説明

カセッテ型放射線画像固体検出器

【課題】画像データのデジタル化を達成することのできるFPDであって、CR用のカセッテとの互換性を有する薄型であるとともに、外部からの荷重に対応でき、ポータブル撮影をすることが可能なカセッテ型放射線画像固体検出器を提供する。
【解決手段】入射した放射線を検出して放射線画像情報を得る検出パネル21と、検出パネル21の、放射線の入射側とは反対側の面に配置される電子部品22と、平面部51を有し、この平面部51の中央部よりも各稜線近傍部の剛性が高く、検出パネル21及び電子部品22を内蔵するハウジング3と、を備え、電子部品22は、ハウジング3における平面部51の各稜線に沿って配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カセッテ型放射線画像固体検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、病気診断等を目的として、X線画像に代表される、放射線を用いて撮影された放射線画像が広く用いられている。
こうした医療用の放射線画像は、従来スクリーンフィルムを用いて撮影されていたが、近年は、放射線画像のデジタル化が実現されており、例えば、被写体を透過した放射線を輝尽性蛍光体層が形成された輝尽性蛍光体シートに蓄積させた後、この輝尽性蛍光体シートをレーザ光で走査し、これにより輝尽性蛍光体シートから発光される輝尽光を光電変換して画像データを得るCR(Computed Radiography)装置が広く普及している(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0003】
放射線画像撮影では、スクリーンフィルムや輝尽性蛍光体シート等の記録媒体を内部に収納したカセッテ(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)が用いられる。なお、CR装置での撮影に用いられるCR用のカセッテは、従来のスクリーン/フィルム用のカセッテに適合するものとして導入された既存の設備、例えばカセッテホルダーやブッキーテーブルを継続して使用可能となるように、当該スクリーン/フィルム用のカセッテにおけるJIS規格サイズに倣って、設計・製造されている。言い換えると、カセッテのサイズの互換性が維持され、施設の有効活用と画像データのデジタル化が達成されている。
【0004】
また、最近では、医療用の放射線画像を得る手段として、照射された放射線を検出しデジタル画像データとして取得する検出器としてFPD(Flat Panel Detector)が知られており(例えば、特許文献3参照)、さらに、このFPDをハウジングに収納した可搬型の撮影装置(可搬型のFPD)が実用化されるようになってきた。
【0005】
しかしながら、カセッテを用いた撮影においては、撮影方式によっては、カセッテのフロント部材(撮影時における放射線入射側)に患者の全荷重(全体重)が作用することがある。例えば、比較的剛性の高いブッキーテーブル上にカセッテを載置し、その上に患者が乗って臥位にて撮影を行うような場合には、当該カセッテのフロント部材に患者の撮影部位の荷重(体重)が作用するため、フロント板が下方向に撓んでしまう。
また、ベッド等の上で臥位状態にある患者の撮影を行うこともあり、この場合には、患者と柔軟な布団との間にカセッテが挿入されることとなるため、カセッテ自体が患者の荷重(体重)の影響で撓む(歪む)ことがあり、内部に収納されている電子部品等が破損するおそれがある。
【0006】
そこで、例えば、静荷重による応力はパネル状の放射線検出手段を支持する支持部材によって吸収するとともに、放射線検出手段と筐体(ハウジング)との間に空間を設けて、外からの衝撃荷重はこの放射線検出手段と筐体との隙間で吸収することにより、荷重による電子部品等の破損を防止する構成が提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【特許文献1】特開2005−121783号公報
【特許文献2】特開2005−114944号公報
【特許文献3】特開平9−73144号公報
【特許文献4】特開2002−14170号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述のように、現在普及しているCR用のカセッテは従来のスクリーン/フィルム用のカセッテにおけるJIS規格サイズに従ったサイズとなっており、ブッキーテーブル等もJIS規格サイズに合わせて作られている。このため、FPDについても、このJIS規格サイズに従ったカセッテに収納した形で用いることができれば、施設に設置されている既存の設備をFPDを用いた撮影に利用することができ、撮影手段としてFPDを導入する際の設備投資を最小限度に抑えることができる。
【0008】
しかしながら、上記JIS規格サイズに従ったカセッテにFPDを収納する場合には、内部に収納される各部品(例えばシンチレータ、ガラス基板、回路基板、制御基板、基台等)の厚みを考慮すると、ハウジングのフロント側の面(放射線入射側の面)と各部品との間隙及びハウジングのバック側の面(放射線入射側とは反対側の面)と各部品との間隙は、それぞれ1mm程度しか確保できない。
このため、特許文献4に記載されているような、放射線検出手段と筐体(ハウジング)との間に衝撃を吸収するための空間を設ける構成を採用することは困難である。
【0009】
また、このように、ハウジング内に確保できる空間が少ないことから、撮影時において想定される患者の体重による荷重によりハウジングが撓んで内部に空間がなくなってしまう。これにより、シンチレータや各種電子部品等に負荷がかかり、部品の破損や画質の劣化を生じる可能性がある。
【0010】
そこで、本発明は以上のような課題を解決するためになされたものであり、画像データのデジタル化を達成することのできるFPDであって、CR用のカセッテとの互換性を有する薄型であるとともに、外部からの荷重に対応でき、ポータブル撮影をすることが可能なカセッテ型放射線画像固体検出器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明は、
入射した放射線を検出して放射線画像情報を得るパネル状の検出手段と、
前記検出手段の、放射線の入射側とは反対側の面に配置される電子部品と、
矩形状部を有し、この矩形状部の中央部よりも各稜線近傍部の剛性が高く、前記検出手段及び前記電子部品を内蔵するハウジングと、
を備え、
前記電子部品は、前記ハウジングにおける前記矩形状部の各稜線に沿って配置されていることを特徴とするカセッテ型放射線画像固体検出器である。
【発明の効果】
【0012】
本発明のような方式のカセッテ型放射線画像固体検出器(カセッテFPD)によれば、電子部品が、ハウジングにおける矩形状部の各稜線に沿って配置されているので、外部からの荷重を受けてハウジングのフロント側(放射線入射側)やハウジング内部に収納された検出手段自体が撓んだ場合でも、電子部品がハウジングのバック側(放射線入射側の反対側)の面に干渉するのを防止でき、故障の誘発等を抑制可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図1から図21を参照しつつ、本発明に係るカセッテ型放射線画像固体検出器の一実施形態について説明する。ただし、発明の範囲を図示例に限定するものではない。
【0014】
図1は、本実施形態におけるカセッテ型放射線画像固体検出器(以下「カセッテ型検出器」と称する。)の斜視図である。
本実施形態におけるカセッテ型検出器1は、カセッテ型のフラットパネルディテクタ(Flat Panel Detector:以下「FPD」と称する。)であり、カセッテ型検出器1は、照射された放射線を検出しデジタル画像データとして取得する検出器ユニット2(図12等参照)と、この検出器ユニット2を内部に収納するハウジング3とを備えている。
【0015】
図2は、本実施形態におけるハウジング3の分解斜視図である。
図2に示すように、ハウジング3は、底面部41と側壁部42を有してほぼ箱型に形成されカセッテ型検出器1を撮影に用いる際に放射線入射側となる側に開口部48を有するバック部材4と、カセッテ型検出器1の放射線入射側に配置されたフロント部材5とを備えている。
【0016】
フロント部材5は、矩形状に形成された矩形状部である平面部51と、この平面部51と一体的に構成された曲げ立ち上がり部(側壁部)52とを備えており、バック部材4と同様にほぼ箱型に形成されている。フロント部材5は、カセッテ型検出器1を撮影に用いる際に放射線入射側と反対側に開口部58を有し、バック部材4の開口部48を塞ぐ蓋として機能する。
【0017】
ハウジング3は、バック部材4とフロント部材5とを接合することにより一体となるようになっている。バック部材4とフロント部材5との接合手法は特に限定されず、例えばねじ止めすることにより接合してもよいし、接着固定してもよい。
なお、フロント部材5の曲げ立ち上がり部52の高さとバック部材4の側壁部42の高さとは、ほぼ1:1であることが好ましい。
【0018】
本実施形態において、ハウジング3の放射線入射方向の厚さは、15mmとなっている。なお、ハウジング3の放射線入射方向の厚さ寸法は15mmに限定されないが、従来のスクリーン/フィルム用のカセッテにおけるJIS規格サイズ(15mm+1mmであり、かつ15mm−2mm)の範囲内に収まる寸法であることが好ましい。CR用のカセッテやブッキーテーブル等、既存の装置のほとんどがこのスクリーン/フィルム用のカセッテにおけるJIS規格サイズに合わせて作られているため、ハウジング3の寸法をJIS規格サイズに合わせることにより、カセッテ型のFPDであるカセッテ型検出器1による撮影を行う場合でも既存の設備を利用することができる。
【0019】
ハウジング3は、このフロント部材5の平面部(矩形状部)51の中央部よりも平面部51と曲げ立ち上がり部52との稜線近傍の曲げ剛性(曲げ強度)が高くなるように構成されている。すなわち、平面部(矩形状部)51の中央部はなんら支えるものがないため、フロント部材5の平面部51の板厚のみの強度しかなく、外部(患者)から加わる力(患者の体重)等による影響が大きいのに対して、平面部51の稜線近傍は、平面部51と一体的に形成された曲げ立ち上がり部52によって支えられているため、外部から力が加わったときに、撓み、歪みを生じにくくなっている。
【0020】
ハウジング3を構成する部材のうち、少なくともフロント部材5は、カーボン繊維等を含む放射線透過率の高い材料によって形成されている。また、ハウジング3は、外部からの荷重に対する撓みを極力小さくするために、少なくとも放射線の入射側の面であるフロント部材5が、例えば超強弾性率カーボン繊維を使った超強弾性率材料で形成されていることが好ましい。従来、カーボン板としては、引張弾性率が約200GpaであるPAN系カーボン繊維を使用したものが多い。これに対して、例えばピッチ(PITC)系カーボン繊維を使用したカーボン板であれば、引張弾性率が約800Gpaのものも存在しており、このようなピッチ系カーボン繊維を使用したカーボン板を、フロント部材5を形成する超強弾性率材料として用いることが好ましい。
ハウジング3の形成手法は特に限定されないが、例えば、カーボン繊維にエポキシ樹脂、不飽和ポリエステル等の熱硬化性樹脂を含浸させたシートであるカーボンプリプレグ(カーボン板の材料)をフロント部材5の形状に成型された型の上に積層し、これを高温高圧で焼き固めることにより、所望の形状とすることができる。
【0021】
また、本実施形態において、バック部材4は、例えばアルミニウム、マグネシウムのような軽金属で形成されている。なお、バック部材4を形成する材料は特に限定されず、例えばフロント部材5と同様にカーボン繊維等を含む材料によって形成されていてもよい。
【0022】
ハウジング3内部に収納された検出器ユニット2に外部からの荷重(患者の体重等)の影響が及ばないようにするためには、フロント部材5とバック部材4とが接合された状態において、カセッテ型検出器1の全体としての撓み量が検出器ユニット2の許容撓み量以内となるように規制する必要がある。
【0023】
ここで、実際の患者撮影時に想定されるカセッテ型検出器1のハウジング3の最大撓み量、及び検出器ユニット2を構成するガラス基材213,214に作用する応力について、データを示しつつ説明する。
図3は、カセッテ型検出器1のハウジング3の撓み量についてシミュレーションした結果を示したものである。
【0024】
このシミュレーションにおいて、フロント部材5及びバック部材4は、カーボン繊維として引張弾性率790Gpaのピッチ系カーボン繊維を使用し、かつ、カセッテ(ハウジング3)の長手方向を0度、この長手方向に直交する方向を90度として上記カーボン繊維を交差配置させてなるカーボン板の材料(例えばカーボンプリプレグ)により形成されたものを用い、このフロント部材5及びバック部材4により一体形成されたハウジング3の側面部分の高さが8mm、フロント部材5及びバック部材4の板厚がそれぞれ2mmの構造であるカセッテ型検出器1を用いた。また、そのサイズとしては、最も撓みを生じやすい半切サイズ(14インチ×17インチのサイズ)のものを用いた。
なお、カセッテ型検出器1にかかる荷重は、撮影姿勢によって異なるが、想定しうる使用環境の中で最も大きな荷重がかかる撮影姿勢は、患者がベッドの上に横向きに横臥して、その臀部の下にカセッテ型検出器1を配置した場合であるため(図5参照)、図3に示すシミュレーションは、このような撮影姿勢の場合に、患者の下に配置されたカセッテ型検出器1を移動させる場合について行っている。
【0025】
図3において、パターン1は、図4(a)に示すように、片持ち梁的にカセッテ型検出器1の一端部のみを保持して、上から荷重のかかった状態のカセッテ型検出器1を移動させる場合のカセッテ型検出器1の最大撓み量である。例えば、ベット上に横臥している患者の臀部の下に一旦カセッテ型検出器1をセットした上で、この位置を変えるために検出器を1人で移動させる場合を想定している。パターン2は、図4(b)に示すように、対角に位置する2箇所の端部を保持して、パターン1と同様に荷重のかかった状態のカセッテ型検出器1を移動させる場合のカセッテ型検出器1の最大撓み量である。これは、例えば検出器を2人で移動させる場合を想定している。
ベッド上に横臥している患者の下に挿入されたカセッテ型検出器1を移動させる際にカセッテ型検出器1のハウジング3にかかる最大荷重は約30kgであるとの実測結果が得られたため、パターン1及びパターン2とも、カセッテ型検出器1を保持している端部に30kgの荷重のかかった状態における撓み量を測定した。
この結果、図3に示すように、いずれの場合においても、カセッテ型検出器1のハウジング3の最大撓み量を2mm未満とすることができる。
【0026】
また、図5は、ブッキーテーブル等、比較的剛性の高いものの上にカセッテ型検出器1を載置して撮影を行う場合に、検出器ユニット2のガラス基材213,214(図13等参照)に作用する力(応力)について、圧力測定装置7(図6参照)を用いて測定した結果を示したものである。
【0027】
圧力測定装置7は、例えば、図6に示すように、外部から加わる圧力の変化を感圧素子にて電気信号に変換し出力するセンサシート71と、センサシート71から出力された電気信号をセンサコネクタ72を介して受信するコンピュータ73とを備えるものであり、具体的には、ニッタ株式会社製 I−SCANシステムを用いて測定を行った。
測定は、患者が仰向けに横臥した状態で、その臀部の下にカセッテ型検出器1を配置した場合及び背中の下にカセッテ型検出器1を配置した場合、患者が横向きに横臥した状態で、その臀部の下にカセッテ型検出器1を配置した場合及び肩部分の下にカセッテ型検出器1を配置した場合、という4種類の撮影姿勢と撮影部位の組合せについて行い、それぞれの場合に、圧力測定装置7のセンサシート71を患者の撮影部位の下に配置して、カセッテ型検出器1のハウジング3にかかる圧力を測定した。
【0028】
前述のように、カセッテ型検出器1にかかる荷重が最も大きくなる撮影姿勢は、患者がベッドの上に横向きに横臥して、その臀部の下にカセッテ型検出器1を配置した場合である。このような撮影姿勢で、例えば、体重100kgの患者の撮影を行う場合、カセッテ型検出器1の検出器ユニット2のガラス基材213,214に作用する最大荷重は、図5に示すように、11kg前後となる。
【0029】
また、上記のようにカセッテ型検出器1を片持ち梁的に保持して移動させる際に生じるハウジング3の撓み量(歪み量)は2mm以下であり、一方、検出器ユニット2の許容撓み量は6mmであるので、患者の全体重がハウジング3にかかる全荷重撮影を行う際に、一旦患者の下にセットされたカセッテ型検出器1の移動、ポジション変更等を行っても、ガラス基材213,214に作用する最大応力がガラス基材213,214の許容応力を超えることがなく、ガラス基材213,214の割れ等、故障を誘発することがない。
【0030】
すなわち、図7に示すように、8mm以下のガラス板(ガラス基材)の場合、カセッテ型検出器1を移動させる際等に作用する瞬間的にかかる力に対する許容応力(短期許容応力)は、ガラス基材の面内において24.5MPaである。
そして、ガラス基材213,214のように矩形状の板状部材の4辺を支持した状態で等分布荷重をかけた場合、図8に示すように、最大応力は23MPaであり、最大撓み量は6mmである。
なお、図8における最大応力は、図9に示すように、4辺を支持された矩形状の板状部材の長手方向をb、長手方向に直交する方向をaとしたときに、辺長比b/aが1.2である場合の係数α、βを定め(図10参照)、式(1)によって算出し、最大撓み量については、同様の条件下で、式(2)により算出した。
【数1】

【数2】

【0031】
以上のように、カセッテ型検出器1を使用する上で想定しうる最大限の荷重をかけた場合に生じる最大応力は23MPaであり、最大撓み量は6mmであるところ、本実施形態におけるガラス基材213,214のように、8mm以下のガラス板(ガラス基材)の場合の許容応力は24.5MPaであり、また、6mm以内の撓み量を許容するものである。したがって、どのような撮影姿勢で撮影を行う場合でも、ガラス基材213,214及びこれを含む検出器ユニット2に割れ等の故障が生じることはないといえる。
【0032】
なお、ハウジング3は、上記のような構成のものに限定されず、CRシステムにおいて実用化されているカセッテの一般的な構成のものを採用することができる。すなわち、例えば、カセッテが分離可能なフロント板とバック板とから構成され、複数のロック爪を備えるロック機構によってフロント板とバック板とをロックする構成のハウジングの場合(例えば、特開2002−156717参照)や、筐体と、筐体に装着されるとともに、少なくとも一部分が筐体に対して開閉自在なカバー部材とを備え、筐体に設けられた凹部にカバー部材に設けられた突起部を嵌合させることにより、筐体とカバー部材とをロックする構成のハウジングの場合(例えば、特開2001−66721参照)でも、カセッテをロックした状態(撮影に使用する状態)における最大撓み量は、上記実施形態と同程度の5mm未満であり、前記ガラス基材213,214の許容撓み量はこれより大きいため、ガラス基材213,214及びこれを含む検出器ユニット2に割れ等の故障が生じることがない。
このように、本発明による場合には、カセッテ型検出器1のハウジング3の強度を向上させるために特別な構成を要しないため、ハウジング3の設計の自由度を高めることができる。
【0033】
バック部材4の長尺方向に直交する側の一端には、図2に示すように、側面から裏面にかけてバック側切り欠き部43が設けられており、フロント部材5の長尺方向に直交する側の一端であって、このバック側切り欠き部43に対応する位置には、フロント側切り欠き部53が設けられている。
バック側切り欠き部43及びフロント側切り欠き部53の幅寸法は、後述する充電池25(図12等参照)の幅寸法よりも大きいことが好ましい。また、本実施形態において、フロント側切り欠き部53はフロント部材5の端部から中央部に向かって8mm切り欠かれている。なお、フロント側切り欠き部53をフロント部材5の端部から中央部に向かってどの程度切り欠くかは特に限定されないが、6mm以上が好ましく、8mm以上であればさらに好ましい。
本実施形態において、ハウジング3は、バック部材4とフロント部材5とを接合すると、バック側切り欠き部43とフロント側切り欠き部53とによって、後述する充電池25を出し入れ可能な取出し口31が形成されるようになっている。
【0034】
また、ハウジング3は、この取出し口31に嵌め込まれる蓋部材8を備えており、取出し口31に蓋部材8を嵌め込むことによってハウジング3の内部は密閉された空間となる。本実施形態において、蓋部材8は、例えば非導電性のプラスチック等の非導電性の材料によって形成されている。
【0035】
図11(a)は、図2における蓋部材8を矢視A方向から見た平面図であり、図11(b)は、図11(a)におけるB−B断面図である。図2及び図11(b)に示すように、蓋部材8は、バック側切り欠き部43に対応する側面部81及び下面部82と、フロント側切り欠き部53に対応する上面部83とからなり、取出し口31の形状に合わせて側面視ほぼコ字状となっている。なお、蓋部材8の形状はここに例示したものに限定されず、例えばL字状等であってもよい。この場合には、フロント側切り欠き部及びバック側切り欠き部の形状もこれに対応する形状とする。
【0036】
蓋部材8の上面部83及び下面部82の側端面には、図11(a)に示すように、ガイド用凸部85,85が設けられており、フロント側切り欠き部53及びバック側切り欠き部43には、図2に示すように、このガイド用凸部85,85を案内するガイド用溝44,54が設けられている。蓋部材8は、ガイド用凸部85,85をガイド用溝44,54に沿ってスライドさせることにより取出し口31に嵌め込まれるように構成されている。なお、蓋部材8を取出し口31に嵌め込む構成は、ここに例示したものに限定されない。例えば、蓋部材の下面部とバック部材、又は上面部とフロント部材とをヒンジを介して接続し、ヒンジの軸を中心に蓋部材を回動させることにより取出し口に対して蓋部材が開閉可能となるように構成してもよい。
【0037】
また、蓋部材8の側面部81には、カセッテ型検出器1と外部の機器との間で無線により情報の送受信を行うためのアンテナ装置9が埋め込まれている。
【0038】
図2及び図11に示すように、アンテナ装置9には金属からなる平板状の一対の放射板91,92と、一対の放射板91,92を連結し、当該一対の放射板91,92に対して給電する給電部93とが設けられている。
本実施形態において、一対の放射板91,92のうち、一方の放射板91は、正面視形状が台形となるように形成されており、他方の放射板92は、正面視形状がほぼ円形となるように形成されている。そして、給電部93は、一方の放射板91の上底部の略中央に接続されるとともに、他方の放射板92の一部と接続されている。
給電部93によって連結されることで、一対の放射板91,92の間には、所定の間隙が形成されている。
【0039】
なお、アンテナ装置9の種類・形状は、ここに例示したものに限定されない。また、アンテナ装置9は蓋部材8の側面部81に埋め込まれている場合に限定されず、蓋部材8の外側や内側に貼付されていてもよい。ただし、アンテナ装置9は、金属やカーボン等の導電性材料からなる導電性部材に近接した位置に設けると受信感度(受信利得)が低下することから、カーボン等の導電性材料で形成されているフロント部材5や金属等で形成されている各種電子部品22(図12等参照)からできるだけ離れた位置に設けることが好ましく、少なくとも6mm以上離れていることが好ましく、8mm以上離れていればさらに好ましい。
この点、本実施形態では、前述のようにフロント側切り欠き部53はフロント部材5の端部から中央部に向かって8mm切り欠かれており、ここに非導電性の材料で形成された蓋部材8が嵌め込まれる。このため、蓋部材8の側面部81に設けられたアンテナ装置9は、カーボン繊維等の導電性材料を含んで形成されているフロント部材5から8mm離れた位置に配置されることなり、受信感度(受信利得)を維持する上で好ましい。
【0040】
バック部材4の側面のうちバック側切り欠き部43が形成されている面と同一面上には、図1及び図2に示すように、ハウジング3の内部に設けられた充電池25(図12等参照)を充電する際に外部の電源等と接続される充電用端子45が形成されており、また、カセッテ型検出器1の電源のON/OFFを切り替える電源スイッチ46が配置されている。また、フロント部材5の曲げ立ち上がり部52の一端であって、前記電源スイッチ46に対応する位置には、電源スイッチの上縁部が嵌め込まれる切り欠き部55が形成されている。さらに、この切り欠き部55が形成されている曲げ立ち上がり部52と平面部51とによって形成される角部には、例えばLED等で構成され充電池25の充電状況や各種の操作状況等を表示するインジケータ56が設けられている。
【0041】
図12は、検出器ユニット2がハウジング3に収納された状態を下側(撮影時の放射線入射側とは反対側)から見た平面図であり、図13は、図12におけるC−C断面図、図14は、図12におけるD−D断面図、図15は、図12におけるE−E断面図である。なお、図12では、便宜上バック部材4の底面部41がない状態でハウジング3の内部の状態を示している。
【0042】
図12から図15に示すように、検出器ユニット2は、検出手段としての検出パネル21、各種の電子部品22を実装した回路基板23等を備えて構成されている。本実施形態では、回路基板23は、樹脂等の柔軟性を有する材料で形成された基台24に固定され、この基台24を検出パネル21に対して接着固定等することによって回路基板23が基台24を介して検出パネル21に固定されている。なお、基台24は本発明の必須の構成要素ではなく、基台24を介さずに回路基板23等を直接検出パネル21に固定する構成としてもよい。
【0043】
図12に示すように、本実施形態では、電子部品22を搭載する回路基板23が4つに分割されており、それぞれ検出パネル21の各角部近傍に寄せて配置されている。また、電子部品22は、回路基板23上に検出パネル21の外周に沿って配置されている。電子部品22は、できるだけ検出パネル21の各角部に近い位置に配置されることが好ましい。電子部品22を回路基板23上にこのように配置することによって、検出器ユニット2をハウジング3に収納した際に電子部品22がハウジング3の角部近傍及びフロント部材5の平面部51(矩形状部)の稜線に沿って配置される。
【0044】
なお、回路基板23の形状、数、配置、及び、回路基板23上に設けられる電子部品22の形状、数、配置は、図示例に限定されないが、外部からの荷重が加わった際に検出器ユニット2自体が撓んで応力を吸収しやすくすることと、回路基板23自体の撓み量を小さくして回路基板23の破損を防止するためには、電子部品22及びこれを搭載する回路基板22を一体的に形成するのではなく、複数に分割してハウジング3の内部に配置することが好ましい。また、外部からの荷重が加わった際に電子部品22がバック部材4の底面部41と干渉しないように、電子部品22はできるだけハウジング3の中央部分を避けて、フロント部材5の平面部51(矩形状部)の稜線に近い位置に配置されることが好ましく、より好ましくはできるだけフロント部材5の角部に近い位置に配置される。
後述する信号検出部151(図21参照)から回路基板23に対する配線は信号検出部151の側面、すなわち、検出パネル21の側面から出ているため、このように回路基板23及びこれに搭載される電子部品22を検出パネル21の各角部近傍に配置し、平面部51の稜線に沿って配置すれば、無駄な寄生容量の発生も抑えることができ望ましい。
【0045】
本実施形態において、回路基板23上に配置される電子部品22としては、例えば各部の制御を行う制御部27(図21参照)を構成するCPU(central processing unit)(図示せず)、ROM(read only memory)、RAM(Random Access Memory)等からなる記憶部(図示せず)、走査駆動回路16(図21参照)、信号読出し回路17(図21参照)等がある。なお、ROM、RAMとは別に、フラッシュメモリなどの書き換え可能な読出し専用メモリ等からなり検出パネル21から出力された画像信号を記憶する画像記憶部を備えていてもよい。
【0046】
また、検出器ユニット2には、外部装置との間で各種信号の送受信を行う通信部(図示せず)が設けられている。通信部は、例えば、検出パネル21から出力された画像信号を前述のアンテナ装置9を介して外部装置に転送したり、外部装置から送信される撮影開始信号等をアンテナ装置9を介して受信するようになっている。
【0047】
また、基台24上であって、検出器ユニット2をハウジング3の内部に収納した際に取出し口31に対応する位置には、カセッテ型検出器1を構成する複数の駆動部(例えば、後述する走査駆動回路16(図21参照)、信号読出し回路17(図21参照)、通信部(図示せず)、記憶部(図示せず)、充電量検出部(図示せず)、インジケータ56、検出パネル21等)に電力を供給する電力供給部として充電池25が設けられている。
【0048】
充電池25としては、例えばニッカド電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池、小型シール鉛電池、鉛蓄電池等の充電自在な電池を適用することができる。また、充電池25に代えて、燃料電池等を適用してもよい。なお、電力供給部としての充電池25の形状、大きさ、個数、配置等は、図12等に例示したものに限定されない。
【0049】
充電池25は、基台24上の所定の位置に設置することにより前述の充電用端子45と電気的に接続されるようになっており、例えば、カセッテ型検出器1を外部電源と接続されるクレードル等の充電用装置(図示せず)に装着することによって充電用装置側の端子とハウジング3側の充電用端子45とが接続されて充電池25の充電が行われるようになっている。
【0050】
また、図12、図14及び図15に示すように、各電子部品22や充電池25の間には、これらの部品がハウジング3と干渉して破損することのないように保護する緩衝部材26が設けられている。なお、緩衝部材26や電子部品22の数、配置等はここに例示したものに限定されない。緩衝部材26の材料は特に限定されないが、例えば、ポリウレタン等の弾性を有する樹脂等を適用することができる。
【0051】
図16は、検出パネル21の平面図であり、図17は、検出パネル21を図16における矢視F方向から見た側面図であり、図18は、検出パネル21の図16におけるG−G断面図である。
検出パネル21は、入射した放射線を光に変換するシンチレータ層(発光層)211が一方の面に形成された第1のガラス基材214、シンチレータ層211の下側に積層されシンチレータ層211により変換された光を検出して電気信号に変換する信号検出部151(図21参照)が一方の面に形成された第2のガラス基材213等を備えて構成されており、これらが積層された積層構造となっている。
【0052】
シンチレータ層211は、例えば、蛍光体を主たる成分とし、入射した放射線に基づいて、波長が300nmから800nmの電磁波、すなわち、可視光線を中心に紫外光から赤外光にわたる電磁波(光)を出力するようになっている。
【0053】
このシンチレータ層211で用いられる蛍光体は、例えば、CaWO等を母体材料とするものや、CsI:TlやCdS:Tb、ZnS:Ag等の母体材料内に発光中心物質が付活されたものを用いることができる。また、希土類元素をMとしたとき、(Gd,M,Eu)の一般式で示される蛍光体を用いることができる。特に、放射線吸収及び発光効率が高いことよりCsI:TlやCdS:Tbが好ましく、これらを用いることで、ノイズの低い高画質の画像を得ることができる。
【0054】
シンチレータ層211は、例えば、セルロースアセテートフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム等の各種高分子材料(ポリマー)により形成された支持体(図示せず)の上に、例えば気相成長法により蛍光体を層状に形成したものであり、蛍光体の層は、蛍光体の柱状結晶からなっている。気相成長法としては、蒸着法、スパッタ法、化学蒸着(CVD:chemical vapor deposition)法等が好ましく用いられる。いずれの手法においても、蛍光体の層を支持体上に独立した細長い柱状結晶に気相成長させることができる。
【0055】
シンチレータ層211は、第1のガラス基材214の下側(撮影時に放射線が入射する側と反対側)に貼付されており、第1のガラス基材214の上側(撮影時に放射線が入射する側)にはガラス保護フィルム215がさらに積層されている。
また、シンチレータ層211の下側(撮影時に放射線が入射する側とは反対側)には、第2のガラス基材213が積層されており、第2のガラス基材213の下側にはガラス保護フィルム216がさらに積層されている。
【0056】
第1のガラス基材214及び第2のガラス基材213は、ともに厚みが0.6mm程度であり、レーザにより端面を切断することにより、端面、すなわち、切断面と、この切断面とガラス基材の上面との稜線部分、及び切断面とガラス基材の下面との稜線部分を平滑化する平滑化処理を施されている。なお、第1のガラス基材214及び第2のガラス基材213の厚みは0.6mmに限定されない。また、第1のガラス基材214と第2のガラス基材213とで厚みが異なるようにしてもよい。
【0057】
ここで、レーザで第1のガラス基材214及び第2のガラス基材213の端面を切断することによる平滑化処理について説明する。
ガラスを切断する場合、まずガラス表面に硬く鋭いもので筋(傷)をつけてガラスの厚さ方向に垂直クラックを形成し(スクライブ作業)、このクラックを伸ばすように応力をかけて割る(分断作業)という二つの作業工程を経るのが一般である。そして、従来は、ガラス表面に傷を付ける作業(スクライブ作業)を超硬合金、電着ダイヤモンド、焼結ダイヤモンド等を用いて行っていた。しかし、ガラス表面に超硬合金やダイヤモンド等で傷を付けた場合には、切断(分断)されたガラスの端面に微細な凹凸ができ、曲げ等の負荷をガラスにかけた場合に、この凹凸部分に応力が集中するため、割れやすいという問題があった。
この点、本実施形態では、レーザを用いて第1のガラス基材214及び第2のガラス基材213の表面に傷を付ける作業(スクライブ作業)を行う。このようにレーザを用いた場合には、切断(分断)後のガラスの端面が平滑化されるので、曲げ等の負荷に対するガラスの強度を高めることができる。
ガラス基材の割れは、外力の大きさというよりは、むしろ、ガラス基材断裁時に応力集中の元となる部分的なバリや、部分的な凸凹部が形成されることに起因しているため、このように断裁後の端面を平滑化する処理をすることにより、かなりの外力(応力)に対してもガラス基材の割れ等の発生を防止することができる。
【0058】
なお、レーザにより第1のガラス基材214及び第2のガラス基材213の端面を切断する切断装置としては、例えばレーザ発振部において、YAG(Yttrium Aluminum Garnet イットリウム・アルミニウム・ガーネット結晶)をレーザ光学媒体として用いるYAGレーザ等が好適に用いられるが、切断に用いられる切断装置はこれに限定されない。
【0059】
第2のガラス基材213の上側(シンチレータ層211に対向する側)には、シンチレータ層211から出力された電磁波(光)を電気エネルギーに変換して蓄積し、蓄積された電気エネルギーに基づく画像信号の出力を行う検出部である信号検出部151(図21参照)が形成されている。
【0060】
このように、本実施形態においては、信号検出部151が、シンチレータ層211の下側に積層されており、信号検出部151の下側に配置された第2のガラス基材213と、シンチレータ層211の上側に配置された第1のガラス基材214との間に、信号検出部151とシンチレータ層211とが対向した状態で挟み込まれる構成となっている。
従来は、ハウジングを通じて内部のガラス基材に作用する応力を抑制しなければ、ガラス基材の割れは防止できないと考えられていたため、ハウジングとガラス基材との間にスペースを設け、当該スペースに外力を緩和/減少せしめる緩衝部材を多用していた。このためハウジングが一層大型化するものであった。
この点、本発明者等は、ガラス基材の割れは、当該ガラス基材に作用する外力の大きさというよりは、むしろ、ガラス基材断裁時に応力集中の元となる部分的なバリや、部分的な凸凹部が形成されることに起因していることを見出した。そこで、上記の応力集中の元となる前記のバリや、凸凹部を除去すべく、断裁後の端面を平滑化する処理を行い、これにより、前述のような構成のハウジング3に作用する患者の体重等に起因する荷重や撓みに対して、ガラス基材213,214の割れ等の発生を防止することが可能となった。
【0061】
また、第1のガラス基材214と第2のガラス基材213との外周縁に沿って封止部材217が設けられており、この封止部材217によって第1のガラス基材214と第2のガラス基材213とが接着され、結合されている。これにより、曲げ等の負荷に対してより強度を高めることができる。
【0062】
さらに、第1のガラス基材214と第2のガラス基材213とを接着する際は、第1のガラス基材214と第2のガラス基材213との間の空間から空気を吸引する等により脱気した後に封止部材217による接着、結合を行うようになっており、これにより、空気に含まれる湿気がシンチレータ層211等に影響を及ぼすのを防ぐことができ、シンチレータ層211等の長寿命化を図ることができる。
【0063】
また、検出パネル21の各角部及び角部同士の中間近傍には検出パネル21を外部からの衝撃等から保護するための緩衝部材218がそれぞれ設けられている。
前述の回路基板23に搭載される電子部品22や前記充電池25は、使用により熱を帯びやすく、ハウジング3内に空気対流がないと、これら電子部品22等の設けられているカセッテ型検出器1の下側(放射線入射側とは反対側)に熱が篭って電子部品22等の温度が上昇し、精度や電池寿命等に悪影響を及ぼすおそれがある。この点、本実施形態のように、緩衝部材218を分割して配置させることにより、図19に示すように、緩衝部材218の間から熱が移動しやすくなり、ハウジング3内部の熱対流を増進させて、カセッテ型検出器1の下側の電子部品22等の温度上昇を抑制する効果がある。
【0064】
ここで、検出パネル21の回路構成について説明する。図20は、信号検出部151を構成する1画素分の光電変換部の等価回路図である。
【0065】
図20に示すように、1画素分の光電変換部の構成は、フォトダイオード152と、フォトダイオード152で蓄積された電気エネルギーをスイッチングにより電気信号として取り出す薄膜トランジスタ(以下「TFT」と称する。)153とから構成されている。フォトダイオード152は、電荷を生成し蓄積する撮像素子である。フォトダイオード152から取り出された電気信号は、増幅器154により信号読出し回路17が検出可能なレベルにまで電気信号を増幅するようになっている。
【0066】
具体的には、光の照射を受けるとフォトダイオード152で電荷が発生し、TFT153のゲートGに信号読出し用の電圧が印加されると、TFT153のソースSに接続されたフォトダイオード152から電荷がTFT153のドレインD側に流れ、増幅器154に並列に接続されたコンデンサ154aに蓄積される。そして、増幅器154から、コンデンサ154aに蓄積された電荷に比例して増幅された電気信号が出力されるようになっている。
【0067】
また、増幅器154から増幅された電気信号が出力されて電気信号が取り出されると、増幅器154やコンデンサ154aに並列に接続されたスイッチ154bがオンされてコンデンサ154aに蓄積された電荷が放出されて、増幅器154がリセットされるようになっている。なお、フォトダイオード152は、単に規制キャパシタンスを有した光ダイオードでもよいし、フォトダイオード152と光電変換部のダイナミックレンジを改良するように追加コンデンサを並列に含んでいるものでもよい。
【0068】
図21は、このような光電変換部を二次元に配列した等価回路図であり、画素間には、走査線Llと信号線Lrが直交するように配設されている。TFT153のソースSには前述のフォトダイオード152の一端側が接続されており、TFT153のドレインDは信号線Lrに接続されている。一方、フォトダイオード152の他端側は、各行に配された隣接するフォトダイオード152の他端側と接続されて共通のバイアス線Lbを通じてバイアス電源155に接続されている。
【0069】
このバイアス電源155は制御部27に接続され、制御部27からの指示によりバイアス線Lbを通じてフォトダイオード152に電圧がかかるようになっている。また各行に配されたTFT153のゲートGは、共通の走査線Llに接続されており、走査線Llは走査駆動回路16を介して制御部27に接続されている。同様に、各列に配されたTFT153のドレインDは、共通の信号線Lrに接続されて制御部27に制御される信号読出し回路17に接続されている。
【0070】
信号読出し回路17には、前述した信号線Lrごとの増幅器154が設けられている。信号読出し時には、選択された走査線Llに信号読出し用の電圧が印加され、それによりその走査線Llに接続されている各TFT153のゲートGに電圧が印加され、各TFT153を介して各フォトダイオード152から各信号線Lrにそのフォトダイオード152で発生した電荷が流れる。そして、各増幅器154でフォトダイオード152ごとに電荷が増幅され、1行分のフォトダイオード152の情報が取り出される。そして、この操作を走査線Llをそれぞれ切り替えてすべての走査線Llについて行うことで、全フォトダイオード152から情報を取り出すようになっている。
【0071】
各増幅器154にはそれぞれサンプルホールド回路156が接続されている。各サンプルホールド回路156は信号読出し回路17に設けられたアナログマルチプレクサ157に接続されており、信号読出し回路17により読み出された信号は、アナログマルチプレクサ157からA/D変換器158を介して前述した制御部27に出力されるようになっている。
【0072】
なお、TFT153は、液晶ディスプレイ等に使用されている無機半導体系のもの、有機半導体を用いたもののいずれであってもよい。
【0073】
また、本実施形態では、撮像素子として光電変換素子としてのフォトダイオード152を用いた場合を例示したが、光電変換素子はフォトダイオード以外の固体撮像素子を用いてもよい。
【0074】
この信号検出部151の側部には、各フォトダイオード(光電変換素子)152にパルスを送って当該各フォトダイオード152を走査・駆動させる走査駆動回路16と、各光電変換素子に蓄積された電気エネルギーを読み出す信号読出し回路17とが配されている。
【0075】
次に、本実施形態におけるカセッテ型検出器1の作用について説明する。
【0076】
本実施形態においては、まず、一方の面に信号検出部151を形成した第2のガラス基材213と、一方の面にシンチレータ層211を貼付した第1のガラス基材214とを、シンチレータ層211と信号検出部151とが対向するように積層し、第1のガラス基材214と第2のガラス基材213との間の空間の脱気処理を行った後、封止部材217によって両ガラス基材213,214を接着、結合させる。次に、各種電子部品22を配置した回路基板23及び充電池25を所定の位置に搭載した基台24を、回路基板23及び充電池25が搭載された側が下になるように第1のガラス基材214の裏面側に固定する。これにより、検出器ユニット2が完成する。
【0077】
次に、回路基板23や充電池25の配置されていない箇所に適宜緩衝部材26を配置した上で、第1のガラス基材214が上になるように検出器ユニット2をバック部材4の中に収納する。そして、バック部材4の側面に設けられている電源スイッチ46、充電用端子45、インジケータ56と、各電子部品22とを電気的に接続させる。さらに、フロント部材5をバック部材4と接合し、蓋部材8を取出し口31に嵌め込む。これにより、蓋部材8に設けられているアンテナ装置9が検出器ユニット2の電子部品22と電気的に接続される。
【0078】
カセッテ型検出器1を撮影に使用する場合には、例えば、撮影対象である患者をベッドに寝かせ、ベッドと患者の身体との間にシンチレータ層211の設けられている側を上にしてカセッテ型検出器1を差し込み、撮影を行う。また、カセッテ型検出器1を既存のCR用のカセッテによる撮影の際に用いられるブッキーテーブル等にセットして使用することも可能である。
【0079】
以上のように、本実施形態によれば、ハウジング3の放射線入射方向の厚さが15mmであり、従来のスクリーン/フィルム用のカセッテにおけるJIS規格サイズの範囲内に収まる寸法であるため、カセッテ型のFPDであるカセッテ型検出器1による撮影を行う場合でもCR用のカセッテ用に設けられているブッキーテーブル等、既存の装置、設備を利用することができる。
【0080】
また、カセッテ型検出器1には撮影時に患者の体重等の負荷がかかるため、負荷に対する剛性(強度)が要求されるが、本実施形態では、検出パネル21を2枚のガラス基材(第2のガラス基材213、第1のガラス基材214)でシンチレータ層211及び信号検出部151を挟み込む構成とするとともに、これらのガラス基材213,214をレーザによって切断することで端面に平滑化処理を施しているので、ガラス基材213,214の曲げ剛性(曲げ強度)が高い。
また、検出器ユニット2を、矩形状部である平面部51を有しこの平面部51部の中央部よりも稜線近傍の曲げ剛性(曲げ強度)が高いハウジング3の内部に収納している。
このため、カセッテ型のFPDであるカセッテ型検出器1をJIS規格サイズに適合するように薄型化した場合でも、カセッテ型検出器1全体として撓みや変形を生じにくい。また、ハウジング3内部に収納された検出器ユニット2は、外部からの負荷(例えば患者の体重)に対してある程度柔軟に撓みを許容するので、検出パネル21等の破損や歪みを生じにくく、高精度の撮影を行うことができる。
【0081】
さらに、電子部品22等を、ハウジング3の中央部分を避けて、曲げ剛性が高いハウジング3の角部近傍及び矩形状部である平面部51と曲げ立ち上がり部52との稜線に沿って配置しているので、外部から負荷がかかった際に電子部品22等が破損するのを防止できる。また、フロント部材5の中央部が外部からの負荷によって下方向に撓み検出器ユニット2がある程度撓んだ場合でも、電子部品22等がハウジング3の底面部41に干渉しにくいため、電子部品22等の破損や故障の発生を防止することができる。
【0082】
また、工場における生産過程での検出器ユニット2の組み付け作業精度等についてあまり厳密さが要求されないため、歩留まりの向上が期待できる。
【0083】
また、2枚のガラス基材(第1のガラス基材214、第2のガラス基材213)でシンチレータ層211及び信号検出部151を挟み込んでいるので、外部からの負荷がかかった際等に、シンチレータ層211や信号検出部151が破損するのを防ぐことができる。
【0084】
また、第1のガラス基材214と第2のガラス基材213との間の空間を脱気しているので、空気に含まれている湿気によるシンチレータ層211の腐食等を防止することができる。
【0085】
また、本実施形態では、アンテナ装置9が、導電性材料で形成されている部材(フロント部材5)から6mm以上離れた位置に配置されているので、アンテナ装置9の受信感度(受信利得)を高く維持することができる。
【0086】
なお、本実施形態においては、ハウジング3がバック部材4とフロント部材5とから構成されている場合を例としたが、ハウジング3の構成はこれに限定されない。
例えば、図22に示すように、ハウジング6が中空の筒状部材61とその両端部を閉塞する蓋部材62とから構成されているものでもよい。この場合、ハウジング6を構成する筒状部材61は、例えば、心材(型)の上にカーボン繊維を巻回して形状を整え、巻回したカーボン繊維の上に熱硬化性樹脂を流した上で、高温高圧で焼き固めることにより成型し、その後心材を抜き取ることによって形成する。ハウジング6をこのような構成とする場合には、一方の蓋部材62に電源スイッチ46、充電用端子45、インジケータ56及びアンテナ装置9を設ける。この場合、ハウジング6のうち筒状部材61についてはカーボン繊維によって一体的に形成することができるため、繋ぎ目がなく剛性及び密閉性の高いものとすることができるとともに、製造工程の簡易化を図ることができる。
【0087】
また、本実施形態では、検出パネル21がシンチレータ層211と信号検出部151とによって構成されている間接変換方式のFPDを例として説明したが、FPDは間接変換方式のものに限られない。例えば、放射線を吸収し放射線を電荷に変換するアモルファス・セレン(a−Se)層を設け、このa−Se層の中に放射線フォトンを高電圧で引き込むことにより、検出器に照射された放射線の放射線エネルギーを直接電荷量に変換する(電気信号化する)直接変換方式のFPDにおいても、a−Se層を2枚のガラス基材の間に挟みこむ本発明の構成を適用することが可能である。
【0088】
また、本実施形態では、シンチレータ層211が支持体に気相成長させた蛍光体層であり、これを第1のガラス基材214の一方の面に貼付することによってシンチレータ層211を第1のガラス基材214の上に形成する場合を例としたが、シンチレータ層211はこれに限定されず、例えば、第1のガラス基材の下側(放射線入射側とは反対側)の面に蛍光体を直接蒸着させる等の手法により第1のガラス基材の上にシンチレータ層を形成するようにしてもよい。
【0089】
さらに、本実施形態では、第2のガラス基材213上に信号検出部151を形成する構成としたが、信号検出部151を第2のガラス基材とは別個のものとして形成し、これを第2のガラス基材の上に載置する構成としてもよい。
【0090】
また、本実施形態では、端面を平滑化する平滑化処理の手法としてレーザを用いてガラス表面に傷を付ける場合を説明したが、平滑化処理の手法はここに例示したものに限定されない。例えば、超硬合金やダイヤモンド等を用いて第1のガラス基材及び第2のガラス基材を切断した後、その切断端面を研磨したり、又は切断端面をレーザにより加熱処理するといった事後的処理を行うことによって端面の平滑化を行ってもよい。
また、本実施形態ではレーザによりガラス表面に傷を付けてから切断(分断)するという2段階の作業工程を踏む場合を例として説明したが、レーザによりガラス基材の切断まで行うような構成としてもよい。
【0091】
また、本実施形態では、電源供給部として、充電可能な二次電池(充電池25)を用いる場合を例として説明したが、電源供給部は二次電池に限定されない。例えば、マンガン電池、ニッケル・カドミウム電池、水銀電池、鉛電池等、電池交換が必要な一次電池を用いてもよい。
【0092】
なお、六切サイズ(8インチ×10インチのサイズ)又は四切サイズ(10インチ×12インチのサイズ)の場合には本実施形態に示した通りの配置でよいが、半切サイズ(14インチ×17インチのサイズ)の場合には、蓋部材8を嵌め込む取出し口31の位置はハウジング3の各角部であることが好ましい。取出し口31のような切り欠き部があると、その部分の強度が弱まってしまい、カセッテ型検出器1のサイズが大きくなるほどその影響が顕著となることから、ハウジング3内で最も強度の高い各角部に取出し口31を配置して、できるだけ強度の低下を防止する必要があるためである。この場合には、充電池25も蓋部材8に対応する位置に配置するようにする。
【0093】
その他、本発明が上記実施の形態に限らず適宜変更可能であるのは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本実施形態に係るカセッテ型検出器を示す斜視図である。
【図2】本実施形態におけるハウジングの分解斜視図である。
【図3】ハウジングの撓み量についてのシミュレーション結果を示すグラフである。
【図4】片持ち梁的に保持した場合の荷重のかかり方を説明する説明図である。
【図5】撮影姿勢ごとにガラス基材にかかる荷重を示すグラフである。
【図6】圧力測定装置の概略構成を示す図である。
【図7】ガラス基材の許容応力を示す説明図である。
【図8】4辺支持のガラス基材における最大応力、最大撓み量を示す説明図である。
【図9】4辺支持のガラス基材について説明する説明図である。
【図10】4辺支持のガラス基材における係数を示す図である。
【図11】図11(a)は、蓋部材を図2における矢視A方向から見た正面図であり、図11(b)は、図11(a)のB−B断面図である。
【図12】図1に示すカセッテ型検出器の内部構成を示す概略図である。
【図13】図12のC−C断面図である。
【図14】図12のD−D断面図である。
【図15】図12のE−E断面図である。
【図16】本実施形態における検出パネルを示す平面図である。
【図17】図16に示す検出パネルを矢視F方向から見た側面図である。
【図18】図16に示す検出パネルのG−G断面図である。
【図19】電子部品等から発生する熱の移動を説明する説明図である。
【図20】信号検出部を構成する光電変換部の1画素分の等価回路構成図である。
【図21】図20に示す光電変換部を二次元に配列した等価回路構成図である。
【図22】図1に示すカセッテ型検出器の一変形例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0095】
1 カセッテ型検出器(カセッテ型放射線画像固体検出器)
2 検出器ユニット
3 ハウジング
4 バック部材
5 フロント部材
8 蓋部材
9 アンテナ装置
21 検出パネル
22 電子部品
23 回路基板
24 基台
25 充電池(電力供給部)
26 緩衝部材
41 底面部
42 側壁部
51 平面部(矩形状部)
52 曲げ立ち上がり部
151 信号検出部(検出部)
211 シンチレータ層
213 第2のガラス基材
214 第1のガラス基材
217 封止部材(接着部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射した放射線を検出して放射線画像情報を得るパネル状の検出手段と、
前記検出手段の、放射線の入射側とは反対側の面に配置される電子部品と、
矩形状部を有し、この矩形状部の中央部よりも各稜線近傍部の剛性が高く、前記検出手段及び前記電子部品を内蔵するハウジングと、
を備え、
前記電子部品は、前記ハウジングにおける前記矩形状部の各稜線に沿って配置されていることを特徴とするカセッテ型放射線画像固体検出器。
【請求項2】
前記ハウジングは、少なくとも前記放射線の入射側の面が超強弾性率材料で形成されていることを特徴とする請求項1に記載のカセッテ型放射線画像固体検出器。
【請求項3】
前記超強弾性率材料は、ピッチ系カーボン繊維を含むことを特徴とする請求項2に記載のカセッテ型放射線固体検出器。
【請求項4】
前記電子部品及びこれを搭載する回路基板を複数備える場合に、
前記電子部品及びこれを搭載する回路基板を、複数に分割して前記ハウジング内に配置することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のカセッテ型放射線画像固体検出器。
【請求項5】
前記ハウジングの放射線入射方向の厚さが16mm以下であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のカセッテ型放射線画像固体検出器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2009−101053(P2009−101053A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−277527(P2007−277527)
【出願日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】