説明

カドミウム汚染土壌の浄化方法

【課題】カドミウムを含有する土壌からカドミウムを、オンサイトで、簡便に、他の金属で汚染されることなく除去する土壌の浄化方法の提供。
【解決手段】カドミウムを含有する土壌に、水と、酸及び/又は酸の塩類を加えてカドミウムを水中に溶出させ、次いで当該カドミウム含有水溶液とリン酸化セルロースを含有する固形資材とを接触させて水溶液中のカドミウムを吸着させ、しかる後に当該固形資材を取り除いてカドミウムを除去することを特徴とするカドミウム含有土壌の浄化方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カドミウムを含有する土壌からカドミウムを除去して浄化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
我が国では昭和45年に、食品衛生法に基づき玄米1mg/kg(精米0.9mg/kg)のカドミウムの基準値が設定され、玄米中1mg/kg以上のカドミウムを含む米の販売が禁止された。これに準拠して、カドミウム含量が1mg/kg以上であると認められる地域及びそのような米を産出する恐れがある地域が農用地土壌汚染対策地域として指定され、かんがい排水施設の新設、客土等汚染の防止及び除去等の汚染農用地を復元するための対策が講じられてきた。近年、国際連合食糧農業機関と世界保健機関の合同食品規格委員会(コーデックス委員会)に属する食品添加物汚染物質部会において、米のカドミウム基準値が検討されている。その基準値原案は平成17年11月現在で精米中0.4mg/kgである。この新しい米のカドミウム基準値については、疫学調査などに基づくカドミウムの健康影響に関するリスク評価結果を踏まえての科学的な論議が続けられており、未だ決定に至っていない。しかしながら、今後国内の基準値の見直しは必須の状況であり、このことはカドミウム汚染米対策を実施すべき水田が増加することを意味している。農林水産省が平成14年に発表した国内産農畜産物等の実態調査結果によると、0.4mg/kgを超える濃度のカドミウムを含む米は全調査試料の0.3%に当る84試料であった。この調査結果から計算すると、また、日本人の場合、食品由来のカドミウム摂取量の約50%を米が占めることをも考慮すると、米中のカドミウム含量を低減するための対策技術の開発がこれまで以上に求められている。
【0003】
これまでに実用化もしくは検討されている米のカドミウム汚染への対策は、水稲のカドミウム吸収抑制、客土を基本とした農業土木的手法及び土壌からのカドミウムの除去に大別される。このうち、前二者については既に実用化されており、ある程度の成果が得られているものの、経済性や残土処理、効果の持続性・安定性に問題があるため、カドミウム含有土壌からカドミウムのみを除去する恒久的な技術を低コストで実現することが望まれている。
【0004】
これに合致する方法の一つとして、一般の重金属汚染土壌の浄化において実績のある土壌洗浄法がある(特許文献1)。洗浄時には薬品添加による化学的抽出法を採用して抽出効率を高める場合が多く、特にカドミウム含有水田土壌のような広範囲低濃度汚染の浄化には必須と考えられる。この方法のカドミウム含有水田土壌への適用は未だ研究段階にあるが、その手順としては水田へ薬品を投入し、その後に耕耘機や、ロータリーハローやドライブハロー等の作業機を装着したトラクター、ショベル等を用いて土壌を攪拌することによって土壌中のカドミウムを田面水に遊離させる方法が採られることになると考えられる。これまでに水田土壌におけるカドミウム抽出剤として、塩酸、硫酸等の鉱酸、リン酸、有機酸、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、EDTA等が知られている。また、塩化亜鉛又は硫酸亜鉛の水溶液(特許文献2)、0.02〜0.5Mの塩化カリウム水溶液(特許文献3)、0.01〜0.5Mの塩化カルシウム水溶液(特許文献4)も知られている。弱酸性の水溶液に塩化ナトリウムあるいは塩化カリウムを溶解した液を用いると、抽出効率が高まることが知られている(特許文献5)。さらに、対象土壌体積の1〜4倍量のカルシウム塩、有機酸、無機酸及びアミノカルボン酸から選ばれる1種以上の水溶液で洗浄した後、更に水で洗浄することを特徴とするカドミウム含有水田土壌の浄化方法が報告されている(特許文献6)。
【0005】
しかしながら、このような土壌洗浄法で土壌中カドミウムを除いた場合、カドミウムを含む廃水の処理が問題となる。カドミウムを含有する一般土壌の処理の際には廃水処理に水処理プラントが用いられることから、カドミウム含有水田土壌においても小型化した水処理プラントの利用が考えられるが、水処理プラントには土壌粒子等の固形物の混入によって目詰まりし易いという欠点がある。そこで、水処理プラントへの導入前に廃水を静置して土壌粒子を沈降させることによって十分な固液分離を行う必要が生じるが、一方、その間に降雨による増水に伴う流去や地下浸透による拡散の恐れがある。従って、より迅速かつ簡便な廃水中カドミウムの除去方法の確立が望まれている。
【0006】
また、リン酸化セルロースがカドミウム等の重金属を吸着することは既に知られており、リン酸化セルロースを重金属及び放射性金属の除去に用いるもの(特許文献7)、リン酸化セルロースの製造に際し硫黄粉末を用い繊維の機械強度を高める方法(特許文献8)、セルロース及び澱粉のリン酸エステル、酢酸エステル、安息香酸エステルを水からの重金属除去に用いるもの(特許文献9)、カルバミド基及びリン酸エステル基を有するセルロースからなるフィルタを飲料水から硬性化成分又は重金属の除去に用いるもの(特許文献10)、セルロースIIのリン酸エステルにより溶液中の金属イオンの吸着に用いるもの(特許文献11)等が知られている。しかしながら、土壌洗浄法においてリン酸化セルロース、特にリン酸化セルロースアンモニウム塩を使用する方法については、何の示唆もされていない。
【特許文献1】特開平6−343968号公報
【特許文献2】特開2004−148279号公報
【特許文献3】特開2004−136205号公報
【特許文献4】特開2004−122007号公報
【特許文献5】特開2002−355662号公報
【特許文献6】特開2004−283743号公報
【特許文献7】ロシア特許第2096082号公報C1
【特許文献8】国際公開第99/28372号公報
【特許文献9】ドイツ特許出願公開第19859746号公報A
【特許文献10】特表2003−500199号公報
【特許文献11】国際公開第2005/042587号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、カドミウムを含有する土壌からカドミウムを、オンサイトで、簡便に、他の金属で汚染されることなく除去することができるカドミウム含有土壌の浄化方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる実情において本発明者らは、カドミウムを含有する土壌を湛水し、酸及び/又は塩類を加え、耕耘機や、ロータリーハローやドライブハロー等の作業機を装着したトラクター、ショベル等を用いて土壌を直接攪拌して土壌中のカドミウムを溶出させ表面水に遊離させることにより発生したカドミウムを含む水溶液と、リン酸化セルロースを含有する固形資材とを接触させて、カドミウムを該固形資材に吸着させた後、該固形資材を分離回収することによって、カドミウム含有土壌より溶出したカドミウムの流去や地下浸透によるカドミウムの拡散汚染を抑え、迅速かつ簡便にカドミウムを、オンサイトで除去できることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、カドミウムを含有する土壌に、水と、酸及び/又は酸の塩類を加えてカドミウムを水中に溶出させ、次いで当該カドミウム含有水溶液とリン酸化セルロースを含有する固形資材とを接触させて水溶液中のカドミウムを吸着させ、しかる後に当該固形資材を取り除いてカドミウムを除去することを特徴とするカドミウム含有土壌の浄化方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
カドミウムを含有する土壌を移送することなくオンサイトで、カドミウムが簡便な方法で、他の金属による汚染を起こさずに除去される。また溶出したカドミウムを流去や地下浸透による拡散汚染を抑え、且つ迅速に除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明において浄化対象となるカドミウムを含有する土壌には、人畜あるいは植物に対する悪影響の懸念等の理由によって、含有するカドミウムの除去が必要と判断される土壌が含まれる。例えば、農用地土壌汚染防止法において「農用地土壌汚染対策地域」として指定された地域に存在する水田土壌及び、産出されるコメ(精米あるいは玄米)中のカドミウム濃度が0.4mg/kg以上、1.0mg/kg未満となる恐れのある水田土壌が含まれる。また、0.1mol/L塩酸抽出法によって測定した土壌中のカドミウム濃度が、0.3mg/L以上、5mg/L以下となる水田土壌が含まれる。さらには、水田以外の農耕地土壌で、カドミウムで汚染された大豆、小麦、ばれいしょ、根菜、茎菜、葉菜、鱗茎類、アブラナ科野菜、ウリ科果菜、その他果菜等の作物を産する土壌が含まれる。農地以外にも、工場跡地、山林、廃土でカドミウムを含有する土地等の中で、含有するカドミウムの除去が必要と判断される土壌が含まれる。
【0012】
本発明のカドミウムを含有する土壌の浄化方法における第一工程は、土壌中のカドミウムを水中に溶出させる工程である。該第一工程は、土壌に水と、酸及び/又は酸の塩類とを混合することにより行われるが、酸の水溶液又は酸の塩類の水溶液を用いてもよい。酸としてはグリコール酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、コハク酸、マレイン酸、グルコン酸等の有機酸又は塩酸、硝酸、硫酸等の無機酸が使用される。有機酸としてはクエン酸、マレイン酸等が好ましく、無機酸としては塩酸、硝酸、硫酸等が好ましい。酸としては、塩酸が特に好ましい。酸の塩類としては、上記有機酸又は無機酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、鉄塩、アンモニウム塩等が挙げられる。酸の塩類としては、塩化第二鉄、塩化アンモニウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム等が好ましく、特に塩化第二鉄、塩化アンモニウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウムが好ましい。これらの酸及び酸の塩類は、1種又は2種以上を混合して使用してもよい。酸と酸の塩類を併用する場合は、塩酸と塩化第二鉄又は塩化アンモニウムとの組み合わせが特に好ましい。
【0013】
土壌との混合は、例えば水田を湛水し、酸及び/又は酸の塩類を加え、耕耘機や、ロータリーハローやドライブハロー等の作業機を装着したトラクター、ショベル等を用いて土壌を直接攪拌混合する方法、カドミウム含有土壌に酸又は酸の塩類を溶解した水溶液を散水する方法等により行われる。
【0014】
土壌と、水と酸及び/又は酸の塩類の混合物のpHは、25℃で、2〜8、特に2.5〜6であるのがカドミウムの溶出除去率の点から好ましい。また、施行時の気温に制限はされないが、凍結は避けるのが好ましい。
【0015】
第一工程で土壌中のカドミウムを水中に溶出させた後の第二工程は、第一工程でカドミウム含有土壌から溶出したカドミウムを含有する水溶液とリン酸化セルロースを含有する固形資材とを接触し、カドミウムを固形資材に吸着させ、次いでカドミウムが吸着した固形資材を取り除く工程である。
【0016】
この第二工程で使用するリン酸化セルロースとしては、リン酸化セルロースそのものの他、その塩を含み、例えば、リン酸化セルロース、リン酸化セルロースアンモニウム塩、リン酸化セルロースナトリウム塩、リン酸化セルロースカリウム塩、リン酸化セルロースカルシウム塩等が挙げられ、金属による土壌汚染を防止する点、及びカドミウムの吸着効率の点から、特にリン酸化セルロースアンモニウム塩が好ましい。
【0017】
セルロース含有材料としては、セルロースを含有するものであれば特に限定されず、またガラス繊維等の混合物でもよい。例えば、セルロース織布、ろ紙、セルロース不織布等が挙げられる。セルロースとしては、綿、麻、レーヨン等が挙げられる。
【0018】
本発明のリン酸化セルロースは公知物質であり、その製造方法等は特に制限されるわけではないが、特に国際公開第2005/042587号公報に記載されているセルロースIIを原料として得られるリン酸化セルロースが好ましい。
【0019】
第二工程のリン酸化セルロースを含有する固形資材と土壌を接触させる際の比率は、土壌100重量部に対し、固形資材が0.01〜10重量部、特に0.1〜5重量部となるようにするのが好ましい。
【0020】
リン酸化セルロースを含有する固形資材の形状は、繊維状、布状、糸状、網状又はそれらを組み合わせた形状が挙げられる。
【0021】
固形資材は、第一工程で得られた土壌中のカドミウムが溶出した水溶液の全面を覆うか、水溶液中に浸漬する等の方法で接触させればよい。あるいは、予め固形資材を土壌の耕盤付近に敷設しておき、その後に第一工程を行って土壌中からカドミウムが溶出した水溶液を接触させてもよい。さらには、固形資材をカラムに充填し、カドミウムが溶出した水溶液を通過させることによって接触させてもよい。接触時間、接触温度等の接触条件は、溶出したカドミウムが固形資材に吸着する条件であれば特に制限されないが、凍結は避けるのが好ましい。また、接触に際しては攪拌等を行ってもよい。
また、溶出したカドミウムを含有する水溶液と固形資材との接触に際し、固形資材を、適宜カドミウムの吸着していない固形資材と取り替えてもよい。
【0022】
カドミウムが吸着した固形資材は、土壌から取り除いた後、焼却してカドミウムを含む灰分を回収することにより処理してもよいが、カドミウムを溶出させ、再利用することもできる。カドミウムの溶出には、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、コハク酸、マレイン酸、グルコン酸等の有機酸又は塩酸、硝酸、硫酸等の無機酸、あるいは上記有機酸又は無機酸の塩類の水溶液が使用される。有機酸としてはクエン酸、マレイン酸等が好ましく、無機酸としては塩酸、硝酸、硫酸等が好ましい。酸としては、塩酸が特に好ましい。酸の塩類としては、上記有機酸又は無機酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、鉄塩、アンモニウム塩、等が挙げられる。酸の塩類としては、塩化第二鉄、塩化ナトリウム、塩化アンモニウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム等が好ましく、特に塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウムが好ましい。これらの酸及び酸の塩類は、1種又は2種以上を混合して使用してもよい。これらの物質の水溶液に固形資材を浸漬することによって、固形資材に吸着したカドミウムが溶液中に回収されるとともに固形資材が再生される。
【0023】
本発明において、特にリン酸化セルロースアンモニウム塩を含有する固形資材を用いてカドミウムを吸着した際は、土壌中にアンモニムイオンが溶出するが、その溶出量は処理1回当り10〜30g−N/m2程度であり、かつアンモニウムイオンは農業用の土壌にとって必須成分であるため、土壌が金属で汚染されることがない。従って、リン酸化セルロースアンモニウム塩、特にセルロースIIから得られるリン酸化セルロースアンモニウム塩を含有する固形資材を用いるのが特に好ましい。
【実施例】
【0024】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0025】
参考例 リン酸化セルロース
以下の実施例で使用したリン酸化セルロースは、次法によって合成した。まず、精製水1Lに対して、85%リン酸を98mL、リン酸水素アンモニウムを210g、尿素を480gの割合で加えて溶解したものを用意し、反応溶液とした。水でよく洗浄した後に乾燥させたセルロース原料を耐熱容器内に置き、その1gに対して12.5mLの反応溶液を加えて浸潤させた。これを105℃に保った恒温槽に容器ごと移し、水分が無くなるまで一晩程度放置した。次いで恒温槽内の温度を150℃とし、恒温槽内を新鮮な空気でパージしながら、原料表面の薬剤の結晶が見えなくなるまで加熱して、リン酸化反応を行った。反応終了後、合成物を取り出して十分に水洗し、105℃にて乾燥させてリン酸化セルロースとした。次に、綿を原料にして合成したリン酸化セルロースのリン酸基に保持されている対塩基について評価した。合成して得たリン酸化セルロースに既知量の1mol/L塩酸を加えて振とう抽出し、抽出液中のナトリウムイオン、カリウムイオン及びカルシウムイオンをICP発光分析法にて、アンモニウムイオンをイオンクロマトグラフ法にて定量し、その結果からリン酸化セルロースのリン酸基に保持されている対塩基のモル比を求めると、ナトリウムイオン:カリウムイオン:カルシウムイオン:アンモニウムイオン=3:8:4:985となった。このことから、本工程によって合成されるリン酸化セルロースはアンモニウム塩であることが明らかとなった。以後、上記工程に従って合成したリン酸化セルロースのうち、綿を原料としたものをリン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩、麻を原料としたものをリン酸化セルロース(麻)アンモニウム塩と表記する。
【0026】
使用したカドミウム土壌中のカドミウム含有量は、0.1mol/L塩酸抽出法で測定した値が次のものであった。
カドミウム含有土壌A:1kg乾土当たり2.8mgであった。
カドミウム含有土壌B:1kg乾土当たり0.76mgであった。
カドミウム含有土壌C:1kg乾土当たり1.0mgであった。
【0027】
実施例1(塩酸)
1、5、10及び20mmol/Lの塩酸溶液をカドミウム溶出溶媒とした。カドミウム含有土壌A1gを15mL容プラスチックチューブに入れ、溶出溶媒10mLを加えて激しく攪拌した後、室温にて静置した。2時間後、3000r/minにて20分間遠心分離を行って固液分離を行い、上清1mLをサンプリングして抽出されたカドミウム量を原子吸光光度計にて定量した。ついで、この上清6mLを15mL容プラスチックチューブにとり、リン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩0.1gを浸漬させた後、往復振とう機にて一晩振とうした。翌朝、プラスチックチューブからリン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩を取り出し、残液のカドミウム濃度を原子吸光光度計にて定量した。さらに取り出したリン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩は、十分水洗した後、清浄な紙でよくぬぐって十分に水分を取り、1mol/L塩酸5mL中に移して1時間以上振とう抽出し、カドミウムを脱着させた。こうして得た抽出液についてカドミウム量を原子吸光光度計にて定量し、リン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩によるカドミウム除去量とした。
【0028】
その結果を図1に示す。図1の縦軸はリン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩によって除去されたカドミウム量を土壌1g当たりに換算した値を示す。図1にて明らかなように、カドミウム含有土壌に塩酸を加えて得た溶出液に、リン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩を接触させて、溶出液中のカドミウムを吸着させて除去できた。
【0029】
実施例2(塩酸酸性塩化アンモニウム溶液)
1及び5mmol/Lの塩酸溶液に塩化アンモニウムを溶かして0、50、100mmol/Lに調製して溶出溶媒とした。カドミウム含有土壌A1gを15mL容プラスチックチューブに入れ、溶出溶媒10mLを加えて激しく攪拌した後、室温にて静置した。2時間後、3000r/minにて20分間遠心分離を行って固液分離を行い、上清に抽出されたカドミウム量を原子吸光光度計にて定量した。
この上清の6〜7mLを15mL容プラスチックチューブにとり、リン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩0.1gを浸漬させた後、往復振とう機にて一晩振とうした。翌朝、プラスチックチューブからリン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩を取り出し、残液のカドミウム濃度を原子吸光光度計にて定量した。さらに取り出したリン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩は、十分水洗した後、清浄な紙でよくぬぐって十分に水分を取り、1mol/L塩酸5mL中に移して1時間以上振とう抽出し、カドミウムを脱着させた。こうして得た抽出液についてカドミウム量を原子吸光光度計にて定量し、リン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩によるカドミウム除去量とした。
【0030】
その結果を図2に示す。図2の(A)は溶出溶媒の残液におけるカドミウム濃度の測定結果を、図2の(B)はリン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩によって吸着除去されたカドミウム量の測定結果を、いずれも土壌1g当たりのカドミウム量として示す。
図2の(A)にて示される様に、カドミウム含有土壌に塩酸と塩化アンモニウム加えて振とうすることによってカドミウムが抽出された。また図2の(B)にて示されるように、得られた溶出溶媒をリン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩に接触させた後に取り除きカドミウムを吸着除去できた。リン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩によるカドミウム除去量は、塩酸濃度及び塩化アンモニウム濃度が濃いほど増加した。
【0031】
実施例3(塩酸酸性塩化アンモニウム溶液)
5mmol/Lの塩酸溶液に塩化アンモニウムを溶かして100mmol/Lとし溶出溶媒とした。カドミウム含有土壌A10gを100mL容ビーカーに入れ、溶出溶媒200mLを加えて2分間攪拌した後、固相と液相の再分離を目的に室温にて3.5時間静置した。次にリン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩1gを静かに投入した後、静置し、液相に溶出したカドミウムを吸着させた。16時間後、リン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩を取り出して、十分水洗した後、清浄な紙でよくぬぐって十分に水分を取り、1mol/L塩酸5mL中に移して1時間以上振とう抽出し、カドミウムを脱着させて分析用試料溶液を得た。リン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩を取り去った後の土壌については、2分間攪拌し、固相・液相分離のための静置し、リン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩1gの投入後カドミウム吸着のための静置し、リン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩の取り出し、カドミウムを脱着させる工程を以後4回繰り返し、土壌中カドミウムの逐次除去を行った。ただし、5回目ではリン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩投入後の静置時間を88時間とした。このようにして得た分析用試料溶液中のカドミウム量は原子吸光光度計にて定量し、リン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩によるカドミウム除去量とした。さらに5回目のカドミウム除去操作終了後、土壌を収集して風乾し、0.1mol/L塩酸抽出法によって残存したカドミウム量についても原子吸光光度計にて測定した。
【0032】
溶出溶媒による抽出及びリン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩による除去の繰返しによってカドミウム含有土壌から除去されたカドミウムの積算除去率を図3に示す。図3の縦軸はカドミウムの積算除去率(%)を示す。
図3にて明らかな様に、土壌に溶出溶媒を混合してカドミウムを溶出後にリン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩にてカドミウムを吸着させる操作を繰り返すことによって、土壌中のカドミウムを効率的に除去できた。除去操作5回の繰返しにて除去されたカドミウムの総量は初期値の56%にまで達した。また、5回のカドミウム除去操作終了後の土壌に残存したカドミウム量は1kg乾土当り1.1mgであって、カドミウム含有土壌のカドミウム含量の低下に明らかな効果を示した。
【0033】
実施例4(塩化カルシウム溶液、塩化マグネシウム溶液)
塩化カルシウム又は塩化マグネシウムを水に溶解して1mmol/Lに調製し溶出溶媒とした。また精製水を対照溶媒とした。カドミウム含有土壌A1gを15mL容プラスチックチューブに入れ、溶出溶媒10mLを加えて激しく攪拌した後、室温にて静置した。次いで、リン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩0.1gを加えた後、往復振とう機にて一晩振とうした。翌朝、プラスチックチューブからリン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩を取り出し、残液のカドミウム濃度を原子吸光光度計にて定量した。さらに取り出したリン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩は、十分水洗した後、清浄な紙でよくぬぐって十分に水分を取り、1mol/L塩酸5mL中に移して1時間以上振とう抽出し、カドミウムを脱着させた。こうして得た抽出液についてカドミウム量を原子吸光光度計にて定量し、リン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩によるカドミウム除去量とした。
【0034】
その結果、リン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩によるカドミウム除去量は、溶出溶媒として塩化カルシウム溶液を用いた場合には1kg乾土当たり0.26mg、塩化マグネシウム溶液を用いた場合には1kg乾土当たり0.16mgであった。一方、対照溶媒である精製水のみで溶出させた場合の1kg乾土当たり0.11mgであって、本発明のカドミウム含有土壌の浄化方法の方がより優れた効果を示した。
【0035】
実施例5(塩酸酸性塩化カルシウム溶液)
5mmol/Lの塩酸溶液に塩化カルシウムを溶かして1、5、10、20及び50mmol/Lとした溶液を調製し溶出溶媒とした。また5mmol/Lの塩酸溶液を対照溶媒とした。カドミウム含有土壌A1gを15mL容プラスチックチューブに入れ、溶出溶媒10mLを加えて激しく攪拌した後、室温にて静置した。この時のpHは3.9〜4.1であった。2時間後、3000r/minにて20分間遠心分離を行って固液分離を行い、上清に抽出されたカドミウム量を原子吸光光度計にて定量した。
この上清の5mLを15mL容プラスチックチューブにとり、リン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩0.1gを浸漬させた後、往復振とう機にて一晩振とうした。翌朝、プラスチックチューブからリン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩を取り出し、残液のカドミウム濃度を原子吸光光度計にて定量した。さらに取り出したリン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩は、十分水洗した後、清浄な紙でよくぬぐって十分に水分を取り、1mol/L塩酸5mL中に移して1時間以上振とう抽出し、カドミウムを脱着させた。こうして得た抽出液についてカドミウム量を原子吸光光度計にて定量し、リン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩によるカドミウム除去量とした。
【0036】
その結果を図4に示す。図4の(A)は上清5mL中のカドミウム量の測定結果を示し、図4の(B)はリン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩によって吸着除去されたカドミウム量の測定結果を示す。図4の(A)に示すように、対照溶媒である5mmol/Lの塩酸よりも、これに塩化カルシウムを加えて調製した溶出溶媒の方が、土壌のカドミウムを容易に溶出することができた。また図4の(B)に示すように、溶出溶媒中に抽出されたカドミウムにリン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩を接触させることによって吸着除去することができた。特に塩化カルシウム濃度が0〜20mmol/Lの範囲ではリン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩は有効的に機能し、また塩化カルシウム濃度が5mmol/L以下では上清に抽出されたカドミウムのおよそ90%以上を吸着除去できた。
【0037】
実施例6(塩化第二鉄溶液)
5、10及び20mmol/Lの塩化第二鉄溶液を調製し溶出溶媒とした。実施例1で使用したものと同じカドミウム含有土壌A3gを50mL容プラスチックチューブに入れ、溶出溶媒を3、4.5又は6mL加えた。それぞれ固液比(土壌量:溶媒量)が1:1、1:1.5、1:2に相当する。さらにリン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩0.3gを加えた後、室温・200r/minにて1分間振とうした。24時間静置後、リン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩を取り出して十分水洗した後、清浄な紙でよくぬぐって十分に水分を取った。これを1mol/L塩酸30mL中に移して1時間以上振とう抽出し、カドミウムを脱着させて分析用試料溶液を得た。この分析用試料溶液中のカドミウム量をICP発光分析装置にて測定し、リン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩によるカドミウム除去量とした。また、リン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩を除いた後の土壌スラリーを3000r/minにて10分間遠心し、得られた上清中のカドミウムについてもICP発光分析装置にて分析した。なお、対照としてリン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩を加えずに同様の操作を行って得た試料についても同様に操作した。
【0038】
まず上清中のカドミウム量の測定結果を図6に示す。図5の(B)にて明らかな様に、カドミウム含有土壌に塩化第二鉄の溶液を加えることで土壌中のカドミウムが溶出され塩化第二鉄溶液中に移行した。ここにリン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩を加えると(A)で示されるように溶液中のカドミウム濃度を低下させることができた。このリン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩の添加効果は溶出溶媒である塩化第二鉄の濃度や固液比によらず発揮されたが、溶出溶媒中のカドミウム濃度をなるべく小さくしたい場合には、塩化第二鉄濃度では10mmol/L程度以下で行う方がよいと考えられた。
【0039】
次にリン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩に吸着し、除去されたカドミウム量を図6に示す。図6の縦軸は乾土換算した土壌重量当たりのカドミウム除去量を示す。前図5にて、リン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩の添加により、溶媒中のカドミウム濃度の低下が認められたが、図6に示されるように低下したカドミウムはリン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩に吸着され除去されていた。
カドミウム含有土壌中のカドミウムは、塩化第二鉄水溶液によって溶出され、リン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩と接触させて、その後のリン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩を回収することによって、土壌中から容易に除くことができた。
【0040】
実施例7(塩化第二鉄溶液)
10及び20mmol/Lの塩化第二鉄溶液を調製し、溶出溶媒とした。カドミウム含有土壌A100gをビーカーに入れ、溶出溶媒を150mL加えた。2分間攪拌した後、固相と液相が再分離するまで室温にて30分程度静置し、リン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩0.1、0.5、1、5又は10gを上面水に加えた。それぞれ、土壌に対する添加率0.1、0.5、1、5及び10%に相当する。24時間静置後、リン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩を取り出して十分水洗した後、清浄な紙でよくぬぐって十分に水分を取った。これをリン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩1gに対して100mLに相当する量の1mol/L塩酸中に移して1時間以上振とう抽出し、カドミウムを脱着させて分析用試料溶液を得た。また、溶出溶媒の一部を回収してこれも分析に供した。この分析用試料溶液中のカドミウム量をICP発光分析装置にて測定し、リン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩によるカドミウム除去量及び溶出溶媒への残存量を求めた。
【0041】
溶出溶媒による抽出及びリン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩による除去によってカドミウム含有土壌Aから除去されたカドミウム量及び溶出溶媒中に残留したカドミウム量の、未処理カドミウム含有土壌A中のカドミウム量(0.1mol/L塩酸抽出法)に対する割合を表1に示す。表1にて明らかな様に、カドミウム含有土壌と溶出溶媒を混合してカドミウムを溶出後、リン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩と接触させてカドミウムを吸着させることによりカドミウム含有土壌を浄化することができた。この操作によって除去されるカドミウムの割合は、リン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩の添加量が多い程高かった。
【0042】
【表1】

【0043】
実施例8(塩化第二鉄溶液)
5、10及び20mmol/Lの塩化第二鉄溶液を調製し溶出溶媒とした。カドミウム含有土壌B10gを50mL容プラスチックチューブに入れ、溶出溶媒を15mL加えた。2分間攪拌した後、固相と液相が再分離するまで室温にて30分程度静置し、次いでリン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩50又は100mgを上面水に加えた。それぞれ、土壌に対する添加率0.5及び1%に相当する。24時間静置後、リン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩を取り出して十分水洗した後、清浄な紙でよくぬぐって十分に水分を取った。これをリン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩1gに対して100mLに相当する量の1mol/L塩酸中に移して1時間以上振とう抽出し、カドミウムを脱着させて分析用試料溶液を得た。また、上面水を回収してこれも分析に供した。これらの分析用試料溶液中のカドミウム濃度をICP発光分析装置にて測定し、リン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩によるカドミウム除去量及び上面水への残存量を求めた。
【0044】
溶出溶媒による抽出及びリン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩による除去によってカドミウム含有土壌Bから除去されたカドミウム量及び上面水に残留したカドミウム量の、未処理カドミウム含有土壌A中カドミウム量(0.1mol/L塩酸抽出法)に対する割合を表2示す。表2にて明らかな様に、カドミウム含有土壌と溶出溶媒を混合してカドミウムを溶出後、リン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩と接触させてカドミウムを吸着させることにより、溶出溶媒を使用しない場合と比較してより多くのカドミウムを除去することができた。この操作によって除去されたカドミウムの割合は、土壌に対するリン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩の添加割合を1%、溶出溶媒として10mmol/L塩化第二鉄溶液を用いた場合に最大となり、初期カドミウム量(0.1mol/L塩酸抽出法)の11.0%に達した。一方、上面水中へのカドミウムの残留は、5mmol/L塩化第二鉄溶液を用いてリン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩を1%添加した場合に最も少なく、溶出溶媒によって溶出されたカドミウムの80%以上をリン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩によって回収することができた。
【0045】
【表2】

【0046】
実施例9(塩化第二鉄溶液)
5、10及び20mmol/Lの塩化第二鉄溶液を調製し溶出溶媒とした。カドミウム含有土壌C10gを50mL容プラスチックチューブに入れ、溶出溶媒を15mL加えた。2分間攪拌した後、固相と液相が再分離するまで、室温にて30分程度静置し、リン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩50又は100mgを上面水に加えた。24時間静置後、リン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩を取り出して十分水洗した後、清浄な紙でよくぬぐって十分に水分を取った。これをリン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩1gに対して100mLに相当する量の1mol/L塩酸中に移して1時間以上振とう抽出し、カドミウムを脱着させて分析用試料溶液を得た。また、上面水を回収してこれも分析に供した。これらの分析用試料溶液中のカドミウム濃度をICP発光分析装置にて測定し、リン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩によるカドミウム除去量及び上面水への残存量を求めた。
【0047】
溶出溶媒による抽出及びリン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩による除去によってカドミウム含有土壌Cから除去されたカドミウム量及び上面水に残留したカドミウム量の、未処理カドミウム含有土壌中カドミウム量(0.1mol/L塩酸抽出法)に対する割合を表3に示す。表3にて明らかな様に、カドミウム含有土壌と溶出溶媒を混合してカドミウムを溶出後、リン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩と接触させてカドミウムを吸着させることによって、溶出溶媒を使用しない場合と比較してより多くの土壌中のカドミウムを除去できた。除去されたカドミウムの割合は、土壌に対するリン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩の添加割合を1%、溶出溶媒として10mmol/L塩化第二鉄溶液を用いた場合に最大となり、初期カドミウム値(0.1mol/L塩酸抽出法)の25.9%に達した。一方、上面水中へのカドミウムの残留は、5mmol/L塩化第二鉄溶液を用いてリン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩を1%添加した場合に最も少なく、溶出溶媒によって抽出されたカドミウムの80%以上をリン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩によって回収することができた。
【0048】
【表3】

【0049】
実施例10(塩化第二鉄溶液)
10mmol/Lの塩化第二鉄溶液を調製し溶出溶媒とした。カドミウム含有土壌A50gを300mL容ビーカーに入れ、溶出溶媒を75mL加えた。2分間攪拌した後、固相と液相が再分離するまで室温にて30分程度静置し、リン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩0.25gを上面水に加えた。24時間静置後、リン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩を取り出して十分水洗した後、清浄な紙でよくぬぐって十分に水分を取った。これを1mol/L塩酸25mLに入れて1時間以上振とう抽出し、カドミウムを脱着させて分析用試料溶液を得た。リン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩を取り去った後の土壌については、2分間攪拌し、固相・液相分離のための静置し、リン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩0.25gの投入後カドミウム吸着のための24時間静置後リン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩の取り出し、塩酸による分析用試料溶液調製を、以後2回繰り返し、土壌中カドミウムの逐次除去を行った。得られた分析用試料溶液中のカドミウム量をICP発光分析装置にて測定し、リン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩によるカドミウム除去量を求めた。
【0050】
溶出溶媒による抽出及びリン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩による除去の繰返しによってカドミウム含有土壌Aから除去されたカドミウムの初期カドミウム値(0.1mol/L塩酸抽出法)に対する割合を表4に示す。表4にて明らかな様に、カドミウム含有土壌と溶出溶媒を混合してカドミウムを溶出後、リン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩と接触させてカドミウムを吸着させる操作を繰り返すことによって、カドミウム含有土壌中のカドミウムを除去できた。除去操作3回の繰返しにて除去されたカドミウムの割合は初期カドミウム値(0.1mol/L塩酸抽出法)の10.1%となった。
【0051】
【表4】

【0052】
実施例11(塩化第二鉄溶液)
5及び10mmol/Lの塩化第二鉄溶液を調製し溶出溶媒とした。カドミウム含有土壌B10gを50mL容ビーカーに入れ、溶出溶媒を15mL加えた。2分間攪拌した後、固相と液相が再分離するまで室温にて30分程度静置し、リン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩0.1gを上面水に加えた。24時間静置後、リン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩を取り出して十分水洗し、清浄な紙でよくぬぐって十分に水分を取った。これを1mol/L塩酸10mLに入れて1時間以上振とう抽出し、カドミウムを脱着させて分析用試料溶液を得た。リン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩を取り去った後の土壌については、2分間攪拌し、固相・液相分離のための静置し、リン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩0.1gの投入後24時間静置し、リン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩の取り出し、塩酸による分析用試料溶液調製を、以後2回繰り返した。得られた分析用試料溶液中のカドミウム量をICP発光分析装置にて測定し、リン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩によるカドミウム除去量を求めた。最後に残った上面水を回収し、上面水に残存したカドミウム量をICP発光分析装置を用いて測定した。
【0053】
溶出溶媒による抽出及びリン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩による除去の繰返しによってカドミウム含有土壌Bから除去されたカドミウムの積算除去量及び上面水に残留したカドミウム量の、未処理カドミウム含有土壌中カドミウム量(0.1mol/L塩酸抽出法)に対する割合を表5に示す。表5にて明らかな様に、カドミウム含有土壌に溶出溶媒を混合してカドミウムを溶出後、リン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩と接触させてカドミウムを吸着させる操作を繰り返すことによって、土壌中のカドミウムを除去できた。除去操作3回の繰返しにて除去されたカドミウムの割合はそれぞれ、初期カドミウム値(0.1mol/L塩酸抽出法)の19.0%(5mmol/L塩化第二鉄使用時)及び31.4%(10mmol/L塩化第二鉄使用時)に達した。一方、上面水中に残存したカドミウムは初期値の1.2%(5mmol/L塩化第二鉄使用時)及び1.6%(10mmol/L塩化第二鉄使用時)に止まった。上面水に抽出されたカドミウム量に対する割合はそれぞれ7.3%及び3.8%で、溶出溶媒によって上面水中に溶出されたカドミウムの90%以上をリン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩によって回収することができた。
【0054】
【表5】

【0055】
実施例12(塩化第二鉄溶液)
5、10及び20mmol/Lの塩化第二鉄溶液を調製し溶出溶媒とした。カドミウム含有土壌A25gを300mL容ビーカーに入れ、溶出溶媒を37.5mL加えた。十分攪拌した後30分間程度静置して土壌粒子を沈降させた。リン酸化セルロース(麻)アンモニウム塩0.125gをネットに入れ、上面水に加えて静置した。24時間後、リン酸化セルロース(麻)アンモニウム塩を取り出して、十分水洗した後、清浄な紙で水分を取り、10mLの1mol/L塩酸中に移して1時間以上振とう抽出し、カドミウムを脱着させ、分析用試料溶液を得た。残った上面水も回収して分析に供した。これら分析用試料溶液中のカドミウム量をICP発光分析装置にて測定した。
【0056】
リン酸化セルロース(麻)アンモニウム塩によってカドミウム含有土壌Aから除去されたカドミウム量及び上面水に残留したカドミウム量の、実験前の土壌中カドミウム量(0.1mol/L塩酸抽出法)に対する割合を表6に示す。表6にて明らかな様に、リン酸化セルロース(麻)アンモニウム塩を用いてもカドミウムの除去が可能で、塩化第二鉄濃度を5mol/Lとした場合に除去量が最も大きくなり、かつ上面水へのカドミウムの残留も少なかった。
【0057】
【表6】

【0058】
実施例13(塩化第二鉄溶液)
まず、リン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩10gを、1mol/L塩酸100ml、ついで精製水100mlで洗浄した後、pH8に調整した10%塩化ナトリウム、10%塩化カリウム、10%塩化カルシウムあるいは精製水100mlに浸した。これを一晩振とう後、取り出して多量の精製水でよく洗浄し、乾燥してリン酸化セルロース(綿)ナトリウム塩、リン酸化セルロース(綿)カリウム塩、リン酸化セルロース(綿)カルシウム塩及びリン酸化セルロース(綿)プロトン型を得た。次に、5mmol/Lの塩化第二鉄溶液を調製し溶出溶媒とした。カドミウム含有土壌B5gを50mL容プラスチックチューブに入れ、溶出溶媒を7.5mL加えた。2分間攪拌した後、固相と液相が再分離するまで、室温にて30分程度静置し、リン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩、リン酸化セルロース(綿)ナトリウム塩、リン酸化セルロース(綿)カリウム塩、リン酸化セルロース(綿)カルシウム塩、リン酸化セルロース(綿)プロトン型のうち一つの固形資材を50mg、上面水に加えた。24時間静置後、リン酸化セルロース(綿)アンモニウム塩を取り出して十分水洗した後、清浄な紙でよくぬぐって十分に水分を取った。これを固形資材1gに対して100mLに相当する量の1mol/L塩酸中に移して1時間以上振とう抽出し、カドミウムを脱着させて分析用試料溶液を得た。また、上面水を回収してこれも分析に供した。これらの分析用試料溶液中のカドミウム濃度をICP発光分析装置にて測定し、各固形資材によるカドミウム除去量及び上面水への残存量を求めた。
【0059】
溶出溶媒による抽出及び各固形資材による除去によってカドミウム含有土壌Bから除去されたカドミウム量の、未処理カドミウム含有土壌中カドミウム量(0.1mol/L塩酸抽出法)に対する割合は、表7の様になった。表7にて明らかな様に、カドミウム含有土壌と溶出溶媒を混合してカドミウムを溶出後、リン酸化セルロースの種類としてはアンモニウム塩を用いた場合、最も効率良くカドミウムを吸着除去することが可能であった。
【0060】
【表7】

【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】抽出溶媒として塩酸を用いたときのカドミウム除去量を示す図である。
【図2】抽出溶媒として塩酸酸性塩化アンモニウム溶液を用いたときのカドミウム除去量を示す図である。
【図3】塩酸酸性塩化アンモニウム溶液とリン酸化セルロース(綿)アンモニウムとの処理を繰返したときのカドミウム除去量を示す図である。
【図4】抽出溶媒として塩酸酸性塩化カルシウム溶液を用いたときのカドミウム除去量を示す図である。
【図5】土壌量と溶液量との比を変えたときの上清に抽出されたカドミウム量を示す図である。
【図6】抽出溶媒として塩化第二鉄溶液を用いたカときのカドミウム除去量を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カドミウムを含有する土壌に、水と、酸及び/又は酸の塩類を加えて混合攪拌し、カドミウムを水中に溶出させ、次いで当該カドミウム含有水溶液とリン酸化セルロースを含有する固形資材とを接触させて水溶液中のカドミウムを吸着させ、しかる後に当該固形資材を取り除いてカドミウムを除去することを特徴とするカドミウム含有土壌の浄化方法。
【請求項2】
酸が、塩酸、硝酸、硫酸、クエン酸又はマレイン酸である請求項1記載の土壌の浄化方法。
【請求項3】
酸の塩類が、塩化第二鉄、塩化アンモニウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸アンモニウム又は硝酸アンモニウムである請求項1又は2記載の土壌の浄化方法。
【請求項4】
リン酸化セルロースが、綿、麻又はレーヨンを原料とするものである請求項1〜3のいずれか1項記載の土壌の浄化方法。
【請求項5】
リン酸化セルロースがリン酸化セルロースアンモニウム塩である請求項1〜4のいずれか1項記載の土壌の浄化方法。
【請求項6】
固形資材の形状が、繊維状、布状、糸状、網状又はそれらを組み合わせた形状である請求項1〜5のいずれか1項記載の土壌の浄化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−160272(P2007−160272A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−363123(P2005−363123)
【出願日】平成17年12月16日(2005.12.16)
【出願人】(000163006)興和株式会社 (618)
【出願人】(501245414)独立行政法人農業環境技術研究所 (60)
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【Fターム(参考)】