説明

オーバーヘッド型搬送装置

【課題】 暴走するキャリッジを短距離において停止させることができ、その際の速度検出の精度を向上させた機械的停止機能を備えた搬送装置を提供する。
【解決手段】 軌道レール1内を通過するキャリッジ2の車輪23に接触する接触部材5と、接触部材を先端に装着してなる揺動部材4と、揺動部材の一部の当接を受けてリンクするリンク部材6と、キャリッジの進行を阻害する方向に向かって進退可能に設けられたストッパ部材9と、ストッパ部材の表面に突設してなる被掛止部95と、ストッパ部材の被掛止部を掛止およびその解除を可能にしてなる掛止部材8と、掛止部材とリンク部材とを連結する連結部材7とを備えている。揺動部材が大きく揺動してリンク部材がリンクするとき、リンク部材が連結部材を介して掛止部材を回動させ、被掛止部の掛止を解除させてストッパ部材を作動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーバーヘッド型搬送装置に関し、特に、キャリッジの暴走を防止できる搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的なオーバーヘッド型搬送装置は、天井付近に配置した軌道レールと、この軌道レール内を転動する車輪を備えたキャリッジ(ハンガーとも称す)と、このキャリッジに駆動力を伝達するための駆動チェーンとを備えたものであり、この駆動チェーンを循環移動させながら、係止突起をキャリッジに係止させることによって当該キャリッジを走行させるのである(これをパワーアンドフリー型のチェーンコンベアと称する)。
【0003】
また、オーバーヘッド型の搬送装置では、搬送物(ワーク)の搬送する途中の高さを変化させることがあるため、軌道レールは常に水平な状態ではなく、上り勾配の区域もあれば下り勾配の区域もあり、上記パワーアンドフリー型チェーンコンベアであっても例外ではなかった。しかし、パワーアンドフリー型チェーンコンベアの場合には、水平方向および上り勾配の区間においては駆動力が常にキャリッジに伝達されるから、大きな問題はないものの、下り勾配の区間においては、キャリッジが自重によって自走することとなり、駆動力を伝達できない状態となることがあった。それどころか、キャリッジが自走するため駆動チェーンの係止突起によって走行速度を抑えなければならない状態となり得るものである(特許文献1参照)。しかも、この係止突起によって抑えることができない場合には、キャリッジが暴走することとなり、工場内での事故等を招来させるおそれが予期されるところとなっていた。
【0004】
そこで、従来は、下り勾配の区間において、例えば速度検出器(二個所の電光管により感知した時間差により速度を計算する)によって、所定速度を超えて走行するキャリッジ(ハンガー)を検出した場合、可動式のストッパを軌道レール(フロアーレール)の間に突出させて、キャリッジ(ハンガー)を当て止めする構成がとられていた(特許文献2参照)。
【特許文献1】実開昭60−72359号の全文(明細書5−6頁、図面第2図)
【特許文献2】実開昭61−179164号の全文(明細書6頁−8頁、図面第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の従来技術は、速度検出器により演算された速度が所定以上である場合に可動式ストッパを駆動させる構成であるため、速度検出器から可動式ストッパまでの距離を十分に有しなければ、キャリッジ(ハンガー)の通過前に当該キャリッジ(ハンガー)を停止させることができない構成であった。しかしながら、このような構成では、十分な距離を維持させるために軌道レールを長く設計しなければならず、予期せぬ暴走を防止する装置を設置するために軌道レールを長くすることは、製造ラインを延長することとなり、できる限り短尺化することが切望されている。
【0006】
また、速度の検出からストッパの始動に至る範囲を機械的に作動させることが考えられるものの、キャリッジ(ハンガー)の走行速度をリンク機構等によって機械的に変換する場合には、走行するキャリッジ(ハンガー)に接触または衝突させることにより、そのときの抵抗力または衝撃力によりリンク機構等が所定状態に変位することで速度検出を行うことになるが、キャリッジ(ハンガー)が暴走(所定速度以上で走行する)状態であるか否かの境界を明確にすることができず、暴走していない状態のキャリッジ(ハンガー)が複数回接触または衝突を繰り返すことで、リンク機構等が徐々に変位することが予想され、正確な速度検出ができない可能性があった。
【0007】
本発明は、上記諸点にかんがみてなされたものであって、その目的とするところは、暴走するキャリッジを短距離において停止させることができ、その際の速度検出の精度を向上させた機械的停止機能を備えた搬送装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明は、軌道レールと、この軌道レールに沿って転動可能な車輪を有するキャリッジと、このキャリッジに駆動力を付与するチェーン型の駆動部とを備え、上記キャリッジに吊り下げられたワークを搬送するオーバーヘッド型搬送装置であって、上記軌道レールが下り勾配となる区間において該軌道レール内に出没可能に設けられ、該軌道レール内を通過する上記キャリッジの車輪に接触する接触部材と、この接触部材を先端に装着してなる揺動部材と、この揺動部材が所定以上に大きく揺動するとき、該揺動部材の一部の当接を受け、かつ揺動幅に応じてリンクするリンク部材と、上記揺動部材よりもキャリッジの進行方向前方に配置され、上記キャリッジの進行を阻害する方向に向かって進退可能に設けられたストッパ部材と、このストッパ部材の表面に突設してなる被掛止部と、上記軌道レールの外方において回動可能に設けられ、上記ストッパ部材の被掛止部を掛止およびその解除を可能にしてなる掛止部材と、この掛止部材と上記リンク部材とを連結する連結部材とを備え、上記揺動部材が大きく揺動して上記リンク部材がリンクするとき、上記リンク部材が上記連結部材を介して掛止部材を回動させて被掛止部の掛止を解除してなることを特徴とするオーバーヘッド型搬送装置を要旨としている。
【0009】
上記構成によれば、揺動部材の先端に構成される接触部材が軌道レール内に配置されて、キャリッジが通過するたびに車輪により衝撃を受けることとなり、この衝撃力に応じて揺動部材が揺動することとなる。そして、キャリッジが通常(平常時)の速度により通過する場合には、揺動部材は揺動するものの、リンク部材に到達する程度まで揺動することはないが、急速に(暴走時に)キャリッジが走行するときは、揺動部材が大きく揺動することとなり、その揺動が所定の幅を超えるときには、リンク部材がリンクすることとなる。このリンク部材がリンクすることにより、連結部材を介して掛止部材が回動され、被掛止部の掛止を解除するとき、ストッパ部材がキャリッジの進行を阻止することとなるのである。
【0010】
また、本発明は、軌道レールと、この軌道レールに沿って転動可能な車輪を有するキャリッジと、このキャリッジに駆動力を付与するチェーン型の駆動部とを備え、上記キャリッジに吊り下げられたワークを搬送するオーバーヘッド型搬送装置であって、上記軌道レールが下り勾配となる区間において該軌道レール内に出没可能に設けられ、該軌道レール内を通過する上記キャリッジの車輪に接触する接触部材と、この接触部材を先端に装着してなる揺動部材と、この揺動部材を揺動自在に支持する枢軸によって回動可能に軸支されたリンク部材と、このリンク部材に設けられ、上記揺動部材が所定以上に大きく揺動したときに当接する被当接部と、上記揺動部材よりもキャリッジの進行方向前方に配置され、上記軌道レール内に出没可能なストッパ部材と、このストッパ部材の表面に突設してなる被掛止部と、上記軌道レールの外方において回動可能に設けられ、上記ストッパ部材の被掛止部を掛止およびその解除を可能にしてなる掛止部材と、この掛止部材と上記リンク部材とを連結する連結部材とを備え、上記揺動部材が大きく揺動して上記リンク部材が回動するとき、上記リンク部材が上記連結部材を介して掛止部材を回動させて被掛止部の掛止を解除してなることを特徴とするオーバーヘッド型搬送装置をも要旨とする。
【0011】
上記構成によれば、リンク部材が揺動部材を支持する枢軸によって軸支されることから、揺動部材の揺動節が枢軸を中心として回動し、その回動軌跡の延長線上にリンク部材の当接部を配置することができる。そして、当該揺動節が所定の角度まで回動するとき、リンク部材が回動し、連結部材を介して掛止部材による被係止部の掛止を解除することとなる。このときのリンク部材の回動を許容するか否かを、揺動部材の揺動節が回動する角度によって調整することができる。
【0012】
上記発明のうち前者において、揺動部材は、揺動中心を枢軸によって軸支され、接触部材が設けられていない他端を上記枢軸の鉛直方向から逸らせて配置し、この先端にウエイト部材を設けてなる揺動部材として構成し、さらに、上記ウエイト部材の重量により上記接触部材が前記軌道レール内に出現するように付勢してなる構成することができる。
【0013】
このような構成によれば、揺動部材は先端のウエイト部材によって所定方向にウエイト付勢されることとなり、このウエイト付勢は、揺動部材先端の接触部材を軌道レール内に出現するように作用するから、軌道レール内を通過するキャリッジの車輪が当該接触部材に接触するたびに、その衝撃によって揺動部材は揺動することとなるが、車輪が通過した後には再び接触部材が軌道レール内に出現して次の車輪の通過に備えることが可能となる。
【0014】
また、上記発明のうち後者において、揺動部材は、全体を略L字形に形成されるとともに、折曲部を前記枢軸で軸支されてなる揺動部材として構成し、この揺動部材の両端を上記枢軸の鉛直方向から同じ側に逸らせて配置するとともに、該揺動部材の他端にウエイト部材を設けた構成とすることができる。
【0015】
このような構成によれば、略L字形の揺動部材の他端は枢軸を中心として所定方向にウエイト付勢されることとなり、このウエイト付勢によって揺動部材の先端に設けられている接触部材を軌道レール内に出現させることとなる。そして、軌道レール内をキャリッジが通過することによって、車輪が接触部材に衝撃を与え、揺動部材を揺動させた後においても当該揺動部材を元の状態に復元させることが可能となる。
【0016】
さらに、上記各発明において、ストッパ部材は、偏った位置を軸として回動可能であり、キャリッジの進行を阻害する方向または軌道レール内部に出現する方向に回動を付勢されてなるストッパ部材として構成し、掛止部材は、上記ストッパ部材が付勢されて回動する方向に抗して掛止する掛止部材として構成することができる。
【0017】
上記構成によれば、上記各発明において、揺動部材が所定以上に揺動することによって、リンク部材が連結部材を介して掛止部材を回動させることとなるが、このとき、揺動部材の揺動幅がキャリッジを停止させる程度であるのか否かの境界付近である場合、僅かにリンク部材を作動させ、結果的に掛止部材が僅かに回動することがあり得るが、このような場合において、ストッパ部材の被係止部が掛止部材から離脱してストッパ機能が誤作動することを防止する。従って、明確に掛止部材を回動させるまでリンク部材が作動しない限り、ストッパ部材がキャリッジを停止させることがない。
【0018】
また、上記各発明において、掛止部材は、被係止部を掛止する方向に付勢されてなる掛止部材として構成することができる。このような構成の場合、掛止部材が、被掛止部の掛止を解除するために十分回動しない状態が発生したとしても、その後において、掛止部材による被掛止部の掛止は解除されることがなく、逆に十分に掛止する状態まで復元することが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、軌道レール内を移動するキャリッジの前輪が揺動部材の接触部材を通過する際、当該キャリッジが通常走行であるのか暴走状態であるのかを判別することができ、暴走状態と判別された時点でリンク部材が連結部材を介してストッパ部材を作動させ得ることとなり、走行状態の検出位置から、停止位置までの距離を短くすることができる。
【0020】
また、リンク部材は、接触部材が通過するキャリッジの車輪と接触し、これにより受ける衝撃によって揺動部材が大きく揺動した場合に限って作動することとなり、当該揺動部材の揺動幅を予め設定することによって、所定の速度以上でキャリッジが走行するときを暴走状態と判断することができる。これにより、機械的な停止機能を実現させることができるとともに、走行するキャリッジ全体の重量から接触部材が受ける衝撃力を計算することが可能となるから、暴走状態の衝撃力が作用したときにリンク部材に到達する揺動部材を配置することにより、正確な速度検出を実現することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。第一の実施形態は、図1に示すように、搬送方向を規制する軌道レール1と、この軌道レール1に沿って移動するキャリッジ2と、キャリッジ2を構成する車輪21,22,23と、キャリッジ2に駆動力を付与する駆動チェーン(チェーン型駆動部)3とを備えたオーバーヘッド型搬送装置に関するものであって、軌道レール1が下り勾配となる範囲におけるキャリッジ2の暴走防止機能を有するものである。本実施形態における軌道レール1は、断面コ字形の二つのレール部材の端縁を対向した状態で構成したものであり、両方のレール部材の端縁間には所定の間隔を設けることにより、軌道レール1の底面および上面にスリット11,12が形成されるようになっている。なお、上記構成の軌道レール1の内部を移動するキャリッジ2は、複数の車輪21,22,23のうち、走行用の車輪21,22が軌道レール1の底面内側を転動するように配置されているとともに、キャリッジ2の姿勢を制御するための車輪23が、転動面をレール部材端縁に向けつつ軌道レール1の底面に形成されるスリット11に配置されている。また、軌道レール1の上面に形成されるスリット12は、駆動チェーン3から下方に突出する係止突起31が軌道レール1の内部に侵入できるように構成されたものであって、軌道レール1に並行して配置される駆動チェーン用レール32に沿って連続移動する駆動チェーン3の係入突起31がキャリッジ2を係止することによって、当該キャリッジ2に駆動力を伝達するように構成されているのである。
【0022】
次に、キャリッジ3の暴走防止機構について説明する。なお、以下に説明する軌道レール1は下り勾配の状態にあるものを水平な状態として説明する。図1において示されているように、本実施形態は、軌道レール1の外部表面に揺動部材4が支持されており、この揺動部材4の先端には接触部材5が装着されている。揺動部材4は板状部材を略クランク状に折曲して構成されており、接触部材5は、軌道レール1の底面に構成されるスリット11を経由して軌道レール1の内部に配置可能となっている。この接触部材5は、軌道レール1のスリット11の近傍に配置されており、キャリッジ2が軌道レール1に沿って走行するとき、当該スリット11において、キャリッジ2の姿勢制御用車輪23と接触するようになっている。そして、キャリッジ2の姿勢制御用車輪23と接触するたびに衝撃を受け、この衝撃力が揺動部材4を揺動させる駆動源となるのである。
【0023】
クランク状の揺動部材4は、任意の折曲部41において回動(正逆方向に回転)が自在に軸支されており、また、接触部材5が設けられていない側の先端(揺動部材他端)42にはウエイト部材43が着脱可能に設けられている。このウエイト部材43の装着により、揺動部材4の揺動方向をウエイト付勢することができるのである。本実施形態では、クランク状の揺動部材4は、両側の平面部44,45を水平にし、中央部46を鉛直に配置しており、上部平面部45と中央部46との中間に位置する折曲部41を軸支するものである。また、下部平面部44の先端に接触部材5が僅かに上向きに傾斜しつつ設けられているものである。このような構成により、ウエイト部材43による揺動部材4に対するウエイト付勢は、中央部46を軌道レール1の側部表面に向けて付勢し、結果的に、接触部材5を軌道レール1の底面側のスリット11から上向きに付勢することが可能になっている。
【0024】
上記揺動部材4から少し離れた位置にはリンク部材6が設けられており、このリンク部材は、下り勾配を有する軌道レール1の下流側(下り勾配の軌道レール1に沿って進行方向側)に配置されている。リンク部材6の原動節側には、駆動アーム61が設けられ、しかも、この駆動アーム61は、上述の揺動部材4におけるクランク状を構成している部分のうちの中央部46の近傍に到達できる長さで構成されている。また、リンク部材6の従動節側は、駆動アーム61の長手方向に対して水平面内において所定角度を有する従動部62が設けられている。なお、駆動アーム61と従動部62とは固着され、両者が一体的に構成されており、その中間部分において枢軸63により軸支されている。従って、上記揺動部材4が揺動し、その揺動幅が所定以上であるとき、当該揺動部材4の中央部46がリンク部材6の駆動アーム61の先端に当接することとなる。この当接により、駆動アーム61の先端が移動されることによって、すなわち、揺動部材4の一部が駆動アーム61を押し回すような作用をすることによって、リンク部材6は枢軸63を中心に回転し、従動部62を所定の向きに回転させることができる。
【0025】
上記リンク部材6の従動部62の先端には、長さ調整機構を備えた棒状の連結部材7の先端が接続されており、この連結部材7の他端に掛止部材8が接続されている。掛止部材8は、キャリッジ2の走行を停止するためのストッパ部材9を所定状態で掛止するものである。すなわち、ストッパ部材9は、中心から大きく偏った位置を軸支されており、先端部91が大きく揺動する構成になっているが、他方、中心軸92の近傍においては、引っ張りバネSによって所定方向(ストッパ部材9が軌道レール1を通過するキャリッジ2の走行を阻止する方向)に付勢されており、このバネSの付勢に抗してストッパ部材9が回動している状態を維持するように、掛止部材8が当該ストッパ部材9の一部を掛止するのである。従って、リンク部材6の従動部62が回転し、連結部材7を所定方向に引っ張ることにより、掛止部材8の状態が変化し、これにより、ストッパ部材9の一部の掛止を解除するとき、ストッパ部材9はバネSの付勢により先端部91を大きく揺動させてキャリッジ2の走行を阻止するのである。また、上記のように大きく回動するストッパ部材9の先端部91は、回動した後にキャリッジ2を停止するため、キャリッジ2の進行方向前方に横断的に配置されるが、キャリッジ2を停止させる際にはキャリッジ2の衝突を受けることとなる。そこで、ストッパ部材9の状態を維持させるため、ストッパ部材9の先端部91を停止する先端当接部93が軌道レール1の一部に設けられている。
【0026】
なお、上記各部材4,6,8,9は、それぞれ適宜位置において、軌道レール1の側面に配置されれば各機能を発揮できることから、軌道レール1の壁面に個々の部材を装着することも可能であるが、本実施形態のように、壁面部Wに個々の部材を装着したうえで、当該壁面部Wを軌道レール1の片方側面に固着するように組み立てることも可能である。ただし、ストッパ部材9の先端部91の揺動を停止する支持部93は、壁面部Wに装着できないため、個別に軌道レール1に直接固着することとなる。
【0027】
次に、各部材の詳細について説明する。揺動部材4は、図2に示すように、上部平面部45と中央部46の中間に位置する折曲部41が枢軸40によって支持される構成である。ここで、当該折曲部41には、スリーブ体47が固着されており、このスリーブ体47が枢軸40の挿入を許容することによって、当該スリーブ体47を揺動軸として、揺動部材4の全体が揺動可能に配置されることとなる。また、上記枢軸40は、壁面部Wに固着されてなる支持部P1,P2に貫設されることによって軸部として機能するものであり、枢軸40が支持部P1,P2に継続的に支持されるように、当該枢軸40の両端には雄ネジB1,B2が螺刻されるとともに、支持部P1,P2の両側からナットN1,N2が螺着できるように構成されている。
【0028】
また、揺動部材4の先端には、既述のとおり、接触部材5が設けられているがこの接触部材5は、長尺な板状部材で構成されている。そして、図2において詳細に示しているように、接触部材5は、概略長方形状の板材を長辺側端縁が先端縁51となるように配置され、当該接触部材5の長手方向が軌道レール1の底面側スリット11(図1)に沿った状態とすることができる。また、当該接触部材5は、揺動部材4の下部平面部44に対して所定角度αだけ上向きに傾斜しており、接触部材5の先端縁51が、軌道レール1のスリット11を通って軌道レール1の内部に到達できるように構成されている。さらに、この先端縁51には、一部を斜状に形成してなる案内部52が構成されている。この案内部52は、軌道レール1の上流側に、すなわち、キャリッジ2(図1)の進行方向に対して後向きに、徐々に先細り形状となるような斜状に形成されている。これにより、軌道レール1に沿って移動するキャリッジ2の姿勢制御用車輪23(図1)が接近するとき、その車輪23は当該案内部52の尖端側から接触することとなり、衝突のような大きな衝撃力を受けることなく、接触部材5に対して徐々に外向き(図中下向き)の力が作用することとなるのである。このようにして外向き(図中下向き)の力が接触部材5に作用することによって、揺動部材4の全体が揺動することとなるのである。そして、キャリッジ2が通常走行時の場合には、接触部材5を僅かに移動させる程度に作用するが、キャリッジ2が暴走状態にあるときには、案内部52が存在するにもかかわらず、激しく接触部材5を跳ね退けるように作用するため、揺動部材4を大きく揺動させることとなるのである。
【0029】
他方、揺動部材4の上部平面部45の先端(揺動部材4の他端)42の近傍には、二列の長溝48,49が貫設されており、これを利用してウエイト部材43を装着できるようになっている。具体的には、ウエイト部材43の一表面に雄ネジ部材B3,B4が立設されており、長溝48,49に雄ネジ部材B3,B4を刺し通したうえで、ナットN3,N4を螺着することによって装着できるようになっている。なお、上記長溝48,49の長手方向は、上部平面部45のうち、折曲部41から先端42に向かって配置されているため、この長溝48,49のどの位置にウエイト部材43を装着するかによって、揺動部材4に対するウエイト付勢(回転モーメント)を変化させることができるのであり、検知すべきキャリッジ2の速度やキャリッジの重量が変化することにより対応し得るものであり、また、ウエイト部材43そのものの重量を変化させることも可能である。
【0030】
上記のような構成であるから、スリーブ体47に枢軸40を挿通しつつ、支持部P1,P2によって揺動部材4を支持することにより、揺動部材4は、ウエイト部43によって揺動方向がウエイト付勢されることとなる。そして、揺動部材4に対して外力が作用しない状態においては、揺動部材4を構成するクランクの中央部46は、軌道レール1の側壁(すなわち、この側壁に固着される壁面部W)の表面に略平行となるように姿勢が維持され、さらに、下部平面部44は、軌道レール1の底面下方に位置することとなる。このとき、揺動部材4の先端に設けられる接触部材5が軌道レール1のスリット11に到達するとともに、傾斜角度αによって接触部材5がスリット11から軌道レール1の内側に向かって傾斜することとなり、接触部材5の先端縁51を軌道レール1の内部に到達させることができる。なお、上記のとおり、揺動部材4は、ウエイト部43によって揺動方向がウエイト付勢されるが、中央部46を壁面部Wの表面に対して略平行な状態で安定させるためには、当該中央部46の一部が壁面部Wに当接することによって可能である。しかしながら、揺動部材4が揺動するたびに両者が当接することによる部材の破損・摩耗を防止するためには、図2において示しているように、支持部P1,P2の中間における壁面部Wの表面にストッパゴムSGを設けることも可能である。この場合、ストッパゴムSGの突出長は、揺動部材4に外力が作用しない状態において、上述のとおり、中央部46が壁面部Wの表面に対して略平行となり、接触部材5の先端縁51が軌道レール1のスリット11から当該軌道レール1の内部に到達できる程度とすることが必要である。
【0031】
次に、リンク部材6について詳述する。図3に示すように、スリーブ状の本体部60の周辺に駆動アーム61と従動部62が固着されており、本体部60の軸線を中心に所定の角度βをなして配置されている。駆動アーム61は、長尺な板状部材によって構成されており、その表面は壁面部Wの表面と略平行となるように配置され、また、その先端には面積を大きくした当接部64が構成されている。この当接部64が、上述の揺動部材4の中央部46の近傍に到達するように配置されて、揺動部材4が揺動することによって、中央部46が枢軸40の軸回りに回転するとき、この当接部64に当接することが可能になっている。
【0032】
従動部62は、長尺な板状部材で構成されており、かつ、その先端65には連結部材7(図1)との連結を許容するための貫通孔66が設けられている。従って、上記駆動アーム61に外力が作用するとき、当該駆動アーム61の状態が変化することに伴って、従動部62の状態が変化することとなり、その結果、先端65の貫通孔66に連結される連結部材7を作動させることができるようになっている。
【0033】
このように駆動アーム61および従動部62を備えた本体部60は、壁面部Wの表面から突設される支持基部67に固着されている枢軸63によって支持されるものである。この枢軸63は、支持基部67から下向きに突出する丸棒で構成されており、本体部60のスリーブ構造の内部を貫通することによって、当該本体部60を回動可能に支持するものである。また、先端に雄ネジB5が形成されており、本体部60の内部を貫通した先端部にナットN5を螺合させることによって、本体部60の脱落を防止することができる。
【0034】
上記のような構成であるから、リンク部材6の駆動アーム61の当接部64を上述の揺動部材4の中央部46の近傍に、所定間隔を有しつつ配置することにより、第1に、キャリッジ2が通常走行時に揺動部材4が揺動する範囲内では、揺動部材4の中央部46が駆動アーム61の当接部64に到達せず、結果的にリンク部材4は作動しないこととなり、第2に、キャリッジ2が暴走状態であるとき、揺動部材4が大きく揺動して、中央部46が駆動アーム61の当接部64に到達し、かつ、枢軸63を中心として当該駆動アーム61を回転させることとなり、リンク部材6を作動させることができる。このように、駆動アーム61の当接部64に揺動部材4の中央部46が到達するか否かによって、キャリッジ2の走行状態が通常であるか暴走であるかを機械的に検出することが可能となるものである。しかも、暴走状態であると検出されるときは、リンク部材6が作動する状態であるから、瞬時にキャリッジ2を停止する機構を始動させることができるのである。
【0035】
次に、掛止部材8およびストッパ部材9について詳述する。図4に示すように、掛止部材8は、略三角形の板状部材で構成され、上記リンク部材6から下流側(下り勾配の軌道レール1に沿って進行方向側)に適宜距離を有して配置されている。この掛止部材8の略三角形状の一つの角81の近傍において連結部材7によって連結されるとともに、他の一つの角82の近傍には内側に切り欠いて構成された掛止爪83が構成され、残る一つの角84の近傍にはスリーブ体85が設けられており、このスリーブ体85を回動軸86によって軸支させることにより、掛止部材8の全体が回動可能に装着されるとともに、連結部材7の進退によって掛止爪83の位置が回動軸86を中心に円弧方向に移動することとなる。
【0036】
回動軸86は、壁面部Wの表面に突設された支持基部87を貫通するように配置されており、当該壁面部Wから十分な距離を有しつつ掛止部材8を支持できるようになっている。また、スリーブ体85は適宜長さを有しており、支持基部87の下面(軌道レール1の底部下面)から十分離れて設けられ、この中間においてストッパ部材9が配置できるようになっている。さらに、このスリーブ体85が設けられている角84を最も外方に配置し、かつ、掛止爪83の先端は壁面部Wから外向きとなるように配置されており、掛止部材8が連結部材7によって引っ張られるときに、掛止爪83が上流側(下り勾配の軌道レール1に沿って進行方向とは逆の方向側)に向かって移動するようになっている。
【0037】
ストッパ部材9は、比較的長尺な板状部材で構成され、軌道レール1の底部下面と掛止部材8との中間に配置されている。このストッパ部材9の基端(長手方向一端)付近には枢軸92が固着され、壁面部Wに設けられた支持基部94によって回動可能に支持されている。そして、ストッパ部材の先端(自由端)91は、比較的大きな円弧を描きながら軌道レール1のスリット11を遮断するようになっている。
【0038】
ここで、ストッパ部材9の下側表面の一部には、下向きに突出する被掛止部95が設けられ、ストッパ部材9よりも下方に配置される掛止部材8の掛止爪83によって掛止可能になっている。具体的には、被掛止部95は丸棒状の突起部で構成され、これに対し、掛止部材8には掛止爪83を構成するために切り欠いた部分(切欠部88)が設けられ、上記被掛止部95が切欠部88に係入することによって、掛止爪83によって掛止できるようになっているのである。
【0039】
また、ストッパ部材9の基端付近には、引っ張りバネSが接続されており、当該ストッパ部材9の回動方向が付勢されている。具体的には、ストッパ部材9の基端に設けられた枢軸92よりも外方(壁面部Wから離れる方向)にスプリング係止部96が下向きに突設され、引っ張りバネSの一端を係止できるように構成するとともに、当該引っ張りバネSの他端は長尺な棒状のスプリング基部97に係止されている。さらに、このスプリング基部97の先端は、壁面部Wに突設されるスプリング支持部98に接続されるものである。なお、本実施形態におけるスプリング支持部98は、上記掛止部材8を支持する支持基部87よりも上流側(下り勾配の軌道レール1に沿って進行方向とは逆の方向側)に配置されており、掛止部材8およびストッパ部材9の作動を阻害しないように配置されているものである。このような引っ張りバネSの配置により、ストッパ部材9に対する付勢は、ストッパ部材9の長手方向を軌道レール1の軌道方向に対して直交させる方向に作用させるものである。つまり、ストッパ部材9の先端(自由端)91に対し、軌道レール1のスリット11よりも壁面部Wが設けられる側(図中手前側)から反対側(図中奧側)に向かって移動するように付勢されているのである。
【0040】
上記のような構成であるから、掛止部材8によってストッパ部材9を掛止しない状態においては、ストッパ部材9は、上記付勢によって回動することとなり、このとき、ストッパ部材9は、軌道レール1のスリット11を直交方向に横断することとなり、キャリッジ2の進行を停止することができるのである。これに対し、掛止部材8がストッパ部材9を掛止する状態においては、ストッパ部材9は、軌道レール1のスリット11を横断するように配置されることがないため、キャリッジ2の移動を阻害することがないのである。そして、掛止部材8の掛止爪83によるストッパ部材9の被掛止部95に対する掛止の状態は、上述のとおり、掛止爪83が壁面部Wから外方に向かって形成されているため、掛止部材8が微動する程度では掛止状態が解除されないのである。すなわち、掛止部材8が僅かに回動したとしても、掛止爪83の移動方向とストッパ部材9の先端(自由端)の移動方向は同様の向きとなるから、掛止爪83を形成する切欠部88から被掛止部95が完全に離脱できなければ当該掛止は解除されないこととなる。そのため、掛止部材8が微動しただけでは、切欠部88から被掛止部95は脱することができず、よって、掛止は解除されないのである。
【0041】
次に、本実施形態の作動態様について説明する。図1において示されているように、キャリッジ2は軌道レール1の内部を通過するものであり、この軌道レール1に沿って移動するキャリッジ2は、その全部が接触部材5に接触することとなる。従って、キャリッジ2が接触部材5に接触するたびに当該接触部材5は軌道レール1のスリット11から外方に押し出されることとなり、その結果、揺動部材4が揺動することとなるのである。そこで、キャリッジ2が通常走行であるときには、接触部材5は緩やかに押し出され、揺動部材4も僅かに揺動することとなる。
【0042】
しかしながら、キャリッジ2が暴走状態であるときには、接触部材5が強く押し出されることとなるため、その衝撃力によって揺動部材4が大きく揺動することとなるのである。そして、この大きい揺動部材4の揺動により、揺動部材4の中央部46の下部付近が最も外側に押し出されることとなるため、この位置に設置されるリンク部材6の駆動アーム61の当接部64を、外向きに回動させつつその位置を移動することとなって、従動部62の先端の位置をも移動させることとなる。これにより、連結部材7が上流側(下り勾配の軌道レール1の進行方向とは反対の方向側)に後退し、連結部材7が掛止部材8を回動させ、掛止爪83が被係止部95の掛止を解除することとなるのである。ここまでは、揺動部材4が大きく揺動した時点で瞬時に連動するものである。
【0043】
そして、掛止部材8による掛止状態を解除されたストッパ部材9は、引っ張りバネSの付勢により、大きく回動を開始し、その先端91が軌道レール1の下面を通過してスリット11を横断しつつ反対側に到達することとなる。なお、スリット11の反対側には、図示のとおりストッパ部材9の先端91を停止する先端当接部93が設けられ、ストッパ部材9がスリット11を横断した状態において、その先端91を支持するようになっている。従って、ストッパ部材9は、スリット11を横断した状態で軌道レール1に沿って進行するキャリッジ2を待ち受けることとなり、このストッパ部材9にキャリッジ2を衝突させることによって、当該キャリッジ2を停止させることができるのである。
【0044】
本実施形態の作動態様は上記のとおりであるが、揺動部材4が揺動したのち、ストッパ部材9がスリット11を横断するまでの時間は僅かであり、ストッパ部材9によりキャリッジ2を停止させるために必要な距離は比較的短く設定することができる。ここで、上記距離は、接触部材5を通過したキャリッジ2がストッパ部材9に到達するまでに要する時間、すなわち軌道レール1の傾斜角度によって異なるため、これを勘案して必要な距離を算出したうえで、適宜位置にストッパ部材9を配置することとなる。そして、当該距離に対応してストッパ部材9の位置を変更するときは、連結部材7の長さを変化させることとなる。
【0045】
次に、本発明の第二の実施形態について説明する。図5に示すように、本実施形態においても、搬送方向を規制する軌道レール101と、この軌道レール101に沿って移動するキャリッジ102と、キャリッジ102を構成する車輪121,122,123,124と、キャリッジ2に駆動力を付与する駆動チェーン(チェーン型駆動部)とを備えたオーバーヘッド型搬送装置に関するものである。
【0046】
本実施形態における軌道レール101は、概略円筒状に構成されるとともに、底部において長手方向に連続するスリット112が形成されている。キャリッジ102は、比較的長尺なキャリッジ本体120と、このキャリッジ本体120を前後に分離しつつ支持する支持部125,126(図6参照)とを備えており、支持部125,126の上端に、それぞれ2個の車輪121,122,123,124が前後方向に分岐されて設けられている。また、キャリッジ本体120には、進行方向横向きに突出する棒状の駆動力伝達部127(図6参照)が設けられており、駆動チェーン103から下向きに突出する突出部131による係止を可能にしている。なお、駆動力伝達部127はキャリッジ本体120の一部に軸支され、回動する状態に応じて駆動力の伝達を受け、または、駆動力の伝達を解除するように構成されている。また、キャリッジ本体120は単一で構成される場合もあるが、複数のキャリッジ本体120が連結されてキャリッジ102の全体を長尺に構成する場合もある。
【0047】
そこで、上記軌道レール101が下り勾配に配置される区間においては、当該軌道レール101の上部においても部分的にスリット111a,111bが設けられており、このスリット111a,111bを介して接触部材105およびストッパ部材109が軌道レール101の内部に出没可能に配置できるようになっている。すなわち、下り勾配の軌道レール101における上流側(下り勾配の軌道レール101の進行方向に向かって反対側)に位置するスリット111aの近傍には、揺動部材104およびリンク部材105が配置され、下流側(下り勾配の軌道レール101の進行方向側)に位置するスリット111bの近傍には、掛止部材108およびストッパ部材109が配置され、リンク部材105と掛止部材108との中間に連結部材107が介在しているのである。
【0048】
本実施形態における揺動部材104は、板状部材によって概略L字形に形成され、その折曲部141において枢軸140によって軸支されている。この枢軸140は比較的軌道レール101に接近した位置に設けられ、この枢軸140を軸として揺動部材104が揺動するとき、上記L字形の短尺部144の先端付近が軌道レール101の内部に侵入できる構成になっている。上記L字形の短尺部144は、その先端に接触部材105を連続させつつ一体的に構成されており、長尺部145は、その先端にウエイト部材143が着脱自在に設けられている。そして、これら短尺部144および長尺部145の先端は、いずれも軌道レール101の下流側(下り勾配の軌道レール101の進行方向側)に配置されており、枢軸140の軸心の鉛直方向よりも前方(軌道レール101の進行方向)に位置するように設けられている。従って、ウエイト部材143の重量が、揺動部材104の揺動方向をウエイト付勢することとなり、その付勢方向は、短尺部144およびその先端の接触部材105を軌道レール101の内部に向かったものとなるのである。なお、軌道レール101の長手方向に沿って壁面部Wが配置されており、上記枢軸140は壁面部Wに固着されている。また、この壁面部Wには、揺動部材104の揺動範囲を制限するための突出片Wpが突設されており、揺動部材104の長尺部145の先端付近の当接を許容して、ウエイト部材143によるウエイト付勢の限界位置を設定している。
【0049】
ここで、接触部材105は、揺動部材104の短尺部144の先端に設けられているが、この接触部材105は、全体として長尺で略弓状に湾曲するように形成されている。この弓状のうち、外部張出部分がキャリッジ102との接触範囲として軌道レール101の内側に配置されるのである。そして、長尺部145の先端が突出片Wpによってウエイト付勢による揺動を停止された状態において、短尺部144は、枢軸140からキャリッジ102の進行方向に向かって斜状に配置されることとなり、その結果として、接触部材105は軸線を斜状にしつつ一部を軌道レール101の内部に侵入させることとなるのである。この状態でキャリッジ102が通過するとき、キャリッジ102の先頭の車輪121が接触部材105に接触し、この接触部材105を軌道レール101から外方に押し出すこととなるのであるが、このとき、揺動部材104を揺動させることとなる。さらに、キャリッジ102が通常走行の場合は、接触部材105を押し出す力が弱く、揺動部材104を小さく揺動させることとなるが、キャリッジ102が暴走状態であるときは、接触部材105に勢いよく衝突することとなり、強く外方に押し出すことから、揺動部材104を大きく揺動させることとなるのである。
【0050】
リンク部材106は、上記揺動部材104を軸支する枢軸140によって軸支され、当該枢軸140の軸回りに回動が自在となっている。このリンク部材106は、軸支部分から一方向に向かって延出する単一の節で構成されており、この節の先端には上記揺動部材104の当接を受けるべく当接部164が設けられている。そして、この当接部164と軸支部分との中間に連結部材107が連結されている。従って、揺動部材104が所定の揺動幅を超えて揺動するとき、リンク部材106の当接部164に当接しつつ、当該リンク部材106を回動させることとなり、このリンク部材106の回動によって連結部材107の一端を移動させることとなる。なお、リンク部材106の回動によって連結部材107の一端が移動する範囲は、リンク部材106の回動の大きさによって異なることから、揺動部材104の揺動幅の大小に応じて連結部材107の作動状況が異なるものである。また、揺動部材104の揺動幅が同じ場合であっても、上記連結部材107の一端が移動する範囲は、軸支部分から連結部材107の連結位置までの距離によって異なることから、リンク部材106の軸支部分から十分離れた位置に連結されることにより、リンク部材106の所定以上の回動をもって連結部材107の十分な移動を実現し得ることとなる。
【0051】
掛止部材108は、回動軸によって壁面部Wに回動自在に軸支されており、さらに、上記リンク部材106に一端を連結された連結部材107の他端が連結されている。そして、リンク部材106が枢軸140を中心として回動し、連結部材107の一端が移動するとき、この連結部材107が掛止部材108の一部を引っ張ることとなり、当該掛止部材108を回動させることとなる。
【0052】
掛止部材108の進行方向側には掛止爪183が突設され、ストッパ部材109を掛止できようになっている。この掛止の状態は、ストッパ部材109の表面から突出する被掛止部195を掛止するものであるが、ストッパ部材109が回動軸192を中心として回動する方向に対して、掛止爪183の先端が引っ掛けることができるように構成されている。ストッパ部材109は、回動軸(枢軸)192にコイルバネCSが装着され、所定の回動方向に付勢されている。この付勢による回動方向は、ストッパ部材109の先端191が軌道レール101のスリット111bを介して当該軌道レール101の内部に侵入する方向である。そして、上記掛止爪183は、被掛止部195に対し、上記ストッパ部材109が付勢されて回動側に位置することによって掛止するものである。従って、この掛止部材108による掛止が解除されない限り、ストッパ部材109は軌道レール101の内方に侵入することがないのである。
【0053】
また、掛止部材108に対しては、当該掛止爪183が被掛止部195を引っ掛ける方向にバネSによって付勢されており、連結部材107に対して引っ張り力などの外力が作用しないとき、当該掛止部材108は、ストッパ部材109を掛止する状態が維持されている。また、連結部材107を僅かに移動させるように外力が作用するとき(例えば、揺動部材104が大きく揺動したが、リンク部材106が僅かに回動する程度であった場合)、掛止部材108による掛止が解除されるように当該掛止部材108は回動するが、それ以上に外力が作用しなければ、当該掛止部材108はバネの付勢により、当該掛止の状態を維持し、または、十分な掛止状態に復元することとなる。
【0054】
ストッパ部材109は、上述のとおり、軌道レール101の第2のスリット111bを介して当該軌道レール101の内部に出没可能となっている。具体的には、ストッパ部材109は、回動軸(枢軸)192を中心に回動して、その先端191を軌道レール101の内部に侵入するように構成されているのである。ストッパ部材109の全体は、コイルバネCSによって付勢されているため、掛止部材108の掛止が解除されることによって、その回動が強制されることとなる。そして、ストッパ部材109の先端191が軌道レール101の反対側内壁に到達した状態で停止することとなるのである。このとき、ストッパ部材109の一辺が、軌道レール101の進行方向に対して垂直となるように、当該一辺の角度が調整されている。
【0055】
次に、本実施形態の作動態様について、図6を参照しつつ説明する。本実施形態は、上記のような構成であるから、軌道レール101に沿って移動するキャリッジ102が暴走するときに、これを停止させるためには、予めストッパ部材109を軌道レール101から外方に位置するように回動させつつ、掛止部材108によって掛止させることによって当該状態を維持させるのである。このとき、掛止部材108に接続される連結部材107を介してリンク部材106は、所定の姿勢に配置されることとなる。他方、揺動部材104は、ウエイト部材143によって長尺部145を傾倒させる方向にウエイト付勢し、これに伴って、短尺部144を軌道レール101の内部に侵入させる方向に付勢することとなる。しかしながら、長尺部145の先端は、突出片Wpに当接することによって、所定角度に傾倒された状態で停止されることとなり、短尺部144は接触部材105の弓状張出部を僅かに軌道レール101に侵入できる程度で停止することとなる。
【0056】
各部材を上記のとおり初期設定することにより、軌道レール101に沿ってキャリッジ102が移動するとき、当該キャリッジ102の車輪121,122,123,124が接触部材105に接触することとなるのである(図6(a))。そして、キャリッジ102が通常速度により移動するときは、接触部材105を僅かに跳ね上げることとなるが、揺動部材104の長尺部145がリンク部材106の当接部164に到達せず、リンク部材106を作動させることはないのである。これは、すなわちストッパ部材109の掛止状態を維持することを意味するものである。
【0057】
これに対し、キャリッジ102が暴走状態である場合には、キャリッジ102の先頭に位置する車輪121が接触部材105に接触すると同時に、当該接触部材105に対し激しい衝撃を与えることとなる。この衝撃力は、当該接触部材105を介して揺動部材104を揺動させる駆動源となり、その長尺部145をウエイト付勢に抗して起立方向に揺動させることとなる。そして、長尺部145がリンク部材106の当接部164に到達し、さらに、当該当接部164を介してリンク部材106を回動させるとき、このリンク部材106が連結部材107を引っ張ることとなり、この連結部材107が引っ張られて位置を変化することによって掛止部材108が回動し、ストッパ部材109の掛止が解除されるのである(図6(b))。
【0058】
このようなストッパ部材109の掛止解除は、リンク部材106の回動とほぼ同時であることから、キャリッジ102を停止するまでに要する時間は、揺動部材104が大きく揺動されて長尺部145がリンク部材106の当接部164に対する駆動力を伝達するまでの時間、および、掛止部材108がストッパ部材109の掛止を解除した後にストッパ部材109の先端191が軌道レール101に侵入し終わるまでの時間の合計とほぼ同じであり、当該時間にキャリッジ102が進行する距離に相当する長さが、少なくとも、接触部材105からストッパ部材109の先端までの長さとなるように各部材が配置されているのである。この長さの調整は、各部材の設置位置を変更することによるが、リンク部材106と掛止部材108との中間距離は、連結部材107の全長によって調整されるものである。
【0059】
本発明の実施形態は以上のとおりであるから、上記各実施形態によれば、接触部材5,105を備えた揺動部材4,104およびリンク部材6,106によって速度検出機能が発揮され、当該速度検出機能によって暴走状態との検出結果に基づいてキャリッジ2,102を機械的に停止させることが可能となる。
【0060】
なお、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の態様をとることができるものである。例えば、連結部材7,107は、長さ調整が可能なターンバックルを中央に配置して構成しているが、両端の連結部において螺進させる構成でもよい。また、当該連結部材7,107の調整長さに関し、初期設定時において、掛止部材8,108はストッパ部材9,109を掛止した状態で所定位置に固定的に配置されることから、連結部材7,107の長さを調整することによってリンク部材6,106の初期状態が変化することとなる。従って、揺動部材4,104の当接を待ち受ける当接部64,164の位置を変更することができ、これによって、ストッパ部材9,109を作動させるべき揺動部材4,104の揺動幅を所望の程度に調整できることとなる。この点は、揺動部材4,104に設けられるウエイト部43,143の重量を調整することによって、キャリッジ2,102から受ける衝撃力により揺動する幅を調整できることから、両者を調整して緩急さまざまな下り勾配に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の第一の実施形態を示す説明図である。
【図2】揺動部材の状態を示す分解斜視図である。
【図3】リンク部材の状態を示す分解斜視図である。
【図4】掛止部材およびストッパ部材の状態を示す分解斜視図である。
【図5】本発明の第二の実施形態を示す説明図である。
【図6】第二の実施形態の作動態様を示す説明図である。
【符号の説明】
【0062】
1,101 軌道レール
2,102 キャリッジ
3 チェーン型駆動部(駆動チェーン)
4,104 揺動部材
5,105 接触部材
6,106 リンク部材
7,107 連結部材
8,108 掛止部材
9,109 ストッパ部材
11,12,111a,111b スリット
21,22,23,121,122,123,124 車輪
31 駆動チェーンの係止突起
32 駆動チェーン用レール
40,140 枢軸
41,141 折曲部
42,142 揺動部材他端
43,143 ウエイト部材
44,45 平面部
144 短尺部
145 長尺部
46 中央部
47 スリーブ体
60 リンク部材の本体部
61 駆動アーム
62 従動部
63 枢軸
64,164 当接部
65 従動部先端
66 貫通孔
67 支持基部
81,82,84 三角形の角
83 掛止爪
85 スリーブ体
86 回動軸
87 支持基部
88 切欠部
91,191 ストッパ部材の先端(自由端)
92,192 枢軸
93 先端当接部
94 ストッパ部材の支持基部
95,195 被掛止部
96 スプリング係止部
97 スプリング基部
98 スプリング支持部
B1,B2,B3,B4 雄ネジ
N1,N2,N3,N4 ナット
P1,P2 支持部
S バネ
CS コイルバネ
W 壁面部
Wp 突出片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道レールと、この軌道レールに沿って転動可能な車輪を有するキャリッジと、このキャリッジに駆動力を付与するチェーン型の駆動部とを備え、上記キャリッジに吊り下げられたワークを搬送するオーバーヘッド型搬送装置であって、上記軌道レールが下り勾配となる区間において該軌道レール内に出没可能に設けられ、該軌道レール内を通過する上記キャリッジの車輪に接触する接触部材と、この接触部材を先端に装着してなる揺動部材と、この揺動部材が所定以上に大きく揺動するとき、該揺動部材の一部の当接を受け、かつ揺動幅に応じてリンクするリンク部材と、上記揺動部材よりもキャリッジの進行方向前方に配置され、上記キャリッジの進行を阻害する方向に向かって進退可能に設けられたストッパ部材と、このストッパ部材の表面に突設してなる被掛止部と、上記軌道レールの外方において回動可能に設けられ、上記ストッパ部材の被掛止部を掛止およびその解除を可能にしてなる掛止部材と、この掛止部材と上記リンク部材とを連結する連結部材とを備え、上記揺動部材が大きく揺動して上記リンク部材がリンクするとき、上記リンク部材が上記連結部材を介して掛止部材を回動させて被掛止部の掛止を解除してなることを特徴とするオーバーヘッド型搬送装置。
【請求項2】
軌道レールと、この軌道レールに沿って転動可能な車輪を有するキャリッジと、このキャリッジに駆動力を付与するチェーン型の駆動部とを備え、上記キャリッジに吊り下げられたワークを搬送するオーバーヘッド型搬送装置であって、上記軌道レールが下り勾配となる区間において該軌道レール内に出没可能に設けられ、該軌道レール内を通過する上記キャリッジの車輪に接触する接触部材と、この接触部材を先端に装着してなる揺動部材と、この揺動部材を揺動自在に支持する枢軸によって回動可能に軸支されたリンク部材と、このリンク部材に設けられ、上記揺動部材が所定以上に大きく揺動したときに当接する被当接部と、上記揺動部材よりもキャリッジの進行方向前方に配置され、上記軌道レール内に出没可能なストッパ部材と、このストッパ部材の表面に突設してなる被掛止部と、上記軌道レールの外方において回動可能に設けられ、上記ストッパ部材の被掛止部を掛止およびその解除を可能にしてなる掛止部材と、この掛止部材と上記リンク部材とを連結する連結部材とを備え、上記揺動部材が大きく揺動して上記リンク部材が回動するとき、上記リンク部材が上記連結部材を介して掛止部材を回動させて被掛止部の掛止を解除してなることを特徴とするオーバーヘッド型搬送装置。
【請求項3】
前記揺動部材は、揺動中心を枢軸によって軸支され、前記接触部材が設けられていない他端を上記枢軸の鉛直方向から逸らせて配置し、この先端にウエイト部材を設けてなる揺動部材であり、上記ウエイト部材の重量により上記接触部材が前記軌道レール内に出現するように付勢してなることを特徴とする請求項1記載のオーバーヘッド型搬送装置。
【請求項4】
前記揺動部材は、全体を略L字形に形成されるとともに、折曲部を前記枢軸で軸支されてなる揺動部材であり、この揺動部材の両端を上記枢軸の鉛直方向から同じ側に逸らせて配置するとともに、該揺動部材の他端にウエイト部材を設けたことを特徴する請求項2記載のオーバーヘッド型搬送装置。
【請求項5】
前記ストッパ部材は、偏った位置を軸として回動可能であり、前記キャリッジの進行を阻害する方向または軌道レール内部に出現する方向に回動を付勢されてなるストッパ部材であり、前記掛止部材は、上記ストッパ部材が付勢されて回動する方向に抗して掛止する掛止部材である請求項1ないし4のいずれかに記載のオーバーヘッド型搬送装置。
【請求項6】
前記掛止部材は、前記被係止部を掛止する方向に付勢されてなる掛止部材である請求項1ないし5のいずれかに記載のオーバーヘッド型搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−262592(P2009−262592A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−110948(P2008−110948)
【出願日】平成20年4月22日(2008.4.22)
【出願人】(598096452)イズテック株式会社 (13)
【Fターム(参考)】