カッパカラギナーゼ及びカッパカラギナーゼ含有組成物
本発明は少なくとも1つのカラギナーゼ酵素を含む洗浄組成物、宿主細胞内でカラギナーゼ酵素を生成する方法、少なくとも1つのカラギナーゼをコードする組換えポリヌクレオチドを含む宿主細胞、及びカラギナーゼをコードする組換えポリヌクレオチドを提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのカラギナーゼ酵素、宿主細胞内でカラギナーゼ酵素を生成する方法、少なくとも1つのカラギナーゼをコードする組換えポリヌクレオチドを含む宿主細胞、及びカラギナーゼをコードしている組換えポリヌクレオチドを提供する。
【背景技術】
【0002】
洗剤及び他の洗浄組成物は、複雑な組合せの活性成分を含む。例えば、大部分の洗浄製品は、通常、界面活性剤システム、洗浄のための酵素、漂白剤、ビルダー、泡抑制剤、固形懸濁剤、固形放出剤、増白剤、軟化剤、分散剤、色移り抑制化合物、研磨剤、殺菌剤、及び香料を含む。近年の洗剤はいろいろな成分が含まれているにもかかわらず、混合的なシミの複雑さゆえ、完全に汚れを除去することが困難である。特に、そのような汚れは、糖質及び/又は糖質誘導体、繊維、細胞壁成分(例えば、植物物質、木、泥/クレイベースの汚れ、及びフルーツ)、並びに食品添加剤(例えば、食品抽出物及びカラギナン等の安定化剤)を含む。従って、そのような繊維物質の除去において、効果的な洗剤成分についての需要が存在する。
【発明の概要】
【0003】
本発明は少なくとも1つのカラギナーゼ酵素を含む洗浄組成物、宿主細胞中でカラギナーゼ酵素を生成する方法、少なくとも1つのカラギナーゼをコードしている組換えポリヌクレオチドを含む宿主細胞、及びカラギナーゼをコードしている組換えポリヌクレオチドを提供する。
【0004】
本発明はカラギナーゼポリペプチドをコードしているポリヌクレオチド、及びカラギナーゼ酵素を生成するために遺伝的に操作される宿主細胞に関する。特に、本発明は導入される少なくとも1つのカラギナーゼをコードしている外来核酸配列を有するグラム陰性微生物、及びそのような宿主細胞においてこのカラギナーゼ酵素を生成するための方法に関する。幾つかの態様において、このグラム陰性微生物はバチルス属のメンバーである。幾つかの態様において、本発明はバチルス宿主細胞においてカッパカラギナーゼ(κ−カラギナーゼ)を生産するための方法及び組成物に関する。
【0005】
幾つかの態様において、本発明はカッパカラギナーゼ酵素をコードしている配列を含む単離された組換えポリヌクレオチドを提供する。ここにおいて、単離されたポリヌクレオチドは分泌シグナルペプチドをコードするポリヌクレオチド配列に作動可能に結合されている。幾つかの態様において、この分泌シグナルペプチドをコードしている配列はグラム陰性微生物由来である。幾つかの態様において、この分泌シグナルペプチドは配列番号10のAprEシグナル配列である。幾つかの態様において、カラギナーゼ酵素をコードしている配列は野生型カラギナーゼ(例えば、アルテロモナス(Alteromonas)属由来の野生型カッパカラギナーゼ)をコードしているポリヌクレオチドから最適化された配列を含む。幾つかの態様において、カラギナーゼをコードしている配列はアルテロモナスカラゲーノボラ(Alteromonas carrageenovora)由来の野生型カラギナーゼをコードしているポリヌクレオチドから最適化された配列を含む。幾つかの態様において、この最適化されたポリヌクレオチド配列は配列番号1又は3に対して少なくとも約70%同一である。他の態様において、このコドン最適化配列は配列番号1又は3に対して少なくとも約75%、又は少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%同一である。
【0006】
幾つかの態様において、本発明はカッパカラギナーゼ酵素をコードする単離された組換えポリヌクレオチドを含む発現カセットを含む発現ベクターを提供する。このカッパカラギナーゼ酵素をコードする単離ポリヌクレオチドは分泌シグナル配列をコードしているポリヌクレオチド配列に作動可能に結合している。幾つかの態様において、分泌シグナルペプチドをコードしている配列はグラム陰性微生物由来である。幾つかの態様において、この分泌シグナルペプチドは配列番号10のAprEシグナルペプチドである。幾つかの態様において、カラギナーゼ酵素をコードしているこの配列は野生型カラギナーゼ(例えば、アルテロモナス(Alteromonas)属由来の野生型カッパカラギナーゼ)をコードしているポリヌクレオチドから最適化された配列を含む。幾つかの態様において、カラギナーゼをコードしている配列はアルテロモナスカラゲーノボラ(Alteromonas carrageenovora)から得られた野生型カラギナーゼをコードしているポリヌクレオチドから最適化された配列を含む。幾つかの態様において、この最適化された配列は、配列番号1又は3の配列に少なくとも70%同一である。他の態様において、このコドン最適化配列は、配列番号1又は3に対して、少なくとも約75%、又は少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%同一である。幾つかの態様において、この発現ベクターは配列番号14及び15から選択されるポリヌクレオチド配列を有する発現カセットを含む。
【0007】
本発明は本発明の発現ベクターで形質転換させた宿主細胞も提供する。この発現ベクターはカッパカラギナーゼ酵素をコードしている単離された組換えポリヌクレオチドを含む発現カセットを含む。カッパカラギナーゼ酵素をコードしている単離されたポリヌクレオチドは分泌シグナルペプチドをコードしているポリヌクレオチド配列に作動可能に結合している。幾つかの態様において、分泌シグナルペプチドをコードしている配列はグラム陽性微生物由来である。幾つかの態様において、この分泌シグナルペプチドは配列番号10のAprEシグナルペプチドである。幾つかの態様において、このカラギナーゼ酵素をコードする配列は野生型カラギナーゼ(例えば、アルテロモナス(Alteromonas)属から得られた野生型カッパカラギナーゼ)をコードしているポリヌクレオチドから最適化された配列を含む。幾つかの態様において、このカラギナーゼをコードしている配列はアルテロモナスカラゲーノボラ(Alteromonas carrageenovora)から得られた野生型カラギナーゼをコードしているポリヌクレオチドから最適化された配列を含む。幾つかの態様において、この最適化された配列は配列番号1又は3に対して少なくとも約70%同一である。他の態様において、このコドン最適化配列は、配列番号1又は3に対して、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%同一である。幾つかの態様において、この発現ベクターは配列番号14及び15から選択されたポリヌクレオチドを有する発現カセットを含む。
【0008】
幾つかの態様において、本発明はシグナル配列及びカラギナーゼタンパク質を含む融合タンパク質をコードしている組換えポリヌクレオチドを含むバチルス宿主細胞を提供する。ここで、この宿主細胞からカラギナーゼ酵素を分泌し、宿主細胞は不活性プロテアーゼ遺伝子を有する。幾つかの態様において、このカラギナーゼタンパク質はカッパカラギナーゼである。幾つかの態様において、このバチルス宿主細胞は配列番号4に対して少なくとも約70%同一なアミノ酸配列を有するカラギナーゼタンパク質を分泌する。幾つかの態様において、このカッパカラギナーゼは配列番号4に対して少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、又は少なくとも約99%同一である。幾つかの態様において、このバチルス宿主細胞はnprE、aprE、epr、ispA、bpr、vpr、wprA、mpr−ybjF、及びnprBから選択される少なくとも1つの不活性プロテアーゼを有する。他の態様において、このバチルス宿主細胞はnprE、aprE、epr、ispA、及び/又はbprプロテアーゼ遺伝子から選択される少なくとも1つの不活性プロテアーゼ遺伝子を有する。更なる態様において、このバチルス宿主細胞はnprE及びaprEプロテアーゼ遺伝子から選択される少なくとも1つの不活性プロテアーゼ遺伝子を有する。(例えば、米国特許No.5,387,521、参照により本明細書に援用する。)他の態様において、この宿主細胞はバチルススブチリスのaprE遺伝子によりコードされるシグナル配列を含む。宿主細胞に含まれる組み換えポリヌクレオチドは、幾つかの態様において、発現カセットを形成するプロモーター及びターミネーターに作動可能に結合している。幾つかの態様において、この組換え核酸は宿主細胞のゲノム中に存在するが、他の態様では、宿主細胞内で自動的に複製されるベクター内に存在する。幾つかの態様において、この組換え核酸はバチルス宿主細胞においてカラギナーゼ融合タンパク質の発現について最適化される。
【0009】
幾つかの態様において、本発明は前述のバチルス宿主細胞の複数を含む細胞培養を提供し、培養培地も提供する。幾つかの態様において、この細胞の培地はカッパカラギナーゼタンパク質を含む。他の態様において、この培地はカッパカラギナーゼタンパク質を含む。更なる態様において、この培養細胞及び培養培地はカッパカラギナーゼタンパク質を含む。
【0010】
本発明はカッパカラギナーゼタンパク質を生成する方法も提供する。該方法は、前述のバチルス宿主細胞の培養に用いられる培養培地に、発現されたカッパカラギナーゼタンパク質を分泌するために好適な条件下で、前述のバチルス宿主細胞を培養する工程を含む。幾つかの態様において、この方法は前記培養培地からカッパカラギナーゼタンパク質を回収する工程を更に含む。任意の好適な回収方法を本発明の方法に用いることができる。本発明に従ってカッパカラギナーゼを生成するために用いるバチルス宿主細胞はシグナル配列及びカラギナーゼタンパク質を含む融合タンパク質をコードしている組換えポリヌクレオチドを含む。ここにおいて、この宿主細胞は細胞からカッパカラギナーゼタンパク質を分泌し、宿主細胞は不活性プロテアーゼ遺伝子を有する。幾つかの態様において、このバチルス宿主細胞は配列番号4に対して少なくとも約70%の同一なアミノ酸配列有するカラギナーゼタンパク質を分泌する。幾つかの態様において、このカッパカラギナーゼは配列番号4に対して少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、又は少なくとも99%同一性を有する。幾つかの態様において、このバチルス宿主細胞はnprE、aprE、epr、ispA、bpr、vpr、wprA、mpr−ybjF、及びnprBから選択される少なくとも1つの不活性プロテアーゼ遺伝子を有する。他の態様において、このバチルス宿主細胞はnprE、aprE、epr、ispA、及び/又はbprプロテアーゼ遺伝子から選択される少なくとも1つの不活性プロテアーゼ遺伝子を有する。更なる態様において、このバチルス宿主細胞はnprE及びaprEプロテアーゼ遺伝子から選択される少なくとも1つの不活性プロテアーゼ遺伝子を有する。(例えば、米国特許No.5,387,521、参照により本明細書に援用する)。他の態様において、この宿主細胞はバチルススブチリスのaprE遺伝子によりコードされるシグナル配列を含む。この宿主細胞に含まれている組換えポリヌクレオチドは、幾つかの態様において、プロモーター及びターミネーターに作動可能に結合して、発現カセットを形成する。幾つかの態様において、この組換え核酸は宿主細胞のゲノム中に存在しており、他の態様では、それは宿主細胞内で自動的に複製するベクター中に存在している。幾つかの態様において、この組換え核酸はバチルス宿主細胞において、カラギナーゼ融合タンパク質を発現するためにコドン最適化される。
【0011】
本発明はカラギナーゼ活性を含む洗浄組成物も提供する。幾つかの態様において、この洗浄組成物は配列番号4で定義されるカッパカラギナーゼに対して少なくとも約70%同一なアミノ酸配列を含む単離されたカッパカラギナーゼの有効量を含む。幾つかの態様において、このカッパカラギナーゼは配列番号4に対して少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、及び少なくとも約99%同一である。幾つかの態様において、この洗浄組成物は洗剤である。幾つかの態様において、これらの洗浄組成物は、ビルダー及び安定剤のほかに、少なくとも1つの他の酵素(例えば、プロテアーゼ、アミラーゼ、マンナーゼ、ペルオキシダーゼ、オキシドリダクターゼ、セルラーゼ、リパーゼ、クチナーゼ、ペクチナーゼ、ペクチンリアーゼ、キシラナーゼ、及び/又はエンドグルコシダーゼ)、酵素誘導体を更に含む。幾つかの態様において、追加的な酵素又は酵素誘導体はヘミセルラーゼ、ペルオキシダーゼ、プロテアーゼ、セルラーゼ、キシラナーゼ、リパーゼ、フォルフォリパーゼ、エステラーゼ、クチナーゼ、ペクチナーゼ、ケラチナーゼ、リダクターゼ、オキシダーゼ、オキシドリダクターゼ、フェノロキシダーゼ、リポキシゲナーゼ、リグニナーゼ、プルラナーゼ、タンナーゼ、ペントサナーゼ、マンナナーゼ、ベータグルコシダーゼ、アラビノシダーゼ、ヒアルノニダーゼ、コンドロイチナーゼ、ラッカーゼ、及びアミラーゼ、又はこれらの混合物から選択される。
【0012】
本発明は硬表面及び/又は製品(例えば、布製品のようなもの)にカラギナーゼ活性を含む洗浄組成物を接触させる工程を含む洗浄方法も提供する。幾つかの態様において、この洗浄組成物は配列番号4で定義されるカッパカラギナーゼに対して少なくとも70%の同一なアミノ酸を含む単離されたカッパカラギナーゼの有効量を含む。幾つかの態様において、このカッパカラギナーゼは、配列番号4に対して、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%の同一である。幾つかの態様において、この洗浄組成物は洗剤である。幾つかの態様において、この洗浄組成物は更にこれらの洗浄組成物は、ビルダー及び安定剤のほかに、少なくとも1つの他の酵素(例えば、プロテアーゼ、アミラーゼ、マンナーゼ、ペルオキシダーゼ、オキシドリダクターゼ、セルラーゼ、リパーゼ、クチナーゼ、ペクチナーゼ、ペクチンリアーゼ、キシラナーゼ、及び/又はエンドグルコシダーゼ)を更に含む。幾つかの態様において、追加的な酵素又は酵素誘導体はヘミセルラーゼ、ペルオキシダーゼ、プロテアーゼ、セルラーゼ、キシラナーゼ、リパーゼ、フォルフォリパーゼ、エステラーゼ、クチナーゼ、ペクチナーゼ、ケラチナーゼ、リダクターゼ、オキシダーゼ、オキシドリダクターゼ、フェノロキソダーゼ、リポキシゲナーゼ、リグニナーゼ、プルラナーゼ、タンナーゼ、ペントサナーゼ、マンナナーゼ、ベータグルコシダーゼ、アラビノシダーゼ、ヒアルノニダーゼ、コンドロイチナーゼ、ラッカーゼ、及びアミラーゼ、又はこれらの混合物から選択される。幾つかの態様において、この洗浄方法は更に表面又は製品を洗浄組成物と接触させた後に表面又は製品をすすぐ工程を含む。幾つかの代替的態様において、本明細書で提供される任意の好適な組成物を洗浄方法に用いることができる。幾つかの態様において、この表面及び/又は製品はカッパカラギナンで汚された布を含む。他の態様において、この布製品はサラダドレッシング、バーベキューソース、及び/又はマーマレードで汚されている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1はアルテロモナスカラゲーノボラ(Alteromonas carrageenovora)由来の野生型CgkAκ−カラギナーゼ(Potinら、Eur.J.Biochem.228:971−5(1995))のアミノ酸配列(配列番号6)を示す。この野生型シグナル配列を下線で、成熟コード部分を太字で、C末端プロ配列をイタリック体で示す。
【図2】図2はDNA2.0ベクター内で、クローンしたときに、pJ31−7585となる、κ−カラギナーゼ(配列番号7)の成熟及びプロ領域をコードする合成コドン最適化遺伝子のポリヌクレオチド配列を示す。κ−カラギナーゼの成熟及びプローブ領域は太字で示す、成熟部分は下線で示す。AprEシグナル配列のエンドをコードしているDNA配列(GCGCGCAGGCA;配列番号8)及びストップ配列(TAAAAGCTT;配列番号9)はイタリック体で示す。
【図3】図3はκ−カラギナーゼをコードしているコドン最適化ポリヌクレオチドを含むp2JM−cgkA統合ベクターのマップである。
【図4】図4は3つのタイプのカラギナーゼ及び3つのタイプの洗剤中におけるκ−カラギナーゼの加水分解活性を示したバーダイアグラムを示す。図4A乃至Cは、それぞれ、カッパ(タイプI)、イオタ(タイプII)、及びカッパ(タイプIII)カラギナンの、AATCC HDL洗剤におけるκ−カラギナーゼの加水分解活性を示すバーダイアグラムである。図4D及び4Eは、それぞれ、カッパカラギナン(タイプI)における、HDD及びADW洗剤集のκ−カラギナーゼの活性を示している。
【図5】図5A及び図5Bは、それぞれ、サラダドレッシング及びバーベキューソースのシミにおける、AATCC HDL洗剤中のk−カラギナーゼの活性を示すバーダイアグラムである。汚れ除去活性は実施例3で説明するマイクロスウォッチ法を用いて決定した。
【図6】図6は、トマトジュース、チッカ(tikka)、草、ケチャップ、マスタード、バーベキューソース、及びチョコレート豆乳の汚れに対するATCC HDL洗剤中のκ−カラギナーゼの活性を示すバーダイアグラムである。汚れ除去活性は実施例4で説明するターゴトメーター法を用いて決定した。
【発明を実施するための形態】
【0014】
発明の説明
本発明は少なくとも1つのカラギナーゼ酵素を含む洗浄組成物、宿主細胞中でカラギナーゼ酵素を生産する方法、少なくとも1つのカラギナーゼ酵素をコードする組換えポリヌクレオチドを含む宿主細胞、及びカラギナーゼをコードする組換えポリヌクレオチドを提供する。
【0015】
定義
他の方法で定義しない限り、本明細書で用いる全ての技術的及び科学的用語は本発明の属する技術分野の当業者が通常理解しているものと同様の意味を有する。ここに含まれている用語を含む各種科学用語辞書はよく知られており、当業者に利用されている。本明細書で開示されているものと類似又は等しい任意の方法及び物質を本発明の実施又は試験に用いることができるが、代表的な方法及び物質を開示している。即ち、明細書全体を参照することにより以下で定義されている用語をより詳細に説明することができる。本明細書において用いられているように、「1つの」(a及びand)並びに「この」(the)の語は、別に定義しない限り、複数も意味するものとする。特に定義しない限り、核酸配列は左から右に向かって、5’から3’に向かって記載し、アミノ酸配列は左から右に向かって、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって記載する。本発明で開示されている特定の方法、手順、及び試薬は、文脈に応じて変化するので、当業者はこれらを特定の態様に限定しないことを理解するだろう。
【0016】
本明細書において参照されている全ての特許文献及び刊行物、並びにこれらに開示されている全ての配列は、個々の刊行物及び特許文献が、具体的及び個別に、参照により取り込まれるべきであると示唆されている範囲内において、参照により完全に本明細書に援用する。引用された全てのドキュメントは、関連する部分において、参照により本明細書に援用される。任意のドキュメントの引用は、本発明に関する従来技術を、受け入れることを許容するものではない。
【0017】
数値範囲は、この範囲を規定している数も含む。本明細書を通じて記載されている上限値は、各下限値を含み、そのような下限値も明確に本明細書に記載されている。本明細書を通じて記載されている下限値は、各より高い値を含み、そのような値も本明細書に記載されているものとする。本明細書を通じて記載されている数値範囲はより狭い数値範囲を含み、そのような数値範囲も本明細書に記載されているものとする。
【0018】
本明細書で提供されている標題は、本発明の側面又は態様を限定するものではない。これらは明細書全体を参照することにより理解することができる。前述のように、以下で定義される用語は明細書全体を参照することにより完全に理解される。
【0019】
「プロモーター」の語は細胞において下流ポリヌクレオチドの転写を導く核酸である。特定の場合、このポリヌクレオチドはコード配列を含み、プロモーターは、翻訳可能RNAへコード配列を転写させる。「aprEプロモーター」の語は、バチルススブチリスのスブチリシンの発現を自然に誘発するポリヌクレオチドプロモーター配列を意味する(Ferrariら、J.Bacteriol.170:289−295[1988])。
【0020】
「コード配列」の語は、プロモーターを含む好適な制御配列下におかれたときに、ポリペプチドを翻訳するmRNAへ転写される核酸配列である。幾つかの態様において、コード配列は単一のオープンリーディングフレームを含み、他の態様ではコーディング配列は例えば、イントロンにより分離された幾つかのオープンリーディングフレームを含む。コード配列はcDNA、ゲノムDNA、合成DNA、又は組換えDNAでよい。コーディング配列は通常開コドンにおいて開始し(例えば、ATG)、停止コドンで停止する(例えば、UAA、UAG、及びUGA)。
【0021】
「組換え」の語は、宿主細胞内で、自然発生しないポリヌクレオチド又はポリペプチドを意味する。幾つかの態様において、組換え分子は2つ以上の、非自然発生的方法で結合された自然発生配列を含む。幾つかの態様において、組換えポリペプチドは自然発生配列及び合成配列を含む。
【0022】
本明細書において、「カラギナーゼ」及び「カラギナーゼタンパク質」の語はグリコシルヒドロラーゼのファミリー16(GH16)のセリングリコシドヒドロラーゼを意味する。カラギナーゼタンパク質はIUMBM酵素命名法によりEC3.2.1.83に分類される活性を有している。この例示的なカラギナーゼタンパク質の活性は通常Michelら、Appl.Microbiol.Biotechnol71:23−33(2006)に記載されている。幾つかの態様において、本発明のカラギナーゼはカッパカラギナーゼ(「κ−カラギナーゼ」又は「CgkA」)である。
【0023】
別に指摘しない限り、カラギナーゼタンパク質中の全てのアミノ酸位置は配列番号2で定義されるアミノ酸配列に対応している。幾つかの態様において、カラギナーゼタンパク質の比較は、全米バイオテクロノロジーセンター(NCBI)のワールドワイドウェイブサイトから利用可能な、BALSTプログラム(例えば、Altschul、Nucl.Acids Res.,25:3389−3402[1997]及びSchaffer,Bioinformatics 15:1000−1011[1991]参照)を用いて配列番号2で、カラギナーゼタンパク質をアラインメントすることにより行うことができる。幾つかの態様において、カラギナーゼタンパク質の比較はこのBLASTプログラムを用いて配列番号4で定義されるカラギナーゼのアラインメントによりなされる。配列番号1は成熟タンパク質及びプロタンパク質(配列番号2)を含むカラギナーゼの未処理成熟形態をコードしている。配列番号3はカラギナーゼ(配列番号4)の成熟活性形態をコードしている。本発明の歩法により生成されるものは成熟活性形態であり、本発明の洗浄組成物中に含まれるものである。「完全長」カラギナーゼは分泌シグナルペプチド、成熟タンパク質、及びC末端プロ領域を含む。
【0024】
「自然発生」又は「野生型」の語は自然の中に見られるものと同一な、カラギナーゼタンパク質又は未修飾アミノ酸配列を有するカラギナーゼタンパク質をコードしているポリヌクレオチドを意味する。自然発生酵素は、特定の微生物中に発現される又は見られるこれらの酵素のような天然酵素を含む。野生型又は自然発生の配列は変異体又は合成配列が由来する配列のことである。野生型配列は相同又は異種タンパク質のいずれかをコードする。
【0025】
本明細書において、「合成」の語はインビトロケミカル又は酵素学的合成により生成された分子を意味する。これは、バチルスを含むがこれらに限定されない宿主有機体からの最適コドン仕様頻度により生成されたカラギナーゼ変異体核酸を含むがこれらに限定されない。
【0026】
「シグナル配列」、「シグナルペプチド」、及び「分泌シグナルペプチド」の語はタンパク質の成熟又はプレカーサー形態の分泌に関係する、任意の核酸及/又はアミノ酸配列を意味する。シグナル配列の定義は機能的なものであり、タンパク質の分泌に関与しているタンパク質遺伝子のN末端によりコードされる全てのアミノ酸配列を含む。
【0027】
「プロ配列」及び「プロ領域」の語は、カラギナーゼの分泌/生成に必要なカラギナーゼの成熟形態のC末端におけるアミノ酸配列を意味する。プロ配列の切断により、成熟、活性カラギナーゼとなる。例示のために、本発明のカラギナーゼのプロ領域は277位のアミノ酸から372位のアミノ酸までの、配列番号2のN末端残渣に同一なアミノ酸配列を含む(即ち、SAPGEGQSCPNTFVAVNSVQLSAAKQTLRKGQSTTLESTVLPNCATNKKVIYSSSNKNVATVNSAGWKAKNKGTATITVKTKNKGKIDKLTIAVN;配列番号5)。
【0028】
「成熟形態」、「成熟活性形態」、及び「成熟領域」の語はタンパク質の最終的な機能形態を意味する。例示のために、本発明のカラギナーゼの成熟形態は配列番号2及び配列番号4の1乃至277残渣に同一なアミノ酸配列を含む。本明細書において、「成熟形態」は「完全長カラギナーゼの「処理された」形態であり、この完全長カラギナーゼの処理はシグナルペプチドの除去及びプロ領域の除去を含む。この「成熟形態」は「未処理の成熟形態」から処理され、未処理成熟形体の処理は、プロ領域の除去を含む。
【0029】
本明細書において「発現ベクター」の語は好適な宿主細胞において、DNAの発現に影響することができる好適な制御配列に作動可能に結合しているDNA配列を含むDNA構築体を意味する。そのような制御配列は、転写に影響するプロモーター、そのような転写を制御する任意のオペレーター配列、好適なmRNAリボゾーム結合部位をエンコードしている配列、並びに転写及び翻訳の停止を制御する配列を含む。このベクターは、プラスミド、ファージ粒子、又は単なるゲノム挿入でよい。一旦好適な宿主細胞へ形質転換されると、このベクターは宿主細胞ゲノムとは別個に複製及び機能し、又は幾つかの場合において、ゲノム自身に組み込まれる。本明細書において、「プラスミド」、「発現プラスミド」、及び「ベクター」は、「プラスミド」が最も頻繁にベクター形態に用いられているが、しばしば互換的に使用される。しかしながら、本発明では、本分野において等しい機能を提供することができる、他の形態の発現ベクター、およびこれになるものを含むことを意図する。「ベクター」はクローニングベクター、発現ベクター、シャトルベクター、プラスミド、又はウイスル分子、DNA構築体、カセット等を含む。発現ベクターはプロモーター、シグナル配列、コード配列、及び転写配列等の調節配列を含む。
【0030】
「作動可能に結合する」の語は、機能的に関連しているエレメントの配置を意味する。例えば、プロモーターは、配列の転写を制御する場合には、コード配列に作動可能に結合しており、シグナル配列が、宿主細胞の分泌システムを通じてタンパク質に関係する場合には、シグナル配列はタンパク質に作動可能に結合していると言う。
【0031】
「プロモーター/エンハンサー」の語はプロモーターとエンハンサーの両方の機能を提供することができる配列を含むDNAのセグメントを意味する(例えば、レトロウイスルのロングタームリピートはプロモーター及びエンハンサーの両方を含む。)このエンハンサー/プロモーターは、「内性」又は「外来性」(又は「異種」)のいずれでもよい。内性の「エンハンサー/プロモーター」はゲノム中の所与の遺伝子と本来的に結合しているものである。外来性(又は異種)のエンハンサー/プロモーターはゲノム操作の手段(即ち、分子生物学的技術)により、ゲノムに並んで配置されたものである。
【0032】
「核酸」の語はDNA、RNA、シグナル、又は二本鎖及びこれらの修飾物を含む。「核酸」及び「ポリヌクレオチド」の語は本明細書において互換的に使用する。
【0033】
本明細書で用いる「DNA構築体」の語は、少なくとも、2つのDNAポリヌクレオチドフラグメントを含む核酸配列を意味する。
【0034】
本明細書において、「発現カセット」の語は標的細胞内で、特定の核酸の転写を行わせるか特定の核酸エレメントの連続物で、組換手法を用いて又は合成的に生成された核酸構築体を意味する。組換発現カセットはプラスミド、染色体、ミトコンドリアDNA、プラスチドDNA、ウイスル、又は核酸フラグメントに取り込まれることができる。通常、発現ベクターのこの組換発現カセット部分は他の配列の中でも、転写されるべき核酸配列及びプロモーターを含む。
カラギナーゼに対して用いる「生産」の語は完全長カラギナーゼを処理する2つの工程を含む。これらの工程は、タンパク質分泌の間に起こることが知られているシグナルペプチドの除去、及び酵素の活性成熟形態を形成し、成熟プロセスの間に起こることが知られている、プロ領域の除去を含む(Wangら、Biochemistry 37:3265−3171(1998);Powerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83:3096−3100[1986])。幾つかの態様において、発現されたタンパク質は、発現された細胞内環境に閉じ込められている。他の態様では、発現されたタンパク質は細胞外環境に分泌される。従って、幾つかの態様において、所望のタンパク質の生産はこのタンパク質の細胞内での発現と細胞外培地への分泌を含む。
【0035】
本明細書において、「ポリペプチド」及び「プロテイン」の語は互換的に使用され、任意の数のアミノ酸残渣のポリマーを意味する。この語は、天然のアミノ酸ポリマーのほかに、天然のアミノ酸に対応するアミノ酸財残渣の1つ以上が人工的なケミカルアナログであるアミノ酸ポリマーに用いる。この語はポリペプチドが機能を維持するために保存しておく保存アミノ酸置換を含むポリマーにも用いる。「ペプチド」は50アミノ酸残渣未満のポリペプチドである。
【0036】
「宿主細胞」は、組換核酸を含む(即ち組換核酸が組み込まれている)及び/又は宿主細胞のゲノムから自動的に複製する染色体外ベクター中に組換え核酸を含む細胞を意味する。任意の好適な細胞タイプを本発明の宿主細胞として使用することができる。本明細書において、宿主細胞は、既知の組換えDNA技術を用いて構築されたベクターで形質転換又は形質感染された原核又は真核宿主細胞である。形質転換された宿主細胞は、タンパク質変異体をコードしているベクターの複製又は所望のタンパク質への発現のいずれかを可能にする。タンパク質変異体のプレ−又はプレプロ−形態をコードしているベクターの場合において、そのようなベクターが発現されると、通常、宿主細胞から培養培地へと分泌される。
【0037】
「形質転換」の語は染色体外エレメント又は染色体組み込みのいずれかとして細胞内にDNAを維持するように、細胞へDNAを導入することを意味する。細胞へ核酸配列を挿入する意味に用いる、「導入された」の語は形質転換、形質誘発、又は形質感染を含む方法を含む。形質転換の手段は、プロトプラスト形質転換、塩化カルシウム沈殿、エレクトロポレーション、ネイキッドDNA、及び当業者に知られている方法を含む(Chang及びCohen,Mol.Gen.Genet.,168:111−115[1979];Smithら、Appl.Env.Microbiol.,51:634及びFerrariら、Harwood,Bacillus,Plenum Publishing Corporation,pp.57−72[1989]参照)。
【0038】
「不活性遺伝子」の語は不活性の前に、タンパク質を生産することができた染色体遺伝子座である(即ち、翻訳することができるRNAに転写されて、完全長、触媒活性のある、ポリペプチドを生産する)。転写されて、完全長の触媒活性のあるタンパク質に転写されない場合、遺伝子は不活性であると言う。その転写に必要な配列の修飾、RNAプロセシング(例えば、ポリAテイル付加)に必要な配列の修飾、及び/又は翻訳に必要な配列の修飾により不活性化される。欠失された遺伝子、欠失された領域含む遺伝子、再配列された領域を含む遺伝子、不活性ポイント変異又はフレームシフトを有する遺伝子、及び挿入を含む遺伝子は不活性化された遺伝子のタイプである。遺伝子はアンチセンス、RNA阻害、又は遺伝子の発現を阻害する任意の他の方法を用いて失活させることができる。
【0039】
本明細書で用いる「回収された」、「単離された」、及び「分離された」の語は、自然発生的には関与している少なくとも1つの成分を除去したタンパク質、核酸、又はアミノ酸を意味する。
【0040】
本明細書において、「培養」の語は液体、固形、又は半固形培地で好適な条件下で微生物の集団を育成することを意味する。幾つかの態様において、「培養」は所望の外来タンパク質及び/又は他の好適な最終生成物の発酵組換え生成を意味する。通常、発酵は反応管又は反応器で生じる。
【0041】
「カラギナン」の語は、本明細書において、二糖モノマー当り1つ(k−)、2つ(l−)、又は3つ(λ−カラギナン)の硫酸基(sulfated group)により置換されている紅藻類(Rhodophycae)の細胞壁由来の1,3−α−1,4−β−ガラクタンを意味する。
【0042】
本明細書において、特に定義しない限り、「洗浄組成物」又は「洗浄製剤」の語は布製品、食器、コンタクトレンズ、他の固形基質、髪(シャンプー)、皮膚(石鹸又はクリーム)、歯(マウスウォッシュ、歯磨きペースト)等の、洗浄されるアイテムから望まれない化合物を除去するために用いる組成物を意味する。この用語は組成物生物中に用いられるカラギナーゼ又は他の酵素と組成物との相性がよい限り、所望の洗浄組成物の特定の態様及び製品の形態(例えば、液体、ゲル、顆粒、又はスプレー組成物)から選択される任意の物質/生成物を包含する。洗浄組成物物質の特定の選択は洗浄する表面、アイテム、又は布製品、及び使用の間の洗浄条件に対する組成物の所望の形態により容易に決定することができる。これらの用語は更に、洗浄、漂白、除菌、及び/又は滅菌する任意の目的物及び/又は表面に好適な任意の組成物を意味する。この語は、洗剤組成物(例えば、液体及び/又は固形洗濯用洗剤及びおしゃれ着用洗剤;ガラス、木、セラミック、及び金属カウンタートップ及び窓等の硬表面洗浄製剤;カーペット洗浄剤;オーブン洗浄剤;布製品フレッシュナー;ファブリック柔軟剤;及びテキスタイル及び洗濯用プレスポッター、並びに食器用洗剤)を含むがこれらに限定されない。
【0043】
即ち、「洗浄組成物」の語は、本明細書において、別に定義しない限り、顆粒又は粉形態の全ての目的又はひどい汚れ用の洗剤、特に洗浄洗剤、液体、ゲル又はペースト形態の全ての目的の洗剤、特にひどい汚れ用の液体タイプ(HDL)洗剤;液体オシャレ着用洗剤;食器用洗剤又は液体食器用洗剤、特に高発泡タイプ;タブレット、顆粒、液体の各種タイプの食器洗浄機用洗剤及び機会のためのリンス剤;手を洗うための液体洗浄剤及び除菌剤、石鹸、マウスウォッシュ、歯みがき、車又はカーペット用洗剤、風呂用洗剤、ヘアシャンプー及びヘアリンス;シャワーゲル及び泡風呂、及び金属クリーナー、並びに漂白剤等の洗浄補助剤及び「ステインスティック」又は前処理用の洗浄剤を含むがこれらに限定されない。
【0044】
本明細書において「洗浄組成物」及び「洗浄製剤」の語は固形物質の洗浄のための洗浄培地中に用いるための混合物を意味する。幾つかの態様において、この語は布及び/又は衣類を洗浄するためのものを意味する(例えば、洗濯用洗剤)。代替的な態様において、この語は食器、カトラリー等を洗浄するために用いる他の洗剤を意味する(例えば、「食器用洗剤」)。本発明を特定の洗剤又は組成物に限定することは意図しない。即ち、カラギナーゼに加えて、この語は界面活性剤、トランスフフェラーゼ、加水分解酵素、酸化還元酵素、ビルダー、漂白剤、青味剤、漂白活性剤、及び蛍光染料、ケーキ抑制剤、マスキング剤、酵素活性剤、抗酸化剤、及び安定剤を含む洗剤を包含する。
【0045】
本明細書において「表面洗浄組成物」の語は、床、壁、タイル、浴槽、及びキッチン固定物等の硬表面を洗浄するための洗浄組成物を意味する。そのような組成物は、固形、液体、エマルジョンを含むがこれらに限定されない任意の形態で提供される。
【0046】
本明細書において、「食器用洗浄組成物」の語は、顆粒及び液体形態を含むがこれらに限定されない、食器を洗浄するための組成物の全ての形態を意味する。
【0047】
本明細書において、「布洗浄組成物」の語は、顆粒又は液体、及び棒状を含むがこれらに限定されない布製品を洗浄するための全ての形態の洗剤を意味する。
【0048】
本明細書において、「布製品」の語は、任意のテキスタイル物質を包含する。従って、この語は布製品、毛糸、繊維、不織布物質、天然物質、合成物質及び任意の他のテキスタイル材料のほかに、衣類も包含する。
【0049】
本明細書において、「テキスタイル」の語は毛糸、織布、及び不織布にする加工される、又はこれらに用いられるのに適したステープル及び繊維のほかに、織られた布製品も含む。この語は合成繊維(例えば、工業的に生産された繊維)のほかに、天然の毛糸も包含する。
【0050】
本明細書において、「テキスタイル物質」の語は繊維、毛糸の中間体、毛糸、布製品及び布から作られた製品(例えば、ガーメント及び他の物質)に対する通常の用語である。
【0051】
本明細書において、「効果的な量の酵素」の語は特定の製品(例えば、パーソナルケア製品、洗浄製品等)において必要とされる酵素活性を達成するのに必要な酵素の量を意味する。そのような有効な量は当業者が容易に評価することができ、用いられる酵素変異体の種類、洗浄製品、洗浄組成物の組成、及び液体又は乾燥形態(例えば、顆粒、棒)であるか等の多くの因子により決定される。
【0052】
本明細書において「精製された」又は「単離された」の語は、サンプルから汚染物質の洗浄を意味する。例えば、カラギナーゼは汚染しているタンパク質及びカラギナーゼ以外の溶液又は調製物中の他の化合物の除去により精製される。幾つかの態様において、組換えカラギナーゼはバクテリア又は糸状菌宿主細胞中で発現され、これらの組換えカラギナーゼは他の宿主細胞の構成要素を除去して精製される。組換えカラギナーゼポリペプチドのパーセントはサンプル中で高められる。幾つかの特定の態様において、本発明のカラギナーゼはSDS−PAGE又の既知の方法で測定すると、タンパク質成分の少なくとも約加えて99%の精製レベルである。幾つかの代替的な態様において、本発明のカラギナーゼは組成物もカラギナーゼ成分の少なくとも約99%を含む。更なる代替的な態様において、このカラギナーゼは総タンパク質及び/又はカラギナーゼ成分の少なくとも90乃至95%の範囲で存在する。
【0053】
本明細書において、機能的及び/又は構造的に類似するタンパク質は「関連タンパク質」であると定義される。幾つかの態様において、これらのタンパク質は異なる有機体のクラスを含む、異なる遺伝子及び/又は種由来である(例えば、バクテリア酵素及び糸状菌酵素)。更なる態様において、関連タンパク質は同じ種由来である。即ち、本発明は特定の源由来の関連タンパク質に限定することを意図しない。更に、「関連タンパク質」の語は3次元構造ホモロジー及び1次元配列ホモロジー(例えば、本発明のカラギナーゼ)を包含する。即ち、「関連タンパク質」の語は3次元構造類似性及び1次元配列類似性(例えば、本発明のカラギナーゼ)を包含する。例えば、本発明はゾベリラガラクタニボランス(Zobellia galactanivorans)、バチルスサーキュランス(Basillus circulans)、及びストロングリルオーシャントラトスププラタス(Strongylocentrtus pupuratus)、及びサイトファージドロバキエンシス(Cytophaga drobachiensis)のカラギナーゼの酵素を含むがこれらに限定されない類似性を含む。
【0054】
関連(及び由来)タンパク質は「変異タンパク質」を含む。幾つかの態様において、変異タンパク質は親タンパク質及び1つ以上の少数のアミノ酸残渣が異なる。異なるアミノ酸残渣の数は1、2、3、4、5、10、15、20、30、40、50又はこれ以上である。幾つかの態様において、異なるアミノ酸残渣の数は1乃至10の間である、幾つかの態様において、関連タンパク質及び特定の変異タンパク質は少なくとも70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約995のアミノ酸同一性を有している。
【0055】
本発明の幾つかの態様において、カラギナーゼ遺伝子は好適な発現プラスミドへ結合される。クローンされたカラギナーゼ遺伝子はカラギナーゼ遺伝子が発現するような宿主細胞細条件下で形質転換又は形質感染に用いられる。このプラスミドはプラスミド複製に必要であると知られているエレメントを含むように宿主細胞内で複製されるか、又はプラスミドが宿主細胞染色体へ組み込まれるように設計されている。必要なエレメントは効率的な遺伝子発現(例えば、所望の遺伝子に作動可能に結合しているプロモーター)に提供される。幾つかの態様において、これらに必要とされるエレメントは遺伝子自信の相同プロモーターとして供給され、もし認識されるならば(即ち、宿主細胞により転写されるならば)外来性であるか又はカラギナーゼ遺伝子の内性転写領域により供給される転写ターミネーター(例えば、真核宿主細胞に対するポリアデニレーション領域)として、供給される。幾つかの態様において、抗生物質を含む培地中での育成によりプラスミド感染宿主細胞の連続培養を維持することができる抗生物質耐性遺伝子のような選択遺伝子も含まれる。
【0056】
「コードしている核酸分子」「コードしている核酸配列」、「コードしているDNA配列、「コードしているDNA」、及び「コードしているポリヌクレオチド」の語はデオキシリボ核酸の鎖に沿ったデオキシヌクレオチドの順番又は配列を意味する。これらのデオキシリボヌクレオチドの順番はポリペプチド(タンパク質)鎖に沿ったアミノ酸を決定する。このDNA配列はアミノ酸配列をコードする。
【0057】
本明細書において、「相同タンパク質」の語はカッパカラギナーゼ(例えば、他の源からのカラギナーゼ)として、同様の作用及び/又は構造を有するタンパク質(例えば、カラギナーゼ)を意味する。相同体は新化の過程において。必ずしも関係していなくてもよい。従って、この語は異なる種から得られた同じ又は類似する酵素(即ち、構造及び機能の観点から)を含む。幾つかの態様において、所望のタンパク質に、4次的、3次的及び/又は1次的構造が類似するものを同定することが好ましい。
【0058】
本明細書において、「相同遺伝子」の語はお互いに対応する遺伝子がお互いに同一又は非常に類似している、別の種由来の遺伝子の少なくとも1部分を意味する。この語は、遺伝的複製(例えば、パラロガス遺伝子)により分離された遺伝子のほかに、種により分離された遺伝子(即ち、新たな種の発生)(例えば、オーソロガス遺伝子)も含む。これらの遺伝子は「相同タンパク質」をコードしている。
【0059】
本明細書において、「オーソログ」及び「オーソロガス遺伝子」の語は異なる種において、分離により、共通の祖先遺伝子(即ち、ホモロガス遺伝子)から発展した遺伝子を意味する。通常、オーソロガスは進化の過程の間に同じ機能を維持している。オーソロガス遺伝子の同定は新しく配列決定された遺伝子において、遺伝子機能の信頼できる予測に用いることができる。
【0060】
本明細書において、「パラログ」及び「パラロガス遺伝子」の語はゲノム内での複製に関係している遺伝子を意味する。一方、オーソログは進化の過程で同じ機能を維持しているけれども、パラログはオリジナルの関係する同じ機能も有しているが、新たな機能を有するものである。パラロガス遺伝子の例としては、トリプシン、キモトリプシン、エラスターゼ、及びトロンビンをコードしている遺伝子を含むがこれらに限定されない。これらの全ては、セリンプロテアーゼであり、同じ種内で一緒に発生する。
【0061】
配列間の相同性の程度は任意の既知の方法を用いて決定することができる(例えば、Smith及びWaterman,Adv.Appl.Math.,2:482[1981];Needleman及びWunsch,J.MoI.Biol.,48:443[1970]; Pearson及びLipman,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:2444[1988];ウィスコンシンジェネティックソフトウェアパッケージ(The Wisconsin Genetics Software Package)(Genetics Computer Group,Madison,Wl)のGAP,BESTFIT,FASTA,及びTFASTAのようなプログラム;並びにDevereuxら,Nucl.Acid.Res.,12:387−395[1984]).
【0062】
例えば、PILEUPは配列相同性レベルを決定するための有用なプログラムである。PILEUPは累積的な付加アラインメントを用いて関連する配列のグループから複数の配列アラインメントを生成する。このプログラムはこのアラインメントを生成するために用いるクラスタリング関係を示すツリーもプロットすることができる。PILEUPはFeng及びDoolittle(Feng及びDoolittle,J.Mol.Evol.,35:351-360[1987])のプログレッシブアラインメント法の簡略型を使用する。この方法はHiggins及びはSharp(Higgins及びSharp,CABIOS 5:151−153[1989])により説明されているものと類似している。有用なPILEUPパラメーターは3.00のデフォルトギャップウエイト、0.10のデフォルトギャップレングス、及びウエイテッドエンドギャップを含む。他の有用なアルゴリズムの例としては、Altschulら(Altschulら,J.Mol.Biol.,215:403−410,[1990];及びKarlinら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873−5787[1993])がある。特に有用なBLSATアルゴリズムの1つはWU−BLAST−2プログラムである(Altschulら、Meth.Enzymol.,266:460−480[1996]参照)。パラメーター「W」、「T」、及び「X」はアラインメントの精度と速度を決定する。このBLASTプログラムは11のワードレングス(W)、50のBLOSUM62スコアリングマトリックスアラインメント(B)(Henikoff及びHenikoff,Proc.Natl.Acad.Sci. USA 89:10915[1989]参照)、10の期待値(E)、M‘5、N’−4、及び両ストランドの比較をデフォルトとして使用する。
【0063】
本明細書において「核酸配列の同一性パーセント(%)」の語は配列のヌクレオチド残渣に同一な候補配列中の核酸残渣のパーセンテージである。同様に、「アミノ酸配列同一性のパーセンテージ」の語は、配列の核酸配列に同一な候補配列の中のアミノ酸配列のパーセンテージである。
【0064】
カラギナン及びカラギナーゼ
食品工業において、カラギナンは主要なテクスチャー成分の1つである。カラギナンは、海洋の紅藻類(Rhodophyta)特定の種から得られる直鎖、硫化ガラクタンのファミリーの一般名称である。これらは交互にα(1→3)及びβ(1→4)結合しているD−ガラクトース残渣からなる。α(1→4)結合ガラクトース残渣中の3,6無水架橋及び硫黄の置換位置により、これらはk−、l−、及びλ−カラギナンと呼ばれる(Kloareg及びQuatrano,Oceanogr.Mar.Biol.Annu.Rev.,26,259−315[1988])。これらの3つの主要なカラギナンタイプに加えて、μ−及びv−カラギナンと呼ばれる2つの他のタイプのカラギナンが商業的カラギナンサンプル中に存在する。これらはそれぞれ、k−カラギナン及びl−カラギナンの生物学的前駆体である(van de Veldeら,Carbohydrate Res.339:2309−2313[2004])。
【0065】
カラギナンの3つの主要な形態はしばしば各種加工食品、化粧品、及び医薬品の成分の中に列挙されている。κ―、ι−及びλ−カラギナンは単独で、組み合わせて、又は他のタイプの食物繊維と一緒に使用される。カラギナンはアイスクリーム、ヨーグルト、加工ミルク、ホイップトッピング、プリン、チーズ、及びサワークリームのような乳製品に用いられる。これらの製品において、カラギナンは溶解調節、増粘剤、脂肪及びタンパク質安定剤、懸濁及び乳化安定剤、ゲル化、増粘剤、ホエイ分離抑制、シネレシス制御のために用いる。加工された鶏肉、ハム、及び赤肉製品において、カラギナンは肉の中の水のトランスポーターラッピングによる生産性を高める。カラギナンはカラギナンベースの脂肪代替品として用いられている。他の食品工業製品はジュース、におけるテクスチャー修飾機能、アイシング、ジャム、ジェル、サラダドレッシング、キャンディーの伸びをしやすくするため、及び新鮮な果物加工における褐色変性の防止として用いられている。大部分の加工食品は単独又は他のカラギナンのタイプと混合して、カッパカラギナンを含む(例えば、Shah及びHuffman,Ecol.Food Nutrition 42:357−371[2003]参照)。
【0066】
イオタ−及びカッパカラギナンを加水分解することができる酵素を精製する微生物が分離されている(Bellionら,Can.J.Microbiol.,28:874−80[1982];並びにYaphe及びBaxter,Appl.Microbiol3:380−383[1955]参照)。シュードモナスカラゲーノボラ(Pseudoalteromonas carrageenovora)株(アルテロモナスカラゲーノボラ(Alteromonas carrageenovora)としても知られている)は、カッパ−及びラムダカラギナーゼ活性を有することが照明されている。カラギナンを分解することができる他のグループが特徴付けられている(例えば、Sarwarら,J.Gen.Appl.Microbiol.,29:145−55[1983]参照)。これらのイエローオレンジバクテリアはバクテリアのCytophagaグループに分類され、これらのバクテリアの幾つかはアガー及びカラギナンの両方を加水分解する能力を有している。
【0067】
クローンされたカッパカラギナーゼをコードしている遺伝子はシュードモナスカラゲノーボラ(P.carrageenovora)(Barbeyronら,Gene139:105−109[1994])由来の遺伝子cgkA及びCytophaga drobachiensis(Barbeyronら,Mol.Biol.Evol.15:528−537[1998])由来のcgkA遺伝子カッパカラギナーゼを含む。
【0068】
Cytophaga drobachiensis(Barbeyronら,MoI.Biol.Evol.,上記)のカッパ−カラギナーゼ、Alteromonas carrageenovoraのカッパカラギナーゼ、Zobelia galactcinovorans由来のカッパカラギナーゼ、Bacillus circulans及びStrongylocentrotus pupuratus由来のカッパカラギナーゼ等の幾つかのカッパカラギナーゼの単離及び特徴づけは説明されており(例えば、Strohmeierら,Protein Sci.,13:3200−3213[2004]参照)及びAlteromonas carrageenovoraのカッパカラギナーゼは詳細に研究されている(Potinら,Eur.J.Biochem.,228,971−975[1995]参照)。
【0069】
本発明は分泌シグナルペプチドをコードする異種配列に作動可能に結合している、カッパカラギナーゼをコードしている配列を含む単離組換ポリヌクレオチドを提供する。幾つかの態様において、コードされたカッパカラギナーゼはグリコシルヒドロラーゼのファミリー16(GH16)に属する。幾つかの態様において、カッパ−カラギナーゼの成熟形態をコードする配列は海洋バクテリア(例えば、Alteromonas種)種由来の配列等の野生型配列である。幾つかの態様において、この配列はアルテロモナスカラゲーノボラ(Alteromonas carrageenovora)のカラギナーゼの野生型配列である。本発明に用いることができる他のカラギナーゼ配列はZobellia galactanivorans、Bacillus circulans、Strongylocentrotus pupuratus、及びCytophaga drobachiensis由来のカラギナーゼをコードするものを含むがこれらに限定されない。本発明は、アルテロモナスカラゲーノボラ(A.carrageenovora)、Z.galactanivorans、B.circulans、S.pupuratus、及びC.drobachiensisのカラギナーゼポリヌクレオチド配列に相同な遺伝子か又はこれら由来の、野生型又は合成ポリヌクレオチド配列を包含する。従って、A.carrageenovoraのカッパカラギナーゼのポリヌクレオチド配列に相同な遺伝子によりコードされたカラギナーゼ酵素を含む。前述のように、「相同遺伝子」の語は異なる種から得られたけれども、お互いに同一であるか非常に似ている、対応する遺伝子である。この語は遺伝的複製(例えば、パラロガス遺伝子)により分離された遺伝子のほかに、スペシエーション(即ち、新たな種の発展)により分離された遺伝子を包含する。相同遺伝子は相同タンパク質をコードする。
【0070】
本発明は、構想的及び/又は機能的に関連するカラギナーゼタンパク質をコードするポリヌクレオチドを包含する。幾つかの態様において、これらのタンパク質は異なるクラス(例えば、バクテリアタンパク質及び糸状菌タンパク質)の有機体を含む異なる遺伝子及び/又は種由来である。幾つかの態様において、関連態様において、は同じ種由来である。即ち、本発明を特定の種由来の関連タンパク質に限定することを意図しない。更に「関連タンパク質」の語は3次構造及び1次配列相同体(例えば、本発明のカラギナーゼ)を含む。例えば、本発明はZ.galactanivorans、B.circulans、S.pupuratus、及びC.drobachiensisのカラギナーゼのような酵素を含むがこれらに限定されない相同体を含む。
【0071】
前述のように、関連(及び誘導)タンパク質は「変異タンパク質」を含む。幾つかの態様において、変異タンパク質は少数のアミノ酸残渣が親タンパク質及び他のものとは異なる。異なるアミノ酸残渣の数は1、2、3、4、5、10、15、20、30、40、50、以上である。幾つかの態様において、変異体の間の異なるアミノ酸の数は1乃至10の間である。幾つかの特定の態様において、関連タンパク質及び特定の変異タンパク質は少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%の配列同一性を含む。所望の特定のカラギナーゼ酵素はIUMBM酵素命名法に従いEC3.2.1.83に分類される活性を有している。部位飽和変異誘発、スキャニング変異誘発、挿入変異誘発、ランダム変異誘発、部位指定変異誘発、及び指向進化、ならびに各種組み換えアプローチを含むがこれらに限定されない幾つかの方法が、本発明の酵素変異体の生成に適している。
【0072】
野生型及び変異タンパク質の特徴づけは任意の好適な手段を用いて行うことができ、所望の性質の評価に基づいている。例えば、pH及び/又は温度、並びに分解及び/又は酸化安定性は本発明の幾つかの態様において決定されている。即ち、これらの特徴の1つ以上において(pH、温度、タンパク質分解安定性、及び/又は酸化安定性)各種安定性の程度を有する酵素を意図する。
【0073】
特定の態様において、本発明の組換ポリヌクレオチドは用いられる宿主細胞ちゅうでカラギナーゼ融合タンパク質を発現するためにコドン最適化されたポリヌクレオチド配列を含む。多くの細胞において各使用コドンを列挙するコドン使用表は当業者に知られている(Nakamuraら、Nucl.Acids.Res.,28:292[2000])又は容易に利用可能であるので、発現されるべきタンパク質のアミノ酸配列を提供するアミノ酸は用意に設計することができる。幾つかの態様において、コドン最適化配列はカラギナーゼの成熟形態をコードするポリヌクレオチド及びN末端プロ領域を含む。幾つかの態様において、コドン最適化配列は以下に示す配列番号1(SEQ ID NO:1)に少なくとも約70%の配列が同一である。
【0074】
他の態様において、コドン最適化配列は、配列番号1に、少なくとも約75%、又は少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%同一である。
【0075】
幾つかの他の態様において、コドン最適化配列はカラギナーゼの成熟形態をコードするポリヌクレオチドを含む。幾つかの態様において、コドン最適化配列は以下の配列番号3(SEQ ID NO:3)に少なくとも約70%同一である。
【0076】
幾つかの態様において、コドン最適化配列は配列番号3に少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%同一である。
【0077】
幾つかの態様において、コドン最適化配列はカラギナーゼ融合タンパク質をコードするための分泌シグナル配列をコードしているポリヌクレオチド配列に作動可能に結合している。前述のように、特定の態様において、Bacillus宿主細胞が採用され、シグナル配列はBacilus宿主細胞の分泌経路へ融合タンパク質を誘導することができるアミノ酸配列である。特定のケースにおいて、用いられるシグナル配列は野生型Bacillus細胞から分泌されるタンパク質のシグナル配列を含む。そのようなシグナル配列はαアミラーゼ、プロテアーゼ(例えば、aprE又はスブチリシンE)、又はβ―ラクタマーゼ遺伝子によりコードされるシグナル配列を含む。幾つかの態様において、本発明の組換ポリヌクレオチドはAprEシグナルペプチドをコードしているポリヌクレオチドを含む。他の例示的なシグナル配列は、αアミラーゼ遺伝子、スブチリシン遺伝子、βラクタマーゼ遺伝子、天然プロテアーゼ遺伝子(例えば、nprT、nprS、nprM)又はB.stearothermophilus,B.licheniformis,B.lentus,B.subtilis,及びB.amyloliquefaciensを含むがこれらに限定されないBacillus種由来のprsA遺伝子によりコードされるシグナル配列を含むがこれらに限定されない。幾つかの態様において、このシグナル配列はB.subtilis(Olmos−Soto及びContreras−Flores,Appl.Microbiol.Biotechnol.,62:369−73[2003])のaprE遺伝子によりコードされるシグナル配列である。幾つかの態様において、AprEシグナル配列をコードしているポリヌクレオチドは以下の配列(SEQ ID NO:11)を有する。
【0078】
幾つかの態様において、AprEシグナルペプチドは以下の配列を有する:VRSKKLWISLLFALTLIFTMAFSNMSAQA(配列番号10(SEQ ID NO:10))。
【0079】
本発明に用いる更なるグナルペプチドは、例えば、Simonen及びPalva,Micro.Rev.,57:109−137[1993];等を参照。
【0080】
特定の態様において、本発明の組換えポリヌクレオチドは宿主細胞内でカラギナーゼを発現させるための発現カセットに含まれる。幾つかの特定の態様において、この発現カセットはプロモーター、カラギナーゼタンパク質をコードしているコード配列(カラギナーゼタンパク質がシグナル配列及び前記カラギナーゼタンパク質を含む融合タンパク質中に含まれている)、及びターミネーター配列を、作動可能に結合するように含んでいる。
【0081】
幾つかの態様において、野生型又は合成カラギナーゼ遺伝子を含むこの発現カセットは好適な発現プラスミドへ結合される。このカラギナーゼ遺伝子は、宿主細胞を形質転換又は形質感染するために用いられ、カラギナーゼ遺伝子を発現する。幾つかの態様において、プラスミドはプラスミド複製に必要であるとよく知られているエレメントを含むという点で、宿主細胞中で複製する。他の態様において、このプラスミドは宿主染色体へ取り込まれるように設計されている。この必要なエレメントは遺伝子発現を効果的に提供する(例えば、所望の遺伝子に作動可能に結合しているプロモーター)。幾つかの態様において、これらの必要なエレメントは、遺伝子自身の相同プロモーターとして提供され、もし認識される場合には(即ち、宿主細胞により転写される)、外来性又はカラギナーゼ遺伝子の内性ターミネーター領域により供給される、転写ターミネーター(真核宿主細胞ではポリアデニレーション領域)として供給される。幾つかの態様において、抗生物質含有培地で育成することによりプラスミド感染された宿主細胞を連続培養を可能とする抗生物質耐性遺伝子のような選択遺伝子も含まれる。
【0082】
本発明の発現ベクターに含まれるシグナル配列、プロモーター、及びターミネーターの選択は、用いる宿主細胞に大きく依存している。前述のように、特定の態様において、Bacillus宿主細胞を用い、シグナル配列はBacillus宿主細胞の分泌経路へ融合タンパク質を誘導することができる任意のアミノ酸配列である。特定のケースにおいて、用いられるシグナル配列は野生型Basillus細胞から分泌されたタンパク質のシグナル配列である。そのようなシグナル配列はα−アミラーゼ、プロテアーゼ(例えば、aprE又はスブチリシンE)、β−ラクタマーゼ遺伝子によりコードされるシグナル配列を含む。シグナル配列の例としては、α−アミラーゼ遺伝子、スブチリシン遺伝子、β−ラクタマーゼ遺伝子、天然プロテアーゼ遺伝子(例えば、nprT、nprS、nprM)又はB.stearothermophilus,B.licheniformis,B.lentus,B.subtilis,及びB.amyloliquefaciensを含むがこれらに限定されない任意の好適なBacillus種由来のprsA遺伝子を含むがこれらに限定されない。幾つかの態様において、シグナル配列はB.subtilisのAprE遺伝子によりコードされる(Olmos−Soto及びContreras−Flores,Appl.Microbiol.Biotechnol.,62:369−73 [2003]参照)。幾つかの態様において、AprEシグナル配列をコードしているポリヌクレオチドは以下の配列(SEQ ID NO:11)を有する。
【0083】
幾つかのタンパク質、AprEシグナルパプチドは、VRSKKLWISLLFALTLIFTMAFSNMSAQA(配列番号10)を有する。本発明に用いるさらなるペプチドはSimonen及びPalva,Micro.Rev.,57:109−137[1993]等参照のこと。
【0084】
Bacillus細胞に用いるのに適したプロモーター及びターミネーターは知られており、apr(アルカリプロテアーゼ)、npr(中性プロテアーゼ)、amy(α−アミラーゼ)及びβ−ラクタマーゼ遺伝子、並びにB.subtilis levansucrase遺伝子(sacB)、B.licheniformisα-アミラーゼ遺伝子(amyL)、B.stearothermophilus maltogenicアミラーゼ遺伝子(amyM)、B.amyloliquefaciensα-アミラーゼ遺伝子(amyQ)、B.licheniformisペニシリナーゼ遺伝子(penP),B.subtilis xylA及びxylB遺伝子のプロモーター及びテーミネーターを含むがこれらに限定されない。幾つかの態様において、カラギナーゼタンパク質を発現している発現カセットは配列番号12(SEQ ID NO:12)(Ferrariら,J.Bacteriol.170:289−295[1988])で定義されるaprEプロモーター
及びα―アミラーゼ遺伝子のLATターミネーター配列:CGGATTTCCTGAAGGAAATCCGTTTTTTTA((配列番号13)(SEQ ID NO:13))を含む。
【0085】
幾つかの他の態様において、この発現カセットは、配列番号10のAprEシグナルペプチドをコードしている、ポリヌクレオチド(例えば、配列番号11)に作動可能に結合している、AprEプロモーター配列(配列番号12)と、カラギナーゼ(例えば、配列番号2のκカラギナーゼ)由来の成熟未処理形態をコードしているポリヌクレオチド、又は(例えば、配列番号4のκカラギナーゼ)カラギナーゼ成熟形態をコードしているポリヌクレオチドと、αアミラーゼ遺伝子(配列番号13)のLATターミネーター配列とを含む。幾つかの態様において、カラギナーゼをコードしているポリスヌクレオチドを含む発現カセットは配列番号14(SEQ ID NO:14)の配列を有する。
【0086】
他の態様において、カラギナーゼをコードしているポリヌクレオチドを含む発現カセットは配列番号15(SEQ ID NO:15)の配列を有する。
【0087】
幾つかの特定の他の態様において、組換え核酸は更に組換え核酸を含んでいない他の細胞に対して組換え核酸を含む細胞の選択のための選択マーカーを含む。選択マーカーの例としては、前述の段落に引用された文献に説明されており、抗生物質耐性(例えば、ハイグロマイシン、ブレオマイシン,クロラムフェニコール,フレオマイシン,カナマイシン,ストレプトマイシン,アンピシリン,テトラサイクリン,チオストレプトン等に対する耐性)を付与する選択マーカーを含むがこれらに限定されない。
【0088】
幾つかの特定の態様において、コード配列は用いられる宿主細胞中で融合タンパク質の発現のためにコドン最適化される。多くの細胞中での各コドンの使用を列挙しているコドン使用表が知られており(例えば、Nakamuraら、Nucl.Acids.Res.,28:292[2000])、容易に利用可能である。そのような核酸は発現されるべきタンパク質のアミノ酸配列を与えるように設計することができる。
【0089】
本発明の組換えポリヌクレオチドは宿主細胞のゲノム(例えば、核染色体)中に存在する(例えば、取り込まれる)か、宿主細胞内で自動的に複製するベクター(例えば、ファージ、プラスミド、ウイルス、又はレトロウイルスベクター)内に存在する。幾つかの特定の他の態様において、このベクターは宿主細胞内でタンパク質を発現している発現ベクターである。Basillus宿主細胞内で組換えタンパク質の発現のためのベクター及びシステムは本分野で良く知られている。
【0090】
Bacillusに適した複製及び組み込みプラスミドは本分野で知られている。例えば、Harwood及びCutting(eds),Molecular Biological Methods for Bacillus,John Wiley & Sons, [1990],特にチャプター3;B.subtilisについての好適な複製プラスミドは92頁に列挙されている。
【0091】
宿主細胞
本発明は、少なくとも1つのカラギナーゼをコードしている組換えポリヌクレオチドを含む宿主細胞も提供する。前述のように、幾つかの態様において、本発明の組換えポリヌクレオチドは好適なプロモーター、シグナル配列、カラギナーゼをコードしているポリヌクレオチド、及びターミネーター配列を含む発現カセット内に含まれる。幾つかの態様において、カラギナーゼ酵素をコードしているポリヌクレオチド配列はA.carrageenovoraのカラギナーゼの野生型配列(例えば、配列番号7)である。本発明はZ.galactanivorans,B.circulans,S.pupuratus、及びC.drobachiensis由来のカラギナーゼをコードしている野生型カラギナーゼ配列を含むがこれらに限定されない、野生型カラギナーゼ配列を含む発現カセットも提供する。幾つかの態様において、本発明はκ−カラギナーゼ(例えば、配列番号1又は配列番号3)をコードするコドン最適化配列を含む発現カセットを提供する。幾つかの態様において、このコドン最適化配列はカラギナーゼの成熟形態をコードするポリヌクレオチド及びN末端プロ領域を含む。幾つかの態様において、カラギナーゼの成熟形態及びN末端プロ領域をコードしているこのコドン最適化配列は配列番号1に対して少なくとも約70%の同一である。幾つかの他の態様において、カラギナーゼの成熟形態及びN末端プロ領域をコードしているこのコドン最適化配列は配列番号1に対して少なくとも約75%同一、又は少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%同一である。幾つかの他の態様において、コドン最適化配列はカラギナーゼの成熟形態をコードしているポリヌクレオチドを含む。幾つかの追加的な態様において、カラギナーゼの成熟形態をコードするこのコドン最適化配列は配列番号3に対して少なくとも約70%同一である。更なる態様において、カラギナーゼの成熟形態をコードしているコドン最適化配列は配列番号3に対して少なくとも約75%同一であり、又は少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%同一である。
【0092】
幾つかの他の態様において、本発明は本発明の組換えポリヌクレオチドを発現することができるグラム陽性宿主細胞を提供する。幾つかの態様において、このグラム陽性宿主細胞は、単独又は、apr、npr、epr、mpr、bpf、又はisp等のプロテアーゼ、又は当分野で知られている他のプロテアーゼにおける変異と組み合わせて、プロテアーゼのタンパク質分解活性を失うこととなる、プロテアーゼをコードしている遺伝子の一部分又は全体の変異及び/又は欠失を含む。本発明の幾つかの態様において、このグラム陽性微生物はBasillus属のメンバーである。バチルススブチリス(B.subtilis)、バチルスリケニフォルミス(B.licheniformis)、バチルスレンタス(B.lentus)、バチルスブレビス(B.brevis)、バチルスステアロセレモフィリス(B.stearothermophilus)、バチルスアルカロフィリス(B.alkalophilus)、バチルスアミロリケファシエンス(B.amyloliquefaciens)、バチルスクラウシ(B.clausii)、バチルスハロデュランス(B.halodurans)、バチルスメガテリウム(B.megaterium)、バチルスコアギュランス(B.coagulans)、バチルスサーキュランス(B.circulans)、バチルスレンタス(B.lautus)、及びバチルスツリンギエンシス(B.thuringiensis)を含むがこれらに限定されないBasillus属のメンバーを本発明に用いることができる。幾つかの態様において、BasillusはB.subtilisである。幾つかの態様において、宿主細胞はGRAS(即ち、FDAにより「通常安全であると認識されている」)ステータスを有するタンパク質の生成に用いた経歴を有する。
【0093】
前述のように、幾つかの特定の態様において、Bacillus宿主細胞は2つ以上の不活性プロテアーゼ遺伝子を含む。幾つかの態様において、Bacillus宿主細胞は2つの不活性プロテアーゼ遺伝子を含む(例えば、米国特許No.5,387,521参照)。他の態様において、このBacillus宿主細胞は5つの不活性プロテアーゼ遺伝子:nprE、aprE、epr、ispA、及びbbr遺伝子(例えば、US20050202535)を含む。B.subtilisゲノム全体は公知であり注釈をつけられているので(例えば、Moszer,FEBS Lett.,430:28−36[1998]参照)、B.subtilisの前駆体は詳細に同定されている(例えば、Heら、Res.Microbiol.,142:797−803[1991]参照)。更に、Bacillus細胞の遺伝子阻害方法は当分野においてよく知られている(例えば、Leeら,Appl.Environ.Microbiol.,66:476−480[2000];Yeら,Proe.Intematl.Symp.Rec.Adv.Bioindustry,Seoul,Korea:The Korean Society for Applied Microbiology,pp.160−169[1996];Wuら,J.Bacterid.,173:4952−958[1991];及びSlomaら,J.Bacterid.,173:6889−6895[1991])。従って、そのような株の構築は当業者の技能の範囲内である。
【0094】
幾つかの他の態様において、本発明の宿主細胞により発現されるカラギナーゼタンパク質は以下の配列番号2(SEQ ID NO:2)のκ−カラギナーゼに対して少なくとも約70%同一である。
【0095】
幾つかの他の態様において、本発明の宿主細胞により発現されるカラギナーゼタンパク質は配列番号2に対して少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%同一である。
【0096】
幾つかの他の態様において、本発明の宿主細胞により発現及び生成されるカラギナーゼタンパク質は以下の配列番号4(SEQ ID NO:4)のκ―カラギナーゼに少なくとも70%同一であるκ−カラギナーゼアミノ酸配列を含む。
【0097】
他の態様において、本発明の宿主細胞により発現及び生成されるカラギナーゼタンパク質は配列番号4に対して、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%同一である。
【0098】
本発明は構造的及び/又は機能的に類似していることにより関連しているカラギナーゼタンパク質を含む。幾つかの態様において、これらのタンパク質は異なる有機体のクラスを含む(例えば、バクテリアタンパク質と糸状菌タンパク質)、異なる遺伝子及び/又は種由来である。追加的な態様において、関連タンパク質は同じ種から提供される。即ち、本発明を特定の源由来の関連タンパク質に限定することは意図しない。更に、「関連タンパク質」の語は3次構造及び1次構造の相同体を含む(例えば、本発明のカラギナーゼ)。例えば、本発明はZ.galactanivorans、B.circulans、S.pupuratus、及びC.drobachiensisのカラギナーゼの酵素を含むがこれらに限定されない同相体を含む。即ち、前述のように、本発明は変異タンパク質(例えば、関連及び誘導タンパク質)、特にIUMBM酵素命名法に従いEC3.2.1.83に分類される活性を有するカラギナーゼ酵素を含む。更に、本発明は細胞培養を提供する。幾つかの態様において、細胞培養は前述の特定のBacillus宿主細胞及び培養培地を含む。
【0099】
タンパク質生産方法
本発明は前述の細胞を用いた方法も提供する。幾つかの態様において、この方法は本発明の宿主細胞を培養してカラギナーゼタンパク質を生成する工程を含む。幾つかの追加的な他の態様及び前述のように、このタンパク質は培養培地に分泌される。更なる態様において、この方法は培養培地からタンパク質を回収する工程を含む。幾つかの態様は配列番号4で定義されるκ−カラギナーゼタンパク質の成熟形態の生成(即ち、分泌)を提供する。配列番号4のカラギナーゼの変異体及び関連するカラギナーゼタンパク質は本発明に包含される。
【0100】
幾つかの他の態様において、カラギナーゼタンパク質を本分野における従来の方法(例えば、沈殿、遠心分離、親和、ろ過)又は他の好適な方法を用いて育成培地から回収する。例えば、親和性クロマトグラフィー(Tilbeurghら,FEBS Lett.,16:215[1984]);高溶解性粉末を含む物質(Medveら.,J.Chromatography A 808:153[1998])を用いたイオン交換を含む、イオン交換クロマトグラフィー法(Goyalら,Biores.Technol.,36:37[1991];Fliessら.,Eur.J.Appl.Microbiol.Biotechnol.17:314[1983];Bhikhabhaiら,J.Appl.Biochem.,6:336[1984];及びEllouzら,Chromatography 396:307[1987]);疎水相互作用クロマトグラフィー(Tomaz及びQueiroz,J.Chromatography A 865:123[1999]);二相分離(Brumbauerら,Bioseparation 7:287[1999]);エタノール沈殿;逆相HPLC;DEAE等のシリカ又はカチオン交換樹脂上のクロマトグラフィー;フロマトフォーカシング;SDS−PAGE;硫化アンモニウム沈殿;及びゲルろ過が、本発明に用いることができる。幾つかの態様において、界面活性剤添加タンパク質を培養培地中の他の成分から精製することなしに用いる。幾つかの態様において、培養培地の成分は単純濃縮され、洗浄及び/又は他の組成物を製造するために、育成培地の他の成分からカラギナーゼタンパク質を精製しないで用いる。
【0101】
幾つかの他の態様において、宿主細胞はバッチ、フェドバッチ、又は連続発酵条件下で培養される。従来のバッチ法は閉鎖システムを用いており、培養培地は発酵を行う前に調製され、培地を所望の微生物で接種し、及び発酵は培地の任意の成分の添加なしで行われる。特定のケースにおいて、炭素源ではなく、pH及び酸素濃度が発酵の間に変化する。バッチシステムの代謝物及び細胞バイオマスは発酵が終了するまで変化し続ける。バッチシステムにおいて、細胞は静的lag相から高育成log相に変化し、最終的に成長速度が減少又は停止する固定相になる。もし、処理しなければ、固定相の細胞は徐々に死んでゆく。一般的に、log相の細胞が大部分のタンパク質を生成する。
【0102】
標準的なバッチシステムの変法は「フェドバッチ発酵」システムである。このシステムにおいて、栄養(例えば、カーボン源、窒素源、O2、又は他の栄養素)はこれらの濃度が培地中でスレッシュホールド以下になる場合に添加される。フェドバッチシステムは代謝抑制が細胞の代謝を抑制しそうなとき及び培地において栄養素の量を限定するのが好ましい場合に有用である。フェドバッチシステムの実際の栄養素の能動の測定はpH、溶存酸素、及びCO2等の消費ガスの特定の圧力等の測定因子の変化を根拠に評価される。バッチ及びフェドバッチ発酵は本分野で知られている。
【0103】
連続発酵は特定の培養培地がバイオリアクターに連続的に供給され、等しい量の処理された培地が同時に除去される、開放系のシステムである。連続発酵は通常、細胞が主にloh相成長する、一定の高密度で培地を維持する。
【0104】
連続発酵は細胞育成及び/又は最終生成物濃度に影響する1つの又は任意の数の因子を変更することができる。例えば、幾つかの態様において、炭素源又は窒素源等の限定栄養素を固定の速度に維持し、他の全てのパラメーターを最適化する。他のシステムにおいて、育成に影響する因子の数を連続的に変更し、培地の濁りにより測定される、細胞濃度を一定にする。連続システムは育成条件を一定に維持するのが困難である。従って、排出される培地に依存する細胞が発酵において細胞育成速度に対して調節される。生成物形成速度の最大化についての技術並びに、連続発酵プロセスのための栄養素及び育成因子の最適化の方法は本分野において知られており、本発明のカラギナーゼの生成に用いることができる。
【0105】
使用方法
前述の方法を用いて生成されたカラギナーゼタンパク質は洗浄組成物(例えば、洗濯用洗剤等の布製品洗浄組成物、表面洗浄組成物、食器洗浄組成物及び食器洗浄器用洗剤;例えば、WO0001862、参照により本明細書に援用する)を含むがこれらに限定されない、カラギナーゼを含む任意の製品に用いることができる。幾つかの態様において、この洗浄組成物は硼砂を含まない組成物である。
【0106】
幾つかの特定の他の態様において、このカラギナーゼタンパク質は約1%乃至約80%、例えば、約5%乃至約50%(重量により)の界面活性剤を含むカラギナーゼ含有洗濯用洗剤に用いられる。この界面活性剤は非イオン性、カチオン、アニオン、又は両性界面活性剤、又はこれらの混合物のいずれでもよい(例えば、アニオン性界面活性剤とカチオン性界面活性剤の混合物)。例示的な界面活性剤は直鎖アルキルベンゼンスルホネート、及び直鎖アルキルソディウスルホネート、及びアルキルソディウムスルホネート、アルキルヘノキシポリエトキシエタノール(例えば、ノニルヘノキシエトキシレート及びのニルフェノール)、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、及びモノエタノールアミンを含む、ムアルキルベンゼンスルホネート(ABS)を含む。洗濯用洗剤に用いる界面活性剤の例は本分野で知られている(例えば、米国特許No.3,664,961及び4,222,905、及び4,239,659を参照)。
【0107】
洗濯用洗剤は固体、液体、ゲル、又は棒状でよく、カルボン酸ナトリウム、2カルボン酸ナトリウム等の緩衝剤、又は界面活性剤ビルダー、漂白剤、漂白活性剤、各種酵素、酵素安定剤、消泡剤、泡立ち剤、抑制剤、抗変色剤、抗コロイド剤、汚れ懸濁剤、汚れ放出剤、殺菌剤、pH調節剤、ビルダーではないアルカリ源、キレート剤、有機又は無機充填剤、溶媒、ヒドロトープ、増輝剤、染料、又は香料を含む。幾つかの態様において、洗濯用洗剤は本発明のカラギナーゼに加えて、少なくとも1つの更なる酵素(例えば、ヘミセルラーゼ、ペルオキシダーゼ、プロテアーゼ、セルラーゼ、キシラナーゼ、リパーゼ、フォスフォリラーゼ、エステラーゼ、クチナーゼ、ペクチナーゼ、ケラチナーゼ、リダクターゼ、オキシダーゼ、フェノロキシダーゼ、リポキシゲナーゼ、リグニナーゼ、プルラナーゼ、タンナーゼ、ペントサナーゼ、マンナーゼ、βガラクトシダーゼ、アラビノシダーゼ、ヒアルロニダーゼ、コンドロイチナーゼ、ラッカーゼ、及びアミラーゼ、又はこれらの混合物)を含む。
【0108】
本発明のカラギナーゼタンパク質は汚れの除去を必要とする各種表面を洗浄するための組成物に用いることができる。そのような洗浄組成物は各種形態(例えば、液体、ゲル、棒状、及び顆粒)の硬表面洗浄のための組成物;各種形態の(例えば、顆粒、液体、ゲル、及び棒状)布製品洗浄組成物;食器用洗剤(形態は限定されない);各種形態(例えば、歯磨き粉、歯磨きペースト、ゲル、及びマウスウォッシュ製剤)の口腔洗浄用組成物;各種形態の(例えば、液体、ゲル、又はタブレット)入れ歯洗浄組成物;及び各種形態の(例えば、液体、タブレット)のコンタクトレンズ洗浄組成物を含む。
【0109】
幾つかの他の態様において、本発明の戦場組成物は洗浄性能及び/又は布製品のケアに有利な1つ以上の洗剤酵素を含む。好適な酵素の例としては、ヘミセルラーゼ、ペルオキシダーゼ、プロテアーゼ、セルラーゼ、キシラナーゼ、リパーゼ、フォスフォリラーゼ、エステラーゼ、クチナーゼ、ペクチナーゼ、ケラチナーゼ、リダクターゼ、オキシダーゼ、フェノロキシダーゼ、リポキシゲナーゼ、リグニナーゼ、プルラナーゼ、タンナーゼ、ペントサナーゼ、マンナーゼ、βガラクトシダーゼ、アラビノシダーゼ、ヒアルロニダーゼ、コンドロイチナーゼ、ラッカーゼ、及びアミラーゼ、又はこれらの混合物を含む。幾つかの態様において、プロテアーゼ、リパーゼ、クチナーゼ、及び/又はセルラーゼのような従来の好適な酵素をカラギナーゼ組み合わせて(即ち、カクテル)用いることもできる。
【0110】
幾つかのタンパク質洗浄組成物は本明細書におけるタンパク質に加えて、カラギナーゼタンパク質と相性のよい1つ以上の洗浄物質も含む。本明細書において「洗浄組成物物質」の語は、本発明の組成物に用いられるカラギナーゼと相性のよい、意図する洗浄組成物の特定のタイプ及び製品のタイプ(例えば、液体、顆粒、棒状、スプレー、スティック。ペースト、ゲル)に対して選択された、任意の液体、固形、又は気体物質を意味する。洗浄組成物物質の特定の選択は洗浄される表面、使用の間の戦場条件に対する組成物の望ましい形態(例えば、洗剤を使用する間)を考慮することにより容易に決定することができる。本明細書において、「非布製品洗浄組成物」の語は硬表面洗浄組成物、食器洗浄組成物、口腔洗浄組成物、入れ歯洗浄組成物、及びコンタクトレンズ洗浄組成物を含む。
【0111】
カラギナーゼタンパク質は充分に製剤化された硬表面クリーナー、食器用洗浄組成物、洗剤等を提供するために各種の従来成分と共に使用される。そのような組成物は、液体、顆粒、棒状等の形状で用いられる。幾つかの態様において、そのような組成物は、約30%乃至約60%の界面活性剤を含む近年の「濃縮」洗剤として製剤化される。
【0112】
幾つかの他の態様において、本発明の洗浄組成物はアニオン、非イオン性、両イオン性等の各種界面活性剤を含む。そのような界面活性剤は通常、組成物の約5%乃至約03%のレベルで含まれる。
【0113】
洗剤組成物中に有用な幅広い各種成分も本発明の組成物に用いることができる。そのようなものは、他の活性剤、担体、ヒドロトロープ、加工助剤、染料又は顔料、液体製剤の溶媒等を含む。追加的にあわ立ちが必要であるならば、C10乃至C16アルキルアミド等のあわ立ち剤も、通常約1%乃至約10%のレベルで、組成物に用いることができる。
【0114】
幾つかの他の態様において、洗浄組成物は担体として水又は他の溶媒を含む。例えば、幾つかの態様において、低分子1級又は2級アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、及び/又はイソプロパノール)が好ましい。1水和アルコールは界面活性剤を溶解するために用いるが、約2乃至約6炭素原子及び約2乃至約6の水酸基を含むようなポリオール(例えば、1,3−プロパノール、エチレングリコール、グリセリン、及び1,2−プロパンジオール)も用いることができる。そのような態様において、組成物は通常、約5%乃至約90%、又は通常、約10%乃至約50%のそのような担体を含む。
【0115】
幾つかの他の態様において、本発明の洗浄組成物は水溶性の洗浄操作の間に、洗浄水のpHが約6.8乃至約11.0の間にあるときに、用いるように製剤化される。最終製品は従って、通常この範囲で製剤化される。推奨される使用レベルにpHを制御する技術は、緩衝液、アルカリ、酸等を含み、当業者に良く知られている。
【0116】
ペルカルボネート、ペルボレート等の各種漂白化合物も、通常約1%乃至約15%のレベルで、そのような組成物に用いることができる。幾つかの態様において、そのような組成物はテトラアセチルエチレンジアミン、ノナノイルオキシベンゼンスルホネート等の当業者に知られている漂白活性剤も含む。有用なレベルは、重量により、約1%乃至約10%である。
【0117】
各種汚れ放出剤、特にアニオンオリゴエステルタイプ、各種キレート剤、特にアミノフォスフォネート及びエチレンジアミンジスクシネート、各種クレイ汚れ放出剤、特にエトキシレートテトラエチレンペンタミン、各種分散剤、特にポリアクリレート及びポリアスパラテート、各種増白剤、特にアニオン増白剤、各種泡抑制剤、特にシリコン及び2級アルコール、各種の布柔軟剤、特にスメチッククレイ等の全てを、重量により約1%乃至約35%の範囲のレベルで、本発明の組成物の各種態様に用いることができる。標準的な製剤及び公開された特許はそのような従来の物質に詳細な説明を開示している。
【0118】
酵素安定剤も本発明の洗浄組成物に用いることができる。そのような安定剤は、プロピレングリコール(約1%乃至約10%)、ギ酸ナトリウム(約0.1%乃至約1%)、及び蟻酸カルシウム(約0.1%乃至約1%を含むがこれらに限定されない。
【0119】
本発明の洗浄組成物は任意の好適な形態に製剤化することができ、製造者により選択される任意の好適なプロセスで調製することができる(例えば、米国特許No.5,879,584、米国特許No.5,691,297、米国特許No.5,574,005、米国特許No.5,569,645、米国特許No.5,565,422、米国特許No.5,516,448、米国特許No.5,489,392、米国特許No.5,486,303、米国特許No.4,515,705、米国特許No.4,537,706、米国特許No.4,515,707、米国特許No.4,550,862、米国特許No.4,561,998、米国特許No.4,597,898、米国特許No.4,968,451、米国特許No.5,565,145、米国特許No.5,929,022、米国特許No.6,294,514、及び米国特許No.6,376,445;参照によりこれらを本明細書に援用する)。本発明の硬表面洗浄組成物及び布製品洗浄組成物を製剤化する場合、製剤は重量により約5%乃至約50%のレベルの各種ビルターを用いることが好ましい。典型的なビルダーは1乃至10ミクロンのゼオライト、及びクエン酸及びオキシジスクシニネート、層状シリケート、フォスフェート等のカルボキシレートを含む。他の従来のビルダーは標準的な製剤に列挙されている。
【0120】
他の任意の成分はキレート剤、汚れ除去/抗再付着剤、ポリマー分散剤、漂白剤、増白剤、泡抑制剤、溶媒及び静電気防止剤を含む。
【0121】
幾つかの他の態様において、本発明の洗浄組成物は表面及び/又は布製品の洗浄に用いることができる。幾つかの態様において、表面及び/又は布製品の少なくとも1部分が本発明の洗浄組成物の少なくとも1つの態様と、そのまま又は水で希釈した状態で接触させられて、表面及び/又は布製品が洗浄され、すすがれる。本発明の目的のために、「洗浄」の語は、スクラブ、及び機械的撹拌を含むがこれらに限定されない。幾つかの態様において、布製品は通常の消費者が使用する条件で洗浄することができる任意の布製品を含む。幾つかの態様において、本発明の洗浄組成物は溶液中、約500ppm乃至約1,500ppmの濃度で使用される。洗浄溶媒が水である幾つかの態様において、水温は通常約5℃乃至約70℃である。布製品の洗浄の幾つかの他の態様において、水対布製品の嵩の比は約1:1乃至約30:1である。
【0122】
本発明を更に説明するために、以下の特定の実施例を提供する。これらは本発明を例示する目的で用いるものであり、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0123】
以下の実施例は本発明の特定の態様及び側面を更に説明するために提供するものであり、本発明をこれらに限定するものではない。
【0124】
開示される実施例において、以下の略語を使用する:℃(摂氏);rpm(1分間当たりの回転数);H2O(水);HCl(塩酸);aa(アミノ酸);bp(ベースペア);kb(キロベースペア);kD(キロダルトン);gm(グラム);μg及びug(マイクログラム);mg(ミリグラム);ng(ナノグラム);μl及びul(マイクロリットル);ml(ミリリットル);mm(ミリメートル);nm(ナノメートル);μm及びum(マイクロメーター);M(モル);mM(ミリモル);μM及びuM(マイクロモル);U(単位);V(ボルト);MW(分子量);sec(秒);min(s)(分);hr(s)(時間);MgCl2(塩化マグネシウム);NaCl(塩化ナトリウム);OD40S(405nmでの光学密度(吸光度));PAGE(ポリアクリルアミド電気泳動);Tris(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン);MES(2−モルホリノエタンスルホン1水和物);ppm(百万分率);gpg(水1ガロン当たりのグレイン数);HDD(重質洗剤);HDL(重質液体(洗剤));ADW(食器洗浄器);SRI(汚れ除去指数);AATCC(American Association of Textile and Coloring Chemists(米国繊維染色協会));TOT(Terg−o−Tometer);DNA2.0(DNA2.0,メンロパーク,カリフルニア);Sigma(シグマアルドリッチ社,セントルイス,ミズリー);Test Fabrics(Test Fabrics,Inc.(テストファブリック社)エウストピッツトン,ペンシルバニア);Corning(Corning Inc.(コーニング社),コーニング,ニューヨーク);Pechiney(Pechiney Plastic Packing(ペシネイプラスチックパッキング),メナーシャ,ウィンスコンシン);Eppendorf (Eppendorf Scientific(エッペンドルフサイエンティフィック),エウストベリー,ニューヨーク);VWR(VWRインターナショナル,ウェストチェスター,ペンシルバニア);MOLECULAR Devices(MOLECULAR Devices Corp.(モレキュラーデバイス社),サニーベル,カリフルニア);Warwick(Warwick Equest Limited(ワーウィックイクエスト社),ダラム,英国);Minolta(Konica Minolta Holdings Inc.,(コニカミノルタホールディングス社),東京,日本);U.S.Testing(U.S.Testing Co. Inc.(U.S.テスティング社)ホーボーケン,ニュージャージー);及びRockland(Rockland Immunochemicals(ロックランドイムノケミカルズ),ギルバートスビル,ペンシルバニア)。
【0125】
これらの実施例において、分光光度計は反応の後に得られた生成物の吸光度を測定するために用いた。反射率計は汚れ見本の反射率を測定するために用いた。特に定義しない限り、タンパク質濃度はBSAを標準物質として用いるCoomassie Plus(クーマシープラス)(ピアス)により評価した。
【0126】
実施例1
B.subtilisにおけるk−カラギナーゼcgkA遺伝子の発現及び分泌
アルテロモナスカラゲーノボラ(Alteromonas carrageenovora)(Potinら,Eur.J. Biochem.,228:971−975[1995])由来のカッパカラギナーゼ遺伝子(cgkA遺伝子)を最適なB.subtilisコドン(DAN2.0)を用いて合成し、pJ31−7585においてクローンした。
aprEプロモーターのDNA配列
この後に、aprEシグナル配列(配列番号11)、及び
LATターミネーター、CGGATTTCCTGAAGGAAATCCGTTTTTTTA(配列番号12)の間に、1.1kbまでのBssHII−HindIIIフラグメントとして、このコドン最適化遺伝子配列(配列番号1)をB.subtilis組み込みベクターp2JMへ結合した(図2)。得られたベクター、p2JM−cgkA(図3参照)をB.subtilis宿主細胞、BG3594ck(米国特許No.5,387,521)、BG3934comk(US20050202535)、及びBG6006(US20050202535)の形質転換に用いた。これらは、それぞれ、2つ(nprE及びaprE)、5つ(nprE、aprE、erp、ispA、及びbpr)、及び9つ(nprE、aprE、epr、ispA、bpr、vpr、wprA、mpr−ybjF、及びnprB)の欠失を含む。各株からの形質転換から得られたクローンを採取し25mg/mlクロラムフェニコールで増幅した。
【0127】
このクローンを別々に、25mg/mlのクロラムフェニコールを含む30mlGrantII培地が入っている250mlの振とうフラスコ内で、73℃及び250rpmで、最長60時間育成した。各培地からの上清を遠心分離で採取し、ポリアクリルアミド電気泳動法で解析し、κ−カラギナーゼ活性について解析した。
【0128】
3つの培地からそれぞれ生成されたカラギナーゼサンプルの20μlを還元条件下のMES緩衝液中の10%NuPAGEを用いて解析した。分子量48.9kDaの関係のないタンパク質、BCE−cAbBCII10をポジティブコントロールとして用いた。
【0129】
NuPAGEゲルはBG3934cKのクローンA及びBが、BG3594ck培地のクローンにより生成されたレベルと比較して非常に高いレベルのκ−カラギナーゼ(予想される分子量31.7kDa)を生成することを示した。BG6006培地はこの検出方法を用いて検出可能なκ―カラギナーゼを生産しなかった。BG6006培地からの上清は以下の実施例で説明するように、BG3934ckにより生産されたκ−カラギナーゼの酵素活性を検出する実験において、ネガティブコントロールとして用いた。
【0130】
実施例2
κ―カラギナーゼの酵素活性及び基質特異性
カラギナンに対する酵素の加水分解活性をPAHBAH(パラ−ヒドロキシベンゾニックアシッドハイドライド)試薬(Lever,Anal.Biochem.,47:273[1972]参照)を用いて還元糖アッセイにより評価した。カラギナン(タイプI、カッパ−、CAS9000−07−1、タイプII、イオタ−、CAS9062−07−1、及びタイプIII、カッパ−CAS11114−20−8)をシグマより入手し、pH7.4の50mMのHepes緩衝液に0.25%になるように溶解した。幾つかの試験において、AATCC標準の重質液体洗剤(AATCC HDL 2003、漂白剤を含まない、(テストファブリック)を1リットル当たり1.5ml添加した(0.15%)。このAATCC HDL液体洗剤は水中に、12%の直鎖アルキルスルホネート、8%のアルコールエトキイシレート、8%のプロパンジオール、1.2%のクエン酸、4%の脂肪酸、及び4%の水酸化ナトリウムを水含む。カッパ−カラギナーゼ活性はHDD(1g/l、pH9.5−10)及びADW(1g/l、pH10.0−10.5)におけるカッパカラギナン、タイプI汚れを除去する能力についても試験を行った。カッパ−カラギナーゼを生成している各培地からの上清を遠心分離により採取し、サンプルの一部分の活性を、AATCC HDLで解析した。HDD及びADWにおける活性の試験について、上清を最初に、12倍に濃縮した。
【0131】
アッセイは以下のように24ウェルのマイクロタイタープレートで行った。1mlの緩衝液(I)をウェル1(緩衝液9に添加する。1mlの緩衝液と酵素の混合物をウェル2に添加する(サンプル)。1mlの緩衝液と基質をウェル3(III)に添加する(基質)。及び1mlの緩衝液、基質、及び酵素(V)(酵素+基質)をウェル4に添加する。「SAm+Sub」(IV)と標識されたバーは計算された対照の値を示す。統計処理のために、各ウェルを2乃至4つ作った。試験される酵素は通常1乃至10倍から1乃至1000倍に反応緩衝液で希釈した。全ての試薬を添加した後に、プラスチックカバーをマイクロタイタープレートの上におき、このカバーとプレートの交差部分を、蒸発を防ぐためにパラフィルム(Pechiney)で何層にも覆った。反応プレートを100rpmの回転シェーカーで、37℃で、1乃至16時間、インキュベートした。
【0132】
還元糖アッセイは、エッペンドルフ、マスターサイクル、グラジエントサーマルサイクル及び0.2mlのディスポーザブルPCR(ポリメーラーゼ連鎖反応)ストリップチューブ、及びキャップ(VWR)を用いて測定した。還元糖試薬は以下のように調製した。蒸留水中10mlの2%水酸化ナトリウムに、0.15gの酒石酸カリウムナトリウム4水和物(Rochelle Salt;シグマ)及び0.15gのパラヒドロキシベンゾニックアシッドハイドライド(H−9882;シグマ)を添加した。「PHBAH試薬」と呼ばれるこの溶液をかき混ぜて全ての試薬を溶解し、使用までに冷暗所に置いた。この試薬は毎日作り変えた。サンプル解析の直前に、0.16mlのPAHBAH試薬をPCRストリップの各管に添加し、次いで、5乃至20μlの酵素サンプル及び対照を添加した。全ての管のキャップをきつく閉め、熱サイクラー中に置き、99℃で15分間インキュベートし、次いで、4℃で15分間冷却した。冷却の後、ストリップチューブのキャップをあけ、0.15mlの各サンプルを平底96マイクロタイタープレート(COSTAR9017;コーニング)におき、スペクトラマックス250プレートリーダー(モレキュラーデバイス)で、水のブランクに対する405nmの吸光度を測定した。
【0133】
各酵素サンプルを以下のように解析した。対照サンプルの光学密度(OD)は緩衝液サンプルのODを差し引き、この値を基質緩衝液対照を加えた。酵素+基質反応のODは基質及びサンプル対照の合計と比較された。
【0134】
カッパカラギナーゼの加水分解活性を示す結果を図4A乃至Eに示す。このデータはカッパカラギナーゼが、AATCC HDL液体洗剤中に用いた場合、タイプIカッパカラギナン(図4A)及びタイプIIIカッパカラギナン(図4C)の汚れを効果的に除去することを示している。
【0135】
図4D及び図4Eにおける試験はカッパカラギナーゼがHDD(重質洗剤)及びADW(食器用洗剤)に用いたときにカッパカラギナンタイプIの汚れを除去することを示す。
【0136】
実施例3
ミクロスウォッチスクリーンアッセイを用いたCgkaの洗浄活性
CgkAの活性は、この実施例で説明する方法を用いて、サラダドレッシング及びバーベキューソースの汚れ見本を洗浄する能力について試験した。
【0137】
色素を含むサラダドレッシング(STC CFT CS−6)でシミをつけた綿布見本(テストファブリック)及びバーベキューソースでシミをつけた綿布見本(Warwick)をこれらの試験に用いた。
【0138】
マイクロプレートアッセイのための見本を5/8”ダイカッターを有するパンチプレスモデルBで15mmのサークル(ディスク)にカットした。同じ見本ディスクを24ウェルマイクロタイタープレートの各ウェルに置いた(Costar3526)。サラダドレッシングのシミについて、1リットル当たり、1.5mlのAATCC HDL、50mM Heps緩衝液、及び1乃至50ppmの、pH7.4の50mM、Hepes緩衝液で希釈した酵素を含む1mlの洗浄溶液を各ウェルに添加した。バーベキューソースのシミについて、1リットル当たり、1.5mlのAATC HDL洗剤、10mM Hepes、pH8.2、50mMの塩化ナトリウム及び25mMの塩化カルシウムを含む洗浄溶液 1mlを各ウェルに添加した。対照は酵素を含まない。バーベキューソースに対する対照は、AATCC対照、及びボバインシーラムアルブミン(BSA)対照である。マイクロプレートはプラスチックの蓋をしてアルミニウム泊で多い、37℃、100rpmで、3乃至16時間インキュベートした。このプレートをシェーカーから除去し、洗浄溶液を吸引により除去した。各マイクロプレートを1.5mlのダルベッコPBS、pH7.3で3回洗浄し、1.5mlの蒸留水で3回洗浄した。各ディスクをウェルから除去し、ペーパータオルの間に挟み、直接光にあたらないようにして一晩乾燥させた。ディスクを視覚で評価し、ホワイトタイルでキャリブレーションした、ミノルタリフレクトメーターCR−200で解析した。対照に対して、通常4回繰返しを行ったデータの標準偏差パーセントを有する平均L値及び試験サンプルを計算した。バーベキューソースに対するcgkAの活性を測定する実験のために、以下の式を用いて「L」値から、汚れ放出指数のパーセンテージ(%SRI)を計算した:
%SRI=L(最終)−L(オリジナル)/L(ホワイトタイル)−L(オリジナル)×100%。
【0139】
マイクロスウォッチスクリーンアッセイの結果を図5A及び5Bに示す。図5A及び5Bにそれぞれ示したように、CgkAはサラダドレッシング及びバーベキューソースの汚れに優れた洗浄能力を示した。
【0140】
実施例4
ターゴトメーターを用いたCgkAの洗浄活性
ターゴトメーター試験は30℃に維持された6ポットのターゴトメーターモデル7243S(U.S.Testing)を用いた。撹拌スピードは100rpmにセットした。食品(Warwick)の丸いシミをつけたコットン見本(各ターゴトメーターポットにつき5つ)を、6gpg硬度(1.735M塩化カルシウム及び0.67M塩化マグネシウム15000gpg硬度のストック溶液を希釈)及び25mM Hepes緩衝液、pH7.4を含む0.15%のAATCC HDL洗剤1リットルに、入れた。30分の洗浄時間の後、この見本を1.5Lの水道水で3回洗浄し、スピンサイクルで、7分間回転かせて、余分な水を除去し、一晩室温で乾燥させた。各汚れをリフレクトメーターで解析した後に、汚れ除去パーゼンテージ(%SRI)を標準的な方法で計算した(マイクロスウォッチ法参照)。酵素を含まない対照サンプル(I)に対するカッパ−カラギナーゼの15ppm(III)での活性を対照タンパク質、ボバインシーラムアルブミン(II)に対するものと比較した(BSA−50、FractionV、イムノグロブリン、及びプロテアーゼフリー;Rockland)。
【0141】
図6は、ターゴトメーターアッセイにおいて、マーマレードの汚れを除去することにおいて、CgkAが優れた能力を有することを示す。SRI値のパーセンテージは5回繰返し試験について得られた結果から計算した。
【0142】
以上の実施例は、カッパカラギナーゼがサラダドレッシング、バーベキューソース、及びマーマレードのシミを有する綿布見本から効果的に汚れを除去することを示している。
【0143】
本発明の説明された態様をもって、当業者は開示された態様の変更をなすことができることは明らかであり、そのような変更は本発明の範囲内である。
【0144】
当業者は、本発明がその目的を実行するため及び最終生成物及び有利な方法を得るために好適であることを容易に理解するだろう。本明細書で説明されている組成物及び方法は、態様の代表例であり、例示であり、本発明をこれらの限定するものではない。本発明の範囲及び精神を逸脱せずに、開示された発明の各種変更及び修飾を、当業者は容易に行うだろう。本明細書で開示されている発明は、本明細書に開示されていない任意の要素、限定がなくても実施することができる。用いられている用語及び表現は説明のために用いるものであり、限定のために用いるものではない。本明細書に示され、説明された、又はその一部分である技術的特徴の均等物を排除する意図ではない。しかしながら、各種変更は本発明の範囲内ですることが可能である。
【0145】
従って、本発明は特定の態様及び付加的な特徴により特徴付けられるけれども、本明細書に開示されたコンセプトの修飾及び変更は当業者に可能であり、そのような修飾及び変更は添付の特許請求の範囲により定義されている本発明の範囲内であると考えられる。
【0146】
本明細書では発明を幅広く包括的に説明している。開示された種内のより狭い範囲の種及び亜種も本発明の一部分を形成する。このことは、除かれた物質が具体的に開示されているか否かに関わらず、遺伝子からの任意の主題を除去する生又は負の限定を有する本発明の一般的な説明を含む。
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのカラギナーゼ酵素、宿主細胞内でカラギナーゼ酵素を生成する方法、少なくとも1つのカラギナーゼをコードする組換えポリヌクレオチドを含む宿主細胞、及びカラギナーゼをコードしている組換えポリヌクレオチドを提供する。
【背景技術】
【0002】
洗剤及び他の洗浄組成物は、複雑な組合せの活性成分を含む。例えば、大部分の洗浄製品は、通常、界面活性剤システム、洗浄のための酵素、漂白剤、ビルダー、泡抑制剤、固形懸濁剤、固形放出剤、増白剤、軟化剤、分散剤、色移り抑制化合物、研磨剤、殺菌剤、及び香料を含む。近年の洗剤はいろいろな成分が含まれているにもかかわらず、混合的なシミの複雑さゆえ、完全に汚れを除去することが困難である。特に、そのような汚れは、糖質及び/又は糖質誘導体、繊維、細胞壁成分(例えば、植物物質、木、泥/クレイベースの汚れ、及びフルーツ)、並びに食品添加剤(例えば、食品抽出物及びカラギナン等の安定化剤)を含む。従って、そのような繊維物質の除去において、効果的な洗剤成分についての需要が存在する。
【発明の概要】
【0003】
本発明は少なくとも1つのカラギナーゼ酵素を含む洗浄組成物、宿主細胞中でカラギナーゼ酵素を生成する方法、少なくとも1つのカラギナーゼをコードしている組換えポリヌクレオチドを含む宿主細胞、及びカラギナーゼをコードしている組換えポリヌクレオチドを提供する。
【0004】
本発明はカラギナーゼポリペプチドをコードしているポリヌクレオチド、及びカラギナーゼ酵素を生成するために遺伝的に操作される宿主細胞に関する。特に、本発明は導入される少なくとも1つのカラギナーゼをコードしている外来核酸配列を有するグラム陰性微生物、及びそのような宿主細胞においてこのカラギナーゼ酵素を生成するための方法に関する。幾つかの態様において、このグラム陰性微生物はバチルス属のメンバーである。幾つかの態様において、本発明はバチルス宿主細胞においてカッパカラギナーゼ(κ−カラギナーゼ)を生産するための方法及び組成物に関する。
【0005】
幾つかの態様において、本発明はカッパカラギナーゼ酵素をコードしている配列を含む単離された組換えポリヌクレオチドを提供する。ここにおいて、単離されたポリヌクレオチドは分泌シグナルペプチドをコードするポリヌクレオチド配列に作動可能に結合されている。幾つかの態様において、この分泌シグナルペプチドをコードしている配列はグラム陰性微生物由来である。幾つかの態様において、この分泌シグナルペプチドは配列番号10のAprEシグナル配列である。幾つかの態様において、カラギナーゼ酵素をコードしている配列は野生型カラギナーゼ(例えば、アルテロモナス(Alteromonas)属由来の野生型カッパカラギナーゼ)をコードしているポリヌクレオチドから最適化された配列を含む。幾つかの態様において、カラギナーゼをコードしている配列はアルテロモナスカラゲーノボラ(Alteromonas carrageenovora)由来の野生型カラギナーゼをコードしているポリヌクレオチドから最適化された配列を含む。幾つかの態様において、この最適化されたポリヌクレオチド配列は配列番号1又は3に対して少なくとも約70%同一である。他の態様において、このコドン最適化配列は配列番号1又は3に対して少なくとも約75%、又は少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%同一である。
【0006】
幾つかの態様において、本発明はカッパカラギナーゼ酵素をコードする単離された組換えポリヌクレオチドを含む発現カセットを含む発現ベクターを提供する。このカッパカラギナーゼ酵素をコードする単離ポリヌクレオチドは分泌シグナル配列をコードしているポリヌクレオチド配列に作動可能に結合している。幾つかの態様において、分泌シグナルペプチドをコードしている配列はグラム陰性微生物由来である。幾つかの態様において、この分泌シグナルペプチドは配列番号10のAprEシグナルペプチドである。幾つかの態様において、カラギナーゼ酵素をコードしているこの配列は野生型カラギナーゼ(例えば、アルテロモナス(Alteromonas)属由来の野生型カッパカラギナーゼ)をコードしているポリヌクレオチドから最適化された配列を含む。幾つかの態様において、カラギナーゼをコードしている配列はアルテロモナスカラゲーノボラ(Alteromonas carrageenovora)から得られた野生型カラギナーゼをコードしているポリヌクレオチドから最適化された配列を含む。幾つかの態様において、この最適化された配列は、配列番号1又は3の配列に少なくとも70%同一である。他の態様において、このコドン最適化配列は、配列番号1又は3に対して、少なくとも約75%、又は少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%同一である。幾つかの態様において、この発現ベクターは配列番号14及び15から選択されるポリヌクレオチド配列を有する発現カセットを含む。
【0007】
本発明は本発明の発現ベクターで形質転換させた宿主細胞も提供する。この発現ベクターはカッパカラギナーゼ酵素をコードしている単離された組換えポリヌクレオチドを含む発現カセットを含む。カッパカラギナーゼ酵素をコードしている単離されたポリヌクレオチドは分泌シグナルペプチドをコードしているポリヌクレオチド配列に作動可能に結合している。幾つかの態様において、分泌シグナルペプチドをコードしている配列はグラム陽性微生物由来である。幾つかの態様において、この分泌シグナルペプチドは配列番号10のAprEシグナルペプチドである。幾つかの態様において、このカラギナーゼ酵素をコードする配列は野生型カラギナーゼ(例えば、アルテロモナス(Alteromonas)属から得られた野生型カッパカラギナーゼ)をコードしているポリヌクレオチドから最適化された配列を含む。幾つかの態様において、このカラギナーゼをコードしている配列はアルテロモナスカラゲーノボラ(Alteromonas carrageenovora)から得られた野生型カラギナーゼをコードしているポリヌクレオチドから最適化された配列を含む。幾つかの態様において、この最適化された配列は配列番号1又は3に対して少なくとも約70%同一である。他の態様において、このコドン最適化配列は、配列番号1又は3に対して、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%同一である。幾つかの態様において、この発現ベクターは配列番号14及び15から選択されたポリヌクレオチドを有する発現カセットを含む。
【0008】
幾つかの態様において、本発明はシグナル配列及びカラギナーゼタンパク質を含む融合タンパク質をコードしている組換えポリヌクレオチドを含むバチルス宿主細胞を提供する。ここで、この宿主細胞からカラギナーゼ酵素を分泌し、宿主細胞は不活性プロテアーゼ遺伝子を有する。幾つかの態様において、このカラギナーゼタンパク質はカッパカラギナーゼである。幾つかの態様において、このバチルス宿主細胞は配列番号4に対して少なくとも約70%同一なアミノ酸配列を有するカラギナーゼタンパク質を分泌する。幾つかの態様において、このカッパカラギナーゼは配列番号4に対して少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、又は少なくとも約99%同一である。幾つかの態様において、このバチルス宿主細胞はnprE、aprE、epr、ispA、bpr、vpr、wprA、mpr−ybjF、及びnprBから選択される少なくとも1つの不活性プロテアーゼを有する。他の態様において、このバチルス宿主細胞はnprE、aprE、epr、ispA、及び/又はbprプロテアーゼ遺伝子から選択される少なくとも1つの不活性プロテアーゼ遺伝子を有する。更なる態様において、このバチルス宿主細胞はnprE及びaprEプロテアーゼ遺伝子から選択される少なくとも1つの不活性プロテアーゼ遺伝子を有する。(例えば、米国特許No.5,387,521、参照により本明細書に援用する。)他の態様において、この宿主細胞はバチルススブチリスのaprE遺伝子によりコードされるシグナル配列を含む。宿主細胞に含まれる組み換えポリヌクレオチドは、幾つかの態様において、発現カセットを形成するプロモーター及びターミネーターに作動可能に結合している。幾つかの態様において、この組換え核酸は宿主細胞のゲノム中に存在するが、他の態様では、宿主細胞内で自動的に複製されるベクター内に存在する。幾つかの態様において、この組換え核酸はバチルス宿主細胞においてカラギナーゼ融合タンパク質の発現について最適化される。
【0009】
幾つかの態様において、本発明は前述のバチルス宿主細胞の複数を含む細胞培養を提供し、培養培地も提供する。幾つかの態様において、この細胞の培地はカッパカラギナーゼタンパク質を含む。他の態様において、この培地はカッパカラギナーゼタンパク質を含む。更なる態様において、この培養細胞及び培養培地はカッパカラギナーゼタンパク質を含む。
【0010】
本発明はカッパカラギナーゼタンパク質を生成する方法も提供する。該方法は、前述のバチルス宿主細胞の培養に用いられる培養培地に、発現されたカッパカラギナーゼタンパク質を分泌するために好適な条件下で、前述のバチルス宿主細胞を培養する工程を含む。幾つかの態様において、この方法は前記培養培地からカッパカラギナーゼタンパク質を回収する工程を更に含む。任意の好適な回収方法を本発明の方法に用いることができる。本発明に従ってカッパカラギナーゼを生成するために用いるバチルス宿主細胞はシグナル配列及びカラギナーゼタンパク質を含む融合タンパク質をコードしている組換えポリヌクレオチドを含む。ここにおいて、この宿主細胞は細胞からカッパカラギナーゼタンパク質を分泌し、宿主細胞は不活性プロテアーゼ遺伝子を有する。幾つかの態様において、このバチルス宿主細胞は配列番号4に対して少なくとも約70%の同一なアミノ酸配列有するカラギナーゼタンパク質を分泌する。幾つかの態様において、このカッパカラギナーゼは配列番号4に対して少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、又は少なくとも99%同一性を有する。幾つかの態様において、このバチルス宿主細胞はnprE、aprE、epr、ispA、bpr、vpr、wprA、mpr−ybjF、及びnprBから選択される少なくとも1つの不活性プロテアーゼ遺伝子を有する。他の態様において、このバチルス宿主細胞はnprE、aprE、epr、ispA、及び/又はbprプロテアーゼ遺伝子から選択される少なくとも1つの不活性プロテアーゼ遺伝子を有する。更なる態様において、このバチルス宿主細胞はnprE及びaprEプロテアーゼ遺伝子から選択される少なくとも1つの不活性プロテアーゼ遺伝子を有する。(例えば、米国特許No.5,387,521、参照により本明細書に援用する)。他の態様において、この宿主細胞はバチルススブチリスのaprE遺伝子によりコードされるシグナル配列を含む。この宿主細胞に含まれている組換えポリヌクレオチドは、幾つかの態様において、プロモーター及びターミネーターに作動可能に結合して、発現カセットを形成する。幾つかの態様において、この組換え核酸は宿主細胞のゲノム中に存在しており、他の態様では、それは宿主細胞内で自動的に複製するベクター中に存在している。幾つかの態様において、この組換え核酸はバチルス宿主細胞において、カラギナーゼ融合タンパク質を発現するためにコドン最適化される。
【0011】
本発明はカラギナーゼ活性を含む洗浄組成物も提供する。幾つかの態様において、この洗浄組成物は配列番号4で定義されるカッパカラギナーゼに対して少なくとも約70%同一なアミノ酸配列を含む単離されたカッパカラギナーゼの有効量を含む。幾つかの態様において、このカッパカラギナーゼは配列番号4に対して少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、及び少なくとも約99%同一である。幾つかの態様において、この洗浄組成物は洗剤である。幾つかの態様において、これらの洗浄組成物は、ビルダー及び安定剤のほかに、少なくとも1つの他の酵素(例えば、プロテアーゼ、アミラーゼ、マンナーゼ、ペルオキシダーゼ、オキシドリダクターゼ、セルラーゼ、リパーゼ、クチナーゼ、ペクチナーゼ、ペクチンリアーゼ、キシラナーゼ、及び/又はエンドグルコシダーゼ)、酵素誘導体を更に含む。幾つかの態様において、追加的な酵素又は酵素誘導体はヘミセルラーゼ、ペルオキシダーゼ、プロテアーゼ、セルラーゼ、キシラナーゼ、リパーゼ、フォルフォリパーゼ、エステラーゼ、クチナーゼ、ペクチナーゼ、ケラチナーゼ、リダクターゼ、オキシダーゼ、オキシドリダクターゼ、フェノロキシダーゼ、リポキシゲナーゼ、リグニナーゼ、プルラナーゼ、タンナーゼ、ペントサナーゼ、マンナナーゼ、ベータグルコシダーゼ、アラビノシダーゼ、ヒアルノニダーゼ、コンドロイチナーゼ、ラッカーゼ、及びアミラーゼ、又はこれらの混合物から選択される。
【0012】
本発明は硬表面及び/又は製品(例えば、布製品のようなもの)にカラギナーゼ活性を含む洗浄組成物を接触させる工程を含む洗浄方法も提供する。幾つかの態様において、この洗浄組成物は配列番号4で定義されるカッパカラギナーゼに対して少なくとも70%の同一なアミノ酸を含む単離されたカッパカラギナーゼの有効量を含む。幾つかの態様において、このカッパカラギナーゼは、配列番号4に対して、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%の同一である。幾つかの態様において、この洗浄組成物は洗剤である。幾つかの態様において、この洗浄組成物は更にこれらの洗浄組成物は、ビルダー及び安定剤のほかに、少なくとも1つの他の酵素(例えば、プロテアーゼ、アミラーゼ、マンナーゼ、ペルオキシダーゼ、オキシドリダクターゼ、セルラーゼ、リパーゼ、クチナーゼ、ペクチナーゼ、ペクチンリアーゼ、キシラナーゼ、及び/又はエンドグルコシダーゼ)を更に含む。幾つかの態様において、追加的な酵素又は酵素誘導体はヘミセルラーゼ、ペルオキシダーゼ、プロテアーゼ、セルラーゼ、キシラナーゼ、リパーゼ、フォルフォリパーゼ、エステラーゼ、クチナーゼ、ペクチナーゼ、ケラチナーゼ、リダクターゼ、オキシダーゼ、オキシドリダクターゼ、フェノロキソダーゼ、リポキシゲナーゼ、リグニナーゼ、プルラナーゼ、タンナーゼ、ペントサナーゼ、マンナナーゼ、ベータグルコシダーゼ、アラビノシダーゼ、ヒアルノニダーゼ、コンドロイチナーゼ、ラッカーゼ、及びアミラーゼ、又はこれらの混合物から選択される。幾つかの態様において、この洗浄方法は更に表面又は製品を洗浄組成物と接触させた後に表面又は製品をすすぐ工程を含む。幾つかの代替的態様において、本明細書で提供される任意の好適な組成物を洗浄方法に用いることができる。幾つかの態様において、この表面及び/又は製品はカッパカラギナンで汚された布を含む。他の態様において、この布製品はサラダドレッシング、バーベキューソース、及び/又はマーマレードで汚されている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1はアルテロモナスカラゲーノボラ(Alteromonas carrageenovora)由来の野生型CgkAκ−カラギナーゼ(Potinら、Eur.J.Biochem.228:971−5(1995))のアミノ酸配列(配列番号6)を示す。この野生型シグナル配列を下線で、成熟コード部分を太字で、C末端プロ配列をイタリック体で示す。
【図2】図2はDNA2.0ベクター内で、クローンしたときに、pJ31−7585となる、κ−カラギナーゼ(配列番号7)の成熟及びプロ領域をコードする合成コドン最適化遺伝子のポリヌクレオチド配列を示す。κ−カラギナーゼの成熟及びプローブ領域は太字で示す、成熟部分は下線で示す。AprEシグナル配列のエンドをコードしているDNA配列(GCGCGCAGGCA;配列番号8)及びストップ配列(TAAAAGCTT;配列番号9)はイタリック体で示す。
【図3】図3はκ−カラギナーゼをコードしているコドン最適化ポリヌクレオチドを含むp2JM−cgkA統合ベクターのマップである。
【図4】図4は3つのタイプのカラギナーゼ及び3つのタイプの洗剤中におけるκ−カラギナーゼの加水分解活性を示したバーダイアグラムを示す。図4A乃至Cは、それぞれ、カッパ(タイプI)、イオタ(タイプII)、及びカッパ(タイプIII)カラギナンの、AATCC HDL洗剤におけるκ−カラギナーゼの加水分解活性を示すバーダイアグラムである。図4D及び4Eは、それぞれ、カッパカラギナン(タイプI)における、HDD及びADW洗剤集のκ−カラギナーゼの活性を示している。
【図5】図5A及び図5Bは、それぞれ、サラダドレッシング及びバーベキューソースのシミにおける、AATCC HDL洗剤中のk−カラギナーゼの活性を示すバーダイアグラムである。汚れ除去活性は実施例3で説明するマイクロスウォッチ法を用いて決定した。
【図6】図6は、トマトジュース、チッカ(tikka)、草、ケチャップ、マスタード、バーベキューソース、及びチョコレート豆乳の汚れに対するATCC HDL洗剤中のκ−カラギナーゼの活性を示すバーダイアグラムである。汚れ除去活性は実施例4で説明するターゴトメーター法を用いて決定した。
【発明を実施するための形態】
【0014】
発明の説明
本発明は少なくとも1つのカラギナーゼ酵素を含む洗浄組成物、宿主細胞中でカラギナーゼ酵素を生産する方法、少なくとも1つのカラギナーゼ酵素をコードする組換えポリヌクレオチドを含む宿主細胞、及びカラギナーゼをコードする組換えポリヌクレオチドを提供する。
【0015】
定義
他の方法で定義しない限り、本明細書で用いる全ての技術的及び科学的用語は本発明の属する技術分野の当業者が通常理解しているものと同様の意味を有する。ここに含まれている用語を含む各種科学用語辞書はよく知られており、当業者に利用されている。本明細書で開示されているものと類似又は等しい任意の方法及び物質を本発明の実施又は試験に用いることができるが、代表的な方法及び物質を開示している。即ち、明細書全体を参照することにより以下で定義されている用語をより詳細に説明することができる。本明細書において用いられているように、「1つの」(a及びand)並びに「この」(the)の語は、別に定義しない限り、複数も意味するものとする。特に定義しない限り、核酸配列は左から右に向かって、5’から3’に向かって記載し、アミノ酸配列は左から右に向かって、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって記載する。本発明で開示されている特定の方法、手順、及び試薬は、文脈に応じて変化するので、当業者はこれらを特定の態様に限定しないことを理解するだろう。
【0016】
本明細書において参照されている全ての特許文献及び刊行物、並びにこれらに開示されている全ての配列は、個々の刊行物及び特許文献が、具体的及び個別に、参照により取り込まれるべきであると示唆されている範囲内において、参照により完全に本明細書に援用する。引用された全てのドキュメントは、関連する部分において、参照により本明細書に援用される。任意のドキュメントの引用は、本発明に関する従来技術を、受け入れることを許容するものではない。
【0017】
数値範囲は、この範囲を規定している数も含む。本明細書を通じて記載されている上限値は、各下限値を含み、そのような下限値も明確に本明細書に記載されている。本明細書を通じて記載されている下限値は、各より高い値を含み、そのような値も本明細書に記載されているものとする。本明細書を通じて記載されている数値範囲はより狭い数値範囲を含み、そのような数値範囲も本明細書に記載されているものとする。
【0018】
本明細書で提供されている標題は、本発明の側面又は態様を限定するものではない。これらは明細書全体を参照することにより理解することができる。前述のように、以下で定義される用語は明細書全体を参照することにより完全に理解される。
【0019】
「プロモーター」の語は細胞において下流ポリヌクレオチドの転写を導く核酸である。特定の場合、このポリヌクレオチドはコード配列を含み、プロモーターは、翻訳可能RNAへコード配列を転写させる。「aprEプロモーター」の語は、バチルススブチリスのスブチリシンの発現を自然に誘発するポリヌクレオチドプロモーター配列を意味する(Ferrariら、J.Bacteriol.170:289−295[1988])。
【0020】
「コード配列」の語は、プロモーターを含む好適な制御配列下におかれたときに、ポリペプチドを翻訳するmRNAへ転写される核酸配列である。幾つかの態様において、コード配列は単一のオープンリーディングフレームを含み、他の態様ではコーディング配列は例えば、イントロンにより分離された幾つかのオープンリーディングフレームを含む。コード配列はcDNA、ゲノムDNA、合成DNA、又は組換えDNAでよい。コーディング配列は通常開コドンにおいて開始し(例えば、ATG)、停止コドンで停止する(例えば、UAA、UAG、及びUGA)。
【0021】
「組換え」の語は、宿主細胞内で、自然発生しないポリヌクレオチド又はポリペプチドを意味する。幾つかの態様において、組換え分子は2つ以上の、非自然発生的方法で結合された自然発生配列を含む。幾つかの態様において、組換えポリペプチドは自然発生配列及び合成配列を含む。
【0022】
本明細書において、「カラギナーゼ」及び「カラギナーゼタンパク質」の語はグリコシルヒドロラーゼのファミリー16(GH16)のセリングリコシドヒドロラーゼを意味する。カラギナーゼタンパク質はIUMBM酵素命名法によりEC3.2.1.83に分類される活性を有している。この例示的なカラギナーゼタンパク質の活性は通常Michelら、Appl.Microbiol.Biotechnol71:23−33(2006)に記載されている。幾つかの態様において、本発明のカラギナーゼはカッパカラギナーゼ(「κ−カラギナーゼ」又は「CgkA」)である。
【0023】
別に指摘しない限り、カラギナーゼタンパク質中の全てのアミノ酸位置は配列番号2で定義されるアミノ酸配列に対応している。幾つかの態様において、カラギナーゼタンパク質の比較は、全米バイオテクロノロジーセンター(NCBI)のワールドワイドウェイブサイトから利用可能な、BALSTプログラム(例えば、Altschul、Nucl.Acids Res.,25:3389−3402[1997]及びSchaffer,Bioinformatics 15:1000−1011[1991]参照)を用いて配列番号2で、カラギナーゼタンパク質をアラインメントすることにより行うことができる。幾つかの態様において、カラギナーゼタンパク質の比較はこのBLASTプログラムを用いて配列番号4で定義されるカラギナーゼのアラインメントによりなされる。配列番号1は成熟タンパク質及びプロタンパク質(配列番号2)を含むカラギナーゼの未処理成熟形態をコードしている。配列番号3はカラギナーゼ(配列番号4)の成熟活性形態をコードしている。本発明の歩法により生成されるものは成熟活性形態であり、本発明の洗浄組成物中に含まれるものである。「完全長」カラギナーゼは分泌シグナルペプチド、成熟タンパク質、及びC末端プロ領域を含む。
【0024】
「自然発生」又は「野生型」の語は自然の中に見られるものと同一な、カラギナーゼタンパク質又は未修飾アミノ酸配列を有するカラギナーゼタンパク質をコードしているポリヌクレオチドを意味する。自然発生酵素は、特定の微生物中に発現される又は見られるこれらの酵素のような天然酵素を含む。野生型又は自然発生の配列は変異体又は合成配列が由来する配列のことである。野生型配列は相同又は異種タンパク質のいずれかをコードする。
【0025】
本明細書において、「合成」の語はインビトロケミカル又は酵素学的合成により生成された分子を意味する。これは、バチルスを含むがこれらに限定されない宿主有機体からの最適コドン仕様頻度により生成されたカラギナーゼ変異体核酸を含むがこれらに限定されない。
【0026】
「シグナル配列」、「シグナルペプチド」、及び「分泌シグナルペプチド」の語はタンパク質の成熟又はプレカーサー形態の分泌に関係する、任意の核酸及/又はアミノ酸配列を意味する。シグナル配列の定義は機能的なものであり、タンパク質の分泌に関与しているタンパク質遺伝子のN末端によりコードされる全てのアミノ酸配列を含む。
【0027】
「プロ配列」及び「プロ領域」の語は、カラギナーゼの分泌/生成に必要なカラギナーゼの成熟形態のC末端におけるアミノ酸配列を意味する。プロ配列の切断により、成熟、活性カラギナーゼとなる。例示のために、本発明のカラギナーゼのプロ領域は277位のアミノ酸から372位のアミノ酸までの、配列番号2のN末端残渣に同一なアミノ酸配列を含む(即ち、SAPGEGQSCPNTFVAVNSVQLSAAKQTLRKGQSTTLESTVLPNCATNKKVIYSSSNKNVATVNSAGWKAKNKGTATITVKTKNKGKIDKLTIAVN;配列番号5)。
【0028】
「成熟形態」、「成熟活性形態」、及び「成熟領域」の語はタンパク質の最終的な機能形態を意味する。例示のために、本発明のカラギナーゼの成熟形態は配列番号2及び配列番号4の1乃至277残渣に同一なアミノ酸配列を含む。本明細書において、「成熟形態」は「完全長カラギナーゼの「処理された」形態であり、この完全長カラギナーゼの処理はシグナルペプチドの除去及びプロ領域の除去を含む。この「成熟形態」は「未処理の成熟形態」から処理され、未処理成熟形体の処理は、プロ領域の除去を含む。
【0029】
本明細書において「発現ベクター」の語は好適な宿主細胞において、DNAの発現に影響することができる好適な制御配列に作動可能に結合しているDNA配列を含むDNA構築体を意味する。そのような制御配列は、転写に影響するプロモーター、そのような転写を制御する任意のオペレーター配列、好適なmRNAリボゾーム結合部位をエンコードしている配列、並びに転写及び翻訳の停止を制御する配列を含む。このベクターは、プラスミド、ファージ粒子、又は単なるゲノム挿入でよい。一旦好適な宿主細胞へ形質転換されると、このベクターは宿主細胞ゲノムとは別個に複製及び機能し、又は幾つかの場合において、ゲノム自身に組み込まれる。本明細書において、「プラスミド」、「発現プラスミド」、及び「ベクター」は、「プラスミド」が最も頻繁にベクター形態に用いられているが、しばしば互換的に使用される。しかしながら、本発明では、本分野において等しい機能を提供することができる、他の形態の発現ベクター、およびこれになるものを含むことを意図する。「ベクター」はクローニングベクター、発現ベクター、シャトルベクター、プラスミド、又はウイスル分子、DNA構築体、カセット等を含む。発現ベクターはプロモーター、シグナル配列、コード配列、及び転写配列等の調節配列を含む。
【0030】
「作動可能に結合する」の語は、機能的に関連しているエレメントの配置を意味する。例えば、プロモーターは、配列の転写を制御する場合には、コード配列に作動可能に結合しており、シグナル配列が、宿主細胞の分泌システムを通じてタンパク質に関係する場合には、シグナル配列はタンパク質に作動可能に結合していると言う。
【0031】
「プロモーター/エンハンサー」の語はプロモーターとエンハンサーの両方の機能を提供することができる配列を含むDNAのセグメントを意味する(例えば、レトロウイスルのロングタームリピートはプロモーター及びエンハンサーの両方を含む。)このエンハンサー/プロモーターは、「内性」又は「外来性」(又は「異種」)のいずれでもよい。内性の「エンハンサー/プロモーター」はゲノム中の所与の遺伝子と本来的に結合しているものである。外来性(又は異種)のエンハンサー/プロモーターはゲノム操作の手段(即ち、分子生物学的技術)により、ゲノムに並んで配置されたものである。
【0032】
「核酸」の語はDNA、RNA、シグナル、又は二本鎖及びこれらの修飾物を含む。「核酸」及び「ポリヌクレオチド」の語は本明細書において互換的に使用する。
【0033】
本明細書で用いる「DNA構築体」の語は、少なくとも、2つのDNAポリヌクレオチドフラグメントを含む核酸配列を意味する。
【0034】
本明細書において、「発現カセット」の語は標的細胞内で、特定の核酸の転写を行わせるか特定の核酸エレメントの連続物で、組換手法を用いて又は合成的に生成された核酸構築体を意味する。組換発現カセットはプラスミド、染色体、ミトコンドリアDNA、プラスチドDNA、ウイスル、又は核酸フラグメントに取り込まれることができる。通常、発現ベクターのこの組換発現カセット部分は他の配列の中でも、転写されるべき核酸配列及びプロモーターを含む。
カラギナーゼに対して用いる「生産」の語は完全長カラギナーゼを処理する2つの工程を含む。これらの工程は、タンパク質分泌の間に起こることが知られているシグナルペプチドの除去、及び酵素の活性成熟形態を形成し、成熟プロセスの間に起こることが知られている、プロ領域の除去を含む(Wangら、Biochemistry 37:3265−3171(1998);Powerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83:3096−3100[1986])。幾つかの態様において、発現されたタンパク質は、発現された細胞内環境に閉じ込められている。他の態様では、発現されたタンパク質は細胞外環境に分泌される。従って、幾つかの態様において、所望のタンパク質の生産はこのタンパク質の細胞内での発現と細胞外培地への分泌を含む。
【0035】
本明細書において、「ポリペプチド」及び「プロテイン」の語は互換的に使用され、任意の数のアミノ酸残渣のポリマーを意味する。この語は、天然のアミノ酸ポリマーのほかに、天然のアミノ酸に対応するアミノ酸財残渣の1つ以上が人工的なケミカルアナログであるアミノ酸ポリマーに用いる。この語はポリペプチドが機能を維持するために保存しておく保存アミノ酸置換を含むポリマーにも用いる。「ペプチド」は50アミノ酸残渣未満のポリペプチドである。
【0036】
「宿主細胞」は、組換核酸を含む(即ち組換核酸が組み込まれている)及び/又は宿主細胞のゲノムから自動的に複製する染色体外ベクター中に組換え核酸を含む細胞を意味する。任意の好適な細胞タイプを本発明の宿主細胞として使用することができる。本明細書において、宿主細胞は、既知の組換えDNA技術を用いて構築されたベクターで形質転換又は形質感染された原核又は真核宿主細胞である。形質転換された宿主細胞は、タンパク質変異体をコードしているベクターの複製又は所望のタンパク質への発現のいずれかを可能にする。タンパク質変異体のプレ−又はプレプロ−形態をコードしているベクターの場合において、そのようなベクターが発現されると、通常、宿主細胞から培養培地へと分泌される。
【0037】
「形質転換」の語は染色体外エレメント又は染色体組み込みのいずれかとして細胞内にDNAを維持するように、細胞へDNAを導入することを意味する。細胞へ核酸配列を挿入する意味に用いる、「導入された」の語は形質転換、形質誘発、又は形質感染を含む方法を含む。形質転換の手段は、プロトプラスト形質転換、塩化カルシウム沈殿、エレクトロポレーション、ネイキッドDNA、及び当業者に知られている方法を含む(Chang及びCohen,Mol.Gen.Genet.,168:111−115[1979];Smithら、Appl.Env.Microbiol.,51:634及びFerrariら、Harwood,Bacillus,Plenum Publishing Corporation,pp.57−72[1989]参照)。
【0038】
「不活性遺伝子」の語は不活性の前に、タンパク質を生産することができた染色体遺伝子座である(即ち、翻訳することができるRNAに転写されて、完全長、触媒活性のある、ポリペプチドを生産する)。転写されて、完全長の触媒活性のあるタンパク質に転写されない場合、遺伝子は不活性であると言う。その転写に必要な配列の修飾、RNAプロセシング(例えば、ポリAテイル付加)に必要な配列の修飾、及び/又は翻訳に必要な配列の修飾により不活性化される。欠失された遺伝子、欠失された領域含む遺伝子、再配列された領域を含む遺伝子、不活性ポイント変異又はフレームシフトを有する遺伝子、及び挿入を含む遺伝子は不活性化された遺伝子のタイプである。遺伝子はアンチセンス、RNA阻害、又は遺伝子の発現を阻害する任意の他の方法を用いて失活させることができる。
【0039】
本明細書で用いる「回収された」、「単離された」、及び「分離された」の語は、自然発生的には関与している少なくとも1つの成分を除去したタンパク質、核酸、又はアミノ酸を意味する。
【0040】
本明細書において、「培養」の語は液体、固形、又は半固形培地で好適な条件下で微生物の集団を育成することを意味する。幾つかの態様において、「培養」は所望の外来タンパク質及び/又は他の好適な最終生成物の発酵組換え生成を意味する。通常、発酵は反応管又は反応器で生じる。
【0041】
「カラギナン」の語は、本明細書において、二糖モノマー当り1つ(k−)、2つ(l−)、又は3つ(λ−カラギナン)の硫酸基(sulfated group)により置換されている紅藻類(Rhodophycae)の細胞壁由来の1,3−α−1,4−β−ガラクタンを意味する。
【0042】
本明細書において、特に定義しない限り、「洗浄組成物」又は「洗浄製剤」の語は布製品、食器、コンタクトレンズ、他の固形基質、髪(シャンプー)、皮膚(石鹸又はクリーム)、歯(マウスウォッシュ、歯磨きペースト)等の、洗浄されるアイテムから望まれない化合物を除去するために用いる組成物を意味する。この用語は組成物生物中に用いられるカラギナーゼ又は他の酵素と組成物との相性がよい限り、所望の洗浄組成物の特定の態様及び製品の形態(例えば、液体、ゲル、顆粒、又はスプレー組成物)から選択される任意の物質/生成物を包含する。洗浄組成物物質の特定の選択は洗浄する表面、アイテム、又は布製品、及び使用の間の洗浄条件に対する組成物の所望の形態により容易に決定することができる。これらの用語は更に、洗浄、漂白、除菌、及び/又は滅菌する任意の目的物及び/又は表面に好適な任意の組成物を意味する。この語は、洗剤組成物(例えば、液体及び/又は固形洗濯用洗剤及びおしゃれ着用洗剤;ガラス、木、セラミック、及び金属カウンタートップ及び窓等の硬表面洗浄製剤;カーペット洗浄剤;オーブン洗浄剤;布製品フレッシュナー;ファブリック柔軟剤;及びテキスタイル及び洗濯用プレスポッター、並びに食器用洗剤)を含むがこれらに限定されない。
【0043】
即ち、「洗浄組成物」の語は、本明細書において、別に定義しない限り、顆粒又は粉形態の全ての目的又はひどい汚れ用の洗剤、特に洗浄洗剤、液体、ゲル又はペースト形態の全ての目的の洗剤、特にひどい汚れ用の液体タイプ(HDL)洗剤;液体オシャレ着用洗剤;食器用洗剤又は液体食器用洗剤、特に高発泡タイプ;タブレット、顆粒、液体の各種タイプの食器洗浄機用洗剤及び機会のためのリンス剤;手を洗うための液体洗浄剤及び除菌剤、石鹸、マウスウォッシュ、歯みがき、車又はカーペット用洗剤、風呂用洗剤、ヘアシャンプー及びヘアリンス;シャワーゲル及び泡風呂、及び金属クリーナー、並びに漂白剤等の洗浄補助剤及び「ステインスティック」又は前処理用の洗浄剤を含むがこれらに限定されない。
【0044】
本明細書において「洗浄組成物」及び「洗浄製剤」の語は固形物質の洗浄のための洗浄培地中に用いるための混合物を意味する。幾つかの態様において、この語は布及び/又は衣類を洗浄するためのものを意味する(例えば、洗濯用洗剤)。代替的な態様において、この語は食器、カトラリー等を洗浄するために用いる他の洗剤を意味する(例えば、「食器用洗剤」)。本発明を特定の洗剤又は組成物に限定することは意図しない。即ち、カラギナーゼに加えて、この語は界面活性剤、トランスフフェラーゼ、加水分解酵素、酸化還元酵素、ビルダー、漂白剤、青味剤、漂白活性剤、及び蛍光染料、ケーキ抑制剤、マスキング剤、酵素活性剤、抗酸化剤、及び安定剤を含む洗剤を包含する。
【0045】
本明細書において「表面洗浄組成物」の語は、床、壁、タイル、浴槽、及びキッチン固定物等の硬表面を洗浄するための洗浄組成物を意味する。そのような組成物は、固形、液体、エマルジョンを含むがこれらに限定されない任意の形態で提供される。
【0046】
本明細書において、「食器用洗浄組成物」の語は、顆粒及び液体形態を含むがこれらに限定されない、食器を洗浄するための組成物の全ての形態を意味する。
【0047】
本明細書において、「布洗浄組成物」の語は、顆粒又は液体、及び棒状を含むがこれらに限定されない布製品を洗浄するための全ての形態の洗剤を意味する。
【0048】
本明細書において、「布製品」の語は、任意のテキスタイル物質を包含する。従って、この語は布製品、毛糸、繊維、不織布物質、天然物質、合成物質及び任意の他のテキスタイル材料のほかに、衣類も包含する。
【0049】
本明細書において、「テキスタイル」の語は毛糸、織布、及び不織布にする加工される、又はこれらに用いられるのに適したステープル及び繊維のほかに、織られた布製品も含む。この語は合成繊維(例えば、工業的に生産された繊維)のほかに、天然の毛糸も包含する。
【0050】
本明細書において、「テキスタイル物質」の語は繊維、毛糸の中間体、毛糸、布製品及び布から作られた製品(例えば、ガーメント及び他の物質)に対する通常の用語である。
【0051】
本明細書において、「効果的な量の酵素」の語は特定の製品(例えば、パーソナルケア製品、洗浄製品等)において必要とされる酵素活性を達成するのに必要な酵素の量を意味する。そのような有効な量は当業者が容易に評価することができ、用いられる酵素変異体の種類、洗浄製品、洗浄組成物の組成、及び液体又は乾燥形態(例えば、顆粒、棒)であるか等の多くの因子により決定される。
【0052】
本明細書において「精製された」又は「単離された」の語は、サンプルから汚染物質の洗浄を意味する。例えば、カラギナーゼは汚染しているタンパク質及びカラギナーゼ以外の溶液又は調製物中の他の化合物の除去により精製される。幾つかの態様において、組換えカラギナーゼはバクテリア又は糸状菌宿主細胞中で発現され、これらの組換えカラギナーゼは他の宿主細胞の構成要素を除去して精製される。組換えカラギナーゼポリペプチドのパーセントはサンプル中で高められる。幾つかの特定の態様において、本発明のカラギナーゼはSDS−PAGE又の既知の方法で測定すると、タンパク質成分の少なくとも約加えて99%の精製レベルである。幾つかの代替的な態様において、本発明のカラギナーゼは組成物もカラギナーゼ成分の少なくとも約99%を含む。更なる代替的な態様において、このカラギナーゼは総タンパク質及び/又はカラギナーゼ成分の少なくとも90乃至95%の範囲で存在する。
【0053】
本明細書において、機能的及び/又は構造的に類似するタンパク質は「関連タンパク質」であると定義される。幾つかの態様において、これらのタンパク質は異なる有機体のクラスを含む、異なる遺伝子及び/又は種由来である(例えば、バクテリア酵素及び糸状菌酵素)。更なる態様において、関連タンパク質は同じ種由来である。即ち、本発明は特定の源由来の関連タンパク質に限定することを意図しない。更に、「関連タンパク質」の語は3次元構造ホモロジー及び1次元配列ホモロジー(例えば、本発明のカラギナーゼ)を包含する。即ち、「関連タンパク質」の語は3次元構造類似性及び1次元配列類似性(例えば、本発明のカラギナーゼ)を包含する。例えば、本発明はゾベリラガラクタニボランス(Zobellia galactanivorans)、バチルスサーキュランス(Basillus circulans)、及びストロングリルオーシャントラトスププラタス(Strongylocentrtus pupuratus)、及びサイトファージドロバキエンシス(Cytophaga drobachiensis)のカラギナーゼの酵素を含むがこれらに限定されない類似性を含む。
【0054】
関連(及び由来)タンパク質は「変異タンパク質」を含む。幾つかの態様において、変異タンパク質は親タンパク質及び1つ以上の少数のアミノ酸残渣が異なる。異なるアミノ酸残渣の数は1、2、3、4、5、10、15、20、30、40、50又はこれ以上である。幾つかの態様において、異なるアミノ酸残渣の数は1乃至10の間である、幾つかの態様において、関連タンパク質及び特定の変異タンパク質は少なくとも70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約995のアミノ酸同一性を有している。
【0055】
本発明の幾つかの態様において、カラギナーゼ遺伝子は好適な発現プラスミドへ結合される。クローンされたカラギナーゼ遺伝子はカラギナーゼ遺伝子が発現するような宿主細胞細条件下で形質転換又は形質感染に用いられる。このプラスミドはプラスミド複製に必要であると知られているエレメントを含むように宿主細胞内で複製されるか、又はプラスミドが宿主細胞染色体へ組み込まれるように設計されている。必要なエレメントは効率的な遺伝子発現(例えば、所望の遺伝子に作動可能に結合しているプロモーター)に提供される。幾つかの態様において、これらに必要とされるエレメントは遺伝子自信の相同プロモーターとして供給され、もし認識されるならば(即ち、宿主細胞により転写されるならば)外来性であるか又はカラギナーゼ遺伝子の内性転写領域により供給される転写ターミネーター(例えば、真核宿主細胞に対するポリアデニレーション領域)として、供給される。幾つかの態様において、抗生物質を含む培地中での育成によりプラスミド感染宿主細胞の連続培養を維持することができる抗生物質耐性遺伝子のような選択遺伝子も含まれる。
【0056】
「コードしている核酸分子」「コードしている核酸配列」、「コードしているDNA配列、「コードしているDNA」、及び「コードしているポリヌクレオチド」の語はデオキシリボ核酸の鎖に沿ったデオキシヌクレオチドの順番又は配列を意味する。これらのデオキシリボヌクレオチドの順番はポリペプチド(タンパク質)鎖に沿ったアミノ酸を決定する。このDNA配列はアミノ酸配列をコードする。
【0057】
本明細書において、「相同タンパク質」の語はカッパカラギナーゼ(例えば、他の源からのカラギナーゼ)として、同様の作用及び/又は構造を有するタンパク質(例えば、カラギナーゼ)を意味する。相同体は新化の過程において。必ずしも関係していなくてもよい。従って、この語は異なる種から得られた同じ又は類似する酵素(即ち、構造及び機能の観点から)を含む。幾つかの態様において、所望のタンパク質に、4次的、3次的及び/又は1次的構造が類似するものを同定することが好ましい。
【0058】
本明細書において、「相同遺伝子」の語はお互いに対応する遺伝子がお互いに同一又は非常に類似している、別の種由来の遺伝子の少なくとも1部分を意味する。この語は、遺伝的複製(例えば、パラロガス遺伝子)により分離された遺伝子のほかに、種により分離された遺伝子(即ち、新たな種の発生)(例えば、オーソロガス遺伝子)も含む。これらの遺伝子は「相同タンパク質」をコードしている。
【0059】
本明細書において、「オーソログ」及び「オーソロガス遺伝子」の語は異なる種において、分離により、共通の祖先遺伝子(即ち、ホモロガス遺伝子)から発展した遺伝子を意味する。通常、オーソロガスは進化の過程の間に同じ機能を維持している。オーソロガス遺伝子の同定は新しく配列決定された遺伝子において、遺伝子機能の信頼できる予測に用いることができる。
【0060】
本明細書において、「パラログ」及び「パラロガス遺伝子」の語はゲノム内での複製に関係している遺伝子を意味する。一方、オーソログは進化の過程で同じ機能を維持しているけれども、パラログはオリジナルの関係する同じ機能も有しているが、新たな機能を有するものである。パラロガス遺伝子の例としては、トリプシン、キモトリプシン、エラスターゼ、及びトロンビンをコードしている遺伝子を含むがこれらに限定されない。これらの全ては、セリンプロテアーゼであり、同じ種内で一緒に発生する。
【0061】
配列間の相同性の程度は任意の既知の方法を用いて決定することができる(例えば、Smith及びWaterman,Adv.Appl.Math.,2:482[1981];Needleman及びWunsch,J.MoI.Biol.,48:443[1970]; Pearson及びLipman,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:2444[1988];ウィスコンシンジェネティックソフトウェアパッケージ(The Wisconsin Genetics Software Package)(Genetics Computer Group,Madison,Wl)のGAP,BESTFIT,FASTA,及びTFASTAのようなプログラム;並びにDevereuxら,Nucl.Acid.Res.,12:387−395[1984]).
【0062】
例えば、PILEUPは配列相同性レベルを決定するための有用なプログラムである。PILEUPは累積的な付加アラインメントを用いて関連する配列のグループから複数の配列アラインメントを生成する。このプログラムはこのアラインメントを生成するために用いるクラスタリング関係を示すツリーもプロットすることができる。PILEUPはFeng及びDoolittle(Feng及びDoolittle,J.Mol.Evol.,35:351-360[1987])のプログレッシブアラインメント法の簡略型を使用する。この方法はHiggins及びはSharp(Higgins及びSharp,CABIOS 5:151−153[1989])により説明されているものと類似している。有用なPILEUPパラメーターは3.00のデフォルトギャップウエイト、0.10のデフォルトギャップレングス、及びウエイテッドエンドギャップを含む。他の有用なアルゴリズムの例としては、Altschulら(Altschulら,J.Mol.Biol.,215:403−410,[1990];及びKarlinら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873−5787[1993])がある。特に有用なBLSATアルゴリズムの1つはWU−BLAST−2プログラムである(Altschulら、Meth.Enzymol.,266:460−480[1996]参照)。パラメーター「W」、「T」、及び「X」はアラインメントの精度と速度を決定する。このBLASTプログラムは11のワードレングス(W)、50のBLOSUM62スコアリングマトリックスアラインメント(B)(Henikoff及びHenikoff,Proc.Natl.Acad.Sci. USA 89:10915[1989]参照)、10の期待値(E)、M‘5、N’−4、及び両ストランドの比較をデフォルトとして使用する。
【0063】
本明細書において「核酸配列の同一性パーセント(%)」の語は配列のヌクレオチド残渣に同一な候補配列中の核酸残渣のパーセンテージである。同様に、「アミノ酸配列同一性のパーセンテージ」の語は、配列の核酸配列に同一な候補配列の中のアミノ酸配列のパーセンテージである。
【0064】
カラギナン及びカラギナーゼ
食品工業において、カラギナンは主要なテクスチャー成分の1つである。カラギナンは、海洋の紅藻類(Rhodophyta)特定の種から得られる直鎖、硫化ガラクタンのファミリーの一般名称である。これらは交互にα(1→3)及びβ(1→4)結合しているD−ガラクトース残渣からなる。α(1→4)結合ガラクトース残渣中の3,6無水架橋及び硫黄の置換位置により、これらはk−、l−、及びλ−カラギナンと呼ばれる(Kloareg及びQuatrano,Oceanogr.Mar.Biol.Annu.Rev.,26,259−315[1988])。これらの3つの主要なカラギナンタイプに加えて、μ−及びv−カラギナンと呼ばれる2つの他のタイプのカラギナンが商業的カラギナンサンプル中に存在する。これらはそれぞれ、k−カラギナン及びl−カラギナンの生物学的前駆体である(van de Veldeら,Carbohydrate Res.339:2309−2313[2004])。
【0065】
カラギナンの3つの主要な形態はしばしば各種加工食品、化粧品、及び医薬品の成分の中に列挙されている。κ―、ι−及びλ−カラギナンは単独で、組み合わせて、又は他のタイプの食物繊維と一緒に使用される。カラギナンはアイスクリーム、ヨーグルト、加工ミルク、ホイップトッピング、プリン、チーズ、及びサワークリームのような乳製品に用いられる。これらの製品において、カラギナンは溶解調節、増粘剤、脂肪及びタンパク質安定剤、懸濁及び乳化安定剤、ゲル化、増粘剤、ホエイ分離抑制、シネレシス制御のために用いる。加工された鶏肉、ハム、及び赤肉製品において、カラギナンは肉の中の水のトランスポーターラッピングによる生産性を高める。カラギナンはカラギナンベースの脂肪代替品として用いられている。他の食品工業製品はジュース、におけるテクスチャー修飾機能、アイシング、ジャム、ジェル、サラダドレッシング、キャンディーの伸びをしやすくするため、及び新鮮な果物加工における褐色変性の防止として用いられている。大部分の加工食品は単独又は他のカラギナンのタイプと混合して、カッパカラギナンを含む(例えば、Shah及びHuffman,Ecol.Food Nutrition 42:357−371[2003]参照)。
【0066】
イオタ−及びカッパカラギナンを加水分解することができる酵素を精製する微生物が分離されている(Bellionら,Can.J.Microbiol.,28:874−80[1982];並びにYaphe及びBaxter,Appl.Microbiol3:380−383[1955]参照)。シュードモナスカラゲーノボラ(Pseudoalteromonas carrageenovora)株(アルテロモナスカラゲーノボラ(Alteromonas carrageenovora)としても知られている)は、カッパ−及びラムダカラギナーゼ活性を有することが照明されている。カラギナンを分解することができる他のグループが特徴付けられている(例えば、Sarwarら,J.Gen.Appl.Microbiol.,29:145−55[1983]参照)。これらのイエローオレンジバクテリアはバクテリアのCytophagaグループに分類され、これらのバクテリアの幾つかはアガー及びカラギナンの両方を加水分解する能力を有している。
【0067】
クローンされたカッパカラギナーゼをコードしている遺伝子はシュードモナスカラゲノーボラ(P.carrageenovora)(Barbeyronら,Gene139:105−109[1994])由来の遺伝子cgkA及びCytophaga drobachiensis(Barbeyronら,Mol.Biol.Evol.15:528−537[1998])由来のcgkA遺伝子カッパカラギナーゼを含む。
【0068】
Cytophaga drobachiensis(Barbeyronら,MoI.Biol.Evol.,上記)のカッパ−カラギナーゼ、Alteromonas carrageenovoraのカッパカラギナーゼ、Zobelia galactcinovorans由来のカッパカラギナーゼ、Bacillus circulans及びStrongylocentrotus pupuratus由来のカッパカラギナーゼ等の幾つかのカッパカラギナーゼの単離及び特徴づけは説明されており(例えば、Strohmeierら,Protein Sci.,13:3200−3213[2004]参照)及びAlteromonas carrageenovoraのカッパカラギナーゼは詳細に研究されている(Potinら,Eur.J.Biochem.,228,971−975[1995]参照)。
【0069】
本発明は分泌シグナルペプチドをコードする異種配列に作動可能に結合している、カッパカラギナーゼをコードしている配列を含む単離組換ポリヌクレオチドを提供する。幾つかの態様において、コードされたカッパカラギナーゼはグリコシルヒドロラーゼのファミリー16(GH16)に属する。幾つかの態様において、カッパ−カラギナーゼの成熟形態をコードする配列は海洋バクテリア(例えば、Alteromonas種)種由来の配列等の野生型配列である。幾つかの態様において、この配列はアルテロモナスカラゲーノボラ(Alteromonas carrageenovora)のカラギナーゼの野生型配列である。本発明に用いることができる他のカラギナーゼ配列はZobellia galactanivorans、Bacillus circulans、Strongylocentrotus pupuratus、及びCytophaga drobachiensis由来のカラギナーゼをコードするものを含むがこれらに限定されない。本発明は、アルテロモナスカラゲーノボラ(A.carrageenovora)、Z.galactanivorans、B.circulans、S.pupuratus、及びC.drobachiensisのカラギナーゼポリヌクレオチド配列に相同な遺伝子か又はこれら由来の、野生型又は合成ポリヌクレオチド配列を包含する。従って、A.carrageenovoraのカッパカラギナーゼのポリヌクレオチド配列に相同な遺伝子によりコードされたカラギナーゼ酵素を含む。前述のように、「相同遺伝子」の語は異なる種から得られたけれども、お互いに同一であるか非常に似ている、対応する遺伝子である。この語は遺伝的複製(例えば、パラロガス遺伝子)により分離された遺伝子のほかに、スペシエーション(即ち、新たな種の発展)により分離された遺伝子を包含する。相同遺伝子は相同タンパク質をコードする。
【0070】
本発明は、構想的及び/又は機能的に関連するカラギナーゼタンパク質をコードするポリヌクレオチドを包含する。幾つかの態様において、これらのタンパク質は異なるクラス(例えば、バクテリアタンパク質及び糸状菌タンパク質)の有機体を含む異なる遺伝子及び/又は種由来である。幾つかの態様において、関連態様において、は同じ種由来である。即ち、本発明を特定の種由来の関連タンパク質に限定することを意図しない。更に「関連タンパク質」の語は3次構造及び1次配列相同体(例えば、本発明のカラギナーゼ)を含む。例えば、本発明はZ.galactanivorans、B.circulans、S.pupuratus、及びC.drobachiensisのカラギナーゼのような酵素を含むがこれらに限定されない相同体を含む。
【0071】
前述のように、関連(及び誘導)タンパク質は「変異タンパク質」を含む。幾つかの態様において、変異タンパク質は少数のアミノ酸残渣が親タンパク質及び他のものとは異なる。異なるアミノ酸残渣の数は1、2、3、4、5、10、15、20、30、40、50、以上である。幾つかの態様において、変異体の間の異なるアミノ酸の数は1乃至10の間である。幾つかの特定の態様において、関連タンパク質及び特定の変異タンパク質は少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%の配列同一性を含む。所望の特定のカラギナーゼ酵素はIUMBM酵素命名法に従いEC3.2.1.83に分類される活性を有している。部位飽和変異誘発、スキャニング変異誘発、挿入変異誘発、ランダム変異誘発、部位指定変異誘発、及び指向進化、ならびに各種組み換えアプローチを含むがこれらに限定されない幾つかの方法が、本発明の酵素変異体の生成に適している。
【0072】
野生型及び変異タンパク質の特徴づけは任意の好適な手段を用いて行うことができ、所望の性質の評価に基づいている。例えば、pH及び/又は温度、並びに分解及び/又は酸化安定性は本発明の幾つかの態様において決定されている。即ち、これらの特徴の1つ以上において(pH、温度、タンパク質分解安定性、及び/又は酸化安定性)各種安定性の程度を有する酵素を意図する。
【0073】
特定の態様において、本発明の組換ポリヌクレオチドは用いられる宿主細胞ちゅうでカラギナーゼ融合タンパク質を発現するためにコドン最適化されたポリヌクレオチド配列を含む。多くの細胞において各使用コドンを列挙するコドン使用表は当業者に知られている(Nakamuraら、Nucl.Acids.Res.,28:292[2000])又は容易に利用可能であるので、発現されるべきタンパク質のアミノ酸配列を提供するアミノ酸は用意に設計することができる。幾つかの態様において、コドン最適化配列はカラギナーゼの成熟形態をコードするポリヌクレオチド及びN末端プロ領域を含む。幾つかの態様において、コドン最適化配列は以下に示す配列番号1(SEQ ID NO:1)に少なくとも約70%の配列が同一である。
【0074】
他の態様において、コドン最適化配列は、配列番号1に、少なくとも約75%、又は少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%同一である。
【0075】
幾つかの他の態様において、コドン最適化配列はカラギナーゼの成熟形態をコードするポリヌクレオチドを含む。幾つかの態様において、コドン最適化配列は以下の配列番号3(SEQ ID NO:3)に少なくとも約70%同一である。
【0076】
幾つかの態様において、コドン最適化配列は配列番号3に少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%同一である。
【0077】
幾つかの態様において、コドン最適化配列はカラギナーゼ融合タンパク質をコードするための分泌シグナル配列をコードしているポリヌクレオチド配列に作動可能に結合している。前述のように、特定の態様において、Bacillus宿主細胞が採用され、シグナル配列はBacilus宿主細胞の分泌経路へ融合タンパク質を誘導することができるアミノ酸配列である。特定のケースにおいて、用いられるシグナル配列は野生型Bacillus細胞から分泌されるタンパク質のシグナル配列を含む。そのようなシグナル配列はαアミラーゼ、プロテアーゼ(例えば、aprE又はスブチリシンE)、又はβ―ラクタマーゼ遺伝子によりコードされるシグナル配列を含む。幾つかの態様において、本発明の組換ポリヌクレオチドはAprEシグナルペプチドをコードしているポリヌクレオチドを含む。他の例示的なシグナル配列は、αアミラーゼ遺伝子、スブチリシン遺伝子、βラクタマーゼ遺伝子、天然プロテアーゼ遺伝子(例えば、nprT、nprS、nprM)又はB.stearothermophilus,B.licheniformis,B.lentus,B.subtilis,及びB.amyloliquefaciensを含むがこれらに限定されないBacillus種由来のprsA遺伝子によりコードされるシグナル配列を含むがこれらに限定されない。幾つかの態様において、このシグナル配列はB.subtilis(Olmos−Soto及びContreras−Flores,Appl.Microbiol.Biotechnol.,62:369−73[2003])のaprE遺伝子によりコードされるシグナル配列である。幾つかの態様において、AprEシグナル配列をコードしているポリヌクレオチドは以下の配列(SEQ ID NO:11)を有する。
【0078】
幾つかの態様において、AprEシグナルペプチドは以下の配列を有する:VRSKKLWISLLFALTLIFTMAFSNMSAQA(配列番号10(SEQ ID NO:10))。
【0079】
本発明に用いる更なるグナルペプチドは、例えば、Simonen及びPalva,Micro.Rev.,57:109−137[1993];等を参照。
【0080】
特定の態様において、本発明の組換えポリヌクレオチドは宿主細胞内でカラギナーゼを発現させるための発現カセットに含まれる。幾つかの特定の態様において、この発現カセットはプロモーター、カラギナーゼタンパク質をコードしているコード配列(カラギナーゼタンパク質がシグナル配列及び前記カラギナーゼタンパク質を含む融合タンパク質中に含まれている)、及びターミネーター配列を、作動可能に結合するように含んでいる。
【0081】
幾つかの態様において、野生型又は合成カラギナーゼ遺伝子を含むこの発現カセットは好適な発現プラスミドへ結合される。このカラギナーゼ遺伝子は、宿主細胞を形質転換又は形質感染するために用いられ、カラギナーゼ遺伝子を発現する。幾つかの態様において、プラスミドはプラスミド複製に必要であるとよく知られているエレメントを含むという点で、宿主細胞中で複製する。他の態様において、このプラスミドは宿主染色体へ取り込まれるように設計されている。この必要なエレメントは遺伝子発現を効果的に提供する(例えば、所望の遺伝子に作動可能に結合しているプロモーター)。幾つかの態様において、これらの必要なエレメントは、遺伝子自身の相同プロモーターとして提供され、もし認識される場合には(即ち、宿主細胞により転写される)、外来性又はカラギナーゼ遺伝子の内性ターミネーター領域により供給される、転写ターミネーター(真核宿主細胞ではポリアデニレーション領域)として供給される。幾つかの態様において、抗生物質含有培地で育成することによりプラスミド感染された宿主細胞を連続培養を可能とする抗生物質耐性遺伝子のような選択遺伝子も含まれる。
【0082】
本発明の発現ベクターに含まれるシグナル配列、プロモーター、及びターミネーターの選択は、用いる宿主細胞に大きく依存している。前述のように、特定の態様において、Bacillus宿主細胞を用い、シグナル配列はBacillus宿主細胞の分泌経路へ融合タンパク質を誘導することができる任意のアミノ酸配列である。特定のケースにおいて、用いられるシグナル配列は野生型Basillus細胞から分泌されたタンパク質のシグナル配列である。そのようなシグナル配列はα−アミラーゼ、プロテアーゼ(例えば、aprE又はスブチリシンE)、β−ラクタマーゼ遺伝子によりコードされるシグナル配列を含む。シグナル配列の例としては、α−アミラーゼ遺伝子、スブチリシン遺伝子、β−ラクタマーゼ遺伝子、天然プロテアーゼ遺伝子(例えば、nprT、nprS、nprM)又はB.stearothermophilus,B.licheniformis,B.lentus,B.subtilis,及びB.amyloliquefaciensを含むがこれらに限定されない任意の好適なBacillus種由来のprsA遺伝子を含むがこれらに限定されない。幾つかの態様において、シグナル配列はB.subtilisのAprE遺伝子によりコードされる(Olmos−Soto及びContreras−Flores,Appl.Microbiol.Biotechnol.,62:369−73 [2003]参照)。幾つかの態様において、AprEシグナル配列をコードしているポリヌクレオチドは以下の配列(SEQ ID NO:11)を有する。
【0083】
幾つかのタンパク質、AprEシグナルパプチドは、VRSKKLWISLLFALTLIFTMAFSNMSAQA(配列番号10)を有する。本発明に用いるさらなるペプチドはSimonen及びPalva,Micro.Rev.,57:109−137[1993]等参照のこと。
【0084】
Bacillus細胞に用いるのに適したプロモーター及びターミネーターは知られており、apr(アルカリプロテアーゼ)、npr(中性プロテアーゼ)、amy(α−アミラーゼ)及びβ−ラクタマーゼ遺伝子、並びにB.subtilis levansucrase遺伝子(sacB)、B.licheniformisα-アミラーゼ遺伝子(amyL)、B.stearothermophilus maltogenicアミラーゼ遺伝子(amyM)、B.amyloliquefaciensα-アミラーゼ遺伝子(amyQ)、B.licheniformisペニシリナーゼ遺伝子(penP),B.subtilis xylA及びxylB遺伝子のプロモーター及びテーミネーターを含むがこれらに限定されない。幾つかの態様において、カラギナーゼタンパク質を発現している発現カセットは配列番号12(SEQ ID NO:12)(Ferrariら,J.Bacteriol.170:289−295[1988])で定義されるaprEプロモーター
及びα―アミラーゼ遺伝子のLATターミネーター配列:CGGATTTCCTGAAGGAAATCCGTTTTTTTA((配列番号13)(SEQ ID NO:13))を含む。
【0085】
幾つかの他の態様において、この発現カセットは、配列番号10のAprEシグナルペプチドをコードしている、ポリヌクレオチド(例えば、配列番号11)に作動可能に結合している、AprEプロモーター配列(配列番号12)と、カラギナーゼ(例えば、配列番号2のκカラギナーゼ)由来の成熟未処理形態をコードしているポリヌクレオチド、又は(例えば、配列番号4のκカラギナーゼ)カラギナーゼ成熟形態をコードしているポリヌクレオチドと、αアミラーゼ遺伝子(配列番号13)のLATターミネーター配列とを含む。幾つかの態様において、カラギナーゼをコードしているポリスヌクレオチドを含む発現カセットは配列番号14(SEQ ID NO:14)の配列を有する。
【0086】
他の態様において、カラギナーゼをコードしているポリヌクレオチドを含む発現カセットは配列番号15(SEQ ID NO:15)の配列を有する。
【0087】
幾つかの特定の他の態様において、組換え核酸は更に組換え核酸を含んでいない他の細胞に対して組換え核酸を含む細胞の選択のための選択マーカーを含む。選択マーカーの例としては、前述の段落に引用された文献に説明されており、抗生物質耐性(例えば、ハイグロマイシン、ブレオマイシン,クロラムフェニコール,フレオマイシン,カナマイシン,ストレプトマイシン,アンピシリン,テトラサイクリン,チオストレプトン等に対する耐性)を付与する選択マーカーを含むがこれらに限定されない。
【0088】
幾つかの特定の態様において、コード配列は用いられる宿主細胞中で融合タンパク質の発現のためにコドン最適化される。多くの細胞中での各コドンの使用を列挙しているコドン使用表が知られており(例えば、Nakamuraら、Nucl.Acids.Res.,28:292[2000])、容易に利用可能である。そのような核酸は発現されるべきタンパク質のアミノ酸配列を与えるように設計することができる。
【0089】
本発明の組換えポリヌクレオチドは宿主細胞のゲノム(例えば、核染色体)中に存在する(例えば、取り込まれる)か、宿主細胞内で自動的に複製するベクター(例えば、ファージ、プラスミド、ウイルス、又はレトロウイルスベクター)内に存在する。幾つかの特定の他の態様において、このベクターは宿主細胞内でタンパク質を発現している発現ベクターである。Basillus宿主細胞内で組換えタンパク質の発現のためのベクター及びシステムは本分野で良く知られている。
【0090】
Bacillusに適した複製及び組み込みプラスミドは本分野で知られている。例えば、Harwood及びCutting(eds),Molecular Biological Methods for Bacillus,John Wiley & Sons, [1990],特にチャプター3;B.subtilisについての好適な複製プラスミドは92頁に列挙されている。
【0091】
宿主細胞
本発明は、少なくとも1つのカラギナーゼをコードしている組換えポリヌクレオチドを含む宿主細胞も提供する。前述のように、幾つかの態様において、本発明の組換えポリヌクレオチドは好適なプロモーター、シグナル配列、カラギナーゼをコードしているポリヌクレオチド、及びターミネーター配列を含む発現カセット内に含まれる。幾つかの態様において、カラギナーゼ酵素をコードしているポリヌクレオチド配列はA.carrageenovoraのカラギナーゼの野生型配列(例えば、配列番号7)である。本発明はZ.galactanivorans,B.circulans,S.pupuratus、及びC.drobachiensis由来のカラギナーゼをコードしている野生型カラギナーゼ配列を含むがこれらに限定されない、野生型カラギナーゼ配列を含む発現カセットも提供する。幾つかの態様において、本発明はκ−カラギナーゼ(例えば、配列番号1又は配列番号3)をコードするコドン最適化配列を含む発現カセットを提供する。幾つかの態様において、このコドン最適化配列はカラギナーゼの成熟形態をコードするポリヌクレオチド及びN末端プロ領域を含む。幾つかの態様において、カラギナーゼの成熟形態及びN末端プロ領域をコードしているこのコドン最適化配列は配列番号1に対して少なくとも約70%の同一である。幾つかの他の態様において、カラギナーゼの成熟形態及びN末端プロ領域をコードしているこのコドン最適化配列は配列番号1に対して少なくとも約75%同一、又は少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%同一である。幾つかの他の態様において、コドン最適化配列はカラギナーゼの成熟形態をコードしているポリヌクレオチドを含む。幾つかの追加的な態様において、カラギナーゼの成熟形態をコードするこのコドン最適化配列は配列番号3に対して少なくとも約70%同一である。更なる態様において、カラギナーゼの成熟形態をコードしているコドン最適化配列は配列番号3に対して少なくとも約75%同一であり、又は少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%同一である。
【0092】
幾つかの他の態様において、本発明は本発明の組換えポリヌクレオチドを発現することができるグラム陽性宿主細胞を提供する。幾つかの態様において、このグラム陽性宿主細胞は、単独又は、apr、npr、epr、mpr、bpf、又はisp等のプロテアーゼ、又は当分野で知られている他のプロテアーゼにおける変異と組み合わせて、プロテアーゼのタンパク質分解活性を失うこととなる、プロテアーゼをコードしている遺伝子の一部分又は全体の変異及び/又は欠失を含む。本発明の幾つかの態様において、このグラム陽性微生物はBasillus属のメンバーである。バチルススブチリス(B.subtilis)、バチルスリケニフォルミス(B.licheniformis)、バチルスレンタス(B.lentus)、バチルスブレビス(B.brevis)、バチルスステアロセレモフィリス(B.stearothermophilus)、バチルスアルカロフィリス(B.alkalophilus)、バチルスアミロリケファシエンス(B.amyloliquefaciens)、バチルスクラウシ(B.clausii)、バチルスハロデュランス(B.halodurans)、バチルスメガテリウム(B.megaterium)、バチルスコアギュランス(B.coagulans)、バチルスサーキュランス(B.circulans)、バチルスレンタス(B.lautus)、及びバチルスツリンギエンシス(B.thuringiensis)を含むがこれらに限定されないBasillus属のメンバーを本発明に用いることができる。幾つかの態様において、BasillusはB.subtilisである。幾つかの態様において、宿主細胞はGRAS(即ち、FDAにより「通常安全であると認識されている」)ステータスを有するタンパク質の生成に用いた経歴を有する。
【0093】
前述のように、幾つかの特定の態様において、Bacillus宿主細胞は2つ以上の不活性プロテアーゼ遺伝子を含む。幾つかの態様において、Bacillus宿主細胞は2つの不活性プロテアーゼ遺伝子を含む(例えば、米国特許No.5,387,521参照)。他の態様において、このBacillus宿主細胞は5つの不活性プロテアーゼ遺伝子:nprE、aprE、epr、ispA、及びbbr遺伝子(例えば、US20050202535)を含む。B.subtilisゲノム全体は公知であり注釈をつけられているので(例えば、Moszer,FEBS Lett.,430:28−36[1998]参照)、B.subtilisの前駆体は詳細に同定されている(例えば、Heら、Res.Microbiol.,142:797−803[1991]参照)。更に、Bacillus細胞の遺伝子阻害方法は当分野においてよく知られている(例えば、Leeら,Appl.Environ.Microbiol.,66:476−480[2000];Yeら,Proe.Intematl.Symp.Rec.Adv.Bioindustry,Seoul,Korea:The Korean Society for Applied Microbiology,pp.160−169[1996];Wuら,J.Bacterid.,173:4952−958[1991];及びSlomaら,J.Bacterid.,173:6889−6895[1991])。従って、そのような株の構築は当業者の技能の範囲内である。
【0094】
幾つかの他の態様において、本発明の宿主細胞により発現されるカラギナーゼタンパク質は以下の配列番号2(SEQ ID NO:2)のκ−カラギナーゼに対して少なくとも約70%同一である。
【0095】
幾つかの他の態様において、本発明の宿主細胞により発現されるカラギナーゼタンパク質は配列番号2に対して少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%同一である。
【0096】
幾つかの他の態様において、本発明の宿主細胞により発現及び生成されるカラギナーゼタンパク質は以下の配列番号4(SEQ ID NO:4)のκ―カラギナーゼに少なくとも70%同一であるκ−カラギナーゼアミノ酸配列を含む。
【0097】
他の態様において、本発明の宿主細胞により発現及び生成されるカラギナーゼタンパク質は配列番号4に対して、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%同一である。
【0098】
本発明は構造的及び/又は機能的に類似していることにより関連しているカラギナーゼタンパク質を含む。幾つかの態様において、これらのタンパク質は異なる有機体のクラスを含む(例えば、バクテリアタンパク質と糸状菌タンパク質)、異なる遺伝子及び/又は種由来である。追加的な態様において、関連タンパク質は同じ種から提供される。即ち、本発明を特定の源由来の関連タンパク質に限定することは意図しない。更に、「関連タンパク質」の語は3次構造及び1次構造の相同体を含む(例えば、本発明のカラギナーゼ)。例えば、本発明はZ.galactanivorans、B.circulans、S.pupuratus、及びC.drobachiensisのカラギナーゼの酵素を含むがこれらに限定されない同相体を含む。即ち、前述のように、本発明は変異タンパク質(例えば、関連及び誘導タンパク質)、特にIUMBM酵素命名法に従いEC3.2.1.83に分類される活性を有するカラギナーゼ酵素を含む。更に、本発明は細胞培養を提供する。幾つかの態様において、細胞培養は前述の特定のBacillus宿主細胞及び培養培地を含む。
【0099】
タンパク質生産方法
本発明は前述の細胞を用いた方法も提供する。幾つかの態様において、この方法は本発明の宿主細胞を培養してカラギナーゼタンパク質を生成する工程を含む。幾つかの追加的な他の態様及び前述のように、このタンパク質は培養培地に分泌される。更なる態様において、この方法は培養培地からタンパク質を回収する工程を含む。幾つかの態様は配列番号4で定義されるκ−カラギナーゼタンパク質の成熟形態の生成(即ち、分泌)を提供する。配列番号4のカラギナーゼの変異体及び関連するカラギナーゼタンパク質は本発明に包含される。
【0100】
幾つかの他の態様において、カラギナーゼタンパク質を本分野における従来の方法(例えば、沈殿、遠心分離、親和、ろ過)又は他の好適な方法を用いて育成培地から回収する。例えば、親和性クロマトグラフィー(Tilbeurghら,FEBS Lett.,16:215[1984]);高溶解性粉末を含む物質(Medveら.,J.Chromatography A 808:153[1998])を用いたイオン交換を含む、イオン交換クロマトグラフィー法(Goyalら,Biores.Technol.,36:37[1991];Fliessら.,Eur.J.Appl.Microbiol.Biotechnol.17:314[1983];Bhikhabhaiら,J.Appl.Biochem.,6:336[1984];及びEllouzら,Chromatography 396:307[1987]);疎水相互作用クロマトグラフィー(Tomaz及びQueiroz,J.Chromatography A 865:123[1999]);二相分離(Brumbauerら,Bioseparation 7:287[1999]);エタノール沈殿;逆相HPLC;DEAE等のシリカ又はカチオン交換樹脂上のクロマトグラフィー;フロマトフォーカシング;SDS−PAGE;硫化アンモニウム沈殿;及びゲルろ過が、本発明に用いることができる。幾つかの態様において、界面活性剤添加タンパク質を培養培地中の他の成分から精製することなしに用いる。幾つかの態様において、培養培地の成分は単純濃縮され、洗浄及び/又は他の組成物を製造するために、育成培地の他の成分からカラギナーゼタンパク質を精製しないで用いる。
【0101】
幾つかの他の態様において、宿主細胞はバッチ、フェドバッチ、又は連続発酵条件下で培養される。従来のバッチ法は閉鎖システムを用いており、培養培地は発酵を行う前に調製され、培地を所望の微生物で接種し、及び発酵は培地の任意の成分の添加なしで行われる。特定のケースにおいて、炭素源ではなく、pH及び酸素濃度が発酵の間に変化する。バッチシステムの代謝物及び細胞バイオマスは発酵が終了するまで変化し続ける。バッチシステムにおいて、細胞は静的lag相から高育成log相に変化し、最終的に成長速度が減少又は停止する固定相になる。もし、処理しなければ、固定相の細胞は徐々に死んでゆく。一般的に、log相の細胞が大部分のタンパク質を生成する。
【0102】
標準的なバッチシステムの変法は「フェドバッチ発酵」システムである。このシステムにおいて、栄養(例えば、カーボン源、窒素源、O2、又は他の栄養素)はこれらの濃度が培地中でスレッシュホールド以下になる場合に添加される。フェドバッチシステムは代謝抑制が細胞の代謝を抑制しそうなとき及び培地において栄養素の量を限定するのが好ましい場合に有用である。フェドバッチシステムの実際の栄養素の能動の測定はpH、溶存酸素、及びCO2等の消費ガスの特定の圧力等の測定因子の変化を根拠に評価される。バッチ及びフェドバッチ発酵は本分野で知られている。
【0103】
連続発酵は特定の培養培地がバイオリアクターに連続的に供給され、等しい量の処理された培地が同時に除去される、開放系のシステムである。連続発酵は通常、細胞が主にloh相成長する、一定の高密度で培地を維持する。
【0104】
連続発酵は細胞育成及び/又は最終生成物濃度に影響する1つの又は任意の数の因子を変更することができる。例えば、幾つかの態様において、炭素源又は窒素源等の限定栄養素を固定の速度に維持し、他の全てのパラメーターを最適化する。他のシステムにおいて、育成に影響する因子の数を連続的に変更し、培地の濁りにより測定される、細胞濃度を一定にする。連続システムは育成条件を一定に維持するのが困難である。従って、排出される培地に依存する細胞が発酵において細胞育成速度に対して調節される。生成物形成速度の最大化についての技術並びに、連続発酵プロセスのための栄養素及び育成因子の最適化の方法は本分野において知られており、本発明のカラギナーゼの生成に用いることができる。
【0105】
使用方法
前述の方法を用いて生成されたカラギナーゼタンパク質は洗浄組成物(例えば、洗濯用洗剤等の布製品洗浄組成物、表面洗浄組成物、食器洗浄組成物及び食器洗浄器用洗剤;例えば、WO0001862、参照により本明細書に援用する)を含むがこれらに限定されない、カラギナーゼを含む任意の製品に用いることができる。幾つかの態様において、この洗浄組成物は硼砂を含まない組成物である。
【0106】
幾つかの特定の他の態様において、このカラギナーゼタンパク質は約1%乃至約80%、例えば、約5%乃至約50%(重量により)の界面活性剤を含むカラギナーゼ含有洗濯用洗剤に用いられる。この界面活性剤は非イオン性、カチオン、アニオン、又は両性界面活性剤、又はこれらの混合物のいずれでもよい(例えば、アニオン性界面活性剤とカチオン性界面活性剤の混合物)。例示的な界面活性剤は直鎖アルキルベンゼンスルホネート、及び直鎖アルキルソディウスルホネート、及びアルキルソディウムスルホネート、アルキルヘノキシポリエトキシエタノール(例えば、ノニルヘノキシエトキシレート及びのニルフェノール)、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、及びモノエタノールアミンを含む、ムアルキルベンゼンスルホネート(ABS)を含む。洗濯用洗剤に用いる界面活性剤の例は本分野で知られている(例えば、米国特許No.3,664,961及び4,222,905、及び4,239,659を参照)。
【0107】
洗濯用洗剤は固体、液体、ゲル、又は棒状でよく、カルボン酸ナトリウム、2カルボン酸ナトリウム等の緩衝剤、又は界面活性剤ビルダー、漂白剤、漂白活性剤、各種酵素、酵素安定剤、消泡剤、泡立ち剤、抑制剤、抗変色剤、抗コロイド剤、汚れ懸濁剤、汚れ放出剤、殺菌剤、pH調節剤、ビルダーではないアルカリ源、キレート剤、有機又は無機充填剤、溶媒、ヒドロトープ、増輝剤、染料、又は香料を含む。幾つかの態様において、洗濯用洗剤は本発明のカラギナーゼに加えて、少なくとも1つの更なる酵素(例えば、ヘミセルラーゼ、ペルオキシダーゼ、プロテアーゼ、セルラーゼ、キシラナーゼ、リパーゼ、フォスフォリラーゼ、エステラーゼ、クチナーゼ、ペクチナーゼ、ケラチナーゼ、リダクターゼ、オキシダーゼ、フェノロキシダーゼ、リポキシゲナーゼ、リグニナーゼ、プルラナーゼ、タンナーゼ、ペントサナーゼ、マンナーゼ、βガラクトシダーゼ、アラビノシダーゼ、ヒアルロニダーゼ、コンドロイチナーゼ、ラッカーゼ、及びアミラーゼ、又はこれらの混合物)を含む。
【0108】
本発明のカラギナーゼタンパク質は汚れの除去を必要とする各種表面を洗浄するための組成物に用いることができる。そのような洗浄組成物は各種形態(例えば、液体、ゲル、棒状、及び顆粒)の硬表面洗浄のための組成物;各種形態の(例えば、顆粒、液体、ゲル、及び棒状)布製品洗浄組成物;食器用洗剤(形態は限定されない);各種形態(例えば、歯磨き粉、歯磨きペースト、ゲル、及びマウスウォッシュ製剤)の口腔洗浄用組成物;各種形態の(例えば、液体、ゲル、又はタブレット)入れ歯洗浄組成物;及び各種形態の(例えば、液体、タブレット)のコンタクトレンズ洗浄組成物を含む。
【0109】
幾つかの他の態様において、本発明の戦場組成物は洗浄性能及び/又は布製品のケアに有利な1つ以上の洗剤酵素を含む。好適な酵素の例としては、ヘミセルラーゼ、ペルオキシダーゼ、プロテアーゼ、セルラーゼ、キシラナーゼ、リパーゼ、フォスフォリラーゼ、エステラーゼ、クチナーゼ、ペクチナーゼ、ケラチナーゼ、リダクターゼ、オキシダーゼ、フェノロキシダーゼ、リポキシゲナーゼ、リグニナーゼ、プルラナーゼ、タンナーゼ、ペントサナーゼ、マンナーゼ、βガラクトシダーゼ、アラビノシダーゼ、ヒアルロニダーゼ、コンドロイチナーゼ、ラッカーゼ、及びアミラーゼ、又はこれらの混合物を含む。幾つかの態様において、プロテアーゼ、リパーゼ、クチナーゼ、及び/又はセルラーゼのような従来の好適な酵素をカラギナーゼ組み合わせて(即ち、カクテル)用いることもできる。
【0110】
幾つかのタンパク質洗浄組成物は本明細書におけるタンパク質に加えて、カラギナーゼタンパク質と相性のよい1つ以上の洗浄物質も含む。本明細書において「洗浄組成物物質」の語は、本発明の組成物に用いられるカラギナーゼと相性のよい、意図する洗浄組成物の特定のタイプ及び製品のタイプ(例えば、液体、顆粒、棒状、スプレー、スティック。ペースト、ゲル)に対して選択された、任意の液体、固形、又は気体物質を意味する。洗浄組成物物質の特定の選択は洗浄される表面、使用の間の戦場条件に対する組成物の望ましい形態(例えば、洗剤を使用する間)を考慮することにより容易に決定することができる。本明細書において、「非布製品洗浄組成物」の語は硬表面洗浄組成物、食器洗浄組成物、口腔洗浄組成物、入れ歯洗浄組成物、及びコンタクトレンズ洗浄組成物を含む。
【0111】
カラギナーゼタンパク質は充分に製剤化された硬表面クリーナー、食器用洗浄組成物、洗剤等を提供するために各種の従来成分と共に使用される。そのような組成物は、液体、顆粒、棒状等の形状で用いられる。幾つかの態様において、そのような組成物は、約30%乃至約60%の界面活性剤を含む近年の「濃縮」洗剤として製剤化される。
【0112】
幾つかの他の態様において、本発明の洗浄組成物はアニオン、非イオン性、両イオン性等の各種界面活性剤を含む。そのような界面活性剤は通常、組成物の約5%乃至約03%のレベルで含まれる。
【0113】
洗剤組成物中に有用な幅広い各種成分も本発明の組成物に用いることができる。そのようなものは、他の活性剤、担体、ヒドロトロープ、加工助剤、染料又は顔料、液体製剤の溶媒等を含む。追加的にあわ立ちが必要であるならば、C10乃至C16アルキルアミド等のあわ立ち剤も、通常約1%乃至約10%のレベルで、組成物に用いることができる。
【0114】
幾つかの他の態様において、洗浄組成物は担体として水又は他の溶媒を含む。例えば、幾つかの態様において、低分子1級又は2級アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、及び/又はイソプロパノール)が好ましい。1水和アルコールは界面活性剤を溶解するために用いるが、約2乃至約6炭素原子及び約2乃至約6の水酸基を含むようなポリオール(例えば、1,3−プロパノール、エチレングリコール、グリセリン、及び1,2−プロパンジオール)も用いることができる。そのような態様において、組成物は通常、約5%乃至約90%、又は通常、約10%乃至約50%のそのような担体を含む。
【0115】
幾つかの他の態様において、本発明の洗浄組成物は水溶性の洗浄操作の間に、洗浄水のpHが約6.8乃至約11.0の間にあるときに、用いるように製剤化される。最終製品は従って、通常この範囲で製剤化される。推奨される使用レベルにpHを制御する技術は、緩衝液、アルカリ、酸等を含み、当業者に良く知られている。
【0116】
ペルカルボネート、ペルボレート等の各種漂白化合物も、通常約1%乃至約15%のレベルで、そのような組成物に用いることができる。幾つかの態様において、そのような組成物はテトラアセチルエチレンジアミン、ノナノイルオキシベンゼンスルホネート等の当業者に知られている漂白活性剤も含む。有用なレベルは、重量により、約1%乃至約10%である。
【0117】
各種汚れ放出剤、特にアニオンオリゴエステルタイプ、各種キレート剤、特にアミノフォスフォネート及びエチレンジアミンジスクシネート、各種クレイ汚れ放出剤、特にエトキシレートテトラエチレンペンタミン、各種分散剤、特にポリアクリレート及びポリアスパラテート、各種増白剤、特にアニオン増白剤、各種泡抑制剤、特にシリコン及び2級アルコール、各種の布柔軟剤、特にスメチッククレイ等の全てを、重量により約1%乃至約35%の範囲のレベルで、本発明の組成物の各種態様に用いることができる。標準的な製剤及び公開された特許はそのような従来の物質に詳細な説明を開示している。
【0118】
酵素安定剤も本発明の洗浄組成物に用いることができる。そのような安定剤は、プロピレングリコール(約1%乃至約10%)、ギ酸ナトリウム(約0.1%乃至約1%)、及び蟻酸カルシウム(約0.1%乃至約1%を含むがこれらに限定されない。
【0119】
本発明の洗浄組成物は任意の好適な形態に製剤化することができ、製造者により選択される任意の好適なプロセスで調製することができる(例えば、米国特許No.5,879,584、米国特許No.5,691,297、米国特許No.5,574,005、米国特許No.5,569,645、米国特許No.5,565,422、米国特許No.5,516,448、米国特許No.5,489,392、米国特許No.5,486,303、米国特許No.4,515,705、米国特許No.4,537,706、米国特許No.4,515,707、米国特許No.4,550,862、米国特許No.4,561,998、米国特許No.4,597,898、米国特許No.4,968,451、米国特許No.5,565,145、米国特許No.5,929,022、米国特許No.6,294,514、及び米国特許No.6,376,445;参照によりこれらを本明細書に援用する)。本発明の硬表面洗浄組成物及び布製品洗浄組成物を製剤化する場合、製剤は重量により約5%乃至約50%のレベルの各種ビルターを用いることが好ましい。典型的なビルダーは1乃至10ミクロンのゼオライト、及びクエン酸及びオキシジスクシニネート、層状シリケート、フォスフェート等のカルボキシレートを含む。他の従来のビルダーは標準的な製剤に列挙されている。
【0120】
他の任意の成分はキレート剤、汚れ除去/抗再付着剤、ポリマー分散剤、漂白剤、増白剤、泡抑制剤、溶媒及び静電気防止剤を含む。
【0121】
幾つかの他の態様において、本発明の洗浄組成物は表面及び/又は布製品の洗浄に用いることができる。幾つかの態様において、表面及び/又は布製品の少なくとも1部分が本発明の洗浄組成物の少なくとも1つの態様と、そのまま又は水で希釈した状態で接触させられて、表面及び/又は布製品が洗浄され、すすがれる。本発明の目的のために、「洗浄」の語は、スクラブ、及び機械的撹拌を含むがこれらに限定されない。幾つかの態様において、布製品は通常の消費者が使用する条件で洗浄することができる任意の布製品を含む。幾つかの態様において、本発明の洗浄組成物は溶液中、約500ppm乃至約1,500ppmの濃度で使用される。洗浄溶媒が水である幾つかの態様において、水温は通常約5℃乃至約70℃である。布製品の洗浄の幾つかの他の態様において、水対布製品の嵩の比は約1:1乃至約30:1である。
【0122】
本発明を更に説明するために、以下の特定の実施例を提供する。これらは本発明を例示する目的で用いるものであり、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0123】
以下の実施例は本発明の特定の態様及び側面を更に説明するために提供するものであり、本発明をこれらに限定するものではない。
【0124】
開示される実施例において、以下の略語を使用する:℃(摂氏);rpm(1分間当たりの回転数);H2O(水);HCl(塩酸);aa(アミノ酸);bp(ベースペア);kb(キロベースペア);kD(キロダルトン);gm(グラム);μg及びug(マイクログラム);mg(ミリグラム);ng(ナノグラム);μl及びul(マイクロリットル);ml(ミリリットル);mm(ミリメートル);nm(ナノメートル);μm及びum(マイクロメーター);M(モル);mM(ミリモル);μM及びuM(マイクロモル);U(単位);V(ボルト);MW(分子量);sec(秒);min(s)(分);hr(s)(時間);MgCl2(塩化マグネシウム);NaCl(塩化ナトリウム);OD40S(405nmでの光学密度(吸光度));PAGE(ポリアクリルアミド電気泳動);Tris(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン);MES(2−モルホリノエタンスルホン1水和物);ppm(百万分率);gpg(水1ガロン当たりのグレイン数);HDD(重質洗剤);HDL(重質液体(洗剤));ADW(食器洗浄器);SRI(汚れ除去指数);AATCC(American Association of Textile and Coloring Chemists(米国繊維染色協会));TOT(Terg−o−Tometer);DNA2.0(DNA2.0,メンロパーク,カリフルニア);Sigma(シグマアルドリッチ社,セントルイス,ミズリー);Test Fabrics(Test Fabrics,Inc.(テストファブリック社)エウストピッツトン,ペンシルバニア);Corning(Corning Inc.(コーニング社),コーニング,ニューヨーク);Pechiney(Pechiney Plastic Packing(ペシネイプラスチックパッキング),メナーシャ,ウィンスコンシン);Eppendorf (Eppendorf Scientific(エッペンドルフサイエンティフィック),エウストベリー,ニューヨーク);VWR(VWRインターナショナル,ウェストチェスター,ペンシルバニア);MOLECULAR Devices(MOLECULAR Devices Corp.(モレキュラーデバイス社),サニーベル,カリフルニア);Warwick(Warwick Equest Limited(ワーウィックイクエスト社),ダラム,英国);Minolta(Konica Minolta Holdings Inc.,(コニカミノルタホールディングス社),東京,日本);U.S.Testing(U.S.Testing Co. Inc.(U.S.テスティング社)ホーボーケン,ニュージャージー);及びRockland(Rockland Immunochemicals(ロックランドイムノケミカルズ),ギルバートスビル,ペンシルバニア)。
【0125】
これらの実施例において、分光光度計は反応の後に得られた生成物の吸光度を測定するために用いた。反射率計は汚れ見本の反射率を測定するために用いた。特に定義しない限り、タンパク質濃度はBSAを標準物質として用いるCoomassie Plus(クーマシープラス)(ピアス)により評価した。
【0126】
実施例1
B.subtilisにおけるk−カラギナーゼcgkA遺伝子の発現及び分泌
アルテロモナスカラゲーノボラ(Alteromonas carrageenovora)(Potinら,Eur.J. Biochem.,228:971−975[1995])由来のカッパカラギナーゼ遺伝子(cgkA遺伝子)を最適なB.subtilisコドン(DAN2.0)を用いて合成し、pJ31−7585においてクローンした。
aprEプロモーターのDNA配列
この後に、aprEシグナル配列(配列番号11)、及び
LATターミネーター、CGGATTTCCTGAAGGAAATCCGTTTTTTTA(配列番号12)の間に、1.1kbまでのBssHII−HindIIIフラグメントとして、このコドン最適化遺伝子配列(配列番号1)をB.subtilis組み込みベクターp2JMへ結合した(図2)。得られたベクター、p2JM−cgkA(図3参照)をB.subtilis宿主細胞、BG3594ck(米国特許No.5,387,521)、BG3934comk(US20050202535)、及びBG6006(US20050202535)の形質転換に用いた。これらは、それぞれ、2つ(nprE及びaprE)、5つ(nprE、aprE、erp、ispA、及びbpr)、及び9つ(nprE、aprE、epr、ispA、bpr、vpr、wprA、mpr−ybjF、及びnprB)の欠失を含む。各株からの形質転換から得られたクローンを採取し25mg/mlクロラムフェニコールで増幅した。
【0127】
このクローンを別々に、25mg/mlのクロラムフェニコールを含む30mlGrantII培地が入っている250mlの振とうフラスコ内で、73℃及び250rpmで、最長60時間育成した。各培地からの上清を遠心分離で採取し、ポリアクリルアミド電気泳動法で解析し、κ−カラギナーゼ活性について解析した。
【0128】
3つの培地からそれぞれ生成されたカラギナーゼサンプルの20μlを還元条件下のMES緩衝液中の10%NuPAGEを用いて解析した。分子量48.9kDaの関係のないタンパク質、BCE−cAbBCII10をポジティブコントロールとして用いた。
【0129】
NuPAGEゲルはBG3934cKのクローンA及びBが、BG3594ck培地のクローンにより生成されたレベルと比較して非常に高いレベルのκ−カラギナーゼ(予想される分子量31.7kDa)を生成することを示した。BG6006培地はこの検出方法を用いて検出可能なκ―カラギナーゼを生産しなかった。BG6006培地からの上清は以下の実施例で説明するように、BG3934ckにより生産されたκ−カラギナーゼの酵素活性を検出する実験において、ネガティブコントロールとして用いた。
【0130】
実施例2
κ―カラギナーゼの酵素活性及び基質特異性
カラギナンに対する酵素の加水分解活性をPAHBAH(パラ−ヒドロキシベンゾニックアシッドハイドライド)試薬(Lever,Anal.Biochem.,47:273[1972]参照)を用いて還元糖アッセイにより評価した。カラギナン(タイプI、カッパ−、CAS9000−07−1、タイプII、イオタ−、CAS9062−07−1、及びタイプIII、カッパ−CAS11114−20−8)をシグマより入手し、pH7.4の50mMのHepes緩衝液に0.25%になるように溶解した。幾つかの試験において、AATCC標準の重質液体洗剤(AATCC HDL 2003、漂白剤を含まない、(テストファブリック)を1リットル当たり1.5ml添加した(0.15%)。このAATCC HDL液体洗剤は水中に、12%の直鎖アルキルスルホネート、8%のアルコールエトキイシレート、8%のプロパンジオール、1.2%のクエン酸、4%の脂肪酸、及び4%の水酸化ナトリウムを水含む。カッパ−カラギナーゼ活性はHDD(1g/l、pH9.5−10)及びADW(1g/l、pH10.0−10.5)におけるカッパカラギナン、タイプI汚れを除去する能力についても試験を行った。カッパ−カラギナーゼを生成している各培地からの上清を遠心分離により採取し、サンプルの一部分の活性を、AATCC HDLで解析した。HDD及びADWにおける活性の試験について、上清を最初に、12倍に濃縮した。
【0131】
アッセイは以下のように24ウェルのマイクロタイタープレートで行った。1mlの緩衝液(I)をウェル1(緩衝液9に添加する。1mlの緩衝液と酵素の混合物をウェル2に添加する(サンプル)。1mlの緩衝液と基質をウェル3(III)に添加する(基質)。及び1mlの緩衝液、基質、及び酵素(V)(酵素+基質)をウェル4に添加する。「SAm+Sub」(IV)と標識されたバーは計算された対照の値を示す。統計処理のために、各ウェルを2乃至4つ作った。試験される酵素は通常1乃至10倍から1乃至1000倍に反応緩衝液で希釈した。全ての試薬を添加した後に、プラスチックカバーをマイクロタイタープレートの上におき、このカバーとプレートの交差部分を、蒸発を防ぐためにパラフィルム(Pechiney)で何層にも覆った。反応プレートを100rpmの回転シェーカーで、37℃で、1乃至16時間、インキュベートした。
【0132】
還元糖アッセイは、エッペンドルフ、マスターサイクル、グラジエントサーマルサイクル及び0.2mlのディスポーザブルPCR(ポリメーラーゼ連鎖反応)ストリップチューブ、及びキャップ(VWR)を用いて測定した。還元糖試薬は以下のように調製した。蒸留水中10mlの2%水酸化ナトリウムに、0.15gの酒石酸カリウムナトリウム4水和物(Rochelle Salt;シグマ)及び0.15gのパラヒドロキシベンゾニックアシッドハイドライド(H−9882;シグマ)を添加した。「PHBAH試薬」と呼ばれるこの溶液をかき混ぜて全ての試薬を溶解し、使用までに冷暗所に置いた。この試薬は毎日作り変えた。サンプル解析の直前に、0.16mlのPAHBAH試薬をPCRストリップの各管に添加し、次いで、5乃至20μlの酵素サンプル及び対照を添加した。全ての管のキャップをきつく閉め、熱サイクラー中に置き、99℃で15分間インキュベートし、次いで、4℃で15分間冷却した。冷却の後、ストリップチューブのキャップをあけ、0.15mlの各サンプルを平底96マイクロタイタープレート(COSTAR9017;コーニング)におき、スペクトラマックス250プレートリーダー(モレキュラーデバイス)で、水のブランクに対する405nmの吸光度を測定した。
【0133】
各酵素サンプルを以下のように解析した。対照サンプルの光学密度(OD)は緩衝液サンプルのODを差し引き、この値を基質緩衝液対照を加えた。酵素+基質反応のODは基質及びサンプル対照の合計と比較された。
【0134】
カッパカラギナーゼの加水分解活性を示す結果を図4A乃至Eに示す。このデータはカッパカラギナーゼが、AATCC HDL液体洗剤中に用いた場合、タイプIカッパカラギナン(図4A)及びタイプIIIカッパカラギナン(図4C)の汚れを効果的に除去することを示している。
【0135】
図4D及び図4Eにおける試験はカッパカラギナーゼがHDD(重質洗剤)及びADW(食器用洗剤)に用いたときにカッパカラギナンタイプIの汚れを除去することを示す。
【0136】
実施例3
ミクロスウォッチスクリーンアッセイを用いたCgkaの洗浄活性
CgkAの活性は、この実施例で説明する方法を用いて、サラダドレッシング及びバーベキューソースの汚れ見本を洗浄する能力について試験した。
【0137】
色素を含むサラダドレッシング(STC CFT CS−6)でシミをつけた綿布見本(テストファブリック)及びバーベキューソースでシミをつけた綿布見本(Warwick)をこれらの試験に用いた。
【0138】
マイクロプレートアッセイのための見本を5/8”ダイカッターを有するパンチプレスモデルBで15mmのサークル(ディスク)にカットした。同じ見本ディスクを24ウェルマイクロタイタープレートの各ウェルに置いた(Costar3526)。サラダドレッシングのシミについて、1リットル当たり、1.5mlのAATCC HDL、50mM Heps緩衝液、及び1乃至50ppmの、pH7.4の50mM、Hepes緩衝液で希釈した酵素を含む1mlの洗浄溶液を各ウェルに添加した。バーベキューソースのシミについて、1リットル当たり、1.5mlのAATC HDL洗剤、10mM Hepes、pH8.2、50mMの塩化ナトリウム及び25mMの塩化カルシウムを含む洗浄溶液 1mlを各ウェルに添加した。対照は酵素を含まない。バーベキューソースに対する対照は、AATCC対照、及びボバインシーラムアルブミン(BSA)対照である。マイクロプレートはプラスチックの蓋をしてアルミニウム泊で多い、37℃、100rpmで、3乃至16時間インキュベートした。このプレートをシェーカーから除去し、洗浄溶液を吸引により除去した。各マイクロプレートを1.5mlのダルベッコPBS、pH7.3で3回洗浄し、1.5mlの蒸留水で3回洗浄した。各ディスクをウェルから除去し、ペーパータオルの間に挟み、直接光にあたらないようにして一晩乾燥させた。ディスクを視覚で評価し、ホワイトタイルでキャリブレーションした、ミノルタリフレクトメーターCR−200で解析した。対照に対して、通常4回繰返しを行ったデータの標準偏差パーセントを有する平均L値及び試験サンプルを計算した。バーベキューソースに対するcgkAの活性を測定する実験のために、以下の式を用いて「L」値から、汚れ放出指数のパーセンテージ(%SRI)を計算した:
%SRI=L(最終)−L(オリジナル)/L(ホワイトタイル)−L(オリジナル)×100%。
【0139】
マイクロスウォッチスクリーンアッセイの結果を図5A及び5Bに示す。図5A及び5Bにそれぞれ示したように、CgkAはサラダドレッシング及びバーベキューソースの汚れに優れた洗浄能力を示した。
【0140】
実施例4
ターゴトメーターを用いたCgkAの洗浄活性
ターゴトメーター試験は30℃に維持された6ポットのターゴトメーターモデル7243S(U.S.Testing)を用いた。撹拌スピードは100rpmにセットした。食品(Warwick)の丸いシミをつけたコットン見本(各ターゴトメーターポットにつき5つ)を、6gpg硬度(1.735M塩化カルシウム及び0.67M塩化マグネシウム15000gpg硬度のストック溶液を希釈)及び25mM Hepes緩衝液、pH7.4を含む0.15%のAATCC HDL洗剤1リットルに、入れた。30分の洗浄時間の後、この見本を1.5Lの水道水で3回洗浄し、スピンサイクルで、7分間回転かせて、余分な水を除去し、一晩室温で乾燥させた。各汚れをリフレクトメーターで解析した後に、汚れ除去パーゼンテージ(%SRI)を標準的な方法で計算した(マイクロスウォッチ法参照)。酵素を含まない対照サンプル(I)に対するカッパ−カラギナーゼの15ppm(III)での活性を対照タンパク質、ボバインシーラムアルブミン(II)に対するものと比較した(BSA−50、FractionV、イムノグロブリン、及びプロテアーゼフリー;Rockland)。
【0141】
図6は、ターゴトメーターアッセイにおいて、マーマレードの汚れを除去することにおいて、CgkAが優れた能力を有することを示す。SRI値のパーセンテージは5回繰返し試験について得られた結果から計算した。
【0142】
以上の実施例は、カッパカラギナーゼがサラダドレッシング、バーベキューソース、及びマーマレードのシミを有する綿布見本から効果的に汚れを除去することを示している。
【0143】
本発明の説明された態様をもって、当業者は開示された態様の変更をなすことができることは明らかであり、そのような変更は本発明の範囲内である。
【0144】
当業者は、本発明がその目的を実行するため及び最終生成物及び有利な方法を得るために好適であることを容易に理解するだろう。本明細書で説明されている組成物及び方法は、態様の代表例であり、例示であり、本発明をこれらの限定するものではない。本発明の範囲及び精神を逸脱せずに、開示された発明の各種変更及び修飾を、当業者は容易に行うだろう。本明細書で開示されている発明は、本明細書に開示されていない任意の要素、限定がなくても実施することができる。用いられている用語及び表現は説明のために用いるものであり、限定のために用いるものではない。本明細書に示され、説明された、又はその一部分である技術的特徴の均等物を排除する意図ではない。しかしながら、各種変更は本発明の範囲内ですることが可能である。
【0145】
従って、本発明は特定の態様及び付加的な特徴により特徴付けられるけれども、本明細書に開示されたコンセプトの修飾及び変更は当業者に可能であり、そのような修飾及び変更は添付の特許請求の範囲により定義されている本発明の範囲内であると考えられる。
【0146】
本明細書では発明を幅広く包括的に説明している。開示された種内のより狭い範囲の種及び亜種も本発明の一部分を形成する。このことは、除かれた物質が具体的に開示されているか否かに関わらず、遺伝子からの任意の主題を除去する生又は負の限定を有する本発明の一般的な説明を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カッパカラギナーゼポリペプチドをコードする配列を含む単離された組換えポリペプチドであって、前記配列が分泌シグナルペプチドをコードするポリヌクレオチドに作動可能に結合している、単離組換えポリヌクレオチド。
【請求項2】
シグナル配列をコードしているポリヌクレオチドがグラム陽性微生物由来である、請求項1の単離ポリヌクレオチド。
【請求項3】
分泌シグナルペプチドがAprEシグナルペプチドである、請求項1の単離ポリヌクレオチド。
【請求項4】
カラギナーゼ酵素をコードしている配列がアルテロモナス(Alteromona)種由来野生型カラグナーゼをコードしているポリヌクレオチドから最適化された配列を含む、請求項1の単離ポリヌクレオチド。
【請求項5】
野生型カラギナーゼがアルテロモナスカラゲーノボラ(Alteromonas carrageenovora)由来である、請求項4の単離ポリヌクレオチド。
【請求項6】
最適化されたポリヌクレオチドは配列番号3に少なくとも70%同一である、請求項4の単離ポリヌクレオチド。
【請求項7】
請求項1の単離ポリヌクレオチド配列を含む発現カセットを含む発現ベクター。
【請求項8】
分泌シグナルペプチドがAprEシグナルペプチドである、請求項7の発現ベクター。
【請求項9】
発現カセットが配列番号14及び15から選択されるポリヌクレオチド配列を含む、請求項7の発現ベクター。
【請求項10】
請求項7の発現ベクターで形質転換された宿主細胞。
【請求項11】
a)シグナル配列、及び
b)カラギナーゼタンパク質
を含む融合タンパク質をコードしている組換えポリヌクレオチドを含むバチスル(Basillus)宿主細胞であって、前記宿主細胞がカラギナーゼを分泌し、宿主細胞が少なくとも1つの不活性プロテアーゼ遺伝子を有する、宿主細胞。
【請求項12】
カラギナーゼタンパク質が配列番号4に対して少なくとも約70%同一である、請求項11のバチルス(Basillus)宿主細胞。
【請求項13】
少なくとも1つの不活性プロテアーゼ遺伝子がnprE、aprE、epr、ispA、bpr、vpr、wprA、mpr−ybjF、及びnprBから選択される、請求項11のBacillus宿主細胞。
【請求項14】
少なくとも、1つの不活性プロテアーゼ遺伝子がnprE、aprE、epr、ispA、及びbpr,から選択される請求項11のバチルス(Baciuuls)宿主細胞。
【請求項15】
不活性プロテアーゼ遺伝子がnprE及びaprE遺伝子である、請求項11のBacillus宿主細胞。
【請求項16】
シグナル配列がバチルススブチリス(B.subtilis)のaprE遺伝子によりコードされている。請求項11の宿主細胞。
【請求項17】
バチルス(Bacillus)宿主細胞がバチルススブチリス(B.subtilis)宿主細胞である、請求項11の宿主細胞。
【請求項18】
組換えポリヌクレオチドがプロモーター及びターミネーターに作動可能に結合して、発現カセットを形成する、請求項11の宿主細胞。
【請求項19】
組換えポリヌクレオチドが前記宿主細胞のゲノム中に存在するか、又は前記宿主細胞中の自動的に複製するベクター中に存在する、請求項11の宿主細胞。
【請求項20】
組換えポリヌクレオチドが、バチルス(Bacillus)宿主細胞において、カラギナーゼ融合タンパク質の発現のために最適化されている、請求項11の宿主細胞。
【請求項21】
複数の請求項11のバチルス(Basillus)宿主細胞、及び培養培地を含む、細胞の培養。
【請求項22】
カラギナーゼタンパク質を生産する方法であって、
(a)請求項11の宿主細胞を培養する工程、及び
(b)カラギナーゼタンパク質を生産する工程を含む、方法。
【請求項23】
更に、生成されたカラギナーゼを収穫する工程を含む、請求項22の方法。
【請求項24】
宿主細胞がバチルス(Bacillus)種である、請求項22の方法。
【請求項25】
配列番号4のカッパカラギナーゼに少なくとも約70%同一なアミノ酸配列を含む単離さされたカッパカラギナーゼの有効量を含む洗浄組成物。
【請求項26】
前記洗浄組成物が洗剤である請求項25の洗浄組成物。
【請求項27】
更に少なくとも1つの追加的な酵素又は酵素誘導体を含む、請求項26の洗浄組成物。
【請求項28】
前記少なくとも1つの酵素又は酵素誘導体が、ヘミセルラーゼ、ペルオキシダーゼ、プロテアーゼ、セルラーゼ、キシラナーゼ、リパーゼ、フォスフォリパーゼ、エステラーゼ、クチナーゼ、ペクチナーゼ、ケラチナーゼ、リダクターゼ、オキシダーゼ、オキシドリダクターゼ、ヘノロキシダーゼ、リポキシゲナーゼ、リグニナーゼ、プルラナーゼ、タンナーゼ、ペントサナーゼ、マンナーゼ、β−ガラクトシダーゼ、アラビノシダーゼ、ヒアルロニダーゼ、コンドロイチナーゼ、ラッカーゼ、及びアミラーゼ、又はこれらの混合物から選択される、請求項27の洗浄組成物。
【請求項29】
請求項15の洗浄組成物に、硬表面及び/又は布を含む製品を接触させることを特徴とする、洗浄方法。
【請求項30】
前記表面及び/又は製品に洗浄組成物を接触させた後に、この表面及び/又は製品をすすぐ工程を更に含む、請求項29の方法。
【請求項31】
前記表面及び/又は布を含む製品がカッパカラギナンで汚されている、請求項29の方法。
【請求項32】
前記表面及び/又は布を含む製品がサラダドレッシング、バーキューソース、及び/又はマーマレードで汚されている、請求項29の方法。
【請求項1】
カッパカラギナーゼポリペプチドをコードする配列を含む単離された組換えポリペプチドであって、前記配列が分泌シグナルペプチドをコードするポリヌクレオチドに作動可能に結合している、単離組換えポリヌクレオチド。
【請求項2】
シグナル配列をコードしているポリヌクレオチドがグラム陽性微生物由来である、請求項1の単離ポリヌクレオチド。
【請求項3】
分泌シグナルペプチドがAprEシグナルペプチドである、請求項1の単離ポリヌクレオチド。
【請求項4】
カラギナーゼ酵素をコードしている配列がアルテロモナス(Alteromona)種由来野生型カラグナーゼをコードしているポリヌクレオチドから最適化された配列を含む、請求項1の単離ポリヌクレオチド。
【請求項5】
野生型カラギナーゼがアルテロモナスカラゲーノボラ(Alteromonas carrageenovora)由来である、請求項4の単離ポリヌクレオチド。
【請求項6】
最適化されたポリヌクレオチドは配列番号3に少なくとも70%同一である、請求項4の単離ポリヌクレオチド。
【請求項7】
請求項1の単離ポリヌクレオチド配列を含む発現カセットを含む発現ベクター。
【請求項8】
分泌シグナルペプチドがAprEシグナルペプチドである、請求項7の発現ベクター。
【請求項9】
発現カセットが配列番号14及び15から選択されるポリヌクレオチド配列を含む、請求項7の発現ベクター。
【請求項10】
請求項7の発現ベクターで形質転換された宿主細胞。
【請求項11】
a)シグナル配列、及び
b)カラギナーゼタンパク質
を含む融合タンパク質をコードしている組換えポリヌクレオチドを含むバチスル(Basillus)宿主細胞であって、前記宿主細胞がカラギナーゼを分泌し、宿主細胞が少なくとも1つの不活性プロテアーゼ遺伝子を有する、宿主細胞。
【請求項12】
カラギナーゼタンパク質が配列番号4に対して少なくとも約70%同一である、請求項11のバチルス(Basillus)宿主細胞。
【請求項13】
少なくとも1つの不活性プロテアーゼ遺伝子がnprE、aprE、epr、ispA、bpr、vpr、wprA、mpr−ybjF、及びnprBから選択される、請求項11のBacillus宿主細胞。
【請求項14】
少なくとも、1つの不活性プロテアーゼ遺伝子がnprE、aprE、epr、ispA、及びbpr,から選択される請求項11のバチルス(Baciuuls)宿主細胞。
【請求項15】
不活性プロテアーゼ遺伝子がnprE及びaprE遺伝子である、請求項11のBacillus宿主細胞。
【請求項16】
シグナル配列がバチルススブチリス(B.subtilis)のaprE遺伝子によりコードされている。請求項11の宿主細胞。
【請求項17】
バチルス(Bacillus)宿主細胞がバチルススブチリス(B.subtilis)宿主細胞である、請求項11の宿主細胞。
【請求項18】
組換えポリヌクレオチドがプロモーター及びターミネーターに作動可能に結合して、発現カセットを形成する、請求項11の宿主細胞。
【請求項19】
組換えポリヌクレオチドが前記宿主細胞のゲノム中に存在するか、又は前記宿主細胞中の自動的に複製するベクター中に存在する、請求項11の宿主細胞。
【請求項20】
組換えポリヌクレオチドが、バチルス(Bacillus)宿主細胞において、カラギナーゼ融合タンパク質の発現のために最適化されている、請求項11の宿主細胞。
【請求項21】
複数の請求項11のバチルス(Basillus)宿主細胞、及び培養培地を含む、細胞の培養。
【請求項22】
カラギナーゼタンパク質を生産する方法であって、
(a)請求項11の宿主細胞を培養する工程、及び
(b)カラギナーゼタンパク質を生産する工程を含む、方法。
【請求項23】
更に、生成されたカラギナーゼを収穫する工程を含む、請求項22の方法。
【請求項24】
宿主細胞がバチルス(Bacillus)種である、請求項22の方法。
【請求項25】
配列番号4のカッパカラギナーゼに少なくとも約70%同一なアミノ酸配列を含む単離さされたカッパカラギナーゼの有効量を含む洗浄組成物。
【請求項26】
前記洗浄組成物が洗剤である請求項25の洗浄組成物。
【請求項27】
更に少なくとも1つの追加的な酵素又は酵素誘導体を含む、請求項26の洗浄組成物。
【請求項28】
前記少なくとも1つの酵素又は酵素誘導体が、ヘミセルラーゼ、ペルオキシダーゼ、プロテアーゼ、セルラーゼ、キシラナーゼ、リパーゼ、フォスフォリパーゼ、エステラーゼ、クチナーゼ、ペクチナーゼ、ケラチナーゼ、リダクターゼ、オキシダーゼ、オキシドリダクターゼ、ヘノロキシダーゼ、リポキシゲナーゼ、リグニナーゼ、プルラナーゼ、タンナーゼ、ペントサナーゼ、マンナーゼ、β−ガラクトシダーゼ、アラビノシダーゼ、ヒアルロニダーゼ、コンドロイチナーゼ、ラッカーゼ、及びアミラーゼ、又はこれらの混合物から選択される、請求項27の洗浄組成物。
【請求項29】
請求項15の洗浄組成物に、硬表面及び/又は布を含む製品を接触させることを特徴とする、洗浄方法。
【請求項30】
前記表面及び/又は製品に洗浄組成物を接触させた後に、この表面及び/又は製品をすすぐ工程を更に含む、請求項29の方法。
【請求項31】
前記表面及び/又は布を含む製品がカッパカラギナンで汚されている、請求項29の方法。
【請求項32】
前記表面及び/又は布を含む製品がサラダドレッシング、バーキューソース、及び/又はマーマレードで汚されている、請求項29の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【公表番号】特表2010−536342(P2010−536342A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−521049(P2010−521049)
【出願日】平成20年8月15日(2008.8.15)
【国際出願番号】PCT/US2008/009789
【国際公開番号】WO2009/023271
【国際公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(509240479)ダニスコ・ユーエス・インク (81)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月15日(2008.8.15)
【国際出願番号】PCT/US2008/009789
【国際公開番号】WO2009/023271
【国際公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(509240479)ダニスコ・ユーエス・インク (81)
【Fターム(参考)】
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