説明

オートテンショナ

【課題】オートテンショナのダンパー作用を解除可能とするとともに、その解除操作を容易にする。
【解決手段】シリンダ7内にスリーブ8を嵌め合わせ、スリーブ8内にプランジャ10を摺動可能に挿入してシリンダ7内を圧力室11とリザーバ室12に区画し、プランジャ10と一体に移動するロッド16を設け、そのロッド16をシリンダ7から突出する方向に付勢するリターンスプリング19を設けたオートテンショナ5において、スリーブ8の底9に貫通孔23を形成し、その貫通孔23とリザーバ室12とを連通するバイパス通路24を形成し、貫通孔23から延びる径方向溝25,26をスリーブ8の内底面に設け、スリーブ8の内底面に重ね合わせて設けた弁体27で貫通孔23と径方向溝25,26とを覆い、その弁体27に貫通孔28を形成し、その貫通孔28と径方向溝25,26とが連通する位置と連通しない位置との間で弁体27を回転操作する回転軸30を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エンジンのカム軸を駆動するベルトの張力保持に用いられるオートテンショナに関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンのカム軸は、クランクシャフトにベルトで連結されており、そのベルトを介して回転駆動される。このベルトの張力を適正範囲に保つために、一般に、支点軸を中心として揺動可能に設けたプーリアームと、そのプーリアームに回転可能に取り付けたテンションプーリと、そのテンションプーリをベルトに押さえ付ける方向にプーリアームを付勢するオートテンショナからなる張力調整装置が使用される。
【0003】
この張力調整装置に組み込まれるオートテンショナとして、有底のシリンダ内に作動油を溜め、そのシリンダ内に有底のスリーブを嵌め合わせ、そのスリーブ内にプランジャを軸方向に摺動可能に挿入してシリンダ内を圧力室とリザーバ室に区画し、プランジャと軸方向に一体に移動するロッドを設け、そのロッドを、シリンダから突出する方向にリターンスプリングで付勢したものが知られている(特許文献1)。
【0004】
このオートテンショナは、リターンスプリングの付勢力がベルトの張力とつり合う位置までロッドが移動することにより、ベルトの張力変動を吸収し、ベルトの張力を適正範囲に保つ。
【0005】
また、圧力室とリザーバ室は、スリーブとプランジャの摺動面間に形成されるリーク隙間を介して連通しており、ロッドがシリンダに押し込まれる方向に移動すると、圧力室内の作動油がリーク隙間を通って流出する。このとき、リーク隙間を流れる作動油の流量が制限されてダンパー作用が生じるので、ロッドがゆっくりと移動し、ベルトを安定した状態に保つ。
【0006】
また、このオートテンショナは、プランジャに、圧力室とリザーバ室を連通する油通路が形成され、その油通路の圧力室側の端部に、リザーバ室側から圧力室側への作動油の流れのみを許容するチェックバルブが設けられており、ロッドがシリンダから突出する方向に移動すると、前記チェックバルブが開いてリザーバ室側から圧力室側に作動油が流れる。そのため、シリンダから突出する方向には、ロッドが速やかに移動する。
【特許文献1】特開平8−35546号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記の張力調整装置のベルトを交換する場合、ベルトを弛めるためにプーリアームを揺動させる必要があるが、このとき、オートテンショナは、ロッドがシリンダに押し込まれる方向に移動してダンパー作用を生じる。そのため、プーリアームの揺動抵抗が大きくなり、ベルトの交換作業が煩雑であった。
【0008】
そこで、この発明の発明者は、ダンパー作用を解除することが可能なオートテンショナを検討し、そのようなオートテンショナとして、前記スリーブの底に貫通孔を形成し、その貫通孔と前記リザーバ室とを連通するバイパス通路を前記スリーブと前記シリンダの嵌合面間に形成し、前記スリーブの内底面に重ね合わせて設けた弁体で前記貫通孔を覆い、その弁体からシリンダの底を貫通して延びる弁棒を設けたものを考案した。
【0009】
このオートテンショナは、弁棒を軸方向に押し動かすことにより、弁体をスリーブの底から離反させてスリーブの底の貫通孔を開放し、ダンパー作用を解除することができる。
【0010】
しかし、圧力室の圧力が弁体に作用した状態では、弁棒を軸方向に押し動かすのに必要な力が大きく、ダンパー作用の解除操作が煩雑であった。
【0011】
この発明が解決しようとする課題は、オートテンショナのダンパー作用を解除可能とするとともに、その解除操作を容易にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、前記スリーブの底に貫通孔を形成し、その貫通孔と前記リザーバ室とを連通するバイパス通路を前記スリーブと前記シリンダの嵌合面間に形成し、前記貫通孔から延びる径方向溝を前記スリーブの内底面に設け、前記スリーブの内底面に重ね合わせて設けた弁体で前記貫通孔と径方向溝とを覆い、その弁体に、一端が前記圧力室に開放し、他端が前記スリーブの内底面に対する接触面に開放した弁路を形成し、その弁路と前記径方向溝とが連通する位置と連通しない位置との間で前記弁体を回転操作する操作部を設けた。
【0013】
このオートテンショナは、前記径方向溝を、周方向に間隔をおいて複数形成し、その径方向溝の深さを互いに異ならせることができる。前記弁路としては、弁体に形成した軸方向の貫通孔を採用することができ、また、前記スリーブの内底面に対する前記弁体の接触面に形成した溝を採用することもできる。前記弁路として、弁体に形成した軸方向の貫通孔を採用する場合、貫通孔の孔径は0.5mm以下とすることができる。
【0014】
また、前記操作部は、前記弁体から前記シリンダの底を貫通して延びる回転軸と、その回転軸の先端に固定されたギアと、そのギアと噛み合うギアをモータ軸に固定したモータとからなる構成を採用することができ、そのモータとしてステッピングモータを用いることができる。さらに、前記弁体の回転角度を規制するストッパを設けることができ、そのストッパは、例えば、前記シリンダの底から突出して設けたストッパピンを採用し、そのストッパピンで前記ギアの回転を係止するようにすることができる。
【0015】
また、上記のオートテンショナは、前記スリーブの内底面と、その内底面に対する前記弁体の接触面のうちの少なくとも一方にフッ素樹脂コーティングを施すことができ、また、前記スリーブの内底面と、その内底面に対する前記弁体の接触面のうちの少なくとも一方に硬質皮膜処理を施すこともできる。
【発明の効果】
【0016】
この発明のオートテンショナは、弁体を回転操作することにより、弁体の弁路をスリーブの径方向溝に連通させて、ダンパー作用を解除することができる。そのため、張力調整装置のベルトを交換する際に、プーリアームを速やかに揺動させることができ、ベルトの交換作業が容易である。
【0017】
また、弁体に作用する圧力室の圧力の方向と、弁体を回転操作するときの弁体の移動方向とが直角なので、弁体を操作するのに必要な力が小さく、ダンパー作用の解除操作が容易である。
【0018】
さらに、前記径方向溝を、周方向に間隔をおいて複数形成し、その径方向溝の深さを互いに異ならせたものは、ベルト交換時のベルトの張力が小さいときは、深い径方向溝を弁路と連通させて、プーリアームをより迅速に揺動させることができると同時に、ベルト交換時のベルトの張力が大きいときは、浅い径方向溝を弁路と連通させることにより、圧力室内の作動油に溶けていた空気が気泡となって現れるのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1に、エンジンのカム軸を駆動するベルトの張力調整装置を示す。この張力調整装置は、ベルト1に接触するテンションプーリ2と、テンションプーリ2を回転可能に支持するプーリアーム3とを有する。プーリアーム3は、エンジンブロック(図示せず)に固定された支点軸4で揺動可能に支持され、この発明の実施形態に係るオートテンショナ5で、テンションプーリ2をベルト1に押さえ付ける方向に付勢されている。
【0020】
オートテンショナ5は、下部に底6を有するシリンダ7を有し、シリンダ7内には、有底のスリーブ8が底9を下側にして嵌め合わされ、作動油が溜められている。スリーブ8内には、プランジャ10が軸方向に摺動可能に挿入されており、そのスリーブ8とプランジャ10によって、シリンダ7内が圧力室11とリザーバ室12に区画されている。
【0021】
圧力室11とリザーバ室12は、プランジャ10に形成された油通路13を介して連通しており、その油通路13の圧力室11側の端部には、リザーバ室12側から圧力室11側への作動油の流れのみを許容するチェックバルブ14が設けられている。また、スリーブ8とプランジャ10の摺動面間には、圧力室11とリザーバ室12を連通させるリーク隙間15が形成されている。
【0022】
プランジャ10には、プランジャ10から上方に延びてシリンダ7から突出するロッド16が接続されている。プランジャ10は、圧力室11内に組み込まれたプランジャスプリング17で付勢されてロッド16に押さえ付けられており、その押さえ付けによって、ロッド16は、プランジャ10と一体に軸方向に移動するようになっている。
【0023】
ロッド16は、大径軸部16Aと、大径軸部16Aの下端に連なる小径軸部16Bとからなる。小径軸部16Bの外周には、シリンダ7の内周を軸方向に摺動可能なウエアリング18が嵌め込まれ、そのウエアリング18で大径軸部16Aの下端が支持されている。
【0024】
ウエアリング18の下面とスリーブ8の上面の間にはリターンスプリング19が組み込まれている。リターンスプリング19は、ウエアリング18を介して、ロッド16をシリンダ7から突出する方向に付勢している。リターンスプリング19の下端とスリーブ8の上面の間には、リザーバ室12を上下に分けるセパレータ20が設けられており、このセパレータ20でリザーバ室12の上部から下部に空気が移動するのを抑制して、圧力室11内への空気の侵入を防止している。
【0025】
シリンダ7の上部内周には、ロッド16の大径軸部16Aをスライド自在に貫通させるとともにシリンダ7内に作動油を密封するオイルシール21と、オイルシール21をシリンダ7から抜け止めする止め輪22が取り付けられている。
【0026】
スリーブ8とシリンダ7の嵌合面間には、スリーブ8の上端から、図2に示すように、スリーブ8の底9に形成された貫通孔23の位置に至るバイパス通路24が形成されており、そのバイパス通路24を介して、貫通孔23とリザーバ室12とが連通している。バイパス通路24は、図3に示すように、周方向に間隔をおいて複数形成されている。
【0027】
スリーブ8の内底面には、貫通孔23から延びる径方向溝25,26が、周方向に間隔をおいて形成されている。径方向溝25と径方向溝26は、図2に示すように、溝深さが互いに異なる。また、スリーブ8の内底面には、弁体27が重ね合わせて設けられており、その弁体27で貫通孔23と径方向溝25,26とが覆われている。
【0028】
弁体27には、軸方向の貫通孔28が形成されており、その貫通孔28の上端が圧力室11に開放し、下端が、弁体27のスリーブ8の内底面に対する接触面に開放している。貫通孔28は、孔径が0.5mm以下となるように形成されている。また、弁体27は、プランジャスプリング17でスリーブ8の底9に押さえ付けられている。
【0029】
弁体27には、シリンダ7の底6に形成された貫通孔29を貫通して延びる回転軸30が接続されており、その回転軸30で弁体27を回転操作して、貫通孔28と径方向溝25とが連通する位置と連通しない位置との間で弁体27を移動可能となっている。同様に、弁体27は、貫通孔28と径方向溝26とが連通する位置と連通しない位置との間でも回転操作可能となっている。回転軸30と貫通孔29の間には、シリンダ7からの作動油の漏れを防止するためにOリング31が組み込まれている。
【0030】
次に、このオートテンショナ5の動作例を説明する。
【0031】
ベルト1の張力が大きくなると、その張力が、テンションプーリ2、プーリアーム3を介してロッド16に伝達し、圧力室11の圧力が高まる。圧力室11の圧力がリザーバ室12の圧力よりも高くなると、作動油がリーク隙間15を圧力室11側からリザーバ室12側に流れる。このとき、チェックバルブ14が閉じるので、作動油は油通路13を流れない。このようにして、作動油がリーク隙間15を流れることによりロッド16が下方に移動し、ベルト1の張力とリターンスプリング19の付勢力とがつり合う位置までテンションプーリ2が移動して、ベルト1の緊張を吸収する。また、リーク隙間15を流れる作動油の流量が制限されてダンパー作用が生じるので、テンションプーリ2はゆっくりと移動し、ベルト1を安定した状態に保つ。
【0032】
一方、ベルト1の張力が小さくなると、リターンスプリング19の付勢力によってロッド16が上方に移動し、圧力室11の容積が拡大することで、圧力室11の圧力が低くなる。圧力室11の圧力がリザーバ室12の圧力よりも低くなるとチェックバルブ14が開き、作動油が油通路13をリザーバ室12側から圧力室11側に流れる。このとき、テンションプーリ2は、ベルト1の張力とリターンスプリング19の付勢力とがつり合う位置まで速やかに移動し、ベルト1の弛みを迅速に吸収する。
【0033】
また、ベルト1を交換する場合、ベルト1を弛めるために、テンションプーリ2をベルト1から離反させる方向にプーリアーム3を揺動させる必要があるが、このとき、図4、図5に示すように、回転軸30で弁体27を回転操作して、弁体27の貫通孔28とスリーブ8の内底面の径方向溝25とを連通させる。このようにすると、圧力室11が、貫通孔28、径方向溝25、貫通孔23、バイパス通路24を順に介してリザーバ室12と連通し、圧力室11の作動油が、バイパス通路24を通ってリザーバ室12に流れるので、ロッド16を速やかにシリンダ7に押し込むことが可能となり、プーリアーム3を速やかに揺動させることができる。
【0034】
ところで、エンジン停止時に、カム軸(図示せず)の停止位置によって、ベルト1の張力が大きくなることがあるが、その状態からベルト1を交換する場合は、図6、図7に示すように、図4、図5とは反対方向に弁体27を回転操作して、弁体27の貫通孔28を浅い方の径方向溝26に連通させ、ダンパー作用を解除する。このようにすると、弁体27の貫通孔28を深い方の径方向溝25に連通させた場合と比較して、圧力室11の圧力が緩やかに変化するので、圧力室11内の作動油に溶けていた空気が気泡となって現れるのを確実に防止することができる。
【0035】
このオートテンショナ5は、弁体27を回転操作することにより、ダンパー作用を解除することができる。そのため、張力調整装置のベルト1を交換する際に、プーリアーム3を速やかに揺動させることができ、ベルト1の交換作業が容易である。
【0036】
また、このオートテンショナ5は、弁体27に作用する圧力室11の圧力の方向(回転軸30の軸方向)と、弁体27を回転操作するときの弁体27の移動方向(回転軸30の回転方向)とが直角なので、弁体27を操作するのに必要な力が小さく、ダンパー作用の解除操作が容易である。
【0037】
また、このオートテンショナ5は、弁体27の貫通孔28の孔径を0.5mm以下としているので、弁体27の貫通孔28とスリーブ8の径方向溝25とを連通させたときに、圧力室11の圧力が緩やかに変化し、圧力室11内の作動油に溶けていた空気が気泡となって現れるのを防止することができる。
【0038】
スリーブ8の内底面と、その内底面に対する弁体27の接触面のうちの少なくとも一方にフッ素樹脂(PTFE等)のコーティングを施すと好ましい。このようにすると、スリーブ8の内底面に対する弁体27の摩擦抵抗が小さくなるので、弁体27を回転操作するのに必要な力をより小さくすることができる。
【0039】
また、スリーブ8の内底面と、その内底面に対する弁体27の接触面のうちの少なくとも一方に硬質皮膜(DLC等)のコーティングを施してもよい。このようにすると、スリーブ8の内底面と弁体27の接触による摩耗を抑えることができる。
【0040】
弁体27の回転操作は、手動で行なってもよいが、図8、図9に示すように、シリンダ7と平行にモータ32を配置し、そのモータ32のモータ軸33に固定したギア34と、回転軸30の先端に固定したギア35とを噛み合わせ、モータ軸33の回転を回転軸30に伝達するようにしてもよい。このようにすると、より簡単に弁体27を回転操作することが可能となる。
【0041】
この場合、モータ32としてステッピングモータを用いると、ギア35の回転角度をより正確に制御することができる。また、図10に示すように、ストッパピン36をシリンダ7の底6から突出して設け、そのストッパピン36でギア35に形成された径方向延出部37を係止することにより、弁体27の回転角度を規制するようにしてもよい。
【0042】
上記実施形態では、弁体27に形成する弁路として、弁体27に形成した貫通孔28を採用しているが、図11、図12に示すように、弁体27のスリーブ8の内底面に対する接触面に溝38を形成し、その溝38の一端を弁体27の外周に至らせて圧力室11に開放し、溝38の他端がスリーブ8の内底面に対する接触面に開放するようにしてもよい。このようにしても、弁体27を回転操作することにより、弁体27の溝38を径方向溝25に連通させて、ダンパー作用を解除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】この発明の実施形態のオートテンショナを組み込んだ張力調整装置を示す断面図
【図2】図1に示すオートテンショナの下部を示す拡大断面図
【図3】図2のIII−III線に沿った断面図
【図4】図2に示す弁体を回転操作した状態を示す断面図
【図5】図4に示すオートテンショナの軸に直角な面に沿った断面図
【図6】図2に示す弁体を、図4とは反対の方向に回転操作した状態を示す断面図
【図7】図6に示すオートテンショナの軸に直角な面に沿った断面図
【図8】図2に示すオートテンショナの変形例を示す断面図
【図9】図8に示すオートテンショナを下方から見た図
【図10】図9に示すオートテンショナの他の変形例を示す図
【図11】図2に示すオートテンショナの更に変形例を示す断面図
【図12】図11のXII−XII線に沿った断面図
【符号の説明】
【0044】
5 オートテンショナ
7 シリンダ
8 スリーブ
9 底
10 プランジャ
11 圧力室
12 リザーバ室
13 油通路
14 チェックバルブ
15 リーク隙間
16 ロッド
19 リターンスプリング
23 貫通孔
24 バイパス通路
25,26 径方向溝
27 弁体
28 貫通孔
30 回転軸
32 モータ
33 モータ軸
34,35 ギア
36 ストッパピン
38 溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底のシリンダ(7)内に有底のスリーブ(8)を嵌め合わせ、そのシリンダ(7)内に作動油を溜め、前記スリーブ(8)内にプランジャ(10)を軸方向に摺動可能に挿入してシリンダ(7)内を圧力室(11)とリザーバ室(12)に区画し、前記プランジャ(10)とスリーブ(8)の摺動面間に形成されるリーク隙間(15)を介して前記圧力室(11)とリザーバ室(12)を連通し、前記プランジャ(10)と軸方向に一体に移動するロッド(16)を設け、そのロッド(16)をシリンダ(7)から突出する方向に付勢するリターンスプリング(19)を設け、前記プランジャ(10)に圧力室(11)とリザーバ室(12)を連通する油通路(13)を形成し、その油通路(13)にリザーバ室(12)側から圧力室(11)側への作動油の流れのみを許容するチェックバルブ(14)を設けたオートテンショナ(5)において、前記スリーブ(8)の底(9)に貫通孔(23)を形成し、その貫通孔(23)と前記リザーバ室(12)とを連通するバイパス通路(24)を前記スリーブ(8)と前記シリンダ(7)の嵌合面間に形成し、前記貫通孔(23)から延びる径方向溝(25,26)を前記スリーブ(8)の内底面に設け、前記スリーブ(8)の内底面に重ね合わせて設けた弁体(27)で前記貫通孔(23)と径方向溝(25,26)とを覆い、その弁体(27)に、一端が前記圧力室(11)に開放し、他端が前記スリーブ(8)の内底面に対する接触面に開放した弁路(28)を形成し、その弁路(28)と前記径方向溝(25,26)とが連通する位置と連通しない位置との間で前記弁体(27)を回転操作する操作部(30)を設けたことを特徴とするオートテンショナ。
【請求項2】
前記径方向溝(25,26)を、周方向に間隔をおいて複数形成し、その径方向溝(25,26)の深さを互いに異ならせた請求項1に記載のオートテンショナ。
【請求項3】
前記弁路が、前記弁体(27)に形成した軸方向の貫通孔(28)である請求項1または2に記載のオートテンショナ。
【請求項4】
前記貫通孔(28)の孔径を0.5mm以下とした請求項3に記載のオートテンショナ。
【請求項5】
前記弁路が、前記スリーブ(8)の内底面に対する前記弁体(27)の接触面に形成した溝(38)である請求項1または2に記載のオートテンショナ。
【請求項6】
前記操作部が、前記弁体(27)から前記シリンダ(7)の底(6)を貫通して延びる回転軸(30)と、その回転軸(30)の先端に固定されたギア(35)と、そのギア(35)と噛み合うギア(34)をモータ軸(33)に固定したモータ(32)とからなる請求項1から5のいずれかに記載のオートテンショナ。
【請求項7】
前記モータ(32)として、ステッピングモータを用いた請求項6に記載のオートテンショナ。
【請求項8】
前記弁体(27)の回転角度を規制するストッパ(36)を設けた請求項6または7に記載のオートテンショナ。
【請求項9】
前記ストッパが、前記シリンダ(7)の底(6)から突出して設けたストッパピン(36)であり、そのストッパピン(36)で前記ギア(35)の回転を係止するようにした請求項8に記載のオートテンショナ。
【請求項10】
前記スリーブ(8)の内底面と、その内底面に対する前記弁体(27)の接触面のうちの少なくとも一方にフッ素樹脂コーティングを施した請求項1から9のいずれかに記載のオートテンショナ。
【請求項11】
前記スリーブ(8)の内底面と、その内底面に対する前記弁体(27)の接触面のうちの少なくとも一方に硬質皮膜処理を施した請求項1から9のいずれかに記載のオートテンショナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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