説明

カウンタウエイト脱着装置用油圧回路

【課題】カウンタウエイトの昇降用油圧シリンダが熱膨張して関係部位が損傷することを、作業機の作業を中断することなく防止することが可能となるカウンタウエイト脱着装置用油圧回路を提供する。
【解決手段】コントロール弁53と油圧シリンダ25のボトム室25aとの間の第1の主管路56に第1の遮断弁59を設ける。第1の遮断弁59のシーケンス弁59aはボトム室25aからの作動油の流出を制御する方向に設けられ、ロッド室25bの油圧が外部パイロット圧として加えられる。コントロール弁53と油圧シリンダ25のロッド室25bとの間の第2の主管路57に第2の遮断弁60を設ける。第2の遮断弁60のシーケンス弁60aは、ロッド室25bからの作動油の流出を制御する方向に設けられ、ロッド室25bの油圧が内部パイロット圧として加えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル、解体機、クレーン等の作業機の本体後部にカウンタウエイトを脱着する装置に用いる油圧回路に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベル、解体機、クレーン等の作業機においては、作業機本体の前部に掘削、破砕、荷役等を行なうための作業装置を取付け、作業機本体の後部に、これらの作業装置と重量バランスを取るためのカウンタウエイトを搭載している。このようなカウンタウエイトは、作業装置の交換に伴い、作業装置の作業内容や重量に応じて好適な重さのカウンタウエイトに交換したり、あるいは分割されたカウンタウエイトを付加するかまたは一部取外したり、作業機の輸送に当たってカウンタウエイトを分離輸送し現地で組立てたりする等のため、作業機本体に対して脱着する必要がある。このようなカウンタウエイト脱着装置として、例えば特許文献1に記載されたものがある。
【0003】
この特許文献1に記載されたカウンタウエイト脱着装置は、作業機本体の後部に上下に回動可能に取付けられたカウンタウエイト昇降用油圧シリンダと、作業機本体の後部に取付けられ、油圧シリンダの伸縮により上下に回動される回動アームと、この回動アームの先端より回動可能に垂下され、カウンタウエイトに連結する連結具とにより構成される。そしてカウンタウエイトを作業機本体に取付ける際には、油圧シリンダを収縮させて回動アームを下げ、地上に置いたカウンタウエイトに連結具を連結し、次に油圧シリンダを伸長させて回動アームを上げることによりカウンタウエイトを作業機本体に持ち上げ、カウンタウエイトを作業機本体にボルトにより固定する。
【0004】
このようにカウンタウエイトを作業機本体に持ち上げて作業機本体に固定した後、油圧シリンダを若干縮めることにより、油圧シリンダ、回動アームおよび連結具にはカウンタウエイトによる荷重がかからない非拘束状態にして作業を行なう。このような非拘束状態においては、カウンタウエイト側から連結具、回動アームおよび油圧シリンダに力が伝達されない状態である。このようにカウンタウエイトを作業機本体に取付けた後、油圧シリンダを若干縮めて非拘束状態とする理由は、作業中に作業機本体からカウンタウエイトに伝達される振動が連結具や回動フレーム等に伝わり、その結果、脱着装置の関係部位、特に連結具に用いる連結ボルト等が折損する等の損傷を防止するためである。
【0005】
図7はこのようなカウンタウエイト脱着装置に用いられた従来の油圧回路である。図7において、25は不図示のカウンタウエイトを昇降する油圧シリンダ、50,51はそれぞれ作業機本体に搭載された主油圧ポンプとパイロット油圧ポンプ、53はパイロット弁54により切換え操作されるコントロール弁である。56は油圧ポンプ25のボトム室25aとコントロール弁25との間を接続する主管路であり、この主管路56には、スローリターン弁58と、圧力センサ70と、カウンタウエイト脱着装置を使用しない間は閉じておくストップ弁71と、パイロット付き逆止弁72とが設けられている。パイロット付き逆止弁72は、油圧シリンダ25の不作動時はボトム室25aからの油の流出を防ぎ、油圧シリンダ25を収縮させるときはロッド室25b側主管路57の油圧がパイロット圧として加えられて連通するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2922778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述のように、カウンタウエイト脱着装置は、カウンタウエイトを作業機本体に固定した後は、油圧シリンダはこのシリンダ等にカウンタウエイトの荷重がかからない位置に変位させて非拘束状態にしておく。しかしながら、従来のカウンタウエイト脱着用の油圧回路は、主管路56にこの主管路56を遮断するカウンタウエイト落下防止用のパイロット付き逆止弁72を有している。このため、このパイロット付き逆止弁72からボトム室25aまでの回路は、パイロット付き逆止弁72で閉ざされた油室となっている。このような状態において、油圧シリンダ25内の作動油は、エンジン等の放射熱や、外気温度の変化によって収縮、膨張を繰り返す。そして、油圧シリンダ25が作動油の熱膨張により伸長すると、油圧シリンダ25が非拘束状態から、作業機本体にボルトにより固定されているカウンタウエイトを押し上げるような負荷がかかる拘束状態となり、この負荷が過大になると、油圧シリンダや連結具等の関係部位が損傷する原因となる。
【0008】
このような熱膨張に対処するため、従来は油圧シリンダ25のボトム室に接続された主管路56に圧力センサ70を設け、この圧力センサ70が異常な圧力を検出するとオペレータに知らせ、オペレータはこの異常な圧力上昇を知ると、油圧シリンダのコントロール弁53を操作して油圧シリンダ25を収縮側に操作することにより、油圧シリンダ25や連結具等の関係部位の損傷を回避している。しかし、この圧力センサ70の警報発生による場合は、オペレータが作業機による作業を中断して油圧シリンダ25を適正位置に操作する必要があるので、作業効率の低下を招くという問題点があった。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑み、カウンタウエイトの昇降用油圧シリンダが熱膨張して関係部位が損傷することを、作業機の作業を中断することなく防止することが可能となるカウンタウエイト脱着装置用油圧回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のカウンタウエイト脱着装置用油圧回路は、
油圧源が設けられた作業機本体と、
前記作業機本体に着脱可能に搭載されるカウンタウエイトと、
前記作業機本体に取付けられ、前記油圧源からの作動油をボトム室とロッド室に給排することにより、前記カウンタウエイトを昇降させて前記作業機本体に着脱する昇降用油圧シリンダと、
前記油圧源と前記昇降用油圧シリンダとの間に設けられたコントロール弁とを備えたカウンタウエイト脱着装置用油圧回路において、
前記コントロール弁と前記昇降用油圧シリンダのボトム室との間の第1の主管路に前記ボトム室からの作動油の流出を制御する方向に設けられ、前記ロッド室の油圧が外部パイロット圧として加えられるシーケンス弁、およびこのシーケンス弁に並列接続された逆止弁からなる第1の遮断弁と、
前記コントロール弁と前記昇降用油圧シリンダのロッド室との間の第2の主管路に前記ロッド室からの作動油の流出を制御する方向に設けられ、前記ロッド室の油圧が内部パイロット圧として加えられ、前記第1の遮断弁のシーケンス弁を連通させる前記外部パイロット圧より高い内部パイロット圧で連通するシーケンス弁、およびこのシーケンス弁に並列接続された逆止弁からなる第2の遮断弁とを備えたことを特徴とする。
【0011】
また本発明は、前記第1の遮断弁のシーケンス弁に、前記ボトム室の油圧を内部パイロット圧として加える内部パイロット管路を備えると共に、前記シーケンス弁を連通させる内部パイロット圧の設定圧を、前記油圧シリンダにより前記カウンタウエイトを支持可能なボトム室の油圧に設定したことを特徴とする。
【0012】
また本発明は、前記第2の遮断弁のシーケンス弁に外部パイロット管路を備え、前記外部パイロット管路に、前記油圧シリンダの操作時に前記シーケンス弁の外部パイロット圧油を供給して前記シーケンス弁を連通させる構成にしたことを特徴とする。
【0013】
また本発明は、前記ロッド室の油を油タンクに排出可能な管路を設け、前記管路にストップ弁を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の油圧回路においては、カウンタウエイトが作業機本体にボルトにより固定され、かつ昇降用油圧シリンダが非拘束状態、すなわちカウンタウエイトによる拘束が解かれた状態において、ボトム室、ロッド室の両者が密閉された油室となるので、ボトム室、ロッド室の油が熱膨張するとその油圧が高くなる。本発明の油圧回路においては、ロッド室の油圧が第1の遮断弁のシーケンス弁の操作部に外部パイロット圧として加わるので、油の熱膨張により第1の遮断弁のシーケンス弁が開いてボトム室の油が一部排出され、油圧シリンダの伸長が防止される。このため、油圧シリンダ内の油の熱膨張により起こる伸長によりカウンタウエイトが非拘束状態から拘束状態に戻って油圧シリンダや連結具が過大な力を受けることが防止され、油圧シリンダや連結具の損傷を防止することができる。
【0015】
一方、前述のようにカウンタウエイトが作業機本体にボルトにより固定され、油圧シリンダ内の油の熱膨張によりボトム室の油が流出すると、油圧シリンダが収縮する。このような収縮が続き、カウンタウエイトを押し下げる方向の油圧シリンダの拘束状態が発生した場合、ロッド室の油圧が上昇する。ここで、ロッド室の油圧は第2の遮断弁のシーケンス弁の内部パイロット圧として加えられるため、ロッド室の油圧の上昇により第2の遮断弁のシーケンス弁が開き、ロッド室の油圧が低下する。このため、油圧シリンダの収縮による過大な力の発生も防止され、油圧シリンダや連結具等の関係部位の損傷が防止される。
【0016】
また、このようなボトム室またはロッド室からの油の流出は自動的に行なわれるため、オペレータは作業を中断して油圧シリンダの伸長度合を調整する操作を行なう必要がなく、作業能率が向上する。
【0017】
本発明において、前記第1の遮断弁のシーケンス弁に、前記ボトム室の油圧を内部パイロット圧として加え、その設定圧をカウンタウエイトを支持可能な値に設定した内部パイロット管路を備えることにより、第1の遮断弁を、それぞれ異なる2つのパイロット圧により開く2つの弁を1つの弁として兼用することができ、装置のコンパクト化が可能となる。
【0018】
また、本発明において、前記第2の遮断弁のシーケンス弁に外部パイロット管路を備え、前記外部パイロット管路に、前記油圧シリンダの操作時に前記シーケンス弁の外部パイロット圧を加えて連通させる構成にすることにより、第2の遮断弁を、それぞれ異なる2つのパイロット圧により開く2つの弁を1つの弁として兼用することができ、装置のコンパクト化が可能となる。
【0019】
また、本発明において、前記ロッド室の油を油タンクに排出可能な管路を設け、前記管路にストップ弁を設け、カウンタウエイト未装着の輸送中にこのストップ弁を開いておくことにより、カウンタウエイト未装着の輸送中にボトム室が熱膨張しても、ロッド室の油圧が上昇しないため、第1の遮断弁が開いてボトム室での油が油タンクに排出されるおそれがない。このため、カウンタウエイト未装着の輸送中における油圧シリンダのボトム室の油の排出によって油圧シリンダが収縮し、他の機器に油圧シリンダが圧接して損傷を起こす等の事態の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の作業機のカウンタウエイト脱着装置用油圧回路を適用する作業機の一例を示す側面図である。
【図2】本発明のカウンタウエイト脱着装置用油圧回路を適用するカウンタウエイト脱着装置の一例を示す背面図である。
【図3】図2のE−E断面図である。
【図4】本例のカウンタウエイト脱着装置において、地上に置いたカウンタウエイトにカウンタウエイト脱着装置の連結具を連結した状態を示す側面図である。
【図5】本例のカウンタウエイト脱着装置において、カウンタウエイトを作業機本体に取付けた後、昇降用油圧シリンダを若干収縮させた非拘束状態を示す側面図である。
【図6】本発明のカウンタウエイト脱着装置用油圧回路の一実施の形態を示す油圧回路図である。
【図7】従来のカウンタウエイト脱着装置用油圧回路を示す油圧回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は本発明のカウンタウエイト脱着装置用油圧回路を適用する作業機の一例を示す側面図である。この例では作業機が油圧ショベルである場合について示す。図1において、1は下部走行体、2はこの下部走行体1上に旋回装置3を介して旋回可能に設置された上部旋回体(作業機本体)であり、4はこの上部旋回体2のフレームとなる旋回フレームである。旋回フレーム4には運転室5と、原動機や油圧ポンプ等を含み油圧パワーユニットを構成する機械室6が搭載されると共に、後部にはカウンタウエイト7が搭載され、前部には作業装置8が取付けられる。カウンタウエイト7は、作業装置8等に対して作業機全体の重量をバランスさせるために設けられる。
【0022】
作業装置8は、旋回フレーム4の前部にブームシリンダ9により俯仰動可能に取付けられたブーム10と、このブーム10の先端にアームシリンダ11により回動可能に取付けられたアーム12と、このアーム12の先端にバケットシリンダ13により回動可能に取付けられたバックホウバケット14とからなる。
【0023】
図2は本発明の油圧回路を適用するカウンタウエイト脱着装置の一例を示す背面図、図3はそのE−E断面図、図4は地上のカウンタウエイトに連結具を連結している状態を示す側面図、図5は油圧シリンダの非拘束状態を示す側面図である。図3および図4において、4は旋回フレーム、24は旋回フレーム4の後端部に一体に設けたカウンタウエイト衝合板である。この衝合板24は、カウンタウエイト7の左右幅と同様の幅を有する。この衝合板24にはカウンタウエイト7の前面が衝合され、カウンタウエイト7を貫通するボルト40とこれに螺合するナット41(図3参照)により旋回フレーム4にカウンタウエイト7を固定する構成となっている。
【0024】
20はカウンタウエイト脱着装置であり、この装置20は上部旋回体2を構成する旋回フレーム4の後端部に取付けられる。図3に示すように、カウンタウエイト7の前面には、カウンタウエイト脱着装置20を収容するための凹部7aが、上下方向に貫通して設けられている。この凹部7aは、その上部が後方に拡大された凹部7bとして形成されている。この拡大された凹部7bの底面には、一対の連結板23が、溶接またはボルト付けにより取付けられている。この連結板23は、カウンタウエイト脱着装置20に設けられた後述の一対の連結具21をピン22により着脱可能に連結するためのピン孔23aを有する。このピン孔23aは、図5のように油圧シリンダ25を若干収縮させて非拘束状態とすることを可能にするため、前後方向に長く、後下がりに傾斜した長孔に形成している。
【0025】
カウンタウエイト脱着装置20は、昇降用油圧シリンダ25と回動アーム26と連結具21とにより構成される。回動アーム26は、この油圧シリンダ25の伸縮を上下動に変換する可動体として設ける。連結具21は回動アーム26の自由端に取付けられる。
【0026】
図2に示すように、衝合板24の左右方向の中央部に溶接によりブラケット27,27を取付ける。そして油圧シリンダ25のボトム側端部のボス25aを、ブラケット27,27間に、筒状スペーサ28,28を介して入れ、このブラケット27,27のピン孔、スペーサ28,28およびボトム側端部のボス25aに枢着ピン29を挿着する。油圧シリンダ25はこの枢着ピン29を中心として上下方向に回動可能である。
【0027】
回動アーム26は、油圧シリンダ25の左右にそれぞれ1本ずつ、合計2本設けられる。各回動アーム26を取付けるため、衝合板24の左右のブラケット27の外側にそれぞれブラケット30を溶接する。そしてこれらのブラケット27,30間に回動アーム26の根本部を環状スペーサ31を介して挟み、ブラケット27,30に設けたピン孔、スペーサ31および回動アーム26の根本部に設けたピン孔に枢着ピン32を挿着し、各枢着ピン32を中心として各回動アーム26を回動可能に取付ける。左右の回動アーム26の枢着ピン32は同じ高さで同心をなす。また、これらの回動アーム26の枢着ピン32は、油圧シリンダ25の枢着ピン29より高い位置に設ける。
【0028】
油圧シリンダ25のピストンロッド先端のボス25bは、回動アーム26の自由端間に筒状スペーサ34,34を介して挟持され、回動アーム26,26の自由端に設けたピン孔と、スペーサ34,34と、ボス25bとに挿着する連結ピン35により回動アーム26,26の先端に連結する。
【0029】
回動アーム26,26の自由端には、連結具21を取付けるためのピン37が、これらの回動アーム26,26に設けたピン孔26a,26aに貫挿して取付けられる。連結具21はその上下にそれぞれ上下に長いピン孔21a、21bを有する。そしてピン37の両端部を回動アーム26,26から外側に突出させ、その突出した両端部を連結具21の上方のピン孔21aに上下動可能に挿着する。ピン37の両端面には連結具21がピン37から抜けることを防止する抜け止め具42を取付ける。各連結具21は、その上部にねじ孔21cを有し、このねじ孔21cにボルト38を螺合してピン孔21aに至るように貫通する。
【0030】
各連結具21の下部には、前後方向に貫通しかつ下方が開放された溝21dを設け、各溝21dにそれぞれカウンタウエイト7に設けた連結板23を入れ、連結板23に設けたピン孔23aと連結具21に設けたピン孔21bにピン22を着脱可能に挿着することにより、連結具21にカウンタウエイト7を着脱可能に連結する。
【0031】
この連結具21は、ボルト38のねじ孔21cに対するねじ込み深さを変えてボルト38に螺合したナット43を締めてナット43とボルト38を連結具21に固定する。そしてボルト38の下端に固定した受け具38aをピン37の上面に当接させる構造としている。そしてボルト38の連結具21に対するねじ込み深さを変えることにより、カウンタウエイト7を吊り下げた際のピン37とピン22との上下間隔を調整可能としている。このように、ボルト38の下端の受け具38aをピン37の上面に当接させる構造としたことにより、ボルト38には曲げ力がかからず、ボルト38の破損が回避される構造としている。
【0032】
このカウンタウエイト脱着装置を用いてカウンタウエイト7の取付けを行なう際は、図4に示すように、油圧シリンダ25を収縮させることにより回動アーム26を下げ、地面に置いてあるカウンタウエイト7の連結板23に連結具21をピン22により連結する。その後、油圧シリンダ25を伸長させることにより、回動アーム26を枢着ピン32を中心として回動させてカウンタウエイト7を持ち上げる。そして図3に示したように、カウンタウエイト7の前面を衝合板24に衝合させ、ボルト40、ナット41によりカウンタウエイト7を旋回フレーム4に固定する。
【0033】
その後、図5に示すように、油圧シリンダ25を若干収縮させることにより、回動アーム26を矢印rで示すように回し、連結具21を下げて油圧シリンダ25に負荷がかからない非拘束状態とする。この非拘束状態では、油圧シリンダ25はカウンタウエイト7の荷重を担うことなく、連結具21にはカウンタウエイト7による張力は発生しない。カウンタウエイト7を旋回フレーム4から取外して地面に降下させる場合には、前述の工程と逆の手順をとる。
【0034】
図6は本発明によるカウンタウエイト脱着装置の油圧回路の一実施の形態を示す油圧回路図である。図6において、50,51は機械室6内に油圧源として設置された主油圧ポンプおよびパイロット油圧ポンプである。53は主油圧ポンプ50の吐出管路52に設けられた昇降用油圧シリンダ25用のコントロール弁である。このコントロール弁53は旋回フレーム4上に搭載されているものであり、コントロール弁53は予備コントロール弁として備えられたものである。54は運転室5に操作レバーが設けられたコントロール弁53用のパイロット弁である。
【0035】
56は昇降用油圧シリンダ25のボトム室25aとコントロール弁53との間に設けられた第1の主管路、57は昇降用油圧シリンダ25のロッド室25bとコントロール弁53との間に設けられた第2の主管路である。58は第1の主管路56に設けられたスローリターン弁、59は第1の主管路56にスローリターン弁58に対して直列に接続して設けられた第1の遮断弁である。スローリターン弁58は油圧シリンダ25を収縮させてカウンタウエイト7を下ろす際に、カウンタウエイト7の荷重によって油圧シリンダ25が急激に収縮することを防止するための可変絞り弁58aと、この可変絞り弁58aに並列に接続された逆止弁58bとからなる。
【0036】
第1の遮断弁59はボトム室25aからの作動油の流出を制御する方向に設けられたシーケンス弁59aと、このシーケンス弁59aに並列に設けられた逆止弁59bとからなる。このシーケンス弁59aは、ボトム室25aの油圧が内部パイロット管路59cを介して弁連通側内部パイロット圧として加えられると共に、前記ロッド室25bの油圧が外部パイロット管路59dを介して弁連通側外部パイロット圧として加えられる。
【0037】
シーケンス弁59aを連通させる内部パイロット圧の設定圧は、カウンタウエイト7の荷重が支持可能な油圧(例えば20MPa)より高い例えば30Maに設定する。シーケンス弁59aを連通させる外部パイロット管路59d内の油の外部パイロット圧の設定圧は、例えば6MPa程度に設定する。
【0038】
60は第2の主管路57に設けられた第2の遮断弁である。この第2の遮断弁60は、ロッド室25bからの作動油の流出を制御する方向に設けられたシーケンス弁60aと、このシーケンス弁60aに並列に設けられた逆止弁60bとからなる。このシーケンス弁60aは、ロッド室25bの油圧が内部パイロット管路60cを介して内部パイロット圧として加えられる。このシーケンス弁60aを連通させる内部パイロット圧の設定圧は例えば10MPaに設定される。この設定圧は、前記第1の遮断弁59のシーケンス弁59aの外部パイロット管路59dの設定圧(例えば5MPa)より高く設定される。
【0039】
第2の遮断弁60のシーケンス弁60aの外部パイロット管路60dは、主油圧ポンプ50の吐出管路52に設けられた切換弁61の二次側に接続される。この切換弁61は、パイロット弁54の二次側パイロット管路54a,54b間に設けたシャトル弁62からのパイロット圧が操作部に加わることにより、遮断位置から連通位置に切換えられ、コントロール弁53を通してのボトム室25aやロッド室25bへの主油圧ポンプ50からの作動油の供給を可能とするものである。シーケンス弁60aを連通させる外部パイロット管路60d内パイロット圧の設定圧は、例えば5MPa程度に設定する。
【0040】
63はロッド室25bと油タンク64との間を接続する管路、65はこの管路63に設けられたストップ弁である。このストップ弁65は、作業機をカウンタウエイト7の未装着状態で輸送する際に開けることにより、回動アーム26が下がることを防止するものである。66,67はそれぞれ主管路56,57と油タンク64との間に設けられ、これらの主管路56,57の最高圧を設定するリリーフ弁である。68はボトム室25aの油圧を検出する圧力センサであり、その出力信号により、油圧シリンダ25が現在カウンタウエイトの昇降作業中であるか否かをランプ等によって運転室内のオペレータに報知するとともに、カウンタウエイト7を旋回フレーム4に固定した後、油圧シリンダ25を非拘束状態とする操作を忘れた際の油圧シリンダ25内の油圧の上昇をオペレータに知らせるものである。
【0041】
この油圧回路において、油圧シリンダ25を伸長させる際には、ストップ弁65を閉じた状態としておき、パイロット弁54の伸長側パイロット管路54aにパイロット圧油を供給する操作により、コントロール弁53を左位置に切換える。同時に、パイロット圧油がシャトル弁62を通して切換弁61の操作室に供給され、切換弁61が連通位置に切換わる。これにより、パイロット管路60dの油圧が高くなり、第2の遮断弁60のシーケンス弁60aが開き、主油圧ポンプ50からの圧油は、コントロール弁53、第1の主管路56の逆止弁58b,59bを介してボトム室25aに供給されると同時に、ロッド室25bの油は、第2の遮断弁60のシーケンス弁60a、コントロール弁53を通して油タンク64に排出され、油圧シリンダ25が伸長する。
【0042】
反対に、油圧シリンダ25を収縮させる際には、ストップ弁65を閉じた状態としておき、パイロット弁54の収縮側パイロット管路54bにパイロット圧油を供給する操作により、コントロール弁53を右位置に切換える。同時に、パイロット弁54からパイロット管路54bに供給されたパイロット圧油がシャトル弁62を通して切換弁61の操作室に供給され、切換弁61が連通位置に切換わる。これにより主油圧ポンプ50からの圧油が第2の遮断弁60の逆止弁60bを通してロッド室25bに供給される。同時に、パイロット管路59dを通して第1の遮断弁59のシーケンス弁59aの操作部に供給されるパイロット圧油により第1の遮断弁59のシーケンス弁59aが開く。このため、ボトム室25aの油は、第1の遮断弁59のシーケンス弁59a、可変絞り弁58aおよびコントロール弁53を通して油タンク64に排出され、油圧シリンダ25が収縮する。
【0043】
ここで、図5に示したように油圧シリンダ25が非拘束状態、すなわちボルト40、ナット41(図3参照)によりカウンタウエイト7が旋回フレーム4に固定されると共に、油圧シリンダ25を最伸長状態から若干収縮させてカウンタウエイト7による油圧シリンダ25の拘束が解かれた状態においては、前記同様に、ストップ弁65を閉じた状態である。この状態においては、ボトム室25aとこのボトム室25aから第1の遮断弁59に至る管路は密閉された油室となる。同様に、ロッド室25bとこのロッド室25bから第2の遮断弁60に至る管路は密閉された油室となる。
【0044】
この状態でエンジンからの放射熱や作業環境が高温である等の理由によりボトム室25aとロッド室25bの油が熱膨張するとその油圧が高くなる。なお、ボトム室25aとロッド室25bとの断面積の差から、ロッド室25bの油圧はボトム室25aの油圧の約2倍となる。そして、ロッド室25bの油圧が第1の遮断弁59のシーケンス弁59aの外部パイロット圧の設定圧(例えば5MPa)を超えると、シーケンス弁59aが連通位置に切換わる。このため、ボトム室25a内の油はシーケンス弁59a、スローリターン弁58の可変絞り弁58aを通り、一部は中立位置ではクローズド回路(2次側の主管路56,57が短絡すると共に、これらの主管路56,57が油タンク64に連通した回路)となっているコントロール弁53を通して油タンク64に流出し、残部は第2の主管路57、第2の遮断弁60の逆止弁60bを通してロッド室25bに流入し、油圧シリンダ25が若干収縮する。これにより、油圧シリンダ25の熱膨張による伸長が防止され、油圧シリンダ25の熱膨張に伴う伸長により油圧シリンダ5がカウンタウエイト7による拘束状態になって過大な力を受けることが防止される。
【0045】
しかしながら、作業時の作動油の熱膨張により前述のようにボトム室25aの油が一部流出し、油圧シリンダ25が収縮する動作が連続し、その結果、油圧シリンダ25がカウンタウエイト7を押し下げる方向の力が発生するような拘束状態となった場合、ロッド室25bの油圧が上昇する。そして、ロッド室25bの油圧が上昇し、第2の遮断弁60のシーケンス弁60aの内部パイロット圧の設定圧(例えば10MPa)に達すると、シーケンス弁60aが開く。このため、ロッド室25bの一部がこのシーケンス弁60aと中立位置にあるコントロール弁53を通して油タンク64に流出する。このため、収縮側における過大な力の発生も防止され、油圧シリンダ25や連結具21等の関係部位の損傷が防止される。
【0046】
なお、オペレータがカウンタウエイト7を旋回フレーム4上に上げてボルト40、ナット41により衝合板24に固定した後、図5に示す非拘束状態とすることを忘れた場合、油圧シリンダ25は伸長方向に拘束された状態であるため、ボトム室25a内の油の熱膨張によりボトム室25aの油圧が上昇する一方、ロッド室25bは上昇しないため、第1の遮断弁59のシーケンス弁59aは連通位置に切り換わらない事態が発生する。この場合は、パイロット弁54が操作されていないことを条件として、ボトム室25aの油圧がある値(例えば10MPa)に達した場合には運転室にある警報手段により拘束状態が解除されていない旨の警報を発生させ、オペレータに油圧シリンダ25を非拘束状態とすることを促す。このような警報を発するボトム室の油圧(例えば10MPa)は、熱膨張によりシーケンス弁59aを開く外部パイロット管路59dの設定圧(例えば5MPa)に対応するボトム室側油圧2.5MPaより高く設定されたものである。
【0047】
本発明を実施する場合、第1の遮断弁59において、外部パイロット管路59dのパイロット圧により連通するシーケンス弁と、内部パイロット管路59cによって連通するシーケンス弁とを別々に並列に設けてもよい。しかしながら、本実施の形態のように1つのシーケンス弁59aに2つのパイロット管路59c,59dを設けることにより、2つのシーケンス弁を1つで兼用することができ、装置のコンパクト化が可能となる。
【0048】
また、第2の遮断弁60においても、内部パイロット管路60cのパイロット圧により連通するシーケンス弁と、外部パイロット管路60dによって連通するシーケンス弁とを別々に並列に設けてもよい。しかしながら、本実施の形態のように1つのシーケンス弁60に2つのパイロット管路60c,60dを設けることにより、2つのシーケンス弁を1つで兼用することができ、装置のコンパクト化が可能となる。
【0049】
また、本実施の形態においては、ロッド室25bの油を油タンク64に排出可能な管路63を設けると共に、この管路63にストップ弁65を設け、カウンタウエイト未装着の輸送中にはこのストップ弁65を連通状態とする。このため、カウンタウエイト未装着の輸送中にボトム室25a内の油が熱膨張しても、ロッド室25bの油圧が上昇しないため、第1の遮断弁59のシーケンス弁59aが開くことがなく、ボトム室の油が油タンクに排出されるおそれがない。このため、ボトム室25aの油の排出によって油圧シリンダが収縮し、油圧シリンダ25が他の機器に圧接して損傷を起こす等の事態の発生を防止することができる。
【0050】
以上本発明を実施の形態により説明したが、本発明は、上記実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の変更、付加が可能である。本発明は例えば作業機本体が非旋回式である場合にも適用できる。また、昇降用油圧シリンダの伸縮によりシーブやスプロケットを上下動させ、シーブに掛けたロープ(可動体)やスプロケットに掛けたチェーン(可動体)にカウンタウエイトを接続してカウンタウエイトを上下動させる構成とすることもできる。
【符号の説明】
【0051】
1:下部走行体、2:上部旋回体(作業機本体)、3:旋回装置、4:旋回フレーム、5:運転室、6:機械室、7:カウンタウエイト、7a,7b:凹部、8:作業装置、20:カウンタウエイト脱着装置、21:連結具、22:ピン、23:連結板、24:衝合板、25:昇降用油圧シリンダ、26:回動アーム、27,30:ブラケット、29,32:枢着ピン、35:連結ピン、37:ピン、38:ボルト、40:ボルト、41:ナット、50:主油圧ポンプ、51:パイロット油圧ポンプ、53:コントロール弁、54:パイロット弁、56:第1の主管路、57:第2の主管路、58:スローリターン弁、59:第1の遮断弁、59a:シーケンス弁、59b:逆止弁、59c:内部パイロット管路、59d:外部パイロット管路、60:第2の遮断弁、60a:シーケンス弁、60b:逆止弁、60c:内部パイロット管路、60d:外部パイロット管路、61:切換弁、62:シャトル弁、63:管路、64:油タンク、65:ストップ弁、66,67:リリーフ弁、68:圧力センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧源が設けられた作業機本体と、
前記作業機本体に着脱可能に搭載されるカウンタウエイトと、
前記作業機本体に取付けられ、前記油圧源からの作動油をボトム室とロッド室に給排することにより、前記カウンタウエイトを昇降させて前記作業機本体に着脱する昇降用油圧シリンダと、
前記油圧源と前記昇降用油圧シリンダとの間に設けられたコントロール弁とを備えたカウンタウエイト脱着装置用油圧回路において、
前記コントロール弁と前記昇降用油圧シリンダのボトム室との間の第1の主管路に前記ボトム室からの作動油の流出を制御する方向に設けられ、前記ロッド室の油圧が外部パイロット圧として加えられるシーケンス弁、およびこのシーケンス弁に並列接続された逆止弁からなる第1の遮断弁と、
前記コントロール弁と前記昇降用油圧シリンダのロッド室との間の第2の主管路に前記ロッド室からの作動油の流出を制御する方向に設けられ、前記ロッド室の油圧が内部パイロット圧として加えられ、前記第1の遮断弁のシーケンス弁を連通させる前記外部パイロット圧より高い内部パイロット圧で連通するシーケンス弁、およびこのシーケンス弁に並列接続された逆止弁からなる第2の遮断弁とを備えたことを特徴とするカウンタウエイト脱着装置用油圧回路。
【請求項2】
請求項1に記載のカウンタウエイト脱着装置用油圧回路において、
前記第1の遮断弁のシーケンス弁に、前記ボトム室の油圧を内部パイロット圧として加える内部パイロット管路を備えると共に、前記シーケンス弁を連通させる内部パイロット圧の設定圧を、前記油圧シリンダにより前記カウンタウエイトを支持可能なボトム室の油圧に設定したことを特徴とするカウンタウエイト脱着装置用油圧回路。
【請求項3】
請求項1または2に記載のカウンタウエイト脱着装置用油圧回路において、
前記第2の遮断弁のシーケンス弁に外部パイロット管路を備え、前記外部パイロット管路に、前記油圧シリンダの操作時に前記シーケンス弁の外部パイロット圧油を供給して前記シーケンス弁を連通させる構成にしたことを特徴とするカウンタウエイト脱着装置用油圧回路。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項に記載のカウンタウエイト脱着装置用油圧回路において、
前記ロッド室の油を油タンクに排出可能な管路を設け、前記管路にストップ弁を設けたことを特徴とするカウンタウエイト脱着装置用油圧回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−11144(P2013−11144A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−145831(P2011−145831)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】