を有する反応性の異種ポリマーを取り込む方法も提案されている。しかし、この方法では、効率よく所望の官能基を結合させた規則的な構造を有する重合体を得ることが難しい。また、反応性異種ポリマーが架橋剤の反応性に影響を及ぼし、RTVの硬化性や保存安定性に問題が生じる場合がある。
【0006】
また、RTV中に、シロキサン主鎖ポリマーおよびシリコーン架橋剤以外の成分であって、所望の物性を有する成分(以下「第三成分」という。)を配合する方法も提案されており、具体的には以下のような例を挙げることができる。
【0007】
たとえば特公平7−84562号公報(特許文献1)には、シロキサンポリマー成分として、
【0008】
【化1】

【0009】
【化2】

【0010】
を特定割合で含む混合物を用いたRTVに、一般式
【0011】
【化3】

【0012】
(R8は互いに同一または相違なるアルキル基またはアリール基であり、R9はH、CH3
または(CH22CH3である。)
で表される特定のポリオキシアルキレン化合物とポリオルガノシロキサンとの共重合体を配合すると、表面が非粘着性で耐摩耗性に優れた低硬度のシリコーンゴムを与える室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物を提供できることが記載されている。
【0013】
特開平8−104831号公報(特許文献2)には、分子内にエチレンオキシド単位を含むポリオキシアルキレンセグメントおよびポリオルガノシロキサンセグメントをそれぞれ少なくとも2セグメント含んでいるセグメント化ポリマーと、湿気硬化型シリコーンゴムおよび/またはエチレン性不飽和モノマー重合体とを含む防汚塗料組成物が開示されている。また、この組成物を用いると、親水性付与成分であるセグメント化ポリマーが塗料塗膜中で動きやすいために、水中浸漬後、塗膜表面に配向し速やかに親水性膜が形成され、汚損の第一段階として重要視されている浮游物質や細菌類等の吸着を抑制し、結果として汚損の進行が一層減速化され、水中において防汚効果が長期間に渡って発揮されることが記載されている。
【0014】
特開2002−294156号公報(特許文献3)には、少なくともひとつの分子鎖末端にシラノール基または加水分解性基を有する極性基含有オルガノポリシロキサンフルイド(d1)と、分子鎖末端にシラノール基および加水分解性基を有さない極性基含有オルガノポリシロキサンフルイド(d2)とからなる、25℃における粘度が10〜50,0
00mPa・sである極性基含有オルガノポリシロキサンフルイド混合物を含有する室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物が開示されている。また、この組成物を用いると、防汚性を示す極性基含有オルガノポリシロキサンフルイドが長期間に渡って少量ずつ塗膜表面に移行し、その結果、水中移動物や水中構造物表面に水中生物が付着育成するのを長期間防止することができると記載されている。
【0015】
特開2004−43521号公報(特許文献4)には、以下の構造式で示される加水分解可能な基を有するオキシアルキレン基含有オルガノポリシロキサンを含むことを特徴とする室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物が記載されている;
−R2−Si(R32−O−(R4O)b−R5
(式中、R5は非置換若しくは置換の炭素原子数1〜8の1価炭化水素基、又は、式:−
6−SiX3(Xは加水分解性基)で表わされる基である。)。
【0016】
このオキシアルキレン基含有ポリシロキサンは、加水分解可能な基を有しているので、RTV組成物を硬化させる際に縮合反応に関与し、その結果、硬化皮膜中にこのオキシアルキレン基含有ポリシロキサンに由来の構造も取り込まれて一体的に固定される。そして、このオキシアルキレン基含有ポリシロキサンに由来の構造中のSi−O−C結合は加水分解を受け易く、分解された成分がシリコーン硬化皮膜表面ににじみ出て界面活性剤として機能し、水生生物の付着防止や防汚作用を発揮する。
【0017】
しかしながら、所望の物性を有する第三成分をRTV中に単に配合する方法では、有効成分である第三成分をシロキサンポリマー分子内に長期間留めておくことは不向きであるため、その成分を用いて長期的・持続的に所望の効果を得ることができない。
【0018】
一方、特許文献4に記載の発明では、反応性の第三成分が縮合反応によりオルガノポリシロキサン骨格に固定されるため、RTV中に単に第三成分として添加するよりは所望の効果の持続性が期待できるが、第三成分中のSi−O−C結合が加水分解を受けやすいため、やはり所望の効果の長期的・持続的な発揮には限界がある。さらに反応性といえども、その反応性は主反応(シロキサンポリマーとシリコーン架橋剤との硬化反応)よりも遅いことから、シロキサンポリマーと第三成分とは優先的に反応できないため、シロキサンポリマー分子内に規則的に第三成分が導入された硬化物を得ることは難しい。
【0019】
また、特に近年は海洋汚染・環境汚染対策が重要視されているが、これらの系では、添加された第三成分が最終的には系外に放出されるため、海洋汚染・環境汚染につながるという問題があった。
【特許文献1】特公平7−84562号公報
【特許文献2】特開平8−104831号公報
【特許文献3】特開2002−294156号公報
【特許文献4】特開2004−43521号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題点を解決しようとするものであって、防汚性、低汚染性、汚染の自己洗浄性、帯電防止性などに優れ、特にこれらの特性が長期的・持続的に優れた変性重合体、塗膜および硬化物を形成可能なオルガノポリシロキサン組成物を提供することを目的としている。
【0021】
また本発明は、防汚性、低汚染性、汚染の自己洗浄性、帯電防止性などに優れ、特にこれらの特性が長期的・持続的に優れた変性重合体、塗膜および硬化物を提供することを目的としている。
【0022】
さらに本発明は、上記の特性に加えて、内部硬化性にも優れた接着剤シーラント・ポッティング材・型取材や、水分の存在下でも精密な型取が可能な親水性歯科用印象材などを形成可能なオルガノポリシロキサン組成物を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明のオルガノポリシロキサン親水性組成物は、
(A)1分子中にシラノール基(Si−OH)を2個以上含有するオルガノポリシロキサンと、
(B)Si原子に結合した親水性基Qと、Si原子に結合し、該シラノール基(Si−OH)と縮合反応可能な官能基Xとを有する、
ケイ素含有化合物(B0)、その部分加水分解物、およびこれらの縮合物からなる群か
ら選ばれる少なくとも1種の化合物と
を含有することを特徴としている。
【0024】
前記親水性基Qが、−(R1O)n1−R2および−R0−Q′−(R1O)n1−R2
〔R0は、炭素原子数1〜5のアルキレン基であり、
1は、炭素原子数1〜10のアルキレン基であり、1つの親水性基Qの中に複数個の
1が存在する場合には、各R1は互いに同一であっても異なっていてもよく、
2は水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基または芳香族炭化水素
基であり、
−Q′−は、−NHCOO−、−NHCH(OH)CH2O−、−S−(CH22CO
O−または−S−CH2CH(CH3)COO−であり、
n1は、1〜50の整数である。〕
からなる群から選ばれる1種または2種以上の親水性基であることが好ましい。
【0025】
前記官能基Xは、アルコキシ基、脂肪族アシルオキシル基、芳香族アシルオキシル基、オキシム基、アミノ基、アミド基、アミノキシ基およびアルケニルオキシ基からなる群から選ばれる1種または2種以上の官能基であることが好ましい。
【0026】
前記ケイ素含有化合物(B0)は、下記式(B1)で表される化合物(B1)であることが好ましい;
(4-m-m')Si(Rbm'm ・・・(B1)
〔Rbは、水素原子またはアルキル基、アリール基、アラルキル基もしくはアルケニル
基であり、
Q、RbおよびXのそれぞれは、複数個ある場合には、互いに同一であっても異なっ
ていてもよく、
mは1〜3の整数であり、m'は0〜2の整数であり、m+m'≦3である。〕。
【0027】
また前記ケイ素含有化合物(B0)は、下記式(B2)で表される化合物(B2)、および/または下記式(B2′)で表される化合物(B2′)であることが好ましい;
【0028】
【化4】

【0029】
〔式(B2)において、複数個あるAは、それぞれ独立に、前記Q、前記Rbまたは前記
Xのいずれかであり、かつ該Aの内の少なくとも1つは前記Qであると共に少なくとも1つは前記Xであり、
【0030】
【化5】

【0031】
は、互いに同一の、または異なる
【0032】
【化6】

【0033】
が、n個存在することを表し、
nは、0〜20,000の整数である。〕、
【0034】
【化7】

【0035】
〔式(B2′)において、複数個あるAは、それぞれ独立に、前記Q、前記Rbまたは前
記Xのいずれかであり、かつ該Aの内の少なくとも1つは前記Qであると共に少なくとも1つは前記Xであり、
【0036】
【化8】

【0037】
は、互いに同一の、または異なる
【0038】
【化9】

【0039】
が、p個存在することを表し、
pは3〜10の整数である。〕。
また前記ケイ素含有化合物(B0)は、(XSiO3/2)で表されるT単位、(QSi
3/2)で表されるT単位、および(ASiO3/2)で表されるT単位〔ただし、Aは、前記Q、前記Rbまたは前記Xのいずれかである。〕を含有する化合物(B3)であること
が好ましい。
【0040】
前記オルガノポリシロキサン(A)の25℃における粘度は、10〜1,000,000mPa・sであることが好ましい。
前記オルガノポリシロキサン(A)は、下記一般式(A1)で表されるオルガノポリシ
ロキサンであることが好ましい;
【0041】
【化10】

【0042】
〔式(A1)において、
kは該オルガノポリシロキサン(A1)の25℃における粘度を10〜1,000,000mPa・sとする整数であり、
各Raは、それぞれ独立に、水素原子またはアルキル基、アリール基、アラルキル基も
しくはアルケニル基である。〕。
【0043】
前記オルガノポリシロキサン(A)100重量部に対して、前記ケイ素含有化合物(B0)、その部分加水分解物、およびこれらの縮合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物(B)が0.1〜200重量部であることが好ましく、0.5〜100重量部であることがさらに好ましい。
【0044】
本発明のオルガノポリシロキサン親水性組成物は、さらに、硬化触媒(C)、充填材(D)、添加剤(E)または希釈材(F)のいずれか1種以上を含有していてもよい。
前記硬化触媒(C)としては、アミン、グアニジン、アミン系シランカップリング剤および有機金属化合物からなる群から選ばれた1種または2種以上を例示することができる。
【0045】
前記充填剤(D)としては、粉砕石英、煙霧質シリカ、湿式シリカ、焼成シリカ等のシリカ、粉砕炭酸カルシウム、膠質炭酸カルシウム、合成炭酸カルシウム等の炭酸カルシウム、珪藻土、タルク、酸化チタン、水酸化アルミニウム、アルミナ、窒化アルミ、酸化亜鉛、炭酸亜鉛、酸化鉄、カーボンブラック、グラファイトおよびガラスビーズからなる群から選ばれた1種または2種以上を例示することができる。前記充填剤(D)は、クロロシラン類、アルコキシシラン類、シラザン類、環状ジメチルポリシロキサンおよび直鎖状ジメチルポリシロキサンからなる群から選ばれた1種または2種以上により疎水化表面処理されていてもよい。
【0046】
前記添加剤(E)としては、接着性付与剤、たれ防止剤、防汚剤、防カビ剤、難燃性付与剤、硬化調整剤および着色顔料からなる群から選ばれた1種または2種以上を例示することができる。
【0047】
前記希釈剤(F)としては、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、リグロイン、低分子量揮発性シロキサンおよびシリコーンオイルからなる群から選ばれた1種または2種以上を例示することができる。
【0048】
本発明のオルガノポリシロキサン親水性組成物は、さらに、前記オルガノポリシロキサン(A)と前記ケイ素含有化合物(B0)、その部分加水分解物、およびこれらの縮合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物(B)とを架橋させてなる変性重合体を含有していてもよい。
【0049】
本発明の、船舶用防汚塗料、漁網用防汚塗料、自己洗浄性シーラント、自己洗浄性塗料
、建築用シーラント、建築用塗料、電気電子分野用帯電防止塗料、一般工業用帯電防止塗料、電気電子分野用帯電防止接着剤、一般工業用帯電防止接着剤、電気電子分野用帯電防止シーラント、一般工業用帯電防止シーラント、電気電子分野用ポッティング材、一般工業用ポッティング材および型取り用組成物は、それぞれ、前記オルガノポリシロキサン親水性組成物を含有している。
【0050】
本発明の塗膜は、前記オルガノポリシロキサン親水性組成物からなる。
本発明の硬化物は、前記オルガノポリシロキサン親水性組成物を硬化させてなる。
本発明の変性重合体は、前記オルガノポリシロキサン(A)とケイ素含有化合物(B0)、その部分加水分解物、およびこれらの縮合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物(B)とを架橋させてなる。
【発明の効果】
【0051】
本発明のオルガノポリシロキサン親水性組成物を用いると、防汚性、低汚染性、汚染の自己洗浄性、帯電防止性などに優れ、特にこれらの特性が長期的・持続的にも優れた変性重合体、塗膜および硬化物を得ることができる。
【0052】
本発明の変性重合体、塗膜および硬化物は、優れた防汚性、低汚染性、汚染の自己洗浄性、帯電防止性などの効果を奏し、これらの効果は長期的・持続的に発揮される。
また本発明のオルガノポリシロキサン親水性組成物を用いると、上記の特性に加えて、親水基の作用で内部硬化性にも優れた接着剤シーラント・ポッティング材・型取材や水分の存在下でも精密な型取が可能な親水性歯科用印象材などを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0053】
以下、本発明のオルガノポリシロキサン親水性組成物について、さらに詳細に説明する。
[オルガノポリシロキサン親水性組成物]
本発明のオルガノポリシロキサン親水性組成物は、(A)オルガノポリシロキサンと、(B)ケイ素含有化合物(B0)、その部分加水分解物、およびこれらの縮合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物とを含有している。
【0054】
(A)オルガノポリシロキサン;
本発明で用いられるオルガノポリシロキサン(A)(以下「成分(A)」ともいう。)は、1分子中にシラノール基(Si−OH)を2個以上有し、好ましくは分子の両末端にシラノール基(Si−OH)を有している。
【0055】
オルガノポリシロキサン(A)が分子の両末端にシラノール基(Si−OH)を有していると、合成上有利であるとともに、両末端のみ反応することにより架橋間分子量が同一の均一な網目構造が得られるため、優れた物性の硬化物を得ることができる。
【0056】
このオルガノポリシロキサン(A)としては、たとえば下式(A1)で表わされるオルガノポリシロキサンが好ましい。
【0057】
【化11】

【0058】
上記式(A1)において、
aは、それぞれ独立に、水素原子またはアルキル基、アリール基、アラルキル基もし
くはアルケニル基である。
【0059】
またkは、オルガノポリシロキサン(A1)の25℃における粘度を10〜1,000,000mPa・sとする整数であり、好ましくは50〜200,000、さらに好ましくは100〜100,000である。
【0060】
上記アルキル基としては、直鎖状、分岐状または脂環状の何れのタイプのアルキル基であってもよく、その炭素原子数が1〜10、好ましくは1〜8程度の直鎖状または分岐状アルキル基、ならびに炭素原子数が3〜6のシクロアルキル基が望ましい。このような直鎖状あるいは分岐状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、2−エチルブチル基、オクチル基等のアルキル基、特に好ましくはメチル基が挙げられ、脂環状のアルキル基としては、例えば、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等が挙げられる。
【0061】
上記アリール基としては、炭素原子数が6〜15、好ましくは6〜12程度のものが望ましく、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ジフェニル基等が挙げられ、特にフェニル基が好ましい。
【0062】
上記アラルキル基としては、炭素原子数が7〜10、好ましくは7〜8程度のものが望ましく、例えば、ベンジル基、2−フェニルエチル基等が挙げられる。
上記アルケニル基としては、炭素原子数が2〜10、好ましくは2〜8程度のものが望ましく、例えば、ビニル基、ヘキセニル基、アリル基等が挙げられる。
【0063】
また、これらの1価炭化水素基の水素原子の一部又は全部が、F、Cl、Br、I等のハロゲン原子やシアノ基で置換された基で置換されていてもよく、そのような基として、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、2−シアノエチル基などを挙げることができる。
【0064】
aとしては、これらの中でも未置換の1価炭化水素基が好ましく、特にメチル基、フ
ェニル基が好ましい。
なお、オルガノポリシロキサン(A)中に複数個のRaが存在する場合、これら複数個
のRa同士は、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0065】
オルガノポリシロキサン(A)の25℃における粘度は10〜1,000,000mPa・sであり、好ましくは20〜200,000mPa・sであり、より好ましくは100〜100,000mPa・sであることが望ましい。粘度がこのような範囲にあるオルガノポリシロキサン(A)を用いると、物理的・機械的強度に優れたゴム状硬化物やコーティング塗膜を得ることができ、使用時の作業性にも優れる。
【0066】
(B)ケイ素含有化合物等;
本発明で用いられるケイ素含有化合物(B0)、その部分加水分解物、およびこれらの縮合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物(B)(以下「成分(B)」ともいう。)は、親水性基Qと、前記オルガノシロキサン(A)のシラノール基(Si−OH)と縮合反応可能な官能基Xとを有している。
【0067】
また親水性基Qおよび官能基Xは、成分(B)中の同一または異なるSi原子に結合している。
成分(B)中のSi原子には、前記Raと同様の水素原子またはアルキル基、アリール
基、アラルキル基もしくはアルケニル基(以下、これらをまとめて「Rb」と表す。)が
結合していてもよい。なお、成分(B)中に複数個のRbが存在する場合、これら複数個
のRb同士は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0068】
なお「これらの縮合物」としては、ケイ素含有化合物(B0)同士の縮合物、ケイ素含有化合物(B0)の部分加水分解物同士の縮合物、およびケイ素含有化合物(B0)とケイ素含有化合物(B0)の部分加水分解物との縮合物が挙げられる。
【0069】
<親水性基Q>
本発明において、親水性基Qは、本発明の組成物、変性ポリマー、塗膜などに親水性を発揮させる役割を担っている。
【0070】
親水性基Qとしては、好ましくは
−(R1O)n1−R2および−R0−Q′−(R1O)n1−R2
が挙げられる。なお、成分(B)中に複数個のQが存在する場合、これら複数個のQ同士は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0071】
ここでR0は、炭素原子数1〜5のアルキレン基であり、たとえば−CH2CH2−、−
CH2CH2CH2−、−CH2CH2CH2CH2−であり、これらの中でも−CH2CH2
および−CH2CH2CH2−が好ましく、−CH2CH2CH2−が特に好ましい。
【0072】
1は、炭素原子数1〜10のアルキレン基であり、たとえば−CH2CH2−、−CH2CH2CH2−、−CH2CH2CH2CH2−、−CH(CH3)CH2−、であり、これらの中でも−CH2CH2−および−CH(CH3)CH2−、が好ましく、−CH2CH2−が特に好ましい。また、Siに隣接する場合には、−CH2CH2−および−CH2CH2CH2
−が好ましく、−CH2CH2CH2−が特に好ましい。
【0073】
また、R2は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基または芳香族
炭化水素基である。
上記アルキル基としては、直鎖状、分岐状または脂環状の何れタイプのアルキル基であってもよく、その炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜8の直鎖状または分岐状アルキル基が望ましい。このようなアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、2−エチルブチル基、オクチル基等が挙げられ、これらの中でも、メチル基が好ましい。
【0074】
上記シクロアルキル基としては、炭素原子数が3〜12のシクロアルキル基が望ましい。このようなアルキル基としては、例えば、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等が挙げられる。
【0075】
上記アルケニル基としては、炭素原子数が2〜10、好ましくは2〜8程度のものが望ましく、例えば、ビニル基、ヘキセニル基、アリル基等が挙げられ、中でもアリル基が好ましい。
【0076】
上記芳香族炭化水素基としては、炭素原子数が6〜12の芳香族炭化水素基が望ましい。このような芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。
2としては、これらの中でもメチル基および水素原子が好ましい。
【0077】
−Q′−は、−NHCOO−、−NHCH(OH)CH2O−、−S−(CH22CO
O−または−S−CH2CH(CH3)COO−で表される基である。
また、n1は、1〜50の整数である。
【0078】
<官能基X>
前記成分(B)は、官能基Xが前記オルガノシロキサン(A)のシラノール基と縮合反応することにより、前記オルガノシロキサン(A)を構成成分とする架橋したネットワーク中に固定される。
【0079】
官能基Xとしては好ましくは、アルコキシ基、脂肪族アシルオキシル基、芳香族アシルオキシル基、オキシム基、アミノ基、アミド基、アミノキシ基およびアルケニルオキシ基を挙げることができる。なお、成分(B)中に複数個のXが存在する場合、これら複数個のX同士は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0080】
アルコキシ基としては、炭素原子数が1〜10のものが望ましく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、オクチル基等が挙げられる。
脂肪族アシルオキシル基としては、炭素原子数が1〜10のものが望ましく、例えば、アセトキシ基(−OCOCH3)、プロピオニルオキシ基(−OCOC25)、アクリロ
キシ基(−OCOCH=CH2)、メタクリロキシ基(−OCOC(CH3)=CH2)、ブ
タノイルオキシ基(−OCOC37)、オクタノイルオキシ基(−OCOC715)など
が挙げられ、また芳香族カルボキシル基としては、
ベンゾイルオキシ基(−OCOC65)、フタロイルオキシ基(−OCOC64COOH)
などが挙げられる。
【0081】
オキシム基としては、炭素原子数3〜10程度のものが望ましく、例えば、ジメチルケトオキシム基、メチルエチルケトオキシム基、ジエチルケトオキシム基、シクロペンタノキシム基、シクロヘキサノキシム基等が挙げられる。
【0082】
アミノ基としては、炭素原子数1〜10のものが望ましく、例えば、N−メチルアミノ基、N−エチルアミノ基、N−プロピルアミノ基、N−ブチルアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基等が挙げられる。
【0083】
アミド基としては、炭素原子数2〜10のものが望ましく、例えば、N−メチルアセトアミド基、N−エチルアセトアミド基、N−メチルベンズアミド基等が挙げられる。
アミノキシ基としては、ジメチルアミノキシ基、メチルエチルアミノキシ基、ジエチルアミノキシ基などが挙げられる。
【0084】
アルケニルオキシ基としては、炭素原子数が3〜10のものが望ましく、イソプロペノキシ基(−O−C(CH3)=CH2)、イソブチレノキシ基(−O−C(CH2CH3)=CH2)などが挙げられる。
【0085】
官能基Xとしては、これらの中でも、メトキシ基、エトキシ基、アセトキシ基、メチルエチルケトオキシム基、N-エチルアミノ基、N-エチルアセトアミド基、ジエチルアミノキシ基およびイソプロペノキシ基(−O−C(CH3)=CH2)が好ましく、メトキシ基およびエトキシ基が特に好ましい。
【0086】
<成分Bの具体例>
この成分(B)としては、たとえば下式(B1)〜(B3)で表される化合物(B1)〜(B3)、これらの部分加水分解物、およびこれらの縮合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を挙げることができる。
【0087】
すなわち、ケイ素含有化合物(B0)としては、たとえば下式(B1)〜(B3)で表される化合物(B1)〜(B3)を挙げることができる。
化合物(B1)
化合物(B1)は、下式(B1)で表される化合物である。
【0088】
(4-m-m')Si(Rbm'm ・・・(B1)
上記式(B1)において、mは1〜3の整数であり、m'は0〜2の整数であり、m+
m'≦3である。
【0089】
化合物(B1)の具体例としては、以下のような化合物が挙げられる;
【0090】
【化12】

【0091】
【化13】

【0092】
【化14】

【0093】
【化15】

【0094】
【化16】

【0095】
また、−R0−NHCOO−(R1O)n1−R2で表される親水性基Qを有する化合物(
B1)の例としては、
【0096】
【化17】

【0097】
が挙げられ、−R0−NHCH(OH)CH2O−(R1O)n1−R2で表される親水性基Qを有する化合物(B1)の例としては、
【0098】
【化18】

【0099】
が挙げられ、−R0−S−CH2CH(CH3)COO−(R1O)n1−R2で表される親水
性基Qを有する化合物(B1)の例としては
【0100】
【化19】

【0101】
が挙げられる。
化合物(B2)および(B2′)
化合物(B2)は、下記式(B2)で表される化合物である。
【0102】
【化20】

【0103】
上記式(B2)において、
複数個あるAは、それぞれ独立に、前記Q、前記Rbまたは前記Xのいずれかであり、
かつ
該Aの内の少なくとも1つは前記Qであると共に少なくとも1つは前記Xであり、
【0104】
【化21】

【0105】
は、互いに同一の、または異なる
【0106】
【化22】

【0107】
が、n個存在することを表し、
nは、0〜20,000の整数である。
化合物(B2)の具体例としては、以下のような化合物が挙げられる;
【0108】
【化23】

【0109】
また、化合物(B2′)は、下記式(B2′)で表される化合物である。
【0110】
【化24】

【0111】
上記式(B2′)において、
複数個あるAは、それぞれ独立に、前記Q、前記Rbまたは前記Xのいずれかであり、
かつ
該Aの内の少なくとも1つは前記Qであると共に少なくとも1つは前記Xであり、
【0112】
【化25】

【0113】
は、互いに同一の、または異なる
【0114】
【化26】

【0115】
が、p個存在することを表し、
pは3〜10の整数である。
化合物(B2′)の具体例としては、以下のような化合物が挙げられる;
【0116】
【化27】

【0117】
化合物(B3)
化合物(B3)は、ポリシルセスキオキサンと総称される化合物であり、(XSiO3/2)で表されるT単位、(QSiO3/2)で表されるT単位、および(ASiO3/2)で表
されるT単位〔ただし、Aは、前記Q、前記Rbまたは前記Xのいずれかである。〕を含
有する化合物であり、いわゆるシリコーンレジンタイプの化合物である。
【0118】
この化合物(B3)には、さらに(RSiO3/2)で表されるT単位、(QRSiO2/2)、(XRSiO2/2)または(R2SiO2/2)で表されるD単位、あるいは(QR2Si
1/2)、(Q2RSiO1/2)、(XR2SiO1/2)、(X2RSiO1/2)または(R3SiO1/2)で表されるM単位が含まれていてもよい。
【0119】
なお、化合物(B3)中に複数個のRが存在する場合、これら複数個のR同士は、互いに同一でも異なっていてもよい。親水性基Qおよび官能基Xについても同様である。
この化合物(B3)としては、具体的には、シリコーンレジン、
HO-(C2H4-O)3-C3H6-Si(-O-CH3)3とCH3-SiCl3との共加水分解生成物、
CH3-O-(C2H4-O)8-C3H6-Si(-O-C2H5)3とCH2=CH-Si(O-C2H5)3
(CH3)2Si(O-C2H5)2との共加水分解生成物、
【0120】
【化28】

【0121】
と正珪酸エチルとの共加水分解生成物、
CH3-Si(-O-N=C(CH3)(C2H5))3とCH3-O-(C2H4-O)3-C3H6-Si(CH3)(-O-CH3)2との共加水分
解生成物
などが挙げられる。
【0122】
上記成分(B)としては、上記化合物(B1)〜(B3)以外にも、
【0123】
【化29】

【0124】
などが挙げられる。
また、上記成分(B)としては、上記化合物(B1)同士、上記化合物(B2)同士、または上記化合物(B3)同士を反応させて得られる複合体、あるいは上記化合物(B1)、上記化合物(B2)および上記化合物(B3)のいずれかを組み合わせて反応させて得られる複合体、その部分加水分解物、およびこれらの縮合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物も用いることができ、その例としては
【0125】
【化30】

【0126】
などが挙げられる。
本発明で用いられる成分(B)は従来公知の方法により製造することができ、たとえば以下のような合成方法を挙げることができる。
【0127】
(RO)3Si-HとCH2=CHCH2-(O-C2H4)n-OCH3とを白金触媒等の存在下で反応させ、(RO)3Si-CH2CH2CH2-(O-C2H4)n-OCH3を得る方法
〔ただしRは炭化水素基、nは1以上の整数であり、以下の合成方法でも同様である。〕;
(RO)3Si-C3H6-NCOとHO-(C2H4-O)n-CH3とを反応させて、(RO)3Si-C3H6-NHCOO-(C2H4-O)n-CH3を得る方法;
(RO)3Si-C3H6-SHとCH2=C(CH3)COO-(C2H4-O)n-CH3とを反応させて、(RO)3Si-C3H6-S-CH2-CH(CH3)COO-(C2H4-O)n-CH3を得る方法;
(RO)3Si-C3H6-NH(CH3)とE-CH2-O-(C2H4-O)n-CH3とを反応させて、(RO)3Si-C3H6-NH(CH3)CH(OH)-CH2-O-(C2H4-O)n-CH3を得る方法
〔ただしE−は、
【0128】
【化31】

【0129】
を表す。〕。
成分(B)は、その種類によっても異なるが、前記オルガノポリシロキサン(A)100重量部に対し、通常は0.1〜200重量部、好ましくは0.5〜100重量部、さらに好ましくは1〜20重量部となる量で用いられることが望ましい。
【0130】
本発明のオルガノポリシロキサン親水性組成物に成分(B)が上記のような量で含まれていると、防汚性、低汚染性、汚染の自己洗浄性、帯電防止性などに優れた塗膜や硬化物が得られるため好ましい。
【0131】
(C)硬化触媒;
本発明で用いられることのある硬化触媒(C)としては、グアニジン、アミン系シランカップリング剤および有機金属化合物などが挙げられる。これらの硬化触媒は、1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。前記有機金属化合物としては、Sn、Ti、Zr、Pb、Alなどが挙げられる。
【0132】
具体的には、
ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジアセチルアセトナート、ジブチルスズネオデカネート、ジブチルスズ化合物と正ケイ酸エチルとの反応生成物、ジオクチルスズオキサイド、ジオクチルスズジステアレート、ジオクチルスズジ
ラウレート、ジオクチルスズジネオデカネート、ジオクチルスズ化合物と正ケイ酸エチルとの反応生成物、ビスマストリス(2−エチルヘキサノエート)、鉛−2−エチルオクトエート、ジブチルスズジオクトエート、ジブチルスズアセテート、ブチルスズ−2−エチルヘキソエート、鉄−2−エチルヘキソエート、コバルト−2−エチルヘキソエート、マンガン−2−エチルヘキソエート、亜鉛−2−エチルヘキソエート、カプリル酸第1スズ、ナフテン酸スズ、オレイン酸スズ、ブタン酸スズ、ナフテン酸チタン、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸亜鉛等の有機カルボン酸の金属塩;
テトラブチルチタネート、テトラ−2−エチルヘキシルチタネート、トリエタノールアミンチタネート、テトラ(イソプロペニルオキシ)チタネート等の有機チタン酸エステル;
オルガノシロキシチタン、β−カルボニルチタン等の有機チタン化合物;
アルコキシアルミニウム化合物、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン等のアミノアルキル基置換アルコキシシラン;
ヘキシルアミン、リン酸ドデシルアミン等のアミン化合物及びその塩;
ベンジルトリエチルアンモニウムアセテート等の第4級アンモニウム塩;
酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、臭酸リチウム等のアルカリ金属の低級脂肪酸塩;
ジメチルヒドロキシルアミン、ジエチルヒドロキシルアミン等のジアルキルヒドロキシルアミン;
H2NC3H6Si(OCH3)3、H2NC3H6Si(OC2H5)3、H(CH3)NC3H6Si(CH3)(OCH3)2、H(C6H5)NC3H6Si(OC2H5)2、H2NC2H4NHC3H6Si(OCH3)3、N-(ビニルベンジル)−β−アミノプルピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤;
下式:
【0133】
【化32】

【0134】
で表されるグアニジン化合物等及びグアニジル基含有シラン若しくはシロキサン等
などを挙げることができる。
この硬化触媒(C)は、その種類によっても異なるが、前記オルガノポリシロキサン(A)100重量部に対し、通常は0.001〜10重量部、好ましくは0.01〜5重量部となる量で用いられることが望ましい。
【0135】
硬化触媒(C)が上記のような量で用いられると、前記オルガノポリシロキサン(A)と前記シラン化合物および/またはその部分加水分解縮合物(B)との縮合反応を促進することができるため好ましい。
【0136】
(D)充填剤;
本発明で用いられることのある充填材(D)としては、粉砕石英、煙霧質シリカ、湿式シリカ、焼成シリカ等のシリカ;粉砕炭酸カルシウム、膠質炭酸カルシウム、合成炭酸カルシウム等の炭酸カルシウム;珪藻土、タルク、酸化チタン、水酸化アルミニウム、アルミナ、窒化アルミ、酸化亜鉛、炭酸亜鉛、酸化鉄、カーボンブラック、グラファイト、ガラスビーズなどが挙げられる。またこれらの表面をクロロシラン類、アルコキシシラン類、シラザン類、環状および直鎖状ジメチルポリシロキサンなどで疎水化処理したものなどが挙げられる。これらの充填剤は、1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0137】
この充填材(D)は、その種類によっても異なるが、前記オルガノポリシロキサン(A)100重量部に対し、通常は1〜500重量部、好ましくは5〜200重量部となる量で用いられることが望ましい。
【0138】
(E)添加剤;
本発明で用いられることのある添加剤(E)としては、接着性付与剤、たれ防止剤、防汚添加剤、防カビ剤、難燃性付与剤、硬化調整剤および着色顔料および有機金属化合物などが挙げられる。これらの添加剤は、1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0139】
この添加剤(E)は、その種類によっても異なるが、前記オルガノポリシロキサン(A)100重量部に対し、通常は0.001〜80重量部、好ましくは0.01〜50重量部となる量で用いられることが望ましい。
【0140】
(F)希釈剤;
本発明で用いられることのある希釈剤(F)としては、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、n-ヘキサン、石油ベンジン、ケロシン、リグロイン、低分子量揮発性シロキサンおよびシリコーンオイルなどが挙げられる。これらの希釈剤は、1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0141】
この希釈剤(F)は、その種類によっても異なるが、前記オルガノポリシロキサン(A)100重量部に対し、通常は0.5〜300重量部、好ましくは1〜100重量部となる量で用いられることが望ましい。
【0142】
希釈剤(F)が上記のような量で含まれていると、本発明のオルガノポリシロキサン親水性組成物の粘度を作業性が良好な範囲に設定することができ、はけ塗り、ローラー塗り、スプレー塗布などにより該組成物を塗装することができ、該組成物を微細な空隙へ浸透または含浸させることが可能となるため好ましい。
【0143】
(オルガノポリシロキサン親水性組成物)
本発明のオルガノポリシロキサン親水性組成物には、前記オルガノポリシロキサン(A)および前記ケイ素含有化合物(B0)、その部分加水分解物、およびこれらの縮合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物(B)、ならびに必要に応じてさらに前記硬化触媒(C)、前記充填材(D)、前記添加剤(E)、前記希釈剤(F)などが配合されている。これらの配合成分の攪拌・混合の際には、ペイントシェーカー、3本ロール、ロスミキサー、プラネタリーミキサー、万能品川攪拌機、2軸押し出し混合装置など、従来公知の混合・攪拌装置が適宜用いられる。
【0144】
前記オルガノポリシロキサン(A)と前記成分(B)とは、任意の組み合わせが可能あり、所望の硬化性・貯蔵安定性・梱包形態(1成分型や多成分型)が得られるように適宜組み合わせることができる。
【0145】
本発明のオルガノポリシロキサン親水性組成物は、前記親水性基Qが含有されているため、優れた防汚性、低汚染性、汚染の自己洗浄性、帯電防止性などを発揮する。
本発明のオルガノポリシロキサン親水性組成物を用いると、その成分である前記オルガノポリシロキサン(A)が、前記成分(B)によって架橋され、架橋点(前記成分(A)と前記成分(B)とが縮合重合した箇所)に前記親水性基Qが固定化された変性重合体が形成される。
【0146】
[船舶用防汚塗料、漁網用防汚塗料]
本発明のオルガノポリシロキサン親水性組成物は、船舶用防汚塗料および漁網用防汚塗料として用いることができる。このような船舶用防汚塗料および漁網用防汚塗料には、本発明のオルガノポリシロキサン親水性組成物の他に、ポリエーテル変性シリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、各種有機性官能基含有シリコーンオイル、グリセリン、パラフィン、フロロカーボン系オイルなどを含有させてもよい。
【0147】
本発明の船舶用防汚塗料または漁網用防汚塗料を用いると、親水性基Qの作用により、海洋生物の付着が少ない防汚塗膜を形成することができる。また前記成分(B)がオルガノポリシロキサン(A)に固定化されているために水中に溶出しないことから、防汚効果が長期にわたって持続する。
【0148】
また、その防汚作用は塗膜表面の親水性から本質的に得られるものであり、本発明の船舶用防汚塗料または漁網用防汚塗料は低毒性で海洋汚染が極めて少ない。
[自己洗浄性シール材、自己洗浄性塗料]
本発明のオルガノポリシロキサン親水性組成物は、自己洗浄性シール材(シーラント)または自己洗浄性塗料として用いることができる。ここで「自己洗浄性」とは、シール材あるいは塗膜の表面に付着した汚染物質が、雨水等の水による洗浄で容易に除去される性質をいう。このような自己洗浄性シール材(シーラント)または自己洗浄性塗料には、本発明のオルガノポリシロキサン親水性組成物の他に、ポリエーテル変性シリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、各種有機性官能基含有シリコーンオイル、シリコーンレジン、各種有機性官能基含有シリコーンレジン、フロロカーボン系オイルなどを含有させてもよい。
【0149】
本発明の自己洗浄性シール材または自己洗浄性塗料を用いると、シール材または塗料から形成される塗膜の表面が汚染されても、親水性基Qの作用により、水で汚染物質が効率よく洗い流されるため汚染が少ない。
【0150】
[建築用シール材、塗料]
本発明のオルガノポリシロキサン親水性組成物は、建築用シール材(シーラント)または建築用塗料として、特に低汚染性の建築用シール材または建築用塗料として用いることができる。このような建築用シール材(シーラント)または建築用塗料には、本発明のオルガノポリシロキサン親水性組成物の他に、ポリエーテル変性シリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、各種有機性官能基含有シリコーンオイル、シリコーンレジン、各種有機性官能基含有シリコーンレジン、フロロカーボン系オイルなどを含有させてもよい。
【0151】
本発明の建築用シール材および建築用塗料を用いると、シール材または塗料から形成される塗膜の表面が大気中に暴露されて汚染されても、付着した煤煙や塵埃などが疎水化されることが、親水性基Qの作用により妨げられると考えられる。したがって、雨水などで汚染物質が比較的容易に洗い流されるため、シール材または塗料から形成される塗膜の表面の汚染を低いレベルに留めることができる。
【0152】
[電気電子・一般工業用帯電防止塗料、シール材およびポッティング材]
本発明のオルガノポリシロキサン親水性組成物は、電気電子分野または一般工業分野での帯電防止塗料、シール材(シーラント)またはポッティング材として用いることができる。このような電気電子分野用または一般工業用の帯電防止塗料、シール材またはポッティング材には、本発明のオルガノポリシロキサン親水性組成物の他に、ポリエーテル変性シリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、各種有機性官能基含有シリコーンオイル、シリコーンレジン、各種有機性官能基含有シリコーンレジン、フロロカーボン系オイルなどを含有させてもよい。
【0153】
本発明の電気電子分野用または一般工業用の帯電防止塗料、シール材またはポッティング材は、帯電防止材などがブリードすることによる、表面の汚損や、電気特性の劣化をもたらすことがなく、帯電防止効果などの持続性もある。
【0154】
[型取り用組成物]
本発明のオルガノポリシロキサン親水性組成物は、型取り用組成物として用いることができる。このような型取り用組成物には、本発明のオルガノポリシロキサン親水性組成物の他に、ポリエーテル変性シリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、各種有機性官能基含有シリコーンオイル、シリコーンレジン、各種有機性官能基含有シリコーンレジン、グリセリン、パラフィン、フロロカーボン系オイルなどを含有させてもよい。これらの添加は内部硬化性、離型性、歯や人工義歯などの型取り印象性の向上に有用である。
【0155】
[塗膜、硬化物]
本発明の塗膜は、上記本発明のオルガノポリシロキサン親水性組成物を基材表面に塗布することにより形成できる。
【0156】
この基材としては、鉄、鋼、ステンレススチール、銅、黄銅、青銅、アルミ、ニッケル、亜鉛、半田やその鍍金されたものや合金などの金属類、ガラス、セラミック、石材、コンクリートスレートなどの無機物、木材、布、皮革、プラスチックおよび塗装された表面(塗膜表面)などが挙げられる。また、本発明の塗膜を硬化させてなる硬化塗膜の上に、さらに本発明の塗膜を形成してもよい。また付着性向上のための下塗り材・プライマーあるいはシーラーなどを用いてもよく、また表面改質のためのトップコートを塗布することもありうる。
【0157】
塗膜の厚さは、用途によっても異なり、特に限定されないが、たとえば1回の塗装につき10〜500μmである。
また、本発明の硬化物は、上記本発明のオルガノポリシロキサン親水性組成物または本発明の塗膜を硬化させることにより形成される。硬化反応は室温(たとえば25℃)で、または加熱することによって行なうことができる。
【0158】
本発明の硬化物は、前記オルガノポリシロキサン(A)と前記成分(B)とが架橋した構造の重合体(前記変性重合体)を含有している。この重合体には前記親水性基Qが導入されているため、本発明の硬化物は、前記親水性基Qに基づく物性を示す。
【0159】
従来のグラフト重合法によりポリシロキサン中に前記親水性基Qのような所望の官能基を導入しようとすると、重合体中でのこれらの官能基を規則的に配置させることは困難であり、また合成方法も面倒である。
【0160】
一方、本発明の組成物を用いれば、前記オルガノポリシロキサン(A)と前記成分(B)とを適切に選択することにより、親水性基Qを容易に規則的に配置させることが可能で
ある。そして親水性基Qを規則的に配置させることにより親水性を得ることが可能となる。親水性基が規則的でなく局在した場合は、シリコーン本来の疎水性の部分が強調され、結果的に親水性は得られない。
【0161】
また、前記オルガノポリシロキサン(A)の重合度は任意に調整が可能であり、重合度の小さいポリマーを用いた場合は本発明の組成物、塗膜および硬化物中の親水性基Qを増やすことになり、また重合度の大きなポリマーを用いた場合には親水性基Qを減らすことになるため、親水性基Qの濃度は広範囲で調整が可能である。
【0162】
[実施例]
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0163】
<原料>
使用された原料の詳細は以下のとおりである。
【0164】
【表1】

【0165】
<試験方法>
(1)塗装パネル汚損性
組成物を、混合脱泡した後、白色塗装したアルミパネル(縦:21cm×横:30cm×厚み:0.5cm)片表面の半分を覆うと共に乾燥膜厚(硬化膜厚)が20μmになるように、スプレーにより、気泡を含まないように塗布し、塗膜を形成した。この塗膜を室温で7日間かけて硬化させた後、塗布面を上方に向け、硬化塗膜が形成されたアルミパネルを、中国塗料(株)大竹研究所敷地内で、その表面が水平面に対して45度の角度をなすように設置し、大気に暴露した。
【0166】
所定月数経過後に、パネル上の組成物の塗布部と非塗布部とを比較し、組成物塗布部の汚損の程度を以下の基準で評価した。
5 汚損なし
4 5と3との中間程度の汚損
3 薄く汚損(灰色)
2 3と1との中間程度の汚損
1 黒く汚損。
【0167】
(2)海洋性生物防汚性
組成物を、防錆処理をした鉄板(縦:10cm×横:30cm×厚み:0.2cm))の両面に、スプレーを用いて、乾燥膜厚が50μmになるように、かつ均一に塗布し、塗膜を形成した。この塗膜を7日間かけて室温で硬化さた後、硬化塗膜が形成された鉄板を、広島県宮島沖に設置された筏から鉄板を海中に浸漬し、水深約1mの位置に、その平面が水平面に対して鉛直になるような向きで設置した。
【0168】
所定月数経過後に、海洋性生物の付着による硬化塗膜の汚損の程度を以下の基準で評価した。
5 汚損なし(生物の付着なし)
4 5と3との中間程度の汚損あり
3 一部汚損あり(生物が部分的に付着)
2 3と1との中間程度の汚損あり
1 汚損あり(生物が全面に付着)。
【0169】
[合成例1]
〔ポリエーテル変性基含有トリエトキシシラン(シラン1)の合成〕
攪拌機、水冷コンデンサー、温度計、滴下装置および加熱・冷却ジャケットを備えた反応容器に、メトキシポリエチレングリコールアリルエーテル(平均分子量:400)400重量部と触媒量の白金化合物とを仕込み、100℃まで加熱し、トリエトキシシラン181重量部を2時間かけて滴下した。滴下終了後、この反応系を100℃としたまま7時間保持した。
【0170】
IR分析を行ないSi−Hの吸収が消滅したことを確認後、過剰分のトリエトキシシランを減圧除去して、メトキシポリエチレングリコール変性トリエトキシシラン(以下「シラン1」ともいう。)を得た。
【0171】
[合成例2]
〔ポリエーテル変性基含有トリエトキシシラン(シラン2)の合成〕
攪拌機、水冷コンデンサー、温度計、滴下装置および加熱・冷却ジャケットを備えた反応容器に、ポリエチレングリコールアリルエーテル(平均分子量:200)200重量部と触媒量の白金化合物とを仕込み、70℃まで加熱し、γーイソシアネートプロピルトリエトキシシラン274重量部を5時間かけて滴下した。滴下終了後、この反応系を70℃としたまま30時間保持した。
【0172】
IR分析を行ないNCOの吸収が消滅したことを確認後、メトキシポリエチレングリコール変性トリエトキシシラン(以下「シラン2」ともいう。)を得た。
[合成例3]
〔ポリエーテル変性基含有トリスメチルエチルケトオキシムシラン(シラン3)の合成〕
攪拌機、水冷コンデンサー、温度計、滴下装置および加熱・冷却ジャケットを備えた反応容器に、上記シラン1を563重量部仕込み、90℃まで加熱し、メチルエチルケトオキシム287重量部を3時間かけて滴下した。
【0173】
副生したエタノールを除去して、ポリエーテル変性基含有トリスメチルエチルケトオキシムシラン(以下「シラン3」ともいう。)を得た。
[合成例4]
〔ポリエーテル変性基含有トリアセトキシシラン(シラン4)の合成〕
攪拌機、水冷コンデンサー、温度計、滴下装置および加熱・冷却ジャケットを備えた反応容器に、上記シラン1を563重量部仕込み、90℃まで加熱し、氷酢酸198重量部を2時間かけて滴下した。
【0174】
副生したエタノールを除去して、ポリエーテル変性基含有トリアセトキシシラン(以下「シラン4」ともいう。)を得た。
[合成例5]
〔ポリエーテル変性基含有アミノキシ基置換環状テトラシロキサン(シロキサン1)の合成〕
攪拌機、水冷コンデンサー、温度計、滴下装置および加熱・冷却ジャケットを備えた反応容器に、1,1,3,5,7-ペンタメチルシクロテトラシロキサン254重量部を仕込み、100℃まで加熱し、メトキシポリエチレングリコールアリルエーテル(平均分子量:400)400重量部と触媒量の白金化合物との混合物を2時間かけて滴下し、メトキシポリエチレングリコールが付加したシクロテトラシロキサンを得た。
【0175】
さらにジエチルヒドロキシルアミン196重量部を滴下して脱水素化反応を行ない、下式で表される、プロピレン基を介してメトキシポリエチレングリコールが一個付加しかつアミノキシ基が2個置換したシクロテトラシロキサンを主成分とするアミノキシ基置換体を得た。
【0176】
【化33】

【0177】
IR分析を行ないSi−Hの吸収が消滅したことを確認後、過剰分のジエチルヒドロキシルアミンを減圧除去して、ポリエーテル変性基含有環状テトラシロキサン(以下「シロキサン1」ともいう。)を得た。
[合成例6]
〔ポリエーテル変性基含有シロキサン(シロキサン2)の合成〕
攪拌機、水冷コンデンサー、温度計、滴下装置および加熱・冷却ジャケットを備えた反
応容器に、テトラエトキシシランを208重量部、および上記シラン2を474重量部仕込み、80℃まで加熱し、水3.5重量部とエタノール40重量部との混合物を2時間かけて滴下した。滴下終了後、この反応系を80℃としたまま3時間保持した。
【0178】
過剰分のおよび副生したエタノールを減圧除去して、ポリエーテル変性基含有シロキサン(以下「シロキサン2」ともいう。)を得た。
[合成例7]
〔ポリエーテル変性基含有トリメトキシシラン(シラン5)の合成〕
攪拌機、水冷コンデンサー、温度計、滴下装置および加熱・冷却ジャケットを備えた反応容器に、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(平均分子量:450重量部を仕込み、80℃まで加熱し、γーメルカプトプロピルトリメトキシシラン 196重量部を1時間かけて滴下した。滴下終了後、この反応系を100℃としたまま4時間保持し、平均分子式が
【0179】
【化34】

【0180】
で表される、メトキシポリエチレングリコール変性トリメトキシシラン(以下「シラン5」ともいう。)を得た。
[合成例8]
〔ポリエーテル変性基含有トリメトキシシラン(シラン6)の合成〕
攪拌機、水冷コンデンサー、温度計、滴下装置および加熱・冷却ジャケットを備えた反応容器に、エトキシポリエチレングリコールモノアクリレート(平均分子量:200)200重量部を仕込み、80℃まで加熱し、γーメルカプトプロピルトリメトキシシラン 196重量部を1時間かけて滴下した。滴下終了後、この反応系を100℃としたまま4時間保持し、平均分子式が
【0181】
【化35】

【0182】
で表される、エトキシポリエチレングリコール変性トリメトキシシシラン(以下「シラン6」ともいう。)を得た。
[実施例1]
両末端がシラノール基で封鎖されたポリジメチルシロキサン(α,ωジヒドロキシポリジメチルシロキサン、粘度:700mPa・s、25℃)90重量部と、煙霧質シリカ10重量部とを、3本ロール機を用いて均一になるまで練り込み、ベースコンパウンド1を得た。
【0183】
さらに、合成例1で調製したシラン1を5重量部と、ジブチルスズジラウレート0.1重量部とを混合した硬化剤を作成し、これをベースコンパウンド1に均一になるように混合し、さらにキシレン40重量部で希釈して、ポリジメチルシロキサン組成物(A−1)を得た。
【0184】
[実施例2]
シラン1に替えてシラン3を用いた以外は実施例1と同様にしてポリジメチルシロキサン組成物(A−2)を得た。
【0185】
[実施例3]
また、シラン1に替えてシラン4を用いた以外は実施例1と同様にしてポリジメチルシロキサン組成物(A−3)を得た。
【0186】
[比較例1]
シラン1に替えてメチルトリメトキシシランを用いた以外は実施例1と同様にしてポリジメチルシロキサン組成物(C−1)を得た。
【0187】
[比較例2]
シラン1に替えてビニルトリ(メチルエチル)ケトオキシムシランを用いた以外は実施例1と同様にしてポリジメチルシロキサン組成物(C−2)を得た。
【0188】
[比較例3]
シラン1に替えてメチルトリアセトキシシランを用いた以外は実施例1と同様にしてポリジメチルシロキサン組成物(C−3)を得た。
【0189】
これらのポリジメチルシロキサン組成物(A−1〜3、C−1〜3)を用いて、塗装パネル汚損性および海洋性生物防汚性を評価した。組成物中の各成分の配合比(単位:重量部)および試験結果を表2に示す。
【0190】
【表2】

【0191】
[実施例4〜14]
表3に示すように、各成分の種類および配合量を変えた他は実施例1と同様にして、ポリジメチルシロキサン組成物(A−4)〜(A−14)を調製し、各組成物について塗装パネル汚損性および防汚性を評価した。組成物中の各成分の配合比(単位:重量部)および試験結果を表3に示す。
【0192】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0193】
本発明のオルガノポリシロキサン親水性組成物を用いると、親水性の特殊官能基を有する変性重合体を形成することができ、この変性重合体を含有する塗膜や硬化物は、特殊官能基の作用によって、優れた防汚性、低汚染性、汚染の自己洗浄性、帯電防止性などを発揮する。
【0194】
したがって、本発明のオルガノポリシロキサン親水性組成物は、船舶用防汚塗料、漁網用防汚塗料、原子力および火力発電所などの海水導入管の防汚塗料、自己洗浄性のシーラントまたは塗料、建築用のシーラントまたは塗料、電気電子分野用または一般工業用の帯電防止塗料、シーラントまたはポッティング材、型取り用組成物などに好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)1分子中にシラノール基(Si−OH)を2個以上含有するオルガノポリシロキサンと、
(B)Si原子に結合した親水性基Qと、Si原子に結合し、該シラノール基(Si−OH)と縮合反応可能な官能基Xとを有する、
ケイ素含有化合物(B0)、その部分加水分解物、およびこれらの縮合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物と
を含有するオルガノポリシロキサン親水性組成物。
【請求項2】
前記親水性基Qが、−(R1O)n1−R2および−R0−Q′−(R1O)n1−R2
〔R0は、炭素原子数1〜5のアルキレン基であり、
1は、炭素原子数1〜10のアルキレン基であり、1つの親水性基Qの中に複数個のR1が存在する場合には、各R1は互いに同一であっても異なっていてもよく、
2は水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基または芳香族炭化水素
基であり、
−Q′−は、−NHCOO−、−NHCH(OH)CH2O−、−S−(CH22CO
O−または−S−CH2CH(CH3)COO−であり、
n1は、1〜50の整数である。〕
からなる群から選ばれる1種または2種以上の親水性基であることを特徴とする請求項1に記載のオルガノポリシロキサン親水性組成物。
【請求項3】
前記官能基Xが、アルコキシ基、脂肪族アシルオキシル基、芳香族アシルオキシル基、オキシム基、アミノ基、アミド基、アミノキシ基およびアルケニルオキシ基からなる群から選ばれる1種または2種以上の官能基であることを特徴とする請求項1または2に記載のオルガノポリシロキサン親水性組成物。
【請求項4】
前記ケイ素含有化合物(B0)が、下記式(B1)で表される化合物(B1)であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のオルガノポリシロキサン親水性組成物;
(4-m-m')Si(Rbm'm ・・・(B1)
〔Rbは、水素原子またはアルキル基、アリール基、アラルキル基もしくはアルケニル
基であり、
Q、RbおよびXのそれぞれは、複数個ある場合には、互いに同一であっても異なっ
ていてもよく、
mは1〜3の整数であり、m'は0〜2の整数であり、m+m'≦3である。〕。
【請求項5】
前記ケイ素含有化合物(B0)が、下記式(B2)で表される化合物(B2)、および/または下記式(B2′)で表される化合物(B2′)であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のオルガノポリシロキサン親水性組成物;
【化1】

〔式(B2)において、複数個あるAは、それぞれ独立に、前記Q、前記Rbまたは前記
Xのいずれかであり、かつ該Aの内の少なくとも1つは前記Qであると共に少なくとも1つは前記Xであり、
【化2】

は、互いに同一の、または異なる
【化3】

が、n個存在することを表し、
nは、0〜20,000の整数である。〕、
【化4】

〔式(B2′)において、複数個あるAは、それぞれ独立に、前記Q、前記Rbまたは前
記Xのいずれかであり、かつ該Aの内の少なくとも1つは前記Qであると共に少なくとも1つは前記Xであり、
【化5】

は、互いに同一の、または異なる
【化6】

が、p個存在することを表し、
pは3〜10の整数である。〕。
【請求項6】
前記ケイ素含有化合物(B0)が、
(XSiO3/2)で表されるT単位、(QSiO3/2)で表されるT単位、および(ASiO3/2)で表されるT単位〔ただし、Aは、前記Q、前記Rbまたは前記Xのいずれかである。〕を含有する化合物(B3)であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のオルガノポリシロキサン親水性組成物。
【請求項7】
前記オルガノポリシロキサン(A)の25℃における粘度が10〜1,000,000mPa・sであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のオルガノポリシロキ
サン親水性組成物。
【請求項8】
前記オルガノポリシロキサン(A)が、下記一般式(A1)で表されるオルガノポリシロキサンであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のオルガノポリシロキサン親水性組成物;
【化7】

〔式(A1)において、
kは該オルガノポリシロキサン(A1)の25℃における粘度を10〜1,000,000mPa・sとする整数であり、
各Raは、それぞれ独立に、水素原子またはアルキル基、アリール基、アラルキル基も
しくはアルケニル基である。〕。
【請求項9】
前記オルガノポリシロキサン(A)100重量部に対して、前記ケイ素含有化合物(B0)、その部分加水分解物、およびこれらの縮合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物(B)が0.1〜200重量部であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のオルガノポリシロキサン親水性組成物。
【請求項10】
さらに、硬化触媒(C)を含有することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のオルガノポリシロキサン親水性組成物。
【請求項11】
前記硬化触媒(C)が、アミン、グアニジン、アミン系シランカップリング剤および有機金属化合物からなる群から選ばれた1種または2種以上の硬化触媒であることを特徴とする請求項10に記載のオルガノポリシロキサン親水性組成物。
【請求項12】
さらに、充填剤(D)を含有することを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載のオルガノポリシロキサン親水性組成物。
【請求項13】
前記充填剤(D)が、粉砕石英、煙霧質シリカ、湿式シリカ、焼成シリカ等のシリカ、粉砕炭酸カルシウム、膠質炭酸カルシウム、合成炭酸カルシウム等の炭酸カルシウム、珪藻土、タルク、酸化チタン、水酸化アルミニウム、アルミナ、窒化アルミ、酸化亜鉛、炭酸亜鉛、酸化鉄、カーボンブラック、グラファイトおよびガラスビーズからなる群から選ばれた1種または2種以上であることを特徴とする請求項12に記載のオルガノポリシロキサン親水性組成物。
【請求項14】
前記充填剤(D)が、クロロシラン類、アルコキシシラン類、シラザン類、環状ジメチルポリシロキサンおよび直鎖状ジメチルポリシロキサンからなる群から選ばれた1種または2種以上により疎水化表面処理されていることを特徴とする請求項13に記載のオルガノポリシロキサン親水性組成物。
【請求項15】
さらに、接着性付与剤、たれ防止剤、防汚剤、防カビ剤、難燃性付与剤、硬化調整剤および着色顔料からなる群から選ばれた1種または2種以上の添加剤(E)を含有することを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載のオルガノポリシロキサン親水性組成物。
【請求項16】
さらに、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、メチルエチルケトン、
酢酸エチル、リグロイン低分子量揮発性シロキサンおよびシリコーンオイルからなる群から選ばれた1種または2種以上の希釈剤(F)を含有することを特徴とする請求項1〜15のいずれかに記載のオルガノポリシロキサン親水性組成物。
【請求項17】
さらに、
(A)1分子中にシラノール基(Si−OH)を2個以上含有するオルガノポリシロキサンと、
(B)Si原子に結合した親水性基Qと、Si原子に結合し、該シラノール基(Si−OH)と縮合反応可能な官能基Xとを有する、
ケイ素含有化合物(B0)、その部分加水分解物、およびこれらの縮合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物と
を架橋させてなる変性重合体を含有することを特徴とする請求項1〜16のいずれかに記載のオルガノポリシロキサン親水性組成物。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれかに記載されたオルガノポリシロキサン親水性組成物を含有する船舶用防汚塗料。
【請求項19】
請求項1〜17のいずれかに記載されたオルガノポリシロキサン親水性組成物を含有する漁網用防汚塗料。
【請求項20】
請求項1〜17のいずれかに記載されたオルガノポリシロキサン親水性組成物を含有する自己洗浄性シーラント。
【請求項21】
請求項1〜17のいずれかに記載されたオルガノポリシロキサン親水性組成物を含有する自己洗浄性塗料。
【請求項22】
請求項1〜17のいずれかに記載されたオルガノポリシロキサン親水性組成物を含有する建築用シーラント。
【請求項23】
請求項1〜17のいずれかに記載されたオルガノポリシロキサン親水性組成物を含有する建築用塗料。
【請求項24】
請求項1〜17のいずれかに記載されたオルガノポリシロキサン親水性組成物を含有する電気電子分野用帯電防止塗料。
【請求項25】
請求項1〜17のいずれかに記載されたオルガノポリシロキサン親水性組成物を含有する一般工業用帯電防止塗料。
【請求項26】
請求項1〜17のいずれかに記載されたオルガノポリシロキサン親水性組成物を含有する電気電子分野用帯電防止接着剤。
【請求項27】
請求項1〜17のいずれかに記載されたオルガノポリシロキサン親水性組成物を含有する一般工業用帯電防止接着剤。
【請求項28】
請求項1〜17のいずれかに記載されたオルガノポリシロキサン親水性組成物を含有する電気電子分野用帯電防止シーラント。
【請求項29】
請求項1〜17のいずれかに記載されたオルガノポリシロキサン親水性組成物を含有する一般工業用帯電防止シーラント。
【請求項30】
請求項1〜17のいずれかに記載されたオルガノポリシロキサン親水性組成物を含有する電気電子分野用ポッティング材。
【請求項31】
請求項1〜17のいずれかに記載されたオルガノポリシロキサン親水性組成物を含有する一般工業用ポッティング材。
【請求項32】
請求項1〜17のいずれかに記載されたオルガノポリシロキサン親水性組成物を含有する型取り用組成物。
【請求項33】
請求項1〜17のいずれかに記載されたオルガノポリシロキサン親水性組成物からなる塗膜。
【請求項34】
請求項1〜17のいずれかに記載されたオルガノポリシロキサン親水性組成物を硬化させてなる硬化物。
【請求項35】
(A)1分子中にシラノール基(Si−OH)を2個以上含有するオルガノポリシロキサンと、
(B)Si原子に結合した親水性基Qと、Si原子に結合し、該シラノール基(Si−OH)と縮合反応可能な官能基Xとを有する、
ケイ素含有化合物(B0)、その部分加水分解物、およびこれらの縮合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物と
を架橋させてなる変性重合体。

【公開番号】特開2007−238820(P2007−238820A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−64868(P2006−64868)
【出願日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(390033628)中国塗料株式会社 (57)
【Fターム(参考)】