説明

オレフィン系重合体の水性分散液の製造方法

【課題】配位重合触媒を用いたオレフィンモノマーの重合により高い固形分含有量のオレフィン系共重合体の水性分散液の製造方法を提供する。
【解決手段】配位重合触媒を用いて、オレフィン系モノマーを水性媒体で重合する際、重合を35〜90℃で行うことにより、またさらにはジエン系モノマーを共重合することにより達成される。また、配位重合触媒は特定構造であること、α−オレフィンが炭素数10以下であるモノマーを用いること、ジエンモノマーの使用量も特定範囲にあることでさらに効果が高められる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配位重合触媒を用いて得られるオレフィン系共重合体の水性分散液の製造方法と該製造方法により得られる水性分散液に関する。
【背景技術】
【0002】
オレフィン系重合用触媒の高活性化は、現在においても重要な課題である。極性モノマーとの共重合や水系での重合が可能になることから、後周期遷移金属錯体系のオレフィン系重合用触媒が着目されている。特に最近では、α−ジイミン型の配位子を有するパラジウム系触媒(Brookhart触媒)(特許文献1)や酸素原子近傍にフッ化炭化水素を有しかつリン原子近傍にエステル基を有するニッケル系触媒が着目されている。(特許文献2、非特許文献1、2)。
【0003】
特許文献1には、新規なパラジウム系のオレフィン系重合触媒を用いて、水系での重合においてオレフィンの重合が進行することが報告されている。しかしながら、得られたオレフィン系重合体エマルジョンのSC(Solid Content:固形分含有量)においてまだ改善の余地がある。
【特許文献1】特開2006−111825
【特許文献2】WO02/24763
【非特許文献1】Macromolecules,2001年,34巻,2438頁
【非特許文献2】Macromolecules,2001年,34巻,2022頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、配位重合触媒を用いたオレフィン系モノマーの乳化重合において、特定の重合温度でさらにはジエンモノマーを共重合させるオレフィン系重合体の水性分散液の製造方法であり、該製造方法により高いSCの水性分散液を得ることができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、配位重合触媒を用いオレフィンモノマーを35〜90℃で重合を行うことを特徴とするオレフィン系重合体の水性分散液の製造方法(請求項1)。
【0006】
配位重合触媒、オレフィンモノマー、ジエン系モノマーを用いた請求項1記載のオレフィン系重合体の水性分散液の製造方法(請求項2)。
【0007】
配位重合触媒が、一般式(1)〜(5)で示されるいずれか1種の後周期遷移金属錯体系の配位重合触媒である事を特徴とする請求項1または2に記載のオレフィン系共重合体分散液の製造方法(請求項3)。
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、Mはパラジウムまたはニッケルである。R1、R4は各々独立して、炭素数1〜4の炭化水素基である。R2、R3は各々独立して水素原子、またはメチル基である。R5はハロゲン原子、水素原子、または炭素数1〜20の有機基である。XはMに配位可能なヘテロ原子を持つ有機基であり、R5につながっていてもよい、またはXは存在しなくてもよい。L-は任意のアニオンである。)
【0010】
【化2】

【0011】
(式中、Mはパラジウムまたはニッケルである。R1、R4は各々独立して、炭素数1〜4の炭化水素基である。R5はハロゲン原子、水素原子、または炭素数1〜20の有機基である。XはMに配位可能なヘテロ原子を持つ有機基であり、R5につながっていてもよい、またはXは存在しなくてもよい。L-は任意のアニオンである。)
【0012】
【化3】

【0013】
(式中、Mはニッケル、パラジウムまたは白金である。Eは酸素または硫黄である。Xはリン、砒素またはアンチモンである。R6、R7、R8は各々独立して、水素または炭素数1〜20の炭化水素基である。Rf1はフッ素原子または炭素数1〜20のフッ素化炭化水素基である。Rは水素、炭素数1〜20の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、水酸基、炭素数1〜20の炭化水素基からなるエーテル基、炭素数1〜20の炭化水素基からなるエステル基、スルホン酸塩または炭素数1〜20の炭化水素基からなるスルホン酸エステル基である。)
【0014】
【化4】

【0015】
【化5】

【0016】
(式中、Mはニッケル、パラジウムまたは白金である。Eは酸素または硫黄である。Xはリン、砒素またはアンチモンである。R6、R7、R8は各々独立して、水素または炭素数1〜20の炭化水素基である。Yはハロゲン原子である。mは1〜3である。)。
【0017】
オレフィン系モノマーが炭素数10以下のα−オレフィンであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のオレフィン系重合体の水性分散液の製造方法(請求項4)。
【0018】
ジエン系モノマーがオレフィンモノマー100重量部に対して、0.01〜10重量部であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のオレフィン系重合体の水性分散液の製造方法(請求項5)に関する。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、高いSCのオレフィン系共重合体の水性分散液を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明は、配位重合触媒の存在下35〜90℃で重合を行うことを特徴とするポリオレフィン系共重合体の水性分散液の製造方法について詳細に説明する。
【0021】
(配位重合触媒)
ポリオレフィンの水性分散液を製造するための配位重合触媒としては、水および極性化合物の共存下でオレフィン重合活性を有する配位重合触媒であれば特に制限はなく、好ましい例としてケミカル・レビュー(Chemical Review),2000年,100巻,1169−1203頁、ケミカル・レビュー(Chemical Review),2003年,103巻,283−315頁、有機合成化学協会誌,2000年,58巻,293頁、アンゲバンテ・ケミー国際版(Angewandte Chemie International Edition),2002年,41巻,544−561頁、アンゲバンテ・ケミー国際版(Angewandte Chemie International Edition),2005年,44巻,429−432頁に記載されているものを挙げる事ができる。但し、これに限定されるものではない。合成が簡便であり高活性が得られるという点から、一般式(1)〜(5)で示される後周期遷移金属錯体系の配位重合触媒が好ましい。
【0022】
【化6】

【0023】
(式中、Mはパラジウムまたはニッケルである。R1、R4は各々独立して、炭素数1〜4の炭化水素基である。R2、R3は各々独立して水素原子、またはメチル基である。R5はハロゲン原子、水素原子、または炭素数1〜20の有機基である。XはMに配位可能なヘテロ原子を持つ有機基であり、R5につながっていてもよい、またはXは存在しなくてもよい。L-は任意のアニオンである。)
【0024】
【化7】

【0025】
(式中、Mはパラジウムまたはニッケルである。R1、R4は各々独立して、炭素数1〜4の炭化水素基である。R5はハロゲン原子、水素原子、または炭素数1〜20の有機基である。XはMに配位可能なヘテロ原子を持つ有機基であり、R5につながっていてもよい、またはXは存在しなくてもよい。L-は任意のアニオンである。)
【0026】
【化8】

【0027】
(式中、Mはニッケル、パラジウムまたは白金である。Eは酸素または硫黄である。Xはリン、砒素またはアンチモンである。R6、R7、R8は各々独立して、水素または炭素数1〜20の炭化水素基である。Rf1はフッ素原子または炭素数1〜20のフッ素化炭化水素基である。Rは水素、炭素数1〜20の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、水酸基、炭素数1〜20の炭化水素基からなるエーテル基、炭素数1〜20の炭化水素基からなるエステル基、スルホン酸塩または炭素数1〜20の炭化水素基からなるスルホン酸エステル基である。)
【0028】
【化9】

【0029】
【化10】

【0030】
(式中、Mはニッケル、パラジウムまたは白金である。Eは酸素または硫黄である。Xはリン、砒素またはアンチモンである。R6、R7、R8は各々独立して、水素または炭素数1〜20の炭化水素基である。Yはハロゲン原子である。mは1〜3である。)
一般式(1)または(2)で示される後周期遷移金属錯体系の配位重合触媒は、Brookhart触媒として知られている。
【0031】
水中で安定であることから特にMはパラジウムが好ましい。R1、R4で表される炭素数1〜4の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、n−ブチル基などが好ましく、さらに好ましくはメチル基、イソプロピル基が好ましい。
【0032】
Xで表されるMに配位可能な分子としては、ジエチルエーテル、アセトン、メチルエチルケトン、アセトアルデヒド、酢酸、酢酸エチル、水、エタノール、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、炭酸プロピレンなどの極性化合物を例示することができるが、なくてもよい。またR5がヘテロ原子、特にエステル結合等のカルボニル酸素を有する場合には、このカルボニル酸素がXとして配位してもよい。また、オレフィンとの重合時には、該オレフィンが配位する形になることが知られている。
【0033】
また、L-で表される対アニオンは、α−ジイミン型の配位子と遷移金属とからなる触媒と助触媒の反応により、カチオン(M+)と共に生成するが、溶媒中で非配位性のイオンペアを形成できるものならばいずれでもよい。
【0034】
両方のイミン窒素に芳香族基を有するα−ジイミン型の配位子、具体的には、ArN=C(R2)−C(R3)=NArで表される化合物は、合成が簡便で、活性が高いことから好ましい。R2、R3は炭化水素基であることが好ましく、特に、水素原子、メチル基、および一般式(2)で示されるアセナフテン骨格としたものが、合成が簡便で活性が高いことから好ましい。さらに、両方のイミン窒素に置換芳香族基を有するα−ジイミン型の配位子を用いることが、立体因子的に有効で、ポリマーの分子量が高くなる傾向にあることから好ましい。従って、Arは置換基を持つ芳香族基であることが好ましく、例えば、2,6−ジメチルフェニル、2,6−ジイソプロピルフェニルなどが挙げられる。
【0035】
本発明の後周期遷移金属錯体から得られる活性種中の補助配位子(R5)としては、炭化水素基あるいはハロゲン基あるいは水素基が好ましい。後述する助触媒のカチオン(Q+)が、触媒の金属−ハロゲン結合あるいは金属−水素結合あるいは水素−炭素結合から、ハロゲン等を引き抜き、塩が生成する一方、触媒からは、活性種である、金属−炭素結合あるいは金属−ハロゲン結合あるいは金属−水素結合を保有するカチオン(M+)が発生し、助触媒のアニオン(L-)と非配位性のイオンペアを形成する必要があるためである。
【0036】
5を具体的に例示すると、メチル基、クロロ基、ブロモ基あるいは水素基が挙げられ、特に、メチル基あるいはクロロ基が、合成が簡便であることから好ましい。なお、M+−ハロゲン結合へのオレフィンの挿入よりM+−炭素結合(あるいは水素結合)へのオレフィンの挿入の方がおこりやすいため、触媒の補助配位子として特に好ましいR5はメチル基である。
【0037】
さらに、R5としてはMに配位可能なカルボニル酸素を持つエステル結合を有する有機基であってもよく、例えば、酪酸メチルから得られる基が挙げられる。
【0038】
助触媒としては、Q+-で表現できる。Qとしては、Ag、Li、Na、K、Hが挙げられ、Agがハロゲンの引き抜き反応が完結しやすいことから好ましく、Na、Kが安価であることから好ましい。Lとしては、BF4、B(C654、B(C63(CF324、PF6、AsF6、SbF6、(RfSO22CH、(RfSO23C、(RfSO22N、RfSO3が挙げられる。特に、PF6、AsF6、SbF6、(RfSO22CH、(RfSO23C、(RfSO22N、RfSO3が、極性化合物に安定な傾向を示すという点から好ましく、さらに、PF6、AsF6、SbF6が、合成が簡便で工業的に入手容易であるという点から特に好ましい。
【0039】
活性の高さからは、BF4、B(C654、B(C63(CF324が、特にB(C654、B(C63(CF324が好ましい。Rは複数のフッ素基を含有する炭化水素基である。これらフッ素は、アニオンを非配位的にするために必要で、その数は多いほど好ましい。Rの例示としては、CF3、C25、C49、C817、C65があるが、これらに限定されない。またいくつかを組み合わせてもよい。
【0040】
一般式(3)、(4)または(5)で示される後周期遷移金属錯体系の配位重合触媒は、SHOP(Shell Higher Olefin Process)触媒として知られている。(3)の中でも下記一般式(6):
【0041】
【化11】

【0042】
(式中、Mはニッケル、パラジウムまたは白金である。Eは酸素または硫黄である。Xはリン、砒素またはアンチモンである。R6、R7、R8は各々独立して、水素または炭素数1〜20の炭化水素基である。Rf1、Rf2は各々独立してフッ素原子または炭素数1〜20のフッ素化炭化水素基である。)で表されるオレフィン重合用触媒が好ましい。特に、Rf1がフッ素化炭化水素基である場合、乳化系でも高いエチレン重合活性を示すことが報告されている(Angew.Chem.Int.Ed.2002年,41巻,544頁)。
【0043】
f2を電子吸引性のフッ素原子または炭素数1〜20のフッ素化炭化水素基にすることでより高活性およびまたはより高分子量のポリオレフィンを得ることができる。(3)は、以下の反応により調製するのが好ましい。
【0044】
【化12】

【0045】
(反応式中、Mはニッケル、パラジウムまたは白金である。Eは酸素または硫黄である。Xはリン、砒素またはアンチモンである。R6、R7、R8は各々独立して、水素または炭素数1〜20の炭化水素基である。Rf1はフッ素原子または炭素数1〜20のフッ素化炭化水素基である。Rは水素、炭素数1〜20の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、水酸基、炭素数1〜20の炭化水素基からなるエーテル基、炭素数1〜20の炭化水素基からなるエステル基、スルホン酸塩または炭素数1〜20の炭化水素基からなるスルホン酸エステル基である。MLnはゼロ価のニッケル、パラジウムまたは白金化合物である。LはMに対して配位し、Mの価数をゼロ価に保持するものであれば特に制限はない。nは自然数である)。
【0046】
これらの反応が進行しやすいことから、Mはゼロ価のニッケルであることが好ましい。Eは酸素であることが好ましい。Xはリンであることが好ましい。
【0047】
f1、Rf2は各々独立して炭素数1〜20のフッ素化炭化水素基が好ましい。具体例としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ペンタフルオロフェニル基、トリフルオロメチル基で置換されたフェニル基等が挙げられる。特に、Rf1はトリフルオロメチル基が好ましく、Rf2はペンタフルオロフェニル基が好ましい。
【0048】
また、R6、R7、R8は各々独立して、炭素数1〜20の炭化水素基が、特に置換芳香族基が好ましい。置換芳香族基として最も好ましいのはフェニル基である。一般式(4)あるいは一般式(5)は、以下の化合物によりその場で調製される配位子を用いてその場の反応で調製するのが好ましい。
【0049】
【化13】

【0050】
【化14】

【0051】
(反応式中、Mはニッケル、パラジウムまたは白金である。Eは酸素または硫黄である。Xはリン、砒素またはアンチモンである。R6、R7、R8は各々独立して、水素または炭素数1〜20の炭化水素基である。Yはハロゲン原子である。mは1〜3である。MLnはゼロ価のニッケル、パラジウムまたは白金化合物である。LはMに対して配位し、Mの価数をゼロ価に保持するものであれば特に制限はない。nは自然数である。)これらの反応が進行しやすいことから、Mはゼロ価のニッケルであることが好ましい。Eは酸素であることが好ましい。Xはリンであることが好ましい。
【0052】
ゼロ価のニッケル化合物としては、例えば、ビス(シクロオクタジエン)ニッケル、ビス(シクロオクタテトラエン)ニッケル、ビス(1、3、7-オクタトリエン)ニッケル、ビス(シクロドデカトリエン)ニッケル、ビス(アリル)ニッケル、ビス(メタリル)ニッケル、トリエチレンニッケル、ビス(ブタジエン)ニッケル、ビス(イソプレン)ニッケルが好ましく、ビス(シクロオクタジエン)ニッケルが特に好ましい。
【0053】
これらビス(シクロオクタジエン)ニッケルは公知の方法に従って合成することもできるし、固体を取り出すことなく溶液のまま用いてもよい(例えば、実験化学講座第4版、371頁に準じて2価のニッケル化合物とシクロオクタジエン等とトリアルキルアルミニウムとから合成できる)。
【0054】
また、Yは塩素またはフッ素、特にフッ素であることが好ましい。また、R6、R7、R8は各々独立して、炭素数1〜20の炭化水素基が、特に置換芳香族基が好ましい。置換芳香族基として最も好ましいのはフェニル基である。反応の促進のために、ホスフィン、ホスフィン酸化物、ケトン、エステル、エーテル、アルコール、ニトリル、アミン、ピリジン、オレフィン等を共存させるのが好ましい。特にオレフィンを共存させるのが好ましい。オレフィンには以下に説明するオレフィンモノマーを含む。
【0055】
反応温度は35〜60℃が好ましい。さらに45〜55℃が重合活性の高さから好ましい。反応時間に特に制限はないが、10分間〜24時間が好ましい。反応は不活性雰囲気下で行うのが好ましく、アルゴン、窒素等が挙げられる。場合により微量の酸素、水分が存在していてもよい。反応は、通常溶媒を使用して実施するのが好ましく、溶媒としては脂肪族または芳香族溶媒が好ましく、これらはハロゲン化されていてもよい。
【0056】
例としては、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、イソドデカン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、メチルシクロヘキサン、メチルシクロヘプタン、エチルシクロヘキサン、ブチルクロリド、塩化メチレン、クロロホルムが挙げられる。一般に溶媒中のMの濃度は、1〜20000μmol/L、さらには10〜10000μmol/Lの範囲が好ましい。
【0057】
反応において、MLn/配位子のモル比は、反応収率を高めるため少なくともMLnを等量以上使用するのがよく、5/1〜1/1が好ましく、3/1〜2/1がより好ましい。本発明のオレフィン重合用触媒一般式(3)、(4)、(5)の具体例としては、ニッケルが入手性の点から優れており、特に下記一般式で示される化合物を好適に例示することができるが、これに限定されるものではない。
【0058】
【化15】

【0059】
【化16】

【0060】
【化17】

【0061】
(式中、Phはフェニル基、R’は炭素数1〜6の炭化水素基、nは1〜3を示す)。
【0062】
(オレフィンモノマー)
本発明に用いるオレフィンモノマーは、配位重合可能な炭素−炭素二重結合を有するオレフィン化合物が用いられる。オレフィンモノマーの好ましい例としては炭素数2〜20のオレフィン、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ヘキサデセン、1−エイコセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、ビニルシクロヘキサン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン、ノルボルネン、5−フェニル−2−ノルボルネン等が挙げられる。
【0063】
炭素数10以下のα−オレフィンが重合活性の高さから好ましく、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどが挙げられる。特にエチレンが高活性のため好ましい。これらのオレフィン系モノマーは、単独で使用してもよく、また2種以上使用してもよい。
【0064】
また、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエン、1,11−ドデカジエン、1,13−テトラデカジエン、1,15−ヘキサデカジエン、1,5−シクロオクタジエン、ノルボルナジエン、5−ビニル−2−ノルボルネン、エチリデンノルボルネン、ジメタノオクタヒドロナフタリン、ジシクロペンタジエン等のジエンを少量併用してもよい。ジエンの使用量はオレフィン系モノマー100重量部に対して好ましくは0.01〜10重量部、さらに好ましくは0.05〜8重量部、特に好ましくは0.1〜5重量部である。ジエンの使用によりポリオレフィンの分子量、分岐度、架橋度などを調節することができ、また、本願発明の高SCの水性分散液を得ることができる。
【0065】
オレフィンモノマーと触媒活性種のモル比は、制限はないが、分子量の大きい重合体を収率良く得られるという点から、オレフィンモノマー/触媒活性種がモル比で10〜109、さらには100〜107、さらに好ましくは1000〜10、とするのが好ましい。
【0066】
(オレフィンモノマー重合)
本発明の、配位重合触媒を用いた、オレフィンモノマーの重合方法は、例えば水性媒体による乳化重合法(ミニエマルジョン重合法を含む)あるいはミクロ懸濁重合法あるいはそれに近い系で行うことができる。これらの重合方法によりオレフィン重合体が高い濃度で分散した水性分散液を得ることができる。
【0067】
本願発明の水性分散液を得る重合方法としては、例えば水中に配位重合触媒およびオレフィンモノマーを均一に分散させて反応させて得ることが出来る。
【0068】
用いるオレフィンモノマーが反応温度において気体である場合は、圧力をかけたり低温で凝縮あるいは凝固させて液体もしくは固体として仕込んだ後に系を反応温度まで加熱しても良いし、気体のままで仕込んでも良い。
【0069】
本発明においては配位重合触媒を用いたオレフィンの重合において35〜90℃で重合を行うことで本願発明の高い濃度でオレフィン系重合体の水性分散液を得ることができる。
【0070】
重合温度を目的とする温度に保持して高いSCの水性分散体を得る具体的手段としては、重合系中の攪拌程度を調整するがあげられる。
重合系の攪拌程度は重合方法により様々な条件が可能であり適宜用いることができる。
【0071】
また、予備実験で発熱挙動を確認して冷却、加温の操作を前もって行うようにして重合温度を目的とする値に保持することも可能である。
【0072】
反応途中の急激な発熱により一時的に本願発明の温度範囲を外れて一時的に高くなっても、本願発明の高いSC濃度の水性分散液を得ることが困難となるので、避けることが好ましい。
【0073】
オレフィンモノマーおよび配位重合触媒は、反応容器内に一括して全量を仕込んでも一部を仕込んだ後に残りを連続的にまたは間欠的に追加しても良い。また、水および乳化剤と混合して、例えばホモジナイザーなどをかけて乳化液とした状態で仕込んでも良い。
【0074】
乳化重合またはミクロ懸濁重合に用いる乳化剤は公知のものを使うことができ、アニオン性、カチオン性、ノニオン性のいずれの乳化剤も特に限定なく使うことができる。乳化能が良好であるという点から、アルキルベンゼンスルホン酸のアルカリ金属塩、アルキル硫酸のアルカリ金属塩、アルキルスルホコハク酸のアルカリ金属塩などのアニオン性乳化剤が好ましく、さらに好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキル硫酸ナトリウム、アルキルスルホコハク酸ナトリウムなどが好ましい。該乳化剤の使用量には特に限定がなく、適宜調整すればよいが、好ましくは使用する水に対して、0.01g/L〜50g/L、好ましくは0.1g/L〜30g/L、さらに好ましくは1.5g/L〜20g/Lである。
【0075】
ミクロ懸濁重合に用いる分散剤は、公知のものを使うことができる。具体例としてはリン酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、澱粉末シリカ等の水難溶性無機化合物;ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース等のノニオン系高分子化合物;ポリアクリル酸およびその塩、ポリメタクリル酸およびその塩、メタクリル酸エステルとメタクリル酸およびその塩との共重合体等のアニオン系高分子化合物などがあげられる。
【0076】
重合の際、オレフィンモノマーおよび配位重合触媒の溶解度を高め反応を促進するために有機溶媒を少量添加してもよい。その溶媒としては特に制限はないが、脂肪族または芳香族溶媒が好ましく、これらはハロゲン化されていてもよい。例としては、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ブチルクロリド、塩化メチレン、クロロホルムが挙げられる。
【0077】
また、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、アセトン、エタノール、メタノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル等の極性溶媒であってもよい。水溶性が比較的低く、かつ触媒が溶解しやすい溶媒であることが特に好ましく、このような特に好ましい例としてはトルエン、塩化メチレン、クロロホルムおよびブチルクロリド、クロロベンゼン等が挙げられる。
【0078】
あらかじめ系全体を乳化させておくミニエマルジョン重合の場合にはエマルジョン(ラテックス)の安定化のためにペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカンなどの水溶性の低い脂肪族溶媒を用いることが好ましい。ポリブテンなどの水溶性の低いオリゴマーを用いてもよい。これらの溶媒は単独で用いても良いし、複数を組み合わせて用いても良い。溶媒の合計使用量は、反応液全体の体積に対して好ましくは50容量%以下、さらに好ましくは20容量%以下である。これらの溶媒は、そのまま添加してもよいし、乳化させて添加しても良い。
【0079】
本発明のポリオレフィン系重合体の水性分散液の製造は、35〜90℃で行うものであるが、好ましくは35〜85℃、さらに好ましくは36〜75℃、特に好ましくは40〜65℃、最も好ましくは45〜55℃で行われると分散液のSCが高くなるので好ましい。
重合時間は特に制限はないが、通常10分〜24時間、反応圧力は特に制限はないが、常圧〜10MPaである。温度および圧力は、反応開始から終了まで常時一定に保っても良いし、反応途中で連続的もしくは段階的に変化させても良い。
【0080】
用いるオレフィンモノマーがエチレン、プロピレンなどの気体である場合は、重合反応によるモノマー消費に伴って徐々に圧力が低下しうるが、そのまま圧力を変化させて反応を行っても良く、モノマーを供給したり加熱するなどにより常時一定の圧力を保って反応を行っても良い。本発明により得られるポリオレフィン系重合体の水性分散液はスラリー状態でも良いし、エマルジョンの状態でも良いが、エマルジョンの状態として得られるものが製造が容易であり好ましい。
【0081】
エマルジョン中のオレフィン系重合体の粒径は使用した乳化剤、有機溶媒、水の量、乳化条件によって調整することができる。エマルジョンの安定性等の点から好ましくは粒子径が20nm〜5000nm、さらに好ましくは50〜2000nmのものが得られる条件を選ぶのが好ましく、とくに好ましくは、100〜1500nmである。
【0082】
得られたポリオレフィン系共重合体は、各種の熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂に配合することにより樹脂組成物を製造するための原料として用いることができる。
【0083】
前記熱可塑性樹脂としては、一般に用いられている樹脂、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、エチレンオクテンゴム、ポリメチルペンテン、エチレン環状オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレングリシジルメタクリレート共重合体、エチレンメチルメタクリレート共重合体などのポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−N−フェニルマレイミド共重合体、α−メチルスチレン−アクリロニトリル共重合体などのビニルポリマー、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリフェニレンエーテル−ポリスチレン複合体、ポリアセタール、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルフォンなどのエンジニアリングプラスチックが好ましく例示される。
【0084】
前記熱硬化性樹脂としては、一般に用いられている樹脂、例えばフェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ホリエステル樹脂、エポキシ樹脂などが好ましく例示される。これら熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのうちポリオレフィンがオレフィン系共重合体の分散性が良好であるという点で好ましく、具体的にはポリエチレン、ポリプロピレンなどがあげられ好ましい。
【0085】
オレフィン共重合体の製造方法は、配位重合触媒によるオレフィンの重合において、高い重合活性を維持できる。
【0086】
本発明の水性分散液とビニルモノマーとを用いて得られたポリオレフィン系共重合体は、熱可塑性樹脂と混合することで樹脂組成物となす事ができる。該樹脂組成物を得る方法としては、通常の熱可塑性樹脂の配合に用いられる方法を用いることができ、たとえば、熱可塑性樹脂と本発明のオレフィン重合体および所望により添加剤成分とを、加熱混練機、例えば、一軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー、ブラベンダー、ニーダー、高剪断型ミキサー等を用いて溶融混練することで製造することができる。また各成分の混練順序は特に限定されず、使用する装置、作業性あるいは得られる熱可塑性樹脂組成物の物性に応じて決定することができる。
【0087】
また、その熱可塑性樹脂が乳化重合法で製造される場合には、該熱可塑性樹脂とオレフィン系共重合体とを、いずれもエマルジョンの状態でブレンドしたのち、共析出(共凝集)することで得ることも可能である。
かくして得られる樹脂組成物の成形法としては、通常の熱可塑性樹脂組成物の成形に用いられる、たとえば射出成形法、押出成形法、ブロー成形法、カレンダー成形法などの成形法があげられる。
【実施例】
【0088】
以下に、実施例に基づき本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら制限を受けるものではない。
【0089】
[粒子径の測定]
粒子径は、マイクロトラック粒度分布測定装置(日機装社製)にて測定した。なお、本発明の粒子径とは体積平均値のことを言う。
【0090】
(合成例1)配位子の合成
窒素雰囲気下、Helvetica Chimica Acta.1928頁,76巻,1993年を参考にして合成したペンタフルオロベンジルトリフェニルホスホニウムブロミド2.61g、乾燥THF(和光純薬(株)製)11mlを仕込み、氷浴を用いて0℃に冷却した。モレキュラーシーブで乾燥したトリエチルアミン(和光純薬(株)製)1.5mlを加え、15分攪拌した。さらにトリフルオロ酢酸無水物(東京化成製)0.78mlを滴下し、0℃で1時間、室温(15℃)で1時間反応させた。
【0091】
濾液を濃縮し、蒸留水(和光純薬(株)製)15mlで洗浄、乾燥した。得られた生成物を60℃のメタノールに溶解させ0℃まで徐々に冷却し、再結晶を行った。乾燥後の収量は、1.5gであった。1H−NMR(CDCl3)により、ベンジルプロトンが消失していることから、下記化学式で示される化合物が生成していることを確認した。
【0092】
【化18】

【0093】
(式中、Phはフェニル基を示す)。
【0094】
(実施例1)
オレフィン系重合用触媒の調整とエチレンの重合
アルゴン雰囲気下、合成例1で得られた化合物13.8mg(26μmol)、ビス(シクロオクタジエン)ニッケル(関東化学(株)製)28.9mg(104μmol)を脱水トルエン(和光純薬(株)製)0.6mlにそれぞれ溶かし15分間攪拌した。その後それぞれのトルエン溶液を混合し、さらに脱水1−ヘキセン(和光純薬(株)製)0.4mlを加えた。この触媒溶液を、ドデシル硫酸ナトリウム(和光純薬(株)製)50mg、純水1.8mgと共に超音波ホモジナイザー(SMT company社製、超音波分散機 UH−600)によって乳化した。なお、乳化の際の超音波作用時間は15秒間程度である。
【0095】
アルゴン置換した1Lオートクレーブ(TAIATSU TECHNO社製、TAS−1型オートクレーブ、材質SUS 316)に、ドデシル硫酸ナトリウム2g、純水500ml、トルエン50ml、ヘキサデカン(和光純薬(株)製)5.2g、1,9−デカジエン(東京化成(株)製)5.2gの混合物を脱気し超音波ホモジナイザー(SMT company社製、超音波分散機 UH−600)で約5分間乳化させた溶液を仕込み55℃に加温した。そこに、上記触媒の乳化溶液をシリンジで注入した。その後、エチレンガス(住友精化(株)社製)を導入して、オートクレーブ内を3MPaとし、適宜冷却、加温操作を行い600rpm、70℃で1時間反応させた。
【0096】
ここで使用したエチレンガスは、脱水カラム(日化精工(株)製、ドライ
カラム HDF 300−A3)と脱酸素カラム(日化精工(株)製、GASCLEAN GC−HDF 300−M)を通して精製を行った。反応後、未反応のエチレンガスを除去し、粒子径0.7μm(マイクロトラック粒度分布測定装置(日機装製社製)により測定)のポリエチレンの水性分散液を得た。固形分濃度(Sc)は12%であった。また、この反応では、TON=90000[mol Ethylene/mol cat.]であった。
【0097】
(実施例2)オレフィン系重合用触媒の調整とエチレンの重合
アルゴン雰囲気下、合成例1で得られた化合物14.0mg(26μmol)、ビス(シクロオクタジエン)ニッケル(関東化学(株)製)27.5mg(105μmol)を脱水トルエン(和光純薬(株)製)0.6mlにそれぞれ溶かし15分間攪拌した。その後それぞれのトルエン溶液を混合し、さらに脱水1−ヘキセン(和光純薬(株)製)0.4mlを加えた。この触媒溶液を、ドデシル硫酸ナトリウム(和光純薬(株)製)50mg、純水1.8mgと共に超音波ホモジナイザー(SMT company社製、超音波分散機 UH−600)によって乳化した。なお、乳化の際の超音波作用時間は15秒間程度である。
【0098】
アルゴン置換した1Lオートクレーブ(TAIATSU TECHNO社製、TAS−1型オートクレーブ、材質SUS 316)に、ドデシル硫酸ナトリウム2g、純水500ml、トルエン50ml、ヘキサデカン(和光純薬(株)製)5.1g、1,9−デカジエン(東京化成(株)製)5.2gの混合物を脱気し超音波ホモジナイザー(SMT company社製、超音波分散機 UH−600)で約5分間乳化させた溶液を仕込み49.5℃に加温した。そこに、上記触媒の乳化溶液をシリンジで注入した。その後、エチレンガス(住友精化(株)社製)を導入して、オートクレーブ内を3MPaとし、適宜冷却、加温操作を行い600rpm、50℃で2時間反応させた。
【0099】
ここで使用したエチレンガスは、脱水カラム(日化精工(株)製、ドライカラム HDF 300−A3)と脱酸素カラム(日化精工(株)製、GASCLEAN GC−HDF 300−M)を通して精製を行った。反応後、未反応のエチレンガスを除去し、ポリエチレンの分散液(スラリー)を得た。なお、得られたポリエチレンスラリーの固形分濃度(Sc)は22%であった。また、この反応では、TON=204000[mol Ethylene/mol cat.]であった。
【0100】
(比較例1)オレフィン系重合用触媒の調整とエチレンの重合
アルゴン雰囲気下、合成例1で得られた化合物27.5mg(51μmol)、ビス(シクロオクタジエン)ニッケル(関東化学(株)製)62.2mg(226μmol)を脱水トルエン(和光純薬(株)製)5.0mlにそれぞれ溶かし15分間攪拌した。その後それぞれのトルエン溶液を混合し、さらに脱水1−ヘキセン(和光純薬(株)製)3.0mlを加えた。この触媒溶液を、ドデシル硫酸ナトリウム(和光純薬(株)製)500mg、純水15gと共に超音波ホモジナイザー(SMT company社製、超音波分散機 UH−600)によって乳化した。なお、乳化の際の超音波作用時間は15秒間程度である。
【0101】
アルゴン置換した1Lオートクレーブ(TAIATSU TECHNO社製、TAS−1型オートクレーブ、材質SUS 316)に、ドデシル硫酸ナトリウム2g、純水500ml、トルエン50mlの混合物を脱気し超音波ホモジナイザー(SMT company社製、超音波分散機 UH−600)で約2分間乳化させた溶液を仕込み70℃に加温した。そこに、上記触媒の乳化溶液をシリンジで注入した。その後、エチレンガス(住友精化(株)社製)を導入して、オートクレーブ内を3MPaとし、750rpmで2時間反応させた。エチレン投入直後適宜冷却、加温操作を行ったが、オートクレーブ内の温度は105℃まで上昇した時があった。
【0102】
ここで使用したエチレンガスは、脱水カラム(日化精工(株)製、ドライカラム HDF 300−A3)と脱酸素カラム(日化精工(株)製、GASCLEAN GC−HDF 300−M)を通して精製を行った。反応後、未反応のエチレンガスを除去し、ポリエチレンの分散液(エマルジョン)を得た。なお、得られたポリエチレン分散液(エマルジョン)の固形分濃度(Sc)は6.8%であった。また、この反応では、TON=28000[mol Ethylene/mol cat.]であった。
【0103】
本発明の製造方法では、重合を35〜90℃で行う(コントロールする)ことで、またジエンモノマーを添加することで得られる分散液のSCが向上することがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配位重合触媒を用いオレフィンモノマーを35〜90℃で重合を行うことを特徴とするオレフィン系重合体の水性分散液の製造方法。
【請求項2】
配位重合触媒、オレフィンモノマー、ジエン系モノマーを用いた請求項1記載のオレフィン系重合体の水性分散液の製造方法。
【請求項3】
配位重合触媒が、一般式(1)〜(5)で示されるいずれか1種の後周期遷移金属錯体系の配位重合触媒である事を特徴とする請求項1または2に記載のオレフィン系共重合体分散液の製造方法。
【化1】

(式中、Mはパラジウムまたはニッケルである。R1、R4は各々独立して、炭素数1〜4の炭化水素基である。R2、R3は各々独立して水素原子、またはメチル基である。R5はハロゲン原子、水素原子、または炭素数1〜20の有機基である。XはMに配位可能なヘテロ原子を持つ有機基であり、R5につながっていてもよい、またはXは存在しなくてもよい。L-は任意のアニオンである。)
【化2】

(式中、Mはパラジウムまたはニッケルである。R1、R4は各々独立して、炭素数1〜4の炭化水素基である。R5はハロゲン原子、水素原子、または炭素数1〜20の有機基である。XはMに配位可能なヘテロ原子を持つ有機基であり、R5につながっていてもよい、またはXは存在しなくてもよい。L-は任意のアニオンである。)
【化3】

(式中、Mはニッケル、パラジウムまたは白金である。Eは酸素または硫黄である。Xはリン、砒素またはアンチモンである。R6、R7、R8は各々独立して、水素または炭素数1〜20の炭化水素基である。Rf1はフッ素原子または炭素数1〜20のフッ素化炭化水素基である。Rは水素、炭素数1〜20の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、水酸基、炭素数1〜20の炭化水素基からなるエーテル基、炭素数1〜20の炭化水素基からなるエステル基、スルホン酸塩または炭素数1〜20の炭化水素基からなるスルホン酸エステル基である。)
【化4】

【化5】

(式中、Mはニッケル、パラジウムまたは白金である。Eは酸素または硫黄である。Xはリン、砒素またはアンチモンである。R6、R7、R8は各々独立して、水素または炭素数1〜20の炭化水素基である。Yはハロゲン原子である。mは1〜3である。)
【請求項4】
オレフィン系モノマーが炭素数10以下のα−オレフィンであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のオレフィン系重合体の水性分散液の製造方法。
【請求項5】
ジエン系モノマーがオレフィンモノマー100重量部に対して、0.01〜10重量部であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のオレフィン系重合体の水性分散液の製造方法。

【公開番号】特開2008−247971(P2008−247971A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−87802(P2007−87802)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】