説明

カップラー

【課題】 様々な内容物のうち1種類だけを識別して連結することができるカップラーを提供すること、これに加えて、非常に薄い機器に対しても確実に識別することができるカップラーを提供すること。
【解決手段】カップラー10のソケットS10とプラグP10との間に、異なるカップラーとの嵌合を阻止する第1の識別手段60をカップラー10の嵌合連結の中心軸を挟んで1対設けるとともに、この第1の識別手段60の内側に嵌合連結の中心軸を挟んで1対の第2の識別手段70を設け、この第2の識別手段70はカップラー10を設ける機器の最小幅の内接円内(T1,T2を直径とする円内)に配置して構成してあるので、第1および第2の識別手段60,70の組み合わせで、簡単形状で多くの種類の識別ができるとともに、薄型の機器に対しても第2の識別手段70をその最小幅T1,T2の内接円内(T1,T2を直径とする円内)に配置し、外側に第1の識別手段60を配置することで簡単に対応することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はソケットとプラグとで構成され着脱可能に連結されるカップラーに関し、液体などを容器から本体側の容器などに移す場合や容器ごと交換する場合に様々な内容物のうち1種類だけを識別して連結することができるようにするもので、特に液体を燃料とする燃料電池のカートリッジ容器と燃料電池本体との間に設けて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来から機器の運転や使用にともなって減少する原料などの液体を補充する必要がある場合も多く、機器本体側に設けた容器にカートリッジ容器を連結して原料などの液体を移すことで供給したり、機器本体側の容器と別の容器を付け替えることで供給することが行われている。
【0003】
このような容器同士の連結や容器の付け替えを簡単にするため着脱可能な種々のカップラーが用いられている。
【0004】
例えば特許文献1には、図8に示すように、連結装置が開示されており、主流路と副流路とを備えたプラグPと、主流路と副流路とを備えプラグと嵌合可能であるとともに、嵌合した状態でプラグの主流路と副流路とを連通可能なソケットSとから構成されている。
【0005】
そして、この連結装置では、ソケットSは保持体1に固定された弁押体2の外周に形成された主流路2aと、さらに主流路2aの外側に形成された副流路2bと、それらの流路2a,2bを閉じるバルブ3a、3bを有し、各バルブ3a、3bはスプリング4a,4bの付勢力によって弁座に向けて押圧され、主流路2aおよび副流路2bを閉じることができる構成となっている。
【0006】
一方、プラグPは弁保持体5に摺動自在に保持された弁本体6の外周に形成された主流路6aと、さらに主流路6aの外側に形成された副流路6bと、それらの流路6a,6bを閉じるバルブ7a,7bを有し、各バルブ7a,7bはスプリング8a,8bの付勢力によって弁座に向けて押圧され、主流路6aおよび副流路6bを閉じることができる構成となっている。
【0007】
このようなソケットSとプラグPの接続がなされると、まず、ソケットSの副バルブ3bとプラグPの副バルブ7bが当接し、両者がそれぞれスプリング4b,8bの付勢力に抗して互いに離れる方向に移動し、副流路2b,6bが連通する。
【0008】
さらに、ソケットSとプラグPの接続がなされると、ソケットSの主バルブ3aがプラグPの内筒体の端面によって押され、スプリング4aに抗して後退して弁体が弁押体2の弁座から離れ、弁押体2との主流路2aを開くとともに、ソケットS側の弁押体の先端部平面とプラグP側の弁本体6に設けた弁部材の平面とが当接しプラグP側の弁本体6をスプリング8aの付勢力に抗して押圧し、弁本体を後退させてプラグP側の主バルブ7aを開き主流路6aと連通する。
これにより、副流路が連通すると気体供給源から容器内に気体が供給され、その気体圧によって内袋を収縮させ、内袋内の液体がプラグ側の主流路からソケット側の主流路を介して液体を容器外に送出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−172487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
液体を燃料とする燃料電池には、様々な種類の燃料が提案されており、例えばメタノールを燃料とする場合でも、燃料電池の使用により必要とされるメタノールの濃度の違いがあり、非常に多くの燃料種となる。
このような多種類の燃料を移送する際に使用するカップラーを1種類のカップラーで供給しようとする場合、確実に燃料電池本体が要求する燃料のみが連結できる識別手段が必要となる。
また、燃料電池を使用する機器の多様化により非常に薄い機器にも対応できるものが求められている。
【0011】
この発明は、上記従来技術の課題および要望に鑑みてなされたもので、様々な内容物のうち1種類だけを識別して連結することができるカップラーを提供しようとするものであり、これに加えて、非常に薄い機器に対しても確実に識別することができるカップラーを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記従来技術の有する課題を解決するためこの発明の請求項1記載のカップラーは、弁体とこれを閉方向に付勢する付勢手段とを備えるソケットと、弁体とこれを閉方向に付勢する付勢手段とを備えるとともに、前記ソケットと着脱可能に嵌合連結され嵌合連結状態で両弁体を開放して連通可能なプラグとから構成されるカップラーであって、これらソケットとプラグとの間に、異なるカップラーとの嵌合を阻止する第1の識別手段を当該カップラーの嵌合連結の中心軸を挟んで1対設けるとともに、この第1の識別手段の内側に前記嵌合連結の中心軸を挟んで一対の第2の識別手段を設け、この第2の識別手段はカップラーを設ける機器の最小幅の内接円内に配置して構成してなることを特徴とするものである。
【0013】
この発明の請求項2記載のカップラーは、請求項1記載の構成に加え、前記第1の識別手段および前記第2の識別手段を,それぞれ前記カップラーの中心軸に対して点対称に配置して構成したことを特徴とするものである。
【0014】
この発明の請求項3記載のカップラーは、請求項1または2記載の構成に加え、前記第1の識別手段の一対の間隔が、前記カップラーを設ける機器の最小幅より広く配置された場合には、前記第2の識別手段のみで識別可能に構成してなることを特徴とするものである。
【0015】
この発明の請求項4記載のカップラーは、請求項1〜3のいずれかに記載の構成に加え、前記第1の識別手段を、前記ソケットと前記プラグとの間を連結状態に保持する連結保持手段と兼用して構成したことを特徴とするものである。
【0016】
この発明の請求項5記載のカップラーは、請求項4記載の構成に加え、前記連結保持手段を、前記ソケットと前記プラグとのいずれか一方にロックアームを前記カップラーの中心軸回りに回転自在に設け、いずれか他方にこのロックアームが係合される係合凹部を設けて構成するとともに、当該ロックアームに対しては前記第1の識別手段を前記中心軸方向に往復移動可能かつ前記カップラーに対しては中心軸回りに回転自在に設けて構成してなることを特徴とするものである。
【0017】
この発明の請求項6記載のカップラーは、請求項5記載の構成に加え、前記ロックアームに往復移動可能かつ前記カップラーの中心軸回りに回転可能な部材と当該カップラーとのいずれかに、カムとカムフォロアとで構成された前記連結保持手段の分離手段を設けてなることを特徴とするものである。
【0018】
この発明の請求項7記載のカップラーは、請求項5または6記載の構成に加え、前記連結保持手段および前記第1の識別手段を、前記ロックアームに連結方向に交差した突起もしくは溝を設ける一方,前記係合凹部に突起もしくは溝と係合する庇もしくは突起を設けて構成したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
この発明の請求項1記載のカップラーによれば、弁体とこれを閉方向に付勢する付勢手段とを備えるソケットと、弁体とこれを閉方向に付勢する付勢手段とを備えるとともに、前記ソケットと着脱可能に嵌合連結され嵌合連結状態で両弁体を開放して連通可能なプラグとから構成されるカップラーであって、これらソケットとプラグとの間に、異なるカップラーとの嵌合を阻止する第1の識別手段を当該カップラーの嵌合連結の中心軸を挟んで1対設けるとともに、この第1の識別手段の内側に前記嵌合連結の中心軸を挟んで一対の第2の識別手段を設け、この第2の識別手段はカップラーを設ける機器の最小幅の内接円内に配置して構成してあるので、第1および第2の識別手段の組み合わせで、簡単形状で多くの種類の識別ができるとともに、薄型の機器に対しても第2の識別手段をその最小幅の内接円内に配置し、外側に第1の識別手段を配置することで簡単に対応することができる。
【0020】
この発明の請求項2記載のカップラーによれば、前記第1の識別手段および前記第2の識別手段を、それぞれ前記カップラーの中心軸に対して点対称に配置して構成したので、第1、第2の識別手段のいずれもカップラーの中心軸に対して反転させて連結することができ、これによって識別操作を反転して確かめる必要がなく、1回の識別操作で簡単に識別することができる。
【0021】
この発明の請求項3記載のカップラーによれば、前記第1の識別手段の一対の間隔が、前記カップラーを設ける機器の最小幅より広く配置された場合には、前記第2の識別手段のみで識別可能に構成してなるので、非常に薄型の機器の場合で第1の識別手段が機能しない場合でも第2の識別手段だけで識別することができ、同一仕様のカップラーを異なる厚さの機器、特に非常に薄型の機器に使用されても確実に識別することができる。
【0022】
この発明の請求項4記載のカップラーによれば、前記第1の識別手段を、前記ソケットと前記プラグとの間を連結状態に保持する連結保持手段と兼用して構成したので、確実に識別できると同時に、カップラーの連結状態を第1の識別手段と兼用した連結保持手段で保持することができ、内容物などの供給を確実に行うことができる。
【0023】
この発明の請求項5記載のカップラーによれば、前記連結保持手段を、前記ソケットと前記プラグとのいずれか一方にロックアームを前記カップラーの中心軸回りに回転自在に設け、いずれか他方にこのロックアームが係合される係合凹部を設けて構成するとともに、当該ロックアームに対しては前記第1の識別手段を前記中心軸方向に往復移動可能かつ前記カップラーに対しては中心軸回りに回転自在に設けて構成したので、連結保持手段のロックアームをカップラーの中心軸回りに回転自在とすることで、ソケットとプラグとの間に回転力が加わってもこれを許容することができる。
【0024】
この発明の請求項6記載のカップラーによれば、前記ロックアームに往復移動可能かつ前記カップラーの中心軸回りに回転可能な部材と当該カップラーとのいずれかにカムとカムフォロアとで構成された前記連結保持手段の分離手段を設けたので、ソケットとプラグとの間に過剰な回転力が加わると、分離手段のカムとカムフォロアニよって中心軸方向の分離力を発生させることができ、破損を防止して連結保持状態を開放することができる。
【0025】
この発明の請求項7記載のカップラーによれば、前記連結保持手段および前記第1の識別手段を、前記ロックアームに連結方向に交差した突起もしくは溝を設ける一方,前記係合凹部に突起もしくは溝と係合する庇もしくは突起を設けて構成したので、ロックアームの突起と係合凹部の庇、あるいはロックアームの溝と係合凹部の突起とで、確実に連結状態を保持できるとともに、これらの係合時または開放時の乗越えによってクリック感(乗越えにより生じる音や振動など)が生じ、確実に係合あるいは、開放されたことを知ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】この発明のカップラーを燃料電池に適用した一実施の形態にかかるカップラーを構成するソケットとプラグを分離した状態の縦断面図である。
【図2】この発明のカップラーを燃料電池に適用した一実施の形態にかかるカップラーを構成するソケットとプラグを接続した状態の縦断面図である。
【図3】この発明のカップラーを燃料電池に適用した一実施の形態にかかるカップラーを構成するプラグの外観斜視図である。
【図4】この発明のカップラーを燃料電池に適用した一実施の形態にかかるカップラーを構成するプラグの先端部分の分解斜視図および組立状態の外観斜視図である。
【図5】この発明のカップラーを燃料電池に適用した一実施の形態にかかるカップラーを構成するプラグの先端部分のカム機構部分の分解斜視図である。
【図6】この発明のカップラーを燃料電池に適用した一実施の形態にかかるカップラーにおける第1および第2の識別手段によるソケット側の識別性の説明図である。
【図7】この発明のカップラーを燃料電池に適用した一実施の形態にかかるカップラーにおける第1および第2の識別手段による機器の厚さによる識別性の説明図である。
【図8】従来の連結装置の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、この発明を実施するための形態を図面に基づき詳細に説明する。
まず、この発明のカップラーの実施の形態を説明する前にカップラーの全体構成について、燃料電池用として燃料電池本体と燃料補充用のカートリッジ本体との間に設ける場合を例に説明する。
この燃料電池用カップラー(以下、単にカップラーとする。)10は、ソケットS10と、このソケットS10と嵌合連結されるプラグP10とで構成され、例えばメタノール燃料電池本体側の容器本体である燃料タンクにソケットS10が設けられ、メタノール容器としてのカートリッジ本体側の容器本体であるボトルにプラグP10が設けられ、互いを連通させて燃料電池本体側にカートリッジ本体から燃料を補充したり、カートリッジごと交換するのに用いられる。すなわち、この発明のカップラーでは、容器本体は、電池本体側のタンクとカートリッジ側のボトルの両方を含むものである。
【0028】
このソケットS10は、主要部は、金属材料で構成されるが、その多くが液体燃料に晒されることになるため、耐腐食性などに優れた材料で構成することが好ましく、例えば不導態化処理や金コーティングなどを施して使用することが好ましい。非金属材料部材には、例えばポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリスチレン(PS)などが用いられるほか、耐メタノール性を有するポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、液晶ポリマー(LCP)などのスーパーエンジニアプラスチックや、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアセタール(POM)などの汎用エンジニアプラスチックが好適に用いられる。さらに、ゴムとして、例えばニトリルゴム(NBR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム(FKM)、クロロプレンゴム(CR)、エチレンプロピレンゴム(EPT、EPDM)、シリコーンゴム(VMQ)が好適に用いられる。
【0029】
以下の説明では、図面上での上下を基準に説明するが、実際の嵌合連結方向を何ら制限するものでなく、どのような方向で実施しても良い。
このカップラー10のソケットS10では、燃料電池本体に設けられる容器本体の表面などに露出して取り付けられるカップラー本体を構成するソケット本体11を備えており、ソケットS10と対をなすプラグP10が挿入連結されるプラグ接続孔12が表面に開口して形成してある。このプラグ接続孔12は、内径が表面側ほど大径な大径部と中径部と小径部との3段の円筒部で構成してある。
このソケット本体11の中径部の外側の段差部に略底付き円筒状の弁ホルダ13が連結され、ソケット本体11の小径部の外周と弁ホルダ13の内周とがホルダシール部14とされ、シール状態にできるようにしてあり、弁ホルダ13の底部には、容器本体内と連通する連通孔13aが形成してある。この弁ホルダ13の連通孔13aと接続部シール部21先端孔とがソケットS10での流路15とされ、容器本体の内外間を連通できるようになっている。
【0030】
この弁ホルダ13内には、流路15を開閉するソケット側の弁体を構成するバルブ本体16が摺動自在に装着され、略円柱状の弁本体16aと下端の大径円錐状のシール部16bとを備え、このシール部16bの円錐面が弁シール部17とされるとともに、シール部16bの外周面が弁ホルダ13の内周に沿うガイド部とされ、流路15の開閉が行われる。
【0031】
なお、バルブ本体16のシール部16bは円錐面とする場合に限らず、平面で構成するようにしても良い。
【0032】
さらに、このバルブ本体16を閉じる方向に付勢する付勢手段として圧縮コイルばね18が弁ホルダ13の底部とバルブ本体16の大径円錐状のシール部16bの上側との間に装着してある。
この圧縮コイルばね18によって開閉されるバルブ本体16によって、弁ホルダ13の底部に形成した連通孔13aとプラグ接続孔12との間の流路15が、連通孔13aから弁本体16aの外周と弁ホルダ13の内周、開閉されるバルブ本体16のシール部16bの弁シール部17を経て接続シール部21先端孔に至るように形成される。
【0033】
また、バルブ本体16には、大径円錐状のシール部16bの中心部に操作部材用の装着穴19が形成され、この装着穴19の底部に段付きリブ19aが形成してあり、装着穴19より小径の中空パイプ状のソケット側操作部材20が段付きリブに当接されてソケット本体11のプラグ接続孔12内に先端部20aが位置するように装着してある。このソケット側操作部材20の先端部20aは、後述するプラグP10の先端部との間で接続部シール部21が構成され、ソケットS10とプラグP10とを接続する場合のシール状態を確保する。
【0034】
なお、この接続部シール部21のシール部材は、ソケットS10側あるいはプラグP10側の両方、あるいはいずれかに設ければ良く、ここでは、ソケットS10側に設けるようにしてある。
【0035】
なお、ソケット側操作部材20の先端部20aは、図示例では、フレア加工を施してあり、接続部シール部材を膨らませて外周面でシールするようにしてあるが、フランジを形成して接続部シール部材を膨らませてシールするようにしたり、単に直管状として先端面や外周面でシールするようにしても良い。先端面でシールする場合には、接続部シール部材21がバルブ本体16の移動に伴って摺動したり、摩擦が生じることが無く、外周面でシールする場合には、接続部シール部材21の摺動が生じることになる。
【0036】
このように構成したソケットS10では、ホルダシール部14、弁シール部17、接続部シール部21の3箇所のシール部が設けられ、通常、それぞれに弾性シール材が取り付けられるが、ここでは、3箇所のシール部をシールするシール部材が1つで兼用され、3箇所兼用シール部材22が装着される。この3箇所兼用シール部材22は、中心部の内円筒部22aの上端部に外側に突き出すフランジ状の略円板部22bを備え、略円板部22bの外周端に内円筒部22aと同心状に外円筒部22cが一体とされた縦半分の断面形状が略J字状としてある。
【0037】
この3箇所兼用シール部材22の内円筒部22aの内側にソケット側操作部材20の先端部20aが取り付けられ、下端部外周が接続部シール部21をシールする接続部シール部材(22a)となるとともに、ソケット側操作部材20を保持する機能をなしている。
また、3箇所兼用シール部材22のフランジ状の略円板部22bが弁シール部17に配置されて弁シール部材(22b)となり、バルブ本体16がソケット側操作部材20で開弁方向に移動することにより略円板部22bが弾性変形して弁シール部16aとの間に隙間が形成されることで開弁状態となり、弁シール部16aと密着することで閉弁状態となる。
【0038】
さらに、3箇所兼用シール部材22の外円筒部22cがホルダシール部14に配置され、ソケット本体11の小径部の外周と弁ホルダ13の内周との連結部分に挟むように取り付けられてシール状態とされるホルダシール部材(22c)となるとともに、これによって3箇所兼用シール部材22の一端が固定されることになる。
【0039】
なお、3箇所兼用シール部材22は、ホルダシール部材となる外円筒部22cの成形を省略して弁シール部材とする略円板部22bの先端縁部を、ホルダシール部14をシールするホルダシール部材とするようにしても良く、必ずしも予め成形しておかなくても良い。
また、ソケット側操作部材20を直管状として3箇所兼用シール部材22を利用して支持せずに独立した構造としても良い。
【0040】
この3箇所兼用シール部材22を用いることで、3箇所のシール部材の取り付けが1回で済み、ソケット側操作部材20の先端部20aに被せるように接続部シール部材となる内円筒部22a部分を取り付けた後、バルブ本体16の操作部材用の装着穴19にソケット側操作部材20を差し込むようにし、このバルブ本体16の外側に圧縮コイルばね18を配置して弁ホルダ13を取り付けてホルダシール部材となる外円筒部22cをソケット本体11との間に挟むようにすることで、弁シール部材となる略縁板部22bも同時にセット状態で取り付けることができる。特に、カップラー10を小径・小型化する場合には、Oリング等でシール部材を構成するとその直径が数mm程度となることもあり、組み込みが大変となるが、この3箇所兼用シール部材22により簡単かつ取付工程を削減することができ、一層有効となる。
【0041】
なお、3箇所兼用シール部材22に替え、内円筒部22aによる接続部シール部21をシールする接続部シール部材と、略円板部22bによるバルブ本体16のシール部16bに接触することでシールする弁シール部17の弁シール部材との2箇所のシール部材を一体とした2箇所兼用シール部材とすることもでき、ホルダシール部材を別体として取り付けるようにしても良く、組み込み箇所が1箇所増えるものの、簡単に組み込みができる。また,3箇所それぞれに、Oリングなどの独立したシール部材を装着するようにすることもできる。
【0042】
また、弁シール部17をシールする3箇所兼用シール部材22や2箇所兼用シール部材の略円板部22bは、バルブ本体16の移動により開閉される形状であれば良く、ソケット側操作部材20と共に移動しながら大きく弾性変形して開閉されるものであったり、ソケット側操作部材と独立した構造のものなどほとんど弾性変形せずに開閉されるもののいずれであっても良い。
【0043】
このように構成したソケットS10では、バルブ本体16の装着穴19に装着されたソケット側操作部材20がプラグP10との連結にともなって押圧操作されることで、接続部シール部21のシールがなされた後、自動的に弁体を構成するバルブ本体16が開弁されたり、プラグP10の取り外しにより閉弁されることになる。
【0044】
次に、このようなソケットS10に嵌合連結されるカップラー10のプラグP10は、操作部材やばね等の一部を除き主要部は、非金属材料、例えばポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリスチレン(PS)などが用いられるほか、耐メタノール性を有するポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、液晶ポリマー(LCP)などのスーパーエンジニアプラスチックや、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアセタール(POM)などの汎用エンジニアプラスチックが好適に用いられる。さらに、ゴムとして、例えばニトリルゴム(NBR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム(FKM)、クロロプレンゴム(CR)、エチレンプロピレンゴム(EPT、EPDM)、シリコーンゴム(VMQ)が好適に用いられる。また、金属材料の部品は、液体燃料に晒されることになるため、耐腐食性などに優れた材料で構成することが好ましく、例えば不導態化処理や金コーティングなどを施して使用することが好ましい。
【0045】
このプラグP10は、図1に示すように、燃料電池の燃料であるメタノールがいれられる容器本体を構成する容器のノズルNの先端部外周に装着され、容器にねじ込まれるカップラー本体を構成する略4段円筒状のプラグ本体31を備えており、先端部(上端部)31aが最小径で、中間小径部31bおよび中間大径部31cに続く基端部(下端部)31dが最大径となっている。
【0046】
このプラグ側でのカップラー本体を構成するプラグ本体31には、先端部に突き出してソケットS10のプラグ接続孔12内に装着される最小径の略円筒状の突出連結部32が形成してあり、この突出連結部32の先端にソケットS10のソケット側操作部材20の先端部20aに装着された3箇所兼用シール部材22の内円筒部(接続部シ−ル部材)22aの外周面と接触してシールするシール凹部32aが形成されるとともに、中心部にプラグ側操作部材用の装着孔32bが形成してある。
【0047】
このシール凹部32aは、先端開口部側が大径で基端底部側が小径のテーパ状凹部とされ、このテーパ面によってソケットS10の3箇所兼用シール部材22の挿入をガイドするとともに内周部で確実にシールすることができるようにしてある。また、このシール凹部32aがプラグP10の先端面をへこませるように設けてあるので、プラグP10をソケットs10から取り外した際に、例え付着残留する液体燃料があってもこのシール凹部32aに収容することができ、これにより、付着残留する液体燃料に接触することを防止するようにしてある。
【0048】
なお、このシール凹部32aは、テーパ状凹部とするほか、円筒状凹部として内周面でシールするのに替え、底面でシールするようにしたり、他の凹部形状としてシールおよび付着液体の収容空間としても良い。
【0049】
このプラグ本体31の中間大径部31cの内周側の中間小径部31bの端面が平坦面で構成されたバルブシート33としてある。
そして、プラグ本体31の中間大径部31cの端面と基端部(下端部)31dの最大径の円筒部の内周がホルダシール部34とされ、容器のノズルNがホルダシール部材40となるOリングを介して挿入されるようになっており、容器のノズルにねじ込まれてプラグ本体31が容器に取り付けられる。
【0050】
このプラグ本体31の内側には、プラグ側の弁体を構成するバルブ本体35が装着され、中間部の略大径円板部がバルブヘッド35aとされ、このバルブヘッド35aに先端中心部(上端中心部)に突き出す細径で先端面を横断する流路溝35eが形成されたバルブステム35bと、基端中心部(下端中心部)に突き出す太径のガイド部35cとが一体に形成してあり、先端中心部(上端中心部)に突き出すバルブステム35bの流路溝35eに当てて設けられるプラグ側操作部材41が突出連結部32内に位置し、バルブ本体35と一体に往復移動するようになっている。
【0051】
このプラグ側操作部材41は、金属製の細径のパイプで構成され、基端部(下端部)がフレア加工されて、バルブステム35bの流路溝35eに当てられ、プラグ本体31の最小径の上端部の下面で押えられており、バイプ内と両側面および先端面が開口する流路溝35eを介して連通して流路が構成されるようになっている。これにより、細径のパイプの側面に孔や軸方向の溝などを加工することなく、パイプ内とパイプ外とを連通する流路を形成することができる。
【0052】
そして、このバルブ本体35のバルブヘッド35aの先端部(上端部)に、バルブシート33と対向してOリング装着部35fが設けられ、弁シール部36の弁シール部材を構成するOリング37が装着してある。
【0053】
このバルブ本体35の往復動をガイドするため、ガイド部35cの外側を囲むように底付きの略円筒状のバルブホルダ38が設けられ、中間のフランジ部がプラグ本体31の中間大径部31cの下方の端面に当てられるとともに、フランジ部の下面にホルダシール部材としてのOリング40が当てられてノズルNの外周のねじ部にねじ込むプラグ本体31で挟まれて取り付けられている。
【0054】
また、バルブ本体35のガイド部35cの外周に圧縮コイルばね39が装着され、上端がバルブヘッド35aに当てられ、下端がバルブホルダ38の中間突出部で押えられている。
【0055】
これにより、バルブ本体35は常時上方に付勢され、バルブヘッド35aのOリング保持部35fに取り付けたOリング37をバルブシート33に押し当ててシールすることで、閉弁状態にしたり、圧縮コイルばね39に抗して離間させることで、開弁状態にできるようになっている。
【0056】
なお、圧縮コイルばね39の下端が支持されるバルブホルダ38がプラグ本体31に弾性体などを介在することなく取り付けてあるので、弾性体の介在による付勢力の変化がなく、常に一定に保つことができ、安定した状態で開弁や閉弁することができる。
【0057】
さらに、バルブホルダ38の下端部側壁には、流路孔38aが形成され、容器内と連通するようになっている。
【0058】
このように構成したプラグP10では、バルブ本体35のバルブステム35bをソケットS10との連結にともなってプラグ側操作部材41を介して押圧操作することで、自動的に弁体であるバルブ本体35が開弁されたり、連結を解除することで閉弁されることになる。
【0059】
このようなカップラー10でのソケットS10とプラグP10との連結接続は、3箇所シール部材22の接続部シール部21のシール材22aが接触して接続部のシールがなされた後、接続部シール部21のシールが保持された状態でソケット側操作部材20が操作されて圧縮コイルばね18の強さの設定で先にソケットS10のバルブ本体16が開いた後、さらに押されることでプラグP10のバルブ本体35が移動されて開弁状態となり、カップラー10を構成するソケットS10およびプラグP10の連結接続が完了する。
【0060】
さらに、このカップラー10では、ソケットS10とプラグP10との連結状態を保持するため連結保持手段50が設けてあり、例えば連結保持手段50の一方側を係合凹部51などとし、この係合凹部51に係合される相手側をロックアーム52などとして構成し、互いを乗越えるように押込む1アクションで係合させて連結保持し、引き出すようにする1アクションで開放できるようにし、安定した連結状態で燃料などの供給ができるようにしてある。
【0061】
このカップラー10のソケットS10では、燃料電池の本体の装着孔に取り付けたソケット本体11の先端部外側の燃料電池の本体に連結保持手段50の一方側となる係合凹部51が設けられ、図1に示すように、2つの係合凹部51が、例えば矩形に形成されてプラグ接続孔12の中心軸を挟んで対向し、中心軸に対して点対称に設けてある。これら2つの点対称位置の係合凹部51の内側面には、中心軸側に突き出すように庇部53が開口表面から途中まで形成してあり、相手側となる後述するプラグP10側のロックアーム52の突起部54とで確実に係合がなされるようにしてある。
【0062】
このようなカップラー10の中心軸に対して点対称位置のプラグ接続孔12の外側の2箇所に係合凹部51を形成し、その内側に庇部53を形成することで、厚さと直交する方向に沿って2つの係合凹部51が配置され、設置スペースを極力小さくすることができ、厚さの薄い装置などにも簡単に連結保持手段50を設置することができる。
【0063】
一方、このカップラー10のプラグP10では、図1に示すように、プラグ本体31の先端部に、ソケットS10との連結状態を保持する連結保持手段50の相手側として、ソケットS10の2つの係合凹部51に対応して2本のロックアーム52が上方に突き出して対向して配置され、プラグP10の中心軸に点対象とされるとともに、中心軸回りに回転自在に設けてある。
【0064】
これら2本のロックアーム52は、基端部の略円板状のリング部55を備え、中空部をプラグ本体31の中間小径部31bおよび中間大径部31cに被せるようにして中心軸回りに回転自在とされ、このリング部55の円板上に2本のロックアーム52が垂直に突き出すように一体に成形してある。そして、各ロックアーム52の先端部外側に係合凹部51の庇部53に係止される突起部54が形成してあり、庇部53を乗り越えるようにして係合連結・開放離脱が行われる。
【0065】
このように構成したカップラー10では、ソケットS10とプラグP10とを連結保持する場合には、ソケットS10のプラグ接続孔12にプラグP10の突出連結部32を挿入するとともに、ソケット本体11に設けた連結保持手段50の係合凹部51に対向させてプラグ本体31に設けたロックアーム52を押し込むようにする。
すると、ソケットS10とプラグP10の連結操作にともなって連結保持手段50では、係合凹部51の庇部53とロックアーム52の突起部54との接触で、ロックアーム52が内側に押し戻されるように弾性変形し、さらにプラグP10を押し込むことで、係合凹部51とロックアーム52の突起部54が互いを乗越えながら係合状態となり、連結状態が保持される。
【0066】
そして、この連結状態では、プラグ本体31に対してロックアーム52がそのリング部55を介して中心軸回りに回転自在としてあるので、ソケットS10とプラグP10との間に中心軸回りの力が加わってもロックアーム52の回転で許容することができ、カップラー10の損傷を防止することができる。
【0067】
一方、連結保持状態を開放する場合には、ソケットS10からプラグP10を引き抜くようにすると、係合凹部51の庇部53とロックアーム52の突起部55とによって、ロックアーム52を内側に押し戻すように弾性変形させることができ、さらに引き抜くようにして互いを乗り越えさせて、連結保持状態を開放し離脱することができる。
【0068】
このようなカップラー10によれば、押し込み・引き抜き操作だけでソケットS10とプラグP10とを連結したり、連結を解除することができ、1アクションで簡単に操作することができる。これにより、設置スペースを小さくすることができ、例えば挿脱と回動とを組み合わせて連結保持状態とする機構(ツイストロック機構)に比べ、回動のためのスペースを確保する必要がなく、一層省スペースとなる。
【0069】
さらに、このカップラー10では、係合凹部51の庇部53とロックアーム52の突起部54が乗越えるようにして連結保持状態としたり、連結状態を開放するようにしたので、特に連結操作の際、乗越えた後に係合状態となることで、クリック感(音と振動により伝わる感覚)が生じ、確実に係合状態になったことを知ることができる。
【0070】
次に、この発明のカップラーの一実施の形態に係る識別手段について説明する。
この識別手段は、例えばメタノール燃料電池で使用すべき燃料であるメタノールの濃度の異なるプラグP10を連結できないようにするためのものであり、この実施の形態では、2つの識別手段をカップラーの中心軸に点対称に設けることで、反転した状態での連結は可能とし、反転することなく一回の連結操作で識別できるようにしてあり、第1の識別手段60をすでに説明した連結保持手段50と兼用し、これとは独立した第2の識別手段70とで構成してある。
なお、第1の識別手段60を連結保持手段50と兼用することなく、単独の構成とし、連結保持手段50を省略し連結保持機能のないものとしても良いものである。
【0071】
第1の識別手段60は、カップラーの中心軸を挟んで1対設けるとともに、この中心軸に対して点対称に配置してあるソケットS10の係合凹部51とこれに係合連結されるプラグP10のロックアーム52とを兼用し、識別機能を付加するようにしている。ここでは、図6に示すように、正方形状と、長方形状の幅の異なる係合凹部51、51Aとロックアーム52、52Aの2種類と、正方形状の係合凹部51とロックアーム52を中心軸に対して水平、右傾斜、左傾斜の3つの角度の異なる3種類の配置を組み合わせて構成してある。
【0072】
また、第2の識別手段70は、第1の識別手段60の内側で連結保持手段50の中心軸を挟んで1対設けられるとともに、この中心軸に対して点対称に配置され、例えばカップラー10のソケットS10とプラグP10との一方側のキー溝と、他方側のキーとで構成される。ここでは、例えば図6に示すように、第2の識別手段70のキー溝71と一対のキー72により、点対称の配置と中心軸に対する水平、左傾斜、右傾斜の3つの角度の異なる3種類の配置(3つの角度だけでは、識別性は有しない)を第1の識別手段と組み合わせて識別するようにしてある。
【0073】
これら第1の識別手段60および第2の識別手段70によって、反転性(180度反転させても識別して連結できる機能)を確保しながら第1の識別手段60および第2の識別手段70の角度の組み合わせによる9種類の識別と第1の識別手段60の幅および第2の識別手段70の角度の組み合わせによる3種類の識別との組み合わせにより合計12種類の識別ができるようにしてある。
【0074】
第2の識別手段70は、例えば図1、2に示すように、ソケットS10にキー溝71が、プラグP10にキー72が設けてあり、一方側のソケットS10のキー溝71は、ソケット本体12のプラグ接続孔12の係合凹部51の内側の中心軸に対する点対称位置である対角位置の2ヶ所に1対形成してある。
一方、識別手段70の他方側のプラグP10の2つ(1対)のキー72は、基端部の略円板状のリング部73を備え、中空部が第1の識別手段60のロックアーム52のリング部55上に載せられてプラグP10に対して中心軸回りに回転自在とされるとともに、リング部73に形成されたロックアーム52に対応する2つのガイド孔74にロックアーム52が挿通されてこのリング部73がプラグP10の中心軸方向に往復移動可能となっている。そして、このリング部73の円板上に2本(1対)のキー72が垂直に突き出すように1対のキー溝71に対応して一体に成形してある。
これにより、第2の識別手段70を構成するキー72は、ソケットS10のキー溝71と嵌合連結できるとともに、プラグ本体31に対して中心軸回りに回転自在となり、ソケットS10とプラグP10とに中心軸回りの力が加わってもキー溝71と連結した状態でこれを許容することができ、損傷を防止することができる。
【0075】
このようなカップラー10では、点対称位置に配置した連結保持手段50と兼用の第1の識別手段60の一方側の係合凹部51と相手側のロックアーム52とに対して、その内側に配置した第2の識別手段70の一方側の2つの点対称位置のキー溝71と相手側の2つの点対称位置のキー72の角度を変えることで、完全に1つのソケットS10と1つのプラグP10とだけが反転して挿入連結できる状態を保持しながら、他のものと識別することができる。
【0076】
したがって、この第2の識別手段70のキー溝71およびキー72は、識別できる種類を確保するため、例えば中心軸に対する点対称位置である対角位置の2ヶ所に形成され、ここでは、点対称状態を保持したまま、図6に示すように、中心軸に対して水平、右傾斜、左傾斜の3つの角度に配置してあり、第1の識別手段60との組み合せで始めて識別性を発揮するようになっている。そして、例えば既述のように、第1、第2の識別手段の3種類の角度と2種類の幅とで、12種類の識別が可能となり、反転して挿入連結することはでき、識別操作を一回だけ行うことで、反転操作することなく、識別することができる。
【0077】
なお、このような識別手段60、70での係合凹部51とロックアーム52とおよび、キー溝71およびキー72のなす角度をさらに多くの点対称位置に変えることおよび係合凹部51とロックアーム52の幅を変えることを組み合わせることなどで、反転性を確保したまま、より多くの識別が可能となる。
【0078】
このようにカップラーの識別手段を連結の中心軸を挟む外側の第1の識別手段60と、その内側の第2の識別手段70とで構成する場合でカップラー10を設ける機器の厚さT1が、例えば図7(a)に示すように、外側の第1の識別手段60の1対のロックアーム52の間隔T(係合凹部51の間隔と同一)より厚い場合には問題なく、2つの識別手段60,70を機能させて識別することができる。
ところが、カップラー10を設ける機器の厚さT2が、例えば図7(b),(c)に示すように、外側の第1の識別手段60の1対のロックアーム52の間隔T(係合凹部51の間隔と同一)より薄い場合には、プラグP10を連結する場合の角度によっては第1の識別手段60を機能させることができなくなり、同図(b)の場合には、異なるカップラーの連結ができることになるという問題が生じる。
【0079】
そこで、このような薄型の機器に対しても識別できるようにする必要があり、例えば図7(c)に示すように、第1の識別手段60が機能しない状態では、第2の識別手段70だけで識別できるように構成することで対応できる。すなわち、第1の識別手段60が薄型の機器の幅の間に入る範囲では、第2の識別手段の配置によって識別可能としたり、第2の識別手段の円周方向の幅と径方向の幅などの形状を変えることで識別性を付与することで対応できる。
【0080】
また、このように識別できるパターンが多くなると、キーやキー溝の配置を外観上見分けることが難しくなるが、たとえば、嵌合連結可能なカップラー10のソケットS10とプラグP10とを同一色で色分けしたり、同一色彩模様とすることを、組み合わせることで、一層簡単に識別することができる。
【0081】
以上のように、この発明のカップラー10によれば、カップラー10のソケットS10とプラグP10との間に、異なるカップラーとの嵌合を阻止する第1の識別手段60をカップラー10の嵌合連結の中心軸を挟んで1対設けるとともに、この第1の識別手段60の内側に嵌合連結の中心軸を挟んで1対の第2の識別手段70を設け、この第2の識別手段70はカップラー10を設ける機器の最小幅の内接円内(T1,T2を直径とする円内)に配置して構成してあるので、第1および第2の識別手段60,70の組み合わせで、簡単形状で多くの種類の識別ができるとともに、薄型の機器に対しても第2の識別手段70をその最小幅T1,T2の内接円内(T1,T2を直径とする円内)に配置し、外側に第1の識別手段60を配置することで簡単に対応することができる。
【0082】
また、この発明のカップラー10によれば、第1の識別手段60および第2の識別手段70を、それぞれカップラー10の中心軸(嵌合連結の中心軸)に対して点対称に配置して構成したので、第1、第2の識別手段60,70のいずれもカップラー10の中心軸(嵌合連結の中心軸)に対して反転させて連結することができ、これによって識別操作を180度反転して確かめる必要がなく、1回の識別操作で簡単に識別することができる。
【0083】
さらに、この発明のカップラー10によれば、第1の識別手段60の一対の間隔Tが、カップラー10を設ける機器の最小幅T2より広く配置された場合には、第2の識別手段70のみで識別可能に構成してなるので、非常に薄型の機器の場合で第1の識別手段60が機能しない場合でも第2の識別手段70だけで識別することができ、同一仕様のカップラー10を異なる厚さの機器T1,T2、特に非常に薄型の機器T2に使用されても確実に識別することができる。
【0084】
この発明のカップラー10によれば、第1の識別手段60を、ソケットS10とプラグP10との間を連結状態に保持する連結保持手段50と兼用して構成したので、確実に識別できると同時に、カップラーの連結状態を第1の識別手段60と兼用した連結保持手段50で保持することができ、内容物などの供給を確実に行うことができる。
【0085】
この発明のカップラー10によれば、連結保持手段50を、ソケットS10とプラグP10とのいずれか一方にロックアーム52をカップラー10の中心軸回りに回転自在に設け、いずれか他方にこのロックアーム52が係合される係合凹部51を設けて構成するとともに、ロックアーム52に対しては第1の識別手段60を中心軸方向に往復移動可能かつカップラー10に対しては中心軸回りに回転自在に設けて構成したので、連結保持手段50のロックアーム52をカップラー10の中心軸回りに回転自在とすることで、ソケットS10とプラグP10との間に回転力が加わってもこれを許容することができる。
【0086】
この発明のカップラー10によれば、連結保持手段50および第1の識別手段60を、ロックアーム52に連結方向に交差した突起55もしくは溝を設ける一方,係合凹部51に突起55もしくは溝と係合する庇53もしくは突起を設けて構成したので、ロックアーム52の突起55と係合凹部51の庇53、あるいはロックアームの溝と係合凹部の突起とで、確実に連結状態を保持できるとともに、これらの係合時または開放時の乗越えによってクリック感(乗越えにより生じる音や振動など)が生じ、確実に係合あるいは、開放されたことを知ることができる。
【0087】
さらに、このカップラー10では、回転力が加わる場合にこれをキー72が設けられたリング部73をプラグ本体31に対して回転自在として回転を逃がすだけでなく、自動的に連結保持状態を開放できるようにカム機構80が設けてある。
【0088】
このカム機構80は、図5に示すように、キー72が設けられたリング部73の背面に、中心軸回りに等間隔(90度ごと)にカム81が4個形成され、円周方向両端部が傾斜面とされ、中央部が曲面に形成された端面カムで構成してある。この端面カム81は、連結保持手段50によりソケットS10の係合凹部51がプラグP10のロックアーム52に係合されて連結保持された状態から係合を開放できるだけのリフト量を確保できる高さのカムとしてある。
一方、プラグP10のプラグ本体31の中間部31bの上端面の中心軸回りに、このカム81に追従して回転方向の運動を軸方向の運動に変えるカムフォロア82が4箇所上方に突き出して形成され、円周方向両端部の傾斜面と中央部の曲面とで構成してある。
【0089】
したがって、ソケットS10の係合凹部51とプラグP10のロックアーム52とが係合された連結保持状態およびソケットS10のキー溝71とプラグP10のキー72とが係合された係合状態でプラグP10とソケットS10との間に、その中心軸回りの回転力が相対的に加わると、微少な回転力では、ロックアーム52のリング部55およびキー72のリング部73がそれぞれプラグ本体31に対して回転自在としてあるので、カム機構80の遊びの範囲でこれを許容することができるものの、より大きな回転力が加わると、ソケットS10とプラグP10との相対回転で、カム機構80のカム81が回転されることになる。
【0090】
これにより、カム81と接しているカムフォロア82を介してキー72が形成されたリング部73がガイド孔74によってロックアーム52にガイドされて軸方向にリフトされ、ロックアーム52のリング部55が相対的にソケットS10から引き離されるようになって、ソケットS10の係合凹部51とプラグP10のロックアーム52との連結保持状態およびソケットS10のキー溝71とプラグP10のキー72との係合状態が開放される。
【0091】
したがって、このカム機構80により、回転方向の力が加わる場合にロックアーム52のリング部55およびキー72のリング部73の回転で損傷を防止するのに加え、軸方向の力を生じさせて自動的に連結保持状態を開放することができる。
【0092】
これにより、カップラー10を破損したり、本体部分の機器を破損することなく通常の使用範囲を超えた過剰な回転力がかかっても安全かつ自動的にプラグP10をソケットS10から取り外すことができる。
また、このカム機構80を利用することで、ソケットS10からプラグP10を取り外す場合にも、中心軸回りの回転力を加えるようにひねることで、簡単に引き離す力を発生させて取り外すことができる。
【0093】
このようなカップラー10によれば、プラグP10に連結保持手段50および第1の識別手段60のロックアーム52をプラグ本体31に対して回転自在に設けるとともに、第2の識別手段70のキー72をプラグ本体31に対して回転自在に設けて構成したので、プラグP10の片側だけにプラグ本体31から突き出す部材を配置することができると同時に、プラグP10とソケットS10との間に加わる回転力に対して連結保持状態を開放することができる。
また、このカップラー10のプラグP10では、組立の際にもロックアーム52が形成されたリング部53にキー72が形成されたリング部73を被せるようにして予め組み立てた後、プラグ本体31に装着することで、簡単に組み立てることができる。
さらに、このプラグP10では、プラグ本体31の突出連結部32の両側に、ロックアーム52が突き出すように配置してあるので、ロックアーム52によってプラグP10を誤って落下した場合などに突出連結部32を保護することができ、特に、突出連結部を細径とした場合の損傷を防止することができる。
【0094】
なお、このカップラー10では、プラグP10の突出連結部の中間部上端面にカムフォロアを一体に設け、カムをキーのリング部に設けるようにしたが、カムとカムフォロアとを入れ替えて設けるようにしても良い。
また、このカップラー10では、プラグP10に連結保持手段50および第1の識別手段60のロックアーム52をプラグ本体31に対して回転自在に設けるとともに、第2の識別手段70のキー72をプラグ本体31に対して回転自在に設けてプラグP10の片側だけに突き出す部材を配置するようにしたが、ソケットS10側だけにロックアームおよびキーを設けて構成するようにしても良く、連結保持および識別性を付与すると同時に、プラグP10とソケットS10との間に加わる回転力に対して連結保持状態を開放することができる。
【0095】
また、これらのカップラーの用途としてメタノール燃料電池のメタノールの容器と本体との連結の場合を例に説明したが、これに限らず他の用途でも良く、特に多種類を識別する必要がある場合に好適である。
【符号の説明】
【0096】
10 カップラー
S10 ソケット
P10 プラグ
11 ソケット本体(カップラー本体)
12 プラグ接続孔
13 弁ホルダ
13a 連通孔
14 ホルダシール部
15 流路
16 バルブ本体
16a 弁本体
16b シール部
17 弁シール部
18 圧縮コイルばね(付勢手段)
19 装着穴(操作部材用)
19a 段付リブ
20 ソケット側操作部材
20a 先端部
21 接続部シール部
21a 先端側壁部
21b 凹部
22 3箇所兼用シール部材
22a 内円筒部(接続部シール部材)
22b 略円板部(弁シール部材)
22c 外円筒部(ホルダシール部材)
31 プラグ本体
31a 先端部
31b 中間小径部
31c 中間大径部
31d 基端部
32 突出連結部
32a シール凹部
32b 装着穴
33 バルブシート
34 ホルダシール部
35 バルブ本体
35a バルブヘッド
35b バルブステム
35c ガイド部
35e 流路溝
35f Oリング装着部
36 弁シール部
37 Oリング(弁シール部材)
38 バルブホルダ
38a 流路孔
39 圧縮コイルばね
40 Oリング(ホルダシール部材)
41 プラグ側操作部材
50 連結保持手段
51 係合凹部
52 ロックアーム
53 庇部
54 突起部
55 リング部
60 第1の識別手段
70 第2の識別手段
71 キー溝
72 キー
73 リング部
74 ガイド孔
80 カム機構
81 カム
82 カムフォロア
N ノズル
T 第1の識別手段の1対の間隔
T1、T2 機器の最小厚さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁体とこれを閉方向に付勢する付勢手段とを備えるソケットと、弁体とこれを閉方向に付勢する付勢手段とを備えるとともに、前記ソケットと着脱可能に嵌合連結され嵌合連結状態で両弁体を開放して連通可能なプラグとから構成されるカップラーであって、
これらソケットとプラグとの間に、異なるカップラーとの嵌合を阻止する第1の識別手段を当該カップラーの嵌合連結の中心軸を挟んで1対設けるとともに、この第1の識別手段の内側に前記嵌合連結の中心軸を挟んで一対の第2の識別手段を設け、この第2の識別手段はカップラーを設ける機器の最小幅の内接円内に配置して構成してなることを特徴とするカップラー。
【請求項2】
前記第1の識別手段および前記第2の識別手段を,それぞれ前記カップラーの中心軸に対して点対称に配置して構成したことを特徴とする請求項1記載のカップラー。
【請求項3】
前記第1の識別手段の一対の間隔が、前記カップラーを設ける機器の最小幅より広く配置された場合には、前記第2の識別手段のみで識別可能に構成してなることを特徴とする請求項1または2記載のカップラー。
【請求項4】
前記第1の識別手段を、前記ソケットと前記プラグとの間を連結状態に保持する連結保持手段と兼用して構成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のカップラー。
【請求項5】
前記連結保持手段を、前記ソケットと前記プラグとのいずれか一方にロックアームを前記カップラーの中心軸回りに回転自在に設け、いずれか他方にこのロックアームが係合される係合凹部を設けて構成するとともに、当該ロックアームに対しては前記第1の識別手段を前記中心軸方向に往復移動可能かつ前記カップラーに対しては中心軸回りに回転自在に設けて構成してなることを特徴とする請求項4記載のカップラー。
【請求項6】
前記ロックアームに往復移動可能かつ前記カップラーの中心軸回りに回転可能な部材と当該カップラーとのいずれかに、カムとカムフォロアとで構成された前記連結保持手段の分離手段を設けてなることを特徴とする請求項5記載のカップラー。
【請求項7】
前記連結保持手段および前記第1の識別手段を、前記ロックアームに連結方向に交差した突起もしくは溝を設ける一方,前記係合凹部に突起もしくは溝と係合する庇もしくは突起を設けて構成したことを特徴とする請求項5または6記載のカップラー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−80532(P2011−80532A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−233050(P2009−233050)
【出願日】平成21年10月7日(2009.10.7)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】