説明

オレフィンの製造のために生成ガスから低級オレフィンを回収する方法

生成ガスから低級オレフィンを回収する方法であって、生成ガスは、メタノール及び/またはジメチルエーテルからオレフィンへの転化(MTO及び/またはDTO)によって得られる混合ガスであり、生成ガスを脱エタン化し、カラムの上部におけるC及び軽成分とカラムの底部におけるC及び重成分とを得る工程と、C及び軽成分を脱メタン化して排ガス及び液相のC成分を得る工程と、排ガスを液化する工程と、液化した液相を回収して脱メタン化の工程に戻す工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン転化装置によって得られた生成ガスから低級オレフィンを回収する方法に関する。詳しくは、本発明は、メタノール−オレフィン装置及び/またはジメチルエーテル−オレフィン装置による生成ガスからエチレンとプロピレンとを回収する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
経済の発展に伴って低級オレフィンに対する需要が劇的に増大していることはよく知られている。しかし、例えば、ナフサ、軽ディーゼル油等の、エチレン生産のための出発原料資源は、深刻な不足に直面している。したがって、メタノール−オレフィン(以下、MTOと称する)またはジメチルエーテル−オレフィン(以下、DTOと称する)技術が、大きな注目を浴びている。MTOまたはDTO技術は、石炭または天然ガスを基にして合成されたメタノールまたはジメチルエーテルを出発材料として使用し、触媒クラッキング装置に類似した流動層反応方式によって、エチレンやプロピレン等の低級オレフィンを製造するための技術である。この技術は、高選択性の低級オレフィンの製造に使用することができ、比較的広い範囲で容易に調節できるフレキシブルなプロピレン/エチレン比を達成する。
【0003】
一般に、MTO装置を介してメタノールの触媒反応によって得られる生成ガスは、水素、メタン、エチレン、エタン、プロピレン、プロパン、そして、ブチレンやペンタン等の高級オレフィンを、水、一酸化炭素、二酸化炭素と共に含んでいる。DTO生産のための条件は容易に制御可能であることを除いては、DTO技術はMTO技術と実質的に同じである。そのことから、DTO生成物も実質的にMTO生成物と同じである。重合可能なグレードのオレフィン生成物を得るためには、MTOまたはDTO生成物のための分離回収技術が極めて重要である。さらに、米国特許第5811621号は、エチレンを回収するための技術を開示している。一般に、そのようなエチレンを回収するための技術は、MTO生成ガスに対して従来の気液分離工程を行って、水、二酸化炭素及びC以上の重成分を分離除去する工程と、冷却されたC及び軽成分を脱エタン化カラムに投入する工程と、エタン及び軽成分を前記脱エタン化カラムの上部から排出し、その後に、それらを水素化装置によるエチン除去後に脱メタン化カラムに供給する工程と、前記脱メタン化カラムの上部からメタン及び水素を除去する工程と、実質的にエチレン及びエタンを含有する前記カラムの底部の材料をC成分分離カラムに投入する工程と、前記C成分分離カラムの上部においてエチレン生成物を得る工程とを有する。開示されているエチレンを回収するための技術においては、多くの圧縮、及び圧力増大処理が必要とされる。一般に、脱エタン化カラムに供給される前に、Cと軽成分の圧力は、20〜30気圧まで増大される。さらに、前記水素化反応装置を介してエチレンを除去した後、脱メタン化カラムに供給される前に、圧力を30気圧以上に増大させるために別の圧力増大工程が必要である。エチレンの回収率を増大させるためには、脱メタン化カラムの上部の材料はさらに圧縮されて圧力を増大し、圧縮されたガスが脱メタン化カラムのリボイラーのための熱を提供し、次に部分的に液化される。未液化ガスにはフィードストックの3〜4%の量のエチレンが含有され、これが放出される。前記エチレン回収技術に三つの処理圧縮装置とプロピレン冷凍圧縮装置とが必要であり、従って、この技術は設備投資の観点からコスト高であることが判る。ところで、前記技術からはエチレン含有未液化ガスが放出される。従って、一般に約95〜97%である総エチレン回収率は十分なものではなく、重合可能グレードのエチレンの基準を満たすものではない。
【0004】
【特許文献1】米国特許第5811621号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、メタノール−オレフィン装置及び/またはジメチルエーテル−オレフィン装置による生成ガスから低級オレフィンを回収する方法が未だに求められている。前記方法は、エネルギを節約するだけでなく、重合可能グレードのエチレン及びプロピレン生成物を得るために、高い収率で低級オレフィンを回収するためにも使用することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した問題を解決するために、本発明は、生成ガスから低級オレフィンを回収する方法を提供する。前記生成ガスは、メタノール及び/またはジメチルエーテルからオレフィンへの転化によって得られる混合ガスである。前記方法は、前記生成ガスを脱エタン化し、カラムの上部におけるC及び軽成分とカラムの底部におけるC及び重成分とを得る工程と、C及び軽成分を脱メタン化して排ガスと液相のC成分を得る工程と、前記排ガスを液化する工程と、その液化した液相を回収して前記脱メタン化の工程に戻す工程とを含む。
【0007】
一実施例において、本発明による前記方法は、さらに、前記生成ガスの分離の前に、前記生成ガスの圧力を2.0〜4.0MPaGまで増大させる工程を含む。
【0008】
一実施例において、本発明による前記方法は、さらに、前記脱エタン化のカラムの上部から前記液相の材料を抽出し、それを冷却材として使用して前記排ガスを−60〜−98℃の温度で液化する工程を含む。
【0009】
一実施例において、本発明による前記方法は、さらに、前記液相のC成分をエチレン精留してエチレン生成物とエタンとを得る工程を含む。一好適実施例において、前記エチレン生成物またはエタンは、前記排ガスを液化するための冷却材として、置換して、または追加して使用される。
【0010】
一実施例において、本発明による前記方法は、さらに、C及び重成分を脱プロパン化してC成分を除去する工程と、前記C成分を精留してプロピレン生成物を得る工程とを含む。
【0011】
一実施例において、本発明による前記方法は、さらに、液化前に前記排ガスを精留して前記排ガス中のエチレンを回収する工程と、前記エチレンを前記脱エタン化の工程に回収する工程を含む。
【0012】
一実施例において、前記排ガスは液化装置によって液化される。
【0013】
一実施例において、前記排ガスは、プレート式液化装置またはプレート−フィン式液化装置によって液化される。
【0014】
一実施例において、本発明による前記方法に使用される前記生成ガスは、メタノール−オレフィン処理において得られる混合ガスである。この点に関して、本発明による前記方法は、
(1)前記生成ガスの圧力を2.0〜4.0 MPaGまで増大させる工程と、
(2)加圧された前記生成ガスを前記脱エタン化のカラムに投入し、C及び重成分からC及び軽成分を分離する工程と、
(3)Cと軽成分とを前記脱メタン化のカラムに供給して、前記排ガスと液相のC成分とを得る工程と、
(4)前記液相のC成分をエチレン精留カラムに供給してエチレン生成物とエタンとを得る工程と、
(5)Cと重成分とを脱プロパン化のカラムに供給し、C成分を分離し、C成分を前記プロピレン精留カラムに供給してプロピレン生成物を得る工程を含み、
前記脱メタン化のカラムの上部の材料を、還流タンクに供給し、前記排ガスを混合C成分流から分離し、前記還流タンクの前記排ガスを液化のために液化装置に供給し、前記液化された材料流を前記脱メタン化のカラムに還流し、前記液化装置内の冷却材が、
a.前記脱エタン化のカラムの上部から抽出された材料流、または前記還流タンクから抽出された混合C成分流、
b.エチレン生成物及び/またはエタン、
からなるグループから選択される一つである。
【0015】
一好適実施例において、本発明による前記方法は、さらに、前記排ガスを液化する前に、精留カラム部を介して前記排ガスを精留する工程を含み、前記精留カラム部は、この部の底部において前記還流タンクと接続され、前記部の上部において前記液化装置と接続されている。好ましくは、前記液化装置はプレート式液化装置またはプレート−フィン式液化装置である。より好ましくは、前記還流タンク、前記精留カラム部、及び前記プレート式液化装置は一体化されている。
【0016】
別の好適実施例において、前記脱メタン化のカラムは、さらに、カラムトップ液化装置を含み、このカラムトップ液化装置と、前記還流タンクと、前記精留カラム部と、前記プレート式液化装置とは一体化されている。
【0017】
一実施例において、本発明による前記方法は、
(1)圧力増大装置によって前記生成ガスの圧力を2.0〜4.0MPaGまで増大させ、未反応のメタノールと生成したジメチルエーテル及びCOとを除去する工程と、
(2)加圧された前記生成ガスを、冷却した後、気液分離を行い、気相をデシケータに供給して水を除去し、次に、前記脱エタン化のカラムに供給してC及び重成分からC及び軽成分を分離し、C及び軽成分をC水素化システムに供給してエチンを除去し、水素化材流を得る工程と、
(3)前記水素化材流を、冷却した後、前期脱メタン化のカラムに供給し、前記脱エタン化のカラムの上部における材料は、冷却した後、還流タンクに供給して、混合C成分流から排ガスを分離し、前記還流タンクの前記排ガスを、液化装置をその上部に備える精留カラム部に供給し、液化された材料流を前記脱メタン化のカラムに還流し、前記液化装置内の冷却材が、
a.前記脱エタン化のカラムの上部から抽出された材料流、または前記還流タンクから抽出された混合C成分流、
b.エチレン生成物及び/またはエタン
からなるグループから選択される一つである工程と、
(4)前記脱メタン化のカラムの底部の材料を、エチレン精留カラムに供給し、当該カラムの上部におけるエチレン、及び前記カラムの底部におけるエタンを得る工程と、
(5)前記脱エタン化のカラムの底部の材料を、脱プロパン化のカラムに供給し、当該カラムの上部におけるC成分、及び当該カラムの底部におけるエタンを得、その後に、C成分をプロピレン精留カラムに供給し、当該カラムの上部におけるプロピレン生成物、及び当該カラムの底部におけるプロパンを得る工程と、
を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図面を参照して、本発明の詳細説明から、上述したもの及びその他の特徴及び利点が明白となる。
【0019】
上述したように、DTO処理は実質的にMTO処理と同じである。従って、MTO反応装置についてのみ以下詳述する。
【0020】
一般に、80%以上(炭素元素に基づく)のメタノールが、MTO反応装置でのメタノール触媒反応後、工業的にエチレンとプロピレンとに転化される。同時に、少量のメタン、二酸化炭素、C以上の酸化物及び炭化水素も、極めて少量の水素とエチンと共に生成される。多くの場合、急冷と洗浄後、MTO反応装置のガスから大半の酸化物が除去され、その圧力は0.2MPaG以下である。そのような物質が、本発明でいうところのMTO生成ガスである。本発明の低級オレフィンを回収する方法は、そのようなMTO生成ガスから、低級オレフィン、すなわち、主としてエチレンとプロピレンとを回収するために使用することができ、それら全ての濃度が重合化グレード基準に達することができる。
【0021】
好ましくは、本発明の低級オレフィンを回収する方法は、以下の工程を含む。
(1)生成ガスの圧力を2.0〜4.0MPaGまで増大させる工程
(2)加圧された生成ガスを脱エタン化カラム10に投入し、C及び重成分からC及び軽成分を分離する工程
(3)Cと軽成分とを脱メタン化カラム13に供給して、排ガスと液相のC成分とを得る工程
(4)液相のC成分をエチレン精留カラム22に供給してエチレン生成物とエタンとを得る工程
(5)Cと重成分とを脱プロパン化カラム23に供給し、C成分を分離し、C成分をプロピレン精留カラム25に供給してプロピレン生成物を得る工程
ここで、脱メタン化カラム13の上部の材料は、還流タンク17に供給され、排ガスが混合C成分流から分離される。還流タンク17の排ガスは液化のために液化装置19に供給され、その液化された材料流は脱メタン化カラム13に還流される。液化装置19内の冷却材は以下からなるグループから選択される一つである。
a.脱エタン化カラムの上部から抽出された材料流、または還流タンクから抽出された混合C成分流
b.エチレン生成物及び/またはエタン
【0022】
さらに、図1を参照して以下のように説明する。図1は、本発明の方法の一実施例の流れ図を示し、ここで、精留カラム部18は液化装置と一体化されている。図1に図示の低級オレフィンを回収する方法は以下を含む。
【0023】
(1)加圧及び酸性ガス除去システムにおいて、圧力増大装置、例えば、処理ガス圧縮装置2を介して、MTO生成ガスの圧力を、2.0〜4.0MPaG、好ましくは、2.0〜3.0MPaGまで増大させる。酸化物除去システム5は、適当な場所(例えば、圧縮装置の3と4との間)に設置する。洗浄と剥離とによって、フィードストック中の未反応メタノールと、反応によって生成されたジメチルエーテルとを除去し、同時に、酸性ガス除去システム6を設置し、アルカリ洗浄によって反応中に生成されたCOを除去する。
【0024】
(2)C及び軽成分ならびにC及び重成分分離システムにおいて、加圧及び酸性ガス除去システムから得られた冷却ガスをデシケータに供給して水を除去し、必要であれば、吸着システムを設置して、その他の酸化物等の不純物を除去し、次に、脱エタン化カラム10に供給してC及び重成分からC及び軽成分を分離する。ここで、脱エタン化カラム10の運転温度は一般に0〜−25℃である、脱エタン化カラム10の上部の材料をC水素化システム12に投入して前記材料から微量のエチンを除去する。C水素化システムは、通常、固定床反応器であり、ズードケミー社のG58Cや当該技術において一般的なその他の水素化触媒を使用することができる。さらに、MTO生成物中の水素の量が水素化要件を満たすことができない場合は、少量の水素を補充する。
【0025】
(3)脱メタン化システムにおいて、冷却した後に、水素化生成物を脱メタン化カラム13に供給する。ここで、脱メタン化カラム13は−30〜−37℃の温度で運転され、メタン化カラムは生成ガス中のエチレンを回収するために使用される。
【0026】
脱メタン化カラム13の上部の材料は、冷却後、還流タンク17に供給される。メタンと水素の存在により、脱メタン化カラム13の上部の材料は完全には液化されない。還流タンク17は、液化されないエチレンを含む排ガスを含んでいる。もしも排ガスが排出または燃料ガスとして燃焼されるのであれば、大きな経済的損失が生じることになる。従って、脱メタン化カラム13の還流タンクの上部には、通常は、フラットタイプの液化装置19が配設される。
【0027】
さらに図1を参照すると、良好な分離作用を達成するために、一好適実施例は、さらに、精留カラム部18を含み、これは、液化装置19とともに、脱メタン化カラムの還流タンク17に直接接続されている。還流タンク17内の未液化排ガスが精留カラム部18に供給される。精留カラム部18の内部には、充填物、フロートバルブ等の様々な内部カラムコンポーネントを使用することができる。一般に、精留カラム部18の運転温度は−37〜−98℃である。好ましくは、液化装置19は精留カラム部18の上部に配設される。より好ましくは、エチレン回収率を増大させるべく、精留カラム部18と液化装置19とは一体化される。
【0028】
図2は、本発明による方法の別実施例の流れ図である。この方法における脱メタン化カラム13は、カラムトップ液化装置15を含み、ここで、カラムトップ液化装置15、還流タンク17、精留カラム部18、プレート式液化装置は一体化されている。そのようなコンパクトな構造では還流ポンプは不要であるが、C成分冷却材が上部フラット式液化装置に到達するためには十分な圧力が必要となる。
【0029】
上記各スキームにおいて、液化装置19のために、通常、−40℃以下の温度の冷却材が使用される。新たな冷蔵システム、例えばエチレン冷却システムを回避するために、本発明では、システム自身によって作り出されたC成分を利用して必要な冷却を提供する。液化装置19中のC成分冷却材は、以下からなるグループから選択されるいずれかである。
a.脱エタン化カラムの上部から抽出された材料流、または還流タンクから抽出された混合C成分流
b.エチレン生成物及び/またはエタン
【0030】
冷却材の圧力がスロットルバルブ14によって低減された後、冷却材はエチレン回収装置の液化装置19に供給される。C成分冷却材は、液化装置19内で気化されエチレン回収装置のための冷却を提供し、次に、冷却がシステムによってさらに回収された後、圧縮装置2の適当な箇所(圧力によって決まる)へと還流される。
【0031】
(4)エチレン精留システムにおいて、脱メタン化カラム13の底部からの材料をエチレン精留システム22に供給する。99.09mol%以上のエチレン含有率を有する重合可能グレードのエチレンがエチレン精留システム22の上部に得られる。エタンはエチレン精留システム22の底部に得られ、生産物として取り出されるか、または燃料システムに取り込むことが可能である。エチレン精留カラム22に供給される材料にはC成分しか存在しないので、もしも消費者によってエネルギ消費を低減するために必要とされるのであれば、エチレン精留カラムにおいて開放式ヒートポンプ技術を利用することができる。
【0032】
(5)プロピレン精留システムにおいては、脱エタン化カラム10の底部から得られる材料を脱エタン化カラム23に供給し、脱エタン化カラム23の上部でC成分を分離し、脱エタン化カラム23の底部でC及びそれ以上の成分を分離し、エタン化カラム23の上部の材料とC成分とをプロピレン精留カラム25に供給する。プロピレン精留カラムの上部で99.5%以上のプロピレン含有率を有する重合可能グレードのプロピレンが得られる。プロピレン精留カラム25の底部でプロパンが得られ、これを生産物として供給するか、燃料システムに取り込む。
【0033】
もしも公共エンジニアリングシステムがスチーム不足であれば、装置のエネルギ消費を低減するために、精留カラムと開放式ヒートポンプシステムとの組み合わせをプロピレン精留に使用することができる。ところで、プロピレン冷凍圧縮装置との組み合わせは、圧縮装置ユニットを減少させるものとみなすことができる。この点に関して、プロピレン精留カラム25の上部からのガスは、まず、十分な圧力を達成するためにヒートポンプ圧縮装置27に供給され、プロピレンがリボイラー28内で液化される。それによって液化されたプロピレンの一部は取り出され、その残りはカラムの上部に還流される。したがって、プロピレン精留カラムはリボイラーのための熱を提供するためにスチームを必要としない。
【0034】
十分なスチーム、特に廃棄スチームが存在する環境では、プロピレン精留システムにおいて一般的な流れスキームを使用することができる。
【0035】
別実施例において、本発明による低級オレフィンを回収する方法は、さらに、分離部のための様々な温度範囲の冷却を提供するための冷却材としてプロピレンを使用する従来型の閉じ回路冷却システムを含む。
【0036】
従来技術と比較して、本発明による低級オレフィンを回収する方法は、特に下記の利点を有する。
【0037】
1.脱メタン化還流タンク内の排ガスの一部または全部をエチレン回収装置に供給して、それによって液化されていないガス中のエチレンをさらに回収し、エチレン回収率を、99.5%以上に高めることができる。
【0038】
2.スロットル及び減圧後、脱エタン化還流タンクまたはエチレン精留カラムからの液体材料をエチレン回収装置の冷却材として使用する。なんらエチレン冷却圧縮装置を別途設けることなく、気化した冷却材を処理ガス圧縮装置の適当な箇所に戻し、それによってエネルギとコストを節約する。
【実施例】
【0039】
本発明を、以下の例によってさらに説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0040】
(実施例1)
図1に図示のスキームに従って、低級オレフィンをMTO生成ガスから回収した。分離システムに供給されたMTO生成ガスの組成(mol%)を表3に示した。ここで、温度は41℃、圧力は135kPaAであった。
【0041】
【表1】

【0042】
図1のスキームをPROIIによってシュミレートし、その結果を表2に記録した。
【0043】
【表2】

【0044】
上述した計算結果は、MTO生成ガスを分離するために本発明の方法を使用することによって99.5%のエチレン回収率を達成することができるということを示した。
【0045】
さらに、C冷却材温度とエチレン損失率との間の関係を出発物質の組成でテストし、ここでは圧縮装置の出口の圧力は絶対圧で2850kPaであった。エチレン損失は、脱メタン化カラムの上部でのエチレン損失率を意味し、エチレンカラムの底部でのエチレン損失率は0.03%であった。
【0046】
(実施例2)
図1に図示のスキームに従って、低級オレフィンをMTO生成ガスから回収した。分離システムに供給されたMTO生成ガスの組成(mol%)を表3に示した。ここで、温度は41℃、圧力は135KPaAであった。
【0047】
【表3】

【0048】
図1のスキームをSimSci Co.のPROVISION 7.0スキームシュミレーションソフトウエアによってシュミレートし、表4に記録したシュミレーション計算データ結果を得た。
【0049】
【表4】

【0050】
前記計算結果は、MTO生成ガスを分離するために本発明の方法を使用することによって99.5%のエチレン回収率を達成することができるということを示した。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の方法の一実施例の流れ図
【図2】本発明の方法の別実施例の流れ図
【符号の説明】
【0052】
1 MTO生成ガス
2 生成ガス圧縮装置
3 加圧された生成ガス
4 圧縮装置の出口の冷却器、
5 酸化物除去システム
6 酸性ガス除去システム
8 圧縮装置の出口の生成ガス
9 圧縮装置の出口の冷却器、
10 脱エタン化カラム
11 C成分冷却材
12 エチン水素化
13 脱メタン化カラム
14 C成分冷却材スロットルバルブ
15 脱メタン化カラムの上部の液化装置
16 脱メタン化カラム還流
17 脱メタン化カラム還流タンク
18 脱メタン化カラム還流タンクの上部の精留部
19 液化装置
20 メタン排ガス
21 エチレン精留カラムのフィードストック
22 エチレン精留カラム
23 脱プロパン化カラム
24 プロピレン精留カラムのフィードストック
25 プロピレン精留カラム
26 C冷却材戻り
27 ヒートポンプ圧縮装置
28 エチレン精留カラムリボイラー
29 エタン生成物
30 プロピレン生成物
31 C以上の生成物
32 エチレン生成物
33 プロパン生成物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生成ガスから低級オレフィンを回収する方法であって、前記生成ガスは、メタノール及び/またはジメチルエーテルからオレフィンへの転化によって得られる混合ガスであり、前記生成ガスを脱エタン化し、カラムの上部におけるC及び軽成分とカラムの底部におけるC及び重成分とを得る工程と、C及び軽成分を脱メタン化して排ガス及び液相のC成分を得る工程と、前記排ガスを液化する工程と、その液化した液相を回収して前記脱メタン化の工程に戻す工程とを含む方法。
【請求項2】
さらに、前記生成ガスを分離する前に、前記生成ガスの圧力を2.0〜4.0MPaGまで増大させる工程を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
さらに、前記脱エタン化のカラムの上部から前記液相の材料を抽出し、それを冷却材として使用して前記排ガスを−60から−98℃の温度で液化する工程を含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
さらに、前記液相のC成分をエチレン精留してエチレン生成物とエタンとを得る工程を含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記エチレン生成物またはエタンは、前記排ガスを液化するための冷却材として、置換して、または追加して使用される請求項4に記載の方法。
【請求項6】
さらに、C及び重成分を脱プロパン化してC成分を除去する工程と、前記C成分を精留してプロピレン生成物を得る工程とを含む請求項1に記載の方法。
【請求項7】
さらに、液化前に前記排ガスを精留して前記排ガス中のエチレンを回収する工程と、前記エチレンを前記脱エタン化の工程に回収する工程とを含む請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記排ガスは液化装置によって液化される請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記排ガスは、プレート式液化装置またはプレート−フィン式液化装置によって液化される請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記生成ガスは、メタノール−オレフィン処理において得られる混合ガスである請求項1に記載の方法。
【請求項11】
(1)前記生成ガスの圧力を2.0〜4.0MPaGに増大させる工程と、
(2)加圧された前記生成ガスを前記脱エタン化のカラム(10)に投入し、C及び重成分からC及び軽成分を分離する工程と、
(3)Cと軽成分とを前記脱メタン化のカラム(13)に供給して、前記排ガスと液相のC成分を得る工程と、
(4)前記液相のC成分をエチレン精留カラム(22)に供給してエチレン生成物とエタンとを得る工程と、
(5)Cと重成分とを脱プロパン化のカラム(23)に供給し、C成分を分離し、C成分を前記プロピレン精留カラム(25)に供給してプロピレン生成物を得る工程とを含み、
前記脱メタン化のカラム(13)の上部の材料を、還流タンク(17)に供給し、前記排ガスを混合C成分流から分離し、前記還流タンク(17)の前記排ガスを液化のために液化装置(19)に供給し、液化された材料流を前記脱メタン化のカラム(13)に還流し、前記液化装置(19)内の冷却材が、
a.前記脱エタン化のカラムの上部から抽出された材料流、または前記還流タンクから抽出された混合C成分流、
b.エチレン生成物及び/またはエタン、
からなるグループから選択される一つである請求項10に記載の方法。
【請求項12】
さらに、前記排ガスを液化する前に、精留カラム部(18)を介して前記排ガスを精留する工程を含み、前記精留カラム部(18)は、この部の底部において前記還流タンク(17)と接続され、前記部の上部において前記液化装置(19)と接続されている請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記液化装置(19)はプレート式液化装置またはプレート−フィン式液化装置である請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記還流タンク(17)、前記精留カラム部(18)、及び前記プレート式液化装置は一体化されている請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記脱メタン化のカラム(13)は、さらに、カラムトップ液化装置(15)を含み、このカラムトップ液化装置(15)と、前記還流タンク(17)と、前記精留カラム部(18)と、前記プレート式液化装置とは一体化されている請求項11に記載の方法。
【請求項16】
(1)圧力増大装置(2)によって前記生成ガス(1)の圧力を2.0〜4.0MPaGまで増大させ、未反応のメタノールと生成したジメチルエーテル及びCOとを前記生成ガス(1)から除去する工程と、
(2)加圧された前記生成ガスを、冷却した後、気液分離を行い、気相をデシケータに供給して水を除去し、次に、前記脱エタン化のカラム(10)に供給してC及び重成分からC及び軽成分を分離し、C及び軽成分をC水素化システム(12)に供給してエチンを除去し、水素化材流を得る工程と、
(3)前記水素化材流を、冷却した後、前記脱メタン化のカラム(13)に供給し、前記脱メタン化のカラム(13)の上部における材料を、冷却した後、還流タンク(17)に供給して、混合C成分流から排ガスを分離し、前記還流タンク(17)の前記排ガスを、液化装置(19)をその上部に備える精留カラム部(18)に供給し、液化された材料流を前記脱メタン化のカラム(13)に還流し、前記液化装置(19)内の冷却材が、
a.前記脱エタン化のカラムの上部から抽出された材料流、または前記還流タンクから抽出された混合C成分流、
b.エチレン生成物及び/またはエタン、
からなるグループから選択される一つである工程と、
(4)前記脱メタン化のカラム(13)の底部の材料を、エチレン精留カラム(22)に供給し、当該カラム(22)の上部におけるエチレン、及び当該カラム(22)の底部におけるエタンを得る工程と、
(5)前記脱エタン化のカラム(10)の底部の材料を、脱プロパン化のカラム(23)に供給し、当該カラム(23)の上部におけるC成分、及び当該カラム(23)の底部におけるエタンを得、その後に、C成分をプロピレン精留カラム(25)に供給し、当該カラム(25)の上部におけるプロピレン生成物、及び当該カラム(25)の底部におけるプロパンを得る工程と、
を含む請求項10に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−510199(P2009−510199A)
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−532569(P2008−532569)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際出願番号】PCT/CN2006/002558
【国際公開番号】WO2007/036156
【国際公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【出願人】(508095740)
【出願人】(508095739)
【Fターム(参考)】