説明

オレフィン共重合体およびアクリル酸エステル共重合体を含有する潤滑剤

【課題】性能の優れた潤滑油組成物を提供すること
【解決手段】潤滑粘性のあるオイルおよび全体で約1重量%〜約50重量%の共重合体を含有する潤滑油組成物であって、該共重合体は、以下の(A)および(B)を含有する:(A)少なくとも1種のエチレン−脂肪族オレフィン共重合体であって、ここで、該脂肪族オレフィンは、2個〜約24個の炭素原子を含有し、該共重合体(A)は、約600〜約5000の範囲のMnを有する;および(B)以下の単位を含有する少なくとも1種の共重合体:そのエステル基中に2個〜約25個の炭素原子を含有するアクリル酸アルキルエステルモノマーから誘導した単位;および必要に応じて、ビニル芳香族モノマーおよび窒素含有ビニルモノマーからなる群の少なくとも1種の構成要素から誘導した単位を約0.1〜約20重量%。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2001年4月11日に出願された米国仮特許出願第60/282,988号から優先権を主張しており、その開示は、本明細書中で参考として援用されている。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、ポリオレフィンおよびポリアクリル酸エステルを含有する潤滑油組成物に関する。これらの潤滑油組成物は、動力伝達装置潤滑剤中で、良好な低温性能および剪断性能を示し、厳しい装填条件下にて、耐久性を犠牲にすることなく、効率を改良する。本発明はまた、これらのポリオレフィンおよびポリアクリル酸エステルの混合物を含有する重合体組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
流体が外力を受けるとき、それは、内部摩擦のために、流れに抵抗する。粘度は、この内部摩擦の尺度である。
【0004】
潤滑粘性のあるオイルの粘度は、一般に、温度に依存する。この潤滑油の温度が上がると、その粘度は、通常、低下し、この温度が下がると、その粘度は、通常、上昇する。
【0005】
粘度向上剤の機能は、その温度が上昇するにつれて粘度低下の範囲を狭くすること、またはその温度が低下するにつれて粘度上昇の範囲を狭くすること、またはその両方にある。それゆえ、粘度向上剤は、温度の変化に伴った、この粘度向上剤を含むオイルの粘度変化を改善する。それにより、このオイルの流動性が改良される。
【0006】
粘度向上剤は、通常、重合体物質であり、しばしば、粘度指数向上剤と呼ばれる。
【0007】
粘度向上剤は、それを含有する潤滑剤の低温粘度に悪影響を与えないことが望ましい。しばしば、粘度向上剤は、潤滑油の高温粘度特性を向上させる、すなわち、温度上昇に伴う粘度損失を少なくするものの、処理した潤滑剤の低温特性は、悪くなる。また、粘度向上剤は、長い使用期間にわたって、比較的に一定の流動特性を与えることも望ましい。このような材料には、通常、剪断に耐える重合体がある。
【0008】
多くの潤滑油組成物は、粘度向上剤を使用すると有益であり得るのに対して、ギア潤滑剤および自動変速機油は、粘度に特に敏感である。
【0009】
ギア潤滑剤は、使用中にて、高いレベルの剪断を受ける。多くの従来の粘度向上剤から、最初に調製したとき、代表的な粘度特性を備えた潤滑剤が得られるのに対して、ギアセット(例えば、自動車またはトラックの車軸または変速機)を短時間潤滑させるのに使用した後、この粘度向上剤は、剪断を受けて、粘度向上特性が低下する。剪断に伴う粘度損失は、永久損失である。すなわち、この粘度損失は、通常の物理的手段によっても、回復できない。高温および低温での有効性が低下する。
【0010】
ギア潤滑剤はまた、好ましくは、良好な低温粘度特性を有する。
【0011】
自動変速機油(ATF)および他の動力伝達装置潤滑剤およびクランク室潤滑剤では、相対的な低温特性および高温特性を向上させるために、しばしば、粘度調整剤が使用される。ATFでは、その必要条件は、現在、−40℃での粘度について、7,000〜20,000センチポアズ(cP)の範囲であり、100℃での動粘度は、約6.5〜約8.5センチストークス(cSt)の範囲である。さらに最近では、特に、工場出荷要件について、剪断安定性は、性能要件に含められている。さらに別の目標には、粘度調整剤の処理レベルを少なくすることがあり、それにより、費用の面および性能の面の両方で有利となる。
【0012】
本発明によって有利となり得る他の潤滑油組成物には、作動液(例えば、農場用トラクター流体、工業用作動液など)、連続可変変速機(CVT)(例えば、プッシュベルトおよびチェーンドライブCVT、二重クラッチ変速機、手動変速機)、および潤滑剤の粘度特性が特に重要な他のものが挙げられる。
【0013】
米国環境保護局は、厳しい自動車関連の環境規制を実施している。これらの規制の主な焦点は、Corporate Average Fuel Economy(CAFE)基準に関係しており、これは、制定された目標期日までに企業レベルでの省燃費を具体的に徐々に高めることを命じている。省燃費を高める努力は、環境保護局(EPA)がCAFE基準をきつくすることに引き続いて、最優先となっている。
【0014】
CAFE基準は、エンジンおよびそのための潤滑剤の業界全体にわたる研究開発を刺激している。さらに最近では、省燃費に対する動力伝達装置の効果は、ますます重要となっている。
【0015】
特に、省燃費に対する車軸効率の効果が、ますます注目されている。マルチグレードギア油(例えば、SAE75W−140等級車軸油)は、耐久性が優れており、その結果、厳しい条件下でも、操作温度が低くなり、車軸の寿命が長くなる。これらの潤滑剤は、一般に、現在の市場で非常に人気が高い軽トラックおよびスポーツユーティリティ車両(SUV)で使用することが推奨されている。しかしながら、さらに重い荷を積んだSUVおよび軽トラック用の車軸潤滑剤に歴史的に必要な高い粘度は、省燃費を高めるために現在施行されたCAFE目標と矛盾している。
【0016】
それより低い粘度等級は、摩擦「ドラッグ」が低くかつ重要な可動部に到達し易いことから、エネルギー効率にさらに適当である。例えば、市販のSAE 75W−90合成ギア油は、省燃費が良好であるが、苛酷な操作(例えば、トレーラー牽引)には、耐久性に欠ける。
【0017】
1つの局面で有利であり得る成分が、他の局面では、性能を大きく低下させ得ることは、当業者に周知である。しばしば、これは、潤滑油組成物中の異なる成分間での好ましくない相互作用から生じる。ここでの難題は、重要な領域(例えば、スコーリング保護、ベアリング疲労、シール完全性および腐食耐性)を妥協することなく、単一の潤滑組成物に、耐久性およびエネルギー効率の両方を組み込むことにある。
【0018】
伝統的には、ATF、連続可変変速機(CVT)、牽引ドライブおよび動力伝達装置潤滑剤の調合者にとって、研究および調合は、属性を最適に組み合わせた粘度調整剤の設計および選択に集中されている。特に有益であると言われている粘度向上剤の組合せに関連した一部の特許が存在している。
【0019】
米国特許第4,594,378号、および米国特許第4,654,403号および第4,734,446号(これらは、米国特許第4,594,378号の分割出願である)では、変速機油および作動液中で添加剤として有用な重合体組成物が記述されており、これらは、以下を含有する:(A)少なくとも1種の油溶性重合体であって、これは、非芳香族モノオレフィンの単独重合体または該非芳香族モノオレフィンと芳香族モノオレフィンとの共重合体である;および(B−1)カルボキシ含有インターポリマーの少なくとも1種の窒素含有エステル;および/または(B−2)少なくとも1種のアクリル酸エステルの少なくとも1種の油溶性アクリル酸エステル重合生成物の混合物;または(B−1)および(B−2)の1種またはそれ以上の混合物:この重合体組成物を含有する変速機油および作動液は、所望の高温および低温粘度特性を維持しつつ、改良された剪断安定性を示すと言われている。この重合体組成物はまた、(C)有効量の少なくとも1種の低温粘度低減性の液状有機希釈剤(例えば、ナフテン油、または所望の低温特性を有するある種の他の天然油および合成油)を含有し得る。
【0020】
米国特許第5,108,635号は、粘度添加剤として特に有用な組成物に関係しており、これは、希釈油溶液中のオレフィン共重合体およびメタクリル酸ポリアルキルに基づいており、この組成物は、以下を含有する:6〜15重量部の少なくとも1種のエチレン−プロピレン共重合体であって、この共重合体は、約155,000〜約250,000の重量平均分子量を有し、そして60/40〜54/46の範囲のエチレン/プロピレン重量比を示す;2〜8重量部の少なくとも1種のポリ(C1〜20メタクリル酸アルキル)であり、これは、その重量の1〜8%の分散剤モノマーでグラフトされているかグラフトされておらず、このポリメタクリル酸エステルは、30,000〜150,000の範囲の重量平均分子量を有し、このグラフト化または非グラフト化ポリメタクリル酸エステル/エチレン−プロピレン共重合体の重量比は、1/5〜1/1の範囲である;および100重量部にする希釈油。
【0021】
米国特許第5,883,057号は、以下を含有する潤滑組成物に関する:少なくとも約30重量%の少なくとも1種の鉱油であって、この鉱油は、100℃で、約8cSt未満の動粘度を有する;(A)約5重量%〜約30重量%の少なくとも1種の重合体であって、この重合体は、約10,000未満の
【0022】
【化3】

を有する;および(B)約2重量%〜約12重量%の重合体であって、この重合体は、約15,000より大きい
【0023】
【化4】

を有し、ここで、この潤滑組成物は、20時間のテーパーベアリング剪断試験にて、約15%未満の剪断損失を有する。1局面では、この潤滑組成物はまた、(C)約5重量%〜約30重量%の少なくとも1種の流動化剤を含有し得る。この特許はまた、剪断安定性潤滑組成物を調製する際に使用される濃縮物に関する。成分の組合せは、高い処理レベルでも、良好な高温特性および低温特性を与えると言われている。これらの潤滑剤は、剪断安定性が良好であり、1局面では、酸化耐性が改良させている。
【0024】
米国特許第5,821,313号は、窒素含有共重合体を調製する方法、この共重合体、およびその共重合体を含有する潤滑油組成物に関する。この方法は、遊離ラジカル開始剤の存在下にて、必要に応じて、連鎖移動剤の存在下で、以下の(A)および(B)を反応させる工程を包含する:(A)そのエステルアルキル基中に1個〜約24個の炭素原子を含有する1種またはそれ以上のアクリル酸アルキルエステルモノマーを約55重量%〜約99.9重量%であって、ここで、該エステルの少なくとも約50モル%は、該エステルアルキル基中に、少なくとも6個の炭素原子を含有する;および(B)ビニル置換窒素複素環モノマー、アクリル酸ジアルキルアミノアルキルモノマー、ジアルキルアミノアルキルアクリルアミドモノマー、N−第三級ブチルアルキルアクリルアミドおよびビニル置換アミンからなる群から選択される少なくとも1種の窒素含有モノマーを約0.1重量%〜約45重量%であるが、但し、(A)および(B)の全量は、100%に等しい;ここで、モノマー(A)、該遊離ラジカル開始剤および該連鎖移動剤(もし使用するなら)は、まず、混ぜ合わされて、混合物を形成し、それから、該混合物の約10%〜約80%は、モノマー(B)と混合される;モノマー(A)および(B)の該混合物の約20%〜約100%は、発熱が認められるまで加熱され、次いで、反応温度を維持しつつ、約0.25時間〜約5時間にわたって、モノマー(A)および(B)の該混合物の残量(もしあれば)を加え、続いて、0.25時間〜約5時間にわたって、モノマー(A)および開始剤の残留混合物を添加し、必要に応じて、追加開始剤を加え、それから、該反応が完了まで継続される。
【0025】
米国特許第6,124,249号は、以下の(a)、(b)および必要に応じて(c)から誘導した単位を含有する共重合体を記述している:(a)そのエステル基中に約9個〜約25個の炭素原子を含有するメタクリル酸エステル;(b)そのエステル基中に7個〜約12個の炭素原子を含有するメタクリル酸エステルであって、該エステル基は、2−(C1〜4アルキル)置換基を有する;および(c)そのエステル基中に2個〜約8個の炭素原子を含有しかつメタクリル酸エステル(a)および(b)とは異なるメタクリル酸エステル、ビニル芳香族化合物および窒素含有ビニルモノマーからなる群の少なくとも1種のモノマーであるが、但し、該エステルの60重量%以下は、そのエステル基中に11個以下の炭素原子を含有する。
【0026】
PCT公報WO00/71646は、鉱油ベースのギア油および変速機油を記述しており、これらは、主要量の鉱油(これは、9未満のヨウ素価を有し、この場合、その飽和物の少なくとも55%は、脂肪族である)およびギア油または変速機油添加剤。1実施形態では、本発明は、ギア油または変速機油組成物に関し、これは、主要量のベースストックおよび少なくとも1種の機能添加剤を含有し、ここで、該潤滑剤ベースストックの主要量は、9未満のヨウ素価を有しかつ少なくとも45重量%の脂肪族飽和物を含有する鉱油から構成される。これらのギア油および変速機油は、良好な粘度特性および酸化特性を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0027】
【特許文献1】米国特許第4,594,378号
【特許文献2】米国特許第4,654,403号
【特許文献3】米国特許第4,734,446号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
本願発明は上記課題を解決することを目的とする
【課題を解決するための手段】
【0029】
(発明の要旨)
本発明は、潤滑粘性のあるオイルおよび全体で約1重量%〜約50重量%の共重合体を含有する潤滑油組成物であって、該共重合体は、以下の(A)および(B)を含有する潤滑油組成物に関する:(A)少なくとも1種のエチレン−脂肪族オレフィン共重合体であって、ここで、該脂肪族オレフィンは、3個〜約24個の炭素原子を含有し、該共重合体(A)は、約600〜約5000の範囲の
【0030】
【化5】

を有する;および(B)以下の単位を含有する少なくとも1種の共重合体:そのエステル基中に2個〜約25個の炭素原子を含有するアクリル酸アルキルエステルモノマーから誘導した単位;および必要に応じて、ビニル芳香族モノマーおよび窒素含有ビニルモノマーからなる群の少なくとも1種の構成要素から誘導した単位を約0.1〜約20重量%:該共重合体(B)は、約10,000〜約350,000の範囲の
【0031】
【化6】

を有する;ここで、(A):(B)の重量比は、約99:1〜約1:99の範囲である。
【0032】
他の実施形態では、本発明は、以下を含有する重合体組成物に関する:(A)約1重量%〜約99重量%の少なくとも1種のエチレン−脂肪族オレフィン共重合体であって、ここで、該脂肪族オレフィンは、3個〜約24個の炭素原子を含有し、該共重合体(A)は、約600〜約5000の範囲の数平均分子量を有する;および(B)以下の単位を含有する少なくとも1種の共重合体を約99重量%〜約1重量%:そのエステル基中に2個〜約25個の炭素原子を含有するアクリル酸アルキルエステルモノマーから誘導した単位;および必要に応じて、ビニル芳香族モノマーおよび窒素含有ビニルモノマーからなる群の少なくとも1種の構成要素から誘導した単位を約0.1〜約20重量%:該共重合体(B)は、約10,000〜約350,000の範囲の数平均分子量を有する。
【発明の効果】
【0033】
(好ましい実施形態の詳細な説明)
重合体の上記組合せは、自動または手動変速機油、トランスアクスル潤滑剤、ギア潤滑剤(開放系および閉鎖系の両方)、トラクター潤滑剤、金属加工潤滑剤、作動液、および他の潤滑油組成物およびグリース組成物で使用できる潤滑剤に、有用である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の潤滑剤には、自動変速機潤滑剤、手動変速機潤滑剤およびギア潤滑剤が挙げられる。これらの変速機潤滑剤には、General MotorsのDEXRON(登録商標)IIIおよびFordのMERCON(登録商標)およびMERCON(登録商標)Vの自動変速機油要件に合うものが挙げられる。1実施形態では、これらの潤滑剤には、重量またはオフロード変速機油(例えば、Allison C−4仕様に合うもの)が挙げられる。他の実施形態では、これらの潤滑剤は、ギア潤滑剤であり、これには、GL4およびGL5潤滑剤が挙げられる。さらに、他の実施形態では、これらの潤滑剤は、MT−1潤滑剤である。
【0035】
本明細書中で記述しているように、本発明は、潤滑油組成物、特に、ギアオイルおよび変速機油組成物に関し、これらは、潤滑粘性のあるオイルを含有する。この潤滑粘性のあるオイルは、単一成分であり得るか、または機能添加剤と組み合わせる成分の組合せであり得る。1実施形態では、そのベースストックは、主要量の下記の鉱油を含有する。このベースストックの少数は、他の鉱油またはポリ−α−オレフィンから構成され得る。本発明の潤滑油組成物は、さらに、少なくとも1種の機能添加剤を含有し得る。この機能添加剤は、潤滑粘性のあるオイルにより得られる特性に加えて、これらの組成物に、追加特性を加える。このような機能の例には、耐摩耗、極圧、酸化防止、摩擦調節などが挙げられる。
【0036】
潤滑組成物は、しばしば、高い剪断状態に晒される。重合体を含有する潤滑油は、その重合体の剪断に遭遇し得、その結果、粘度向上特性が低下する。従って、重合体含有潤滑油の剪断安定性は、しばしば、重要である。
【0037】
本明細書中で記述するように、粘度向上重合体の特に有効な組合せが発見され、これは、燃料効率を良好に保ちつつ、広範囲の潤滑用途にわたって、低温粘度および剪断安定性に対して、予想外に良好な性能を与えるだけでなく、厳しい負荷状態(例えば、軽トラックおよびSUVの車軸における状態)にて、優れた性能を与える。同時に、単一の粘度向上剤で処理することと比較すると、この組合せにより、また、粘度調整処理レベルが相当に(しばしば、30〜50%)低下でき、その結果、調合の経済性が高まる。
【0038】
この上で記述し以下でさらに詳細に論述するように、本発明の組成物は、特定のエチレン−脂肪族オレフィン共重合体および特定のアクリル酸アルキルエステルモノマーの共重合体を含有する。
【0039】
本明細書中で記述したように、粘度制御および剪断安定性が良好な潤滑油組成物が望ましい。
【0040】
他の重要な特性には、牽引がある。牽引とは、基本的に、流れに対する流体の内部抵抗の尺度である。それは、バルク流体に関連した物理的特性であり、完全流体膜潤滑下にて、顕れる。本明細書中で定義するように、牽引は、流体の分子構造の関数である。種々の程度の金属間接触が起こる境界条件または混合膜条件下にて活性化する性能は、牽引効果には大きく寄与しない。
【0041】
流体および増粘剤の牽引特性は、一定のチャーニングが摩擦熱を発生させる場合、ギアオイルおよび変速機油で遭遇し得る操作温度の指標のうちである。牽引特性は、特に、負荷が軽い状況において、その流体により直接生じる損失にて、重要な役割を果たす。負荷が重い状況では、牽引係数が低い流体は、牽引係数が高いものよりも低い温度で流れると予想されている。
【0042】
一定温度における所定の流体について、牽引係数対滑り/転がり比のプロフィールは、Mini−Traction Machine(MTM)として知られている市販の試験リグを使用して測定でき、これは、PCS Instruments,London,U.K.から入手でき、その装置には、非常によく研磨した鋼鉄製円板に接して、非常によく研磨した鋼鉄球ベアリングが装填されている。この鋼鉄球および円板の両方は、各要素の速度を別個に制御しつつ、互いに対して相対運動で回転される。異なる転がり速度下にて、その界面では、所望量の滑りが導入される。流体の牽引挙動は、それらの牽引プロフィールを重ね合わせることにより、比較できる;あるいは、牽引係数は、所定滑り−転がり比で、比較できる。
【0043】
合成ベースストック(特に、ポリ−α−オレフィン油およびAmerican Petroleum Institute(API) Group III油)は、本明細書中の他の箇所でさらに詳細に記述されているが、API Group IおよびGroup
II鉱油と比較して、牽引係数が低いことが知られている。ギアオイル用途には、その潤滑粘性のあるオイルとして、牽引係数が低い流体を使用することが、特に好ましい。
【0044】
本明細書中で上で述べたように、車軸耐久性は、高いトルク状態(例えば、トレーラー牽引)での低い操作温度と同一視される。
【0045】
車軸耐久性を測定する1方法には、例えば、以下のような多段階の負荷および速度を適用するように設計された試験リグを使用することにある:(1)高負荷−低速(これは、トレーラー牽引起動をシミュレートしている);(2)高速での中程度の負荷;(3)中程度の負荷−中速〜高速(これは、巡航走行をシミュレートしている);(4)中程度の負荷〜高負荷である程度の速度低下(これもまた、巡航走行をシミュレートしている);および(5)さらに負荷を高めてさらなる速度の低下(これは、上り坂走行をシミュレートしている)(ここで、これらの状態は、種々のトレーラー牽引状態をシミュレートする)。この評価から得られる情報の重要な部分は、この潤滑剤の安定化した操作温度および種々の試験段階での平均効率である。
【0046】
実際の省燃費性能は、55%を市街地で運転し45%を高速道路で運転するという典型的な使用パターンを想定して、Code of Federal RegulationsのTitle 40で設定されたEPA 55/45サイクルを使用して、行われる。
【0047】
本明細書中で使用する「ヒドロカルビル」および「炭化水素ベースの」との用語は、記述の基が、本発明の文脈内で、主として炭化水素的な性質を有することを意味する。これらには、事実上、純粋な炭化水素である基(すなわち、これらは、炭素および水素だけを含有する)が挙げられる。これらはまた、基の主として炭化水素的な性質を変化させない置換基または原子を含有する基を包含し得る。これらの置換基には、ハロ、アルコキシ、ニトロなどが包含され得る。これらの基はまた、ヘテロ原子を含有し得る。適当なヘテロ原子は、当業者に明らかであり、例えば、イオウ、窒素および酸素を包含する。従って、これらの基は、本発明の文脈内では、主として炭化水素的な性質を保持しているものの、鎖または環の中に存在する炭素以外の原子を含有し得、その他は炭素原子で構成されており、但し、それらは、本発明の方法または生成物の反応性および用途に悪影響を与えない。
【0048】
一般に、この炭化水素基または炭化水素ベースの基では、各10個の炭素原子に対し、約3個以下の非炭化水素置換基またはヘテロ原子、好ましくは、1個以下の非炭化水素置換基またはヘテロ原子が存在する。最も好ましくは、これらの基は、事実上、純粋な炭化水素であり、すなわち、本質的に、炭素および水素以外の原子を含有しない。
【0049】
本明細書および特許請求の範囲を通じて、「油溶性」または「油分散可能な」との表現が用いられる。「油溶性」または「油分散可能な」とは、潤滑粘性のあるオイルに溶解させるか、分散させるかまたは懸濁させることにより、所望レベルの活性または性能を提供するのに必要な量を混合できることを意味する。通常、このことは、潤滑油に、少なくとも約0.001重量%の物質を混合できることを意味する。「油溶性」および「油分散可能な」との用語、特に、「安定に分散可能な」との用語のさらに詳しい論述に関しては、米国特許第4,320,019号を参照せよ。この特許の内容は、このことに関連した教示について、本明細書中で参考として明白に援用されている。
【0050】
本明細書および特許請求の範囲を通じて、「低級の」との表現が使用されている。種々の基を記述するために本明細書中で使用する「低級の」との表現は、7個以下の炭素原子、より多くの場合、4個以下の炭素原子、しばしば、1個または2個の炭素原子を含有する基を意味するように意図している。
【0051】
本明細書および添付の特許請求の範囲で用いられるように、単数形はまた、文脈で他に明らかに指示されていなければ、複数も包含することに注目すべきである。それゆえ、単数形「a」、「an」および「the」は、複数を包含する;例えば、「a monomer」には、同じタイプのモノマーの混合物を含む。他の例として、単数形「monomer」は、文脈で他に明らかに指示されていなければ、単数および複数の両方を含むことを意図している。
【0052】
本発明の文脈では、「共重合体」との用語は、2種またはそれ以上の異なるモノマーから誘導した重合体を意味する。それゆえ、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘプチル、メタクリル酸ノニル、メタクリル酸デシルなどの2種またはそれ以上の混合物から誘導した重合体は、本明細書中で定義した共重合体である。同様に、メタクリル酸C9〜11およびメタクリル酸C12〜18の1種から誘導した重合体、あるいは2個またはそれ以上の別個のブロックを有する重合体は、本明細書中で定義する共重合体である。本発明の共重合体はまた、窒素含有モノマーから誘導した単位を含有し得る。
【0053】
粘度指数(これはまた、VIと略される)との表現は、本明細書中で、しばしば使用される。粘度指数とは、一定温度範囲内における粘度変化の程度を示す経験的な数値である。高いVIは、温度に伴う比較的に小さい粘度変化を示すオイルを意味する。
【0054】
本発明の共重合体は、希釈剤の存在下にて調製され得る。希釈剤はまた、通常、適当な希釈剤に、実質的に希釈剤を含まない重合体を溶解するかまたは分散させることにより、実質的に希釈剤を含まない共重合体に添加され得る。他の実施形態では、調製した共重合体には、追加の希釈剤、しばしば、高沸点希釈剤(例えば、オイル)が添加され得、これは、さらに、低沸点希釈剤を含有し、これは、次いで、一般的な方法(例えば、蒸留)により、除去される。好ましくは、この重合体が、希釈剤の存在下にて調製されるとき、この希釈剤は、オイルである。
【0055】
1実施形態では、この希釈剤は、鉱油である。特定の実施形態では、この鉱油は、水素処理したナフテン油から本質的になる。水素化脱ワックスした鉱油もまた、考慮される。この希釈剤はまた、合成油であり得る。一般的な合成油には、エステルタイプのオイル、ポリオレフィンオリゴマーまたはアルキル化ベンゼンがある。
【0056】
「実質的に不活性な」との表現は、しばしば、希釈剤に関連して使用される。本文脈で使用されるとき、「実質的に不活性な」とは、この希釈剤が、本発明の任意の反応物または組成物に関して、実質的に不活性であること、すなわち、それが、通常の状況下にて、いずれの反応物または組成物でもいずれの重大な反応も受けないだけでなく、本発明のいずれの反応または組成物も妨害しないことを意味する。
【0057】
((A)脂肪族オレフィンの共重合体)
共重合体(A)は、少なくとも1種のエチレン−脂肪族オレフィン共重合体を含有し、ここで、この脂肪族オレフィンは、好ましくは、α−オレフィンであり、3個〜約24個の炭素原子を含有し、該共重合体は、約600〜約5000、好ましくは、約800〜約4000、さらに好ましくは、約2000〜約4000の範囲の
【0058】
【化7】

および約1.1〜約3、さらに多くの場合、約1.3〜約2.5、頻繁には、約2.0〜約2.4の範囲の多分散性値
【0059】
【化8】

を有する。
【0060】
1実施形態では、この共重合体は、エチレン−α−オレフィン共重合体を含有する。典型的な1実施形態では、この共重合体のエチレン含量は、約30モル%〜約85モル%、しばしば、約45モル%〜約55モル%の範囲である。好ましくは、この共重合体は、エチレン−プロピレン共重合体である。
【0061】
好ましい1実施形態では、この共重合体は、エチレン−プロピレン共重合体であり、ここで、そのエチレン含量は、約40モル%〜約85モル%、よりしばしば、約45モル%〜約55モル%の範囲である。これらは、例えば、LUCANT(TM)Hydrocarbon−Based Synthetic Oil(これは、Mitsui Petrochemicals(America)Ltd.,New York,NY,USAから販売されている)として、市販されている。
【0062】
共重合体(A)は、当該技術分野で公知の条件下にて、エチレンと1種またはそれ以上の脂肪族オレフィンとを共重合することにより、形成できる。例には、チーグラー−ナッタ触媒またはメタロセン触媒を使用して行われる重合が挙げられる。
【0063】
((B)アクリル酸エステル共重合体)
共重合体(B)は、アクリル酸エステル共重合体を含有する。「アクリル酸エステル共重合体」の定義には、アクリル酸のエステルおよび対応するアルカクリル酸(特に、メタクリル酸)化合物(特に、メタクリル酸アルキル)が含まれる;少なくとも1種の共重合体は、そのエステル基中に2個〜約25個の炭素原子を含有するアクリル酸アルキルエステルモノマーから誘導した単位、ならびにビニル芳香族モノマーおよび窒素含有ビニルモノマーからなる群の少なくとも1種の構成要素を約0.1〜約20重量%で含有する。該共重合体(B)は、約10,000〜約350,000の範囲の
【0064】
【化9】

を有し、ここで、(A):(B)の重量比は、約99:1〜約1:99、好ましくは、約25:75〜約75:25の範囲である。
【0065】
このエステル基の大きさに関して、エステル基は、次式:
−C(O)(OR)
により表わされること、およびエステル基中の炭素原子数は、このカルボニル基の炭素原子と(OR)基の炭素原子とを合わせた全数であることが指摘されている。それゆえ、メタクリル酸メチルは、そのエステル基中に、2個の炭素原子を含有する。ブチルエステルは、そのエステル基中に、5個の炭素原子を含有する。
【0066】
1実施形態では、共重合体(B)は、そのエステル基中に2個〜12個の炭素原子を含有するアクリル酸アルキルエステルモノマーを約5重量%〜約75重量%で含有するモノマーおよびそのエステル基中に13個〜約25個の炭素原子を含有するアクリル酸アルキルエステルモノマーを約25重量%〜約95重量%で含有するモノマーから誘導した単位を含有する。
【0067】
別の実施形態では、共重合体(B)は、以下から誘導した単位を含有する:
(a)そのエステル基中に約9個〜約25個の炭素原子を含有するメタクリル酸アルキルエステルモノマーを約35モル%〜約95モル%;および
(b)そのエステル基中に約7個〜約12個の炭素原子を含有するメタクリル酸アルキルエステルモノマーを約65モル%〜約5モル%;および必要に応じて、
(c)そのエステル基中に2個〜約8個の炭素原子を含有しかつエステルがメタクリル酸エステル(a)および(b)とは異なるメタクリル酸アルキルエステルモノマー、ビニル芳香族モノマーおよび窒素含有ビニルモノマーからなる群の少なくとも1種の構成要素から誘導した単位を約0.1モル%〜約20モル%であるが、但し、該エステルの60重量%以下は、そのエステル基中に11個以下の炭素原子を含有する。
【0068】
特定の実施形態では、共重合体(B)は、以下の(a)および(b)から誘導した単位を含有する:
(a)そのエステル基中に約13個〜約25個の炭素原子を含有するメタクリル酸アルキルエステルモノマーを約35モル%〜約95モル%;および
(b)そのエステル基中に約7個〜約12個の炭素原子を含有するメタクリル酸アルキルエステルモノマーを約65モル%〜約5モル%。
【0069】
他の実施形態では、共重合体(B)は、(c)そのエステル基中に2個〜約8個の炭素原子を含有しかつそのエステルがメタクリル酸エステル(a)および(b)とは異なるメタクリル酸アルキルエステルモノマー、ビニル芳香族モノマーおよび窒素含有ビニルモノマーからなる群の少なくとも1種の構成要素から誘導した単位を約0.1モル%〜約20モル%でさらに含有するが、但し、該エステルの60重量%以下は、そのエステル基中に11個以下の炭素原子を含有する。
【0070】
1実施形態では、共重合体(B)は、約0.1〜約10重量%の少なくとも1種の窒素含有ビニルモノマーから誘導した単位を含有し得る。この場合、共重合体(B)は、典型的には、粘度向上特性だけでなく、分散特性も示す。好ましい窒素含有ビニルモノマーは、ビニル置換窒素複素環モノマー、アクリル酸ジアルキルアミノアルキルモノマー、ジアルキルアミノアルキルアクリルアミドモノマー、N−第三級アルキルアクリルアミドおよびビニル置換アミンからなる群から選択される。
【0071】
特に好ましい1実施形態では、メタクリル酸アルキルエステルモノマー(b)のエステル基のアルキル部分は、2−(C1〜4アルキル)置換基を有する。モノマー(b)がメタクリル酸2−エチルヘキシルを含有する場合、特に好ましい。
【0072】
このようなアクリル酸エステル共重合体は、公知であり、多数の米国特許(米国特許第5,108,635号;第5,534,175号;第5,696,068号;第5,821,313号;および第6,124,249号が挙げられる)で記述されており、それらの各特許は、その含まれる関連する開示が、本明細書中で参考として援用されている。
【0073】
本発明で有用なアクリル酸エステル共重合体は、当該技術分野で公知の方法により調製され、それらのうちのいくつかは、前述の特許で開示されている。
【0074】
1実施形態では、共重合体(B)は、以下の工程を包含する方法により、調製できる:遊離ラジカル開始剤の存在下にて、そのエステル基中に2個〜約25個の炭素原子を含有する1種またはそれ以上のアクリル酸アルキルエステルモノマーと、必要に応じて、ビニル芳香族モノマーおよび窒素含有ビニルモノマーからなる群の少なくとも1種の構成要素を約0.1〜約20重量%とを反応させる工程。
【0075】
他の実施形態では、共重合体(B)は、以下の工程を包含する方法により、調製できる:遊離ラジカル開始剤の存在下にて、必要に応じて、連鎖移動剤の存在下で、そのエステル基中に2個〜約25個の炭素原子を含有する1種またはそれ以上のアクリル酸アルキルエステルモノマーと、ビニル芳香族モノマーおよび窒素含有ビニルモノマーからなる群の少なくとも1種の構成要素を約0.1〜約20重量%とを反応させる工程であって、該アクリル酸エステルモノマー、該遊離ラジカル開始剤および該連鎖移動剤(もし使用するなら)は、まず、混ぜ合わされて、混合物を形成し、それから、該混合物の約10%〜約80%は、第二モノマーと混合される;次いで、該モノマー混合物の約20%〜約100%は、発熱が認められるまで加熱され、次いで、反応温度を維持しつつ、約0.25時間〜約5時間にわたって、まず該モノマー混合物の残量(もしあれば)を加え、続いて、0.25時間〜約5時間にわたって、アクリル酸エステルモノマーおよび開始剤の残留混合物を添加し、必要に応じて、追加開始剤を加え、それから、該反応が完了まで継続される。
【0076】
好ましい1実施形態では、前記アクリル酸エステルモノマーでは、該エステルの少なくとも約50モル%は、該エステル基中に、少なくとも6個の炭素原子を含有する。
【0077】
好ましい1実施形態では、(B)は、遊離ラジカル開始剤の存在下にて、必要に応じて、連鎖移動剤の存在下にて、以下の(1)および(2)を反応させる工程を包含する方法により調製された共重合体である:
(1)そのエステル基中に2個〜約25個の炭素原子を含有する1種またはそれ以上のアクリル酸アルキルエステルモノマーを約55重量%〜約99.9重量%であって、ここで、該エステルの少なくとも約50モル%は、該エステル基中に、少なくとも6個の炭素原子を含有する;および
(2)必要に応じて、連鎖移動剤の存在下で、そのエステル基中に2個〜約8個の炭素原子を含有しかつアクリル酸エステル(a)とは異なるアクリル酸エステル、ビニル芳香族モノマーおよび窒素含有ビニルモノマーからなる群より選択される少なくとも1種のモノマーを約0.1重量%〜約45重量%であるが、但し、該エステルの60重量%以下は、そのエステル基中に11個以下の炭素原子を含有し、ここで、モノマー(1)、該遊離ラジカル開始剤および該連鎖移動剤(もし使用するなら)は、まず、混ぜ合わされて、混合物を形成し、それから、該混合物の約10%〜約80%は、モノマー(2)と混合されて、第二混合物を形成する;モノマー(1)および(2)の該混合物の約20%〜約100%は、発熱が認められるまで加熱され、次いで、反応温度を維持しつつ、約0.25時間〜約5時間にわたって、モノマー(1)および(2)の該混合物の残量(もしあれば)をまず加え、続いて、0.25時間〜約5時間にわたって、モノマー(1)および開始剤の残留混合物を添加し、必要に応じて、追加開始剤を加え、それから、該反応が完了まで継続される。
【0078】
(連鎖移動剤)
アクリル酸エステルコポリマーを調製する方法は、連鎖移動剤の存在下にて、行うことができる。重合体反応での分子量を制御し制限するために連鎖移動剤を使用することは、公知である。例えば、「Concise Encyclopedia of Polymer Science and Engineering」(J.I.Kroschwitz編、Wiley−Interscience(New York、1990)、139頁)を参照せよ。連鎖移動、その効果および連鎖移動剤の広範な論述は、広範な文献目録と共に、「Encyclopedia of Polymer Science and Technology」(H.F.Mark、N.G.Gaylord、およびN.M.Bikales、編、Interscience、(New York、1965)、575〜610頁)に見られる。これらの両方は、本明細書中で参考として明白に援用されている。
【0079】
イオウ化合物、特に、メルカプタン類、とりわけ、ドデシルメルカプタン類、例えば、n−および第三級ドデシルメルカプタンが好ましい。
【0080】
重合は、種々の条件下にて起こり得、これには、バルク重合法、溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法および非水分散法がある。
【0081】
共重合体(B)は、通常のラジカル重合法を使用して、調製される。
【0082】
このような方法は、「Encyclopedia of Polymer Science and Engineering」(H.F.Mark、N.M.Bikales、C.G.OverbergerおよびG.Menges)、第2版 (1988)、Wiley Interscienceにより出版)の研究に記述されている。
【0083】
これらの方法には、アゾ化合物または過酸化物を使用する遊離ラジカル開始重合が挙げられる。この文献にはまた、光化学法およびラジカル開始法が記述されている。
【0084】
(開始剤)
重合開始剤として有用な遊離ラジカル発生試薬は、当業者に周知である。遊離ラジカル発生試薬の非常に多くの例は、FloryおよびBoveyおよびWinslowによる上で挙げた関連教本において、述べられている。遊離ラジカル開始剤の広範囲にわたるリストは、J.BrandrupおよびE.H.Immergut編の「Polymer Handbook」、2版、John Wiley and Sons、New York(1975)、II−1〜II−40のページに記されている。非常に多くの遊離ラジカル開始剤が入手でき、その多くは、大量に市販されている。有用な開始剤には、有機過酸化物、ヒドロペルオキシド類およびアゾ化合物が挙げられる。レドックス開始剤もまた、有用である。
【0085】
遊離ラジカル開始剤の例には、過酸化t−ブチル、t−ブチルヒドロペルオキシド、過酸化t−アミル、過酸化クミル、過酸化ジベンゾイル(Aldrich)、m−クロロ過安息香酸t−ブチル、およびアゾビスバレロニトリル、過オクタン酸(peroctoate)t−ブチルおよび過安息香酸第三級ブチル(それぞれ、AKZOから入手したTRIGONOX(登録商標)21およびTRIGONOX(登録商標)C)、および2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(VAZO(登録商標)−64)および2,2’−アゾビス(メチルブチロニトリル)(VAZO(登録商標)−67)(共にDuPont)が挙げられる。
【0086】
遊離ラジカル開始剤は、通常、この反応混合物の全重量を基準にして、約0.01重量%〜約10重量%の範囲の量で、用いられる。一般に、この開始剤は、約0.05重量%〜約3重量%、多くの場合、約0.1重量%〜約2重量%、頻繁には、約0.5重量%から約1.5重量%までまたは約1重量%までで用いられる。
【0087】
遊離ラジカル開始剤の選択は、重要な問題点であり得る。問題点には、所定温度でのこの開始剤の半減期、これらの反応物の性質、反応温度、溶媒または希釈剤などが挙げられる。
【0088】
重合体(B)の分子量は、開始剤、反応温度、モノマー濃度および溶媒タイプの選択を含めた多くの手法を使用して、制御できる。先に述べたように、連鎖移動剤は、使用できる。
【0089】
本発明で使用される共重合体(B)は、一般に、約40℃〜約200℃の範囲の反応温度、頻繁には、約60℃〜約160℃の範囲の反応温度で、調製される。
【0090】
アクリル重合は、通常、かなりの熱の放出を伴い得るので、反応が制御されなくなるのを避けるように、注意しなければならない。温度は、冷却ジャケット付きの反応器を用いて、添加速度を制御し、反応溶媒を使用することにより、制御され得る。
【0091】
以下の実施例は、本発明のいくつかの共重合体(B)およびそれらの調製方法を例示することを意図している。他に指示がなければ、全ての部は重量部である。これらの実施例は、本発明のいくつかの組成物および方法を例示することを意図しており、本発明の範囲を限定することを意図していないことを理解すべきである。分子量の値は、十分に特徴付けしたポリメタクリル酸エステル(PMA)検定標準を用いるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を使用して、測定される。PDIは、多分散性指数、Mw/Mnである。濾過は、ケイソウ土濾過助剤を用いて行う。
【実施例】
【0092】
(実施例1)
容器に、C12〜15メタクリル酸エステル(これは、1重量%未満のC16〜18メタクリル酸エステルを含有する)520部、メタクリル酸2−エチルヘキシル280部、鉱油(Total 85N)94.5部、t−ブチルペルオキシ2−エチルヘキサノエート(Trigonox T21S)10.5部、n−ドデカンチオール10.5部および水素化処理ナフテン油(Risella G07,Shell Germany)61.4部を充填し、そして0.2時間攪拌する。この混合物の1/3(326部)を、反応器に充填する。その反応の初めから終わりまで、Nブランケットを維持する。この反応器中の物質を、0.2時間にわたって、100℃まで加熱し、それにより、4分間で、139.6℃までの発熱が認められ、そして加熱を中止する。その発熱がピークに達した後、1.5時間にわたって、このモノマー/開始剤/オイル混合物の残りの2/3を加える。その温度は、添加中にて、110℃まで低下する。次いで、この温度を、110℃+/−3℃で、2時間維持する。85Nオイル6.3部中の追加のTrigonox T21S(0.7部)を加え、続いて、110℃+/−3℃で、さらに2.0時間混合する。これらの物質を、追加のTotal 85Nオイル39.45部と混合し、1時間攪拌し、次いで、120℃まで加熱し、そして濾過する。100℃での粘度(ASTM D−445)=356センチストークス。
【0093】
(実施例2)
容器に、C12〜15メタクリル酸エステル(これは、1重量%未満のC16〜18メタクリル酸エステルを含有する)272.8部、メタクリル酸2−エチルヘキシル120部、75N鉱油(Pennzoil 75HC)73部、t−ブチルペルオキシ2−エチルヘキサノエート(Trigonox T21;これは、Pennzoil 75HC(27部)に溶解した)3部およびn−ドデカンチオール3部を充填し、そして0.2時間攪拌する。この混合物の3分の1(170部)を反応器に充填し、続いて、N−(3−(ジメチルアミノ)プロピルメタクリルアミド7.2部を加え、そしてNブランケット下にて、0.1時間攪拌する。その反応の初めから終わりまで、Nブランケットを維持する。この反応器中の物質を、0.25時間にわたって、110℃まで加熱し、それにより、発熱が認められ、そして加熱を中止する。この発熱は、2分間で、138℃までとなる。その発熱がピークに達した後、その温度は、137℃まで低下し、それから、1.5時間にわたって、このモノマー/開始剤/オイル混合物の残りの2/3を加える。添加を開始した後、約0.2時間で、この温度は、110℃まで低下する。次いで、この温度を、110℃+/−3℃で、1.5時間維持する。Pennzoil 75HCオイル(4.5部)中の追加のTrigonox T21(0.5部)を充填し、続いて、110℃+/−3℃で、さらに2.5時間加熱する。これらの物質を、135℃で、50mmHgの圧力にて、0.5時間真空ストリッピング(vacuum strip)する。その残留物に、Pennzoil 75HC(33.1部)を加え、続いて、さらに0.5時間混合し、濾過する。その生成物は、0.22%のNを含有し、そして100℃での粘度(ASTM D−445)=502.7センチストークスを有する。
【0094】
(実施例3)
容器に、メタクリル酸メチル33.9部、メタクリル酸ブチル7.5部、C〜C11メタクリル酸エステル133.6部、C12〜C15メタクリル酸エステル133.6部、C16〜C18メタクリル酸エステル67.7部、N−ビニルピロリドン13.65部およびRisella G07オイル130部を充填する。これらの物質を0.25時間攪拌し、次いで、VAZO67(1.56部)のトルエン3.1部溶液を加え、続いて、0.1時間攪拌する。実施例1で記述のように装備した反応器に、この溶液の約1/3を充填する;その残りを、添加漏斗に入れる。攪拌し0.3SCFHでN添加しつつ、その混合物を、0.3時間にわたって、110℃まで加熱し、加熱を停止すると、その温度は、発熱により、3分間で、138℃まで上昇する。次いで、この温度は、低下し始め、2分後、136℃になる。残りのモノマー−開始剤混合物の滴下を開始し、2時間継続する。0.3時間後、温度は、110℃まで下がり、添加中、110℃で保持する。添加が完了した後、この混合物を、0.3時間にわたって、90℃まで冷却し、続いて、Trigonox 21(0.25部)を充填する。これらの物質を、90℃で、2時間攪拌し、Trigonox 21(0.26部)を加え、それらの物質を、さらに2時間加熱する。これらの物質を、追加のRisella G07オイル80部で希釈し、攪拌しつつ150℃まで加熱し、そして150℃、40〜50mmHgで、1時間ストリッピングし、留出物1部を集める。その残留物を、110℃で、ケイソウ土濾過助剤で濾過する。その濾液は、Mn=68,000およびMw/Mn=2.91を有する重合体を含有する。
【0095】
本発明の組成物において使用される共重合体を調製する方法は、しばしば、機械撹拌機および/または循環ポンプを含めた撹拌手段を使用する通常の反応器中で行われるものの、本発明の共重合体を調製する他の有用な手段は、高エネルギーの機械的混合装置を使用することである。これらには、ロールミル、ボールミルまたは押出機が挙げられる。これらのうち、押出機は好ましい。なぜなら、これらの共単量体が、任意の所望の様式で、供給ホッパーに供給できるからである。このような装置(特に、押出機)を使用する方法は、多くの特許に記述されており、これらには、Hayashiらの米国特許第4,670,173号およびSopkoらの米国特許第5,039,433号が含まれ、両方の内容は、本明細書中で参考として明示的に援用されている。
【0096】
本発明の組成物で使用される共重合体は、希釈剤の存在下にて調製され得る。希釈剤はまた、通常、適当な希釈剤に、実質的に希釈剤を含まない共重合体を溶解するかまたは分散させることにより、実質的に希釈剤を含まない共重合体に添加され得る。他の実施形態では、調製した共重合体には、追加の希釈剤、しばしば、高沸点希釈剤(例えば、オイル)が添加でき、これは、さらに、低沸点希釈剤を含有し、これは、次いで、一般的な方法(例えば、蒸留)により、除去される。好ましくは、この重合体が、希釈剤の存在下にて調製されるとき、この希釈剤は、オイルである。
【0097】
1実施形態では、この希釈剤は、鉱油である。特定の実施形態では、この鉱油は、水素処理したナフテン油から本質的になる。水素化脱ワックスした鉱油もまた、考慮される。この希釈剤はまた、合成油であり得る。一般的な合成油には、エステルタイプのオイル、ポリオレフィンオリゴマーまたはアルキル化ベンゼンがある。
【0098】
「実質的に不活性な」との表現は、希釈剤に関連して使用される。本文脈で使用されるとき、「実質的に不活性な」とは、この希釈剤が、本発明の任意の反応物または組成物に関して、実質的に不活性であること、すなわち、それが、通常の状況下にて、任意の反応物または組成物とのいずれの重大な反応も受けないだけでなく、本発明のいずれの反応または組成物も妨害しないことを意味する。
【0099】
重合体の分子量は、文献に記載の周知方法を用いて、測定される。分子量を測定する方法の例には、ゲル濾過クロマトグラフィー(また、サイズ排除クロマトグラフィーとして知られている)および蒸気相浸透法(VPO)がある。これらの方法および他の方法は、以下を含めた非常に多くの文献に記述されている:
P.J.Flory、「Principles of Polymer Chemistry」Cornell University Press(1953)、第VII章、266〜316ページ;および
「Macromolecules,an Introduction to Polymer Science」、F.A.Bovey and F.H.Winslow、Editors、Academic Press(1979)、296〜312ページ;
W.W.Yau、J.J.Kirkland and D.D.Bly、「Modern Size Exclusion Liquid Chromatography」、John Wiley and Sons、New York、1979。
【0100】
重合体の分子量と相互補完的な測定値には、メルトインデックス(ASTM D−1238)がある。メルトインデックスの高い重合体は、概して、低い分子量を有し、逆の場合も同じである。ムーニー粘度(ASTM Procedure D−1646−87)は、間接的には、重合体の分子量に関する。他の全ての因子が同じであるとき、この重合体の分子量が増加すると、そこで、ムーニー粘度も増加する。
【0101】
ASTM Procedures D−1238およびD−1646−87は、それぞれ、前記Annual Book of ASTM StandardsのVolume
8および9で見られる。
【0102】
好ましい方法、および本明細書中で述べた重合体の分子量を決定するために使用される方法は、ゲル濾過クロマトグラフィー(GPC)である。ポリオレフィンについては、通常、ポリオレフィン標準が使用される。アクリル酸エステル重合体の分子量は、好ましくは、ポリアクリル酸エステル標準を使用して、決定される。
【0103】
この上で述べたように、本発明は、重合体組成物に関する。好ましい実施形態では、この重合体組成物は、以下を含有する:約25重量%〜約75重量%の(A)エチレン−α−オレフィン共重合体であり、ここで、該エチレン含量は、約30モル%〜約85モル%の範囲である;および約75重量%〜約25重量%の(B)ポリメタクリル酸エステル共重合体であり、該(B)は、以下から誘導した単位を含有する:
(a)そのエステル基中に約9個〜約25個の炭素原子を含有するメタクリル酸アルキルエステルモノマーを約35モル%〜約95モル%;および
(b)そのエステル基中に約7個〜約12個の炭素原子を含有するメタクリル酸アルキルエステルモノマーを約65モル%〜約5モル%;および必要に応じて、
(c)そのエステル基中に2個〜約8個の炭素原子を含有しかつメタクリル酸エステル(a)および(b)とは異なるメタクリル酸アルキルエステルモノマー、ビニル芳香族モノマーおよび窒素含有ビニルモノマーからなる群の少なくとも1種の構成要素を約0.2モル%〜約10モル%であるが、但し、該エステルの60重量%以下は、そのエステル基中に11個以下の炭素原子を含有し、ここで、(A):(B)の重量比は、約25:75〜約75:25の範囲である。
【0104】
本発明の重合体組成物は、エチレン脂肪族オレフィン(A)およびアクリル酸アルキル共重合体(B)を共に混合することにより、調製できる。
【0105】
(他の添加剤)
ここで述べたように、本発明の潤滑油組成物は、他の成分を含有し得る。このような添加剤の使用は任意であり、本発明の組成物中でのそれらの存在は、特定の用途および必要な性能のレベルに依存する。それゆえ、この他の添加剤は、含有しても除外してもよい。
【0106】
この組成物は、金属塩、しばしば、ジチオリン酸の亜鉛塩を含有し得る。ジチオリン酸の1種以上の金属塩は、極圧(extreme pressure)性能、耐摩耗性能および酸化防止性能をさらに与えるために、少量で存在し得る。
【0107】
本発明の潤滑油で必要に応じて使用され得る他の添加剤には、例えば、界面活性剤、分散剤、粘度向上剤、酸化防止剤、流動点降下剤、極圧剤、耐摩耗剤、色安定化剤、シール膨潤剤、臭気マスキング剤および消泡剤が挙げられる。
【0108】
これらには、補助の極圧剤および腐食防止剤および酸化防止剤が挙げられるがこれらに限定されず、塩素化脂肪族炭化水素、有機スルフィドおよびポリスルフィド、亜リン酸水素ジヒドロカーボン(dihydrocarbon hydrogen phosphite)および亜リン酸トリヒドロカーボン(trihydrocarbon phosphite)を含めたリン含有エステル、モリブデン化合物などにより、例示される。
【0109】
補助の粘度向上剤(これはまた、時には、粘度指数改良剤または粘度調整剤と呼ばれる)もまた、含有され得る。粘度向上剤は、ポリイソブテン、ポリメタクリル酸エステル、ジエン重合体、ポリアルキルスチレン、エステル化スチレン−無水マレイン酸共重合体、アルケニルアレン−共役ジエン共重合体、およびポリオレフィンを含むポリマーにより例示される。本発明の粘度向上剤以外の多機能性粘度向上剤(これはまた、分散剤特性および/または酸化防止特性を有する)は公知であり、必要に応じて、本発明の生成物と併せて、使用され得る。このような生成物は、「発明の背景」で述べた文献を含めた、非常に多くの文献に記述されている。
【0110】
流動点降下剤は、ここで記述の潤滑油中にしばしば含有される特に有用なタイプの添加剤である。例えば、C.V.SmalheerおよびR.Kennedy Smithの「Lubricant Additives」(Lezius−Hiles Company Publisher、Cleveland、Ohio、1967年)の8ページを参照せよ。本発明の目的上で有用な流動点降下剤、それらの調製方法およびそれらの用途は、米国特許第2,387,501号;第2,015,748号;第2,655,479号;第1,815,022号;第2,191,498号;第2,666,748号;第2,721,877号;第2,721,878号;および第3,250,715号に記述され、その内容は、それらの関連した開示について、本明細書中で参考として明示的に援用されている。
【0111】
安定した泡の形成を低減するかまたは防止するために用いられる消泡剤には、シリコーンまたは有機重合体が挙げられる。これらのおよびさらに他の消泡組成物の例は、「Foam Control Agents」(Henry T.Kerner、Noyes Data Corporation、1976年)の125〜162ページに記述されている。
【0112】
界面活性剤および分散剤は、灰分生成タイプまたは無灰タイプであり得る。灰分生成界面活性剤は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属と、スルホン酸、カルボン酸、フェノールまたは有機リン含有酸(これは、少なくとも1個の直接の炭素−リン結合により特徴づけられる)との油溶性の中性塩および塩基性塩により、例示される。
【0113】
「塩基性塩」との用語は、その金属が、有機酸基よりも化学量論的に多い量で存在する金属塩を示すために、用いられる。塩基性塩およびそれらの調製方法および使用方法は、当業者に周知であり、ここで詳細に述べる必要はない。
【0114】
無灰分の界面活性剤および分散剤は、その組成に依存して、この界面活性剤または分散剤が燃焼すると不揮発性残留物(例えば、酸化ホウ素または五酸化リン)を生じ得るという事実にもかかわらず、そう呼ばれている;しかしながら、それは、通常、金属を含有せず、従って、燃焼すると、金属を含有する灰を生じることはない。多くのタイプの物質が、当該技術分野で公知であり、それらのいくつかは、本発明の潤滑剤中での使用に適している。以下に例示する:
(1)少なくとも約34個の炭素原子(好ましくは、少なくとも約54個の炭素原子)を含有するカルボン酸(またはそれらの官能性誘導体(functional derivative))と、窒素含有化合物(例えば、アミン、フェノールやアルコールのような有機ヒドロキシ化合物、および/または塩基性無機物質)との反応生成物。
【0115】
(2)比較的高分子量の脂肪族または脂環族ハロゲン化物と、アミン(好ましくはポリアルキレンポリアミン)との反応生成物。これらは、「アミン分散剤」として特徴づけられ得る。
【0116】
(3)アルキルフェノール(ここで、このアルキル基は、少なくとも約30個の炭素原子を有する)と、アルデヒド(特に、ホルムアルデヒド)およびアミン(特に、ポリアルキレンポリアミン)との反応生成物。これは、「マンニッヒ分散剤」として特徴づけられ得る。
【0117】
(4)カルボン酸アミンまたはマンニッヒ分散剤を、以下のような試薬で後処理することにより得られる生成物;尿素、チオ尿素、二硫化炭素、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、炭化水素置換の無水コハク酸、ニトリル、エポキシド、ホウ素化合物、リン化合物など。
【0118】
(5)油溶性モノマー(例えば、メタクリル酸デシル、ビニルデシルエーテルおよび高分子量オレフィン)と、極性置換基を含有するモノマー(例えば、アクリル酸アミノアルキルまたはメタクリル酸アミノアルキル、アクリルアミドおよびポリ(オキシエチレン)置換アクリル酸エステル)との重合体および共重合体。これらは、「重合体分散剤」として特徴づけられ得る。
【0119】
上述の分散剤および粘度向上剤は、本発明の添加剤に加えて、使用され得る。
【0120】
これらの組成物は、当業者に周知であり、多数の米国特許(米国特許第4,234,435号、米国特許第4,904,401号、米国特許第4,938,881号、米国特許第4,952,328号、米国特許第4,957,649号、米国特許第4,981,602号、米国特許第5,696,060号および米国特許第5,696,067号を含めて)で記述されており、それらの各特許の内容は、これらの潤滑油組成物で使用される添加剤の関連した開示について、本明細書中で参考として援用されている。
【0121】
上で例示した添加剤は、それぞれ、潤滑組成物中にて、0.001重量%程度、通常、約0.01重量%〜約20重量%の範囲の濃度で、存在し得る。殆どの場合には、それらは、それぞれ、約0.1重量%〜約10重量%、さらに多くの場合、約5重量%までを占める。
【0122】
(潤滑粘性のあるオイル)
本発明の潤滑組成物および方法は、潤滑粘性のあるオイルを使用し、これには、天然または合成の潤滑油およびそれらの混合物が含まれる。有用な潤滑粘性のあるオイルには、100℃で、約1〜約80センチストークスまたはそれ以上(cSt)の範囲の動粘性を有するものが挙げられる。1実施形態では、この潤滑粘性のあるオイルは、100℃で、少なくとも約3.5cStまたは少なくとも約4.0cStの動粘性を有する潤滑組成物を提供するように選択される。
【0123】
天然油には、動物油および植物油(例えば、ヒマシ油、ラード油)だけでなく、鉱物性の潤滑油(例えば、液状の石油由来のオイル、およびパラフィンタイプ、ナフテンタイプまたは混合したパラフィン−ナフテンタイプであって、かつ溶媒処理された鉱物性潤滑油または酸処理された鉱物性潤滑油)が包含される。石炭または頁岩から誘導される潤滑粘性のあるオイルもまた、有用である。合成の潤滑油には、以下の炭化水素油およびハロ置換炭化水素油が包含される。この炭化水素油およびハロ置換炭化水素油には、例えば、重合されたオレフィンおよびインターポリマー化されたオレフィンなど、およびそれらの混合物、アルキル化芳香族(例えば、アルキルベンゼン、ポリフェニル(例えば、ビフェニル、テルフェニル、アルキル化されたポリフェニルなど)、アルキル化されたジフェニルエーテルおよびアルキル化されたジフェニルスルフィドおよびそれらの誘導体、それらの類似物および同族体など)がある。
【0124】
アルキレンオキシド重合体およびインターポリマーおよびそれらの誘導体(それらの末端水酸基が、エステル化、エーテル化などにより修飾されたもの)は、公知の合成潤滑油の他の有用なクラスを構成する。
【0125】
使用できる合成潤滑油の他の適当なクラスには、ジカルボン酸エステルおよびポリカルボン酸エステル、ならびにC〜C20モノカルボン酸、およびポリオールおよびポリオールエーテルから製造したものが包含される。
【0126】
他の合成潤滑油には、リン含有酸の液状エステル(例えば、リン酸エステル)、重合体テトラヒドロフランなど、シリコンベース油(例えば、ポリアルキル−、ポリアリール−、ポリアルコキシ−またはポリアリールオキシ−シロキサン油およびシリケート油)が挙げられる。
【0127】
未精製油、精製油および再精製油(これは、上で開示のタイプの天然油または合成油のいずれか(だけでなく、これらのいずれかの2種以上の混合物))は、本発明の組成物中で用いられ得る。未精製油とは、天然原料または合成原料から、さらに精製処理することなく、直接得られるオイルである。精製油は、1種以上の特性を改良するべく、1工程以上の精製工程でさらに処理されたこと以外は、未精製油と類似している。精製油には、溶媒精製油、水素精製(hydrorefined)油、水素仕上げ(hydrofinished)油、水素処理油、および水素分解添加法および水素異性化(hydroisomerization)法により得たオイルが挙げられる。
【0128】
再精製油は、すでに使用された精製油に、精製油を得るのに用いた工程と類似の工程を適用することにより、得られる。このような再精製油は、消費された添加剤および油の分解生成物を除去するべく指示された方法により、しばしばさらに処理される。
【0129】
上記の潤滑粘性のあるオイルの特定の例は、Chamberlin、IIIの米国特許第4,326,972号、ヨーロッパ特許公開第107,282号、およびA.Sequeria、Jr.、Lubricant Base Oil and Wax Processing、Chapter 6、Marcel Decker、Inc.、New York(1994)にあり、各文献の内容は、ここに含まれる関連した開示について、本明細書中で参考として援用されている。
【0130】
好ましい潤滑粘性のあるオイルには、少なくとも約55%の脂肪族飽和物、0.5%未満のイオウ(好ましくは、0.1%未満のイオウ、さらに多くの場合、0.1%未満のイオウ)、および100より高い粘度指数を有する鉱油がある。
【0131】
API Group IIIオイル(これは、少なくとも90%の飽和物、0.03%以下のイオウ(しばしば、0.01%未満のイオウ)、および少なくとも120の粘度指数を有する)は、本発明のギアオイルに特に好ましい。これらは、American Petroleum Institute(API) publication 1509、「Engine Oil Licensing and Certification
System」、Appendix E−API Base Oil Interchangeability Guidelines for Passenger Car
Motor Oil and Diesel Engine Oils」で記述されている。
【0132】
その不飽和度は、ASTM Procedure D−460で設定された手順を使用して、ヨウ素価を測定することにより、決定できる。
【0133】
潤滑剤基油の基本的で簡潔な記述は、D.V.Brockの文献、じょうしんのないよう「Lubrication Engineering」、43巻、184〜185ページ(1987年3月)にあり、この文献は、ここに含まれる関連した開示について、本明細書中で参考として明示的に援用されている。
【0134】
本明細書中で記述の種々の添加剤は、潤滑剤に直接添加できる。しかしながら、好ましくは、それらは、実質的に不活性で通常液状の有機希釈剤(例えば、鉱油、ナフサ、ベンゼン、トルエンまたはキシレン)で希釈して、添加剤濃縮物が形成される。好ましい添加剤濃縮物は、この上で述べた希釈剤を含有する。これらの濃縮物は、通常、約0.1重量%〜約80重量%の本発明の組成物を含有し、加えて、当該技術分野で公知かこの上で記述した1種以上の他の添加剤を含有し得る。15%、20%、30%または50%またはそれ以上の濃度が、使用され得る。
【0135】
(潤滑油組成物)
本発明はまた、潤滑粘性のあるオイル、ならびに全体で約1重量%〜約50重量%の上記共重合体(A)および(B)を含有する潤滑油組成物に関する。
【0136】
特定の1実施形態では、この潤滑油組成物は、自動変速機油である。本発明の自動変速機油は、典型的には、主要量の潤滑粘性のあるオイル、全体で約3重量%〜約12重量%、しばしば約10重量%までの重合体組成物、ならびに少量の少なくとも1種のジチオリン酸金属、シール膨潤剤、流動点降下剤、無灰分散剤および腐食防止剤を含有し、該重合体組成物は、以下を含有する:
(A)約1重量%〜約99重量%の少なくとも1種のエチレン−脂肪族オレフィン共重合体であって、ここで、該脂肪族オレフィンは、3個〜約24個の炭素原子を含有し、該共重合体(A)は、約600〜約5000の範囲の数平均分子量を有する;および
(B)以下から誘導した単位を含有する少なくとも1種の共重合体を約99重量%〜約1重量%:そのエステル基中に2個〜約25個の炭素原子を含有するアクリル酸アルキルエステルモノマー;および必要に応じて、ビニル芳香族モノマーおよび窒素含有ビニルモノマーからなる群の少なくとも1種の構成要素を約0.1〜約20重量%:該共重合体(B)は、約10,000〜約350,000の範囲の数平均分子量を有する。
【0137】
他の実施形態では、この潤滑油組成物は、主要量の潤滑粘性のあるオイル(好ましくは、Group IIIオイル)、全体で約3重量%〜約30重量%の重合体組成物、ならびに少量の極圧添加剤、耐摩耗剤および腐食防止剤を含有するギアオイル組成物であって、該重合体組成物は、以下を含有する:
(A)約1重量%〜約99重量%の少なくとも1種のエチレン−脂肪族オレフィン共重合体であって、ここで、該脂肪族オレフィンは、3個〜約24個の炭素原子を含有し、該共重合体(A)は、約600〜約5000の範囲の数平均分子量を有する;および
(B)以下から誘導した単位を含有する少なくとも1種の共重合体を約99重量%〜約1重量%:そのエステル基中に2個〜約25個の炭素原子を含有するアクリル酸アルキルエステルモノマー;および必要に応じて、ビニル芳香族モノマーおよび窒素含有ビニルモノマーからなる群の少なくとも1種の構成要素を約0.1〜約20重量%:該共重合体(B)は、約10,000〜約350,000の範囲の数平均分子量を有する。
【0138】
本発明の潤滑組成物は、以下の表にて、実施例により例示される。これらの潤滑組成物は、指定量の特定の成分を、個々にまたは濃縮物から、潤滑粘性のあるオイルと配合して、全体で100重量部とすることにより、調製される。ここで示した量は、重量部であり、他に指示がなければ、オイルを含まない基準で存在する化学物質の量である。それゆえ、例えば、配合物中にて、50重量%のオイルを含有する添加剤を10重量%で使用すると、5重量%の化学物質を与えることになる。これらの実施例は、例示の目的でのみ提供されており、本発明の範囲を限定する意図はない。
【0139】
(実施例A)
以下の物質を共に混合することにより、ATFを調製する:実施例2の生成物3部、ポリメタクリレート流動点降下剤の65%鉱油溶液0.2部、赤色染料の潤滑油組成物250ppm、エチレン−プロピレン共重合体(これは、
【0140】
【化10】

=約3300および
【0141】
【化11】

=2.3を有する;LUCANT HC−2000)4.5部、シリコーン消泡剤250ppm、添加剤濃縮物(これは、以下からなる分散剤の混合物40.8部を含有する;ポリイソブチレン(
【0142】
【化12】

=約950)置換無水コハク酸−ポリエチレンポリアミン反応生成物、ホウ酸塩化ポリイソブチレン(
【0143】
【化13】

=約950)置換無水コハク酸−ポリエチレンポリアミン反応生成物、およびポリイソブチレン(
【0144】
【化14】

=約950)置換無水コハク酸−ペンタエリスリトール−ポリエチレンポリアミンエステル反応生成物(これは、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール(DMTD)とさらに反応させた))、85%リン酸水溶液1.4部、亜リン酸ジブチル水素2.7部、ジアルキルジフェニルアミン8.2部、ドデシルメルカプタン−プロピレンオキシド反応生成物6.8部、2,5−ジ(t−ノニルジチオ)−1,3,4−チアジアゾール0.4部、脂肪イミダゾール1.4部、亜リン酸ジ−脂肪族炭化水素2.7部、ホウ酸塩化C16エポキシド1.4部、ホウ酸塩化スルホン酸マグネシウム3%、および100部の濃縮物にするのに十分な鉱油、およびATF(100部)を調製するのに十分なTexaco ATFベースストック。
【0145】
(実施例B)
LUCANT HC−2000(4.23部)および実施例2の生成物(2.82部)であること以外は、実施例Aと同様にして、ATFを調製する。
【0146】
(比較例A)
実施例2の生成物12.6部およびLUCANT HC−2000(0部)であること以外は、実施例Aと同様にして、ATFを調製する。
【0147】
(比較例B)
実施例2の生成物0部およびLUCANT HC−2000(6部)であること以外は、実施例Aと同様にして、ATFを調製する。
【0148】
このATFの粘度特性および剪断安定性は、以下の表で示している。表示した試験手順を使用して、粘度測定を行なう。
【0149】
高せん断応力条件下にて、せん断に対する組成物の耐性を測定するには、いくつかの試験が利用できる。1つの有用な試験には、KRL Tapered Bearing Shear Testがある。これは、「Viscosity Shear Stability of Transmission Lubricants」の表題の公開標準試験であり、CEC(61 New Cavendish Street、London WIM 8AR、England)から入手できるCEC L−45−T93に記述されている。同じ試験はまた、DIN 51 350、part 6として公開されており、Deutsches Institut fuer Normung(Burgerfenshase 6、1000 Berlin 30、Germany)から入手できる。これらの参考文献の両方の内容は、本明細書中で参考として援用されている。この方法を20時間使用して、上述の実施例のいくつかのせん断損失を測定する。
【0150】
【表1】

前述のデータから分かるように、共重合体のを組み合わせると、低温性能に悪影響を及ぼすことなく、剪断安定性および良好な粘度改良特性が得られる。さらに、これは、共重合体の全レベルを低くして、達成できる。
【0151】
(実施例C〜G)
API 75W−90ギア潤滑剤は、潤滑剤100部を調製するのに十分な量の指定基油中にて、硫化イソブチレン4.8部、ジチオリン酸ジ(メチルアミル)のヒドロキシプロピルエステルとPとを反応させて分枝第一級アミンで中和することにより得られる生成物1.65部、ホウ酸塩化ポリイソブチレン(
【0152】
【化15】

n=約950)置換無水コハク酸−ポリエチレンポリアミン反応生成物1.24部、アルキル化ナフタレン0.25部、C16〜18アルキル化ベンゼン5部、オレイルアミン0.35部、シロキサンベース消泡剤20ppm、カルボン酸重合体消泡剤0.1部、2,5−ジ(t−ノニルジチオ)−1,3,4−チアジアゾール0.18部、および指定量のLUCANT HC−2000および実施例1の生成物を含有する。
【0153】
【表2】

(実施例H〜K)
API 75W−90ギア潤滑剤は、潤滑剤100部を調製するのに十分な量の指定基油中にて、硫化イソブチレン4.8部、ジチオリン酸ジ(メチルアミル)のヒドロキシプロピルエステルとPとを反応させて分枝アルキル第一級アミンで中和することにより得られる生成物1.65部、オレイルイミダゾール0.15部、C14〜18アルキルリン酸の分枝アルキルアミン塩1.5部、ホウ酸塩化ポリイソブチレン(
【0154】
【化16】

=約950)置換無水コハク酸−ポリエチレンポリアミン反応生成物1.74部、アルキル化ナフタレン0.25部、C16〜18アルキル化ベンゼン5部、オレイルアミン0.35部、モノイソプロパノールアミン0.035部、オレイルアミド0.13部、シロキサンベース消泡剤20ppm、カルボン酸重合体消泡剤0.1部、2,5−ジ(t−ノニルジチオ)−1,3,4−チアジアゾール0.18部、および指定量のLUCANT HC−2000および実施例1の生成物を含有する。
【0155】
【表3】

(実施例L〜O)
API 75W−90ギア潤滑剤は、潤滑剤100部を調製するのに十分な量の指定基油中にて、硫化イソブチレン4.8部、亜リン酸C14〜16(1.9部)、ジチオリン酸ジ(メチルアミル)のヒドロキシプロピルエステルとPとを反応させて分枝アルキル第一級アミンで中和することにより得られる生成物0.59部、オレイルイミダゾリン0.15部、C14〜18アルキルリン酸の分枝アルキルアミン塩1.5部、ホウ酸塩化ポリイソブチレン(
【0156】
【化17】

=約950)置換無水コハク酸−ポリエチレンポリアミン反応生成物1.74部、アルキル化ナフタレン0.25部、C16〜18アルキル化ベンゼン5部、オレイルアミン0.4部、シロキサンベース消泡剤20ppm、カルボン酸重合体消泡剤0.1部、2,5−ジ(t−ノニルジチオ)−1,3,4−チアジアゾール0.18部、および指定量のLUCANT HC−2000および実施例1の生成物を含有する。
【0157】
【表4】

(実施例P)
部分合成ギアオイル組成物(75W−90)は、API Group IIIベースストック(Chevron UCBO、4cSt(100N))30部、Petro−Canada VHVI 8cSt(250)ベースストック29部、アジピン酸イソオクチル(Mobil VSA Ester DB−32)10部、LUCANT HC−2000(15.5部)、実施例1の生成物15.5部、硫化イソブチレン4.8部、ジチオリン酸ジ−(メチルアミル)のヒドロキシプロピルエステルとPとを反応させて分枝アリキル第一級アミンで中和することにより得られる生成物1.76部、ホウ酸塩化ポリイソブチレン(
【0158】
【化18】

=約950)置換無水コハク酸−ポリエチレンポリアミン反応生成物1.51部、オレイルイミダゾリン1部、シロキサンベース消泡剤50ppm、カルボン酸重合体消泡剤0.08部、2,5−ジ(t−ノニルジチオ)−1,3,4−チアジアゾール0.18部、4cStポリ−α−オレフィン0.995部、および全体を100重量部にするのに十分な鉱油を含有する。100℃での動粘度=27.90。
【0159】
(実施例Q)
合成ギアオイル組成物(75W−90)は、4cStポリ−α−オレフィンベースストック70部、LUCANT HC−2000(15部)、実施例1の生成物15部、C16〜18アルキル化ベンゼン5部、アルキル化ナフタレン0.25部、および添加剤濃縮物(これは、ヘプチル−ヒドロキシフェニルチオ置換1,3,4−チアジアゾールの80重量%鉱油スピリッツ溶液1.54部を含有する)10部、ジチオリン酸ジ−(メチルアミル)のヒドロキシプロピルエステルとPとを反応させて分枝アルキル第一級アミンで中和することにより得られる生成物16.62部、ホウ酸塩化ポリイソブチレン(
【0160】
【化19】

=約950)置換無水コハク酸−ポリエチレンポリアミン反応生成物の67%鉱油溶液12.5部、硫化イソブチレン50部、カルボン酸重合体消泡剤0.5部、オレイルアミド1.25部、鉱油17.21部およびモノイソプロパノールアミン0.38部を含有する。
【0161】
(参照オイル1)
鉱油ベース80W−90ギア潤滑剤は、潤滑剤100部を調製するのに十分な基油中にて、硫化イソブチレン3.2部、ジチオリン酸ジ(メチルアミル)のヒドロキシプロピルエステルとPとを反応させて分枝アルキル第一級アミンで中和することにより得られる生成物1.16部、C14〜18アルキルリン酸の分枝アルキルアミン塩0.4部、ホウ酸塩化ポリイソブチレン(
【0162】
【化20】

=約950)置換無水コハク酸−ポリエチレンポリアミン反応生成物0.88部、硫化脂肪オレフィン/エステル/酸混合物0.6部、モノイソプロパノールアミン0.027部、オレイルアミド0.1部、カルボン酸重合体消泡剤0.053部、2,5−ジ(t−ノニルジチオ)−1,3,4−チアジアゾール0.016部およびアルキルヒドロキシフェニルチオDMTD(0.092部)を含有する。40℃での動粘度(cSt)=138.35、100℃での動粘度(cSt)=14.66。
【0163】
(参照オイル2)
合成ベース75W−90ギアオイルは、4cStポリオレフィンオリゴマー基油中にて、ホスホン酸混合ジC16アルキル/C18アルケニル水素1.57部、ポリイソブチレン(
【0164】
【化21】

=約1000)25部、アミノプロピルアミン中和スチレン−C13〜16マレエート共重合体0.2部、2,5−ジ(t−ノニルジチオ−1,3,4−チアジアゾール)0.15部、硫化イソブチレン4.57部、ジチオリン酸ジ(メチルアミル)のヒドロキシプロピルエステルとPとを反応させて分枝アルキル第一級アミンで中和することにより得られる生成物1.66部、ジチオリン酸ジ(メチルアミル)のヒドロキシプロピルエステルとPとを反応させて分枝アルキル第一級アミンで中和することにより得られる生成物0.84部、オレイルアミド0.13部、モノイソプロパノールアミン0.04部およびカルボン酸重合体消泡剤0.1部を含有する。40℃での動粘度(cSt)=97.40、100℃での動粘度(cSt)=14.42。
【0165】
(参照オイル3)
合成ギアオイル組成物(75W−90)は、4cStポリ−α−オレフィンベースストック55.5部、ポリイソブチレン(これは、約1500の数平均分子量を有する)30.7部、C16〜18アルキル化ベンゼン5部、アルキル化ナフタレン0.25部および実施例Qで使用した添加剤濃縮物10部を含有する。
【0166】
牽引とは、流体の操作温度特性を予測するのに使用される特性である。上記のMini−Traction Machine(MTM)試験リグを使用して、潤滑剤実施例Qおよび参照オイル1〜3の牽引プロフィールを、一定範囲の滑り−転がり接触にわたって、75°Fで、比較した。潤滑剤実施例Qが本発明の重合体の混合物を使用するのに対して、参照オイル3がポリイソブチレンを使用すること以外は、潤滑剤実施例Qは、参照オイル3と同一である。潤滑剤実施例Qは、全滑り−転がり範囲にわたって、最も低い牽引係数で走行することが判明し、このことは、種々の接触様式にて、操作温度がより低いことを示唆している。参照オイル1は、全範囲にわたって、最も大きい牽引係数を有していたのに対して、参照オイル2は、オイル3と比較すると、ある程度低い牽引係数を有していたが、潤滑剤実施例Qの牽引係数よりも相当に高かった。
【0167】
上述の車軸耐久性試験リグを使用して、5つの異なる走行条件下にて、操作温度を比較する試験を行い、数種の潤滑油組成物の操作温度を比較する。具体的には、潤滑剤実施例Dの性能および潤滑剤参照例2の性能を、ベースライン80W−90潤滑剤である参照潤滑剤1と比較する。この試験の結果は、このベースラインと比較した試験オイルの操作温度の差として、示す。
【0168】
表I:段階的耐久性:操作温度の比較(ΔT(°F))
【0169】
【表5】

これらのデータから、潤滑剤Dの耐久性は、ベースライン潤滑剤および比較潤滑剤の両方よりも一貫して優れていることが明らかである。
【0170】
上記物質の一部は、最終調合物中で相互作用し得、その結果、この最終調合物の成分は、最初に添加したものとは異なり得ることが知られている。例えば、金属イオン(例えば、清浄剤のもの)は、他の分子の他の酸性部位に移動できる。それにより形成された生成物は、本発明の組成物をその意図した用途で使用して形成した生成物を含めて、容易に記述できない場合がある。それにもかかわらず、このような改良および反応生成物の全ては、本発明の範囲内に含まれる。本発明は、上記成分を混合することにより調製した組成物を包含する。
【0171】
上で引用した各文献の内容は、本明細書中で参考として援用されている。実施例を除いて、他に明らかに指示がなければ、物質の量を特定している本記述の全ての数値量、反応条件、分子量、炭素原子数などは、「約」という用語により修飾されることが分かる。他に指示がなければ、本明細書中で言及した各化学物質または組成物は、その異性体、副生成物、誘導体、および市販等級の物質中に存在すると通常考えられているような他のこのような物質を含有し得る、市販等級の物質であると解釈されるべきである。しかしながら、各化学成分の量は、他に指示がなければ、市販の物質に通例存在し得るいかなる溶媒または希釈油を除いて、提示されている。本明細書中で示した上限および下限の量、範囲および比は、別個に組み合わされ得ることが分かる。本明細書中で使用する「本質的になる」との表現には、問題の組成物の基本的で新規な特性に著しく影響を与えない物質が含まれていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0172】
本発明は、その好ましい実施形態に関連して説明されているが、それらの種々の変更は、本明細書を読めば、当業者に明らかなことが理解されるべきである。従って、本明細書中で開示の発明は、添付の特許請求の範囲の範囲に入るこれらの変更を含むべく意図されていることが理解されるべきである。
本発明の好ましい実施形態によれば、以下の組成物等が提供される。
(項1)
潤滑粘性のあるオイルおよび全体で約1重量%〜約50重量%の共重合体を含有する潤滑油組成物であって、該共重合体は、以下の(A)および(B)を含有する:
(A)少なくとも1種のエチレン−脂肪族オレフィン共重合体であって、ここで、該脂肪族オレフィンは、2個〜約24個の炭素原子を含有し、該共重合体(A)は、約600〜約5000の範囲の
【化1】


を有する;および
(B)以下の単位を含有する少なくとも1種の共重合体:そのエステル基中に2個〜約25個の炭素原子を含有するアクリル酸アルキルエステルモノマーから誘導した単位;および必要に応じて、ビニル芳香族モノマーおよび窒素含有ビニルモノマーからなる群の少なくとも1種の構成要素から誘導した単位を約0.1〜約20重量%:該共重合体(B)は、約10,000〜約350,000の範囲の
【化2】


を有する;ここで、(A):(B)の重量比は、約99:1〜約1:99の範囲である、
潤滑油組成物。
(項2)
前記共重合体(A)が、エチレン−α−オレフィン共重合体を含有し、ここで、該エチレン含量が、約30モル%〜約85モル%の範囲である、上記項1に記載の潤滑油組成物。
(項3)
前記エチレン含量が、約45モル%〜約55モル%の範囲である、上記項2に記載の潤滑油組成物。
(項4)
(A)が、エチレン−プロピレン共重合体であり、ここで、該エチレン含量が、約40モル%〜約85モル%の範囲である、上記項2に記載の潤滑油組成物。
(項5)
前記エチレン含量が、約45モル%〜約55モル%の範囲である、上記項4に記載の潤滑油組成物。
(項6)
前記共重合体(B)が、そのエステル基中に2個〜12個の炭素原子を含有するアクリル酸アルキルエステルモノマーから誘導した単位を約5重量%〜約75重量%で含有するモノマーおよびそのエステル基中に13個〜約25個の炭素原子を含有するアクリル酸アルキルエステルモノマーから誘導した単位を約25重量%〜約95重量%で含有するモノマーから誘導した単位を含有する、上記項1に記載の潤滑油組成物。
(項7)
前記共重合体(B)が、以下から誘導した単位を含有する、上記項1に記載の潤滑油組成物:
(a)そのエステル基中に約9個〜約25個の炭素原子を含有するメタクリル酸アルキルエステルモノマーから誘導した単位を約35モル%〜約95モル%;および
(b)そのエステル基中に約7個〜約12個の炭素原子を含有するメタクリル酸アルキルエステルモノマーから誘導した単位を約65モル%〜約5モル%;および必要に応じて、
(c)そのエステル基中に2個〜約8個の炭素原子を含有しかつメタクリル酸エステル(a)および(b)とは異なるメタクリル酸アルキルエステルモノマー、ビニル芳香族モノマーおよび窒素含有ビニルモノマーからなる群の少なくとも1種の構成要素を約0.1モル%〜約20モル%であるが、但し、該エステルの60重量%以下は、そのエステル基中に11個以下の炭素原子を含有する、
潤滑油組成物。
(項8)
前記メタクリル酸アルキルエステルモノマー(b)の前記エステル基のアルキル部分が、2−(C1〜4アルキル)置換基を有する、上記項7に記載の潤滑油組成物。
(項9)
前記共重合体(B)が、以下の(a)および(b)から誘導した単位を含有する、上記項1に記載の潤滑油組成物:
(a)そのエステル基中に約13個〜約25個の炭素原子を含有するメタクリル酸アルキルエステルモノマーから誘導した単位を約35モル%〜約95モル%;および
(b)そのエステル基中に約7個〜約12個の炭素原子を含有するメタクリル酸アルキルエステルモノマーから誘導した単位を約65モル%〜約5モル%。
(項10)
前記共重合体(B)が、さらに、(c)そのエステル基中に2個〜約8個の炭素原子を含有しかつメタクリル酸エステル(a)および(b)とは異なるメタクリル酸アルキルエステルモノマー、ビニル芳香族モノマーおよび窒素含有ビニルモノマーからなる群の少なくとも1種の構成要素を約0.1モル%〜約20モル%で含有するが、但し、該エステルの60重量%以下は、そのエステル基中に11個以下の炭素原子を含有する、上記項9に記載の潤滑油組成物。
(項11)
前記メタクリル酸アルキルエステルモノマー(b)の前記エステル基のアルキル部分が、2−(C1〜4アルキル)置換基を有する、上記項9に記載の潤滑油組成物。
(項12)
前記モノマー(b)が、メタクリル酸2−エチメヘキシルを含有する、上記項11に記載の潤滑油組成物。
(項13)
(A)が、エチレン−α−オレフィン共重合体であり、ここで、該エチレン含量が、約30モル%〜約85モル%の範囲であり、そして(B)が、以下から誘導した単位を含有する、上記項1に記載の潤滑油組成物:
(a)そのエステル基中に約9個〜約25個の炭素原子を含有するメタクリル酸アルキルエステルモノマーから誘導した単位を約35モル%〜約95モル%;および
(b)そのエステル基中に約7個〜約12個の炭素原子を含有するメタクリル酸アルキルエステルモノマーから誘導した単位を約65モル%〜約5モル%;および必要に応じて、
(c)そのエステル基中に2個〜約8個の炭素原子を含有しかつメタクリル酸エステル(a)および(b)とは異なるメタクリル酸アルキルエステルモノマー、ビニル芳香族モノマーおよび窒素含有ビニルモノマーからなる群の少なくとも1種の構成要素を約0.2モル%〜約10モル%であるが、但し、該エステルの60重量%以下は、そのエステル基中に11個以下の炭素原子を含有し、
ここで、(A):(B)の重量比は、約25:75〜約75:25の範囲である、
潤滑油組成物。
(項14)
前記メタクリル酸アルキルエステルモノマー(b)の前記エステル基のアルキル部分が、2−(C1〜4アルキル)置換基を有する、上記項13に記載の潤滑油組成物。
(項15)
(B)が、さらに、約0.1〜約10重量%の少なくとも1種の窒素含有ビニルモノマーから誘導した単位を含有する、上記項1に記載の潤滑油組成物。
(項16)
(B)が、遊離ラジカル開始剤の存在下にて、以下の(1)および(2)を反応させる工程を包含する方法により調製された共重合体である、上記項1に記載の潤滑油組成物:
(1)そのエステル基中に2個〜約25個の炭素原子を含有する1種またはそれ以上のアクリル酸アルキルエステルモノマーを約55重量%〜約99.9重量%であって、ここで、該エステルの少なくとも約50モル%は、該エステル基中に、少なくとも6個の炭素原子を含有する;および
(2)必要に応じて、連鎖移動剤の存在下で、そのエステル基中に2個〜約8個の炭素原子を含有しかつアクリル酸アルキルエステル(1)とは異なるアクリル酸エステル、ビニル芳香族モノマーおよび窒素含有ビニルモノマーからなる群の少なくとも1種のモノマーを約0.1モル%〜約20モル%であるが、但し、該エステルの60重量%以下は、そのエステル基中に11個以下の炭素原子を含有し、ここで、モノマー(1)、該遊離ラジカル開始剤および該連鎖移動剤(もし使用するなら)は、まず、混ぜ合わされて、混合物を形成し、それから、該混合物の約10%〜約80%は、モノマー(2)と混合されて、第二混合物を形成する;モノマー(1)および(2)の該混合物の約20%〜約100%は、発熱が認められるまで加熱され、次いで、反応温度を維持しつつ、約0.25時間〜約5時間にわたって、モノマー(1)および(2)の該混合物の残量(もしあれば)を加え、続いて、0.25時間〜約5時間にわたって、モノマー(1)および開始剤の残留混合物を添加し、必要に応じて、追加開始剤を加え、それから、該反応が完了まで継続される、
潤滑油組成物。
(項17)
モノマー(2)が、窒素含有ビニルモノマーを含有する、上記項16に記載の潤滑油組成物。
(項18)
前記窒素含有ビニルモノマーが、ビニル置換窒素複素環モノマー、アクリル酸ジアルキルアミノアルキルモノマー、ジアルキルアミノアルキルアクリルアミドモノマー、N−第三級ブチルアルキルアクリルアミドおよびビニル置換アミンからなる群から選択される、上記項17に記載の潤滑油組成物。
(項19)
(B)が、遊離ラジカル開始剤の存在下にて、以下の(a)、(b)および(c)を反応させる工程を包含する方法により調製される、上記項10に記載の潤滑油組成物:
(a)そのエステル基中に約13個〜約25個の炭素原子を含有するメタクリル酸エステル;
(b)そのエステル基中に7個〜約12個の炭素原子を含有するメタクリル酸エステル;および
(c)必要に応じて、連鎖移動剤の存在下で、そのエステル基中に2個〜約8個の炭素原子を含有しかつメタクリル酸エステル(a)および(b)とは異なるメタクリル酸エステル、ビニル芳香族モノマーおよび窒素含有ビニルモノマーからなる群の少なくとも1種のモノマーであるが、但し、該エステルの60重量%以下は、そのエステル基中に11個以下の炭素原子を含有し、ここで、モノマー(a)および(b)、該遊離ラジカル開始剤および該連鎖移動剤(もし使用するなら)は、混ぜ合わされて、第一混合物を調製する;モノマー(a)および(b)の該第一混合物の約10重量%〜約80重量%は、モノマー(c)と混ぜ合わされて、第二混合物を調製する;該第二混合物の約20%〜約100%は、発熱が認められるまで加熱される;次いで、反応温度を維持しつつ、約0.25時間〜約5時間にわたって、該第二混合物の残量を加え、続いて、0.25時間〜約5時間にわたって、残留第一混合物を添加し、必要に応じて、追加開始剤を加え、それから、該反応が完了まで継続される、
潤滑油組成物。
(項20)
前記メタクリル酸アルキルモノマー(b)の前記エステル基のアルキル部分が、2−(C1〜4アルキル)置換基を有する、上記項19に記載の潤滑油組成物。
(項21)
(c)が、少なくとも1種の窒素含有ビニルモノマーを含有する、上記項19に記載の潤滑油組成物。
(項22)
前記潤滑粘性のあるオイルが、少なくとも1種の鉱油を含有する、上記項1に記載の潤滑油組成物。
(項23)
前記潤滑粘性のあるオイルが、100℃で約4〜約10センチストークスの範囲の動粘度を有する鉱油および合成油からなる群から選択される少なくとも1種の構成要素を含有する、上記項1に記載の潤滑油組成物。
(項24)
前記鉱油が、Group IIIオイルである、上記項22に記載の潤滑油組成物。
(項25)
さらに、流動点降下剤、腐食防止剤、極圧添加剤、耐摩耗添加剤、酸化防止剤、清浄剤、無灰分散剤、摩擦調整剤および消泡剤からなる群から選択される少なくとも1種の構成要素を含有する、上記項1に記載の潤滑油組成物。
(項26)
主要量の潤滑粘性のあるオイルおよび全体で約3重量%〜約10重量%の重合体組成物を含有する自動変速機油であって、該重合体組成物は、以下を含有する:
(A)約1重量%〜約99重量%の少なくとも1種のエチレン−脂肪族オレフィン共重合体であって、ここで、該脂肪族オレフィンは、3個〜約24個の炭素原子を含有し、該共重合体(A)は、約600〜約5000の範囲の数平均分子量を有する;および
(B)以下の単位を含有する少なくとも1種の共重合体を約99重量%〜約1重量%:そのエステル基中に2個〜約25個の炭素原子を含有するアクリル酸アルキルエステルモノマーから誘導した単位;および必要に応じて、ビニル芳香族モノマーおよび窒素含有ビニルモノマーからなる群の少なくとも1種の構成要素から誘導した単位を約0.1〜約20重量%:該共重合体(B)は、約10,000〜約350,000の範囲の数平均分子量を有する;および
少量の少なくとも1種のジチオリン酸金属、シール膨潤剤、流動点降下剤、無灰分散剤および腐食防止剤。
(項27)
主要量のGroup IIIオイルおよび全体で約3重量%〜約30重量%の重合体組成物を含有するギアオイル組成物であって、該重合体組成物は、以下を含有する:
(A)約1重量%〜約99重量%の少なくとも1種のエチレン−脂肪族オレフィン共重合体であって、ここで、該脂肪族オレフィンは、3個〜約24個の炭素原子を含有し、該共重合体(A)は、約600〜約5000の範囲の数平均分子量を有する;および
(B)以下の単位を含有する少なくとも1種の共重合体を約99重量%〜約1重量%:そのエステル基中に2個〜約25個の炭素原子を含有するアクリル酸アルキルエステルモノマーから誘導した単位;および必要に応じて、ビニル芳香族モノマーおよび窒素含有ビニルモノマーからなる群の少なくとも1種の構成要素から誘導した単位を約0.1〜約20重量%:該共重合体(B)は、約10,000〜約350,000の範囲の数平均分子量を有する;および
少量の少なくとも1種の極圧添加剤、耐摩耗剤および腐食防止剤。
(項28)
以下を含有する、重合体組成物:
(A)約1重量%〜約99重量%の少なくとも1種のエチレン−脂肪族オレフィン共重合体であって、ここで、該脂肪族オレフィンは、3個〜約24個の炭素原子を含有し、該共重合体(A)は、約600〜約5000の範囲の数平均分子量を有する;および
(B)以下の単位を含有する少なくとも1種の共重合体を約99重量%〜約1重量%:そのエステル基中に2個〜約25個の炭素原子を含有するアクリル酸アルキルエステルモノマーから誘導した単位;および必要に応じて、ビニル芳香族モノマーおよび窒素含有ビニルモノマーからなる群の少なくとも1種の構成要素から誘導した単位を約0.1〜約20重量%:該共重合体(B)は、約10,000〜約350,000の範囲の数平均分子量を有する、
重合体組成物。
(項29)
共重合体(A)が、エチレン−α−オレフィン共重合体であり、ここで、該エチレン含量が、約30モル%〜約85モル%の範囲である、上記項28に記載の重合体組成物。
(項30)
(A)が、エチレン−プロピレン共重合体であり、ここで、該エチレン含量が、約40モル%〜約85モル%の範囲である、上記項29に記載の重合体組成物。
(項31)
前記共重合体(B)が、以下から誘導した単位を含有する、上記項29に記載の重合体組成物:
(a)そのエステル基中に約9個〜約25個の炭素原子を含有するメタクリル酸アルキルエステルモノマーから誘導した単位を約35モル%〜約95モル%;および
(b)そのエステル基中に約7個〜約12個の炭素原子を含有するメタクリル酸アルキルエステルモノマーから誘導した単位を約65モル%〜約5モル%;および必要に応じて、
(c)そのエステル基中に2個〜約8個の炭素原子を含有しかつメタクリル酸エステル(a)および(b)とは異なるメタクリル酸アルキルエステルモノマー、ビニル芳香族モノマーおよび窒素含有ビニルモノマーからなる群の少なくとも1種の構成要素を約0.1モル%〜約20モル%であるが、但し、該エステルの60重量%以下は、そのエステル基中に11個以下の炭素原子を含有する、
潤滑油組成物。
(項32)
前記メタクリル酸アルキルエステルモノマー(b)の前記エステル基のアルキル部分が、2−(C1〜4アルキル)置換基を有する、上記項30に記載の重合体組成物。
(項33)
前記共重合体(B)が、以下の(a)および(b)から誘導した単位を含有する、上記項28に記載の重合体組成物:
(a)そのエステル基中に約13個〜約25個の炭素原子を含有するメタクリル酸アルキルエステルモノマーから誘導した単位を約35モル%〜約95モル%;および
(b)そのエステル基中に約7個〜約12個の炭素原子を含有するメタクリル酸アルキルエステルモノマーから誘導した単位を約65モル%〜約5モル%。
(項34)
前記メタクリル酸アルキルモノマー(b)の前記エステル基のアルキル部分が、2−(C1〜4アルキル)置換基を有する、上記項33に記載の重合体組成物。
(項35)
モノマー(b)が、メタクリル酸2−エチルヘキシルを含有する、上記項30に記載の重合体組成物。
(項36)
以下を含有する、上記項32に記載の重合体組成物:
約25重量%〜約75重量%の(A)エチレン−α−オレフィン共重合体であり、ここで、該エチレン含量は、約30モル%〜約85モル%の範囲である;および約75重量%〜約25重量%の(B)ポリメタクリル酸エステル共重合体であり、該(B)は、以下から誘導した単位を含有する:
(a)そのエステル基中に約9個〜約25個の炭素原子を含有するメタクリル酸アルキルエステルモノマーから誘導した単位を約35モル%〜約95モル%;および
(b)そのエステル基中に約7個〜約12個の炭素原子を含有するメタクリル酸アルキルエステルモノマーから誘導した単位を約65モル%〜約5モル%;および必要に応じて、
(c)そのエステル基中に2個〜約8個の炭素原子を含有しかつメタクリル酸エステル(a)および(b)とは異なるメタクリル酸アルキルエステルモノマー、ビニル芳香族モノマーおよび窒素含有ビニルモノマーからなる群の少なくとも1種の構成要素を約0.2モル%〜約20モル%であるが、但し、該エステルの60重量%以下は、そのエステル基中に11個以下の炭素原子を含有する、
重合体組成物。
(項37)
前記メタクリル酸アルキルエステルモノマー(b)の前記エステル基のアルキル部分が、2−(C1〜4アルキル)置換基を有する、上記項36に記載の重合体組成物。
(項38)
(B)が、さらに、約0.1〜約10重量%の少なくとも1種の窒素含有ビニルモノマーから誘導した単位を含有する、上記項36に記載の重合体組成物。
(項39)
(B)が、遊離ラジカル開始剤の存在下にて、以下の(a)、(b)および(c)を反応させる工程を包含する方法により調製される、上記項36に記載の重合体組成物:
(a)そのエステル基中に約9個〜約25個の炭素原子を含有するメタクリル酸エステル;
(b)そのエステル基中に7個〜約12個の炭素原子を含有するメタクリル酸エステル;および
(c)必要に応じて、連鎖移動剤の存在下で、そのエステル基中に2個〜約8個の炭素原子を含有しかつメタクリル酸エステル(a)および(b)とは異なるメタクリル酸エステル、ビニル芳香族モノマーおよび窒素含有ビニルモノマーからなる群の少なくとも1種のモノマーであるが、但し、該エステルの60重量%以下は、そのエステル基中に11個以下の炭素原子を含有し、ここで、モノマー(a)および(b)、該遊離ラジカル開始剤および該連鎖移動剤(もし使用するなら)は、混ぜ合わされて、第一混合物を調製する;モノマー(a)および(b)の該第一混合物の約10重量%〜約80重量%は、モノマー(c)と混ぜ合わされて、第二混合物を調製する;該第二混合物の約20%〜約100%は、発熱が認められるまで加熱される;次いで、反応温度を維持しつつ、約0.25時間〜約5時間にわたって、該第二混合物の残量を加え、続いて、0.25時間〜約5時間にわたって、残留第一混合物を添加し、必要に応じて、追加開始剤を加え、それから、該反応が完了まで継続される、
重合体組成物。
(項40)
前記メタクリル酸アルキルエステルモノマー(b)の前記エステル基のアルキル部分が、2−(C1〜4アルキル)置換基を有する、上記項39に記載の重合体組成物。
(項41)
以下を共に混合することにより調製される、重合体組成物:
(A)約1重量%〜約99重量%の少なくとも1種のエチレン−脂肪族オレフィン共重合体であって、ここで、該脂肪族オレフィンは、3個〜約24個の炭素原子を含有し、該共重合体(A)は、約600〜約5000の範囲の数平均分子量を有する;および
(B)以下の単位を含有する少なくとも1種の共重合体を約99重量%〜約1重量%:そのエステル基中に2個〜約25個の炭素原子を含有するアクリル酸アルキルエステルモノマーから誘導した単位;および必要に応じて、ビニル芳香族モノマーおよび窒素含有ビニルモノマーからなる群の少なくとも1種の構成要素から誘導した単位を約0.1〜約20重量%:該共重合体(B)は、約10,000〜約350,000の範囲の数平均分子量を有する、
重合体組成物。
さらに好ましい別の実施形態において、本願発明は、以下の組成物等を提供する
(1)
潤滑粘性のあるオイルおよび全体で1重量%〜50重量%の共重合体を含有する潤滑油組成物であって、該共重合体は、以下の(A)および(B)を含有する:
(A)少なくとも1種のエチレン−プロピレン共重合体であって、600〜5000の範囲の
【化31】

を有する共重合体;および
(B)以下から誘導した単位を含有する少なくとも1種の共重合体:
(a)そのエステル基中に9個〜25個の炭素原子を含有するメタクリル酸アルキルエステルモノマーを35モル%〜95モル%;および
(b)メタクリル酸2−エチルヘキシルを65モル%〜5モル%;および
(c)そのエステル基中に2個〜8個の炭素原子を含有しかつメタクリル酸エステル(a)および(b)とは異なるメタクリル酸アルキルエステルモノマー、ビニル芳香族モノマーおよび窒素含有ビニルモノマーからなる群の少なくとも1種の構成要素を0.1モル%〜20モル%であるが、該共重合体(B)は、10,000〜350,000の範囲の
【化32】


を有する;ここで、(A):(B)の重量比は、99:1〜1:99の範囲である、
潤滑油組成物。
(2)
(A)が、エチレン−プロピレン共重合体であり、ここで、該エチレン含量が、30モル%〜85モル%の範囲であり、そして
(B)が、以下から誘導した単位を含有するポリメタクリレート共重合体である、上記項1に記載の潤滑油組成物:
(a)そのエステル基中に9個〜25個の炭素原子を含有するメタクリル酸アルキルエステルモノマーを35モル%〜95モル%;および
(b)メタクリル酸2−エチルヘキシルを65モル%〜5モル%;および
(c)そのエステル基中に2個〜8個の炭素原子を含有しかつメタクリル酸エステル(a)および(b)とは異なるメタクリル酸アルキルエステルモノマー、ビニル芳香族モノマーおよび窒素含有ビニルモノマーからなる群の少なくとも1種の構成要素を0.2モル%〜10モル%であるが、ここで、(A):(B)の重量比は、25:75〜75:25の範囲である、
潤滑油組成物。
(3)
(B)が、さらに、0.1重量%〜10重量%の少なくとも1種の窒素含有ビニルモノマーから誘導した単位を含有する、上記項2に記載の潤滑油組成物。
(4)
(B)が、遊離ラジカル開始剤の存在下にて、以下の(1)および(2)を反応させる工程を包含する方法により調製された共重合体である、上記項1に記載の潤滑油組成物:
(1)そのエステル基中に2個〜25個の炭素原子を含有する1種またはそれ以上のメタクリル酸アルキルエステルモノマーを55重量%〜99.9重量%であって、ここで、該エステルの少なくとも50モル%は、該エステル基中に、少なくとも6個の炭素原子を含有する;および
(2)そのエステル基中に2個〜8個の炭素原子を含有しかつメタクリル酸アルキルエステルモノマー(1)とは異なるアクリル酸エステル、ビニル芳香族モノマーおよび窒素含有ビニルモノマーからなる群から選択される少なくとも1種のモノマーを0.1重量%〜45重量%であるが、ここで、モノマー(1)および該遊離ラジカル開始剤は、まず、混ぜ合わされて、混合物を形成し、それから、該混合物の10%〜80%は、モノマー(2)と混合されて、第二混合物を形成する;モノマー(1)および(2)の該混合物の20%〜100%は、発熱が認められるまで加熱され、次いで、反応温度を維持しつつ、まず、0.25時間〜5時間にわたって、モノマー(1)および(2)の該混合物の残量(もしあれば)を加え、続いて、0.25時間〜5時間にわたって、モノマー(1)および開始剤の残留混合物を添加し、必要に応じて、追加開始剤を加え、それから、該反応が完了まで継続される、
潤滑油組成物。
(5)
モノマー(2)が、窒素含有ビニルモノマーを含有する、上記項4に記載の潤滑油組成物。
(6)
(B)が、遊離ラジカル開始剤の存在下にて、以下の(a)、(b)および(c)を反応させる工程を包含する方法により調製される、上記項1に記載の潤滑油組成物:
(a)そのエステル基中に13個〜25個の炭素原子を含有するメタクリル酸エステル;および
(b)メタクリル酸2−エチルヘキシル;および
(c)そのエステル基中に2個〜8個の炭素原子を含有しかつメタクリル酸エステル(a)および(b)とは異なるメタクリル酸エステル、ビニル芳香族モノマーおよび窒素含有ビニルモノマーからなる群から選択される少なくとも1種のモノマーであるが、ここで、モノマー(a)および(b)ならびに該遊離ラジカル開始剤は、混ぜ合わされて、第一混合物を調製する;モノマー(a)および(b)の該第一混合物の10重量%〜80重量%は、モノマー(c)と混ぜ合わされて、第二混合物を調製する;該第二混合物の20%〜100%は、発熱が認められるまで加熱される;次いで、反応温度を維持しつつ、まず、0.25時間〜5時間にわたって、該第二混合物の残量(もしあれば)を加え、続いて、0.25時間〜5時間にわたって、残留第一混合物を添加し、必要に応じて、追加開始剤を加え、それから、該反応が完了まで継続される、
潤滑油組成物。
(7)
さらに、流動点降下剤、腐食防止剤、極圧添加剤、耐摩耗添加剤、酸化防止剤、清浄剤、無灰分散剤、摩擦調整剤および消泡剤からなる群の少なくとも1種の構成要素を含有し、ここで、前記潤滑粘性のあるオイルが、100℃で4〜10センチストークスの範囲の動粘度を有する鉱油および合成油またはそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の構成要素を含有する、上記項1に記載の潤滑油組成物。
(8)
主要量の潤滑粘性のあるオイル、全体で3重量%〜10重量%の重合体組成物、ならびに少量の少なくとも1種のジチオリン酸金属、シール膨潤剤、流動点降下剤、無灰分散剤および腐食防止剤を含有する自動変速機油であって、該重合体組成物は、以下を含有する:
(A)1重量%〜99重量%の少なくとも1種のエチレン−プロピレン共重合体であって、600〜5000の範囲の数平均分子量を有する、共重合体;および
(B)以下から誘導した単位を含有する少なくとも1種の共重合体を99重量%〜1重量%:そのエステル基中に2個〜25個の炭素原子を含有するメタクリル酸アルキルエステルモノマー;および必要に応じて、ビニル芳香族モノマーおよび窒素含有ビニルモノマーからなる群の少なくとも1種の構成要素を0.1重量%〜20重量%:該共重合体(B)は、10,000〜350,000の範囲の数平均分子量を有する。
(9)
主要量のGroup IIIオイル、全体で3重量%〜30重量%の重合体組成物、ならびに少量の極圧添加剤、耐摩耗剤および腐食防止剤を含有するギアオイル組成物であって、該重合体組成物は、以下を含有する:
(A)1重量%〜99重量%の少なくとも1種のエチレン−プロピレン共重合体であって、600〜5000の範囲の数平均分子量を有する共重合体;および
(B)以下から誘導した単位を含有する少なくとも1種の共重合体を99重量%〜1重量%:そのエステル基中に2個〜25個の炭素原子を含有するメタクリル酸アルキルエステルモノマー;および必要に応じて、ビニル芳香族モノマーおよび窒素含有ビニルモノマーからなる群の少なくとも1種の構成要素を0.1重量%〜20重量%:該共重合体(B)は、10,000〜350,000の範囲の数平均分子量を有する。
(10)
前記共重合体が連鎖移動剤の存在下で調製される、上記項4に記載の潤滑油組成物。
(11)
前記共重合体が連鎖移動剤の存在下で調製される、上記項6に記載の潤滑油組成物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載された組成物。

【公開番号】特開2009−120853(P2009−120853A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−55758(P2009−55758)
【出願日】平成21年3月9日(2009.3.9)
【分割の表示】特願2002−582164(P2002−582164)の分割
【原出願日】平成14年3月18日(2002.3.18)
【出願人】(591131338)ザ ルブリゾル コーポレイション (203)
【氏名又は名称原語表記】THE LUBRIZOL CORPORATION
【住所又は居所原語表記】29400 Lakeland Boulevard, Wickliffe, Ohio 44092, United States of America
【Fターム(参考)】