説明

オレフィンの重合用成分および触媒

本発明は、Mg、Ti、ハロゲン、および特定式のγ-ブチロラクトン誘導体から選択される電子供与体を含む、オレフィンCH2=CHR(式中、Rは水素または1〜12の炭素原子を有する炭化水素基である)の重合用固体触媒成分に関する。前記触媒成分は、オレフィン、特にプロピレンの重合に用いられるとき、高収率で、かつ高いキシレン不溶性によって示される高いアイソタクチック指数を有するポリマーを与え得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィンの重合用触媒成分、それから得られる触媒、およびオレフィンの重合における前記触媒の使用に関する。特に、本発明は、オレフィンの立体特異重合に好適な、Ti、Mg、ハロゲンおよび特定のγ-ブチロラクトン誘導体から選択される電子供与化合物を含む触媒成分に関する。前記触媒成分は、オレフィン、特にプロピレンの重合に用いられるとき、高収率で、かつ高いキシレン不溶性によって示される高いアイソタクチック指数を有するポリマーを与え得る。
【背景技術】
【0002】
オレフィン重合触媒の製造用電子供与化合物としての、いくつかのγ-ブチロラクトン誘導体の使用が当該技術で知られている。EP86473号は、触媒成分の製造における内部供与体として、α-メチル-α-フェニル-ブチロラクトン(実施例11)の使用を開示している。しかしながら、得られるポリプロピレンの立体規則性とその触媒の活性は共に十分でない。
【0003】
EP383346号には、一般式(R1O)i(R2O)j(R3O)k-Z-COOR4(式中、R1〜R4は炭化水素基であり、かつZは2価の基であり、かつi、jおよびkはそれらの合計が少なくとも1である0〜3の整数である)のアルコキシエステルの使用が開示されている。前記特許出願は、ラクトンまたはアルコキシラクトン誘導体を記載していない。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
したがって、あるアルコキシ置換されたγ-ブチロラクトン誘導体の使用が、従来技術の公知のラクトンを含む触媒成分に対して活性および立体特異性の増加した触媒成分を与えることがわかったことは非常に驚くべきことである。
【0005】
したがって、本発明の目的は、Mg、Ti、ハロゲン、および式(I):
【化1】

【0006】
[式中、基R2〜R6は同一または異なって、水素または任意にヘテロ原子を含有するC1〜C20炭化水素基であり、R1は任意にヘテロ原子を含有するC1〜C20炭化水素基であり、かつ2またはそれ以上の基R2〜R6は結合して環を形成することができる]
のγ-ブチロラクトン誘導体から選択される電子供与体を含むオレフィンCH2=CHR(式中、Rは水素または1〜12の炭素原子を有する炭化水素基である)の重合用固体触媒成分を提供することである。
【0007】
基R5〜R6は、水素またはC3〜C10炭化水素基、好ましくはアルキル、シクロアルキル、アリールおよびアリールアルキル基の中から選択されるのが好ましい。水素またはC3〜C10アルキルの使用が特に好ましい。基R4は、C3〜C10炭化水素基、特に1級または2級のアルキル基の中から選択されるのが好ましい。直鎖状の1級のアルキルおよびシクロアルキル-アルキル基が特に好ましい。
基R2〜R3は、好ましくは水素である。
基R1は、1級のC1〜C10アルキル基の中から選択されるのが好ましい。特に好ましい基は、メチル、エチル、イソブチル、イソペンチル、ネオペンチル、2-メチル-ブチル、2-エチル-ブチルおよび2-エチル-ヘキシルである。
【0008】
有用なアルコキシ置換されたγ-ブチロラクトン誘導体の特定の例は、α-メチル-α-メトキシメチル-γ-ブチロラクトン、α-ヘキシル-α-メトキシメチル-γ-ブチロラクトン、α-シクロヘキシルメチル-α-メトキシメチル-γ-ブチロラクトン、α-シクロヘキシルメチル-α-エトキシメチル-γ-ブチロラクトン、α-シクロヘキシルメチル-γ-シクロヘキシル-α-メトキシメチル-γ-ブチロラクトン、α-ベンジル-α-メトキシメチル-γ-ブチロラクトン、α-イソプロピル-α-メトキシメチル-γ-ブチロラクトン、α-シクロヘキシル-α-メトキシメチル-γ-ブチロラクトン、α-フェニル-α-メトキシメチル-γ-ブチロラクトンである。
【0009】
上記の説明のように、本発明の触媒成分は、上記の電子供与体以外にTi、Mgおよびハロゲンを含む。特に触媒成分は、少なくともTi−ハロゲン結合を有するチタン化合物を含み、かつ上記の電子供与化合物は、Mgハライド上に担持されている。マグネシウムハライドは、チーグラー・ナッタ触媒用支持体として、特許文献から広く知られている活性形態のMgCl2が好ましい。特許USP4,298,718号およびUSP4,495,338号は、チーグラー・ナッタ触媒におけるこれらの化合物の使用を最初に記載している。これらの特許から、オレフィンの重合用触媒の成分における支持体または助支持体(co-support)として用いられる活性形態のマクネシウムジハライドは、不活性ハライドのスペクトルに現れる最強回折線の強度が減少し、かつ不活性ハライドのスペクトルに現れる最強回折線が、その最大強度がより強い線の角度に対してより低い角度に向って移動したハロ(halo)によって置き換わっているX線スペクトルによって特徴付けられることが公知である。
【0010】
本発明の触媒成分において用いられる好ましいチタン化合物は、TiCl4およびTiCl3であり;さらに、式Ti(OR)n-yy(式中、nはチタンの原子価であり、yは1とnとの間の数である)のTi−ハロアルコラートも用いることができる。
【0011】
固体触媒成分の製造は、いくつかの方法により行うことができる。
これらの方法の1つによれば、無水状態のマグネシウムジクロリドおよびγ-ブチロラクトン誘導体が共に、マグネシウムジクロリドの活性化が起こる条件下で微粉砕される。そのようにして得られた生成物は、80と135℃との間の温度で過剰のTiCl4と1回またはそれ以上処理することができる。この処理は、塩素イオンが消失するまで炭化水素溶剤での洗浄により引き続き行われる。
【0012】
さらなる方法によれば、無水状態のマグネシウムクロリド、チタン化合物およびγ-ブチロラクトン誘導体の共微粉砕によって得られた生成物が、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロメタンなどのようなハロゲン化炭化水素で処理される。その処理は、40℃からハロゲン化炭化水素の沸点までの温度で、1〜4時間の間の時間行われる。次いで、得られた生成物は、一般にヘキサンのような不活性な炭化水素溶剤で洗浄される。
【0013】
もう1つの方法によれば、マグネシウムジクロリドがよく知られた方法により予備活性化され、次いで溶液中にγ-ブチロラクトン誘導体を含む過剰のTiCl4で約80〜135℃の温度で処理される。TiCl4での処理が繰り返され、未反応のTiCl4を除去するために、固体がヘキサンで洗浄される。
【0014】
さらなる方法は、マグネシウムアルコラートまたはクロロアルコラート(特にクロロアルコラートはUS4,220,554号により製造される)と、γ-ブチロラクトン誘導体を含む過剰のTiCl4との、溶液中、約80〜120℃の温度での反応からなる。
【0015】
好ましい方法によれば、固体触媒成分は、式Ti(OR)n-yy(式中、nはチタンの原子価であり、yは1とnとの間の数である)のチタン化合物、好ましくはTiCl4を、MgCl2・pROH(式中、pは0.1と6、好ましくは2と3.5との間の数であり、かつRは1〜18の炭素原子を有する炭化水素基である)の付加物から誘導されるマグネシウムクロリドとを反応することにより製造することができる。付加物は、アルコールとマグネシウムクロリドとを、付加物と不混和性の不活性な炭化水素の存在下、攪拌条件下、付加物の融点(100〜130℃)で操作して混合することにより、球状形態で好適に製造することができる。次いで、エマルションが素早く急冷され、その結果、球状粒子の形態で付加物の固化が起こる。
【0016】
この手法により製造される球状付加物の例は、USP4,399,054号およびUSP4,469,648号に記載されている。そのようにして得られた付加物は、アルコールのモル数が一般に3より低い、好ましくは0.1〜2.5である付加物を得るために、Ti化合物と直接反応させることができるか、または予め温度制御された脱アルコラート化(80〜130℃)に付すことができる。Ti化合物との反応は、冷TiCl4中(一般に0℃)で付加物(脱アルコラート化された、またはそれ自体)を懸濁することにより行うことができ;その混合物は、80〜130℃まで加熱され、この温度で0.5〜2時間保持される。TiCl4との処理は、1回またはそれ以上行うことができる。γ-ブチロラクトン誘導体は、TiCl4との処理の間に添加することができる。電子供与化合物との処理は、1回またはそれ以上繰り返すことができる。
【0017】
球状形態の触媒成分の製造は、例えば、欧州特許出願EP-A-395083号、EP-A-553805号、EP-A-553806号、EPA-601525号およびWO98/44001号に記載されている。
【0018】
上記の方法により得られる固体触媒成分は、一般的に20と500m2/gの間、好ましくは50と400m2/gの間の表面積(B.E.T.法による)と、0.2cm3/gより高い、好ましくは0.2と0.6cm3/gの間の全多孔度(B.E.T.法による)を示す。10,000Åに及ぶ半径を有する空隙に起因する多孔度(Hg法)は、一般に0.3〜1.5cm3/g、好ましくは0.45〜1cm3/gの範囲である。
【0019】
本発明の固体触媒成分のさらなる製造方法は、80〜130℃の間の温度での、マグネシウムジアルコキシドまたはジアリールオキシドのようなマグネシウムジヒドロカルボキシルオキシド化合物の、芳香族炭化水素(トルエン、キシレンなどのような)中のTiCl4の溶液でのハロゲン化からなる。芳香族炭化水素溶液中でのTiCl4による処理は、1回またはそれ以上繰り返すことができ、かつγ-ブチロラクトン誘導体はそれらの1回またはそれ以上の処理中に添加される。
【0020】
これらの製造方法のいずれにおいても、所望のγ-ブチロラクトン誘導体は、そのまま添加できるか、または代替法として、例えば、エステル化、内部エステル化(internal esterification)などのような公知の化学反応の手段により、望ましい電子供与化合物に変換し得る適切な前躯体を使用することによりその場で得ることができる。一般的に、γ-ブチロラクトン誘導体は、0.01〜1、好ましくは0.05〜0.5のMgCl2に対するモル比で触媒成分の製造に用いられる。
【0021】
本発明による固体触媒成分は、公知の方法によりそれらを有機アルミニウム化合物と反応させることにより、オレフィンの重合用触媒に変換される。
【0022】
特に、本発明の目的は、
(a)Mg、Tiおよびハロゲン、ならびに式(I):
【化2】

【0023】
[式中、基R2〜R6は同一または異なって、水素または任意にヘテロ原子を含有するC1〜C20炭化水素基であり、R1は任意にヘテロ原子を含有するC1〜C20炭化水素基であり、かつ2またはそれ以上の基R2〜R6は結合して環を形成することができる]
のγ-ブチロラクトン誘導体から選択される電子供与体を含む固体触媒成分
(b)アルキルアルミニウム化合物、および任意に
(c)1つまたはそれ以上の電子供与化合物(外部供与体)
の間での反応生成物を含むオレフィンCH2=CHR(式中、Rは水素または1〜12の炭素原子を有する炭化水素基である)の重合用触媒である。
【0024】
アルキル-Al化合物(b)は、好ましくは、例えばトリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ-n-ブチルアルミニウム、トリ-n-ヘキシルアルミニウムおよびトリ-n-オクチルアルミニウムのようなトリアルキルアルミニウム化合物から選択される。また、トリアルキルアルミニウムの、アルキルアルミニウムハライド、アルキルアルミニウムハイドライド、またはAlEt2ClおよびAl2Et3Cl3のようなアルキルアルミニウムセスキクロリドとの混合物を用いることもできる。
【0025】
外部供与体(c)は、γ-ブチロラクトン誘導体と同じ種類であることができ、また異なることもできる。好適な外部電子供与化合物は、珪素化合物、エーテル類、エチル4-エトキシベンゾエートのようなエステル類、アミン類、複素環式化合物、特に2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、ケトン類および一般式(II):
【化3】

【0026】
[式中、RI、RII、RIII、RIV、RVおよびRVIは互いに同一または異なり、水素または1〜18の炭素原子を有する炭化水素基であり、かつRVIIおよびRVIIIは互いに同一または異なり、それらが水素でありえないということ以外は、RI〜RVIと同じ意味を有し;1つまたはそれ以上のRI〜RVIII基は結合して環を形成することができる]
の1,3-ジエーテル類である。特に好ましくは、RVIIおよびRVIIIがC1〜C4アルキル基から選択される1,3-ジエーテル類である。
【0027】
もう1つの好ましい外部供与体の種類は、式:Ra5b6Si(OR7)c(式中、aおよびbは0〜2の整数であり、cは1〜3の整数であり、かつ合計(a+b+c)は4であり;R5、R6およびR7は、任意にヘテロ原子を含有する1〜18の炭素原子を有する、アルキル、シクロアルキルまたはアリール基である)の珪素化合物である。
特に好ましくは、aが1、bが1、cが2であり、R5およびR6の少なくとも1つが任意にヘテロ原子を含有する3〜10の炭素原子を有する、分枝状のアルキル、シクロアルキルまたはアリール基から選択され、かつR7がC1〜C10アルキル基、特にメチルである珪素化合物である。
【0028】
このような好ましい珪素化合物の具体例は、メチルシクロヘキシルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチル-tert-ブチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、2-エチルピペリジニル-2-tert-ブチルジメトキシシランおよび1,1,1-トリフルオロプロピル-2-エチルピペリジニル-ジメトキシシランである。
また、aが0、cが3であり、R6が任意にヘテロ原子を含有する、分枝状のアルキルまたはシクロアルキル基であり、かつR7がメチルである珪素化合物も好ましい。
このような好ましい珪素化合物の具体例は、シクロヘキシルトリメトキシシラン、tert-ブチルトリメトキシシランおよびテキシルトリメトキシシランである。
【0029】
電子供与化合物(c)は、0.1〜500、好ましくは1〜300、より好ましくは3〜100の有機アルミニウム化合物と前記電子供与化合物(c)との間のモル比で与えられるような適切な量で用いられる。
前に示したように、オレフィン、特にプロピレンの(共)重合において用いられるとき、本発明の触媒は、高収率で、高いアイソタクチック指数(高いキシレン不溶性によって示される)を有するポリマーを与え、したがって、特性の優れたバランスを示す。これは、以下に報告する比較例からわかるように、従来技術のラクトン類の内部電子供与体としての使用が収率および/またはキシレン不溶性に関して悪い結果を与えるという事実からは特に驚くべきことである。
【0030】
したがって、本発明のさらなる目的は、
(a)上記の固体触媒成分;
(b)アルキルアルミニウム化合物および、任意に
(c)1つまたはそれ以上の電子供与化合物(外部供与体)
の間での反応生成物を含む触媒の存在下で行われるオレフィンの(共)重合方法である。
【0031】
(共)重合される好ましいオレフィン類は、2〜12の炭素原子を有するアルファオレフィンである。特に、エチレン、プロピレン、ブテン-1、ヘキセン-1およびオクテン-1である。それらの中でも、エチレン、プロピレン、ブテン-1およびそれらの混合物が特に好ましい。重合工程は、例えば不活性な炭化水素溶媒に希釈するように用いるスラリー重合、または反応媒体として液体モノマー(例えば、プロピレン)を用いる塊状重合といった公知の技術により行うことができる。また、1つまたはそれ以上の流動化または機械的攪拌床反応器で操作する気相での重合工程を行うこともできる。
【0032】
重合は、一般に20〜120℃、好ましくは40〜80℃の温度で行われる。重合が気相で行われるとき、その操作圧力は、一般に0.5と10MPaとの間、好ましくは1と5MPaとの間である。塊状重合における操作圧力は、一般に1と6MPaとの間、好ましくは1.5と4MPaとの間である。水素または連鎖移動剤として作用し得る他の化合物は、ポリマーの分子量を制御するために用いることができる。
【0033】
次の実施例は、本発明をより説明するために非限定的に与えられる。
特徴付け
γ-ブチロラクトン誘導体の製造
γ-ブチロラクトン誘導体は、次に説明する手法により製造することができる。
【0034】
2-(シクロヘキシル-メチル)-2-メトキシメチル-γ-ブチロラクトン
2-ベンジル-γ-ブチロラクトン
THF中のジイソプロピルアミンの溶液(63.0mL)を−10℃でブチルリチウム(ヘキサン中の1.6M溶液の268mL)で滴下処理した。添加の完了時に、反応混合物を−70℃に冷却し、次いで混合物の温度が−60℃以下にとどまるような速度を維持する添加速度でγ-ブチロラクトン(33.0mL)で滴下処理した。−70℃でさらに30分間攪拌後、再び混合物の温度が−60℃以下にとどまるような速度を維持する添加速度で、混合物をベンジルブロミド(51.0mL)で滴下処理した。添加の完了後に、反応混合物の攪拌を−70℃で2時間続けた。次いで、混合物を−0℃まで温め直し、少量の水の添加により急冷した。溶媒を真空中で除去し、残渣をジクロロメタンに再溶解し、10%塩酸水溶液、次いで水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、ロータリーエバポレーターで濃縮し、真空中で蒸留して、26.0g(34%)の標題の化合物を与えた。
【0035】
2-(シクロヘキシル-メチル)-γ-ブチロラクトン
250mLのオートクレーブで、2-ベンジル-γ-ブチロラクトン(5.00g)とイソプロパノール(60mL)中のRh-触媒(炭素上の5重量%Rh、0.500g)との混合物を、120℃で18時間、水素(13バール)で処理した。水素化の完了時に、混合物を濾過し、ロータリーエバポレーターで濃縮し、4.75g(92%)の標題の化合物を与えた。
【0036】
2-(シクロヘキシル-メチル)-2-メトキシメチル-γ-ブチロラクトン
THF中のジイソプロピルアミンの溶液(19.0mL)を−10℃でブチルリチウム(ヘキサン中の1.6M溶液の82.5mL)で滴下処理した。次に、反応混合物を−78℃に冷却し、混合物の温度が−60℃以下にとどまるような速度を維持する添加速度で2-(シクロヘキシル-メチル)-γ-ブチロラクトン(18.0mL)で滴下処理した。添加の完了後に、混合物を−78℃で4.5時間攪拌し、次いで−40℃まで温め直し、この温度でクロロメチルメチルエーテル(10.8mL)で滴下処理した。その後、混合物を室温までゆっくり温め直し、この温度で60時間攪拌した。溶媒を真空中で除去し、残渣をジクロロメタンに再溶解し、次いで塩化アンモニウムの飽和水溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、ロータリーエバポレーターで濃縮し、最後に真空中で蒸留して、59.0g(25%)の標題の化合物を与えた。
【0037】
2-(シクロヘキシル-メチル)-2-エトキシメチル-γ-ブチロラクトン
2-(シクロヘキシル-メチレン)-γ-ブチロラクトン
トルエン(100mL)中の2-アセチル-γ-ブチロラクトン(15.4g)の溶液を10分間、水酸化ナトリウム(4.8g)で少しずつ(portionwise)処理し、次いで水の生成が止まるまで(約1時間)、ディーン&スターク水分分離器(Dean & Stark moisture receiver)で還流させた。その後、反応混合物を1時間、シクロヘキサンカルバルデハイド(cyclohexanecarbaldehyde)(15.0g)で滴下処理した。滴下の完了時に、混合物を4時間還流させ、次いで室温まで冷却し、水で洗浄した。硫酸マグネシウムで乾燥させた後、得られた有機相を濾過し、ロータリーエバポレーターで濃縮し、真空中で蒸留して、4.54g(21%)の標題の化合物を与えた。
【0038】
2-(シクロヘキシル-メチル)-γ-ブチロラクトン
2-(シクロヘキシル-メチレン)-γ-ブチロラクトン(8.90g)に室温で塩化ニッケル(II)(1.76g)とエタノール(30mL)との混合物を素早く加えた。得られた反応混合物を0℃に冷却し、この温度で30分間攪拌し、次いで水素化ホウ素ナトリウム(5.60g)で少しずつ処理した。添加の完了時に、混合物を室温で1時間攪拌し、次いで氷と10%塩酸水溶液との混合物を注ぎ込ませることにより急冷した。生成した有機相を分離し、水相をエーテルで抽出した。全てを合わせた有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、ロータリーエバポレーターで濃縮して、6.96g(77%)の標題の化合物を与えた。
【0039】
2-(シクロヘキシル-メチル)-2-エトキシメチル-γ-ブチロラクトン
THF(105mL)中でジイソプロピルアミン(6.50mL)とブチルリチウム(ヘキサン中の1.6M溶液の29.0mL)から製造したリチウムジイソプロピルアミド溶液を−78℃で2-(シクロヘキシル-メチル)-γ-ブチロラクトン(6.96g)で滴下処理した。反応混合物を同じ温度でさらに30分間攪拌し、次いでクロロメチルエチルエーテル(5.05g)で滴下処理した。添加の完了時に、混合物を室温までゆっくり温め直し、この温度で一晩中攪拌した。その後、混合物を氷と10%リン酸水溶液との混合物を注ぎ込ませることにより急冷した。生成した有機相を分離し、水相をトルエンで抽出した。全てを合わせた有機相を水で洗浄し、硫酸カリウムで乾燥させ、濾過し、ロータリーエバポレーターで濃縮し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、溶離液−ヘキサン)により精製して、5.90g(64%)の標題の化合物を与えた。
【0040】
2-イソプロピル-2-メトキシメチル-γ-ブチロラクトン
2-(O,O-ジエチル-ホスホノ)-γ-ブチロラクトン
2-ブロモ-γ-ブチロラクトン(16.0mL)とトリエチルホスフェート(42.0mL)との混合物を還流に至るまで加熱し、反応中に生成したブロモエタンを蒸留した。4時間後、反応混合物の温度を140℃に到達させ、ブロモエタンの生成が終わったことはその反応の終点を示す。得られた混合物を室温に冷却し、次いで真空中で蒸留して、27.0g(61%)の標題の化合物を与えた。
【0041】
2-イソプロピリデン-γ-ブチロラクトン
トルエン(400mL)中の水素化ナトリウム(2.70g)の懸濁液を室温で2-(O,O-ジエチル-ホスホノ)-γ-ブチロラクトン(25.0g)で滴下処理した。水素の生成を伴う反応が終わった後、混合物をアセトン(8.30mL)で滴下処理した。次いで反応混合物の温度を80℃までゆっくり上げ、この温度でさらに2.5時間攪拌を続けた。その後、混合物を室温まで冷却し、氷と水との混合物を注ぎ込ませることにより急冷した。生成した有機相を分離し、水相をトルエンで抽出した。全てを合わせた有機相を炭酸ナトリウムの飽和水溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、ロータリーエバポレーターで濃縮し、真空中で蒸留して、10.5g(74%)の標題の化合物を与えた。
【0042】
2-イソプロピル-γ-ブチロラクトン
250mLのオートクレーブで、2-イソプロピリデン-γ-ブチロラクトン(10.5g)とエタノール(10mL)中のPd-触媒(炭素上の10重量%Pd、0.500g)との混合物を、60℃で18時間、水素(6バール)で処理した。水素化の完了時に、混合物を濾過し、ロータリーエバポレーターで濃縮し、9.70g(91%)の標題の化合物を与えた。
【0043】
THF中のジイソプロピルアミンの溶液(13.1mL)を−10℃でブチルリチウム(ヘキサン中の1.6M溶液の58.4mL)で滴下処理した。次いで、反応混合物を−70℃に冷却し、混合物の温度が−60℃以下にとどまるような速度を維持する添加速度で2-イソプロピル-γ-ブチロラクトン(9.30mL)で滴下処理した。添加の完了後に、混合物を−70℃で3時間攪拌し、次いで−40℃まで温め直し、この温度でクロロメチルメチルエーテル(7.50mL)で滴下処理した。その後、混合物を室温までゆっくり温め直し、この温度で80時間攪拌した。溶媒を真空中で除去し、残渣をジクロロメタンに再溶解し、次いで塩化アンモニウムの飽和水溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、ロータリーエバポレーターで濃縮し、真空中で蒸留して、7.00g(57%)の標題の化合物を与えた。
【0044】
2-フェニル-2-メトキシメチル-γ-ブチロラクトン
(2-ブロモエトキシ)トリメチルシラン
クロロトリメチルシラン(34.9g)とジクロロメタン(200mL)中のトリエチルアミン(40.5g)の溶液を、混合物の温度を30℃以下に維持しながら、2-ブロモエタノール(40.0 g)で滴下処理した。滴下の完了時に、混合物を室温でさらに1時間攪拌し、次いでペンタン(200mL)で希釈した。生成した沈殿物を濾過し、完全にペンタンで洗浄した。得られた濾過水と洗液を合わせて、ロータリーエバポレーターで濃縮し、最後に真空中で蒸留して、57.0g(90%)の標題の化合物を与えた。
【0045】
2-フェニル-γ-ブチロラクトン
トルエン(200mL)中のカリウムtert-ブトキシド(12.3g)の懸濁液を室温でフェニルアセトニトリル(12.9g)と(2-ブロモエトキシ)トリメチル-シラン(23.8g)との混合物で滴下処理した。添加の完了時に、反応混合物を5時間還流させ、次いで室温まで冷却し、氷と水との混合物を注ぎ込ませることにより急冷した。生成した有機相を分離し、水相をベンゼンで抽出した。全てを合わせた有機相を水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、ロータリーエバポレーターで濃縮して、2-フェニル-4-トリメチルシラニルオキシ-ブチロニトリルを与えた。得られたブチロニトリル誘導体を、エタノール(40mL)と70%硫酸水溶液(40mL)との混合物に再溶解し、50℃で3時間攪拌し、室温に冷却後、水(150ml)で希釈した。得られた有機相を分離し、水相をベンゼンで抽出した。全てを合わせた有機相を水、次いで重炭酸ナトリウムの飽和水溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、ロータリーエバポレーターで濃縮し、真空中で蒸留して、11.0g(62%)の標題の化合物を与えた。
【0046】
2-フェニル-2-メトキシメチル-γ-ブチロラクトン
ブチルリチウム(ヘキサン中の1.6M溶液の62.5mL)を−20℃でTHF(200mL)中、ジイソプロピルアミンの溶液(14.0mL)で滴下処理し、得られた混合物を同じ温度でさらに30分間攪拌した。その後、混合物を−90℃に冷却し、THF(50mL)中の2-フェニル-γ-ブチロラクトン(11.0g)の溶液で滴下処理し、次いで、同じ温度で45分間攪拌した。次に、反応混合物をTHF(50mL)中のクロロメチルメチルエーテル(8.05g)の溶液で滴下処理し、さらに10分間攪拌し、次いで室温までゆっくり温め直し、この温度で16時間攪拌した。続いて、反応混合物を氷と10%リン酸水溶液との混合物を注ぎ込ませることにより急冷した。生成した有機相を分離し、水相をクロロホルムで抽出した。全てを合わせた有機相を炭酸水素カリウムの飽和水溶液、次いで水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、ロータリーエバポレーターで濃縮し、真空中で蒸留して11.5g(82%)の標題の化合物を与えた。
【0047】
プロピレン重合:一般手法
4リットルのオートクレーブを70℃で1時間、窒素気流でパージし、次いで30℃でプロピレン気流下、800mgのAlEt3、79.8gのジシクロペンチルジメトキシシランおよび10.0mgの固体触媒成分を含む75mLの無水ヘキサンを充填した。オートクレーブを閉じた。その後、1.5NLの水素をオートクレーブに加え、次いで攪拌下で1.2kgの液体プロピレンを供給した。その温度を5分間で70℃に上げ、この温度で2時間重合を行った。未反応のプロピレンを除去した。得られたポリマーを回収し、真空下、70℃で3時間乾燥させ、秤量し、次いで25℃においてo-キシレンで分画し、キシレン不溶画分の量(X.I.)を決定した。
【0048】
X.I.の測定
2.5gのポリマーを攪拌下、135℃で30分間、250mLのo-キシレンに溶解した。次いで、その溶液を25℃に冷却し、30分後、不溶ポリマー画分を濾過した。得られた溶液を窒素気流中で蒸発させ、残渣を乾燥させ、秤量して、可溶ポリマーのパーセントおよびその差によってキシレン不溶画分(%)を決定した。
【0049】
実施例
実施例1〜5および比較例6〜7
固体触媒成分の製造
窒素でパージした500mLの4つ口フラスコに、0℃で250mlのTiCl4を導入した。攪拌と同時に、10.0gの微小な回転楕円体(microspheroidal)のMgCl2・2.8C25OH(USP4,399,054号の実施例2に記載された方法で、但し10,000の代わりに3,000rpmでの操作により製造された)および7.4ミリモルのγ-ブチロラクトン誘導体を加えた。その温度を100℃まで上げ、120分間維持した。次いで、攪拌を中止し、固体生成物を沈降させ、上澄みを吸い上げた。
【0050】
250mLの別のTiCl4を加えた。その混合物を120℃で60分間反応させ、次いで上澄みを吸い上げた。その固体を60℃において無水ヘキサンで6回(6×100mL)洗浄した。最後にその固体を真空下で乾燥させ、分析した。γ-ブチロラクトン誘導体の種類と量(重量%)および固体触媒成分中に含まれるTiの量(重量%)を表1に報告する。重合結果を表2に報告する。
【0051】
【表1】

【0052】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
Mg、Ti、ハロゲン、および式(I):
【化1】

[式中、基R2〜R6は同一または異なって、水素または任意にヘテロ原子を含有するC1〜C20炭化水素基であり、R1は任意にヘテロ原子を含有するC1〜C20炭化水素基であり、かつ2またはそれ以上の基R2〜R6は結合して環を形成することができる]
のγ-ブチロラクトン誘導体から選択される電子供与体を含むオレフィンの重合用固体触媒成分。
【請求項2】
式(I)のγ-ブチロラクトン誘導体におけるR5〜R6が、水素またはC3〜C10炭化水素基から選択される請求項1による触媒成分。
【請求項3】
基R4が、C3〜C10炭化水素基の中から選択される請求項1による触媒成分。
【請求項4】
基R4が、1級または2級のアルキル基の中から選択される請求項3による触媒成分。
【請求項5】
基R2〜R3が、水素である請求項1による触媒成分。
【請求項6】
基R1が、1級のC1〜C10アルキル基の中から選択される請求項1による触媒成分。
【請求項7】
少なくともTi−ハロゲン結合を有するチタン化合物および活性形態でMgハライド上に担持された式(I)のγ-ブチロラクトン誘導体を含む請求項1の触媒成分。
【請求項8】
− 請求項1〜7のいずれか1つによる固体触媒成分、
− アルキルアルミニウム化合物、および任意に
− 1つまたはそれ以上の電子供与化合物(外部供与体)
の間での反応生成物を含むオレフィンの重合用触媒。
【請求項9】
アルキルアルミニウム化合物が、トリアルキルアルミニウム化合物である請求項8による触媒。
【請求項10】
請求項8〜9のいずれか1つの触媒の存在下で行われるオレフィンの(共)重合方法。

【公表番号】特表2008−502747(P2008−502747A)
【公表日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−515807(P2007−515807)
【出願日】平成17年5月27日(2005.5.27)
【国際出願番号】PCT/EP2005/005821
【国際公開番号】WO2005/123784
【国際公開日】平成17年12月29日(2005.12.29)
【出願人】(501468046)バセル ポリオレフィン イタリア エス.アール.エル. (33)
【住所又は居所原語表記】Via Pergolesi 25,20124 Milano,Italy
【Fターム(参考)】