オーバーヘッド移送システムとそれを有する浸漬処理設備
表面処理設備内で対象を移送、特に車両ボディを移送するためのオーバーヘッド移送システムは、少なくとも1つの移送キャリッジ(208)を有し、その移送キャリッジが固定装置(212)を有しており、その固定装置に少なくとも1つの対象(204)を固定することができる。移送キャリッジ(208)は、駆動手段(222、224)によって、それを支持するレール(216)に沿って走行可能である。固定装置(212)は、垂直の回転軸(240)を中心に回転可能に軸承されている。さらに、処理液によって充填可能であり、その処理液内に処理すべき対象(204)を浸漬することができる、少なくとも1つの浸漬槽(202)を有する浸漬処理設備が、記載されている。この浸漬処理設備は、移送設備を有しており、その移送設備が、処理すべき対象(204)を浸漬槽(202)へ近づけ、浸漬槽(202)の内部空間内へ移動させ、浸漬槽(202)から取り出して、その浸漬槽から離れるように移動させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
a)固定装置を有し、その固定装置に少なくとも1つの対象が固定可能である、少なくとも1つの移送キャリッジと、
b)移送キャリッジを支持する少なくとも1つのレールと、
c)レールに沿って移送キャリッジを走行させる、少なくとも1つの駆動手段と、
を有する、表面処理設備内で対象を移送するため、特に車両ボディを移送するためのオーバーヘッド移送システムに関する。
【0002】
本発明は、さらに、
a)処理液で充填することができ、その処理液内に処理すべき対象、特に車両ボディを浸漬することができる、少なくとも1つの浸漬槽と、
b)処理すべき対象を浸漬槽へ近づけ、浸漬槽の内部空間内へ移動させ、浸漬槽から取り出して、その浸漬槽から離れるように移動させることができる、移送設備と、
を有する、浸漬処理設備に関する。
【背景技術】
【0003】
車両ボディのための浸漬処理設備内で使用され、たとえば特許文献1から知られているような、市場から知られたシステムにおいて、固定装置は、移動方向に対して水平と垂直に延びる回転軸を中心に回転することができる。処理すべき車両ボディを、液状の塗料で満たされた浸漬槽内へ挿入するために、処理すべき車両ボディは、純粋な並進運動と水平の回転軸を中心とする純粋な回転運動を重ね合わせて移動される。その場合に並進の移動方向に対する車両ボディの基本方向付けは、水平の回転軸を中心とするその回転を別にして、変化しない;通常、車両ボディの長手軸と移動方向は、水平の平面への投影において常に同一の角度を形成する。
【0004】
浸漬処理設備内で車両ボディの移送に使用される、特許文献2から知られた、他のシステムにおいては、車両ボディは付加的に垂直運動で上昇またか下降することができる。この場合において、車両ボディのために、水平の直線運動、垂直の直線運動および水平の回転軸を中心とする回転の重ね合わせとなる、運動シーケンスを得ることができる。その場合に車両ボディは、さらに、垂直運動によって浸漬槽内へ下降した後に、水平の回転軸を中心として回転することもできる。ここでも、並進の移動方向に対する車両ボディの基本方向付けは、変化しない。
【0005】
この種のシステムの移送キャリッジは、車両ボディが浸漬槽を通して案内されて、移送キャリッジから取り出された後に、浸漬処理設備の入口へ戻されなければならない。移送キャリッジは、浸漬処理設備の出口からその入口へ戻る、車両ボディを装填されていない帰路上で、車両ボディを伴って浸漬処理設備を通過する際に必要とするのと、同一の空間を要求する。移送キャリッジを戻るように案内するための組込み空間は、それに応じて大きく寸法設計されなければならない。
【0006】
さらに、市場で知られた対象における、車両ボディの回転運動ないし揺動運動に関する移送運動学は、水平の回転軸を中心とする回転ないし揺動に限定されている。より良好な処理結果、特に塗装結果を得るために、浸漬槽内の車両ボディの運動自由度を高める要請がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】独国特許公報DE19641048C2
【特許文献2】独国特許公報DE10103837B4
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、冒頭で挙げた種類のオーバーヘッド移送システムを、一方で処理すべき対象の運動自由度とそれに伴って移動運動学の可変性が高められ、他方では対象が固定されていない移送キャリッジのスペース需要を減少させることができるように、形成することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は、本発明によれば、
d)固定装置が、垂直の回転軸を中心に回転可能に軸承されている、
ことによって解決される。
【0010】
本発明によれば、処理すべき対象のための垂直の回転運動が可能であって、それが、たとえば浸漬槽を通過する際の、対象の運動シーケンス全体に、新しい可能性を開く。同時に、垂直の回転軸は、固定装置を、それに対象が固定されていない場合に、局所的な条件に、場合によってはより良好に適合された位置へ移動させる可能性を提供する。
【0011】
少なくとも1つの対象のために、水平の直線運動と垂直の回転軸を中心とする回転の重ね合わせとなる運動シーケンスが得られると、特に効果的である。
【0012】
このコンセプトは、対象が水平の直線運動をする場合に、常に垂直の回転軸を中心とする回転も行われることを、意味しない。対象は、垂直の回転軸を中心に回転する場合には、それだけ少なく水平方向に移動すれば済む。オーバーヘッド移送システムが、運動自由度を同時に利用する可能性を提供すれば、十分である。また、固定装置がさらにより広い運動自由度において移動できることも、排除されない。これは特に、装填されていない移送キャリッジを案内する場合のスペース削減に関して有用であろう。
【0013】
好ましくは、移送キャリッジは、垂直に走行可能なキャリッジを有しており、そのキャリッジによって固定装置が一緒に案内される。このようにして、固定装置ないしそれに固定された対象に、さらに広い運動自由度が付加される。
【0014】
これは、移送キャリッジが、垂直方向に伸縮可能な伸縮装置を有し、それがキャリッジを案内する場合に、効果的なやり方で実現することができる。
【0015】
移送キャリッジが、駆動手段として、レール上で動力で走行可能な駆動キャリッジを有していると、効果的である。この形態によって、他の適用領域からすでに知られているような、駆動キャリッジと駆動レールを使用することが、可能になる。それによって、そこですでに使用されている、すでにテストされて実証されている、すべてのテクノロジーと制御方法が利用される。
【0016】
この場合において、伸縮装置は、垂直の回転軸を中心に回転可能に、移送キャリッジの駆動キャリッジに軸承することができる。
【0017】
対象のための運動シーケンスの特に大きい可変性は、固定装置がさらに、水平の回転軸を中心に回転可能に軸承されている場合に、得られる。従って、対象のための垂直に走行可能なキャリッジと組み合わせて、水平の直線運動、垂直の直線運動、垂直の回転軸を中心とする回転の重ね合わせとなる、運動シーケンスを得ることができる。水平の回転軸も実現されている場合には、対象のための垂直に走行可能なキャリッジと組み合わせて、水平の直線運動、垂直の直線運動、垂直の回転軸を中心とする回転および水平の回転軸を中心とする回転の重ね合わせとなる、運動シーケンスを得ることができる。ここでもこれは、運動シーケンスが常にこの種の重ね合わせであることを、意味しない。運動自由度が同時に利用できれば、十分である。水平の回転軸は、好ましくは、移送キャリッジの運動方向に対してほぼ垂直に延びている。
【0018】
本発明の課題は、さらに、上述した要請を考慮する、冒頭で挙げた種類の浸漬処理設備を提供することである。
【0019】
この課題は、冒頭で挙げた種類の浸漬処理設備において、
c)移送設備が、請求項1から7のいずれか1項に記載のオーバーヘッド移送システムである、
ことによって解決される。
【0020】
このように形成された浸漬処理設備の利点は、オーバーヘッド移送システムについて上述した利点に、意味に従って相当する。
【0021】
以下、添付の図面を用いて、本発明の実施例を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】車両ボディのための電気泳動浸漬塗装設備の側面図である。
【図2】図1の浸漬塗装設備において塗装すべき車両ボディを移送するために使用されるような、伸縮アームを有する移送キャリッジを、設備の出口からその入口へ戻す工程の間に、1つの視線方向から示す斜視図である。
【図3】図1の浸漬塗装設備において塗装すべき車両ボディを移送するために使用されるような、伸縮アームを有する移送キャリッジを、設備の出口からその入口へ戻す工程の間に、別の視線方向から示す斜視図である。
【図4】図1の電気泳動浸漬塗装設備において使用されるような、移送キャリッジの駆動装置の詳細を拡大した縮尺寸法で示す斜視図であって、伸縮アームを回転させるための機構が示されている。
【図5】伸縮アームのサイドガイドの詳細を、1つの視線方向から拡大した縮尺寸法で示す斜視図である。
【図6】伸縮アームのサイドガイドの詳細を、別の視線方向から拡大した縮尺寸法で示す斜視図である。
【図7】図1の浸漬塗装設備において使用されるような、移送キャリッジの固定装置の詳細を、拡大した縮尺寸法で示す斜視図である。
【図8A】図1の電気泳動浸漬塗装設備の移送キャリッジにおいて使用されるような、伸縮アームの第1の実施例を1つの視点で示している。
【図8B】図1の電気泳動浸漬塗装設備の移送キャリッジにおいて使用されるような、伸縮アームの第1の実施例を1つの視点で示している。
【図8C】図1の電気泳動浸漬塗装設備の移送キャリッジにおいて使用されるような、伸縮アームの第1の実施例を1つの視点で示している。
【図8D】図1の電気泳動浸漬塗装設備の移送キャリッジにおいて使用されるような、伸縮アームの第1の実施例を1つの視点で示している。
【図8E】図1の電気泳動浸漬塗装設備の移送キャリッジにおいて使用されるような、伸縮アームの第1の実施例を1つの視点で示している。
【図9A】図1の電気泳動浸漬塗装設備において使用されるような、伸縮アームの第2の実施例を1つの視点で示している。
【図9B】図1の電気泳動浸漬塗装設備において使用されるような、伸縮アームの第2の実施例を1つの視点で示している。
【図9C】図1の電気泳動浸漬塗装設備において使用されるような、伸縮アームの第2の実施例を1つの視点で示している。
【図9D】図1の電気泳動浸漬塗装設備において使用されるような、伸縮アームの第2の実施例を1つの視点で示している。
【図9E】図1の電気泳動浸漬塗装設備において使用されるような、伸縮アームの第2の実施例を1つの視点で示している。
【図10】図1の電気泳動浸漬塗装設備の浸漬槽内へ車両ボディを浸漬させる場合の1つの位相を示す斜視図である。
【図11】図1の電気泳動浸漬塗装設備の浸漬槽内へ車両ボディを浸漬させる場合の1つの位相を示す斜視図である。
【図12】図1の電気泳動浸漬塗装設備の浸漬槽内へ車両ボディを浸漬させる場合の1つの位相を示す斜視図である。
【図13】図1の電気泳動浸漬塗装設備の浸漬槽内へ車両ボディを浸漬させる場合の1つの位相を示す斜視図である。
【図14】図1の電気泳動浸漬塗装設備の浸漬槽内へ車両ボディを浸漬させる場合の1つの位相を示す斜視図である。
【図15】図1の電気泳動浸漬塗装設備の浸漬槽内へ車両ボディを浸漬させる場合の1つの位相を示す斜視図である。
【図16】図1の電気泳動浸漬塗装設備の浸漬槽内へ車両ボディを浸漬させる場合の1つの位相を示す斜視図である。
【図17】図1の電気泳動浸漬塗装設備の浸漬槽内へ車両ボディを浸漬させる場合の1つの位相を示す斜視図である。
【図18】図1の電気泳動浸漬塗装設備の浸漬槽内へ車両ボディを浸漬させる場合の1つの位相を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1から図18には、電気泳動浸漬塗装設備200が示されている。これは、液状の塗料で満たされた浸漬槽202を有している。車両ボディ204と、車両ボディ204の移動ルートに沿って配置されて、見やすくする理由から図示されていない陽極との間に形成れる電場内で、色素粒子が車両ボディ204上へ移動して、それに沈積する。
【0024】
車両ボディ204は、移送システム206を用いて設備を通り、特に浸漬槽202とその中にある塗料を通って案内される。移送システム206は、多数の移送キャリッジ208を有しており、その移送キャリッジ自体は、駆動装置210と支持キャリッジ212を有しており、それらは他の、後に詳細に説明する伸縮装置214を介して互いに結合されている。
【0025】
浸漬槽202の上方に、従来の懸吊運搬装置において使用されるような、I字プロフィールを有する駆動レール216が延びている。駆動レール216の下方かつ浸漬槽202の上方に、駆動レール216に対して平行に、上方へ向かって開放したU字プロフィールを有するガイドレール218が延びている。
【0026】
車両ボディ204が移送システム206によって移送される、移動方向が、図1に矢印220で示されている。駆動レール216とガイドレール218は、浸漬槽202の中心に関して、移動方向220に対して垂直の方向に外側へ向かって変位されており、ガイドレール218は、駆動レール216よりもさらに外側に延びている。
【0027】
駆動装置210は、原則的に、従来の懸吊運搬装置から知られた構造である。この駆動装置210の各々は、移動方向220において先を行く、専門用語で「リーダー」と称されるシャーシ222と、移動方向220において後を追う、専門用語で「フォロワー」と称される、他のシャーシ224を有している。リーダー222とフォロワー224は、既知のように、ガイドおよび支持ローラを有しており、同ローラは、ここではそのものとして参照符号を持たず、かつ駆動レール216のI字プロフィールの種々の面に接して転動する。リーダー222ないしフォロワー224のローラの少なくとも1つは、駆動ローラとして用いられ、そのために電動機226ないし228によって回転可能である。場合によっては、リーダー222のみが駆動されれば、十分な場合もある。駆動装置210を介して駆動される移送キャリッジ208は、場合によっては、移送ルートを場所的な条件に適合させるために、駆動レール216が所定の領域内に傾斜して延びなければならない場合に、勾配を克服することもできる。
【0028】
各駆動装置210のリーダー222とフォロワー224は、結合フレーム230によって互いに結合されており、その結合フレームは、特に図2〜4でよく見ることができる。
【0029】
結合フレーム230は、既知のように、制御装置232を支持しており、その制御装置は、浸漬塗装設備200の中央の制御と、かつ場合によっては浸漬塗装設備200内に存在する他の駆動装置210の制御装置232と、通信することができる。このようにして、種々の移送キャリッジ208のほぼ独立した運動が可能である。
【0030】
駆動装置210を支持キャリッジ212と結合する伸縮装置214は、3つの部分からなる、垂直に延びる伸縮アーム234を有しており、その長さが調節可能である。この伸縮アームは、その上方の端部において前側で、外歯切り238を有する歯車236と相対回動不能に結合されているので、伸縮アーム234の長手軸と、歯車236の回転軸240(図4を参照)が一致し、あるいは少なくとも互いに密着している。歯車236自体は、リーダー222とフォロワー224の間のほぼ中央において、回転軸240が垂直に延びるように、結合フレーム230に回転可能に軸承されている。
【0031】
歯車236は、駆動装置210の制御装置232と通信する操作モータ242によって駆動することができ、そのためにその操作モータは、歯車236の外歯切り238に歯合する歯車244を駆動する。それによって伸縮アーム234は、回転軸240を中心にそれぞれピニオン244の回転方向に応じて、時計方向にも反時計方向にも回転することができる。
【0032】
操作モータ242とピニオン244は、見やすくするために、図4のみに示されており、そのために結合フレーム230は、そこでは部分的に切り欠かれている。
【0033】
伸縮アーム234は、上方の伸縮部材246を有している。その伸縮部材が、歯車236から離れた、横支持体248に設けられた端部に、ガイドローラ250を支持しており、そのガイドローラは、垂直の回転軸252を中心に回転可能であって、かつガイドレール218のU字プロフィール内で走行し、それが特に図5〜6に示されている。このようにして、移動方向220に垂直に立つ平面内で、伸縮アーム234が垂直から傾くことが防止されている。
【0034】
伸縮アーム234は、上方の伸縮部材246の他に中央の伸縮部材254と下方の伸縮部材256を有している。伸縮部材246、254および256は、互いに対して摺動可能であって、それについては下で再度もっと詳細に説明する。
【0035】
下方の伸縮部材256は、中央の伸縮部材254内で摺動可能なキャリッジ256として用いられ、以下においてはキャリッジと称する。キャリッジ256の下方の自由な終端領域258に、回転ピン260が軸承されている。この回転ピンが、図2〜3に示す水平の回転軸262を定める。回転ピン260は、キャリッジ256によってその下方の終端領域258内で連動されるギアモータ264(図7を参照、カバーが除かれている)を介して、回転軸262を中心に両回転方向に回転することができ、そのギアモータは、移送キャリッジ208の制御装置232と通信する。
【0036】
特に図2、3および7においてよく認識できるように、支持キャリッジ212は、中空プロフィールとして形成されて、互いに対して平行に走行する、矩形の断面を有する2つの長手補強材266と268を有しており、それらは中央において、円形の断面を有する横トラバース270によって結合されている。キャリッジ256の回転ピン260は、支持キャリッジ212の長手補強材266の外側面と相対回動不能に結合されており、回転ピン260と支持キャリッジ212の横補強材270は、互いに対して同軸に延びている。長手補強材266と268の端面に固定手段272が取り付けられており、その固定手段によって、塗装すべき車両ボディ204は、それ自体知られたやり方で、支持キャリッジ212に取り外し可能に固定することができる。
【0037】
キャリッジ266は、回転ピン260を介して、従って、移送キャリッジ208が全体としてL字形状のブラケットとして形成されている側においてのみ、支持キャリッジ212を支持している。移送キャリッジ208は、駆動レール216に沿って移動する間、支持キャリッジ212が固定手段272によって、駆動レール216に対して側方に変位して配置されているように、方向付けすることができる。それによって、移送システム206のどのコンポーネントも、たとえば特に駆動レール216または駆動装置210が、空間内で固定手段272を有する支持キャリッジ212を越えて垂直に配置されないことを、保証することができる。従って移送システム206のコンポーネントから落下するごみ、たとえば埃、オイルなどにより車両ボディ204が汚れる危険は、減少されている。
【0038】
上述したように、伸縮アーム234の伸縮部材246、254および256は、互いに対して移動することができる。そのために個々の伸縮部材246、254および256の横断面は、中央の伸縮部材254が上方の伸縮部材246内で、そしてキャリッジ256が中央の伸縮部材254内で案内されて摺動できるように、互いに相補的に形成されている。
【0039】
図8に一部破断して示す、伸縮アーム234の第1の実施例において、中央の伸縮部材254はその、常に上方の伸縮部材246内にある、上方の端部の端面に、操作モータ274を支持しており、その操作モータは、移送キャリッジ208の制御装置232と通信し、かつ駆動ピニオン276を2つの回転方向に駆動することができる。チェーン278が、操作モータ274の駆動ピニオン276と循環ピニオン280の両方を介して延びており、その循環ピニオンは、中央の伸縮部材254の下方の端部に軸承されており、その端部は、上方の伸縮部材246から下方へ向かって突出している。チェーン278は、図8Aにおいて左の張り部分282において、結合ボルト284と結合されており、その結合ボルトが、上方の伸縮部材246に移動できないように取り付けられている。チェーン278の、対向する第2の張り部分286は、結合ボルト288と結合されており、その結合ボルトが、伸縮アーム234のキャリッジ256と移動できないように結合されている。キャリッジ256の結合ボルト288は、中央の伸縮部材254の前壁に設けられたスリット290内で案内されており、それに対して上方の伸縮部材246の結合ボルト278は、中央の伸縮部材254の側方を通過するように案内されている。
【0040】
操作モータ274が移送キャリッジ208の制御装置232によって、駆動ピニオン276が図8A内で時計方向に回転するように、駆動された場合に、キャリッジ256と結合された結合ボルト288がチェーン278によって下方へ連動されるので、キャリッジ256が中央の伸縮部材254から引き出される。同時に、中央の伸縮部材254が、上方の伸縮部材246に固定された、移動できない結合ボルト284に基づいて、上方の伸縮部材246から引き出される。このようにして、伸縮アーム236が、全体として引き出される。伸縮アーム236は、駆動ピニオン276が操作モータ274によって、図8Aにおいて反時計方向に移動するように回転されることによって、再び引き込むことができる。
【0041】
伸縮アーム236の代替的な形態が、図9に一部破断して示されている。そこでは、チェーン278は、操作モータ274の駆動ピニオン276と第1の結合ピニオン292および第2の結合ピニオン294を介して走行する。結合ピニオン292と294は、同軸にそれぞれ平歯車を支持しており、それらは、図9を見ても認識できない。結合ピニオン292に設けられた平歯車の外歯切りが、伸縮アーム234の上方の伸縮部材246と移動できないように結合されたラック296に歯合し、かつ中央の伸縮部材254の上方の領域内に配置されている。それに対して結合ピニオン294は、中央の伸縮部材254の下方の領域内に配置されている;それに取り付けられている平歯車の歯切りが、伸縮アーム234のキャリッジ256と移動できないように結合されたラック298に歯合する。そのために、結合ピニオン294に設けられた、図では認識できない平歯車が、中央の伸縮部材254の側面を通って延びている。
【0042】
操作モータ274が移送キャリッジ208の制御装置232によって、駆動ピニオン276が図8A内で反時計方向に回転するように駆動された場合には、結合ピニオン292と294も、反時計方向に回転される。それに固定されている平歯車が、ラック296ないし298内へ歯合することによって、伸縮アーム234の中央の伸縮部材254が上方の伸縮部材246から、そして同時にキャリッジ256が中央の伸縮部材254から引き出される。
【0043】
チェーンピニオン276が、時計方向に回転された場合には、キャリッジ256が中央の伸縮部材254内へ、そして同時にそれが上方の伸縮部材246内へ引き込まれる。
【0044】
ここに図示されていない展開において、伸縮部材246と254およびキャリッジ256上昇/下降運動は、スラストチェーンおよび類似の装置によっても、もたらすことができる。
【0045】
上述した電気泳動浸漬塗装設備の機能方法は、以下のごとくである:
【0046】
塗装すべき車両ボディ204が、図1において実質的に水平の方向付けで(矢印220を参照)、前処理ステーションから供給され、その前処理ステーション内で車両ボディ204は、既知のように洗浄、脱脂などによって塗装プロセスに合わせて準備される。
【0047】
キャリッジ256は、その一番上の位置へ移動され、そこでは伸縮アーム234の伸縮部材256、254および256は、互いに引き込まれているので、伸縮アームはその最小可能な長さを有している。それに応じた位置が、図10に斜視図で示されている。該当する移送キャリッジ208の駆動装置210は、電動機226と228によって駆動レール216に沿って浸漬槽202上へ供給され、付属の支持キャリッジ212が、伸縮装置214を介して連動される。伸縮アーム234の上方の伸縮部材246に設けられたガイドローラ250が、ガイドレール218のU字プロフィール内で走行するが、それは重量吸収には用いられない。移送キャリッジ208とそれに固定された車両ボディ204の重量は、駆動装置210を介して完全に駆動レール216によって支持される。
【0048】
移送キャリッジ208が、浸漬槽202の入口側にある前壁に接近すると、操作モータ274によって伸縮アーム234が上述したやり方で引き出されることによって、移送キャリッジ208を介して車両ボディ204を支持するキャリッジ256が、だんだんと下降される。車両ボディ204のフロントが、浸漬槽202の前壁を越えて浸漬槽202の内部へ突出するとすぐに、同時にギアモータ264によって回転ピン260とそれに伴って、固定手段272とそれに固定された車両ボディ204とを有する支持キャリッジ212が、回転軸262を中心に回転される。従ってこの領域において、車両ボディ204の運動全体は、3つの運動、すなわち駆動レール216に沿った水平の直線運動(矢印220)、回転軸240に沿った、従って伸縮アーム234の長手軸にも沿った、垂直の直線運動および、図1の視野において時計方向に行われる、回転ピン260の回転軸262を中心とする回転運動、の重ね合わせと考えられる。その際に、車両ボディ204は、浸漬槽202の入口側の前壁を越えて「回る」。それに応じた位置が、図11に斜視図で示されている。
【0049】
キャリッジ256の下降が続行され、かつ回転ピン260の回転軸262を中心とする車両ボディ204の回転が続行されるなかで、最終的に、図12に示すように、車両ボディ204が実質的に垂直になる位置が達成される。車両ボディ204は、まだ浸漬槽202の入口側の前壁の比較的近傍にある。移送キャリッジ208がさらに移動され、それに伴って車両ボディ204の中心と浸漬槽202の入口側の前壁との間の間隔が増大する程度において、回転ピン260とそれに伴って車両ボディ204がさらに時計方向に回転されるので、図13に示すように、車両ボディ202は仰向けになる。水平方向における移動速度と回転速度は、この浸漬運動の際に車両ボディ204が、浸漬槽202の入口側の前壁からほぼ同一の間隔を維持するように、互いに対して調整することができる。
【0050】
遅くとも、車両ボディ204が完全に「仰向け」になって、それに伴って再び水平に位置する、図14に示す瞬間には、車両ボディ204は完全に液状の塗料内に浸漬されている。車両ボディ204は、まず、この位置において移送キャリッジ208によって浸漬槽202を通して、浸漬槽202の出口側の前壁により近づくまで、さらに移送される。
【0051】
その後、車両ボディ204の引上げ工程が開始される。これがまた、3つの運動、すなわち移送方向220における水平の直線運動、回転軸240に沿った、従って伸縮アーム234の長手軸にも沿った垂直運動および回転ピン260の回転軸262を中心とする回転運動、の重ね合わせである。まず、車両ボディ204は、回転ピン260が時計方向にさらに回転することによって、図15〜16に示すように、垂直にされる。その後、車両ボディ204は、伸縮アーム234が引き込まれ、それに伴ってキャリッジ256が上昇し、かつ回転運動が続行されるなかで、浸漬槽202の出口側の前壁を越えて回り、その後新たに移送方向220において浸漬槽202の後方で、新しく塗装された車両ボディ204の水平の位置が達成され、その位置が図18に示されている。
【0052】
上述した浸漬塗装設備200は、もっと小さい対象(小物品)を塗装するために使用することもできる。そのために、たとえばそれとして示されていない保持バスケットを、支持キャリッジ212に固定することができ、その保持バスケットが、図示されていない小片の、塗装すべき対象を、たとえばばらで有している。なお、この種の保持バスケットは、その装填開口部が下方を向いて、コーティングすべき対象が落ちてしまうような、浸漬槽202を通る位置で案内されることはない。
【0053】
上述したように、伸縮アーム234は、操作モータ242を介して垂直の回転軸240を中心に回転することができる。図1と図10〜18に示す運動学において、伸縮アーム234は、その垂直の回転軸240に関して、キャリッジ256に設けられた回転ピン260が、その水平の回転軸262が移動方向220に対して垂直になるように方向付けされる、位置をとる。伸縮アーム234は、操作モータ242を然るべく停止させることによって、この位置に保持される。
【0054】
垂直の回転軸240を中心とする伸縮アーム234の回転可能性は、図1と図10〜18に示す運動学において、車両ボディ204が浸漬槽202を離れて、それ移行の加工のために移送キャリッジ208によって取り出された場合に、初めて生じる。
【0055】
移送キャリッジ208は、その後、これから塗装すべき車両ボディ204を新たに装填することができるようにするために、再び浸漬塗装設備200の入口へ戻されなければならない。そのためには、操作モータ242が操作されて、それを介して伸縮アーム234の上方の伸縮部材246に設けられた歯車236が回転されることによって、キャリッジ256に設けられた回転ピン260が移動方向220に対して平行に方向付けされるまで、支持キャリッジ212が垂直の回転軸240を中心に、駆動装置212の結合フレーム230に対して回転される。さらに、支持キャリッジ212は、ギアモータ264を介して回転ピン260が然るべく回転されることによって、その長手補強材266と268が垂直になる位置へ移動される。この位置が、図2〜3に示されている。図10には、移送キャリッジ208が見られ、その移送キャリッジは、駆動レール216に対して平行に延びて、見ることのできないレールカーブ片を介してこの駆動レールと結合されている、駆動レール216’上の「復帰位置」において、浸漬塗装設備200の入口へ戻される。
【0056】
移送キャリッジ208を駆動レール216から駆動レール216’へ引き渡すことは、横移動を介して行うこともでき、そのために駆動レール216、216’を結合するレールカーブ片が必要になることはない。
【0057】
支持キャリッジ212とその垂直位置が、駆動装置210に対して回転することによって、浸漬塗装設備200の出口からその入口への帰路における移送キャリッジ208のためのスペース需要が減少される。
【0058】
上で図10〜18を用いて説明した、浸漬槽202を通過する際の車両ボディ204の移動シーケンスは、単なる例である。移送キャリッジ208の構造的形態は、それぞれ車両ボディ3の種類に適合させることのできる、他の多数の運動学を許す。たとえば、車両ボディ204を、「屋根を上」にして浸漬槽202を通して案内することができる。
【0059】
代替的に、支持キャリッジ212の回転軸262を、浸漬槽202内にある液体の液面上ぎりぎりで案内することが、可能である。この場合において、車両ボディは、「屋根を下」にして浸漬槽202を通して案内される。、支持キャリッジ212も、キャリッジ256も浴液と接触しないようにすることができ、それによって浴液が1つの浸漬槽から次の浸漬槽へと引きずられ、かつ潤滑剤が浸漬槽内へ持ち込まれる危険が減少される。
【0060】
たとえば、車両ボディ204が、浸漬槽202を通して案内される場合に、垂直の回転軸240によって設定される他の自由度を利用することも可能である。すなわち、車両ボディ204は、浸漬槽202が然るべく設計されている場合に、浸漬槽を通って横方向に案内することができ、図10〜18に示すように、縦方向には案内されない。また、伸縮アーム234は、垂直軸240を中心に、回転ピン260ないしその回転軸262が移動方向220と0°と90°の間の角度を形成する距離だけ、回転することもできる。また、車両ボディ204が浸漬槽202を通して案内される間、伸縮アーム234は、垂直の回転軸240を中心に双方向に回転することができ、それによって浸漬槽202内で車両ボディ204の「ローリング」が得られる。
【0061】
従って車両ボディ204のために、4つの運動、すなわち水平の直線運動(運動方向220に従う)、回転軸240に沿った、従って伸縮234の長手軸にも沿った、垂直の直線運動、回転ピン260の水平の回転軸262を中心とする回転運動および伸縮アーム234の垂直の回転軸240を中心とする回転運動、の重ね合わせとして理解できる、移動シーケンスを得ることができる。
【0062】
懸吊運搬システムとして形成された移送システム206は、他のコンセプトの設備において必要とされるような、浸漬槽202の右および/または左に他の構造を必要としない。それによって、浸漬塗装設備200は、全体として比較的細く抑えることができる。
【0063】
支持キャリッジ212を側方で軸承することによって、さらに、移送キャリッジ208の他の構成部品によって車両ボディ204が陰になることがなく、陰になることは、浸漬槽内で、適切な運動学および/または浸漬槽内のより長い滞留時間によってそれなりに複雑に補償されなければならない。
【0064】
浸漬槽を通して車両ボディ204を案内する場合に、キャリッジ256の、水平の回転ピン262を支持する、下方の終端領域258が、浴液内へ下降される。それによって垂直の回転軸260を、支持キャリッジ212によって収容される車両ボディ204の重心の近傍に配置することができる。それが、回転軸が車両ボディの重心から比較的離れている、既知のシステムにおいてそうであるよりも、車両ボディのための移動シーケンスにおいて、より良好な力分布をもたらす。
【技術分野】
【0001】
本発明は、
a)固定装置を有し、その固定装置に少なくとも1つの対象が固定可能である、少なくとも1つの移送キャリッジと、
b)移送キャリッジを支持する少なくとも1つのレールと、
c)レールに沿って移送キャリッジを走行させる、少なくとも1つの駆動手段と、
を有する、表面処理設備内で対象を移送するため、特に車両ボディを移送するためのオーバーヘッド移送システムに関する。
【0002】
本発明は、さらに、
a)処理液で充填することができ、その処理液内に処理すべき対象、特に車両ボディを浸漬することができる、少なくとも1つの浸漬槽と、
b)処理すべき対象を浸漬槽へ近づけ、浸漬槽の内部空間内へ移動させ、浸漬槽から取り出して、その浸漬槽から離れるように移動させることができる、移送設備と、
を有する、浸漬処理設備に関する。
【背景技術】
【0003】
車両ボディのための浸漬処理設備内で使用され、たとえば特許文献1から知られているような、市場から知られたシステムにおいて、固定装置は、移動方向に対して水平と垂直に延びる回転軸を中心に回転することができる。処理すべき車両ボディを、液状の塗料で満たされた浸漬槽内へ挿入するために、処理すべき車両ボディは、純粋な並進運動と水平の回転軸を中心とする純粋な回転運動を重ね合わせて移動される。その場合に並進の移動方向に対する車両ボディの基本方向付けは、水平の回転軸を中心とするその回転を別にして、変化しない;通常、車両ボディの長手軸と移動方向は、水平の平面への投影において常に同一の角度を形成する。
【0004】
浸漬処理設備内で車両ボディの移送に使用される、特許文献2から知られた、他のシステムにおいては、車両ボディは付加的に垂直運動で上昇またか下降することができる。この場合において、車両ボディのために、水平の直線運動、垂直の直線運動および水平の回転軸を中心とする回転の重ね合わせとなる、運動シーケンスを得ることができる。その場合に車両ボディは、さらに、垂直運動によって浸漬槽内へ下降した後に、水平の回転軸を中心として回転することもできる。ここでも、並進の移動方向に対する車両ボディの基本方向付けは、変化しない。
【0005】
この種のシステムの移送キャリッジは、車両ボディが浸漬槽を通して案内されて、移送キャリッジから取り出された後に、浸漬処理設備の入口へ戻されなければならない。移送キャリッジは、浸漬処理設備の出口からその入口へ戻る、車両ボディを装填されていない帰路上で、車両ボディを伴って浸漬処理設備を通過する際に必要とするのと、同一の空間を要求する。移送キャリッジを戻るように案内するための組込み空間は、それに応じて大きく寸法設計されなければならない。
【0006】
さらに、市場で知られた対象における、車両ボディの回転運動ないし揺動運動に関する移送運動学は、水平の回転軸を中心とする回転ないし揺動に限定されている。より良好な処理結果、特に塗装結果を得るために、浸漬槽内の車両ボディの運動自由度を高める要請がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】独国特許公報DE19641048C2
【特許文献2】独国特許公報DE10103837B4
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、冒頭で挙げた種類のオーバーヘッド移送システムを、一方で処理すべき対象の運動自由度とそれに伴って移動運動学の可変性が高められ、他方では対象が固定されていない移送キャリッジのスペース需要を減少させることができるように、形成することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は、本発明によれば、
d)固定装置が、垂直の回転軸を中心に回転可能に軸承されている、
ことによって解決される。
【0010】
本発明によれば、処理すべき対象のための垂直の回転運動が可能であって、それが、たとえば浸漬槽を通過する際の、対象の運動シーケンス全体に、新しい可能性を開く。同時に、垂直の回転軸は、固定装置を、それに対象が固定されていない場合に、局所的な条件に、場合によってはより良好に適合された位置へ移動させる可能性を提供する。
【0011】
少なくとも1つの対象のために、水平の直線運動と垂直の回転軸を中心とする回転の重ね合わせとなる運動シーケンスが得られると、特に効果的である。
【0012】
このコンセプトは、対象が水平の直線運動をする場合に、常に垂直の回転軸を中心とする回転も行われることを、意味しない。対象は、垂直の回転軸を中心に回転する場合には、それだけ少なく水平方向に移動すれば済む。オーバーヘッド移送システムが、運動自由度を同時に利用する可能性を提供すれば、十分である。また、固定装置がさらにより広い運動自由度において移動できることも、排除されない。これは特に、装填されていない移送キャリッジを案内する場合のスペース削減に関して有用であろう。
【0013】
好ましくは、移送キャリッジは、垂直に走行可能なキャリッジを有しており、そのキャリッジによって固定装置が一緒に案内される。このようにして、固定装置ないしそれに固定された対象に、さらに広い運動自由度が付加される。
【0014】
これは、移送キャリッジが、垂直方向に伸縮可能な伸縮装置を有し、それがキャリッジを案内する場合に、効果的なやり方で実現することができる。
【0015】
移送キャリッジが、駆動手段として、レール上で動力で走行可能な駆動キャリッジを有していると、効果的である。この形態によって、他の適用領域からすでに知られているような、駆動キャリッジと駆動レールを使用することが、可能になる。それによって、そこですでに使用されている、すでにテストされて実証されている、すべてのテクノロジーと制御方法が利用される。
【0016】
この場合において、伸縮装置は、垂直の回転軸を中心に回転可能に、移送キャリッジの駆動キャリッジに軸承することができる。
【0017】
対象のための運動シーケンスの特に大きい可変性は、固定装置がさらに、水平の回転軸を中心に回転可能に軸承されている場合に、得られる。従って、対象のための垂直に走行可能なキャリッジと組み合わせて、水平の直線運動、垂直の直線運動、垂直の回転軸を中心とする回転の重ね合わせとなる、運動シーケンスを得ることができる。水平の回転軸も実現されている場合には、対象のための垂直に走行可能なキャリッジと組み合わせて、水平の直線運動、垂直の直線運動、垂直の回転軸を中心とする回転および水平の回転軸を中心とする回転の重ね合わせとなる、運動シーケンスを得ることができる。ここでもこれは、運動シーケンスが常にこの種の重ね合わせであることを、意味しない。運動自由度が同時に利用できれば、十分である。水平の回転軸は、好ましくは、移送キャリッジの運動方向に対してほぼ垂直に延びている。
【0018】
本発明の課題は、さらに、上述した要請を考慮する、冒頭で挙げた種類の浸漬処理設備を提供することである。
【0019】
この課題は、冒頭で挙げた種類の浸漬処理設備において、
c)移送設備が、請求項1から7のいずれか1項に記載のオーバーヘッド移送システムである、
ことによって解決される。
【0020】
このように形成された浸漬処理設備の利点は、オーバーヘッド移送システムについて上述した利点に、意味に従って相当する。
【0021】
以下、添付の図面を用いて、本発明の実施例を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】車両ボディのための電気泳動浸漬塗装設備の側面図である。
【図2】図1の浸漬塗装設備において塗装すべき車両ボディを移送するために使用されるような、伸縮アームを有する移送キャリッジを、設備の出口からその入口へ戻す工程の間に、1つの視線方向から示す斜視図である。
【図3】図1の浸漬塗装設備において塗装すべき車両ボディを移送するために使用されるような、伸縮アームを有する移送キャリッジを、設備の出口からその入口へ戻す工程の間に、別の視線方向から示す斜視図である。
【図4】図1の電気泳動浸漬塗装設備において使用されるような、移送キャリッジの駆動装置の詳細を拡大した縮尺寸法で示す斜視図であって、伸縮アームを回転させるための機構が示されている。
【図5】伸縮アームのサイドガイドの詳細を、1つの視線方向から拡大した縮尺寸法で示す斜視図である。
【図6】伸縮アームのサイドガイドの詳細を、別の視線方向から拡大した縮尺寸法で示す斜視図である。
【図7】図1の浸漬塗装設備において使用されるような、移送キャリッジの固定装置の詳細を、拡大した縮尺寸法で示す斜視図である。
【図8A】図1の電気泳動浸漬塗装設備の移送キャリッジにおいて使用されるような、伸縮アームの第1の実施例を1つの視点で示している。
【図8B】図1の電気泳動浸漬塗装設備の移送キャリッジにおいて使用されるような、伸縮アームの第1の実施例を1つの視点で示している。
【図8C】図1の電気泳動浸漬塗装設備の移送キャリッジにおいて使用されるような、伸縮アームの第1の実施例を1つの視点で示している。
【図8D】図1の電気泳動浸漬塗装設備の移送キャリッジにおいて使用されるような、伸縮アームの第1の実施例を1つの視点で示している。
【図8E】図1の電気泳動浸漬塗装設備の移送キャリッジにおいて使用されるような、伸縮アームの第1の実施例を1つの視点で示している。
【図9A】図1の電気泳動浸漬塗装設備において使用されるような、伸縮アームの第2の実施例を1つの視点で示している。
【図9B】図1の電気泳動浸漬塗装設備において使用されるような、伸縮アームの第2の実施例を1つの視点で示している。
【図9C】図1の電気泳動浸漬塗装設備において使用されるような、伸縮アームの第2の実施例を1つの視点で示している。
【図9D】図1の電気泳動浸漬塗装設備において使用されるような、伸縮アームの第2の実施例を1つの視点で示している。
【図9E】図1の電気泳動浸漬塗装設備において使用されるような、伸縮アームの第2の実施例を1つの視点で示している。
【図10】図1の電気泳動浸漬塗装設備の浸漬槽内へ車両ボディを浸漬させる場合の1つの位相を示す斜視図である。
【図11】図1の電気泳動浸漬塗装設備の浸漬槽内へ車両ボディを浸漬させる場合の1つの位相を示す斜視図である。
【図12】図1の電気泳動浸漬塗装設備の浸漬槽内へ車両ボディを浸漬させる場合の1つの位相を示す斜視図である。
【図13】図1の電気泳動浸漬塗装設備の浸漬槽内へ車両ボディを浸漬させる場合の1つの位相を示す斜視図である。
【図14】図1の電気泳動浸漬塗装設備の浸漬槽内へ車両ボディを浸漬させる場合の1つの位相を示す斜視図である。
【図15】図1の電気泳動浸漬塗装設備の浸漬槽内へ車両ボディを浸漬させる場合の1つの位相を示す斜視図である。
【図16】図1の電気泳動浸漬塗装設備の浸漬槽内へ車両ボディを浸漬させる場合の1つの位相を示す斜視図である。
【図17】図1の電気泳動浸漬塗装設備の浸漬槽内へ車両ボディを浸漬させる場合の1つの位相を示す斜視図である。
【図18】図1の電気泳動浸漬塗装設備の浸漬槽内へ車両ボディを浸漬させる場合の1つの位相を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1から図18には、電気泳動浸漬塗装設備200が示されている。これは、液状の塗料で満たされた浸漬槽202を有している。車両ボディ204と、車両ボディ204の移動ルートに沿って配置されて、見やすくする理由から図示されていない陽極との間に形成れる電場内で、色素粒子が車両ボディ204上へ移動して、それに沈積する。
【0024】
車両ボディ204は、移送システム206を用いて設備を通り、特に浸漬槽202とその中にある塗料を通って案内される。移送システム206は、多数の移送キャリッジ208を有しており、その移送キャリッジ自体は、駆動装置210と支持キャリッジ212を有しており、それらは他の、後に詳細に説明する伸縮装置214を介して互いに結合されている。
【0025】
浸漬槽202の上方に、従来の懸吊運搬装置において使用されるような、I字プロフィールを有する駆動レール216が延びている。駆動レール216の下方かつ浸漬槽202の上方に、駆動レール216に対して平行に、上方へ向かって開放したU字プロフィールを有するガイドレール218が延びている。
【0026】
車両ボディ204が移送システム206によって移送される、移動方向が、図1に矢印220で示されている。駆動レール216とガイドレール218は、浸漬槽202の中心に関して、移動方向220に対して垂直の方向に外側へ向かって変位されており、ガイドレール218は、駆動レール216よりもさらに外側に延びている。
【0027】
駆動装置210は、原則的に、従来の懸吊運搬装置から知られた構造である。この駆動装置210の各々は、移動方向220において先を行く、専門用語で「リーダー」と称されるシャーシ222と、移動方向220において後を追う、専門用語で「フォロワー」と称される、他のシャーシ224を有している。リーダー222とフォロワー224は、既知のように、ガイドおよび支持ローラを有しており、同ローラは、ここではそのものとして参照符号を持たず、かつ駆動レール216のI字プロフィールの種々の面に接して転動する。リーダー222ないしフォロワー224のローラの少なくとも1つは、駆動ローラとして用いられ、そのために電動機226ないし228によって回転可能である。場合によっては、リーダー222のみが駆動されれば、十分な場合もある。駆動装置210を介して駆動される移送キャリッジ208は、場合によっては、移送ルートを場所的な条件に適合させるために、駆動レール216が所定の領域内に傾斜して延びなければならない場合に、勾配を克服することもできる。
【0028】
各駆動装置210のリーダー222とフォロワー224は、結合フレーム230によって互いに結合されており、その結合フレームは、特に図2〜4でよく見ることができる。
【0029】
結合フレーム230は、既知のように、制御装置232を支持しており、その制御装置は、浸漬塗装設備200の中央の制御と、かつ場合によっては浸漬塗装設備200内に存在する他の駆動装置210の制御装置232と、通信することができる。このようにして、種々の移送キャリッジ208のほぼ独立した運動が可能である。
【0030】
駆動装置210を支持キャリッジ212と結合する伸縮装置214は、3つの部分からなる、垂直に延びる伸縮アーム234を有しており、その長さが調節可能である。この伸縮アームは、その上方の端部において前側で、外歯切り238を有する歯車236と相対回動不能に結合されているので、伸縮アーム234の長手軸と、歯車236の回転軸240(図4を参照)が一致し、あるいは少なくとも互いに密着している。歯車236自体は、リーダー222とフォロワー224の間のほぼ中央において、回転軸240が垂直に延びるように、結合フレーム230に回転可能に軸承されている。
【0031】
歯車236は、駆動装置210の制御装置232と通信する操作モータ242によって駆動することができ、そのためにその操作モータは、歯車236の外歯切り238に歯合する歯車244を駆動する。それによって伸縮アーム234は、回転軸240を中心にそれぞれピニオン244の回転方向に応じて、時計方向にも反時計方向にも回転することができる。
【0032】
操作モータ242とピニオン244は、見やすくするために、図4のみに示されており、そのために結合フレーム230は、そこでは部分的に切り欠かれている。
【0033】
伸縮アーム234は、上方の伸縮部材246を有している。その伸縮部材が、歯車236から離れた、横支持体248に設けられた端部に、ガイドローラ250を支持しており、そのガイドローラは、垂直の回転軸252を中心に回転可能であって、かつガイドレール218のU字プロフィール内で走行し、それが特に図5〜6に示されている。このようにして、移動方向220に垂直に立つ平面内で、伸縮アーム234が垂直から傾くことが防止されている。
【0034】
伸縮アーム234は、上方の伸縮部材246の他に中央の伸縮部材254と下方の伸縮部材256を有している。伸縮部材246、254および256は、互いに対して摺動可能であって、それについては下で再度もっと詳細に説明する。
【0035】
下方の伸縮部材256は、中央の伸縮部材254内で摺動可能なキャリッジ256として用いられ、以下においてはキャリッジと称する。キャリッジ256の下方の自由な終端領域258に、回転ピン260が軸承されている。この回転ピンが、図2〜3に示す水平の回転軸262を定める。回転ピン260は、キャリッジ256によってその下方の終端領域258内で連動されるギアモータ264(図7を参照、カバーが除かれている)を介して、回転軸262を中心に両回転方向に回転することができ、そのギアモータは、移送キャリッジ208の制御装置232と通信する。
【0036】
特に図2、3および7においてよく認識できるように、支持キャリッジ212は、中空プロフィールとして形成されて、互いに対して平行に走行する、矩形の断面を有する2つの長手補強材266と268を有しており、それらは中央において、円形の断面を有する横トラバース270によって結合されている。キャリッジ256の回転ピン260は、支持キャリッジ212の長手補強材266の外側面と相対回動不能に結合されており、回転ピン260と支持キャリッジ212の横補強材270は、互いに対して同軸に延びている。長手補強材266と268の端面に固定手段272が取り付けられており、その固定手段によって、塗装すべき車両ボディ204は、それ自体知られたやり方で、支持キャリッジ212に取り外し可能に固定することができる。
【0037】
キャリッジ266は、回転ピン260を介して、従って、移送キャリッジ208が全体としてL字形状のブラケットとして形成されている側においてのみ、支持キャリッジ212を支持している。移送キャリッジ208は、駆動レール216に沿って移動する間、支持キャリッジ212が固定手段272によって、駆動レール216に対して側方に変位して配置されているように、方向付けすることができる。それによって、移送システム206のどのコンポーネントも、たとえば特に駆動レール216または駆動装置210が、空間内で固定手段272を有する支持キャリッジ212を越えて垂直に配置されないことを、保証することができる。従って移送システム206のコンポーネントから落下するごみ、たとえば埃、オイルなどにより車両ボディ204が汚れる危険は、減少されている。
【0038】
上述したように、伸縮アーム234の伸縮部材246、254および256は、互いに対して移動することができる。そのために個々の伸縮部材246、254および256の横断面は、中央の伸縮部材254が上方の伸縮部材246内で、そしてキャリッジ256が中央の伸縮部材254内で案内されて摺動できるように、互いに相補的に形成されている。
【0039】
図8に一部破断して示す、伸縮アーム234の第1の実施例において、中央の伸縮部材254はその、常に上方の伸縮部材246内にある、上方の端部の端面に、操作モータ274を支持しており、その操作モータは、移送キャリッジ208の制御装置232と通信し、かつ駆動ピニオン276を2つの回転方向に駆動することができる。チェーン278が、操作モータ274の駆動ピニオン276と循環ピニオン280の両方を介して延びており、その循環ピニオンは、中央の伸縮部材254の下方の端部に軸承されており、その端部は、上方の伸縮部材246から下方へ向かって突出している。チェーン278は、図8Aにおいて左の張り部分282において、結合ボルト284と結合されており、その結合ボルトが、上方の伸縮部材246に移動できないように取り付けられている。チェーン278の、対向する第2の張り部分286は、結合ボルト288と結合されており、その結合ボルトが、伸縮アーム234のキャリッジ256と移動できないように結合されている。キャリッジ256の結合ボルト288は、中央の伸縮部材254の前壁に設けられたスリット290内で案内されており、それに対して上方の伸縮部材246の結合ボルト278は、中央の伸縮部材254の側方を通過するように案内されている。
【0040】
操作モータ274が移送キャリッジ208の制御装置232によって、駆動ピニオン276が図8A内で時計方向に回転するように、駆動された場合に、キャリッジ256と結合された結合ボルト288がチェーン278によって下方へ連動されるので、キャリッジ256が中央の伸縮部材254から引き出される。同時に、中央の伸縮部材254が、上方の伸縮部材246に固定された、移動できない結合ボルト284に基づいて、上方の伸縮部材246から引き出される。このようにして、伸縮アーム236が、全体として引き出される。伸縮アーム236は、駆動ピニオン276が操作モータ274によって、図8Aにおいて反時計方向に移動するように回転されることによって、再び引き込むことができる。
【0041】
伸縮アーム236の代替的な形態が、図9に一部破断して示されている。そこでは、チェーン278は、操作モータ274の駆動ピニオン276と第1の結合ピニオン292および第2の結合ピニオン294を介して走行する。結合ピニオン292と294は、同軸にそれぞれ平歯車を支持しており、それらは、図9を見ても認識できない。結合ピニオン292に設けられた平歯車の外歯切りが、伸縮アーム234の上方の伸縮部材246と移動できないように結合されたラック296に歯合し、かつ中央の伸縮部材254の上方の領域内に配置されている。それに対して結合ピニオン294は、中央の伸縮部材254の下方の領域内に配置されている;それに取り付けられている平歯車の歯切りが、伸縮アーム234のキャリッジ256と移動できないように結合されたラック298に歯合する。そのために、結合ピニオン294に設けられた、図では認識できない平歯車が、中央の伸縮部材254の側面を通って延びている。
【0042】
操作モータ274が移送キャリッジ208の制御装置232によって、駆動ピニオン276が図8A内で反時計方向に回転するように駆動された場合には、結合ピニオン292と294も、反時計方向に回転される。それに固定されている平歯車が、ラック296ないし298内へ歯合することによって、伸縮アーム234の中央の伸縮部材254が上方の伸縮部材246から、そして同時にキャリッジ256が中央の伸縮部材254から引き出される。
【0043】
チェーンピニオン276が、時計方向に回転された場合には、キャリッジ256が中央の伸縮部材254内へ、そして同時にそれが上方の伸縮部材246内へ引き込まれる。
【0044】
ここに図示されていない展開において、伸縮部材246と254およびキャリッジ256上昇/下降運動は、スラストチェーンおよび類似の装置によっても、もたらすことができる。
【0045】
上述した電気泳動浸漬塗装設備の機能方法は、以下のごとくである:
【0046】
塗装すべき車両ボディ204が、図1において実質的に水平の方向付けで(矢印220を参照)、前処理ステーションから供給され、その前処理ステーション内で車両ボディ204は、既知のように洗浄、脱脂などによって塗装プロセスに合わせて準備される。
【0047】
キャリッジ256は、その一番上の位置へ移動され、そこでは伸縮アーム234の伸縮部材256、254および256は、互いに引き込まれているので、伸縮アームはその最小可能な長さを有している。それに応じた位置が、図10に斜視図で示されている。該当する移送キャリッジ208の駆動装置210は、電動機226と228によって駆動レール216に沿って浸漬槽202上へ供給され、付属の支持キャリッジ212が、伸縮装置214を介して連動される。伸縮アーム234の上方の伸縮部材246に設けられたガイドローラ250が、ガイドレール218のU字プロフィール内で走行するが、それは重量吸収には用いられない。移送キャリッジ208とそれに固定された車両ボディ204の重量は、駆動装置210を介して完全に駆動レール216によって支持される。
【0048】
移送キャリッジ208が、浸漬槽202の入口側にある前壁に接近すると、操作モータ274によって伸縮アーム234が上述したやり方で引き出されることによって、移送キャリッジ208を介して車両ボディ204を支持するキャリッジ256が、だんだんと下降される。車両ボディ204のフロントが、浸漬槽202の前壁を越えて浸漬槽202の内部へ突出するとすぐに、同時にギアモータ264によって回転ピン260とそれに伴って、固定手段272とそれに固定された車両ボディ204とを有する支持キャリッジ212が、回転軸262を中心に回転される。従ってこの領域において、車両ボディ204の運動全体は、3つの運動、すなわち駆動レール216に沿った水平の直線運動(矢印220)、回転軸240に沿った、従って伸縮アーム234の長手軸にも沿った、垂直の直線運動および、図1の視野において時計方向に行われる、回転ピン260の回転軸262を中心とする回転運動、の重ね合わせと考えられる。その際に、車両ボディ204は、浸漬槽202の入口側の前壁を越えて「回る」。それに応じた位置が、図11に斜視図で示されている。
【0049】
キャリッジ256の下降が続行され、かつ回転ピン260の回転軸262を中心とする車両ボディ204の回転が続行されるなかで、最終的に、図12に示すように、車両ボディ204が実質的に垂直になる位置が達成される。車両ボディ204は、まだ浸漬槽202の入口側の前壁の比較的近傍にある。移送キャリッジ208がさらに移動され、それに伴って車両ボディ204の中心と浸漬槽202の入口側の前壁との間の間隔が増大する程度において、回転ピン260とそれに伴って車両ボディ204がさらに時計方向に回転されるので、図13に示すように、車両ボディ202は仰向けになる。水平方向における移動速度と回転速度は、この浸漬運動の際に車両ボディ204が、浸漬槽202の入口側の前壁からほぼ同一の間隔を維持するように、互いに対して調整することができる。
【0050】
遅くとも、車両ボディ204が完全に「仰向け」になって、それに伴って再び水平に位置する、図14に示す瞬間には、車両ボディ204は完全に液状の塗料内に浸漬されている。車両ボディ204は、まず、この位置において移送キャリッジ208によって浸漬槽202を通して、浸漬槽202の出口側の前壁により近づくまで、さらに移送される。
【0051】
その後、車両ボディ204の引上げ工程が開始される。これがまた、3つの運動、すなわち移送方向220における水平の直線運動、回転軸240に沿った、従って伸縮アーム234の長手軸にも沿った垂直運動および回転ピン260の回転軸262を中心とする回転運動、の重ね合わせである。まず、車両ボディ204は、回転ピン260が時計方向にさらに回転することによって、図15〜16に示すように、垂直にされる。その後、車両ボディ204は、伸縮アーム234が引き込まれ、それに伴ってキャリッジ256が上昇し、かつ回転運動が続行されるなかで、浸漬槽202の出口側の前壁を越えて回り、その後新たに移送方向220において浸漬槽202の後方で、新しく塗装された車両ボディ204の水平の位置が達成され、その位置が図18に示されている。
【0052】
上述した浸漬塗装設備200は、もっと小さい対象(小物品)を塗装するために使用することもできる。そのために、たとえばそれとして示されていない保持バスケットを、支持キャリッジ212に固定することができ、その保持バスケットが、図示されていない小片の、塗装すべき対象を、たとえばばらで有している。なお、この種の保持バスケットは、その装填開口部が下方を向いて、コーティングすべき対象が落ちてしまうような、浸漬槽202を通る位置で案内されることはない。
【0053】
上述したように、伸縮アーム234は、操作モータ242を介して垂直の回転軸240を中心に回転することができる。図1と図10〜18に示す運動学において、伸縮アーム234は、その垂直の回転軸240に関して、キャリッジ256に設けられた回転ピン260が、その水平の回転軸262が移動方向220に対して垂直になるように方向付けされる、位置をとる。伸縮アーム234は、操作モータ242を然るべく停止させることによって、この位置に保持される。
【0054】
垂直の回転軸240を中心とする伸縮アーム234の回転可能性は、図1と図10〜18に示す運動学において、車両ボディ204が浸漬槽202を離れて、それ移行の加工のために移送キャリッジ208によって取り出された場合に、初めて生じる。
【0055】
移送キャリッジ208は、その後、これから塗装すべき車両ボディ204を新たに装填することができるようにするために、再び浸漬塗装設備200の入口へ戻されなければならない。そのためには、操作モータ242が操作されて、それを介して伸縮アーム234の上方の伸縮部材246に設けられた歯車236が回転されることによって、キャリッジ256に設けられた回転ピン260が移動方向220に対して平行に方向付けされるまで、支持キャリッジ212が垂直の回転軸240を中心に、駆動装置212の結合フレーム230に対して回転される。さらに、支持キャリッジ212は、ギアモータ264を介して回転ピン260が然るべく回転されることによって、その長手補強材266と268が垂直になる位置へ移動される。この位置が、図2〜3に示されている。図10には、移送キャリッジ208が見られ、その移送キャリッジは、駆動レール216に対して平行に延びて、見ることのできないレールカーブ片を介してこの駆動レールと結合されている、駆動レール216’上の「復帰位置」において、浸漬塗装設備200の入口へ戻される。
【0056】
移送キャリッジ208を駆動レール216から駆動レール216’へ引き渡すことは、横移動を介して行うこともでき、そのために駆動レール216、216’を結合するレールカーブ片が必要になることはない。
【0057】
支持キャリッジ212とその垂直位置が、駆動装置210に対して回転することによって、浸漬塗装設備200の出口からその入口への帰路における移送キャリッジ208のためのスペース需要が減少される。
【0058】
上で図10〜18を用いて説明した、浸漬槽202を通過する際の車両ボディ204の移動シーケンスは、単なる例である。移送キャリッジ208の構造的形態は、それぞれ車両ボディ3の種類に適合させることのできる、他の多数の運動学を許す。たとえば、車両ボディ204を、「屋根を上」にして浸漬槽202を通して案内することができる。
【0059】
代替的に、支持キャリッジ212の回転軸262を、浸漬槽202内にある液体の液面上ぎりぎりで案内することが、可能である。この場合において、車両ボディは、「屋根を下」にして浸漬槽202を通して案内される。、支持キャリッジ212も、キャリッジ256も浴液と接触しないようにすることができ、それによって浴液が1つの浸漬槽から次の浸漬槽へと引きずられ、かつ潤滑剤が浸漬槽内へ持ち込まれる危険が減少される。
【0060】
たとえば、車両ボディ204が、浸漬槽202を通して案内される場合に、垂直の回転軸240によって設定される他の自由度を利用することも可能である。すなわち、車両ボディ204は、浸漬槽202が然るべく設計されている場合に、浸漬槽を通って横方向に案内することができ、図10〜18に示すように、縦方向には案内されない。また、伸縮アーム234は、垂直軸240を中心に、回転ピン260ないしその回転軸262が移動方向220と0°と90°の間の角度を形成する距離だけ、回転することもできる。また、車両ボディ204が浸漬槽202を通して案内される間、伸縮アーム234は、垂直の回転軸240を中心に双方向に回転することができ、それによって浸漬槽202内で車両ボディ204の「ローリング」が得られる。
【0061】
従って車両ボディ204のために、4つの運動、すなわち水平の直線運動(運動方向220に従う)、回転軸240に沿った、従って伸縮234の長手軸にも沿った、垂直の直線運動、回転ピン260の水平の回転軸262を中心とする回転運動および伸縮アーム234の垂直の回転軸240を中心とする回転運動、の重ね合わせとして理解できる、移動シーケンスを得ることができる。
【0062】
懸吊運搬システムとして形成された移送システム206は、他のコンセプトの設備において必要とされるような、浸漬槽202の右および/または左に他の構造を必要としない。それによって、浸漬塗装設備200は、全体として比較的細く抑えることができる。
【0063】
支持キャリッジ212を側方で軸承することによって、さらに、移送キャリッジ208の他の構成部品によって車両ボディ204が陰になることがなく、陰になることは、浸漬槽内で、適切な運動学および/または浸漬槽内のより長い滞留時間によってそれなりに複雑に補償されなければならない。
【0064】
浸漬槽を通して車両ボディ204を案内する場合に、キャリッジ256の、水平の回転ピン262を支持する、下方の終端領域258が、浴液内へ下降される。それによって垂直の回転軸260を、支持キャリッジ212によって収容される車両ボディ204の重心の近傍に配置することができる。それが、回転軸が車両ボディの重心から比較的離れている、既知のシステムにおいてそうであるよりも、車両ボディのための移動シーケンスにおいて、より良好な力分布をもたらす。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)固定装置(212、272)を有し、前記固定装置に少なくとも1つの対象(204)が固定可能である、少なくとも1つの移送キャリッジ(208)と、
b)移送キャリッジ(208)を支持する少なくとも1本のレール(216)と、
c)レール(216)に沿って移送キャリッジ(208)を走行させるための、少なくとも1つの駆動手段(222;224)と、
を有する、表面処理設備内で対象を移送するため、特に車両ボディを移送するためのオーバーヘッド移送システムにおいて、
d)固定装置(212、272)が、垂直の回転軸(240)を中心に回転可能に軸承されている、
ことを特徴とするオーバーヘッド移送システム。
【請求項2】
少なくとも1つの対象(204)のために、水平の直線運動と垂直の回転軸(240)を中心とする回転運動の重ね合わせとなる、運動シーケンスが得られるように整えられている、
ことを特徴とする請求項1に記載のオーバーヘッド移送システム。
【請求項3】
移送キャリッジ(208)が、垂直に走行可能なキャリッジ(256)を有しており、前記キャリッジによって固定装置(212、272)が連動される、
ことを特徴とする請求項または2に記載のオーバーヘッド移送システム。
【請求項4】
移送キャリッジ(208)が、垂直方向に伸縮可能な伸縮装置(214)を有しており、前記伸縮装置がキャリッジ(256)を案内する、
ことを特徴とする請求項3に記載のオーバーヘッド移送システム。
【請求項5】
移送キャリッジ(208)が、駆動手段(210)として、レール(216)上で動力で走行可能な駆動キャリッジ(210)を有している、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のオーバーヘッド移送システム。
【請求項6】
伸縮装置(214)が、垂直の回転軸(240)を中心に回転可能に移送キャリッジ(208)の駆動キャリッジ(210)に軸承されている、
ことを特徴とする請求項4に帰属する、請求項5に記載のオーバーヘッド移送システム。
【請求項7】
固定装置(212、272)が、さらに、水平の回転軸(262)を中心に回転可能に軸承されている、
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のオーバーヘッド移送システム。
【請求項8】
a)処理液によって充填可能であって、前記処理液内に処理すべき対象(204)、特に車両ボディ、を浸漬することができる、少なくとも1つの浸漬槽(202)と、
b)処理すべき対象(204)を浸漬槽(202)へ近づけ、浸漬槽(202)の内部空間内へ移動させ、浸漬槽(202)から取り出して、その浸漬槽から離れるように移動させることができる、移送設備(206)と、
を有する浸漬処理設備において、
c)移送設備(206)が、請求項1から7のいずれか1項に記載のオーバーヘッド移送システム(206)である、
ことを特徴とする浸漬処理設備。
【請求項1】
a)固定装置(212、272)を有し、前記固定装置に少なくとも1つの対象(204)が固定可能である、少なくとも1つの移送キャリッジ(208)と、
b)移送キャリッジ(208)を支持する少なくとも1本のレール(216)と、
c)レール(216)に沿って移送キャリッジ(208)を走行させるための、少なくとも1つの駆動手段(222;224)と、
を有する、表面処理設備内で対象を移送するため、特に車両ボディを移送するためのオーバーヘッド移送システムにおいて、
d)固定装置(212、272)が、垂直の回転軸(240)を中心に回転可能に軸承されている、
ことを特徴とするオーバーヘッド移送システム。
【請求項2】
少なくとも1つの対象(204)のために、水平の直線運動と垂直の回転軸(240)を中心とする回転運動の重ね合わせとなる、運動シーケンスが得られるように整えられている、
ことを特徴とする請求項1に記載のオーバーヘッド移送システム。
【請求項3】
移送キャリッジ(208)が、垂直に走行可能なキャリッジ(256)を有しており、前記キャリッジによって固定装置(212、272)が連動される、
ことを特徴とする請求項または2に記載のオーバーヘッド移送システム。
【請求項4】
移送キャリッジ(208)が、垂直方向に伸縮可能な伸縮装置(214)を有しており、前記伸縮装置がキャリッジ(256)を案内する、
ことを特徴とする請求項3に記載のオーバーヘッド移送システム。
【請求項5】
移送キャリッジ(208)が、駆動手段(210)として、レール(216)上で動力で走行可能な駆動キャリッジ(210)を有している、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のオーバーヘッド移送システム。
【請求項6】
伸縮装置(214)が、垂直の回転軸(240)を中心に回転可能に移送キャリッジ(208)の駆動キャリッジ(210)に軸承されている、
ことを特徴とする請求項4に帰属する、請求項5に記載のオーバーヘッド移送システム。
【請求項7】
固定装置(212、272)が、さらに、水平の回転軸(262)を中心に回転可能に軸承されている、
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のオーバーヘッド移送システム。
【請求項8】
a)処理液によって充填可能であって、前記処理液内に処理すべき対象(204)、特に車両ボディ、を浸漬することができる、少なくとも1つの浸漬槽(202)と、
b)処理すべき対象(204)を浸漬槽(202)へ近づけ、浸漬槽(202)の内部空間内へ移動させ、浸漬槽(202)から取り出して、その浸漬槽から離れるように移動させることができる、移送設備(206)と、
を有する浸漬処理設備において、
c)移送設備(206)が、請求項1から7のいずれか1項に記載のオーバーヘッド移送システム(206)である、
ことを特徴とする浸漬処理設備。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図8E】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図9E】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図8E】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図9E】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公表番号】特表2011−516361(P2011−516361A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−547074(P2010−547074)
【出願日】平成21年1月27日(2009.1.27)
【国際出願番号】PCT/EP2009/000497
【国際公開番号】WO2009/103401
【国際公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【出願人】(510179146)アイゼンマン アンラゲンバウ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディトゲゼルシャフト (4)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月27日(2009.1.27)
【国際出願番号】PCT/EP2009/000497
【国際公開番号】WO2009/103401
【国際公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【出願人】(510179146)アイゼンマン アンラゲンバウ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディトゲゼルシャフト (4)
【Fターム(参考)】
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