説明

オルト位に官能基を有する芳香族ポリイミドから誘導される熱転位ポリマーを含むブレンドポリマー膜

本発明は、オルト位に官能基を有する芳香族ポリイミドから誘導される熱転位ポリマー(thermally rearranged polymers)を含むブレンドポリマー膜、ならびにこれらのブレンドポリマー膜を作製、および使用する方法を開示する。本発明で述べるブレンドポリマー膜は、−OHまたは−SH基などの官能基をオルト位に有する芳香族ポリイミドを含むブレンドポリマー膜の熱処理によって作製される。いくつかの例では、追加の架橋工程が実施され、膜の選択性が改善される。これらのブレンドポリマー膜は、単一のポリマーを含む同等のポリマー膜と比較して、改善された可撓性、低減されたコスト、改善された加工性、および高められた選択性および/または透過性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オルト位に官能基を有する芳香族ポリイミドから誘導される熱転位ポリマー(thermally rearranged polymers)を含む新しいタイプのブレンドポリマー膜、ならびにこれらのブレンドポリマー膜を作製、および使用する方法に関する。本発明のある態様では、ブレンドポリマー膜に追加の架橋工程を施して、膜の選択性を高めることができる。
【背景技術】
【0002】
膜に基づく技術は、低温蒸留、吸収、および吸着などの非常に古くからあって確立された技術と比較して、低設備コストおよび高エネルギー効率という両方の利点を有する。膜は、単独で、および他の方法と組み合わせて、エネルギー、環境資源回収、医療、およびその他の多くの技術的な問題を解決するための包括的な手法を提供する。過去30〜35年の間に、現行技術のポリマー膜に基づくガス分離プロセスが急速に発展してきた。膜ガス分離は、石油の製造業者および精製業者、化学企業、ならびに産業ガス供給業者にとって特に興味深いものである。天然ガスおよびバイオガスからの二酸化炭素除去、ならびにオイル回収の向上、さらにはアンモニアパージガス流における窒素、メタン、およびアルゴンからの水素の除去を含む、いくつかの用途が商業的な成功を遂げてきた。例えば、UOPのSeparex(商標)酢酸セルロースポリマー膜は、現在、天然ガスからの二酸化炭素除去における国際市場をリードしている。経済的および環境的により効率の高い分離へ向けての動きは、膜に基づく分離におけるより積極的な今後の成長をもたらすであろう。
【0003】
産業ガス分離用途で最も一般的に用いられる膜は、ポリマーおよび非多孔性の膜である。分離は、溶解−拡散メカニズムに基づいている。このメカニズムには、透過ガスと膜ポリマーとの分子スケールでの相互作用が関与している。このメカニズムでは、向かい合う2つの表面を有する膜において、各成分は一方の表面で膜に吸着され、ガス濃度勾配によって輸送され、逆側の表面で脱着されると仮定している。この溶解−拡散モデルによると、任意のガス対(例:CO/CH、O/N、H/CH)を分離する膜の性能は、2つのパラメータ:透過係数(以降Pと略す)および選択性(αA/B)、によって決定される。Pは、ガス流束と膜の選択性表面層厚さ(selective skin layer thickness)との積を膜の両側の圧力差で除したものである。αA/Bは、2つのガスの透過係数の比であり(αA/B=P/P)、ここで、Pは、透過性の高い方のガスの透過係数であり、Pは、透過性の低い方のガスの透過係数である。ガスは、溶解度係数が高いこと、拡散係数が高いこと、または両方の係数が高いことにより、高い透過係数を有し得る。一般的に、ガスの分子サイズが大きくなるに従って、拡散係数は減少し、溶解度係数は増加する。高性能ポリマー膜では、透過性が高まると、ある体積のガスの処理に必要とされる膜領域のサイズが減少し、それによって膜ユニットの設備コストが低減されること、および選択性が高まると、ガス生成物の純度が高められる結果となることから、高い透過性および選択性の両方が所望される。
【0004】
ポリマーは、低コスト、良好な透過性、機械的安定性、および加工のしやすさを含む、ガス分離にとって重要である様々な特性を提供する。高いガラス転移点(T)、高い融点、および高い結晶性を有するポリマー材料が好ましい。ガラス状ポリマー(すなわち、そのTよりも低い温度のポリマー)は、ポリマーバックボーンがより堅く、従って、堅さの低いバックボーンのポリマーと比較して、水素およびヘリウムなどのより小さい分子はより素早く透過させ、一方炭化水素などのより大きい分子は、よりゆっくり透過させる。しかし、透過性のより高いポリマーは、一般に、透過性のより低いポリマーよりも選択性が劣る。透過性と選択性との間の一般的なトレードオフは常に存在してきた(いわゆる、ポリマーの上限(polymer upper bound limit))。過去30年間にわたって、この上限によって課された限界を克服することを目的とした多大な研究努力が成されてきた。種々のポリマーおよび技術が用いられてきたが、大きな成功は得られていない。加えて、従来のポリマー膜はまた、熱安定性および汚染物質耐性という点で限界を有してもいる。
【0005】
ガス分離には、酢酸セルロース(CA)ガラス状ポリマー膜が広く用いられている。現在、そのようなCA膜は、二酸化炭素の除去を含む天然ガスのグレードアップに用いられている。CA膜は多くの利点を有するが、選択性、透過性、ならびに化学、熱、および機械的安定性を含む数多くの特性に限界がある。例えば、UOPの初期のフィールド実践では、ポリマー膜の性能は急速に悪化し得ることが見出された。膜性能の喪失の主たる原因は、膜表面における液体の凝縮である。凝縮は、膜生成ガスの算出される露点に基づいて、運転時の露点に十分な余裕を持たせることで防止される。モレキュラーシーブを用いる再生可能吸着剤システムであるUOPのMemGuard(商標)システムは、天然ガス流から水ならびに重質炭化水素を除去し、それによってガス流の露点を低下させるために開発された。前処理システムによって重質炭化水素を選択的に除去することにより、膜の性能を大幅に改善することができる。このような前処理システムは、天然ガス流から重質炭化水素を効果的に除去して露点を低下させることができるが、そのコストは非常に大きい。いくつかのプロジェクトから、前処理システムのコストは、フィード組成に応じて、総コスト(前処理システムと膜システム)の10から40%の大きさであることが示された。この前処理システムのコストを下げること、または前処理システムを完全に除去することができれば、天然ガスグレードアップのための膜システムのコストは大幅に低減されるであろう。他方、近年、ますます多くの膜システムが大型の海洋天然ガスグレードアッププロジェクトに適用されてきた。海洋プロジェクトの場合、占有面積が大きな制約である。従って、海洋プロジェクトでは、占有面積の削減が非常に重要である。前処理システムはその占有面積も、膜システム全体の占有面積の10〜50%超と、非常に大きい。膜システムから前処理システムを取り除くことは、特に海洋プロジェクトにとって、大きな経済的影響を持つ。
【0006】
ポリイミド(PI)、ポリ(トリメチルシリルプロピン)(PTMSP)、およびポリトリアゾールなどの高性能ポリマーが、膜の選択性、透過性、および熱安定性の向上のために最近開発された。これらのポリマー膜材料は、CO/CH、O/N、H/CH、およびプロピレン/プロパン(C/C)などのガス対の分離に対して有望な特性を示している。しかし、現在のポリマー膜材料は、その生産性−選択性のトレードオフの関係において限界に達している。加えて、ガラス状の溶解−拡散膜の使用に基づくガス分離プロセスは、COまたはCなどの吸着した浸透分子(penetrant molecules)によって堅いポリマーマトリックスが可塑化してしまうことが多い。膜構造の膨潤およびフィード内の全成分の透過性の著しい上昇として現れるポリマーの可塑化は、フィードガス混合物が凝縮性ガスを含有する場合に、可塑化圧力よりも高い圧力で発生する。
【0007】
芳香族ポリベンゾオキサゾール(PBO)、ポリベンゾチアゾール(PBT)、およびポリベンゾイミダゾール(PBI)は、平面で堅く、剛性棒状のフェニレン−ヘテロ環式環ユニットを有するラダー型ガラス状ポリマーである。そのようなポリマーの堅く剛性の環ユニットは、効率的に充填されるため、浸透物が利用し得る自由体積要素が非常に小さくなり、これは高透過性および高選択性の両方を有するポリマー膜に所望されるものである。しかし、高い熱および化学安定性を持つこれらのPBO、PBT、およびPBIポリマーは、一般的な有機溶媒中の溶解性が低く、このために、最も実用的な溶媒キャスト法によるポリマー膜の作製のための一般的なポリマー材料として用いられない。ポリマーバックボーン中のへテロ環イミド窒素に対するオルト位にペンダント官能基を持つ芳香族ポリイミド膜をPBO、PBT、またはPBIポリマー膜へ熱変換すれば、PBO、PBT、またはPBIポリマーから直接得ることが困難、または不可能であるPBO、PBT、またはPBIポリマー膜を作製するための別の選択肢としての方法を提供することができるであろう。
【0008】
SCIENCE誌での最近の発表では、ガス分離用の新しいタイプの高透過性熱転位ポリベンゾオキサゾールポリマー膜が報告された(Ho Bum Park et al, SCIENCE 318, 254 (2007))。この熱転位ポリベンゾオキサゾール膜は、へテロ環イミド窒素に対するオルト位にペンダントヒドロキシル基を持つヒドロキシ含有ポリイミドポリマー膜の高温熱処理から作製される。これらのポリベンゾオキサゾールポリマー膜は、いくつかのモレキュラーシーブ膜に類似する極めて高いCO透過性(>1000Barrer)を示したが、CO/CH選択性は、CO/CH分離用のいくつかの細孔無機モレキュラーシーブ膜よりも低かった。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、オルト位に官能基を有する芳香族ポリイミドから誘導される熱転位ポリマーを含む新しいタイプのブレンドポリマー膜、ならびにこれらのブレンドポリマー膜を作製、および使用する方法を開示する。熱転位ポリマーを含むこの新しいブレンドポリマー膜は、低コスト、易加工性、良好な可撓性、高い選択性および高い透過性(もしくは浸透性)の両方、高い熱安定性、および安定な流束、ならびに溶媒膨潤、可塑化、および炭化水素汚染物に対する耐性により経時の選択性が維持されること、という利点を有する。
【0010】
本発明は、オルト位に官能基を有する芳香族ポリイミドから誘導される熱転位ポリマーを含む新規なブレンドポリマー膜、ならびにこれらのブレンドポリマー膜を作製、および使用する方法に関する。
【0011】
本発明で述べるオルト位に官能基を有する芳香族ポリイミドから誘導される熱転位ポリマーを含む新規なブレンドポリマー膜は、−OHまたは−SH基などの官能基をオルト位に有する芳香族ポリイミドを含むブレンドポリマー膜の熱処理によって作製される。−OHまたは−SH基などの官能基をオルト位に有する芳香族ポリイミドは、熱処理プロセスの過程で不可逆的な分子再構成を起こし、芳香族PBO(オルト位の官能基が−OH基の場合)またはPBT(オルト位の官能基が−SH基の場合)などの熱転位ポリマーに変換される。
【0012】
本発明の別の態様では、本発明は、化学もしくはUV架橋、または当業者に公知のその他の架橋プロセスにより、追加の架橋工程を施されたブレンドポリマー膜に関する。得られる架橋ブレンドポリマー膜は、オルト位に官能基を有する芳香族ポリイミドから誘導される芳香族ポリベンゾオキサゾール(PBO)またはポリベンゾチアゾール(PBT)ポリマーなどの少なくとも1つの熱転位ポリマーを含むブレンドポリマー膜中の少なくとも1つのポリマーのUV架橋によって作製することができる。この熱転位ポリマー含有ブレンドポリマー膜中の少なくとも1つのポリマーは、ベンゾフェノン基などのUV架橋性官能基を有する。UV架橋性官能基は、芳香族PBOもしくはPBTポリマーなどの熱転位ポリマー中にあっても、または熱転位ポリマー含有ブレンドポリマー膜中の他の異なる種類のポリマー中にあってもよい。UV架橋後、架橋ブレンドポリマー膜は、その少なくとも一部分がUV放射線への曝露によって恐らくは直接の共有結合を介して互いに架橋されているポリマー鎖セグメントを含む。芳香族PBOまたはPBTなどの少なくとも1つの熱転位ポリマーを含むブレンドポリマー膜の架橋により、芳香族PBOまたはPBTなどの少なくとも1つの熱転位ポリマーを含む対応する非架橋のブレンドポリマー膜と比較して、優れた選択性ならびに向上された化学および熱安定性が膜に付与される。
【0013】
オルト位に官能基を有する芳香族ポリイミドから誘導される熱転位ポリマーを含む新規なブレンドポリマー膜は、オルト位に官能基を有する芳香族ポリイミドから誘導される純粋な熱転位ポリマー膜と比較して、可撓性が改善し、コストが低下し、加工性が向上し、選択性および/または透過性が高められている。
【0014】
本発明は、熱転位ポリマーを含むブレンドポリマー膜の作製方法を提供し、それは:1)まず、ポリマーバックボーン中のへテロ環イミド窒素に対するオルト位にペンダント官能基(例:−OHまたは−SH)を持つ芳香族ポリイミドを合成すること;2)オルト位に官能基を持つこの芳香族ポリイミドおよび別の異なるポリマーからブレンドポリマー膜を作製すること;及び、3)このブレンドポリマー膜を、アルゴン、窒素、または真空などの不活性雰囲気下にて300から600℃で加熱することにより、芳香族ポリベンゾオキサゾール(PBO)またはポリベンゾチアゾール(PBT)などの熱転位ポリマーを含むブレンドポリマー膜へ変換すること、による。場合によっては、このブレンドポリマー膜を次に、UV照射またはその他の架橋工程により、高性能架橋ブレンドポリマー膜へ変換してよい。加えて、場合によっては、工程3)の後に、ポリシロキサン、フルオロポリマー、熱硬化性シリコーンゴム、またはUV放射線硬化性エポキシシリコーンなどの高透過性材料の薄層をブレンドポリマー膜の選択性層表面にコーティングすることによる、膜後処理工程を追加してよい。
【0015】
本発明のオルト位に官能基を有する芳香族ポリイミドから誘導される熱転位ポリマーを含む新規なブレンドポリマー膜は、非多孔性もしくは多孔性対称構造、多孔性支持層上に支持された非多孔性もしくは多孔性選択性薄層を有し、両層共に熱転位ポリマーを含むブレンドポリマーから作製された非対称構造、または異なるポリマー材料もしくは無機材料から作製された多孔性支持層上に支持された、熱転位ポリマーを含むブレンドポリマーから作製された非多孔性もしくは多孔性選択性薄層を有する非対称構造のいずれかを有していてよい。本発明の熱転位ポリマーを含む新規なブレンドポリマー膜は、平面シート(もしくは渦巻き型)、ディスク、チューブ、中空繊維、または薄膜複合体などの好都合であるいかなる形状に作製してもよい。
【0016】
本発明は、本発明で述べる熱転位ポリマーを含むブレンドポリマー膜を用いて、ガスまたは液体の混合物から少なくとも1つのガスまたは液体を分離するための方法を提供し、この方法は、(a)少なくとも1つのガスまたは液体に対して透過性である熱転位ポリマーを含むブレンドポリマー膜を提供すること;(b)熱転位ポリマーを含むブレンドポリマー膜の一方の側に混合物を接触させて、前記少なくとも1つのガスまたは液体をブレンドポリマー膜に透過させること;及び、(c)前記膜を透過した前記少なくとも1つのガスまたは液体の一部を含む透過ガス組成物または透過液体組成物を、膜の反対側から取り出すこと、を含む。
【0017】
本発明の熱転位ポリマーを含むブレンドポリマー膜は、逆浸透による水の脱塩、ガソリンおよびディーゼル燃料の深度脱硫などの非水液体分離、エタノール/水分離、水性/有機混合物の浸透気化脱水(pervaporation dehydration)、CO/CH、CO/N、H/CH、O/N、HS/CH、オレフィン/パラフィン、イソ/ノルマルパラフィン分離、ならびにその他の軽質ガス混合物分離などの種々の液体、ガス、および蒸気分離に適するだけでなく、触媒および燃料電池用途などのその他の用途にも用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
1999年、Tullos et al.は、へテロ環イミド窒素に対してオルト位にペンダントヒドロキシル基を持つ一連のヒドロキシ含有ポリイミドポリマーの合成について報告した。これらのポリイミドは、窒素または真空下、350から500℃で加熱することにより、ポリベンゾオキサゾール(PBO)への熱変換を起こすことが見出された。Tullos et al, MACROMOLECULES, 32, 3598 (1999)を参照されたい。
【0019】
芳香族ポリベンゾオキサゾール(PBO)、ポリベンゾチアゾール(PBT)、およびポリベンゾイミダゾール(PBI)は、平面で堅く、剛性棒状のフェニレン−ヘテロ環式環ユニットを有するラダー型ガラス状ポリマーである。そのようなポリマーの堅く剛性の環ユニットは、効率的に充填されるため、高透過性および高選択性の両方を有するポリマー膜に所望される、良好に接続された形態を持つ、浸透物が利用し得る自由体積要素が非常に小さくなる。しかし、高い熱および化学安定性を持つこれらのPBO、PBT、およびPBIポリマーは、一般的な有機溶媒中の溶解性が低く、このために、最も実用的な溶媒キャスト法によるポリマー膜の作製のための一般的なポリマー材料として用いられない。ポリマーバックボーン中のへテロ環イミド窒素に対するオルト位にペンダント官能基を持つ芳香族ポリイミド膜をPBO、PBT、またはPBIポリマー膜へ熱変換すれば、PBO、PBT、またはPBIポリマーから直接得ることが困難、または不可能であるPBO、PBT、またはPBIポリマー膜を作製するための別の選択肢としての方法を提供することができるであろう。
【0020】
Science誌での最近の発表では、350〜450℃での不可逆的な分子再構成により、ポリマーバックボーン中のへテロ環イミド窒素に対するオルト位にペンダント−OH基を持つ芳香族ポリイミド膜から、熱転位PBOポリマー膜を作製する研究が報告された。Ho Bum Park et al, SCIENCE, 318, 254 (2007)を参照されたい。これらの熱転位PBOポリマー膜は、いくつかの無機モレキュラーシーブ膜に類似する極めて高いCO透過性(>1000Barrer)を示したが、CO/CH選択性は、CO/CH分離用のいくつかの細孔無機モレキュラーシーブ膜よりも低かった。
【0021】
本発明は、オルト位に官能基を有する芳香族ポリイミドから誘導される熱転位ポリマーを含む新規なブレンドポリマー膜、ならびにこれらのブレンドポリマー膜を作製、および使用する方法を含む。本発明のある態様では、このブレンドポリマー膜に、追加の架橋工程を施して、膜の選択性を高めることができる。
【0022】
本発明における「ブレンドポリマー膜」という用語は、2もしくは3つ以上のポリマーのブレンドから作製された膜を意味する。本発明で述べるオルト位に官能基を有する芳香族ポリイミドから誘導される熱転位ポリマーを含むブレンドポリマー膜は、2もしくは3つ以上のポリマーのブレンドを含有し、ここで、少なくとも1つのポリマーが、−OHまたは−SH基などの官能基をオルト位に有する芳香族ポリイミドから誘導される、ポリベンゾオキサゾール(PBO)またはポリベンゾチアゾール(PBT)ポリマーなどの熱転位ポリマーである。−OHまたは−SH基などの官能基をオルト位に有する芳香族ポリイミドは、熱処理プロセスの過程で不可逆的な分子再構成を起こし、芳香族PBO(オルト位の官能基が−OH基の場合)またはPBT(オルト位の官能基が−SH基の場合)などの熱転位ポリマーに変換される。
【0023】
場合によっては、ブレンドポリマー膜を架橋して、膜の選択性を向上させることが望ましい。本発明で述べる架橋ブレンドポリマー膜は、オルト位に官能基を有する芳香族ポリイミドから誘導される少なくとも1つの熱転位ポリマーを含むブレンドポリマー膜中の少なくとも1つのポリマーをUV架橋することで作製される。この熱転位ポリマー含有ブレンドポリマー膜中の少なくとも1つのポリマーは、ベンゾフェノン基などのUV架橋性官能基を有する。UV架橋性官能基は、PBOもしくはPBTポリマーなどの熱転位ポリマー中にあっても、または熱転位ポリマー含有ブレンドポリマー膜中の他の異なる種類のポリマー中にあってもよい。UV架橋後、架橋ブレンドポリマー膜は、ポリマー鎖セグメントを含み、ここで、これらのポリマー鎖セグメントの少なくとも一部分がUV放射線への曝露によって恐らくは直接の共有結合を介して互いに架橋されている。ブレンドポリマー膜の架橋により、芳香族PBOまたはPBTなどの少なくとも1つの熱転位ポリマーを含む対応する非架橋のブレンドポリマー膜と比較して、優れた選択性ならびに向上された化学および熱安定性を持つ膜が提供される。
【0024】
オルト位に官能基を有する芳香族ポリイミドから誘導される熱転位ポリマーを含むブレンドポリマー膜は、オルト位に官能基を有する芳香族ポリイミドから誘導される対応する純粋な熱転位ポリマー膜と比較して、可撓性が改善し、コストが低下し、加工性が向上し、選択性および/または透過性が高められている。加えて、熱転位ポリマーを含むブレンドポリマー膜は、高い熱および化学安定性、ならびに安定な流束、ならびに溶媒膨潤、可塑化、および炭化水素汚染物に対する耐性により経時で維持される選択性、を有する。
【0025】
本発明は、熱転位ポリマーを含むブレンドポリマー膜の作製方法を提供し、それは:1)まず、ポリマーバックボーン中のへテロ環イミド窒素に対するオルト位にペンダント官能基(例:−OHまたは−SH)を持つ芳香族ポリイミドを合成すること;2)オルト位に官能基を持つこの芳香族ポリイミドおよび別の異なるガラス状ポリマーからブレンドポリマー膜を作製すること;及び、3)このブレンドポリマー膜を、アルゴン、窒素、または真空などの不活性雰囲気下にて300から600℃で加熱することにより、芳香族ポリベンゾオキサゾール(PBO)またはポリベンゾチアゾール(PBT)などの熱転位ポリマーを含むブレンドポリマー膜へ変換すること、による。場合によっては、このブレンドポリマー膜を次に、UV放射線またはその他の架橋工程により、高性能架橋ブレンドポリマー膜へ変換してよい。加えて、場合によっては、工程3)の後に、ポリシロキサン、フルオロポリマー、熱硬化性シリコーンゴム、またはUV放射線硬化性エポキシシリコーンなどの高透過性材料の薄層をブレンドポリマー膜の選択性層表面にコーティングすることによる、膜後処理工程を追加してよい。
【0026】
本発明のオルト位に官能基を有する芳香族ポリイミドから誘導される熱転位ポリマーを含むブレンドポリマー膜の作製に用いられる、ポリマーバックボーン中のへテロ環イミド窒素に対するオルト位にペンダント官能基(例:−OHまたは−SH)を持つ芳香族ポリイミドは、式(I)の第一の繰り返しユニットを複数含み、ここで、前記式(I)は:
【0027】
【化1】

【0028】
であり、
ここで、前記式(I)の−X−は、
【0029】
【化2】

【0030】
およびこれらの混合物から成る群より選択され、前記式(I)の−X−は、
【0031】
【化3】

【0032】
およびこれらの混合物から成る群より選択され、そして、−R−は、
【0033】
【化4】

【0034】
およびこれらの混合物から成る群より選択される。
ブレンドポリマー膜が架橋工程を施される場合、ブレンドポリマー膜中のポリマーが、UV架橋性官能基などの架橋性官能基を有する必要がある。例えば、UV放射線によってブレンドポリマー膜を高性能架橋ブレンドポリマー膜に変換するために、およびブレンドポリマー膜中の第二のポリマーがUV架橋性官能基を持たない場合、オルト位に官能基(例:−OHまたは−SH)を持つ芳香族ポリイミドは、式(I)を有するポリイミドから選択され、カルボニル(−CO−)基などのUV架橋性官能基を持つ必要があり、ここで、式(I)のXは、
【0035】
【化5】

【0036】
またはこれらの混合物の組成を有する部分である。
本発明のオルト位に官能基を持つ芳香族ポリイミドを含むブレンドポリマー膜中の第二のポリマーがUV架橋性官能基を有する場合、オルト位に官能基(例:−OHまたは−SH)を持つ芳香族ポリイミドは、UV架橋性官能基を持つ必要がなく、式(I)のポリイミドのいずれから選択されてもよい。
【0037】
本発明のオルト位に官能基を有する芳香族ポリイミドから誘導される熱転位ポリマーを含むブレンドポリマー膜の作製に用いられる、ポリマーバックボーン中のへテロ環イミド窒素に対するオルト位にペンダント官能基(例:−OHまたは−SH)を含むいくつかの好ましい芳香族ポリイミドとしては、これらに限定されないが、ポリ[2,2’−ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物−2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン](ポリ(6FDA−APAF))、ポリ[3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物−2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン](ポリ(BTDA−APAF))、ポリ(3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物−3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノ−ビフェニル)(ポリ(BTDA−HAB))、ポリ[4,4’−オキシジフタル酸無水物−2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン](ポリ(ODPA−APAF))、ポリ[3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物−2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン](ポリ(DSDA−APAF))、ポリ(3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物−3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノ−ビフェニル)(ポリ(DSDA−HAB))、ポリ[2,2’−ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物−3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物−2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン](ポリ(6FDA−BTDA−APAF))、ポリ[4,4’−オキシジフタル酸無水物−2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン−3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノ−ビフェニル](ポリ(ODPA−APAF−HAB))、ポリ[3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物−2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン−3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノ−ビフェニル](ポリ(BTDA−APAF−HAB))、ポリ[2,2’−ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物−3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノ−ビフェニル](ポリ(6FDA−HAB))、および、ポリ(4,4’−ビスフェノールA二無水物−3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物−2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン](ポリ(BPADA−BTDA−APAF))が挙げられる。
【0038】
本発明のオルト位に官能基を有する芳香族ポリイミドから誘導される熱転位ポリマーを含むブレンドポリマー膜の作製に用いられる、ポリマーバックボーン中のへテロ環イミド窒素に対するオルト位にペンダント官能基(例:−OHまたは−SH)を含む芳香族ポリイミドは、1−メチル−2−ピロリドン(NMP)またはN,N−ジメチルアセタミド(DMAc)などの極性溶媒中、ポリアミック酸の形成、およびこれに続く溶液イミド化または熱イミド化を含む2段階プロセスにより、ジアミンと二無水物とから合成される。溶液イミド化反応の場合、無水酢酸が脱水剤として用いられ、ピリジン(またはトリエチルアミン)がイミド化触媒として用いられる。
【0039】
本発明で述べるオルト位に官能基を有する芳香族ポリイミドを含むブレンドポリマー膜中の第二のガラス状ポリマーは、オルト位に官能基を有する芳香族ポリイミドとは異なるものであり、ガラス転移点(Tg)が高く、低コスト、易加工性であるガラス状ポリマーから選択される。ブレンドポリマー膜中の第二のガラス状ポリマーは、50℃、および690kPa(100psig)の純粋二酸化炭素またはメタン圧力下にて、メタンに対する二酸化炭素の選択性が少なくとも8、より好ましくは少なくとも10であることが好ましい。
【0040】
本発明で述べるオルト位に官能基を有する芳香族ポリイミドを含むブレンドポリマー膜中の第二のガラス状ポリマーとしては、これらに限定されないが、ポリスルホン;スルホン化ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;スルホン化ポリエーテルスルホン;ポリビニルピロリドン;GEプラスチックス製、Ultem(登録商標)の商標で市販されているUltem(またはUltem1000)などのポリエーテルイミド;酢酸セルロースおよび三酢酸セルロースなどのセルロース系ポリマー;ポリアミド;ハンツマンアドバンストマテリアルズ(Huntsman Advanced Materials)製、Matrimid(登録商標)の商標で市販されているMatrimid(Matrimid(登録商標)5218はMatrimid(登録商標)の商標で市販されている特定のポリイミドポリマーを意味する)ならびにHPポリマーズ社(HP Polymers GmbH)製、それぞれP84およびP84HTの商標で市販されているP84またはP84HT、などのポリイミド;ポリアミド/イミド;ポリケトン、ポリエーテルケトン;ポリ(フェニレンオキシド)およびポリ(キシレンオキシド)などのポリ(アリーレンオキシド);ポリ(エステルアミド−ジイソシアネート);ポリウレタン;ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(アルキルメタクリレート)、ポリ(アクリレート)、およびポリ(フェニレンテレフタレート)などのポリエステル(ポリアリレートを含む);ポリスルフィド;ポリ(エチレン)、ポリ(プロピレン)、ポリ(ブテン−1)、ポリ(4−メチルペンテン−1)、ポリビニル、例えばポリ(塩化ビニル)、ポリ(フッ化ビニル)、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(酢酸ビニル)およびポリ(プロピオン酸ビニル)などのポリ(ビニルエステル)、ポリ(ビニルピリジン)、ポリ(ビニルエーテル)、ポリ(ビニルケトン)、ポリ(ビニルホルマール)およびポリ(ビニルブチラール)などのポリ(ビニルアルデヒド)、ポリ(ビニルアミド)、ポリ(ビニルアミン)、ポリ(ビニルウレタン)、ポリ(ビニルウレア)、ポリ(ビニルホスフェート)、ならびにポリ(ビニルサルフェート)を含む、これまでに挙げられたポリマーに加えてアルファ−オレフィン性不飽和を有するモノマーからのポリマー;ポリアリル;ポリ(ベンゾベンゾイミダゾール);ポリヒドラジド;ポリオキサジアゾール;ポリトリアゾール;ポリカルボジイミド;ポリホスファジン;固有の微孔性を持つポリマー;ならびに、アクリロニトリル−臭化ビニル−パラスルホフェニルメタリルエーテルナトリウム塩の共重合体などの上記のポリマーからの繰り返しユニットを含有するブロック共重合体を含む共重合体;ならびに、上記のポリマーのいずれかを含有するグラフトおよびブレンド、から選択することができる。置換ポリマーを提供する典型的な置換基としては、フッ素、塩素、および臭素などのハロゲン;ヒドロキシル基;低級アルキル基;低級アルコキシ基;単環式アリール;ならびに低級アクリル基が挙げられる。
【0041】
ブレンドポリマー膜に用いられるが、本発明で述べるオルト位に官能基を有する芳香族ポリイミドとは異なるいくつかの好ましいガラス状ポリマーとしては、これらに限定されないが、ポリスルホン、スルホン化ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリエーテルスルホン、GEプラスチックス製でありGEポリマーランドから入手可能であるUltem(登録商標)の商標で市販されているUltem(またはUltem1000)などのポリエーテルイミド、酢酸セルロースおよび三酢酸セルロースなどのセルロース系ポリマー、ポリアミド;ハンツマンアドバンストマテリアルズ製、Matrimid(登録商標)の商標で市販されているMatrimid(Matrimid(登録商標)5218はMatrimid(登録商標)の商標で市販されている特定のポリイミドポリマーを意味する)、HPポリマーズ社製、それぞれP84およびP84HTの商標で市販されているP84またはP84HT、ポリ(3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物−ピロメリット酸二無水物−3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−メチレンジアニリン)(ポリ(BTDA−PMDA−TMMDA))、ポリ(3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物−ピロメリット酸二無水物−4,4’−オキシジフタル酸無水物−3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−メチレンジアニリン)(ポリ(BTDA−PMDA−ODPA−TMMDA))、ポリ(3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物−3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−メチレンジアニリン)(ポリ(DSDA−TMMDA))、ポリ(3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物−3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−メチレンジアニリン)(ポリ(BTDA−TMMDA))、ポリ(3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物−ピロメリット酸二無水物−3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−メチレンジアニリン)(ポリ(DSDA−PMDA−TMMDA))、ポリ[2,2’−ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物−1,3−フェニレンジアミン](ポリ(6FDA−m−PDA))、ポリ[2,2’−ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物−1,3−フェニレンジアミン−3,5−ジアミノ安息香酸)](ポリ(6FDA−m−PDA−DABA))などのポリイミド;ポリアミド/イミド;ポリケトン、ポリエーテルケトン;ポリビニルピロリドン;ならびに、固有の微孔性を持つポリマー、が挙げられる。
【0042】
ブレンドポリマー膜に用いられるが、本発明で述べるオルト位に官能基を有する芳香族ポリイミドとは異なる最も好ましいガラス状ポリマーとしては、これらに限定されないが、Matrimid(登録商標)、P84(登録商標)、ポリ(BTDA−PMDA−TMMDA)、ポリ(BTDA−PMDA−ODPA−TMMDA)、ポリ(DSDA−TMMDA)、ポリ(BTDA−TMMDA)、またはポリ(DSDA−PMDA−TMMDA)などのポリイミド、Ultem(登録商標)などのポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリビニルピロリドン、および固有の微孔性を持つポリマー、が挙げられる。
【0043】
本発明で述べるオルト位に官能基を有する芳香族ポリイミドを含むブレンドポリマー膜は、非多孔性もしくは多孔性対称構造、多孔性支持層上に支持された非多孔性もしくは多孔性選択性薄層を有し、両層共にブレンドポリマーから作製された非対称構造、または異なるポリマー材料もしくは無機材料から作製された多孔性支持層上に支持された、ブレンドポリマーから作製された非多孔性もしくは多孔性選択性薄層を有する非対称構造のいずれかを有していてよい。本発明のオルト位に官能基を有する芳香族ポリイミドを含む新規なブレンドポリマー膜は、平面シート(もしくは渦巻き型)、ディスク、チューブ、中空繊維、または薄膜複合体などの好都合であるいかなる形状に作製してもよい。
【0044】
本発明で述べるオルト位に官能基を有する芳香族ポリイミドを含むブレンドポリマー膜は、オルト位に官能基を有する芳香族ポリイミドおよびポリエーテルスルホンなどの別の異なるポリマーを含む均一なブレンドポリマー溶液を、清浄なガラスプレート上にキャストし、室温にて少なくとも12時間かけて溶媒をゆっくり蒸発させることにより、非多孔性の対称薄膜形状に作製することができる。次にこの膜をガラスプレートから取り外し、室温にて24時間、続いて200℃にて少なくとも48時間、真空下にて乾燥させる。
【0045】
オルト位に官能基を有する芳香族ポリイミドおよびその他の異なるポリマーを溶解させるために用いられる溶媒は、主として、これらのポリマーを完全に溶解させるその能力、および膜形成工程での溶媒除去の容易さによって選択される。溶媒の選択に際してのその他の考慮事項としては、低い毒性、低い腐食作用、低い環境への有害性の可能性、入手しやすさ、およびコストが挙げられる。本発明で用いられる代表的な溶媒としては、N−メチルピロリドン(NMP)およびN,N−ジメチルアセタミド(DMAC)などのポリマー膜の形成に通常用いられるほとんどのアミド溶媒、塩化メチレン、テトラヒドロフラン(THF)、アセトン、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、トルエン、ジオキサン、1,3−ジオキソラン、これらの混合物、当業者に公知のその他の溶媒、およびこれらの混合物などが挙げられる。
【0046】
本発明で述べるオルト位に官能基を有する芳香族ポリイミドを含むブレンドポリマー膜の作製はまた:オルト位に官能基を有する芳香族ポリイミド、およびポリエーテルスルホンまたはポリビニルピロリドンなどの別の異なるポリマーを溶媒中に溶解して、ブレンドポリマー溶液を形成する工程;多孔性膜支持体(例:無機セラミック材料製支持体)を前記ブレンドポリマー溶液と接触させる工程;および、溶媒を蒸発させて、オルト位に官能基を有する芳香族ポリイミドおよびその他の異なるポリマーを含む選択性薄層を支持層上に提供する工程、を含む方法で行うこともできる。
【0047】
本発明で述べるオルト位に官能基を有する芳香族ポリイミドを含むブレンドポリマー膜はまた、転相、およびこれに続く、炭化水素またはエーテルなどの疎水性有機化合物である少なくとも1つの乾燥剤の使用による直接の風乾によって(米国特許第4,855,048号)、平面シートまたは中空繊維形状の非対称膜として作製することもできる。本発明で述べるオルト位に官能基を有する芳香族ポリイミドを含むブレンドポリマー膜はまた、転相、およびこれに続く溶媒交換法によって(米国特許第3,133,132号)、平面シートまたは中空繊維形状の非対称膜として作製することもできる。
【0048】
本発明で述べるオルト位に官能基を有する芳香族ポリイミドを含むブレンドポリマー膜は、次に、アルゴン、窒素、または真空などの不活性雰囲気下にて300から600℃で加熱することにより、芳香族ポリベンゾオキサゾール(PBO)またはポリベンゾチアゾール(PBT)ポリマーなどの熱転位ポリマーを含むブレンドポリマー膜へ熱変換される。この熱変換プロセスの過程で、ブレンドポリマー膜中のオルト位に官能基を有する芳香族ポリイミドは、式(II)の繰り返しユニットを含むPBO(オルト位に−OH官能基を有する芳香族ポリイミドの場合)またはPBT(オルト位に−SH官能基を有する芳香族ポリイミドの場合)ポリマーなどの熱転位ポリマーに変換され、ここで、前記式(II)は:
【0049】
【化6】

【0050】
であり、前記式(II)のXは、ポリベンゾオキサゾールの場合はO、またはポリベンゾチアゾールの場合はSである。
場合によっては、熱変換工程の後に、ポリシロキサン、フルオロポリマー、熱硬化性シリコーンゴム、またはUV放射線硬化性エポキシシリコーンなどの高透過性材料の薄層を、熱転位ポリマーを含むブレンドポリマー膜の選択性層表面にコーティングすることによる、膜後処理工程を追加してよい。このコーティングは、表面細孔部、および空隙部を含むその他の欠陥部を埋める(米国特許第4,230,463号;米国特許第4,877,528号;米国特許第6,368,382号を参照されたい)。
【0051】
本発明で述べるオルト位に官能基を有する芳香族ポリイミドから誘導される熱転位ポリマーを含む最終的なブレンドポリマー膜は、非多孔性もしくは多孔性対称構造、多孔性支持層上に支持された非多孔性もしくは多孔性選択性薄層を有し、両層共にブレンドポリマーから作製された非対称構造、または異なるポリマー材料もしくは無機材料から作製された多孔性支持層上に支持された、ブレンドポリマーから作製された非多孔性もしくは多孔性選択性薄層を有する非対称構造のいずれかを有していてよい。本発明のオルト位に官能基を有する芳香族ポリイミドから誘導される熱転位ポリマーを含む新規なブレンドポリマー膜は、平面シート(もしくは渦巻き型)、ディスク、チューブ、中空繊維、または薄膜複合体などの好都合であるいかなる形状に作製してもよい。
【0052】
本発明は、本発明のオルト位に官能基を有する芳香族ポリイミドから誘導される熱転位ポリマーを含む新規なブレンドポリマー膜を用いて、ガスまたは液体の混合物から少なくとも1つのガスまたは液体を分離するための方法を提供し、この方法は:(a)少なくとも1つのガスまたは液体に対して透過性である熱転位ポリマーを含むブレンドポリマー膜を提供すること;(b)熱転位ポリマーを含むブレンドポリマー膜の一方の側に混合物を接触させて、前記少なくとも1つのガスまたは液体を熱転位ポリマーを含むブレンドポリマー膜に透過させること;及び、(c)前記膜を透過した前記少なくとも1つのガスまたは液体の一部を含む透過ガスまたは液体組成物を、膜の反対側から取り出すこと、を含む。
【0053】
本発明のPBOまたはPBTなどの熱転位ポリマーを含むブレンドポリマー膜は、液相または気相の特定の種の精製、分離、または吸着に特に有用である。ガス対の分離に加えて、PBOまたはPBTなどの熱転位ポリマーを含むこれらのブレンドポリマー膜は、例えば、逆浸透による水の脱塩、または例えば医薬およびバイオテクノロジー産業におけるタンパク質もしくはその他の熱不安定性化合物の分離に用いることができる。PBOまたはPBTなどの熱転位ポリマーを含むブレンドポリマー膜はまた、ガスの反応容器への輸送および細胞培地の容器からの移送のために、発酵槽およびバイオリアクターにも用いることができる。加えて、PBOまたはPBTなどの熱転位ポリマーを含むブレンドポリマー膜は、空気または水流からの微生物の除去、水の精製、連続発酵/膜浸透気化システムにおけるエタノール生成、および空気もしくは水流中の微量化合物または金属塩の検出、または除去に用いることができる。
【0054】
本発明のPBOまたはPBTなどの熱転位ポリマーを含むブレンドポリマー膜は、空気清浄、石油化学、精製所、および天然ガス産業におけるガス分離プロセスに特に有用である。そのような分離の例としては、窒素または酸素などの雰囲気ガスからの揮発性有機化合物(トルエン、キシレン、およびアセトンなど)の分離、および空気からの窒素の回収が挙げられる。そのような分離のさらなる例としては、天然ガスからのCOまたはHSの分離、アンモニアパージガス流中のN、CH、およびArからのHの分離、精製所におけるH回収、プロピレン/プロパン分離などのオレフィン/パラフィン分離、ならびにイソ/ノルマルパラフィン分離である。窒素と酸素、二酸化炭素とメタン、水素とメタンまたは一酸化炭素、ヘリウムとメタンを例とする分子サイズの異なる任意のガス対またはガス群を、本明細書で述べるPBOまたはPBTなどの熱転位ポリマーを含むブレンドポリマー膜を用いて分離することができる。3種類以上のガスを第三のガスから除去することができる。例えば、本明細書で述べる膜を用いて原天然ガスから選択的に除去することができるガス成分のいくつかとしては、二酸化炭素、酸素、窒素、水蒸気、硫化水素、ヘリウム、およびその他の微量ガスが挙げられる。選択的に保持させることができるガス成分のいくつかとしては、炭化水素ガスが挙げられる。透過性成分が、二酸化炭素、硫化水素、およびこれらの混合物から成る群より選択される酸成分であり、天然ガスなどの炭化水素混合物から除去される場合、1つのモジュール、または並行して運転される少なくとも2つのモジュール、または連続するモジュールを使用して、この酸成分を除去することができる。例えば、1つのモジュールが使用される場合、フィードガスの圧力は、275kPaから2.6MPa(25から4000psi)まで、様々であってよい。膜の前後での差圧は、用いられる特定の膜、入口流の流速、および圧縮が所望される場合は透過流圧縮のためのコンプレッサーの入手しやすさなどの多くの因子に応じて、0.7バールの低さ、または145バールの高さ(10psiまたは2100psiの高さ)であってよい。145バール(2100psi)を超える差圧は、膜を破壊する場合がある。より低い差圧は、より多くのモジュール、より長い時間、および中間生成物流の圧縮が必要となり得ることから、少なくとも7バール(100psi)の差圧が好ましい。プロセスの運転温度は、フィード流の温度および周囲の温度条件に応じて様々であってよい。好ましくは、本発明の膜の効果的な運転温度は、−50から100℃の範囲である。より好ましくは、本発明の膜の効果的な運転温度は、−20から70℃の範囲であり、最も好ましくは、本発明の膜の効果的な運転温度は、70℃未満である。
【0055】
本発明で述べるPBOまたはPBTなどの熱転位ポリマーを含むブレンドポリマー膜はまた、大気浄化の法規制遵守のための揮発性有機化合物回収のためのオフガス処理、または価値のある化合物(例:塩化ビニルモノマー、プロピレン)の回収を可能とするための生産プラントのプロセス流れの中を例とする、ガス流からの有機蒸気の除去のための化学、石油化学、医薬、および類似の産業におけるガス/蒸気分離プロセスでも特に有用である。PBOまたはPBTなどの熱転位ポリマーを含むこれらのブレンドポリマー膜を用いることができるガス/蒸気分離プロセスのさらなる例は、天然ガスの炭化水素デューポインティング(dew pointing)(すなわち、液体炭化水素がパイプライン内で分離しないように、炭化水素の露点を排出用パイプラインの考え得る最も低い温度よりも低くすること)のため、ガスエンジンおよびガスタービン用の燃料ガス中のメタン価の制御のため、およびガソリン回収のための、オイルおよびガス精製所における水素からの炭化水素蒸気分離である。PBOまたはPBTなどの熱転位ポリマーを含むブレンドポリマー膜は、特定のガスに強く吸着する種(例:Oに対するコバルトポルフィリンもしくはフタロシアニン、またはエタンに対する銀(I))を取り込んで、それらの膜を通っての輸送を促進することができる。
【0056】
PBOまたはPBTなどの熱転位ポリマーを含むブレンドポリマー膜はまた、高温で運転して、天然ガスのグレードアップ(例:天然ガスからのCOの除去)における露点に十分な余裕を持たせることもできる。PBOまたはPBTなどの熱転位ポリマーを含むブレンドポリマー膜は、天然ガスのグレードアップにおいて、一段膜システム、または二段膜システムの第一および/または第二段膜として用いることができる。本発明の高い選択性、高い透過性、ならびに高い熱および化学安定性を有するPBOまたはPBTなどの熱転位ポリマーを含むブレンドポリマー膜により、コストの高い前処理システムなしで膜を運転することが可能となる。従って、PBOまたはPBTなどの熱転位ポリマーを含むブレンドポリマー膜を有する新規なプロセスでは、MemGuard(商標)システムなどのコストの高い膜の前処理システムは必要ない。前処理システムの除去および膜領域の大幅な低減により、この新規なプロセスは、設備コストの大幅な削減を実現し、および既存の膜占有面積を低減することができる。
【0057】
PBOまたはPBTなどの熱転位ポリマーを含むブレンドポリマー膜はまた、水性廃液または処理流体などの水からの有機化合物(例:アルコール、フェノール、塩素化炭化水素、ピリジン、ケトン)の除去など、浸透気化法による液体混合物の分離にも用いることができる。エタノール選択性であるPBOまたはPBTなどの熱転位ポリマーを含むブレンドポリマー膜は、発酵プロセスによって得られた比較的薄いエタノール溶液(5〜10%エタノール)のエタノール濃度の増加に用いられる。このようなPBOまたはPBTなどの熱転位ポリマーを含むブレンドポリマー膜を用いた別の液相分離の例は、その全体が参照することで本明細書に組み入れられる米国特許第7,048,846号に記載のプロセスに類似する浸透気化膜プロセスによる、ガソリンおよびディーゼル燃料の深度脱硫である。硫黄含有分子に対して選択的であるPBOまたはPBTなどの熱転位ポリマーを含むブレンドポリマー膜は、流動接触分解(FCC)およびその他のナフサ炭化水素流からの硫黄含有分子の選択的な除去に用いられる。さらなる液相の例としては、1つの有機成分の別の有機成分からの分離、例えば有機化合物の異性体の分離が挙げられる。ブレンドポリマー膜を用いて分離することができる有機化合物の混合物としては:酢酸エチル−エタノール、ジエチルエーテル−エタノール、酢酸−エタノール、ベンゼン−エタノール、クロロホルム−エタノール、クロロホルム−メタノール、アセトン−イソプロピルエーテル、アリルアルコール−アリルエーテル、アリルアルコール−シクロヘキサン、ブタノール−酢酸ブチル、ブタノール−1−ブチルエーテル、エタノール−エチルブチルエーテル、酢酸プロピル−プロパノール、イソプロピルエーテル−イソプロパノール、メタノール−エタノール−イソプロパノール、および酢酸エチル−エタノール−酢酸が挙げられる。
【0058】
PBOまたはPBTなどの熱転位ポリマーを含むブレンドポリマー膜は、水からの有機分子の分離(例:浸透気化法によるエタノールおよび/またはフェノールの水からの分離)、ならびに水からの金属およびその他の有機化合物の除去に用いることができる。
【0059】
本発明で述べるPBOまたはPBTなどの熱転位ポリマーを含むブレンドポリマー膜は、天然ガスからの二酸化炭素の除去を含むガス混合物の分離において直接の用途を有する。PBOまたはPBTなどの熱転位ポリマーを含むブレンドポリマー膜は、天然ガス中のメタンよりも速い速度で二酸化炭素を拡散透過させる。二酸化炭素は、高い溶解性、高い拡散性、またはその両方のために、メタンよりも透過速度が速い。従って、二酸化炭素は膜の透過側で濃縮され、メタンは膜のフィード(または不透過(reject))側で濃縮される。
【0060】
PBOまたはPBTなどの熱転位ポリマーを含むブレンドポリマー膜のさらなる用途は、特定の副生物または生成物を選択的に除去することによって平衡支配反応の収率を向上させるための化学反応器のセパレータとしての用途である。
【0061】
本発明で述べるPBOまたはPBTなどの熱転位ポリマーを含む新規なブレンドポリマー膜のさらなる別の用途は、金属触媒、またはポリマー固定金属触媒、またはモレキュラーシーブ触媒を、PBOまたはPBTなどの熱転位ポリマーを含むブレンドポリマー膜に充填することによる、触媒ポリマー膜としての用途である。このような触媒を充填した新規なPBOまたはPBTなどの熱転位ポリマーを含むブレンドポリマー膜は、フィードまたは生成物の不純物除去のための選択的水素化反応、固体酸による自動車燃料のアルキル化(アルキレン)、エチルベンゼンおよびクメンのアルキル化、洗浄剤のアルキル化、C−C軽質オレフィンのオリゴマー化、Tatoray(商標)、およびエチルベンゼンの選択的なパラキシレンへの変換などのUOPの触媒事業にとって関心の対象である様々な触媒用途に適するものである。ブレンドポリマー膜中の熱転位ポリマー材料およびその他のポリマー材料、ならびに触媒成分の特性を調整することによる吸着性および拡散性の制御により、液体の酸または塩基の系でのみ達成可能であるプロセス効率を大きく向上させることができ、ここで、1つの反応体のその他に対する、または反応体の生成物に対する高い分配を介して高効率が達成される。本発明で述べるPBOまたはPBTなどの熱転位ポリマーを含む新規なブレンドポリマー膜は、上述の触媒用途において、従来の触媒を上回る多くの利点を有する。
【0062】
例として、PBOまたはPBTなどの熱転位ポリマーを含むこれらの新規なブレンドポリマー膜の、プロパジエンおよびプロピンの選択的水素化、ならびにブタジエンの選択的水素化などの選択的水素化反応における利点は:1)化学反応を膜の触媒および分離作用と組み合わせることにより、触媒膜反応器というコンセプトを利用していること;2)H濃度が制御可能であること;3)H/フィード比が調節可能であること、などである。このような先進的な特性により、選択的水素化反応において、反応収率と選択性が同時に向上される。
【0063】
本発明で述べるPBOまたはPBTなどの熱転位ポリマーを含む新規なブレンドポリマー膜のさらに別の用途は、燃料電池用途における新規な効率的なプロトン伝導性膜としてのものである。効率的なプロトン伝導性膜の開発は、プロトン交換膜燃料電池(PEMFC)および直接メタノール燃料電池(DMFC)を含む低温燃料電池の設計および改良において最も重要である。PEMFCは、その高い効率および環境にやさしい性質のために、様々な用途において最も魅力的な電力源の1つである。この20年の間、プロトン伝導性膜の分野における活動のほとんどは、燃料電池用プロトン伝導性膜としての用途のための適切なプロトン伝導性材料を開発することをその主たる原動力としてきた材料科学界で行われてきた。しかし、PEMFCおよびDMFC技術の大きな進歩は、主にプロトン伝導性膜用途のための適切な材料が存在しないことに起因して、依然として妨げられている。燃料電池を効率的に運転するためには、膜のプロトンおよび水輸送特性を最適化することが極めて重要である。膜の脱水はプロトン伝導性を低下させ、一方過剰の水は、電極のフラッディングを起こす場合があり、いずれの状態も、電池性能の低下を引き起こしかねない。
【0064】
本発明で述べるPBOまたはPBTなどの熱転位ポリマーを含む新規なブレンドポリマー膜は、その非常に優れたプロトン伝導性、高い水吸着能、ならびに高い化学および熱安定性のために、従来のNafion(登録商標)ポリマー膜と比較して、燃料電池用途のためのプロトン伝導性膜として大幅に改善された性能を示すことが期待される。
【0065】
まとめると、本発明のオルト位に官能基を有する芳香族ポリイミドから誘導されるPBOまたはPBTなどの熱転位ポリマーを含むブレンドポリマー膜は、逆浸透による水の脱塩、ガソリンおよびディーゼル燃料の深度脱硫などの非水液体分離、エタノール/水分離、水性/有機混合物の浸透気化脱水、CO/CH、CO/N、H/CH、O/N、HS/CH、オレフィン/パラフィン、イソ/ノルマルパラフィン分離、ならびにその他の軽質ガス混合物分離などの種々の液体、ガス、および蒸気分離に適するだけでなく、触媒および燃料電池用途などのその他の用途にも用いることができる。
【0066】
実施例
以下の実施例は、本発明の1もしくは2つ以上の好ましい態様を説明するために提供されるが、その態様に限定されるものではない。以下の実施例に対して、本発明の範囲内である数多くの変形を行うことができる。
【0067】
実施例1
ポリ(6FDA−HAB)ポリイミドの合成
ポリマーバックボーン中のへテロ環イミド窒素に対するオルト位にペンダント−OH官能基を含む芳香族ポリ[2,2’−ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物−3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノ−ビフェニル](ポリ(6FDA−HAB))ポリイミドを、NMP極性溶媒中、ポリ(アミック酸)の形成、およびこれに続く溶液イミド化プロセスを含む2段階プロセスにより、2,2’−ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)および3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノ−ビフェニル(HAB)から合成した。溶液イミド化反応において、無水酢酸を脱水剤として用い、ピリジンをイミド化触媒として用いた。例えば、窒素入口およびメカニカルスターラーを備えた250mL三つ口丸底フラスコに、5.9g(27.3mmol)のHABおよび40mLのNMPを投入した。HABが完全に溶解した後、40mLのNMP中の6FDA(12.1g、27.3mmol)の溶液をフラスコ内のHAB溶液へ添加した。この反応混合物を、周囲温度にてメカニカルスターラーで24時間攪拌し、粘稠なポリ(アミック酸)溶液を得た。次に、10mLのNMP中の無水酢酸11.1gを、攪拌しながらこの反応混合物へゆっくり添加し、続いて10mLのNMP中のピリジン8.6gをこの反応混合物へ添加した。反応混合物を、80℃にてメカニカルスターラーでさらに1時間攪拌し、ポリ(6FDA−HAB)ポリイミドを得た。この反応混合物を大量のメタノール中へゆっくり析出させることにより、微細繊維形状のポリ(6FDA−HAB)ポリイミド生成物を回収した。次に、得られたポリ(6FDA−HAB)ポリイミド繊維をメタノールで十分に洗浄し、真空オーブン中、150℃にて24時間乾燥させた。
【0068】
実施例2
ポリ(6FDA−HAB)ポリイミドおよびポリエーテルスルホン(PES)からのブレンドポリマー膜の作製(ポリ(6FDA−HAB)/PESと略す)
ポリ(6FDA−HAB)/PESブレンドポリマー膜を以下のようにして作製した:実施例1で合成したポリ(6FDA−HAB)ポリイミドの3.0gおよびポリエーテルスルホン(PES、BASF社から購入)の1.5gを12.0gのNMPおよび12.0gの1,3−ジオキソランの溶媒混合物中へ溶解した。この混合物をメカニカルスターラーで2時間攪拌して、均一なキャスト用ドープを形成させた。得られた均一なキャスト用ドープを一晩脱気させた。清浄なガラスプレート上、20−milギャップのドクターナイフを用いて、泡のないキャスト用ドープからポリ(6FDA−HAB)/PESブレンドポリマー膜を作製した。次に、この膜をガラスプレートと共に真空オーブンに投入した。真空オーブンの真空度および温度をゆっくり上昇させることで溶媒を除去した。最後に、真空下、200℃にて少なくとも48時間、この膜を乾燥させて残留溶媒を完全に除去し、ポリ(6FDA−HAB)/PESブレンドポリマー膜を形成した。
【0069】
実施例3
熱処理によるポリ(6FDA−HAB)/PESブレンドポリマー膜からのポリベンゾオキサゾール/PESブレンドポリマー膜(PBO(6FDA−HAB)/PES−450CおよびPBO(6FDA−HAB)/PES−400C)の作製
ポリ(6FDA−HAB)/PESブレンドポリマー膜を、N気流下、5℃/分の加熱速度にて50℃から400℃または450℃まで加熱した。膜を400℃(PBO(6FDA−HAB)/PES−400Cブレンドポリマー膜の作製のため)または450℃(PBO(6FDA−HAB)/PES−450Cブレンドポリマー膜の作製のため)にて1時間保持し、続いてN気流下、5℃/分の冷却速度にて50℃まで冷却して、ポリベンゾオキサゾール/PESブレンドポリマー膜(PBO(6FDA−HAB)/PES−400CおよびPBO(6FDA−HAB)/PES−450C)を得た。
【0070】
実施例4
ポリ(6FDA−HAB)純ポリイミド膜の作製
ポリ(6FDA−HAB)純ポリマー膜を以下のようにして作製した:実施例1で合成したポリ(6FDA−HAB)ポリイミドの4.0gを、12.0gのNMPおよび12.0gの1,3−ジオキソランの溶媒混合物中へ溶解した。この混合物をメカニカルスターラーで2時間攪拌して、均一なキャスト用ドープを形成させた。得られた均一なキャスト用ドープを一晩脱気させた。清浄なガラスプレート上、20−milギャップのドクターナイフを用いて、泡のないキャスト用ドープからポリ(6FDA−HAB)純ポリマー膜を作製した。次に、この膜をガラスプレートと共に真空オーブンに投入した。真空オーブンの真空度および温度をゆっくり上昇させることで溶媒を除去した。最後に、真空下、200℃にて少なくとも48時間、この膜を乾燥させて残留溶媒を完全に除去し、ポリ(6FDA−HAB)純ポリマー膜を形成した。
【0071】
実施例5
熱処理によるポリ(6FDA−HAB)純ポリマー膜からのポリベンゾオキサゾールポリマー膜(PBO(6FDA−HAB)−450C)の作製
ポリ(6FDA−HAB)純ポリマー膜を、N気流下、5℃/分の加熱速度にて50℃から450℃まで加熱した。膜を450℃にて1時間保持し、続いてN気流下、5℃/分の冷却速度にて50℃まで冷却して、ポリベンゾオキサゾール純ポリマー膜(PBO(6FDA−HAB)−450C)を得た。
【0072】
実施例6
PBO(6FDA−HAB)/PES−450Cブレンドポリマー膜およびPBO(6FDA−HAB)−450C純ポリマー膜のCO/CH分離性能
PBO(6FDA−HAB)/PES−450Cブレンドポリマー膜およびPBO(6FDA−HAB)−450C純ポリマー膜を、試験圧力690kPa(100psig)および温度50℃にて、CO/CH分離について試験した(表1)。PBO(6FDA−HAB)−450C純ポリマー膜は、非常にもろく、試験圧力下におけるクラックおよび欠陥の形成により、CO/CH分離に対する選択性は示さなかった。PBO(6FDA−HAB)/PES−450Cブレンドポリマー膜は、PBO(6FDA−HAB)−450C純ポリマー膜よりも可撓性が高く、非常に高いCO透過性(50℃の試験温度にてPCO2=540Barrer)および良好なCO/CH選択性(50℃の試験温度にて20)を示した。この結果は、PBOポリマー膜に特定の量の非PBOポリマーを導入することにより、膜の可撓性および加工性が向上することを示唆している。
【0073】
【表1】

【0074】
実施例7
UV照射によるPBO(6FDA−HAB)/PES−450Cブレンドポリマー膜からの架橋ポリベンゾオキサゾール/PESブレンドポリマー膜(架橋PBO(6FDA−HAB)/PES−450C)の作製
架橋PBO(6FDA−HAB)/PES−450Cブレンドポリマー膜を、UVランプから発生させた波長254nmのUV光を用い、膜表面からUVランプまでの距離1.9cm(0.75インチ)および照射時間20分、50℃にてUV放射線に曝露させることによってPBO(6FDA−HAB)/PES−450Cブレンドポリマー膜をUV架橋させて作製した。本明細書で述べるUVランプは、エースグラス社(Ace Glass Incorporated)製、12ワット電源を有する低圧水銀アーク浸漬型UV石英12ワットランプである。
【0075】
実施例8
PBO(6FDA−HAB)/PES−450Cブレンドポリマー膜および架橋PBO(6FDA−HAB)/PES−450Cブレンドポリマー膜のCO/CH分離性能
PBO(6FDA−HAB)/PES−450Cブレンドポリマー膜および架橋PBO(6FDA−HAB)/PES−450Cブレンドポリマー膜を、試験圧力690kPa(100psig)および温度50℃にて、CO/CH分離について試験した(表2)。表2から分かるように、架橋PBO(6FDA−HAB)/PES−450℃ブレンドポリマー膜は、未架橋PBO(6FDA−HAB)/PES−450℃ブレンドポリマー膜と比較して、CO/CH選択性が大きく上昇している。架橋PBO(6FDA−HAB)/PES−450℃ブレンドポリマー膜のCO透過性は、依然として300Barrerよりも高い。
【0076】
【表2】

【0077】
実施例9
PBO(6FDA−HAB)/PES−400℃ブレンドポリマー膜および架橋PBO(6FDA−HAB)/PES−400Cブレンドポリマー膜のCO/CH分離性能
PBO(6FDA−HAB)/PES−400℃ブレンドポリマー膜および架橋PBO(6FDA−HAB)/PES−400Cブレンドポリマー膜を、試験圧力690kPa(100psig)および温度50℃にて、CO/CH分離について試験した(表3)。表3から分かるように、架橋PBO(6FDA−HAB)/PES−400Cブレンドポリマー膜は、未架橋PBO(6FDA−HAB)/PES−400℃ブレンドポリマー膜と比較して、CO透過性を大きく低下させることなく、CO/CH選択性が劇的に上昇している。この高いCO/CH選択性を有する架橋PBO(6FDA−HAB)/PES−400Cブレンドポリマー膜は、CO/CH分離用途のための膜として良好な候補である。
【0078】
【表3】

【0079】
実施例10
ポリ(ODPA−APAF)ポリイミドの合成
ポリマーバックボーン中のへテロ環イミド窒素に対するオルト位にペンダント−OH官能基を含む芳香族ポリ[4,4’−オキシジフタル酸無水物−2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン](ポリ(ODPA−APAF))ポリイミドを、NMP極性溶媒中、ポリ(アミック酸)の形成、およびこれに続く溶液イミド化プロセスを含む2段階プロセスにより、4,4’−オキシジフタル酸無水物(ODPA)および2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン(APAF)から合成した。溶液イミド化反応において、無水酢酸を脱水剤として用い、ピリジンをイミド化触媒として用いた。例えば、窒素入口およびメカニカルスターラーを備えた250mL三つ口丸底フラスコに、10.0g(27.3mmol)のAPAFおよび20mLのNMPを投入した。HABが完全に溶解した後、35mLのNMP中のODPA(8.88g、27.3mmol)の溶液をフラスコ内のAPAF溶液へ添加した。この反応混合物を、周囲温度にてメカニカルスターラーで24時間攪拌し、粘稠なポリ(アミック酸)溶液を得た。次に、10mLのNMP中の無水酢酸11.1gを、攪拌しながらこの反応混合物へゆっくり添加し、続いて10mLのNMP中のピリジン8.6gをこの反応混合物へ添加した。反応混合物を、80℃にてメカニカルスターラーでさらに1時間攪拌し、ポリ(ODPA−APAF)ポリイミドを得た。この反応混合物を大量のメタノール中へゆっくり析出させることにより、微細繊維形状のポリ(ODPA−APAF)ポリイミド生成物を回収した。次に、得られたポリ(ODPA−APAF)ポリイミド繊維をメタノールで十分に洗浄し、真空オーブン中、150℃にて24時間乾燥させた。
【0080】
実施例11
ポリ(ODPA−APAF)ポリイミドおよびポリビニルピロリドン(PVP)からのブレンドポリマー膜の作製(ポリ(ODPA−APAF)/PVPと略す)
ポリ(ODPA−APAF)/PVPブレンドポリマー膜を、ポリ(ODPA−APAF)/PVPのモル比を4:1とすること以外は実施例2で述べたものと類似の手順を用いて作製した。
【0081】
実施例12
熱処理によるポリ(ODPA−APAF)/PVPブレンドポリマー膜からのポリベンゾオキサゾール/PVPブレンドポリマー膜(PBO(ODPA−APAF)/PVP−450C)の作製
ポリ(ODPA−APAF)/PVPブレンドポリマー膜を、N気流下、5℃/分の加熱速度にて50℃から450℃まで加熱した。膜を450℃にて1時間保持し、続いてN気流下、5℃/分の冷却速度にて50℃まで冷却して、ポリベンゾオキサゾール/PVPブレンドポリマー膜(PBO(ODPA−APAF)/PVP−450C)を得た。
【0082】
実施例13
ポリ(ODPA−APAF)純ポリイミド膜の作製
ポリ(ODPA−APAF)純ポリマー膜を以下のようにして作製した:実施例10で合成したポリ(ODPA−APAF)ポリイミドの4.0gを、12.0gのNMPおよび12.0gの1,3−ジオキソランの溶媒混合物中へ溶解した。この混合物をメカニカルスターラーで2時間攪拌して、均一なキャスト用ドープを形成させた。得られた均一なキャスト用ドープを一晩脱気させた。清浄なガラスプレート上、20−milギャップのドクターナイフを用いて、泡のないキャスト用ドープからポリ(ODPA−APAF)純ポリマー膜を作製した。次に、この膜をガラスプレートと共に真空オーブンに投入した。真空オーブンの真空度および温度をゆっくり上昇させることで溶媒を除去した。最後に、真空下、200℃にて少なくとも48時間、この膜を乾燥させて残留溶媒を完全に除去し、ポリ(ODPA−APAF)純ポリマー膜を形成した。
【0083】
実施例14
熱処理によるポリ(ODPA−APAF)純ポリマー膜からのポリベンゾオキサゾールポリマー膜(PBO(ODPA−APAF)−450C)の作製
ポリ(ODPA−APAF)純ポリマー膜を、N気流下、5℃/分の加熱速度にて50℃から450℃まで加熱した。膜を450℃にて1時間保持し、続いてN気流下、5℃/分の冷却速度にて50℃まで冷却して、ポリベンゾオキサゾール純ポリマー膜(PBO(ODPA−APAF)−450C)を得た。
【0084】
実施例15
PBO(ODPA−APAF)/PVP−450Cブレンドポリマー膜およびPBO(ODPA−APAF)−450C純ポリマー膜のCO/CH分離性能
PBO(ODPA−APAF)−450C/PVP−450Cブレンドポリマー膜およびPBO(ODPA−APAF)−450C純ポリマー膜を、試験圧力690kPa(100psig)および温度50℃にて、CO/CH分離について試験した(表4)。表4から分かるように、PBO(ODPA−APAF)−450C/PVP−450Cブレンドポリマー膜は、PCO2が545BarrerおよびαCO2/CH4が22.0であるPBO(ODPA−APAF)−450C純ポリマー膜と比較して、CO透過性(50℃の試験温度にてPCO2=678Barrer)およびCO/CH選択性(50℃の試験温度にて24.2)共に高い値を示した。これらの結果は、特定量のPVPポリマーをPBOポリマー膜に導入することで、PBOポリマー膜の分離性能を向上することができることを示唆している。
【0085】
【表4】

【0086】
実施例16
UV照射によるPBO(ODPA−APAF)/PVP−450Cブレンドポリマー膜からの架橋ポリベンゾオキサゾール/PVPブレンドポリマー膜(架橋PBO(ODPA−APAF)/PVP−450C)の作製
架橋PBO(ODPA−APAF)/PVP−450Cブレンドポリマー膜を、UVランプから発生させた波長254nmのUV光を用い、膜表面からUVランプまでの距離1.9cm(0.75インチ)および照射時間20分、50℃にてUV放射線に曝露させることによってPBO(ODPA−APAF)/PVP−450Cブレンドポリマー膜をUV架橋させて作製した。本明細書で述べるUVランプは、エースグラス社製、12ワット電源を有する低圧水銀アーク浸漬型UV石英12ワットランプである。
【0087】
実施例17
PBO(ODPA−APAF)/PVP−450Cブレンドポリマー膜および架橋PBO(ODPA−APAF)/PVP−450Cブレンドポリマー膜のCO/CH分離性能
PBO(ODPA−APAF)−450C/PVP−450Cブレンドポリマー膜および架橋PBO(ODPA−APAF)/PVP−450Cブレンドポリマー膜を、試験圧力690kPa(100psig)および温度50℃にて、CO/CH分離について試験した(表5)。表5から分かるように、架橋PBO(ODPA−APAF)/PVP−450Cブレンドポリマー膜は、未架橋PBO(ODPA−APAF)−450C/PVP−450Cブレンドポリマー膜よりも大幅に高いCO/CH選択性を示した。架橋PBO(ODPA−APAF)−450C/PVP−450℃ブレンドポリマー膜のCO透過性は、依然として500Barrerよりも高い。
【0088】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ポリイミドのポリマーバックボーン中のへテロ環イミド窒素に対するオルト位にペンダント官能基を含む、芳香族ポリイミドをまず合成すること、
前記芳香族ポリイミド、および前記芳香族ポリイミドとは異なる第二のポリマーからブレンドポリマー膜を作製すること、及び、
前記ブレンドポリマー膜を300から600℃の温度で加熱することにより、前記ブレンドポリマー膜を熱転位ブレンドポリマー膜に変換すること、
を含む、ブレンドポリマー膜を作製するための方法。
【請求項2】
芳香族ポリイミドのポリマーバックボーン中のへテロ環イミド窒素に対するオルト位にペンダント官能基を含む前記芳香族ポリイミド、および第二のポリマーから、熱処理によって作製された前記ブレンドポリマー膜に、架橋工程を施すことをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記架橋工程が、前記ブレンドポリマー膜に、UV照射、または化学的架橋性組成物との反応を施すことを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記芳香族ポリイミドが、式(I)の第一の繰り返しユニットを複数含み、ここで、前記式(I)は:
【化1】

であり、
ここで、前記式(I)の−X−は、
【化2】

およびその混合物から成る群より選択され、前記式(I)の−X−は、
【化3】

およびその混合物から成る群より選択され、ならびに、−R−は、
【化4】

およびその混合物から成る群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
オルト位に官能基を含む前記芳香族ポリイミドが、式(I)を有するUV架橋性ポリイミドであり、ここで、前記式(I)は:
【化5】

であり、
ここで、前記式(I)の−X−は、
【化6】

およびその混合物から成る群より選択され、前記式(I)の−X−は、
【化7】

およびその混合物から成る群より選択され、ならびに、−R−は、
【化8】

およびその混合物から成る群より選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記第二のポリマーが、ポリスルホン、スルホン化ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、または、ポリ(3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物−ピロメリット酸二無水物−3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−メチレンジアニリン)(ポリ(BTDA−PMDA−TMMDA))、ポリ(3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物−ピロメリット酸二無水物−4,4’−オキシジフタル酸無水物−3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−メチレンジアニリン)(ポリ(BTDA−PMDA−ODPA−TMMDA))、ポリ(3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物−3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−メチレンジアニリン)(ポリ(DSDA−TMMDA))、ポリ(3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物−3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−メチレンジアニリン)(ポリ(BTDA−TMMDA))、ポリ(3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物−ピロメリット酸二無水物−3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−メチレンジアニリン)(ポリ(DSDA−PMDA−TMMDA))を包含するポリイミド、から成る群より選択され、ならびに、前記第一のポリマーが、式(I)で表されるいずれかのポリイミドから選択され、ここで式(I)は:
【化9】

であり、
ここで、前記式(I)の−X−は、
【化10】

およびその混合物から成る群より選択され、前記式(I)の−X−は、
【化11】

およびその混合物から成る群より選択され、ならびに、−R−は、
【化12】

およびその混合物から成る群より選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記芳香族ポリイミドが、ポリ[2,2’−ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物−2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン](ポリ(6FDA−APAF))、ポリ[3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物−2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン](ポリ(BTDA−APAF))、ポリ(3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物−3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノ−ビフェニル)(ポリ(BTDA−HAB))、ポリ[4,4’−オキシジフタル酸無水物−2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン](ポリ(ODPA−APAF))、ポリ[3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物−2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン](ポリ(DSDA−APAF))、ポリ(3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物−3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノ−ビフェニル)(ポリ(DSDA−HAB))、ポリ[2,2’−ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物−3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物−2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン](ポリ(6FDA−BTDA−APAF))、ポリ[4,4’−オキシジフタル酸無水物−2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン−3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノ−ビフェニル](ポリ(ODPA−APAF−HAB))、ポリ[3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物−2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン−3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノ−ビフェニル](ポリ(BTDA−APAF−HAB))、ポリ[2,2’−ビス−(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物−3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノ−ビフェニル](ポリ(6FDA−HAB))、および、ポリ(4,4’−ビスフェノールA二無水物−3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物−2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン](ポリ(BPADA−BTDA−APAF))から成る群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第二のポリマーが、ポリスルホン、スルホン化ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリエーテルスルホン、ポリビニルピロリドン、ポリエーテルイミド、セルロース系ポリマー、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミド/イミド、ポリケトン、ポリエーテルケトン、ポリ(ビニルアミド)、ポリ(ビニルアミン)、ポリ(ビニルウレタン)、ポリ(ビニルウレア)、ポリ(ビニルホスフェート)、ポリ(ビニルサルフェート)、ポリ(ベンゾベンズイミダゾール)、ポリヒドラジド;ポリオキサジアゾール、ポリトリアゾール、ポリカルボジイミド、ポリホスファジン、及び、固有の微孔性を持つポリマーから成る群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ガスまたは液体の混合物を分離する方法であって、前記ガスまたは液体の混合物を、請求項1から8のいずれか一項に従って作製したブレンドポリマー膜に接触させることを含む、方法。
【請求項10】
前記ガスまたは液体が、窒素と酸素、二酸化炭素とメタン、および、水素とメタンから成る群より選択される少なくとも1つのガス対の混合物、一酸化炭素、ヘリウム、およびメタンの混合物、メタン、ならびに、二酸化炭素、酸素、窒素、水蒸気、硫化水素、ヘリウム、およびその他の微量ガスから成る群より選択される少なくとも1つのガス成分、炭化水素ガス、二酸化炭素、硫化水素、およびこれらの混合物、またはオレフィンおよびパラフィンの混合物、または、イソパラフィンおよびノルマルパラフィンの混合物、を含む、請求項9に記載の方法。

【公表番号】特表2012−521870(P2012−521870A)
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−502060(P2012−502060)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際出願番号】PCT/US2010/024557
【国際公開番号】WO2010/110968
【国際公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(598055242)ユーオーピー エルエルシー (182)
【Fターム(参考)】