説明

オートフォーカスシステム

【課題】AF枠自動追尾を開始する際の煩雑な操作を不要にし、簡単な操作で人物の顔を追尾対象として設定することができ、カメラマンの負担を軽減する。
【解決手段】カメラの撮影画面内においてピントを合わせるフォーカス操作手段と、前記フォーカス操作手段によるピント合わせの結果を示す前記撮影画面からベストピント状態の範囲を検出するベストピント範囲検出手段と、前記撮影画面から人物の顔の範囲を検出する顔検出手段と、前記撮影画面のベストピント状態の範囲に人物の顔が存在する場合には、前記撮影画面のうちオートフォーカスによりピントを合わせる対象範囲であるAFエリアの範囲を示すAF枠の位置を前記人物の顔の範囲を示す顔枠に自動で設定するAF枠自動設定手段と、前記AF枠自動設定手段で設定されたAF枠内の被写体を自動追尾するAF枠自動追尾手段と、を備えたオートフォーカスシステムを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オートフォーカスシステムに係り、特に、オートフォーカス(AF)によりピントを合わせる被写体の範囲を示すAF枠(AFエリア)を所定の被写体に自動追尾させる機能を備えたオートフォーカスシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カメラのフォーカスを自動的に合わせるオートフォーカス(AF)システムにおいては、どこにフォーカスを合わせるかをカメラに対して指示しなければならない。このとき、一般のカメラなどでは、フォーカスを合わせる位置は撮影範囲のセンターに固定されていて、例えば撮影範囲の中央にいる人物等にフォーカスが合うようになっている。
【0003】
しかし、動いている被写体を撮影する場合などにおいては、このようにフォーカスを合わせる位置が固定されていては都合が悪い。そこで、例えば、テレビカメラなどで、スポーツのように被写体の動きの激しいシーンを撮影する場合において、被写体にピントを合わせる目的でAFエリア(AF枠)を被写体に自動追尾させるオートフォーカスシステムが知られている(例えば、特許文献1参照)。尚、本明細書では、AFエリアの範囲の輪郭を示すAF枠をAFエリアと同様にピントを合わせる被写体の範囲を意味する用語として主に使用するものとする。
【0004】
また、撮像された画像中から人物の顔を表す画像を検出し、その被写体となった顔に対して自動的にピントを合わせたり、あるいは上記検出された画像中の顔を表す領域が拡大されるように自動的にズーム倍率を変更させるデジタルカメラが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−267221号公報
【特許文献2】特開2004−320286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、AF枠自動追尾機能を備えたオートフォーカスシステムでは、AF枠の自動追尾を開始する場合、操作者は、ピントを合わせる被写体、即ち、追尾対象の被写体を指定する必要がある。そのため、操作者は、撮影範囲(画面)内でのAF枠の位置をジョイスティックやタッチパネル等の操作装置で移動させ、AF枠の位置を追尾対象としたい被写体の位置に合わせるという操作を行う必要がある。そして、追尾開始スイッチのオン操作などによって、現在のAF枠の範囲内の被写体を追尾対象の被写体として設定(確定)すると共に、AF枠自動追尾の開始を指示するための操作を行っている。
【0007】
しかしながら、上記のようにAF枠の位置を追尾対象の被写体の位置に設定する手動操作は、手間や時間を要するという問題がある。また、取材などで使用される肩担ぎタイプのテレビカメラ(ハンディカメラ)では、AF枠を操作するための操作装置を操作者(カメラマン)が操作し易い場所に設置することも難しいという問題もある。
【0008】
また、操作者は常にビューファインダを見てカメラワークを行っているので、なるべく簡単な操作でAF枠を自動追尾できるようにすることも要望されている。
【0009】
特に、歌謡番組やスポーツ中継などのように人物優先で撮影が行われる状況において、撮影範囲内に複数の人物の顔が含まれる場合には、操作者が複数の人物の顔の中から追尾対象の被写体とする顔を探して選択する操作を行わなければならず、操作者への負担が大きいといった問題がある。
【0010】
一方、上述のようにAF枠の手動操作は面倒であることから自動的に設定できるようにすると便利であるが、カメラマンの意図するところにAF枠を自動で設定することは容易でないといった問題もある。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、AF枠自動追尾を開始する際の煩雑な操作を不要にし、簡単な操作で人物の顔を追尾対象として設定することができ、カメラマンの負担を軽減したオートフォーカスシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、請求項1に記載のオートフォーカスシステムは、カメラの撮影画面内においてピントを合わせるフォーカス操作手段と、前記フォーカス操作手段によるピント合わせの結果を示す前記撮影画面からベストピント状態の範囲を検出するベストピント範囲検出手段と、前記撮影画面から人物の顔の範囲を検出する顔検出手段と、前記撮影画面のベストピント状態の範囲に人物の顔が存在する場合には、前記撮影画面のうちオートフォーカスによりピントを合わせる対象範囲であるAFエリアの範囲を示すAF枠の位置を前記人物の顔の範囲を示す顔枠に自動で設定するAF枠自動設定手段と、前記AF枠自動設定手段で設定されたAF枠内の被写体を自動追尾するAF枠自動追尾手段と、を備えたことを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、カメラマンはフォーカス操作手段を操作するだけで、追尾対象としたい人物の顔の範囲にAF枠を自動的に設定することができ、追尾対象とされた被写体(即ち、人物の顔)の移動に追従してAF枠を自動追尾させることが可能となる。これにより、AF枠自動追尾を開始する際の煩雑な操作が不要となり、カメラマンの負担を軽減することができる。
【0014】
請求項2に記載のオートフォーカスシステムは、請求項1に記載のオートフォーカスシステムにおいて、前記撮影画面のベストピント状態の範囲に複数の人物の顔が存在する場合には、前記複数の人物の顔の中から所定の優先順位に従って選択される1つの顔の範囲を示す顔枠に前記AF枠の位置を自動で設定することを特徴とする。
【0015】
複数の人物の顔の中から1つの顔を選択する優先順位としては、前ピン優先(又は後ピン優先)、画面右優先(又は左優先)、輝度の高い方優先(又は低い方優先)など様々な態様がある。
【0016】
請求項3に記載のオートフォーカスシステムは、請求項1又は2に記載のオートフォーカスシステムにおいて、前記撮影画面のベストピント状態の範囲に人物の顔が存在しない場合には、当該ベストピント状態の範囲に含まれる物体に対して前記AF枠の位置を自動で設定することを特徴とする。
【0017】
請求項4に記載のオートフォーカスシステムは、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のオートフォーカスシステムにおいて、前記ベストピント範囲検出手段は、前記撮影画面を複数の領域に分割し、各領域のピント状態を取得することにより前記ベストピント状態の範囲を検出することを特徴とする。
【0018】
請求項5に記載のオートフォーカスシステムは、請求項4に記載のオートフォーカスシステムにおいて、前記各領域のピント状態は、ベストピント状態、前ピン、又は後ピンを含むことを特徴とする。
【0019】
請求項6に記載のオートフォーカスシステムは、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のオートフォーカスシステムにおいて、前記ベストピント範囲検出手段は、撮影レンズに入射した被写体光からピント状態検出用に分離された被写体光を撮像素子で撮影して得られた映像信号に基づいて得られた被写体像の焦点評価値に基づいて前記ピント状態を取得することを特徴とする。
【0020】
請求項7に記載のオートフォーカスシステムは、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のオートフォーカスシステムにおいて、前記AF枠自動設定手段が前記AF枠の位置を自動で設定した後、再度前記フォーカス操作手段が操作された場合には、前記ベストピント範囲検出手段は、前記フォーカス操作手段によるピント合わせの結果を示す前記撮影画面内からベストピント状態の範囲を再度検出し、前記AF枠自動設定手段は、前記再度検出されたベストピント状態の範囲に基づいて前記AF枠の位置を再設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、カメラマンはフォーカス操作手段を操作するだけで、追尾対象としたい人物の顔の範囲にAF枠を自動的に設定することができ、追尾対象とされた被写体(即ち、人物の顔)の移動に追従してAF枠を自動追尾させることが可能となる。これにより、AF枠自動追尾を開始する際の煩雑な操作が不要となり、カメラマンの負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係るオートフォーカスシステムが適用されるテレビカメラシステムにおける光学系を示した構成図
【図2】AF用撮像素子の光路長差を説明するための図
【図3】レンズ装置の制御系の主要構成を示したブロック図
【図4】フォーカス位置と焦点評価値との関係の一例を示した図
【図5】撮影画面の一例を示した図
【図6】撮影画面に複数の人物が含まれる場合の一例を示した図
【図7】AF枠の自動設定モード時におけるレンズCPUの処理の流れを示すフローチャート
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して、本発明に係るオートフォーカスシステムの好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態に係るオートフォーカスシステムが適用されるテレビカメラシステムにおける光学系を示した構成図である。同図に示すテレビカメラシステム10は、放送用又は業務用のテレビカメラに使用されるシステムであり、カメラ本体12と、カメラ本体12に装着されるレンズ装置14と、を備えて構成される。
【0025】
レンズ装置14には、本線光路の光軸Oに沿って前段側からフォーカスレンズ(群)FL、ズームレンズ(群)ZL、絞りI、前側リレーレンズRA及び後側リレーレンズRBからなるリレーレンズ(リレー光学系)等が順に配置されている。フォーカスレンズFLやズームレンズZLは光軸Oに沿って前後移動可能なレンズ群であり、フォーカスレンズFLが移動するとピント位置(被写体距離)が変化し、ズームレンズZLが移動すると像倍率(焦点距離)が変化するようになっている。絞りIは開閉動作し、絞りの開閉度(開口量)を調整することによって像の明るさ(光量)が変化する。
【0026】
レンズ装置14に入射した被写体光は、これらのレンズ群を通過してカメラ本体12に入射する。カメラ本体12には、レンズ装置14から入射した被写体光を赤(R)、緑(G)、青(B)の3色の波長に分解する色分解光学系16と、色分解された各色の被写体光の像を撮像するR、G、Bごとの映像用撮像素子が配置されている。尚、光学的に等価な光路長の位置に配置されたR、G、Bの映像用撮像素子を同図に示すように1つの映像用撮像素子18で表す。映像用撮像素子18の撮像面に入射した被写体光は、映像用撮像素子18によって光電変換されてカメラ本体12内の所定の信号処理回路によって記録又は再生用の映像信号が生成される。
【0027】
また、カメラ本体12には、ビューファインダ(不図示)が設置されており、そのビューファインダにはカメラ本体12で撮影された撮影映像が表示されるようになっている。また、ビューファインダには、撮影映像以外の各種情報が表示されるようになっており、例えば、現在の設定されているAF枠の範囲(位置、大きさ、形状)を示す画像(枠画像)が撮影映像に重畳されて表示されるようになっている。AF枠はオートフォーカス(AF)によりピントを合わせる被写体の範囲(輪郭)を示す。
【0028】
一方、レンズ装置14のリレー光学系の前側リレーレンズRAと後側リレーレンズRBとの間には、ハーフミラー20が配置されている。このハーフミラー20によって、レンズ装置14の本線光路からAF用光路が分岐される。レンズ装置14に入射した被写体光のうち、ハーフミラー20を透過した被写体光は、本線用の被写体光としてそのまま光軸Oの本線光路を通過してカメラ本体12へと導かれる。ハーフミラー20で反射した被写体光は、AF用の被写体光として本線光路の光軸Oに略直交する光軸O′に沿ったAF用光路へと導かれる。尚、ハーフミラー20に入射した被写体光に対して、例えば約50%の光量の被写体光がハーフミラー20を透過する。但し、ハーフミラー20として、任意の透過率と反射率の特性を有するものを使用することができる。
【0029】
AF用光路には、上記後側リレーレンズRBと同等のAF用リレーレンズRB′と、2つのプリズム22A、22Bから構成されるビームスプリッター(光分割光学系)22と、AF用撮像素子24A、24Bが配置されている。ハーフミラー20で反射してAF用光路へと導かれた被写体光は、AF用リレーレンズRB′を通過した後、ビームスプリッター22に入射する。ビームスプリッター22に入射した被写体光は、第1プリズム22Aと第2プリズム22Bとが接合する部分のハーフミラー面Mで光量が等価な2つの被写体光に分割される。ハーフミラー面Mで反射した被写体光は、一方のAF用撮像素子24Aの撮像面に入射し、ハーフミラー面Mを透過した被写体光は他方のAF用撮像素子24Bの撮像面に入射する。
【0030】
AF用撮像素子24A、24Bは、AF専用に設けられた撮像素子(CCD等の固体撮像素子)であり、AF用被写体光によって撮像面に結像された被写体像を電気信号に変換してAF用の映像信号を出力する。
【0031】
図2は、カメラ本体12の映像用撮像素子18とAF用撮像素子24A、24Bとを同一の光軸上に表した図である。同図に示すように、一方のAF用撮像素子24Aに入射する被写体光の光路長は、他方のAF用撮像素子24Bに入射する被写体光の光路長よりも短く設定され、映像用撮像素子18の撮像面に入射する被写体光の光路長は、その中間の長さとなるように設定されている。すなわち、一対のAF用撮像素子24A、24B(の撮像面)は、それぞれ映像用撮像素子18の撮像面に対して前後等距離dの位置となるように配置されている。
【0032】
このようにレンズ装置14に配置された一対のAF用撮像素子24A、24Bによって、レンズ装置14に入射した被写体光を映像用撮像素子18の撮像面に対して前後の等距離の位置にそれぞれ撮像面を配置した場合と等価な映像信号が取得されるようになっている。尚、AF用撮像素子24A、24Bはカラー映像を撮像するものである必要はなく、本実施の形態ではAF用撮像素子24A、24Bから白黒の映像信号(輝度信号)が取得されるものとする。
【0033】
図3は、レンズ装置14の制御系の主要構成を示したブロック図である。同図に示すように、レンズ装置14の制御系は、主として、CPU(レンズCPU)30、アンプFA、ZA、IA、モータFM、ZM、IM、フォーカスデマンド52及びAF枠操作部54を含む操作ユニット(フォーカス・AF枠操作ユニット)50、ズームデマンド48、及びAF処理部36を備えて構成されている。尚、レンズ装置14の制御系の一部又は全部はレンズ装置14(の光学系)とは別体の装置として構成されていてもよいし、全体で1つの装置として構成されていてもよい。図3では、操作ユニット50及びズームデマンド48がレンズ装置14とは別体の装置からなる構成が一例として示されている。
【0034】
レンズCPU30は、レンズ装置14全体を統括制御するものであり、D/A変換器32を介して各アンプFA、ZA、IAに駆動信号を出力する。各モータFM、ZM、IMは、それぞれレンズCPU30からD/A変換器32及び各アンプFA、ZA、IAを介して与えられる駆動信号の値(電圧)に応じた回転速度で駆動される。フォーカスレンズFL、ズームレンズZL、絞りIは、各モータFM、ZM、IMにそれぞれ連結されており、各モータFM、ZM、IMによってフォーカスレンズFL、ズームレンズZL、絞りIがそれぞれ駆動される。
【0035】
また、各モータFM、ZM、IMの出力軸にはそれらの回転位置に応じた電圧信号を出力するポテンショメータFP、ZP、IPが連結されており、各ポテンショメータFP、ZP、IPからの電圧信号がA/D変換器34を介してレンズCPU30に与えられる。即ち、レンズCPU30は、各ポテンショメータFP、ZP、IPの出力信号によってフォーカスレンズFL、ズームレンズZL、絞りIの現在位置の情報を取得することができるようになっている。これにより、レンズCPU30から各アンプFA、ZA、IAに与えられる駆動信号によって撮影レンズのフォーカスレンズFL、ズームレンズZL、絞りIの位置又は動作速度が所望の状態に制御される。
【0036】
フォーカスデマンド52やズームデマンド48は、レンズ装置14のコントローラとして、撮影レンズのフォーカス(フォーカスレンズFL)やズーム(ズームレンズZL)の目標となる位置や移動速度をマニュアル操作で指定するマニュアル操作部材を備えている。フォーカスデマンド52は操作ユニット50に組み込まれており、CPU(操作ユニットCPU)60を介してレンズCPU30と接続されている。ズームデマンド48は、A/D変換器34を介してレンズCPU30と接続されている。
【0037】
フォーカスレンズFLの制御(フォーカス制御)は、AFスイッチ(不図示)の操作によってマニュアルフォーカス(MF)による制御モード(MFモード)とオートフォーカス(AF)による制御モード(AFモード)とで切り替えられるようになっている。例えば、レンズCPU30にはAFスイッチのオン/オフ状態を示す信号が与えられるようになっており、レンズCPU30はAFスイッチの状態に基づいてMFモードとAFモードとを切り替えている。
【0038】
MFモードでは、カメラマンによってフォーカスデマンド52がマニュアル操作されると、レンズCPU30は、フォーカスデマンド52からCPU60を介して与えられた指令信号が示す目標位置(又は目標速度)となるようにフォーカスレンズFLを制御する。
【0039】
AFモードでは、レンズCPU30は、詳細を後述するようにAF処理部36から取得したAF枠内の焦点評価値情報に基づいて、AF枠内の被写体にピントが合うようにフォーカスレンズFLを自動的に制御する。尚、AFモードであってもMFの操作(フォーカスデマンド52でのマニュアル操作)が行われた場合には、それを優先してMFの操作に従ってフォーカスレンズFLを制御するようにしてもよい。
【0040】
ズームレンズZLの制御(ズーム制御)では、カメラマンによってズームデマンド48がマニュアル操作されると、レンズCPU30は、ズームデマンド48から与えられる指令信号が示す目標速度(又は目標位置)となるようにズームレンズZLを制御する。
【0041】
絞りIの制御(絞り制御)では、レンズCPU30は、カメラ本体12(図1参照)から与えられる指令信号が示す設定位置(絞り値)となるように絞りIを制御する。
【0042】
次に、AFモードの制御について説明する。AFモードでは、レンズCPU30は、AF用撮像素子24A、24Bによって撮影(撮像)された被写体画像のコントラストの高さを示す焦点評価値に基づいて、AF枠内の被写体にピントが合うようにフォーカスレンズFLの制御を行う。尚、焦点評価値の算出はAF処理部36にて行われるようになっている。
【0043】
図2で示したように映像用撮像素子18の撮像面に対して光学的に前後等距離の位置に撮像面が配置された1対のAF用撮像素子24A、24BではAF用光路を通過して各撮像面に結像された被写体画像がフィールド周期で電気信号に変換され、映像信号として出力されている。そして、それらの映像信号はAF処理部36に入力されるようになっている。尚、AF用撮像素子24Aから得られる映像信号をchAの映像信号といい、AF用撮像素子24Bから得られる映像信号をchBの映像信号という。
【0044】
AF処理部36は、chAの映像信号を処理するためのA/D変換器38A、ハイパスフィルタ(HPF)40A、ゲート回路42A、加算回路44Aと、chBの映像信号を処理するためのA/D変換器38B、ハイパスフィルタ(HPF)40B、ゲート回路42B、加算回路44Bと、AF用CPU46と、を備えて構成されている。
【0045】
AF処理部36に入力されたchAの映像信号は、まず、A/D変換器38Aによりデジタル信号に変換される。次に、その映像信号は、HPF40Aによって高域周波数成分の信号のみが抽出される。その高域周波数成分の映像信号は続いてゲート回路42Aに入力され、撮影範囲(画面)のうちAF用CPU46によって指定されたAF枠内の映像信号のみが抽出される。そして、ゲート回路42Aによって抽出されたAF枠内の映像信号は加算回路44Aに入力され、1フィールド分(1画面分)ずつ積算される。尚、AF用CPU46は、レンズCPU30から与えられるAF枠情報に基づいてゲート回路42AにAF枠の指定を行う。
【0046】
また、chBの映像信号に対する各回路38B〜44Bの処理についても、chAの映像信号を処理するための各回路38A〜44Aと同様の処理にして行われる。尚、各回路38B〜44Bの処理の説明については重複を避けるため省略する。
【0047】
上記のようにして各加算回路44A、44Bで得られる積算値は、それぞれAF用撮像素子24A、24Bで撮像された被写体画像のコントラストの高さを示す焦点評価値であり、これらの焦点評価値はAF用CPU46に読み込まれる。尚、chAの映像信号から得られた焦点評価値をchAの焦点評価値といい、chBの映像信号から得られた焦点評価値をchBの焦点評価値という。
【0048】
AF処理部36のAF用CPU46は、レンズCPU30との間で各種データの送受信を行うことができるようになっており、上記のようにして取得したchAとchBの焦点評価値を示す情報(焦点評価値情報)をレンズCPU30からの要求に従って送信する。
【0049】
そして、レンズCPU30は、AF処理部36から取得したchAとchBの焦点評価値に基づいて映像用撮像素子18に対するレンズ装置14のピント状態を検出する。
【0050】
ここで、レンズCPU30において行われるピント状態検出の原理について説明する。図4は、横軸にレンズ装置14のフォーカスレンズFL(フォーカス)の位置(フォーカス位置)、縦軸に焦点評価値をとり、ある被写体を撮影した際のフォーカス位置と焦点評価値との関係を例示した図である。図中実線で示す曲線A、Bは、それぞれchA、chBの映像信号から得られるchAとchBの焦点評価値をフォーカス位置に対して示している。一方、図中点線で示す曲線Cは、映像用撮像素子18から得られた映像信号により焦点評価値を求めたと仮定した場合の焦点評価値をフォーカス位置に対して示している。
【0051】
同図において、ピント状態がベストピント(合焦)となるのは、曲線Cで示す映像用撮像素子18の焦点評価値が最大(極大)となるときのフォーカス位置F0にフォーカスが設定された場合である。もし、レンズ装置14のフォーカスがそのベストピント位置(合焦位置)F0よりも至近側のフォーカス位置F1に設定されている場合には、chAの焦点評価値は、フォーカス位置F1に対応する曲線Aの値VA1となり、chBの焦点評価値は、フォーカス位置F1に対応する曲線Bの値VB1となる。この場合、図から分かるようにchAの焦点評価値VA1の方が、chBの焦点評価値VB1よりも大きくなる。このことから、chAの焦点評価値VA1の方が、chBの焦点評価値VB1よりも大きい場合には、フォーカスが合焦位置F0よりも至近側に設定されている状態、すなわち、前ピンの状態であることが分かる。
【0052】
一方、レンズ装置14のフォーカスがベストピント位置F0よりも無限遠側のフォーカス位置F2に設定されている場合には、chAの焦点評価値は、フォーカス位置F2に対応する曲線Aの値VA2となり、chBの焦点評価値は、フォーカス位置F2に対応する曲線Bの値VB2となる。この場合、chAの焦点評価値VA2の方が、chBの焦点評価値VB2よりも小さくなる。このことから、chAの焦点評価値VA2の方が、chBの焦点評価値VB2よりも小さい場合には、フォーカスが合焦位置F0よりも無限遠側に設定されている状態、すなわち、後ピンの状態であることが分かる。
【0053】
これに対して、レンズ装置14のフォーカスがフォーカス位置F0、即ち、ベストピント位置に設定されている場合には、chAの焦点評価値は、フォーカス位置F0に対応する曲線Aの値VA0となり、chBの焦点評価値は、フォーカス位置F0に対応する曲線Bの値VB0となる。この場合、chAの焦点評価値VA0とchBの焦点評価値VB0は等しくなる。このことから、chAの焦点評価値VA0とchBの焦点評価値VB0とが等しい場合にはフォーカスがベストピント位置F0に設定されている状態、すなわち、ベストピント状態(合焦状態)であることが分かる。
【0054】
レンズCPU30は、このようにchAとchBの焦点評価値によってレンズ装置14の現在のピント状態が映像用撮像素子18に対して前ピン、後ピン、ベストピント(合焦)のいずれの状態であるかを検出しながらフォーカスレンズFLを制御する。例えば、chAとchBの焦点評価値から検出したピント状態が前ピンの場合にはフォーカスレンズFLを無限遠方向に移動させ、ピント状態が後ピンの場合にはフォーカスレンズFLを至近方向に移動させる。そして、ピント状態がベストピント(合焦)の場合には、フォーカスレンズFLを停止させる。これによって、レンズ装置14のピント状態がベストピント状態となる位置にフォーカスレンズFLが移動して停止する。尚、このようにchAとchBの焦点評価値に基づいてレンズ装置14のフォーカスを制御し合焦させるAFの方式を光路長差方式と称している。また、ピント状態の検出(認識)は実際の処理上では必ずしも必要ではなく、chAとchBの焦点評価値から合焦のためのフォーカスレンズFLの移動方向を検出することができる。
【0055】
また本実施の形態においては、詳細を後述するようにAF枠の自動設定モードにおいて、レンズCPU30は、AF用CPU46から撮影画面の中でベストピント状態となっている範囲(領域)を取得できるようになっている。尚、本明細書では、撮影画面の中でベストピント状態となっている範囲を「ベストピント位置」と称することもある。
【0056】
ここで、レンズCPU30から撮影画面上のベストピント位置の要求があったときのAF用CPU46の処理について説明する。図5は、撮影画面の一例を示した図である。同図では、ベストピントの被写体(人物)72を含む領域70aは符号「0」、前ピンの被写体(人物以外)74を含む領域70aは符号「+」、後ピンの被写体(人物以外)76を含む領域70aは符号「−」でそれぞれ表示している。尚、上記の符号(「0」、「+」、及び「−」)のいずれも表示されていない領域70aは、ピントがあっていない(ボケ)又は被写体が含まれていない領域である。
【0057】
AF用CPU46は、レンズCPU30から撮影画面70の中のベストピント位置の要求があると、図5に示したように、撮影画面70を複数の領域70aに分割して、各領域70aに対するchAとchBの焦点評価値をそれぞれ算出する。各領域70aに対するchAとchBの焦点評価値の算出方法としては、前述したAF枠内の焦点評価値を算出する場合と同様にして行われるので、ここでは重複を避けるため説明を省略する。
【0058】
さらにAF用CPU46は、領域70a毎にchAとchBの焦点評価値を算出して、それらの差を比較することによって各領域70aのピント状態(ベストピント、前ピン、後ピン)をそれぞれ検出する。そして、撮影画面70の中からベストピント位置として検出された領域70a(図4において符号「0」で示された領域)をレンズCPU30に送信する。
【0059】
このようにしてレンズCPU30は、AF用CPU46から撮影画面70の中のベストピント位置(ベストピント状態となっている範囲)を取得して、後述するようにしてベストピント位置に人物の顔が存在するか否かの判断を行い、ベストピント位置に人物の顔が存在する場合にはその顔の範囲を示す顔枠にAF枠78を設定するようになっている。尚、撮影画面70の中に含まれる人物の顔の検出は操作ユニット50によって行われる。
【0060】
次に、操作ユニット(フォーカス・AF枠操作ユニット)50について説明する。
【0061】
図3に示すように、操作ユニット50は、フォーカスデマンド52、AF枠操作部54、画像メモリ56、画像処理回路58、CPU60、及びモードスイッチ62を備えて構成される。例えば、操作ユニット50は筐体内に納められた状態でレンズ装置14のレンズ鏡胴側部やカメラ本体12の筐体外壁面等に設置される。
【0062】
尚、操作ユニット50が設置される位置は特に限定されるものでなく、他の任意の位置に設置してもよく、また、レンズ装置14やカメラ本体12以外の部分に配置するようにしてもよい。
【0063】
フォーカスデマンド52は、上述したようにフォーカスレンズFLをマニュアル操作するための操作部材(フォーカス操作部材)を備えている。カメラマンによってフォーカスデマンド52がマニュアル操作されると、CPU60によってフォーカスデマンド52によって指定された目標となる位置(又は移動速度)が読み取られ、その位置(又は移動速度)を示す指令信号がCPU60からレンズCPU30に送信される。そして、レンズCPU30は、フォーカスデマンド52からCPU60を介して与えられた指令信号に基づいて、フォーカスレンズFLの制御を行うようになっている。尚、フォーカスデマンド52は、操作ユニット50とは別体の装置として構成されていてもよい。
【0064】
AF枠操作部54は、主にAF枠の制御に関する操作を行うための操作部であり、AF枠の範囲を操作者がマニュアル操作で指示入力するための操作部材や、AF枠を所望の被写体に自動で追尾させるAF枠自動追尾に関する操作を行うための操作部材を備えている。図示は省略するが、AF枠操作部54には、AF枠の位置をユーザの手動操作により上下左右に移動させるための位置操作部材(例えばジョイスティックやトラックボール)、AF枠の大きさを手動操作により変更するためのサイズ操作部材(例えばツマミ)、AF枠の形状を手動操作により変更するための形状操作部材(例えばツマミ)、AF枠自動追尾の開始を指示する追尾開始スイッチ、AF枠自動追尾の停止を指示する追尾停止スイッチが設けられており、これらの操作部材の操作状態がCPU60によって読み取られるようになっている。尚、AF枠操作部54の一部又は全てが、操作ユニット50とは別体の装置として構成され、操作ユニット50とケーブル等で接続される態様であってもよい。
【0065】
画像メモリ56には、カメラ本体12からダウンコンバータ64を介して操作ユニット50に入力される映像信号が一旦格納されるようになっている。画像メモリ56に格納された映像信号は、画像処理回路58によってCPU60にてデジタル処理可能なデータに変換される。これにより、CPU60は、画像処理回路58から出力される映像信号を1コマ単位の撮影画像として取得することができるようになっている。尚、画像処理回路58は、CPU60により書込み・読出し可能なメモリ等も備えており、処理データの記憶などに適宜使用される。
【0066】
CPU60は、追尾対象としたい被写体にAF枠が設定されると、被写体の移動に追従するようにAF枠の自動追尾処理を実行する機能を備えている。AF枠の自動追尾処理では、まず始めに、追尾対象としたい被写体にAF枠が自動又は手動で設定され(AF枠設定処理)、続いて、画像処理回路58から順次得られる撮影画像から追尾対象としている被写体の画像が顔検出処理又はパターンマッチング処理により検出され、検出された被写体の画像の範囲がAF枠の範囲として更新される(AF枠更新処理)。尚、CPU60において行われる顔検出処理やパターンマッチング処理については周知であるため、ここでは説明を省略する。
【0067】
このようにして設定又は更新されたAF枠の範囲(位置、サイズ、形状)を示す情報(AF枠情報)はレンズCPU30に与えられ、レンズCPU30は、AF枠内のchAとchBの焦点評価値をAF処理部36のAF用CPU46から取得し、AF枠内の被写体にピントが合うようにフォーカスレンズFLを制御する。
【0068】
モードスイッチ62は、AF枠設定処理のモードとして、AF枠操作部54の操作に応じてAF枠の手動設定が可能なAF枠手動設定モードと、AF枠操作部54を操作することなくフォーカスデマンド52の操作のみでAF枠の自動設定が可能なAF枠自動設定モードとを切り替える選択スイッチ(例えばスライドスイッチ)である。モードスイッチ62によって選択されているAF枠の設定処理モードはCPU60によって読み取られて、レンズCPU30に送信されるようになっており、レンズCPU30はAF枠設定処理モードを認識することが可能となっている。
【0069】
AF枠手動設定モードは、カメラマンがAF枠操作部54を操作することによって、撮影画面の中から追尾対象としたい被写体にAF枠を手動で設定するモードである。AF枠操作部54によって設定されたAF枠の範囲(位置、サイズ等)はCPU60によって読み取られてレンズCPU30に送信され、レンズCPU30においてAF枠内の被写体にピントが合うようにAFモードによるフォーカスレンズFLの制御が行われる。また、AF枠の自動追尾処理の開始及び停止についてもAF枠操作部54の操作によって行われる。
【0070】
一方、AF枠自動設定モードは、カメラマンが撮影画面の中から追尾対象としたい被写体にピントが合うようにフォーカスデマンド52を操作すると、撮影画面の中でベストピント状態となっている範囲(ベストピント位置)に存在する被写体にAF枠が自動的に設定されるモードである。
【0071】
AF枠自動設定モードでは、レンズCPU30は、操作ユニット50のCPU60に対して撮影画面の中に含まれる人物の顔を検出するように要求すると共に、AF処理部36のAF用CPU46に対して撮影画面の中のベストピント位置を要求する。
【0072】
操作ユニット50のCPU60は、レンズCPU30からの要求に応じて、画像処理回路58から順次得られる撮影画像に対して周知の顔検出処理を行い、その撮影画像の中から1又は複数の人物の顔を検出した場合には、検出された全ての顔の枠(顔枠)の位置とサイズをレンズCPU30に送信する。
【0073】
AF処理部36のAF用CPU46は、前述したように、レンズCPU30からの要求に応じて、撮影画面を複数の領域に分割して、領域毎にピント状態(ベストピント、前ピン、後ピン)を検出して、撮影画面の中からベストピント状態となっている領域((ベストピント位置)を抽出してレンズCPU30に送信する。
【0074】
このようにしてレンズCPU30は、操作ユニット50のCPU60から撮影画面の中に含まれる人物の顔の範囲を示す顔枠の位置とサイズを取得すると共に、AF処理部36のAF用CPU46から撮影画面の中のベストピント位置を取得する。そして、撮影画面の中のベストピント位置に人物の顔が存在するか否かを判断し、人物の顔が存在すると判断した場合には、ベストピント位置に存在する顔の範囲を示す顔枠を追尾対象としてAF枠を自動的に設定する。
【0075】
また、レンズCPU30は、ベストピント位置に複数の人物の顔が含まれる場合には、複数の人物の顔の中から所定の優先順位に従って1つの顔の範囲を示す顔枠にAF枠を自動的に設定する。優先順位としては、前ピン優先(又は後ピン優先)、画面右優先(又は左優先)、輝度の高い方優先(又は低い方優先)など様々な態様が挙げられる。また、ユーザ(例えばカメラマン)の好みに応じて優先順位を設定できる手段を備えた態様が好ましく、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0076】
また、レンズCPU30は、ベストピント位置に人物の顔が存在しない場合には、ベストピント状態となっている範囲に存在する物体にAF枠を自動的に設定する。このときのAF枠の生成方法としては、例えばベストピント状態となっている範囲の中で同色の範囲を基準にしてAF枠を生成する方法が挙げられる。
【0077】
このように設定されたAF枠はレンズCPU30からカメラ本体12に送信され、カメラ本体12に設置されるビューファインダの表示画面にカメラ本体12の撮影映像に重畳されて表示される。
【0078】
尚、本実施の形態では、例えば図6に示すように、撮影画面70の中から複数の人物の顔が検出された場合には、全ての人物の顔に対して顔枠は表示されず、フォーカスデマンド52の操作によって撮影画面70の中のベストピント位置となっている領域70a(符号「0」で示される領域)に存在する1つの顔のみに顔枠がAF枠78として表示されるようになっている。
【0079】
次に、AF枠自動設定モード時における処理の流れについて、図7を参照して説明する。図7は、AF枠の自動設定モード時におけるレンズCPU30の処理の流れを示すフローチャートである。
【0080】
図7に示すように、所定の初期設定を行った後、AF以外の処理を行う(ステップS100)。
【0081】
次に、操作ユニット50のCPU60に対してフォーカスデマンド52が操作されているか否かを示す情報(フォーカス操作情報)を要求し、その結果をCPU60から受信する(ステップS102)。
【0082】
次に、先のステップ102で取得したフォーカス操作情報に基づいて、フォーカスデマンド52が操作されているか否かを判断する(ステップS104)。フォーカスデマンド52が操作されている場合にはステップS106に進み、操作されていない場合にはステップS120に進む。
【0083】
フォーカスデマンド52が操作されている場合(ステップS104においてYesの場合)、AF処理部36のAF用CPU46に撮影画面上のベストピント位置を要求し、その結果をAF用CPU46から受信する(ステップS106)。
【0084】
次に、操作ユニット50のCPU60に撮影画面上の人物の顔(顔画像)の範囲を示す顔枠の位置とサイズを要求し、その結果をCPU60から受信する(ステップS108)。このとき、CPU60は、レンズCPU30から要求を受けると、CPU60に具備される顔検出機能によって撮影画面の中に含まれる全ての顔枠の位置とサイズを検出してレンズCPU30に送信する。
【0085】
次に、撮影画面上のベストピント位置に人物の顔が存在するか否かを判断する(ステップS110)。ベストピント位置に人物の顔が存在する場合にはステップS112に進み、存在しない場合にはステップS118に進む。
【0086】
撮影画面上のベストピント位置に人物の顔が存在する場合(ステップS110においてYesの場合)、さらにベストピント位置に存在する人物の顔は複数か否かを判断する(ステップS112)。
【0087】
ベストピント位置に複数の人物の顔が存在する場合(ステップS112においてYesの場合)には、複数の人物の顔の中から前ピン寄りの顔をAF枠の設定対象として選択して(ステップS114)、ステップS116に進む。
【0088】
一方、ベストピント位置に複数の人物の顔が存在しない場合(ステップS112においてNoの場合)、即ち、ベストピント位置に存在する人物の顔が1つだけの場合には、その顔をAF枠の設定対象として選択して、ステップS116に進む。
【0089】
次に、AF枠の設定対象として選択された顔を基準にしてAF枠の位置とサイズを決定する(ステップS116)。そして、ステップS126に進む。
【0090】
また、ベストピント位置に人物の顔が存在しないと判断された場合(ステップ110においてNoの場合)には、ベストピント状態となっている範囲の中で同色の範囲を基準にAF枠の位置とサイズを決定する(ステップS118)。そして、ステップS126に進む。
【0091】
また、フォーカスデマンド52が操作されていない場合(ステップS104においてNoの場合)には、フォーカスデマンド52の操作が停止されてから所定時間(例えば0.3秒)が経過したか否かを判断する(ステップS120)。
【0092】
フォーカスデマンド52の操作が停止されてから所定時間経過した場合(ステップS120においてYesの場合)、フォーカスデマンド52の操作によるAF枠の設定処理は終了したものと判断して、被写体の移動に伴いAF枠を自動追尾させる(ステップS122)。そして、自動追尾によって更新されたAF枠の範囲がベストピントとなるようにフォーカスレンズFLを制御する(ステップS124)。その後、ステップS126に進む。
【0093】
一方、フォーカスデマンド52の操作が停止されてからの経過時間が所定時間(例えば0.3秒)未満の場合(ステップS120)には、フォーカスデマンド52の操作によるAF枠の設定処理は継続中であると判断して、ステップS122及びステップS124の各処理はスキップして、ステップS126に進む。
【0094】
このようにして設定又は更新されたAF枠の位置とサイズをカメラ本体12に送信する(ステップS126)。その後、ステップS100に戻って最初からの処理を繰り返す。
【0095】
このように本実施の形態では、基本的に、ステップS100からステップS116までの流れのように、カメラマンがフォーカスデマンド52を操作して追尾対象としたい被写体にピントを合わせると、撮影画面内のベストピント位置の検出が行われると共に、撮影画面内の人物の顔の検出が行われる。そして、撮影画面内のベストピント位置に人物の顔が存在する場合には、その顔の範囲を示す顔枠にAF枠が自動的に設定される。また、フォーカスデマンド52の操作が停止してから所定時間(例えば0.3秒間)が経過すると、追尾対象としたAF枠内の被写体(つまり、人物の顔)の移動に追従してAF枠の自動追尾処理が行われる。
【0096】
例えば、図5に示した例の場合には、フォーカスデマンド52の操作によって撮影画面70の中のベストピント位置となっている領域70a(符号「0」で示される領域)に存在する人物の顔の範囲を示す顔枠にAF枠78が設定されて、AF枠の自動追尾処理が行われる。
【0097】
また、図6に示した例のように撮影画面70の中に複数の人物(本例では2人)の顔が含まれる場合には、右側人物を含む領域がベストピント位置となるようにフォーカスデマンド52が操作されると、これらの顔のうちベストピント位置に存在する右側人物の顔の範囲を示す顔枠にAF枠78が設定されて、AF枠の自動追尾処理が行われる。尚、撮影画面70には、ベストピント位置に存在する右側人物の顔枠のみがAF枠78として表示され、ベストピント位置以外に存在する左側人物の顔枠は表示されないようになっており、カメラマンはAF枠の設定対象となる顔枠を瞬時に把握できるようになっている。
【0098】
また、撮影画面の中のベストピント位置に人物の顔が含まれない場合には、ベストピント位置に存在する物体(人物の顔以外)にAF枠が自動的に設定されて、AF枠の自動追尾処理が行われる。
【0099】
また、カメラマンがフォーカスデマンド52を操作しようとした場合には、その操作が優先されるようになっている。これにより、自動で設定されたAF枠の位置がカメラマンの意図した位置ではなかった場合やAF枠の自動追尾が失敗した場合には、カメラマンはフォーカスデマンド52を再び操作することで即座にAF枠の再設定が可能である。
【0100】
以上説明したように本実施の形態によれば、AF枠の位置をジョイスティックやタッチパネル等の操作装置を操作することなく、カメラマンが操作に慣れているフォーカスデマンド52を操作するだけでAF枠を容易に設定することができると共に、AF枠の自動追尾中に追尾が失敗しても、即座にフォーカスデマンド52の操作でAF枠の再設定が可能である。これにより、AF枠自動追尾を開始する際の煩雑な操作が不要となり、カメラマンの負担を軽減することができる。また、システムに高価なタッチパネル式モニター等の操作装置が不要となり、コストダウンを図ることができる。
【0101】
以上、本発明のオートフォーカスシステムについて詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0102】
10…テレビカメラシステム、12…カメラ本体、14…レンズ装置、18…映像用撮像素子、24A、24B…AF用撮像素子、30…レンズCPU、36…AF処理部、46…AF用CPU、48…ズームデマンド、50…操作ユニット、52…フォーカスデマンド、54…AF枠操作部、60…CPU、62…モードスイッチ、70…撮影画面、78…AF枠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラの撮影画面内においてピントを合わせるフォーカス操作手段と、
前記フォーカス操作手段によるピント合わせの結果を示す前記撮影画面からベストピント状態の範囲を検出するベストピント範囲検出手段と、
前記撮影画面から人物の顔の範囲を検出する顔検出手段と、
前記撮影画面のベストピント状態の範囲に人物の顔が存在する場合には、前記撮影画面のうちオートフォーカスによりピントを合わせる対象範囲であるAFエリアの範囲を示すAF枠の位置を前記人物の顔の範囲を示す顔枠に自動で設定するAF枠自動設定手段と、
前記AF枠自動設定手段で設定されたAF枠内の被写体を自動追尾するAF枠自動追尾手段と、
を備えたことを特徴とするオートフォーカスシステム。
【請求項2】
前記撮影画面のベストピント状態の範囲に複数の人物の顔が存在する場合には、前記複数の人物の顔の中から所定の優先順位に従って選択される1つの顔の範囲を示す顔枠に前記AF枠の位置を自動で設定することを特徴とする請求項1に記載のオートフォーカスシステム。
【請求項3】
前記撮影画面のベストピント状態の範囲に人物の顔が存在しない場合には、当該ベストピント状態の範囲に含まれる物体に対して前記AF枠の位置を自動で設定することを特徴とする請求項1又は2に記載のオートフォーカスシステム。
【請求項4】
前記ベストピント範囲検出手段は、前記撮影画面を複数の領域に分割し、各領域のピント状態を取得することにより前記ベストピント状態の範囲を検出することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のオートフォーカスシステム。
【請求項5】
前記各領域のピント状態は、ベストピント状態、前ピン、又は後ピンを含むことを特徴とする請求項4に記載のオートフォーカスシステム。
【請求項6】
前記ベストピント範囲検出手段は、撮影レンズに入射した被写体光からピント状態検出用に分離された被写体光を撮像素子で撮影して得られた映像信号に基づいて得られた被写体像の焦点評価値に基づいて前記ピント状態を取得することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のオートフォーカスシステム。
【請求項7】
前記AF枠自動設定手段が前記AF枠の位置を自動で設定した後、再度前記フォーカス操作手段が操作された場合には、前記ベストピント範囲検出手段は、前記フォーカス操作手段によるピント合わせの結果を示す前記撮影画面内からベストピント状態の範囲を再度検出し、
前記AF枠自動設定手段は、前記再度検出されたベストピント状態の範囲に基づいて前記AF枠の位置を再設定することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のオートフォーカスシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−133821(P2011−133821A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−295477(P2009−295477)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】